(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6083027
(24)【登録日】2017年2月3日
(45)【発行日】2017年2月22日
(54)【発明の名称】多機能バイオリアクターシステム並びに細胞を選別および培養する方法
(51)【国際特許分類】
C12M 3/00 20060101AFI20170213BHJP
C12M 3/06 20060101ALI20170213BHJP
C12M 1/42 20060101ALI20170213BHJP
C12N 5/00 20060101ALN20170213BHJP
C12N 13/00 20060101ALN20170213BHJP
【FI】
C12M3/00 A
C12M3/00 Z
C12M3/06
C12M1/42
!C12N5/00
!C12N13/00
【請求項の数】13
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2014-502558(P2014-502558)
(86)(22)【出願日】2012年3月29日
(65)【公表番号】特表2014-509523(P2014-509523A)
(43)【公表日】2014年4月21日
(86)【国際出願番号】US2012000182
(87)【国際公開番号】WO2013048546
(87)【国際公開日】20130404
【審査請求日】2015年3月27日
(31)【優先権主張番号】61/468,573
(32)【優先日】2011年3月29日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】517000276
【氏名又は名称】ジクセル インク.
【氏名又は名称原語表記】Zyxell Inc.
(74)【代理人】
【識別番号】110000659
【氏名又は名称】特許業務法人広江アソシエイツ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】チャン,ヨンシン
(72)【発明者】
【氏名】ワン,イン
(72)【発明者】
【氏名】チャン,モニカ
【審査官】
原 大樹
(56)【参考文献】
【文献】
実開昭61−175999(JP,U)
【文献】
特開2004−313008(JP,A)
【文献】
特表2007−535902(JP,A)
【文献】
特表2004−504023(JP,A)
【文献】
特表2007−510433(JP,A)
【文献】
特開2003−070458(JP,A)
【文献】
特開2004−321133(JP,A)
【文献】
国際公開第2010/109392(WO,A1)
【文献】
特表2003−519008(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12M 1/00−3/10
C12N 1/00−7/08
11/00−13/00
MEDLINE/BIOSIS/EMBASE/WPIDS/WPIX/CAplus(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
細胞マーカーに基づいて細胞を分離し、細胞および人工組織を成長させるためのバイオリアクターシステムであって、
第1部分および第2部分を有する内側を含み、細胞マーカーによる細胞分離、細胞成長および人工組織の成長の反応のための空間を与える1つの反応チャンバーと、
前記チャンバーの内側に配置され、内側の第1部分と内側の第2部分の間を移動することができる、磁着性アジテーターと、
細胞マーカーによる細胞分離を補助し、チャンバーの特定の内側位置にアジテーターをとどまらせ、または反応チャンバーの反転にともなって内側の第1部分と内側の第2部分の間を移動させるように操作可能な、調節可能な磁場と、を少なくとも備え、
前記反応チャンバーの内側が、
細胞培地容器と流体が行き来できるように連結し、この容器から細胞培地を受け入れ、消し去ることができ、低コロイド浸透圧溶液を含む、低浸透区域である第1の区画と、
第1の区画に隣接し、さらに、細胞、アジテーター、試薬、バッファーおよび培地を受け入れ、消し去るための出入口になるように作られ、その内部にアジテーターが配置されている、反応区画である第2の区画と、
第1の区画と第2の区画の間に配置され、第1の区画から第2の区画へと細胞培地を選択的に流すことができるように作られた、第1の膜と、
第2の区画に隣接し、第3の区画が、バッファー容器からバッファーを受け入れることができるようにバッファー容器と流体が行き来できるように連結し、さらに、廃棄物が第3の容器から廃棄物容器へと流れることができるように廃棄物容器と流体が行き来できるように連結するように作られた、高浸透区画である第3の区画と、
第2の区画と第3の区画との間に配置され、培地および廃棄物を第2の区画から第3の区画まで選択的に流すことができるように作られた、第2の膜と、
気体透過性材料で作られた反応チャンバーの側壁の少なくとも一部、pHを維持するための試薬を含む培地の1構成要素、またはチャンバーと接続した気体透過性システム、またはこれら3つの任意の組み合わせと、
バイオリアクターのカセットおよび任意のホルダーに配置された反応チャンバーの少なくとも一部と、を備える、バイオリアクターシステム。
