(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の一実施形態を説明する。各実施形態の中で説明する各案は関係する他の実施形態においても適用することができる。
図1ないし
図3は大規模型津波避難装置についての一実施形態を示すもので、同装置を洪水や竜巻などの避難用以外に町内会の集会や祭り、あるいは常時か一時的な出店、店舗などの用途として利用することもできる。大規模とは、数十人程度でなく数百人以上、例えば、近隣地域住民全員が避難可能な程度のものをいう。
【0010】
これらの図において、1は車道で片側1車線や複数車線のもので一方通行型であってもよく、その左右両脇には、車道1よりも少し高くした歩道(あるいは自転車歩行者道)2,2が設けられている。車道1としては、様々な幅員のものがあるが、この実施形態では、片側のみで5m、両側で10m、歩道2は3m前後とされている。車道1の中央には、中央分離帯3が
図3のように短くあるいは長く設けられる場合がある。
【0011】
5は歩道橋で避難装置の一部を構成するもので、既設、新設のいずれかであるが同図示の歩道橋5は新設、即ち、避難装置と共に設置されるものであり、既設の歩道橋5を利用する場合もあり、その場合は更に上階へ登るための登降手段を付加するなど一部に改良を加えることで対応する。
歩道橋5は、H鋼や溝形鋼などによる縦横の梁体を底面内に配しその上面に板面である歩道路面6を張り付けて構築した渡架躯体7を車道1上の5〜6m高さのところに車道1とは直交する形で設けるとともに両端において各歩道2から立設した側支柱8を貫通状に介して固定支持してあり、さらに、渡架躯体7の両端には階段である第1登降手段9を両上がり式として固定して備えている。この第1登降手段9自体も剛強化のため図示しないが支柱で支持することがある。
【0012】
側支柱8は丸鋼管(あるいは角鋼管)からなり、歩道橋5を支持する以外にその前後に2本立設配備してある。側支柱8は、左右各歩道2に沿って前後3点配置をなしその3点の中心間aが15mの前後間隔をなし左右中心間がb=13mの間隔をなして垂直に立設されている。各側支柱8は、鋼管杭(図示省略)を基材としその上端に設けたコンクリート基礎を介して地上から高さ15m程度をもって立設されている。11は前後支柱で丸鋼管(あるいは角鋼管)からなり、地上から15m程度の高さをもって車道1の中央ライン上であって側支柱8の前後のものを結ぶ線上から前方および後方へc=6.5m程度の先行した位置に立設されている。Tは津波が押し波として襲来してくる想定方向、−Tは引き波の想定方向を示し、これらT,−Tは、先の大震災時にもみられるように、市街地が車道1の両脇に店舗や住居などを存してそれらにより自ずと津波の流れが規定されることにより車道1の通行方向に対応するものと想定される。13は緩衝杭で金属丸パイプ製やアングルなどにより形成されて側支柱8および前後支柱11のそれぞれ前側あるいは後側位置に地上より10m程度の高さとなるように立設配備されている。これら緩衝杭13は津波T、−Tから側支柱8や前後支柱11が直接衝撃などを受けるのを抑制するためのものである。
【0013】
15は下避難部、16は上避難部であり、側支柱8や前後支柱11のなす平面に対応するように対応する2辺を前後に長い辺とした長六角形をした構造体で、幅dは17m程度で前後長は45m前後の広域避難面を提供するものになっている。下避難部15と上避難部16は、左右一対の辺を他の辺よりも長い辺とした長六角形(正六角形でもよい)をした外梁と同外梁内に縦横に配された内梁による受梁18とそれらの上面に張設された下避難ステージ19および上避難ステージ20とを備えるとともに、外周防護壁21と防護手摺22とを備えてなるものである。各避難部15,16の前後端の部分は、津波流T、−Tの襲来してくる向きに山形に突出する波切り促進部Xを有しその端面は波切り促進面X1として津波流T、−Tや漂流物などを左右に側脇流となるように流すことにより直撃を避ける構造となっている。