【実施例】
【0020】
以下、本発明の実施の形態を実施例により説明するが、本発明はこれによって限定されるものではない。尚、配合量を示す「部」は全て「重量部」を示す。また、本発明にかかる物質の諸物性の評価は以下の方法で測定した。
【0021】
<CM−DSの測定方法>
試料約2.0gを精秤して、300mL共栓付き三角フラスコに入れた。硝酸メタノール1000mLに特級濃硝酸100mLを加えた液100mLを加え、3時間振とうして、カルボキシメチルセルロース塩(CMC)をH−CMCにした。その絶乾H−CMCを1.5〜2.0g精秤し、300mL共栓付き三角フラスコに入れた。80%メタノール15mLでH−CMCを湿潤し、0.1N−NaOHを100mL加え、室温で3時間振とうした。指示薬として、フェノールフタレインを用いて、0.1N−H2SO4で過剰のNaOHを逆滴定した。CMC−DSは、次式によって算出した。
A=[(100×F−0.1N−H2SO4(mL)×F)×0.1]/(H−CMCの絶乾重量(g))
CM−DS=0.162×A/(1−0.058×A)
A:H−CMCの1gの中和に要する1N−NaOH量(mL)
F:0.1N−H2SO4のファクター
F:0.1N−NaOHのファクター
【0022】
<結晶化度の測定>
セルロースI型の結晶化度は、試料のX線回折を測定することで求めた。X線回折の測定は、試料をガラスセルに乗せ、X線回折測定装置(LabX XRD−6000、島津製作所製)を用いて測定した。結晶化度の算出はSegal等の手法を用いて行い、X線回折図の2θ=10°〜30°の回折強度をベースラインとして、2θ=22.6°の002面の回折強度と2θ=18.5°のアモルファス部分の回折強度から次式により算出した。
Xc=(I002c―Ia)/I002c×100
Xc=セルロースのI型の結晶化度(%)
I002c:2θ=22.6°、002面の回折強度
Ia:2θ=18.5°、アモルファス部分の回折強度
【0023】
<CMCの製造>
(CMC1の製造)
回転数を100rpmに調節した二軸ニーダーにイソプロピルアルコール(IPA)800部と水酸化ナトリウム10部を水300部に溶解したものを加え、市販の溶解パルプ(NDPS、日本製紙ケミカル(株)製)を絶乾で100部仕込んだ。30℃で90分間攪拌、混合しマーセル化セルロースを調製した。更に攪拌しつつ90%IPA10部に溶解したモノクロロ酢酸8部を添加し、70℃に昇温して90分間エーテル化反応させた。反応終了後、中和、脱液、乾燥、粉砕して無水グルコース単位当りのカルボキシメチル置換度(CM−DS)0.05、結晶化度85%のカルボキシメチルセルロースナトリウムを得た(CMC1)。
【0024】
(CMC2の製造)
回転数を100rpmに調節した二軸ニーダーにイソプロピルアルコール(IPA)500部と水酸化ナトリウム15部を水200部に溶解したものを加え、市販の溶解パルプ(NDPS、日本製紙ケミカル(株)製)を絶乾で100部仕込んだ。30℃で90分間攪拌、混合しマーセル化セルロースを調製した。更に攪拌しつつ90%IPA20部に溶解したモノクロロ酢酸19部を添加し、70℃に昇温して90分間エーテル化反応させた。反応終了後、中和、脱液、乾燥、粉砕して、CM−DS0.16、結晶化度58%のカルボキシメチルセルロースナトリウムを得た(CMC2)。
【0025】
(CMC3の製造)
回転数を100rpmに調節した二軸ニーダーにイソプロピルアルコール(IPA)800部と水酸化ナトリウム15部を水150部に溶解したものを加え、市販の溶解パルプ(NDPS、日本製紙ケミカル(株)製)を絶乾で100部仕込んだ。30℃で90分間攪拌、混合しマーセル化セルロースを調製した。更に攪拌しつつ90%IPA30部に溶解したモノクロロ酢酸27部を添加し、70℃に昇温して90分間エーテル化反応させた。反応終了後、中和、脱液、乾燥、粉砕して、CM−DS0.34、結晶化度40%のカルボキシメチルセルロースナトリウムを得た(CMC3)。
【0026】
(CMC4の製造)
回転数を100rpmに調節した二軸ニーダーにイソプロピルアルコール(IPA)500部と水酸化ナトリウム30部を水200部に溶解したものを加え、市販の溶解パルプ(NDPS、日本製紙ケミカル(株)製)を絶乾で100部仕込んだ。30℃で90分間攪拌、混合しマーセル化セルロースを調製した。更に攪拌しつつ90%IPA45部に溶解したモノクロロ酢酸19部を添加し、70℃に昇温して90分間エーテル化反応させた。反応終了後、中和、脱液、乾燥、粉砕して、CM−DS0.19、結晶化度0%のカルボキシメチルセルロースナトリウムを得た(CMC4)。
