(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記入口条件には、各前記利用ユニットにおける前記熱媒体の入口温度、各前記利用ユニットにおける前記空気の流入口付近での該空気の温度及び湿度、の少なくとも1つが含まれる、
請求項2に記載の空調システム(10)。
前記負荷演算部(82c)は、各前記利用ユニットにおける前記熱媒体の入口温度と該熱媒体の出口温度との差である出入口温度差を更に用いて、各前記利用ユニットの負荷を求める、
請求項1から3のいずれか1項に記載の空調システム(10)。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明に係る空調システムについて、図面を参照しつつ詳述する。なお、以下の実施形態は、本発明の具体例であって、本発明の技術的範囲を限定するものではない。
【0022】
(1)空調システムの全体構成
図1は、本発明の一実施形態に係る空調システム10の概略構成図である。空調システム10は、該システム10全体の消費電力を最小限にする最適制御運転を行いつつ、最適な温度に調節された空気を空調対象空間RMa,RMb,RMc(
図7参照)内に供給することができる。主に、空調システム10は、ビルや工場、病院及びホテル等の、比較的大きい建物内に設置されている。
【0023】
このような空調システム10は、
図1〜2,8に示すように、主として、チラーユニット群20、利用ユニット群30、一次側ポンプ44a〜44c、二次側ポンプ46,47(循環ポンプに相当)及び空調システムコントローラ80を備える。更に、空調システム10には、差圧計48及び電力計49が備えられている。
【0024】
チラーユニット群20を構成する複数のチラーユニット20a,20b,20c内部には、
図2に示す冷媒回路21が構成されている。更に、
図1に示すように、チラーユニット群20は、クーリングタワー70とも接続されており、これらによって放熱回路60が構成されている。また、
図1に示すように、一次側ポンプ44a〜44c、チラーユニット群20、二次側ポンプ46,47及び利用ユニット群30等によって、熱媒体回路40が構成されている。
【0025】
(2)空調システムの詳細構成
(2−1)チラーユニット群及び冷媒回路
本実施形態に係るチラーユニット群20は、複数のチラーユニット20a〜20c(熱源機に相当)を有している。各チラーユニット20a〜20cは、互いに並列に接続されており、
図2に示す冷媒回路21を含んでいる。
【0026】
冷媒回路21は、圧縮機22、放熱器23、チラー側膨張弁24及び蒸発器25等が順次接続されることで構成されている。冷媒回路21内部には、冷媒が充填されている。
【0027】
圧縮機22は、運転容量の調節が可能である。圧縮機22のモータには、インバータを介して電力が供給される。インバータの出力周波数を変更すると、モータの回転数、つまりは回転速度が変更され、圧縮機22の運転容量が変化する。
【0028】
放熱器23は、冷媒回路21と接続された第1伝熱管と、放熱回路60と接続された第2伝熱管とを有している。放熱器23は、冷媒回路21側の第1伝熱管内を流れる冷媒と放熱回路60側の第2伝熱管を流れる熱媒体との間で、熱交換を行わせる。
【0029】
チラー側膨張弁24は、冷媒回路21内の冷媒を減圧させ、減圧させた冷媒を流出するためのものであり、電動膨張弁で構成される。
【0030】
蒸発器25は、冷媒回路21と接続されている第1伝熱管と、熱媒体回路40と接続されている第2伝熱管とを有している。蒸発器25は、冷媒回路21側の第1伝熱管内を流れる冷媒と、熱媒体回路40側の第2伝熱管を流れる熱媒体との間で、熱交換を行わせる。
【0031】
このような冷媒回路21を含む各チラーユニット20a〜20cは、熱媒体としての水を冷却または加熱する。
【0032】
(2−2)放熱回路
放熱回路60には、熱媒体としての水が充填されている。放熱回路60は、主として、各チラーユニット20a〜20c内の放熱器23、水ポンプ61、及びクーリングタワー70が、順次接続されることで構成されている。水ポンプ61は、吐出流量の調節が可能であり、放熱回路60内の水を循環させる。クーリングタワー70では、放熱回路60を循環する水が冷却される。
【0033】
なお、
図1において、水ポンプ61に付された矢印は、放熱回路60における水の流れ方向を表している。
【0034】
(2−3)熱媒体回路