下避難ステージ19は高さH1が12mと高く設定され、上避難ステージ20はそれより3m高くH=15mとされている。この高さH1およびHは、その設置地域に想定される津波襲来の想定高さを超える高さに設定するものとする。23は中央支柱で、中央分離帯3の前後位置から立設され下避難部15を貫通し上避難部16に結合された金属パイプで、上下避難部16,15をその中央部分において避難装置全体を有効に支持するもので、前後には緩衝杭13を備える。尚、この中央支柱23は、
図3の上欄に示すように、前後の支柱23を1つにまとめた長円型支柱23′にすると、避難装置をさらに有効に支持することができるようになる。
【0014】
登降手段は、第1登降手段9の他に、第2登降手段24および第3登降手段25が設けられている。第2登降手段24は、歩道橋5と下避難部15との間を連絡し、第3登降手段25は、下避難部15と上避難部16との間を連絡するもので、第1〜第3登降手段8,24,25は、図示では階段式であるが、スロープ式にしたり、階段とスロープとの併設型にしたり、さらには
図2の右上欄に示すように、ラセン状階段(あるいはスロープ)とすることもある。26は第4登降手段で、スロープ式あるいは階段式またはこれらの併設型のもので、歩道2と下避難部15間を直接連絡するもので、この登降手段26については、避難部15,16を斜め方向から支持して避難装置を剛性化するが、津波流T、−Tの側脇流への流れに障害をもたらすことも想定されしかも第1、第2登降手段8,24が設けられていて避難するには充分であることもあって省略することもある。
前記歩道橋5の渡架躯体7は、
図3に示すように、津波流T,−Tを左右に切り分けるよう波切り促進面X1付きで山形に突出した部分である波切り促進部Xを有する形に形成してもよい。
【0015】
尚、上避難部16あるいは下避難部15上には、
図2に示すように、4本支柱型の取付架台28を介して底面高さが1.8ないし2.5mになるように固定した安全シェルター29を設置してもよい。このシェルター29は、底面に避難口30が開設され同避難口30に登降手段(階段やスロープ)付きの底蓋31が取付けられており、底蓋31は内部において操作可能なチェーンブロックなどの倍力揚降器32によりリンクチェーンなどを介して開閉・密閉化可能になっている。シェルター29は、避難口30以外は密閉空間とされ避難口30は小さい底面開口であるので、そのままでも津波流が浸入してくるおそれはなく、従って、下避難部15を越えて上避難部16まで津波が襲ってくるような場合、上避難部16上の避難者は避難口30からシェルター29内に避難し、最後に安全を期すため底蓋31を閉めておくことにより津波が鎮まる間安全に避難しておくことができる。このシェルター29は、
図1に仮想線で示すように複数並列配備したり1個あるいは2個でなる大きな収容容量をもったものにしてもよい。また、同シェルター29は、密閉型コンテナのようなケーシング体の立面に側面蓋を開閉自在に装備した形式のものにしてもよい。この形式のコンテナを収納庫として上あるいは下避難部16,15に固定式で配備して非常時に必要とされる備品を収納しておくようにしてもよい。
【0016】
さらに、前記実施形態では、歩道橋5を下避難部15とを併設したが、
図4に示すように、歩道橋5は下避難部15に統合した形としてもよい。この場合、下避難部15は歩道橋を兼ねるので5m程度に低く設定する。
また、前記実施形態では避難部15,16の前後に波切り促進面X1付き波切り促進部Xを備えた長六角形としたが、
図5に実線で示すように左右に長辺部分がなく波切り促進部X、Xのみでなる平面菱形にしたり仮想線で示すような平行四辺形にしてもよい。いずれの場合も津波流T,−Tを側脇方へと流し、避難装置への負荷を大きく軽減して防護するものとなる。さらに、