【請求項2】
複数のビーズ、または複数の開口部を有する平面部材を備える磁着性アジテーターが、
(1)全体的に剛性磁着性材料で作られ、コーティングされていないか、または細胞の接続および細胞損傷の低減を含む任意の目的のために、不活性で剛性または硬質の材料でコーティングされるか、または
(2)少なくとも部分的に、磁場の中に置かれると磁性を帯びるが、磁場が消えるか、または反応領域からはずされると、磁性ではなくなるか、または磁性が非常に弱くなるような磁着性材料で作られ、且つ
(3)前記ビーズの直径が1ミリメートルより大きく、前記反応チャンバーの体積より小さい、請求項1に記載のバイオリアクターシステム。
【請求項3】
前記磁着性アジテーターは、接着性の細胞培養物中で細胞を接着させ、成長させるため、また、細胞マーカーによる細胞分離中、磁着性材料で標識された抗体または他の生体分子と結合した細胞を接続するために細胞補助材として機能し、生体分子の反応および結合ならびに磁場によって制御された細胞の捕捉および放出を含む、請求項2に記載のバイオリアクターシステム。
【請求項4】
前記磁着性アジテーターを用い、反応チャンバー内の任意の2つの部分の間を移動することによって培地をゆっくりと機械撹拌し、(1)周囲にある磁場の引力、(2)アジテーターが反応チャンバー中の培地よりも密度が小さい場合には浮遊性、または(3)ビーズが反応チャンバー中の培地よりも密度が大きい場合には重力といった機構によって液体成長培地中に細胞を懸濁させたままにする、請求項2に記載のバイオリアクターシステム。
【請求項5】
前記磁着性アジテーターを使用し、細胞成長のための微細環境を作り出し、該微細環境は、前記機構によってそれぞれを動かした後に磁着性アジテーターが沈殿するにつれて、アジテーターの間に空間を含み、細胞成長を妨害し、幹細胞の非特異的な分化を減らし得る任意の過剰な混み合いまたは集塊を防ぐことができる、請求項4に記載のバイオリアクターシステム。
【請求項6】
前記調節可能な磁場を、
(1)電流および/または電圧を変えることによって、または電磁石の位置および向きを変えることによって、磁場を調節する電磁石によって作ることができるか、
(2)永久磁石の位置および向きを変えることによって磁場を変える永久磁石によって作ることができるか、または
(3)上の(1)および(2)の組み合わせによって作ることができる、請求項1に記載のバイオリアクターシステム。
【請求項7】
あらかじめ選択したプログラムを用い、または反応環境からの検出器およびセンサーによって得られるシグナルまたは情報に基づいて、バイオリアクターの磁場、潅流、反応チャンバーの反転およびアジテーターの移動を自動的に調節することができる、コンピューターによるプログラムおよびフィードバックシステムを含む制御システムをさらに含む、請求項1に記載のバイオリアクターシステム。
【請求項8】
前記細胞が、造血幹細胞、間葉幹細胞、線維芽細胞、ハイブリドーマ細胞、リンパ球、樹状細胞、昆虫細胞、胚幹細胞、種々の組織細胞、癌細胞並びに細胞株、形質変換された細胞および細胞株から選択される、請求項1に記載のバイオリアクターシステム。
【請求項9】
細胞を分離し、細胞および人工組織を成長させるためのバイオリアクターシステムであって、請求項6において調節可能な磁場によって制御されるか、または請求項7において制御システムによって制御される、反応チャンバーの反転およびアジテーターの機械攪拌を組み合わせることによって、細胞およびアジテーターを懸濁状態で保持することができる反応チャンバーおよびアジテーターを備える、請求項6又は7に記載のバイオリアクターシステム。
【請求項10】
細胞懸濁のために反応チャンバーの反転と細胞の機械攪拌の組み合わせを含む、請求項1に記載のバイオリアクターシステム。
【請求項11】
細胞および人工組織を成長させることは、低分子を含む灌流溶液が、低浸透区画から反応区画へ、さらに高浸透区画へと単一方向に膜を介して通り抜けるような保護灌流チャンバー中で行われる、請求項1に記載のバイオリアクターシステム。
【請求項12】
調節可能な磁場を、細胞マーカーによる細胞分離、細胞成長および人工組織の成長の間に、制御システムによって磁場の強度、方向または位置を変えることによって調節することができる、請求項1に記載のバイオリアクターシステム。
【請求項13】
細胞マーカーによる細胞分離が、
特異的な磁着性抗体または他の生体分子を標的細胞に結合させることと、
磁着性アジテーターまたはチャンバー壁のいずれかによって、または磁着性アジテーターおよびチャンバー壁の両方によって磁気的に標識された細胞を捕捉することと、
非標識細胞を捨てるか、または洗浄することと、
標的細胞を放出させることと、を含む、請求項1に記載のバイオリアクターシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、細胞培養および細胞選別のための多機能バイオリアクターに関する。
【背景技術】
【0002】
本出願は、一般的に、バイオリアクターに関し、さらに具体的には、細胞を成長させ、分離するバイオリアクターに関する。
【0003】