熱媒体回路40は、熱媒体としての水が充填された閉回路を構成しており、各チラーユニット20a〜20cと利用ユニット30a〜30cとの間で水を循環させる。熱媒体回路40には、主として、一次側ポンプ44a,44b,44cと、各チラーユニット20a〜20c内の蒸発器25と、バイパス弁45と、二次側ポンプ46,47と、利用ユニット群30を構成する各利用ユニット30a,30b,30c内の利用側弁32a,32b、32c(流量調節弁に相当)及び利用側熱交換器33a,33b,33c(熱交換器に相当)とが、順次接続されることで構成されている。
【0035】
一次側ポンプ44a〜44cは、各利用ユニット30a〜30cの出口側と各チラーユニット20a〜20cの入口側とを繋ぐ配管L1上に接続されている。より具体的には、配管L1は、各利用ユニット30a〜30cの出口側となる各利用側弁32a〜32cの出口側を、一旦合流した状態にて戻りヘッダー41に連結すると共に、該ヘッダー41を介して各チラーユニット20a〜20cに繋いでいる。一次側ポンプ44a〜44cは、戻りヘッダー41と各チラーユニット20a〜20cとの間に、各チラーユニット20a〜20cに対応して3つ設けられている。一次側ポンプ44a〜44cは、定量ポンプであって、後述する空調システムコントローラ80により駆動制御される。このような一次側ポンプ44a〜44cは、
図1において、一次側ポンプ44a〜44cに付された矢印に示されるように、各利用側熱交換器33a〜33cから流出した熱媒体としての水を、各チラーユニット20a〜20cへと送ることで、熱媒体回路40内の水を循環させる。
【0036】
なお、蒸発器25では、熱媒体回路40内を循環する水が、例えば冷却される。
【0037】
バイパス弁45は、チラーユニット20aに流れる水の流量を調節する。つまり、チラーユニット20aを流れる水の流量は、バイパス弁45の開度によって決まる。
【0038】
二次側ポンプ46,47は、各チラーユニット20a〜20cの出口側と各利用ユニット30a〜30cの入口側とを繋ぐ配管L2上に接続されている。より具体的には、配管L2は、各チラーユニット20b,20cの出口側を、第1送りヘッダー42及び第2送りヘッダー43を介して各利用ユニット30a〜30cにおける利用側熱交換器33a〜33cの入口側に繋いでいる。二次側ポンプ46,47は、配管L2上であって且つ第1送りヘッダー42と第2送りヘッダー43との間に、チラーユニット20b,20cに対応して2つ設けられている。二次側ポンプ46,47は、一次側ポンプ44a〜44cとは異なり、容量調整が可能であって吐出容量を調整することができる容量可変型のポンプであって、空調システムコントローラ80によりインバータ駆動される。このような二次側ポンプ46,47は、
図1において、二次側ポンプ46,47に付された矢印に示されるように、各チラーユニット20b,20cから流出した熱媒体としての水を、各利用側熱交換器33a〜33cへと送ることで、熱媒体回路40内の水を循環させる。
【0039】
なお、各利用ユニット30a〜30c内の利用側弁32a〜32c及び利用側熱交換器33a〜33cについては、後述する。
【0040】
(2−4)利用ユニット群
利用ユニット群30は、互いに並列に接続された複数の利用ユニット30a,30b,30cで構成されている。本実施形態では、
図7に示すように、各利用ユニット30a〜30cは、異なる空調対象空間RMa,RMb,RMcに設置されている。本実施形態では、空調対象空間RMa〜RMcは、それぞれ異なるユーザによって利用されている場合を例に採る。
【0041】
各利用ユニット30a〜30cは、概ね直方体形状のケーシング31a〜31cを有している。各ケーシング31a〜31cの内部には、空気が流通する空気通路が形成されている。空気通路の流入端には、吸い込みダクト31ab,31bb,31cbの一端が接続され、空気通路の流出端には、給気ダクト31aa,31ba,31caの一端が接続されている。吸い込みダクト31ab〜31cb及び給気ダクト31aa〜31caの他端は、それぞれ空調対象空間RMa〜RMcに接続されている。
【0042】
各ケーシング31a〜31cの内部には、熱媒体回路40を構成する利用側弁32a〜32c及び利用側熱交換器33a〜33cの他、電気ヒータ34a,34b,34c、散水式加湿器35a,35b,35c及び送風ファン36a,36b,36c(ファンに相当)が配備されている。特に、各ケーシング31a〜31c内の空気通路には、上流側から下流側に向かって順に、利用側熱交換器33a〜33b、電気ヒータ34a,34b,34c、散水式加湿器35a,35b,35c及び送風ファン36a,36b,36cが配備されている。
【0043】
利用側弁32a〜32cは、利用側熱交換器33a〜33cそれぞれに流れる水の量を調節する。つまり、利用側熱交換器33a〜33c内の水の流量は、利用側弁32a〜32cそれぞれの開度によって決まる。
【0044】