図6に示すように、避難部15,16は、前後に半丸状の波切り促進部X、X部分を有する長円形状にしてもよく、この場合も避難装置への負荷が軽減され防護され得るものとなる。尚、
図5および
図6の実施形態において、35は登降手段で、36は通口であり、通口36は、登降手段35の幅に対応する狭いものでなく広幅にして避難部15,16の底面を流れてくる津波流T、−Tが噴上げて浮力を軽減するようにしてある。また、
図5の左上欄に示すように、支柱11が角パイプである場合、その角稜部を津波流Tの襲来が想定される方向(車道の走行方向と同じ)に向けるようにすれば、津波流Tが切り分けられて負荷が軽減されるようになる。この角パイプの支柱11の向きを特定することはそれ自体で独立した発明を構成し、他の実施形態でも同様に適用される。
【0017】
上記のように、平時は、第1登降手段9と歩行路面6により歩道橋5を利用することができる。
図1ないし
図3の実施形態の場合、第2登降手段24および第4登降手段26の入口は破壊により初めて通過可能なタイプの閉止扉で閉じられているので、それより階上には勝手に侵入することはできないようになっている。下避難部15などで集会が行われる場合には、前記閉止扉をロック解除することで入ることは可能である。津波流の襲来が警報で知らされると、近場の住民は第1〜第4登降手段9、24、25,26を利用して下避難部15や上避難部16へと避難する。
避難部15,16の前後部分が、波切り促進面X1を有する山形や半丸形などの波切り促進部Xとして形成されているので、襲来してきた津波流T,−Tや漂流物を側脇方向へ流し去るように作用するので、上、下避難部16,15は津波流T、−Tや漂流物から過大な衝撃や負荷を受けるおそれがなく避難装置並びに避難者が津波から護られるものとなる。歩道橋5についても
図3の実施形態のように波切り促進部Xを突設しておけば、歩道橋5が護られる。
【0018】
前記実施形態では、上下の避難部16,15には、底面を津波流T,−Tが通過してゆくため浮力が発生し、この浮力が支柱の引き抜き力などとして作用するため、装置の損壊につながるおそれがある。そのため、
図7に示すように、波切り促進面X1の下側に上からみて山形をなす下部波切り促進面X2を右欄図のように別体式とした補助板37の取り付けにより形成すれば、津波流Tが避難部16,15の底域に流れず空域化することにより浮力が軽減され、装置の損壊が防止されようになる。補助板37は波切り促進面X1の板材に一体に形成してもよい。また、
図7の右上欄に示すように、第1避難部15および第2避難部16の山形先端部をの全体を背の高い補助板42により覆ってその前面を波切り促進面X3として下避難ステージ19上の避難者を津波流から護るように構成してもよい。この場合、波切り促進面X3は、図示のように下側の波切り促進面X1をも一体化して構造的に強いものにすることができる。
【0019】
一方、
図2および
図3に示すように、側支柱8や前後の支柱11などの前方には緩衝杭13が対向状に立設されて津波流T、−Tや漂流物による直撃を避けるようにしてある。こうした緩衝杭方式は従来からあるが、これまでの緩衝杭13は、例えば、
図3の左端に示すように、支柱8,11…より少し小径の丸パイプ製とししかも支柱8,11…の位置より2乃至3m離れた前方に配置していたため、漂流物の支柱11へのダイレクトな衝突は喰い止めるものの津波流Tに対しては矢印Yのように波切りはされるがその背方において再度集束流となって支柱11にダイレクトに作用してしまう問題があった。そうなると支柱11には過大負荷が掛かってしまい、倒壊につながるおそれもでてくる。
【0020】
そこで、
図7および