多くの種類の細胞、特に、造血幹細胞および免疫細胞は、培地中で有効に増殖させ、直接的に分化させ得る前に、元のサンプルから単離することが必要である。この単離手順は、細胞選別または細胞分離とも呼ばれる。以前、細胞選別および細胞培養は、それぞれ別個のシステムで行われており、この場合、まず標的細胞を単離し、次いで、培養容器に移す。この従来法は、用いるのが困難であり、細胞選別から細胞培養までに細胞が混入し、細胞が失われる危険性が高くなり、2つの完全に異なるデバイスおよびシステムが関与していた。新しいデザインを有する本願発明者の今回の発明によって、これら2つの異なる手順を1個の容器(チャンバー)で完了させることができ、そのため、混入および標的細胞の損失の危険性が最小限となり、操作効率が顕著に高まる。
【0004】
ある種の細胞は、培養物中の剪断応力に非常に弱い。例えば、剪断応力によって、非特異的な分化が起こり、幹細胞培養物中のアポトーシスが増加することがあり、幹細胞の増殖効率および直接的分化を顕著に低減させる。剪断応力が大きくなると、タンパク質発現中に非特的なタンパク質が多く放出され、目的のタンパク質の培養物中での比率が小さくなり、そのため、タンパク質の精製が増大する。静置培養には、最小限の剪断応力はあるが、静置培養中の細胞は、通常は、培養容器の底部に存在し、細胞が高密度状態のとき、栄養が十分に行き渡らない細胞もあり、そのため、大規模な細胞増殖には適していない。ある種のバイオリアクター(例えば、NASAの回転壁式容器(RWV)バイオリアクター)は、剪断応力を減らすように設計された。しかし、これらのバイオリアクターは、細胞を連続的に移動させ、攪拌し、および/または機械攪拌することによって、細胞を懸濁状態に維持しなければならない。バイオリアクターの動きを止めると、細胞は底部のどこかに蓄積すると思われるが、均一には分布せず、ほとんどの細胞成長にとって有害である。したがって、これらのバイオリアクターでは剪断応力は小さいが、これらのバイオリアクターを動かしているとき、培養した細胞にこの小さな剪断応力が連続的にかかることになる。本願発明において、バイオリアクターが静置状態であるとき、培養チャンバーの底部または磁気ビーズの表面に細胞を均一に分布させることができる。したがって、本発明は、懸濁状態および静置状態の両方で細胞に最良の成長条件を与える。
【0005】
ある種のバイオリアクターは、マグネットインペラーによって培地を機械攪拌し、細胞を懸濁状態に保持するように制御された磁気要素(特定的には、ブレードまたはバン)を使用する。この種のバイオリアクターは、特定の細胞の培養要求のために剪断応力をわざと高める。用途の違いに加え、本発明のバイオリアクターは、磁気要素であるブレードまたはケーンを使用せず、本発明のマグネットビーズは、マグネットビーズが磁場の中に存在しない場合には、実際には磁気を帯びておらず、磁場に置かれたときにのみ磁力を得ることができる。本発明のマグネットビーズは、インペラーによって制御されていないが、ビーズの移動に影響を及ぼす磁場強度の変化によって制御される。適切な微細環境(またはニッチと呼ばれる)は、ある種の細胞(例えば、幹細胞)の成長にとって非常に重要である。ある種のデバイスは、ニッチを作成するために固体材料を使用するか、またはニッチを作成するためにゲル状の物質を使用する。これらのデバイスを用い、細胞培養後に、特定の手順を用いて細胞をニッチから洗い出す必要があるか、または、ニッチを形成する材料を酵素で溶融または消化し、標的細胞を放出させなければならない。本願発明において、ビーズ間の空間は、通常は、細胞成長のためのニッチに由来し、磁場強度を変えることによってビーズが持ち上げられれば、細胞を簡単に放出させることができる。他の細胞培養システムは、ウェル状の培養プレート(例えば、一般的な96ウェル状プレート)、微細チャンバー(Hung 2005)または微細なふるい(Zhang 2009)によってニッチを構築することを試みている。本発明のバイオリアクターは、ビーズの移動によって、成長させるのに培地の流れを増すことが必要な細胞にとって、動的な微細環境が作られるため、ウェル状プレートよりも優れている。さらに、製造するときの課題が減り、使用後に滅菌することが簡単であり、ビーズの大きさを調整することによって、ニッチの大きさを簡単に修正することができるため、微細チャンバーおよび微細なふるいよりも優れている。
【0006】
多くの細胞培容器(チャンバー)は、例えば、一般的な細胞培養フラスコ、気体透過性の袋、回転壁式容器などのバイオリアクターで使用するために設計されてきた。これらの容器は、細胞を希釈することができ、培地を変えることができるような一般的な灌流システムとともに使用することができる。しかし、これらの容器を用いて培地を変えている間、サイトカイン、タンパク質および細胞成長のための他の高価な物質および細胞産物が培地から同時に除去される。また、一般的な透析プロセスの効率は、十分なほど高くない。本発明で設計された細胞培養チャンバーは、浸透チャンバーと培養チャンバーの両側とのコロイド浸透力の差を利用し、特定の大きさのサイトカイン、ペプチド、タンパク質および他の材料を失うことなく、透析膜を通して迅速に培地を交換することができる。この細胞培養チャンバーの設計によって、新しい灌流手法が与えられ、勾配浸透灌流システムと呼ばれるシステムが与えられる。
【0007】