利用側熱交換器33a〜33cは、空調対象空間RMa〜RMc内の空気RAa,RAb,RAcと熱媒体回路40内の水との間で熱交換を行わせて、空気RAa〜RAcを加熱または冷却させる。具体的に、利用側熱交換器33a〜33cは、複数の伝熱フィンと、該伝熱フィンを貫通する伝熱管とを有する、フィンアンドチューブ式の熱交換器である。利用側熱交換器33a〜33cが有する伝熱管には、熱媒体回路40を循環する水が流れ、伝熱管及び伝熱フィンを介して水の熱がケーシング31a〜31c内に取り込まれた空気RAa〜RAcに供給されることで、空気が加熱または冷却されるようになっている。
【0045】
電気ヒータ34a〜34cは、空気の温度を上げるための機器である。電気ヒータ34a〜34cは、出力を段階的に変化させることが可能であって、空気の加熱量を調節できる。
【0046】
散水式加湿器35a〜35cは、ケーシング31a〜31cの外部に設置されたタンク(図示せず)と接続されている。散水式加湿器35a〜35cは、タンク内の水をノズルから空気中へ散布することで、ケーシング31a〜31c内を流れる空気を加湿する。つまり、散水式加湿器35a〜35cは、空気の湿度を高めるための機器であり、空気への加湿量を調節できる。
【0047】
送風ファン36a〜36cは、インバータ制御によって回転数を段階的に変化させることが可能であって、加熱または冷却された空気の送風量を調節できる送風機である。送風ファン36a〜36cは、利用側熱交換器33a〜33c、電気ヒータ34a〜34c及び散水式加湿器35a〜35cを経て空調対象空間RMa〜RMc内へと吹き出される空気の流れを生成する。以下では、空調対象空間RMa〜RMc内へと吹き出される空気を、供給空気SAa,SAb,SAcと言う。
【0048】
更に、各利用ユニット30a〜30cには、
図7に示すように、様々なセンサS1a〜S4a,S1b〜S4b,S1c〜S4cが設けられている。具体的には、各利用ユニット30a〜30cには、水用入口温度センサS1a,S1b,S1c、水用出口温度センサS2a,S2b,S2c、空気用入口温度センサS3a,S3b,S3c、及び空気用入口湿度センサS4a,S4b,S4cが、設けられている。
【0049】
水用入口温度センサS1a〜S1cは、各利用ユニット30a〜30cにおける利用側熱交換器33a〜33cの、水の入口付近に設けられており、各利用ユニット30a〜30cへと流入してくる水の温度を検知する。水用出口温度センサS2a〜S2cは、各利用ユニット30a〜30cにおける利用側弁32a〜32cの、水の出口付近に設けられており、各利用ユニット30a〜30cから流出する熱交換後の水の温度を検知する。空気用入口温度センサS3a〜S3cは、ケーシング31a〜31cと吸い込みダクト31ab〜31cbとの接続部分である空気RAa〜RAcの流入口付近に設けられており、吸い込みダクト31ab〜31cbを介してケーシング31a〜31c内部に流入してくる空気RAa〜RAcの温度を検知する。空気用入口湿度センサS4a〜S4cは、空気用入口温度センサS3a〜S3cと同様、ケーシング31a〜31cと吸い込みダクト31ab〜31cbとの接続部分である空気RAa〜RAcの流入口付近に設けられており、吸い込みダクト31ab〜31cbを介してケーシング31a〜31c内部に流入してくる空気RAa〜RAcの湿度を検知する。これらセンサS1a〜S4a,S1b〜S4b,S1c〜S4cによる検知結果は、空調システムコントローラ80に取り込まれる。
【0050】
(2−5)差圧計、電力計、
図1に示すように、差圧計48は、熱媒体回路40の第1送りヘッダー42及び第2送りヘッダー43の間に1つ取り付けられている。差圧計48は、バイパス弁45及び二次側ポンプ46,47に対し並列となるように、各送りヘッダー42,43の間に取り付けられている。差圧計48は、第1送りヘッダー42と第2送りヘッダー43との間の圧力差、つまりは二次側ポンプ46,47の送水圧力Hを計測する。
【0051】
図1に示すように、商用電源90とクーリングタワー70とは、電源配線によって電気的に接続されており、空調システム10の構成要素である利用ユニット30a〜30c等には、商用電源90からの電源がクーリングタワー70を介して供給されるようになっている。電力計49は、商用電源90とクーリングタワー70とを繋ぐ電源配線上に取り付けられており、空調システム10全体の消費電力量を、利用ユニット30a〜30c全ての負荷の合計値として計測する。
【0052】
(2−6)空調システムコントローラ
空調システムコントローラ80は、空調システム10を統括的に制御するためのものである。空調システムコントローラ80については、後に詳述する。
【0053】
(3)空調システムの基本動作