図8に示すように、丸あるいは角パイプでなる支柱11の横幅(直径)よりも広い幅をもつアングル材により緩衝杭38を立設し、同緩衝杭38の突側を津波流のくる方向に向けるとともに、同緩衝杭38の後端と支柱11前端との間Lを例えば、20〜25cm程度に接近させて配置したものである。このように接近させて配置すれば、津波流Tが遅目の速度であっても支柱11に当るようなことがない。支柱11は直径50cm、アングル材は1辺を50cmのものとするが、これら各寸法は限定されないもので、基本は、津波流Tが緩衝杭38により拡がるがその後方への流れの範囲内に支柱11が対応しないようにすることにある。従って、同図の右欄に示すように、緩衝杭38の幅が支柱11よりも多少狭くても拡がる流れの中に支柱11が対応しなければこの発明に含まれる。
図8の右欄のように、緩衝杭38の前方に補助緩衝杭39を配置してもよい。補助緩衝杭39と緩衝杭38とは連結具40によって結合すれば両者は安定し緩衝効果が高まる。このように第1段の補助緩衝杭39と第2段の緩衝杭38とを組み合わせると、津波流Tが段階的に切分けられるので負荷抵抗を少なくして支柱11への負荷軽減を効率的に行うことができる。尚、補助緩衝杭39は、
図7に仮想線で示すように、後傾姿勢として緩衝杭38に重なるように立設してもよい。補助緩衝杭39は、
図7の左欄に示すように、止着具41で緩衝杭38に連結しておくと大きな抵抗力を発揮できるものとなる。
【0021】
図9は、支柱11の前方に緩衝杭38を配置して支柱11に流れ負荷が作用しないようにした他の例を示すもので、この例では、緩衝杭38の形が横断面半円状でその突側が前方に向いているものを示す。緩衝杭38は、支柱11の直径よりも大きい横幅とされしかも支柱11の前方にL=25〜30cm前後接近配置されることで、緩衝杭38によって切分けられた津波流Tが支柱11の両脇方を通過するように構成してある。尚、同図右欄に示すように、Lを略0にすれば津波流Tが遅い場合でも支柱11に強い流れが当るようなことがなくなる。
図10および
図11は、緩衝杭38の前方にさらに補助緩衝杭39を配して津波流Tが段階的に負荷少なくして拡がるようにした例を示すもので、この例では、緩衝杭38も補助緩衝杭39も共に半円断面をしたものであって補助緩衝杭39の方が緩衝杭38よりも幅が小さくなっている。緩衝杭38と補助緩衝杭39とは連結具40により連結しておけば安定して抵抗する杭となる。
以上、
図7ないし
図11に示した実施形態は、丸あるいは角形もしくはH形鋼などの支柱を備えた他の避難装置用の緩衝杭装置としても広く適用され得るものである。
【0022】
尚、
図12に示すような底枠44上に避難ステージ45を載置固定し、さらに外周防護壁46と防護手摺47を組み合わせて避難部を構成したものを対象にしてその外面に津波流Tを上下に分けて緩衝させる分流機能材48を付設したものにおいて、同分流機能材48を横断面三角形としその長い斜面が前下がり状になるように取り付けるようにすることもできる。この場合、津波流T…の多くが分流機能材48の斜面を駆け上がって避難部の底域に流れ込む量が少なく規制されるとともに駆け上がった津波流が上から押下げ力として作用するようになるので、避難部の浮き上がり現象が抑制されて倒壊や流失などのない安定な避難装置を提供することができる。この分流機能材48は、その構造部分だけで1つの発明を構成するものであり、他の構造の避難装置の外周面にも適用し得るものである。
【0023】
図13ないし
図16は他の実施形態を示す。車道上を跨ぐ形で設置した津波対策用の避難装置であって、特に、同避難装置は、近場の住民などの人を避難させるだけでなく車道を通行する車両(二輪、四輪などを含む)をも避難させ得るようにしたものである。これまで車道上を跨ぐように設置される避難装置は歩道橋に関連した装置であって人のみを避難の対象としたものに過ぎず、先の大震災でもみられるように実際には車道を走行中の車両が襲来してきた津波にのみ込まれることによって走行不能になりさらには搭乗する人が命を亡くしたりする被害を招いていた。そうした走行中の車両及びその搭乗者を津波や洪水などから救うためになされたものである。