ほとんどのバイオリアクターは、接着性細胞または懸濁細胞のいずれかを培養するように設計された。部分的に接着性の細胞の成長を補助するようなバイオリアクターは、まだ報告されていない。本発明のバイオリアクターは、懸濁細胞、接着性細胞および部分的に接着性の細胞を含め、ほとんどのあらゆる細胞に使用することができる。
【0008】
バイオリアクターの動きを制御するのにコンピューターを用いることが極めて一般的であり、多くのバイオリアクターは、プログラム処理可能である。本発明では、(1)磁場の強度および方向、(2)細胞培養チャンバーをひっくり返す周波数および速度、(3)上の(1)および(2)の結果としてのマグネットビーズの周波数および速度は、あらかじめ選択したプログラムおよび/または検出器から受け取ったデータに応答し、バイオリアクターにフィードバックを送り返すプログラムによって制御されることを強調しておく。
【0009】
バイオリアクター制御におけるコンピューターの利用と同様に、ある特定の光源(例えば、レーザープロジェクター)を用いるいくつかの細胞密度検出器が、細胞培養中の細胞濃度を監視するために設計されてきた。検出器またはセンサーから得られたデータを用い、培地を変えることが必要な場合に細胞を希釈することが必要かどうかを決定する。本発明のバイオリアクターにおいて、細胞密度検出器は、一般的な光源を使用し、そのデータを特定的に使用して、磁場の強度、細胞培養チャンバーをひっくり返す速度および周波数を調整し、さらに、マグネットビーズの移動速度および周波数を間接的に調整する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
バイオリアクターは、典型的には、培養物内で細胞を成長させるために使用される。しかし、多くの種類の細胞は、培地中で有効に増殖させ、直接的に分化させ得る前に、元のサンプルから単離することが必要である。この単離手順は、細胞選別または細胞分離とも呼ばれる。典型的には、細胞選別および細胞培養は、別個のシステムで行われており、この場合、まず標的細胞を単離し、次いで、培養容器に移す。この従来法は、用いるのが困難であり、細胞選別から細胞培養までに細胞が混入し、細胞が失われる危険性が高くなり、2つの完全に異なるデバイスおよびシステムが関与している。
【0011】
さらに、多くのバイオリアクターは、バイオリアクターの内容物を混合するために、回転するインペラーなどを使用する。残念なことに、これにより、細胞を破壊しかねない剪断応力が細胞に加わり、システムの効率を低下させ、廃棄産物(例えば、非特異的なタンパク質の発現など)の放出を生じる。さらに、ある種のバイオリアクターでは、細胞培養チャンバーの底部または細胞培養チャンバーの他の位置で細胞が凝集することがある。これらの細胞が培養チャンバー内で凝集することは、効果的な細胞成長の妨げとなる。したがって、細胞に与えられる剪断応力も最小限にしつつ、細胞を成長させ、分離することができる効率的なバイオリアクターの顕著な必要性が存在する。
【課題を解決するための手段】
【0012】
一実施形態では、細胞を成長させ、分離するためのバイオリアクターシステムは、第1部分および第2部分を有する内側を含む細胞培養チャンバーと、培養チャンバーの内側に配置され、内側の第1部分と内側の第2部分の間を移動することが可能なアジテーターと、細胞培養チャンバーに連結し、内側の第1部分と内側の第2部分の間をアジテーターが移動するように操作可能な制御システムとを備える。
【0013】
別の実施形態では、細胞を成長させ、分離する方法は、第1部分および第2部分を有する内側を含むチャンバーを与えることと、内側の第1部分と内側の第2部分の間を移動することが可能なアジテーターを内側に配置することと、細胞培地をチャンバーの内側に運ぶことと、標的細胞をチャンバーの内側に移すことと、細胞と培地が混合するように、第1部分と第2部分との間をアジテーターを移動させることと、チャンバーの内側にあるかなりの量の標的細胞を維持しつつ、チャンバーの内側から廃棄物を除去することとを含む。
【0014】
さらに別の実施形態では、細胞培養チャンバーの内側は、細胞培地容器と流体が行き来できるように連結し、容器から細胞培地を受け取ることができるように作られた第1の区画と、アジテーターが内部に配置された第2の区画と、第1の区画と第2の区画との間に配置され、細胞培地が第1の区画から第2の区画へと選択的に流れることができるように作られた第1の膜と、バッファー容器と流体が行き来できるように連結し、バッファー容器からバッファーを受け取ることができるように作られ、さらに、廃棄物容器との流体が行き来できるように連結し、廃棄物が第3の容器から廃棄物容器に流れることができるように作られた第3の区画と、第2の区画と第3の区画との間に配置され、第2の区画から第3の区画へと培地および廃棄物が選択的に流れることができるように作られた第2の膜とを備える。
【0015】
以下の記載と合わせて考えた場合に、図面は、保護されることを望む発明の主題の理解を助ける目的で提示されている。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】
図1は、実例となるバイオリアクターを示す模式図である。
【
図2】