次に、空調システム10の運転動作について説明する。空調システム10は、空気の冷却と除湿とを行う冷房除湿運転(
図3)、空気の冷却と加湿とを行う冷房加湿運転(
図4)、空気の除湿と加熱とを行う暖房除湿運転(
図5)、及び空気の加熱と加湿とを行う暖房加湿運転(
図6)、のいずれかを行うことができる。これにより、空調システム10は、例えば空調対象空間内の温度及び湿度を、設定温度である23℃及び設定湿度である50%になるように、空気調和運転を行うことができる。
【0054】
(3−1)冷房除湿運転
図3に示す冷房除湿運転では、圧縮機22、各種ポンプ44a〜44c,46,47,61、及び送風ファン36a〜36cの運転が行われる。
【0055】
冷房除湿運転では、基本的には、電気ヒータ34a〜34cが停止状態となり、散水式加湿器35a〜35cの散水も停止状態となる。冷房除湿運転では、冷媒回路21において冷凍サイクルが行われる。具体的に、圧縮機22で圧縮された冷媒が、放熱器23において、放熱回路60を流れる水に放熱して凝縮する。放熱器23で冷却された冷媒は、チラー側膨張弁24で減圧された後に、蒸発器25において、熱媒体回路40を流れる水から吸熱して蒸発する。蒸発器25で蒸発した冷媒は、圧縮機22に吸入されて圧縮される。なお、放熱器23で加熱された放熱回路60を流れる水は、クーリングタワー70において室外空気へ放熱する。熱媒体回路40では、冷媒回路21の蒸発器25で冷却された水が、各利用側熱交換器33a〜33cにおいて、各ケーシング31a〜31c内の空気通路を流れる空気を冷却する。各利用側熱交換器33a〜33cを通過した水は、冷媒回路21の蒸発器25に戻って再び冷却される。熱媒体回路40では、蒸発器25において水が冷媒から得た冷熱が、各利用側熱交換器33a〜33cに搬送され空気に供給される。
【0056】
各利用ユニット30a〜30cでは、既に述べたように、吸い込みダクト31ab〜31cbによって空調対象空間RMa〜RMcそれぞれから取り込まれた室内空気RAa〜RAcが、ケーシング31a〜31c内の空気通路を流れる。この空気は、各利用側熱交換器33a〜33cにおいて熱媒体回路40の水によって冷却されて除湿される。各利用側熱交換器33a〜33cで冷却及び/または除湿された空気は、給気ダクト31aa〜31caを介して、供給空気SAa〜SAcとして各空調対象空間RMa〜RMcへと供給される。
【0057】
(3−2)冷房加湿運転
図4に示す冷房加湿運転は、除湿冷房運転に加えて各散水式加湿器35a〜35cの散水による加湿が行われる運転である。各利用側熱交換器33a〜33cにおいて熱媒体回路40の水によって空気が冷却されて除湿されるまでは、上述の冷房除湿運転と同じであり、その冷却及び/または除湿された空気に各散水式加湿器35a〜35cによる散水が行われる。
【0058】
各利用側熱交換器33a〜33cによる冷却及び/または除湿にて、供給空気SAa〜SAcの温度は、所望される設定温度に達することができる。しかし、この冷房加湿運転は、冷却に伴う除湿効果によって空調対象空間RMa〜RMc内の湿度が所望される設定湿度を下回ってしまう場合に、行われる。
【0059】
(3−3)暖房除湿運転
図5に示す暖房除湿運転は、再熱除湿運転とも呼ばれる運転である。各利用側熱交換器33a〜33cによる除湿及び/または冷却にて、供給空気SAa〜SAcの湿度は、所望される設定湿度に達することができる。しかし、この暖房除湿運転は、除湿に伴う冷却効果によって空調対象空間RMa〜RMc内の温度が所望される設定温度を下回ってしまう場合に、行われる。
【0060】
この除湿暖房運転では、各利用側熱交換器33a〜33cにおいて除湿のために空気に供給された冷熱量が大きく、必要以上に空気が冷やされた場合に、電気ヒータ34a〜34cが作動して空気再加熱する。
【0061】
(3−4)暖房加湿運転
図6に示す暖房加湿運転では、電気ヒータ34a〜34c、散水式加湿器35a〜35c及び送風ファン36a〜36cの運転が行われる。一方、圧縮機22、及び各種ポンプ44a〜44c,46,47,61の運転は、停止される。
【0062】
暖房加湿運転では、各利用ユニット30a〜30cにおいて、空調対象空間RMa〜RMcから取り込まれた空気RAa〜RAcが、まずは各電気ヒータ34a〜34cによって加熱され、次に各散水式加湿器35a〜35cによって加熱されて、供給空気SAa〜SAcとして空調対象空間RMa〜RMc内に供給される。
【0063】
(4)空調システムコントローラについての詳細説明
図8は、本実施形態に係る空調システムコントローラ80の内部構成と、該コントローラ80に接続された各種機器とを、模式的に表すブロック図である。