【0027】
(CMC5の製造)
回転数を100rpmに調節した二軸ニーダーにイソプロピルアルコール(IPA)800部と水酸化ナトリウム33部を水150部に溶解したものを加え、市販の溶解パルプ(NDPS、日本製紙ケミカル(株)製)を絶乾で100部仕込んだ。30℃で90分間攪拌、混合しマーセル化セルロースを調製した。更に攪拌しつつ90%IPA45部に溶解したモノクロロ酢酸27部を添加し、70℃に昇温して90分間エーテル化反応させた。反応終了後、中和、脱液、乾燥、粉砕して、CM−DS0.34、結晶化度18%のカルボキシメチルセルロースナトリウムを得た。(CMC5)
【0028】
(CMC6の製造)
回転数を100rpmに調節した二軸ニーダーにイソプロピルアルコール(IPA)500部と水酸化ナトリウム48部を水100部に溶解したものを加え、市販の溶解パルプ(NDPS、日本製紙ケミカル(株)製)を絶乾で100部仕込んだ。30℃で90分間攪拌、混合しマーセル化セルロースを調製した。更に攪拌しつつ90%IPA45部に溶解したモノクロロ酢酸37部を添加し、70℃に昇温して90分間エーテル化反応させた。反応終了後、中和、脱液、乾燥、粉砕して、CM−DS0.50、結晶化度43%のカルボキシメチルセルロースナトリウムを得た(CMC6)。
【0029】
【表1】
【0030】
<実施例
1〜2、比較例1〜
4:氷菓(1)ラクトアイス>
下記ラクトアイス処方のうち、果糖ブドウ糖液糖、水あめ、脱脂加糖練乳、ヤシ油及び水を添加し、混和した容器に、脱脂粉乳、砂糖、乳化剤、及び表1のカルボキシメチルセルロースのナトリウム塩を添加して、80℃10分間加熱攪拌溶解し、重量補正後、15MPaで均質化を行う。更に攪拌しながら5℃まで冷却し、5℃にて12時間エージングを行った。エージング後、オーバーラン80%までフリージングし、カップ充填し、−40℃で急速凍結を行い、ラクトアイスを調製した。保形性、ベタツキ、食感を評価した結果を表2に示す。
【0031】
(ラクトアイス)
脂肪加糖練乳 6.5部
脱脂粉乳 4.0部
精製ヤシ油 6.0部
砂糖 6.0部
果糖ブドウ糖液糖 4.0部
水あめ 6.25部
乳化剤 0.3部
カルボキシメチルセルロースナトリウム 0.3部
【0032】
<保形性の評価>
得られた食品を静置し、直後及び3時間の食品の形状を下記の基準で目視評価した。
○:3時間後における食品の形状に大きな変化が見られない。
△:直後には食品の形状に変化は見られないが、3時間後における食品の経常に変化が見られる。
×:直後の時点で食品の形状に変化が見られる。
【0033】
<べたつきの評価>
得られた食品を手で触り、下記の基準で評価した。
○:ほとんどべたつきを感じない。
△:僅かにべたつきを感じる。
×:非常にべたつきを感じる。
【0034】
<食感の評価>
得た食品を10人に試食してもらった評価結果を下記の基準で評価した。
○:10人中9人以上が食感良好と評価した。
△:10人中6人以上が食感良好と評価した。
×:食感良好と評価した人が10人中5人以下であった。
【0035】
【表2】
【0036】
表2より、実施例1〜
2は優れた保形性を持つ上、べたつきにくく、食感も良好であっ
た。
【0037】
<実施例4〜5、
比較例5〜6:氷菓(2)ソフトクリーム>
下記ソフトクリーム処方のうち、牛乳、生クリーム、水あめを混合し40℃まで攪拌しながら加熱し、その中に砂糖、脱脂粉乳、乳化剤及び表1のカルボキシメチルセルロースナトリウムを投入し、その後80℃まで加熱した後に、あらかじめ溶解しておいたバターを入れ、さらに10分間攪拌した。これを150kg/cm2ホモジナイズし、ついでプレート式殺菌(120℃、10秒間)し、取り出した後10℃程度になるまで冷却してソフトクリームを調製した。それをアイスクリームフリーザーにかけて調製したソフトクリームの保形性、ベタツキ、食感を調査した結果を表3に示す。
【0038】
(ソフトクリームミックス)
牛乳 50.0部
生クリーム 16.0部
無塩バター 7.5部
砂糖 4.0部
脱脂粉乳 4.0部
水あめ 4.0部
乳化剤 0.3部
カルボキシメチルセルロースナトリウム 0.3部
水 適量
【0039】
【表3】
【0040】
表3より、
実施例3〜4は