図2a〜2fは、一連のチャンバー内でのアジテーターの移動を示すバイオリアクターの一連の模式図を示す。
【
図3】
図3は、チャンバーの模式的な等軸測視図である。
【
図4】
図4は、チャンバーの模式的な側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
図1を参照すると、細胞を成長させ、分離するためのバイオリアクターシステム10が示されている。システム10は、細胞培養チャンバー15と、アジテーター20と、制御システム30とを備える。
【0018】
細胞培養チャンバー15は、細胞培養チャンバー内に配置された細胞培地内で標的細胞を受け入れ、成長させるための内側35と、第1末端40と、第2末端45とを備える。本明細書で使用する場合、「標的細胞」は、チャンバー15内に配置され、チャンバー15内で成長する細胞を指す。本開示には、標的細胞を成長させるという内容が与えられているが、このシステムを、化学物質または任意の他の適切な溶液または材料を混合するために使用してもよいことは理解されるだろう。さらに、第1末端40および第2末端45は、それぞれチャンバー15の上部および底部にあるものとして示されているが、末端40、45は、互いに任意の適切な配置に(例えば、水平な面に)あってもよく、それも本開示の範囲内にあることが理解されるだろう。以下に記載するように、チャンバー15は、1つ以上の内側区画を備えていてもよい。それに加え、当業者には明らかであろうが、チャンバー15は、剛性材料、可撓性材料、剛性材料と可撓性材料の組み合わせ、気体透過性材料または任意の他の適切な材料を含め、任意の適切な材料から作られていてもよい。チャンバー15は、さらに、チャンバーの内側35と1つ以上の容器との間を流体が行き来できるための1つ以上の出入口を備えていてもよい。実例となる容器としては、限定されないが、細胞培地容器、廃棄物容器、バッファー容器、CO
2容器、または任意の他の適切な容器が挙げられる。
【0019】
ここで
図3を参照すると、実例となる代替的なチャンバー15が示されている。この実施形態では、チャンバー15は、第1の区画75と、第2の区画80と、第3の区画85とを備えている。第1の区画75は、培地を第1の区画に加え、および/または第1の区画から取り出すことができるように、第1の区画と1つ以上の容器(例えば、細胞培地容器)との間を流体が行き来できるような連結を与えるための1つ以上の出入口18a、バッファーを第1の区画に加え、および/または第1の区画から取り出すことができるようなバッファー容器、廃棄物を第1の区画75から取り出し得るような廃棄物容器、CO
2を第1の区画に加え、および/または第1の区画から取り出すことができるようなCO
2容器、または任意の他の適切な容器を備えていてもよい。第1の区画75と第2の区画80は、第1の膜90によって隔離されている。第1の膜90は、第1の区画75から第2の区画80へと培地を選択的に流すことができるように作られている。膜90は、貫通部、開口部または任意の他の適切な構造を含んでいてもよく、および/または第1の区画75から第2の区画80へと培地を流すことができるように他の様式で半透過性である。一実施形態では、膜90は、透析膜である。膜90は、限定されないが、セルロースおよびセロファンを含む任意の適切な材料から作られてもよい。
【0020】
第2の区画80は、アジテーターを内部に保持し、アジテーターが、
図1に関連してすでに記載したように区画内を移動し得るような構成である。標的細胞は、典型的には、第2の区画80でも同様に成長し、保持される。第2の区画80は、1つ以上の容器(例えば、第1の区画75に関して記載した種類の容器)の間を流体が行き来できるような連結を与えるための1つ以上の出入口18bを備えていてもよい。第2の区画80と第3の区画85は、第2の膜95によって隔離されていてもよい。第2の膜95は、第2の区画75から第3の区画85へと培地および/または廃棄物を選択的に流すことができるように作られている。膜95は、貫通部、開口部または任意の他の適切な構造を含んでいてもよく、および/または第2の区画80から第3の区画85へと培地および/または廃棄物を流すことができるように他の様式で半透過性である。一実施形態では、膜95は、透析膜である。膜95は、限定されないが、セルロースおよびセロファンを含む任意の適切な材料から作られてもよい。第3の区画85は、第3の区画85と、1つ以上の容器(例えば、第1の区画75に関して記載した種類の容器)との間を流体が行き来できるような連結を与えるための1つ以上の出入口18cを備えていてもよい。さらに、少なくとも1つの実施形態において、チャンバーの外側の少なくとも一部が、気体透過性材料から作られていてもよい。チャンバーの外側の少なくとも一部が気体透過性材料から作られている場合、システムは、ある場合、ただしすべてが必須ではないが、チャンバーへの直接的な気体注入と、培地のpHを維持する構成要素を含まない。第1の区画75および第3の区画85は、第2の区画80に対して任意の適切な位置に配置されていてもよく、本開示は、いかなる様式でも、第1の区画75と第3の区画80との間に配置された第2の区画80に限定されない。さらに、任意の適切な数の区画を使用してもよく、本開示は、3つの区画のみに限定されないことが理解されるだろう。