【0024】
50は車道、51は左右の歩道で、これらの歩道51間には、車道50を跨ぐ形で新規あるいは既設の歩道橋52が渡架固定されている。歩道橋52は、側支柱53を介して支持された渡架躯体54とそれに前後から登降するための階段式(あるいはスロープ式もしくは階段とスロープ併設式)の登降手段55とを備える。渡架躯体54の歩行路面56の高さは5〜6mに設定され、平時、この歩道橋52は閉止手段のないものとして常時利用可能とされる。前記登降手段55はエスカレータ式あるいはエレベータ式でもよい。
【0025】
側支柱53は、前記歩道橋52を支持するものを中間位置に含めて歩道51に沿う前後複数(3)本のものが15m程度の間隔を置いて立設固定されている。これら側支柱53の他に、中央分離帯にも中央支柱57が立設固定されている。これらの側支柱53や中央支柱57は高さ10m前後のものでその地域で想定される津波襲来高さ8mを超える設定になっている。
【0026】
59は避難部で、図示しない底枠の上に車道50の長手方向に長い辺を向けた避難ステージ60が敷設されているとともに、外周防護壁61や防護手摺62を備えて構成されている。避難部59の前後には、山形をした波切り促進面X1付きの波切り促進部Xを設けて津波流T,−Tを切り左右側脇方向へ流すことにより避難部59を浮上流失の危険から護りまた避難者が呑込まれるのを防止するようにしてもよい。この波切り促進部Xは半丸形など波切り可能な形状であれば他の形状でもよい。この避難部59は、津波の想定高さに応じて高くするもので、
図2に示すように2階層型あるいは3階層型を採用することもある。
【0027】
避難部59と前記歩道橋52とは避難用の登降手段64で連絡されるとともに、避難部59の中央には、掴まり手摺を兼ねた仕切り材65が前後対向状に立設配備されて避難者専用ゾーン66が設けられている。この仕切り材65は後述するように避難者の集まるところに避難してきた車両が進入してきて二次災害を招くようなことをなくす安全防護柵としても機能し、また津波流T、−Tが避難ステージ60まで襲来するような想定外の事態に直面した場合にそこに立つ仕切り材65に掴まって流されないようにするためにも機能する。同仕切材65は、
図13の上欄に示すように、グレーチングや縦横あるいは斜行状格子など細目状の通水組体65aの上側にグリップ部65bを備えた強度のあるものにして津波流の流れが束流となって避難者に当りにくく細流化するとともに避難者はグリップ部65aを掴んで流されにくくするもので、また仕切材65は車両67…が流れてきてもそれを受け留めて避難者専用ゾーン66まで進入しないように防護する機能もある。尚、避難部59上にはコーナーなどに備蓄庫68…を固定しておくことができる。また、側支柱53の前・後には、
図15に示すような斜め対抗支柱58を設け、基部は歩道51内に埋め込み上端は側支柱53の上部に結合しておくことで避難装置全体の補強をより有効なものにすることができる。この場合、
図15の左上欄に示すように、斜め対抗支柱58と側支柱53との間には、つなぎ側板63を備えてボックス状とすることで補強効果がさらに上がるようにするとともに津波流Tが直接側支柱53に加わらないように側板63が作用して避難装置の防護機能が高くなる。
【0028】
避難部59の左右側脇部には、ステージ入口70bを前後の車両避難ゾーン76側辺部にそれぞれ連絡したスロープ式の車両避難路体70が設けられている。この車両避難路体70は、避難装置の一側に1本のみ設けられているが、側面からみてハの字状をなすように各側面に前後一対の車両避難路体70を設けてもよく、この場合、ある路体70がトラブルによって通行不能になったとしても他の路体70を利用することができるので、避難の混乱は避けられる。