比較例5〜6と比べて、保形性、ベタツキ、食感いずれも良
好な結果であった。
【0041】
<
参考例1〜5:氷菓(3)ヨーグルトバー>
下記ヨーグルトバー処方のうち、全脂加糖練乳、油脂、果糖ブドウ糖液糖、水あめ及び混合して加温しながら攪拌して溶解した。溶解して混合液が40℃程度になったとき、その中に、脱脂粉乳、砂糖、粉末水あめ、乳化剤及び表1のカルボキシメチルセルロースナトリウムを添加し、更に80℃で15分間加熱し溶解した。
【0042】
これを水で重量補正した後にホモジナイザー(150kg/cm2)で均質化し、その後、5℃まで冷却した。これを5℃で2時間エージングし、ついで、発酵乳、乳酸、ヨーグルトフレーバーを混合して、冷菓用ミックスとした。得られた冷菓用ミックスを氷缶に充填し、−30℃のブライン槽につけて硬化させ、ヨーグルトバーを調整し、保形性、食感を調査した結果を表4に示す。
【0043】
(ヨーグルトバー)
全脂加糖練乳 5.0部
脱脂粉乳 2.0部
発酵乳 5.0部
油脂 2.0部
砂糖 7.0部
果糖ブドウ糖液糖 3.0部
水あめ(75%) 6.25部
粉末水あめ 3.0部
第一乳酸(50%乳酸) 0.3部
乳化剤 0.15部
カルボキシメチルセルロースナトリウム 0.3部
ヨーグルトフレーバー 0.2部
水 適量
【0044】
【表4】
【0045】
表4より、
参考例1〜3は、保形性、食感いずれも良好な結果であった。
【0046】
<
参考例6〜11:ゲル状食品(1)プリン>
<プリン処方での調査>
下記プリン処方のうち、水と生クリームを攪拌しながら、プリンフレーバー以外の原料を粉体混合物として添加し80℃10分間攪拌溶解した後、プリンフレーバーを添加し、容器充填後、冷却してプリンを調整した。その後、容器から取り出した際の保形性、食感を調査した結果を表5に示す。
【0047】
(プリン)
生クリーム 5.0部
砂糖 10.0部
脱脂粉乳 8.0部
カルボキシメチルセルロースナトリウム 0.3部
プリンフレーバー 0.1部
水 77.0部
【0048】
【表5】
【0049】
表5より、
参考例6〜8は、保形性、食感いずれも良好な結果であった。
【0050】
<
参考例12〜16:ゲル状食品(2)ゼリー>
下記ゼリー処方のうち、水を攪拌しながら、砂糖、表1のカルボキシメチルセルロースナトリウム、クエン酸三ナトリウム及び乳酸カルシウムの粉体混合物を加え、80℃10分間加熱攪拌溶解後、クエン酸(無水)を添加し、攪拌混合、全量を水にて補正し、容器充填し、85℃30分間殺菌して、水冷固化し、ゼリーを調製した。得られたゼリーの保形性、食感を調査した結果を表6に示す。
【0051】
(ゼリー)
砂糖 15.0部
クエン酸 0.2部
カルボキシメチルセルロースナトリウム 0.3部
クエン酸三ナトリウム 0.2部
乳酸カルシウム 0.2部
水 84.0部
【0052】
【表6】
【0053】
表6より、
参考例12〜14は、保形性、食感いずれも良好な結果であった。
【0054】
<
参考例17〜22:練り物食品(1)ハンバーグ>
下記ハンバーグ処方のうち、挽肉、玉ねぎ、パン粉、卵、黒コショウ、食塩、水をSKミキサーで3分間混合した後、表1のカルボキシメチルセルロースナトリウムを加えてよく混ぜ、100gずつ小判型に成形した。このハンバーグをフライパン中で、強火で両面を計2分、その後弱火にしてからフタをして両面を計12分加熱調理した。得られたハンバーグの保形性、食感を調査した結果を表7に示す。
【0055】
(ハンバーグ)
挽肉 57.9部
玉ねぎ 21.1部
パン粉 10.5部
卵 6.3部
黒コショウ 0.1部
食塩 0.8部
カルボキシメチルセルロースナトリウム 0.5部
水 3.2部
【0056】
【表7】
【0057】
表7より、
参考例17〜19は、保形性、食感いずれも良好な結果であった。
<
参考例23〜28:フィリング(1)ピーナッツバター>
【0058】
<フィリング(ピーナッツバター)処方での調査>
下記フィリング処方のうち、ピーナッツバターに表1のカルボキシメチルセルロースナトリウムを添加し、コンベクションオーブン80℃で10分間焼成した。焼成後の保形性、ベタツキを調査した結果を表8に示す。
(フィリング:ピーナッツバター)
ピーナッツバター 99.0部
カルボキシメチルセルロースナトリウム 1.0部
【0059】
【表8】
【0060】
表8より、
参考例23〜25は、保形性、ベタツキいずれも良好な結果であった。