【0021】
一実施形態では、比較的少量の大きな分子および/または大きな極性の分子を含む適切な溶液を含む培地が第1の区画75に与えられ、細胞成長のための適切なコロイド浸透性を有する同じ培地または同様の培地が第2の区画80に与えられる。適切な培地は、標的細胞を成長させ、または維持するために用いられる任意の培地であってもよい。第1の区画75および/または第2の区画80の培地と比較して、もっと大きなコロイド浸透力を作り出し、維持するために、もっと濃度が高い大きな分子および/または大きな極性の分子を含むバッファーが第3の区画85に与えられる。第3の区画85のためにもっと大きなコロイド浸透力を作り出し、維持するために用いられる材料としては、限定されないが、PEG 80000、アルブミン、他のタンパク質または任意の他の適切な材料または溶液が挙げられる。膜90、95は、同じ透過性を有していてもよく、または異なる透過性を有していてもよく、培地および/または新しい細胞の成長から出た廃棄物が、第1のチャンバー75および/または第2のチャンバー80から浸透によって第3のチャンバー85へと流れてもよい構成になっている。制御システムは、それぞれの区画75、80、85内に一定容積が維持され、一定の浸透力が維持され、第2の区画80への新しい培地の供給が維持されるように、1つ以上の区画75、80、85からの培地、バッファーおよび/または廃棄物の潅流および排出を制御してもよい。それに加え、任意の適切な検出デバイス、機構または方法による制御システムは、標的細胞の成長に関与する任意の適切なパラメーター、例えば、限定されないが、標的細胞の数の変化、pH、CO
2、グルコース、カルシウム、カリウム、ナトリウム、温度、湿度または任意の他の適切な力を監視し、第2のチャンバー内のアジテーターの移動間隔、周波数および/または速度を調節し、および/または培地の量、培地の種類、バッファーの量、バッファーの種類、CO
2の量を調節し、または、チャンバー内の標的細胞の成長を向上させるか、または促進するように、制御システムの測定に基づく任意の適切な調節を行ってもよい。
【0022】
ここで
図4を参照すると、別の実例となるチャンバー15が示されている。この実施形態では、チャンバーは、チャンバーの内側35と廃棄物容器との間を流体が行き来できるような連結を与えるための1つ以上の出入口100を備えていてもよい。チャンバー15は、さらに、チャンバーの内側35と細胞培地容器との間を流体が行き来できるような連結を与えるための1つ以上の出入口110を備えていてもよい。さらに、チャンバー15は、チャンバー内側35とバッファー容器との間を流体が行き来できるような連結を与えるための1つ以上の出入口110を備えていてもよい。さらに、チャンバーは、アジテーターをチャンバー内側35に受け入れるための1つ以上の出入口115をさらに備えていてもよい。一実施形態では、チャンバー15は、テフロン(登録商標)FEPから作られている。この具体的な実施形態は、標的細胞がアジテーターに接着するか、または他の様式で接続し、廃棄物がチャンバー内側35から流され、標的細胞がチャンバー内側35にとどまる場合に有用であろう。しかし、チャンバー15は、任意の適切な材料から作られていてもよく、それも本開示の範囲内にあることが理解されるだろう。
【0023】
アジテーター20は、チャンバー内側35の中に配置され、チャンバーの第1末端40とチャンバーの第2末端45との間を移動することができる。または、アジテーター20は、チャンバー内側35の中で、任意の2つ以上の点の間、または2つ以上の部分の間を移動するような構成であってもよい。実例となる実施形態では、アジテーターは、複数のビーズ21を含む。ビーズ21を示す任意の実例となる実施形態が、任意の代替的なアジテーター構造を使用してもよく、それもまた本開示の範囲にあり、任意の具体的な実例となる実施形態が、アジテーターとしてビーズを排他的に使用することに限定されないことが理解されるだろう。一実施形態では、ビーズ21は、磁着性材料、例えば、シリコーンスチール、Fe
3O
4、または任意の他の適切な磁着性材料から作られる。本明細書で使用する場合、磁着性は、アジテーター(例えば、ビーズ)が、磁場にさらされると磁荷を保持するが、磁場からはずれると、または磁場がアジテーター近傍からはずれると、例えば、磁場発生器の電源を切ると、他の方法で磁荷を保持することはないことを意味する。磁着性材料は、典型的には、それぞれのビーズ21のコアを含む。次いで、磁着性コアを任意の適切な材料でコーティングしてもよい。一実施形態では、磁着性コアをポリスチレンでコーティングするが、磁着性コアを任意の適切な材料でコーティングしてもよく、それも本開示の範囲内にあることが理解されるだろう。例えば、限定されないが、磁着性コアを任意の適切な熱可塑性ポリマーまたは熱硬化性ポリマーでコーティングしてもよい。ビーズ21は、磁着性材料から作られるものとして示されているが、ビーズが、磁着性または非磁着性の任意の適切な材料から作られてもよく、それも本開示の範囲内にあることが理解されるだろう。さらに、ビーズ21が、それぞれ、チャンバー15内で細胞が成長するにつれて、標的細胞がビーズに接着するように任意の適切な材料でコーティングされてもよいことが理解されるだろう。さらに、標的細胞が接着するであろう特定の材料でコーティングされていないビーズも本開示の範囲に入ることが理解されるだろう。ある実施形態では、細胞培地内で浮遊するビーズ21を含むことが望ましいだろう。したがって、ビーズのコアは、空気だまりまたは気泡、軽い泡またはプラスチックまたはビーズ21が培地内で浮遊できるような任意の他の適切な材料を含んでいてもよい。