図8に示すように、空調システムコントローラ80は、主として、メモリ81及びCPU82にて構成されており、チラーユニット20a〜20c、利用ユニット30a〜30c、各種ポンプ44a〜44c,46,47,61、バイパス弁45、差圧計48及び電力計49と接続されている。空調システムコントローラ80は、接続されたこれらの機器を制御することで、上述した空調システム10の基本動作を行わせる。
【0064】
メモリ81は、ROMとRAMとで構成されており、ROMには、CPU82が読み出して実行する各種プログラム等が格納されている。RAMは、CPU82のワークメモリとして機能する他、CPU82によって書き換え可能な情報が格納されている。
【0065】
CPU82は、二次側ポンプ46,47のインバータ周波数の可変制御や利用側弁32a〜32cの開度制御等により熱媒体回路40内を流れる水の流量制御等を行う。特に、
図1に示すように、空調システム10においては、複数の利用ユニット30a〜30cが備えられているため、CPU82は、チラーユニット群20側からみて最も遠い位置にある利用ユニット30a〜30c(即ち、末端の利用ユニット30a〜30c)にも適した流量の水を供給する制御、つまりは末端差圧制御を行っている。
【0066】
例えば、個々の利用ユニット30a〜30cが、建物における別々の階層に設置されており、一方でチラーユニット群20が一番下の階層に設置されているとする。一番上の階層に設置されている利用ユニット(例えば、利用ユニット30a)が、チラーユニット群20から見て一番遠いところに設置されているユニットであるとする。この場合、一番遠い位置にある利用ユニット30aにおいては、利用側弁32aの開度を全開にしたとしても、二次側ポンプ46,47における送水圧力Hが不足していれば、流量の適量な水が利用ユニット30aに供給されないこととなってしまう。そこで、CPU82は、上記送水圧Hを適切に保つことで、各利用ユニット30a〜30cに水を確実に送る制御として、末端差圧制御を行う。また、この末端差圧制御では、水の流量が少量時の二次側ポンプ46,47の消費電力も抑えられるようにするため制御も行われる。
【0067】
具体的に、末端差圧制御においては、CPU82は、二次側ポンプ46,47の送水圧力Hの目標値を目標圧力として決定し、実際の二次側ポンプ46,47の送水圧力H(即ち、差圧計48の計測値)が該目標圧力となるように、二次側ポンプ46,47のインバータ周波数を増減させる。つまり、CPU82は、目標圧力に基づいて、二次側ポンプ46,47の回転数に対してPID制御を行い、二次側ポンプ46,47の容量を可変させる。そして、CPU82は、各空調対象空間RMa〜RMc内の温度に対してもPID制御を行い、且つ各利用側弁32a〜32cの開度を増減させることで、配管L1及びL2の有する抵抗成分を増減させて、該配管L1,L2内、つまりは熱媒体回路40内を循環する水の流量Qを調節する。
【0068】
更に、本実施形態に係るCPU82は、利用ユニット30a〜30c毎の能力を測るべく、各利用ユニット30a〜30cを流れる水の流量(以下、個別流量Qa,Qb,Qcという)を用いて、各利用ユニット30a〜30cの負荷の演算を行う。特に、本実施形態においては、
図1等に示すように、各利用ユニット30a〜30cの個別流量Qa〜Qcを計測するための流量計は、備えられていない。そこで、CPU82は、各利用ユニット30a〜30cの個別流量Qa〜Qcの演算も行う。このような動作を行うため、
図8に示すように、CPU82は、主として、流量把握部82a、個別流量演算部82b及び負荷演算部82cとして機能する。
【0069】
なお、各利用ユニット30a〜30cの負荷としては、具体的には、各利用ユニット30a〜30cにおける消費電力量、熱量が挙げられる。
【0070】
(4−1)流量把握部
流量把握部82aは、熱媒体回路40内を循環する水の流量Q、つまりは、各利用ユニット30a〜30cを流れる水の流量(即ち、個別流量Qa〜Qc)の合計値を把握する。本実施形態では、流量把握部82aが、二次側ポンプ46,47に関連する各種情報を用いて水の流量Qを推定することにより、熱媒体回路40内を循環する水の流量Qが把握される場合を例に採る。
【0071】
具体的には、流量把握部82aは、二次側ポンプ46,47の送水圧力Hの計測値と、二次側ポンプ46,47のインバータ周波数とを用いて、水の流量Qを推定する。二次側ポンプ46,47の送水圧力を“H1”、二次側ポンプ46,47のインバータ周波数を“f1”、水の流量を“Q1”とすると、これら二次側ポンプ46,47の各種情報及び水の流量Q1の関係は、例えば次式(1)における関数にて表される。
【0073】