車両避難路体70は、車道50を通る車両67からみて左側に下部進入口71がくるような向きに設置されているので、方向転換などの操作を要することなく早急の避難が可能になっている。72は斜面をもつステップで、歩道51に通常ある段差を通じての進入が困難であることに対するもので、スムーズに進入できるようにしたものである。また、進入口71手前には、縦枠とそれに開閉自在とした破壊可能型扉体とでなる非常用扉73が設置されており、平時はその閉止機能により子供などが侵入しないようにし津波の際にのみ破って車両67の避難を可能とするものである。この非常用扉73は前記登降手段64にも設置される。70aは、車両避難路体70上に浸入してくる津波流T,−Tを底方向に抜いて車両67が登りやすくするためのグレーチングなどの透水面材で路体70の傾斜下部に明けられた通口にセットされている。
尚、75…は括り付けポールで、車両67がそれ以上流されないように括り付けるためにロープとともに設けられるものである。また、76は避難部59上に設けられた車両避難ゾーンである。このゾーン76には、括りロープを多数設けておいて車両67が流されないようにすることがある。
【0029】
尚、歩道橋52については、
図4にも示すように、避難部59のステージ面の一部を歩行路面として兼用する方式にしてもよい。避難部59についても歩行路面を同ステージ面に形成すると同歩行路面を平時に利用する関係から余り高く設定することができず、そのことから避難部59の上に
図4のような高い上避難部を別設して登降手段で連絡するように構成すれば津波に対して安全な避難装置となる。車両避難路体70の車両避難路77の横サイドには、
図14の下欄に示すように、路面仕切りを介して、人が避難する歩行者避難路78を併設することができる。
【0030】
以上のように構成された避難装置によれば、近場の住民などの人を避難させるだけでなく車道を通行する車両(二輪、四輪などを含む)をも避難させることができ、特に、設置場所が車道を跨ぐように設けられた避難装置に車両避難路を設けたので、走行中の車両にとっては直ぐ近くの避難装置に避難することができて車両及びその搭乗者は津波や洪水などから救われることになる。
【0031】
図17および
図18は、他の実施形態を示す。82は車道、83は歩道であり、歩道83間には、支柱84を介して支持された避難ステージ兼用の歩行路面85をもつ渡架躯体86が設けられている。87は底枠、88は側面からみて山形をなす縦向き登降手段で、こうした避難ステージ兼用の歩行路面85をもつ歩道橋は、これまで歩道83に平行な前記縦向き登降手段88をもつものが一般的であったので、
図17の平面図にみるように車道82に交差するような第2車道89をもつような道路状況のところでは同車道89からの避難者は大回りして縦向き登降手段88を通じて避難するしかなく、その結果、避難に時間が掛かって避難遅れを招いたりさらには全ての人が縦向き登降手段88に集中すると混み合って避難遅れにつながるなどの問題があった。
そのため、避難装置の幅方向端と第2車道89間に別の横向き登降手段90を設置して対処したものである。
【0032】
尚、前記歩行路面85の面内には、矩形をした開口92を設けてその周りに落下防止用の手摺93を付して津波流Tあるいは−Tに抜けを許すように構成すれば、渡架躯体86への浮力が軽減されて避難装置を護ることができるようになる。
また、前記縦向き登降手段88および支柱84は、
図18に示すように、歩道83の外寄りに配置されている。仮想線のように歩道83の内寄りに配置しておくと支柱84と渡架躯体86との上隅に設ける補強材95に走行する大型車両が衝突するおそれがあるが、前記のように外寄りとすることで補強材95も外寄りとなって衝突破損のおそれもなくなるものである。
さらに、前記渡架躯体86の前後の面には、
図18の右上欄に示すように、半円殻状をした緩衝材97を付して津波流T、−Tや漂流物による負荷や衝撃が避難装置い加わらないようにすることができる。緩衝材97は一定の衝撃で変形するものが緩衝上好ましい。
【0033】
図19ないし