【0024】
ビーズ21は、ビーズが積み重なったとき、1つ以上のニッチまたは微細環境がビーズ21の間にある空隙に形成されるか、または作られてもよいように作成されてもよい。ある実施形態では、これらのニッチは、ニッチ内でのさらなる標的細胞の成長を促進してもよい。一実施形態では、ビーズが実質的に球形の場合、それぞれのビーズ21の直径は、適切なニッチを作成するために1mm〜10mmであってもよい。しかし、ビーズ21は、ビーズ21が積み重ねられるとき、1つ以上の適切なニッチが作られてもよいように、任意の適切な大きさおよび/または形状を有していてもよいことが理解されるだろう。さらに、少なくともいくつかのニッチが、チャンバー内側のいくつかのビーズと1つ以上の壁との間に作られてもよいことが理解されるだろう。
【0025】
代わりとなる実施形態では、
図5に示されるように、アジテーター20aは、内部に複数の開口部22を有する平面部材21aであってもよい。平面部材21aの断面は、アジテーター20aがチャンバー内側35を移動し得るように、チャンバー15の断面形状と相補的であってもよい。開口部22は、アジテーター20aがチャンバー内側35の中を動くにつれて、アジテーター20aを通って培地が流れることができるものであってもよい。アジテーター20aは、磁着性材料または非磁着性材料から作られてもよく、浮遊性または非浮遊性であるように作られてもよく、および/またはビーズ20に関してすでに記載したようにコーティングされていてもよい。
【0026】
再び
図1を参照すると、制御システム30は、システム10の操作を制御するためにコントローラー55およびコンピューター60のいずれかまたは両方を備えていてもよい。または、システム10を手動で動かしてもよい。制御システム30は、チャンバー15に脱着可能に接続するような構成である。制御システム30は、チャンバー15を受け入れるカセット50を備えていてもよいが、チャンバー15は、任意の適切な手段または構造(例えば、クリップ、フック、マグネット、フック−ループアセンブリ、フリクションフィットなど)によって制御システム50に接続していてもよく、それも本開示の範囲内にあることが理解されるだろう。
【0027】
制御システム30は、さらに、光源2と、チャンバー15の中で細胞の数を検出し、チャンバー15の中の細胞数の変化などを検出し、その結果を制御システム30に報告するための細胞検出器9とを備えていてもよい。しかし、細胞の数または細胞の数の変化を監視する当該技術分野で既知の任意の検出器、機構または技術を使用してもよく、それも本開示の範囲内にあることが理解されるだろう。さらに、任意の適切な検出器、機構または方法による制御システム30は、標的細胞の成長に関与する任意の適切なパラメーター、例えば、限定されないが、標的細胞の数の変化、pH、CO
2、グルコース、カルシウム、カリウム、ナトリウム、温度、湿度または任意の他の適切な因子を監視し、チャンバー内のアジテーターの移動周波数および/または速度を調節し、および/または培地の量、培地の種類、バッファーの量、バッファーの種類、CO
2の量を調節し、または、チャンバー15内の標的細胞の成長を向上させるか、または促進するような任意の制御システムの測定に基づく任意の適切な調節を行ってもよい。
【0028】
制御システム30は、アジテーターがチャンバー15の内側35の中を移動するように操作可能である。このことは、さまざまな様式で達成されてもよい。実例となる実施形態では、制御システムは、第1の位置と第2の位置との間をチャンバー15が回転するように操作可能なモーター65を備えている。以下に記載するように、第1の位置と第2の位置は、ほぼ180°離れているが、第1のおよび第2の位置が、互いに任意の適切な角度関係を有していてもよく、それも本開示の範囲内にあることが理解されるだろう。チャンバー15は、水平面で回転してもよく、垂直面で回転してもよく、または任意の適切な様式で回転し、ずれるか、すべるか、または他の様式で動き、チャンバー15の中をアジテーター20が移動してもよい。
【0029】
それに加え、制御システム30は、チャンバー15内のビーズ21が動き、標的細胞および培養培地を混合するようにビーズ21または他のアジテーター20を励起させるために第1の磁場発生器70および第2の磁場発生器72を備えていてもよい。実例となる実施形態では、それぞれの磁場発生器は、電源を入れると磁場が発生し、電源を切ると磁場の発生が止む電磁石である。電源を入れると、それぞれの磁場発生器は、アジテーター20(例えば、ビーズ21)を電源が入った磁場発生器の方に引き寄せる。代わりとなる実施形態では、永久磁石を使用してもよく、この場合、制御システム30は、チャンバー15の近傍からマグネットをはずすか、または他の方法で、チャンバー15に入り込んだマグネットからの磁場を遮断するように操作することができる。実例となる実施形態が、チャンバー内でアジテーターを動かすためにチャンバーの回転および電磁石を使用する場合、チャンバーの回転を単独で使用してもよく、または電磁石を単独で使用してもよいことが理解されるだろう。さらに、チャンバー内でアジテーターを動かすための任意の技術を使用してもよく、それも本開示の範囲内にあることが理解されるだろう。