上式(1)において、右辺の“a1”“a2”“a3”“a4”は、二次側ポンプ46,47のインバータ周波数の定格値、二次側ポンプ46,47の台数等に関するパラメータである。流量把握部82aは、差圧計48による計測値を“H1”に代入すると共に、二次側ポンプ46,47のインバータ周波数を“f1”、に代入する。そして、流量把握部82aは、各種数値が代入された上式(1)を、水の流量Q1について解くことで、熱媒体回路40内を循環する水の流量Q1を求めることができる。
【0074】
(4−2)個別流量演算部
個別流量演算部82bは、上記のようにして推定された結果である水の流量Q(具体的には、流量Q1)と、各利用側弁32a〜32cがどの程度の開度であるかを示す開度情報とに基づいて、各利用ユニット30a〜30cを流れる水の個別流量Qa〜Qcを演算する。
【0075】
具体的には、熱媒体回路40を構成する配管全てに係る抵抗係数を“R”、各利用ユニット30a〜30cに接続された部分配管Lk(
図9)それぞれに係る抵抗係数を“Rj”、各利用ユニット30a〜30cに流れる個別流量Qa〜Qcを“Qk”とした場合、次式(2)が成り立つ。
【0077】
ここで、部分配管Lkは、
図9に示すように、3つの配管Lk1,Lk2,Lk3によって構成されている。配管Lk1は、第2送りヘッダー43から分岐して各利用ユニット30a〜30cに接続されるまでの間の配管である。配管Lk2は、各利用ユニット30a〜30c内部に配設された配管であって、利用側熱交換器33a〜33c及び利用側弁32a〜32cを繋いでいる。配管Lk3は、各利用ユニット30a〜30cから流出した水が、戻りヘッダー41の手前にて再び合流するまでの間の配管である。
【0078】
部分配管Lkに係る抵抗係数“Rj”は、利用側弁32a〜32cがどのような開度であるのかによって、異なった値となる。つまり、抵抗係数“Rj”は、利用側弁32a〜32cの開度に応じた値を有すると言える。例えば、利用側弁32a〜32cの開度が大きい場合には、水は流れ易くなるため、抵抗係数“Rj”は小さくなる。逆に、利用側弁32a〜32cの開度が小さい場合には、水は流れにくくなるため、抵抗係数“Rj”は大きくなる。
【0079】
そして、利用側弁32a〜32cそれぞれは、互いに異なる開度を採ることができるため、各利用ユニット30a〜30cに対応する部分配管Lkに係る抵抗係数“Rj”の値も、互いに異なるようになる。なお、熱媒体回路40を構成する配管全てに係る抵抗係数“R”には、各利用ユニット30a〜30cに対応する部分配管Lkに係る抵抗係数“Rj”全てが含まれることから、抵抗配管“R”は、部分配管Lkに係る抵抗係数“Rj”全てに応じた値となる。
【0080】
そこで、個別流量演算部82bは、各利用側弁32a〜32cの開度情報に応じて部分配管Lkに係る抵抗係数“Rj”を求めると共に、求めた抵抗係数“Rj”全てを含む抵抗係数“R”を求める。個別流量演算部82bは、求めた配管抵抗“R”と流量把握部82aによって推定された水の流量Qとを、上記(2)式に代入する。そして、個別流量演算部82bは、各利用ユニット30a〜30cに対応する部分配管Lkに係る配管抵抗“Rj”を順に代入することで、各利用ユニット30a〜30cに流れる個別流量Qa〜Qcを、一つずつ求めていく。
【0081】
(4−3)負荷演算部
負荷演算部82cは、各種情報を用いて、各利用ユニット30a〜30cの負荷を求める。
【0082】
ここで、各種情報としては、上記のようにして求められた各利用ユニット30a〜30cに流れる個別流量Qa〜Qcの他に、各利用ユニット30a〜30cの入口側に関する入口条件が挙げられる。具体的に、各利用ユニット30a〜30c内部には、熱媒体としての水が配管L1(詳細には、
図7の配管Lk1)を介して流入されると共に、空気RAa〜RAcが吸い込みダクト31ab〜31cbを介して流入されるが、入口条件には、各利用ユニット30a〜30cに流入される水に関する条件ならびに空気に関する条件が含まれる。即ち、各利用ユニット30a〜30cの入口側には、水の入口側及び空気の入口側が含まれる。
【0083】
更に詳細には、水に関する条件には、各利用ユニット30a〜30cにおける水の入口温度が含まれる。空気に関する条件には、各利用ユニット30a〜30cにおける空気RAa〜RAcの流入口付近での該空気の温度及び湿度、各利用ユニット30a〜30cに流入される空気RAa〜RAcの風量が挙げられる。ここで、各利用ユニット30a〜30cにおける水の入口温度には、水用入口温度センサS1a〜S1cの検知結果が用いられる。空気RAa〜RAcの温度には、空気用入口温度センサS3a〜S3cの検知結果が用いられ、空気RAa〜RAcの湿度には、空気用入口湿度センサS4a〜S4cの検知結果が用いられる。
【0084】