図24は他の実施形態を示す。同実施形態は、避難装置全体とともに新設型として歩道橋を構築しその上方の高いところに津波や洪水時の避難部を併設してなる避難装置についてのものである。
100は片側1車線などの車道であり、その左右脇部には歩道101が設けられている。各歩道101には、前後一対の側支柱102が鋼管杭103による支持により立設固定されているとともに、車道100の中央ライン上にも前後一対をなす中央支柱104が同じく鋼管杭103による支持により立設固定されている。これらの支柱102,104の上端高さは12mとされている。
【0034】
支柱102,104の前後間は、
図21の底面図に示すように、四角箱断面をした下側縦連結材106で連結されるとともに、下梁材106の相互間はI形鋼やH形鋼などによる下側横連結材107で連結されている。横連結材107の上面には路面板108が敷設され、その上面が高さ6m程度の歩行路面109となっている。横連結材107は、側支柱102の外側に突出すようにされ、その上面を介してハの字型をした第1登降手段110が左右両端にあるように固定配置されている。歩行路面109は2m前後の幅をなし、その前後端に沿った形で2階手摺112が設けられている。
【0035】
113は第2登降手段で、歩行路面109に続く下踊り場に下側基部が接合される一方上端踊り場は避難ステージ114に繋がれている。側支柱102および中央支柱104の上端間は四角箱断面をした上側連結材116によって連結されている。117は屋上手摺、118は津波流T、−Tを上方へ噴出させるグレーチングなどの透水面材、119は破壊可能型扉、111は非常時用貯水タンクである。貯水タンク111は、
図19に示すように、タンク体として避難ステージ114上に固定設置したり、あるいは
図23に示すように、上側連結材116の内側空間に対応して一体に形成したタンク部111aにより形成してもよい。タンク部111aの蓋は避難ステージ114の面に開閉式に設けられる。このタンク111やタンク部111aは、
図1〜18の実施形態においても適用され得る。また、タンク111やタンク部111aは、歩道橋の躯体上に別体設置式にあるいは躯体に一体型として構成することもできる。タンク111やタンク部111aを支柱近くに配置すると装置の浮上を抑制することができ、またタンク部111aとして装置に一体形成すると装置の補強となる。
尚、
図22に仮想線で示す120は緩衝杭で、金属パイプ製で高さ10m前後をなして中央支柱104の前方および後方に離れた状態で中央分離帯上を介して立設配備される。この緩衝杭120は、上下複数本(2本)の受材121を介して中央支柱104側に連結支持されている。
【0036】
こうした避難装置は、平時は歩道橋を利用することができる一方において津波の襲来が警告されたときは歩道橋を利用して上の避難ステージ114に避難することによって多くの人を津波から救うことができるものである。
【0037】
図25は付加的な提案例を示すもので、130はベタ基礎、131は支柱、132は中間梁、133は上梁であり、上端には避難ステージ134が設けられ、その周りには防護囲い135が設けられている。136は階段である登降手段である。137は地盤であり、同地盤137の複数本の支柱131内に対応する面内には、ベタ基礎130を介して地中深く1本あるいは複数本のパイプ138が打ち込まれている。このパイプ138はベタ基礎130の支持役となるだけでなく、自らの上下端が開放状とされるとともに周部には多数の通孔を備えることから、地震に伴う液状化の際にこのパイプ138を通じて液状化水が噴上げ、避難装置の倒壊を防止するようになっている。しかも、地震後にあっては、このパイプ138を井戸パイプとして利用して手動式あるいは電動式のポンプ139をマウントして駆動させれば、断水状態の際にも、図示のように配水管140を通じて避難ステージ134上に送水することができ、非常用の水に困ることがなくなる。