【0030】
ここで
図2a〜2fを参照すると、システム10の操作が非限定的な例によって示されている。標的細胞および細胞培地がチャンバー15の内側35に運ばれる。この実施形態では、ビーズ21は、浮遊性であり、チャンバー15内の細胞培地の上部付近に浮いている。
図2aにおいて、第1の磁場発生器70の電源が入っており、ビーズ21は、チャンバー15の第1末端40付近に保持されている。次いで、チャンバー15を
図2bに示すような位置まで約180°回転し、第1の磁場発生器70は、チャンバーの第1末端40付近にビーズ21を維持する。次いで、第1の磁場発生器70の電源を切ることによって、
図2cに示すように、ビーズ21がチャンバー15の第2末端45に向かって浮き始める。ビーズ21が、標的細胞が接着するコーティングを含む実施形態では、片方の末端から他の末端へのビーズ21の移動によって、新しく成長した標的細胞が集まるだろう。廃棄物をチャンバー15から流しつつ、および/または新しい培地をチャンバー15に導入するとき、かなりの量の元々の標的細胞および新しく成長した標的細胞がチャンバー内にとどまるように、標的細胞をビーズ21に接着させてもよい。または、標的細胞に特異的な磁着性抗体をチャンバー15の内側に加えることによって、抗体が標的細胞に結合し、磁場がチャンバーに導入されるとき、抗体が結合した標的細胞は、磁着性ビーズ21および/または磁場発生器に隣接するチャンバー壁に脱着可能に接続するだろう。この実施形態では、結合していない細胞および/または廃棄物がチャンバーから流されつつ、および/またはかなりの量の元々の標的細胞および新しく成長した標的細胞がチャンバー15内にとどまるように、新しい培地をチャンバーに導入している間、磁場発生器70、72のいずれかまたは両方の電源を入れたままでもよい。または、磁気試薬(例えば、Annexin Vまたは他の適切な試薬)を使用し、ビーズに、システム10から流された損傷した細胞または死んだ細胞、健康な標的細胞に接続させてもよい。さらに、アジテーターを使用することなく、磁着性抗体および/または試薬をチャンバー15中で使用してもよく、それによって、チャンバーが流されるとき、標的細胞または損傷を受けた/死んだ細胞がチャンバーに保持されていてもよいことが理解されるだろう。
【0031】
再び図を参照すると、ビーズ21がチャンバーの第2末端45付近にある場合、第2の磁場発生器72の電源を入れることによって、ビーズ21は、チャンバーの第2末端45付近に保持され(
図2d)、チャンバーは、
図2eに示す位置まで回転する。次いで、第2の磁場発生器72の電源を切ることによって、
図2fに示すように、ビーズ21がチャンバーの第1末端40に向かって浮くだろう。当業者によって理解されるように、このプロセス中に種々の添加剤、培地、バッファー、CO
2などをチャンバーに任意の所与の点で選択的に加えてもよく、および/またはすでに記載したような制御システムによって行われる測定に基づいて、新しい細胞成長を促進または向上させるために、廃棄物を選択的に除去してもよい。
【0032】
代わりとなる実施形態では、チャンバーが回転することによってビーズがチャンバー内を移動するように、さらに磁場をかけることなく、非浮遊性ビーズを使用してもよい。ここで、チャンバーが回転することによる重力および遠心力を使用し、チャンバー15内の2つ以上の点の間をビーズが動く。さらに別の代替例では、ビーズがチャンバー内の2つ以上の点の間を移動するように、チャンバー15を回転させることなく、第1の磁場発生器70および第2の磁場発生器72の電源を交互に入れてもよい。上の例はビーズ21をアジテーターとして使用するが、限定されないが、
図5のものを含め、適切なデバイスをアジテーターとして使用してもよく、それも本開示の範囲内にあることが理解されるだろう。さらに、チャンバー内でアジテーターを移動させる任意の手段または技術を使用してもよく、それも本開示の範囲内にあることが理解されるだろう。
【0033】
さらに、チャンバー15が気体透過性材料から作られるか、またはそれ以外の様式で気体透過性部分を含む場合、システムが、CO
2インキュベーターまたはCO
2室の中に配置されていてもよいことが理解されるだろう。CO
2インキュベーターまたはCO
2室がなく、またはチャンバーになんら気体透過性部分がない場合、試薬(例えば、HEPES)を使用してもよく、または、CO
2をCO
2容器からチャンバーに直接注入してもよい。
【0034】
本発明およびその利点が特定の実例、非限定的な実施形態の観点で開示されてきたが、添付した特許請求の範囲によって定義される本発明の範囲から逸脱することなく、種々の変更、置き換え、入れ替え、改変を行うことができることを理解すべきである。任意の一実施形態と合わせて記載された任意の特徴を他の実施形態にも適用することができることが理解されるだろう。