そして、負荷演算部82cは、各利用ユニット30a〜30c全ての負荷の合計値を、上述した各種情報を用いて按分することにより、各利用ユニット30a〜30cの負荷を求める。具体的には、負荷演算部82cは、電力計49により計測された空調システム10全体の消費電力量に対して、各種情報を用いて按分動作を行う。各種情報には、上述したように、個別流量Qa〜Qcのみならず、水の入口温度や、空気の流入口付近での空気RAa〜RAcの温度及び湿度などが含まれている。各利用ユニット30a〜30cの負荷は、主として、個別流量Qa〜Qcに依存する。しかしながら、利用ユニット30a〜30c毎に、空気RAa〜RAcの温度や湿度、風量、水の入口温度等の、入口条件も異なっている。入口条件の違いは、各利用ユニット30a〜30cにおける利用側熱交換器33a〜33cでの熱交換の度合いにも影響を及ぼし、結果的には各利用ユニット30a〜30cの負荷にも影響を及ぼす。そこで、本実施形態に係る負荷演算部82cは、電力計49により計測された空調システム10全体の消費電力量を、個別流量Qa〜Qcのみならず、各利用ユニット30a〜30cの入口側に関する入口条件を用いて按分する。これにより、各利用ユニット30a〜30cの負荷は、正確に求められる。
【0085】
(5)空調システムの特徴
(5−1)
本実施形態に係る空調システム10では、熱媒体回路40内を循環する水の流量Qと各利用ユニット30a〜30cにおける利用側弁32a〜32cの開度情報とから、各利用ユニット30a〜30cの個別流量Qa〜Qcが求められる。そして、空調システム10では、該個別流量Qa〜Qcを用いて、各利用ユニット30a〜30cの消費電力量等である負荷が求められる。このように、本実施形態に係る空調システム10では、利用ユニット30a〜30cの設置台数に応じて流量計を複数設けずとも、各利用ユニット30a〜30cにおける負荷を求めることができる。従って、空調システム10全体としてのコストを削減することができる。
【0086】
(5−2)
特に、本実施形態では、各利用ユニット30a〜30cの負荷を求める際、各利用ユニット30a〜30cの個別流量Qa〜Qcのみならず、各利用ユニット30a〜30cの入口側に関する入口条件が用いられる。従って、空調システム10は、各利用ユニット30a〜30cの負荷を、正確に求めることができる。
【0087】
(5−3)
上記入口条件には、各利用ユニット30a〜30cにおける水の入口温度、各利用ユニット30a〜30cにおける空気の流入口付近での該空気RAa〜RAcの温度及び湿度、が含まれている。これにより、空調システム10は、各利用ユニット30a〜30cの負荷を、より正確に求めることができる。
【0088】
(5−4)
また、本実施形態では、利用ユニット30a〜30c全ての負荷の合計値、つまりは電力計49により計測された空調システム10全体の消費電力量を、個別流量Qa〜Qc及び上記入口条件を用いて按分することで、各利用ユニット30a〜30cの負荷が求められる。これにより、空調システム10は、各利用ユニット30a〜30cの負荷を、容易に求めることができる。
【0089】
(6)変形例
(6−1)変形例A
上記実施形態では、各利用ユニット30a〜30cの負荷の算出において、各利用ユニット30a〜30cの個別流量Qa〜Qc、及び各利用ユニット30a〜30cの入口側に関する入口条件が用いられる場合について説明した。
【0090】
しかし、各利用ユニット30a〜30cの負荷の算出には、各利用ユニット30a〜30cの入口側に関する入口条件は用いられず、各利用ユニット30a〜30cの個別流量Qa〜Qcのみが用いられても良い。
【0091】
(6−2)変形例B
また、上記実施形態に係る各利用ユニット30a〜30cの負荷の算出においては、更に、各利用ユニット30a〜30cにおける水の入口温度と水の出口温度との差である出入口温度差が用いられても良い。この場合、水用入口温度センサS1a〜S1cの検知結果と水用出口温度センサS2a〜S2cの検知結果との差が、出入口温度差として用いられる。これにより、各利用ユニット30a〜30cの負荷は、より正確に求められる。
【0092】
または、各利用ユニット30a〜30cの負荷の算出においては、各利用ユニット30a〜30cの入口側に関する入口条件は用いられずに、各利用ユニット30a〜30cの個別流量Qa〜Qcと出入口温度差とが用いられても良い。
【0093】
(6−3)変形例C
上記実施形態では、各利用ユニット30a〜30cの負荷の算出に用いられる入口条件として、各利用ユニット30a〜30cにおける水の入口温度、各利用ユニット30a〜30cにおける空気RAa〜RAcの流入口付近での該空気の温度及び湿度、各利用ユニット30a〜30cに流入される空気RAa〜RAcの風量が含まれると説明した。しかし、各利用ユニット30a〜30cの負荷の算出に用いられる入口条件は、これらの条件全てを含まずとも良い。これらの条件のうち少なくとも1つが入口条件として、各利用ユニット30a〜30cの負荷の算出に用いられても良い。
【0094】
(6−4)変形例D
上記実施形態では、熱媒体回路40内を流れる水の流量Qが、二次側ポンプ46,47のインバータ周波数と該ポンプ46,47の送水圧力Hとを用いて推定される場合について説明した。
【0095】
しかし、熱媒体回路40内を流れる水の流量Qは、二次側ポンプ46,47のインバータ周波数と、該ポンプ46,47の消費電力量とを用いて推定されてもよい。この場合、
図10に示すように、空調システム10には、二次側ポンプ46,47の消費電力値を計測するためのポンプ電力計149が備えられている。二次側ポンプ46,47の消費電力量を“P
pump”、二次側ポンプ46,47のインバータ周波数を“f2”、水の流量を“Q2”とすると、これら二次側ポンプ46,47の各種情報及び水の流量Q2の関係は、例えば次式(3)における関数にて表される。
【0097】
上式(3)において、左辺の“g1(Q2,f2)”“g2(Q2,f2)”“g3(Q2,f2)”“g4(Q2,f2)”は、それぞれ水の流量Q2及び二次側ポンプ46,47のインバータ周波数f2を変数とする関数を表しているが、互いに別々の関数である。この場合、流量把握部82aは、ポンプ電力計149による計測値を“P
pump”に代入すると共に、二次側ポンプ46,47のインバータ周波数を“f2”、に代入する。そして、空調システムコントローラ80(具体的には、流量把握部82a)は、各種数値が代入された上式(3)を、水の流量Q2について解くことで、熱媒体回路40内を循環する水の流量Q2を求めることができる。なお、上式(3)は、非線形方程式であるため、空調システムコントローラ80は、上式(3)を、2分法、セカント法、ニュートン・ラフソン法等を用いて解く。
【0098】
また、水の流量Qの推定には、二次側ポンプ46,47に並列接続されているバイパス弁45の開度が更に考慮されてもよい。
【0099】
(6−5)変形例E
熱媒体回路40内を流れる水の流量Qは、推定されるのではなく、実際に測定されてもよい。この場合、空調システム10には、上記変形例Dにて説明したポンプ電力計149は設けられず、
図11に示すように、流量計248が流量把握部として1つ設けられることとなる。流量計248は、配管L1上のうち、各利用ユニット30a〜30cから流出した水が合流して流れる部分であって、且つ戻りヘッダー41の手前側に取り付けられている。従って、流量計248は、熱媒体回路40を循環する水の流量Qを計測することができる。
【0100】
この場合、空調システムコントローラ80のCPU82は、流量計248によって計測された水の流量Qを用いて、個別流量の演算動作、ならびに各利用ユニットの負荷の演算動作を行う。
【0101】
(6−6)変形例F
上記実施形態では、二次側ポンプ46,47は、両方ともインバータ駆動される容量可変タイプのポンプである場合について説明した。しかし、二次側ポンプ46,47は、うち一方がインバータ駆動される容量可変タイプのポンプであり、他方が定量タイプのポンプであってもよい。
【0102】
また、二次側ポンプ46,47の台数は、
図1に示すように複数台でなくてもよく、1台であってもよい。
【0103】
(6−7)変形例G
上記実施形態では、循環ポンプが、インバータ駆動される容量可変タイプの二次側ポンプである場合について説明した。しかし、循環ポンプは、一次側ポンプであってもよい。
【0104】
また、一次側ポンプ44a〜44cは、インバータ駆動されるタイプであってもよい。更に、二次側ポンプ46,47及び一次側ポンプ44a〜44cの両方が、インバータ駆動される容量可変タイプのポンプであってもよい。
【0105】
(6−8)変形例H
上記実施形態の空調システム10では、チラーユニット20a〜20cを複数台備えている場合について説明した。しかし、チラーユニットは、1台であってもよい。
【0106】
(6−9)変形例I
上記実施形態では、熱媒体回路40内を循環する熱媒体が水である場合について説明した。しかし、熱媒体は、水以外であってもよい。
【0107】
(6−10)変形例J
上記実施形態では、各チラーユニット20a〜20cに含まれる圧縮機22が、運転容量可変タイプである場合について説明した。しかし、圧縮機22は、運転容量可変タイプではなく、運転容量を可変することのできない一定容量タイプであってもよい。なお、この場合の各チラーユニット20a〜20cは、一定速度で運転を行う、いわゆる定速熱源機となる。