(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6083171
(24)【登録日】2017年2月3日
(45)【発行日】2017年2月22日
(54)【発明の名称】転写具、その転写具に係わるリフィル及び転写具セット
(51)【国際特許分類】
B43L 19/00 20060101AFI20170213BHJP
B43M 11/06 20060101ALI20170213BHJP
B65H 35/07 20060101ALI20170213BHJP
【FI】
B43L19/00 H
B43M11/06
B65H35/07 E
【請求項の数】10
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2012-209389(P2012-209389)
(22)【出願日】2012年9月24日
(65)【公開番号】特開2014-61680(P2014-61680A)
(43)【公開日】2014年4月10日
【審査請求日】2015年8月7日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001351
【氏名又は名称】コクヨ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100085338
【弁理士】
【氏名又は名称】赤澤 一博
(72)【発明者】
【氏名】甲斐 啓二
(72)【発明者】
【氏名】笹谷 恵
(72)【発明者】
【氏名】福井 哲也
【審査官】
▲吉▼川 康史
(56)【参考文献】
【文献】
特開2009−029054(JP,A)
【文献】
特開2002−178694(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B43L 19/00
B43M 11/06
B65H 35/07
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
転写テープの繰出し及び巻取りを行うための対をなすリールをリフィル本体に支持させてなるリフィルと、このリフィル及び前記リールと異なった幅寸法を有する他のリールを備えた他のリフィルのいずれかを内部に選択的に収容可能なケースを備えた転写具本体とを具備してなり、
前記各リールが、前記リフィル本体の支軸に支持されるホイル部と、このホイル部の外周に連続させて設けられ外周に転写テープが巻装される胴部とを備えたものであり、前記リフィル本体が、少なくとも各リールに対応する部位が扁平なリフィルベースと、このリフィルベースの一面から前記各リールのホイル部に向けて突設された対をなす隆起部とを備えたものであり、前記各隆起部の先端面で対応する各リールのホイル部をそれぞれガイドしていることを特徴とする転写具。
【請求項2】
繰出用のリールから巻取用のリールに向かう前記転写テープを案内する転写ヘッドを備えてなる転写具であって、
前記転写テープの幅方向中央が前記転写ヘッドの中央を通過し得るように、前記各リールが前記転写ヘッドに対して位置付けられている請求項1記載の転写具。
【請求項3】
前記各リールにおける胴部の一部が、前記各隆起部の外周囲に被さるように配されている請求項1又は2記載の転写具。
【請求項4】
前記各隆起部における各リールの胴部に被われていない露出部分の露出幅寸法に対応した幅寸法を有する余白空間が、前記各リールの両側にそれぞれ形成されている請求項1、2又は3記載の転写具。
【請求項5】
請求項1又は2記載の転写具に用いられるリフィルであって、前記各リールが、ホイル部の外周に胴部を、該胴部のリフィルベース側の端面が前記ホイル部のリフィルベース側の側面に略面一となるように設けたものであるリフィル。
【請求項6】
請求項1、2又は3記載の転写具に用いられるリフィルであって、前記各リールが、ホイル部の外周に胴部を、該胴部のリフィルベース側の端部が前記ホイル部のリフィルベース側の側面よりもリフィルベース方向に延出させて設けたものであり、その延出寸法が、前記隆起部の突出寸法よりも小さな値に設定されているリフィル。
【請求項7】
リフィルベースに、繰出用のリールから巻取用のリールに向かう転写テープを案内する転写ヘッドを設けてなるリフィルであって、前記転写テープの幅方向中央が前記転写ヘッドの中央を通過し得るように、前記各リールが前記転写ヘッドに対して位置付けられている請求項5又は6記載のリフィル。
【請求項8】
前記各隆起部が、軸心を前記リールの軸心に合致させて設けられ外径が前記胴部の内径よりも小さく設定された円柱状のものであり、それら各隆起部の先端中心部分に前記各リールのホイル部を軸支する支軸が突設されている請求項5、6又は7記載のリフィル。
【請求項9】
請求項5記載のリフィル及び請求項6記載のリフィルを含む複数のリフィルを用意しておき、共通の転写具本体に前記リフィルのいずれかを選択的に装着し得るようにしたことを特徴とする転写具セット。
【請求項10】
転写テープの繰出し及び巻取りを行うための対をなすリールをリフィル本体に支持させてなるリフィルと、このリフィル及び前記リールと異なった幅寸法を有する他のリールを備えた他のリフィルのいずれかを内部に選択的に収容可能なケースを備えた転写具本体とを具備してなり、
前記各リールの両側に、当該リールよりも大きな幅寸法を有する他のリールを備えた他のリフィルを前記ケース内に代替収容し得るようにするための余白空間がそれぞれ略等しく形成されていることを特徴とする転写具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、転写テープを巻装保持したリールを有するリフィルを転写具本体に装着した状態で使用する転写具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、転写テープの繰出し及び巻取りを行うための対をなすリールをリフィル本体に支持させてなるリフィルと、このリフィルを着脱可能に収容するケースを備えた転写具本体とを具備してなる転写具が種々提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
上記特許文献1に記載の転写具は、共通の転写具本体に対して転写テープの幅寸法が異なる複数種類のリフィルを択一的に装着することによって、所要の幅寸法にて転写物を転写し得るようになっている。
【0004】
しかしながら、上記特許文献に記載された転写具では、リフィルを構成する各部品は転写テープの幅寸法に応じて、転写テープを巻装し得るリールの他、当該リールを保持する部品やリールを外部から被覆している転写具本体を構成する各部品など、大部分の部品が異なる形状のものとなっている。そうなると、このように共通の転写具本体に対して複数種類のリフィルを用意した、転写具セットという観点から考えれば当該転写具セットを構成する部品点数は、単一の転写具を構成する部品点数に比べて大幅に増加してしまうことになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002−178694号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、このような不具合に着目したものであり、部品点数の増加を抑えながら、複数種類の幅寸法を有する転写テープを適用することができる転写具を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、このような目的を達成するために、次のような手段を講じたものである。
【0008】
すなわち本発明に係る転写具は、転写テープの繰出し及び巻取りを行うための対をなすリールをリフィル本体に支持させてなるリフィルと、このリフィル及び前記リールと異なった幅寸法を有する他のリールを備えた他のリフィルのいずれかを内部に選択的に収容可能なケースを備えた転写具本体とを具備してなり、前記各リールが、前記リフィル本体の支軸に支持されるホイル部と、このホイル部の外周に連続させて設けられ外周に転写テープが巻装される胴部とを備えたものであり、前記リフィル本体が、少なくとも各リールに対応する部位が扁平なリフィルベースと、このリフィルベースの一面から前記各リールのホイル部に向けて突設された対をなす隆起部とを備えたものであり、前記各隆起部の先端面で対応する各リールのホイル部をそれぞれガイドしていることを特徴とする。
【0009】
このようなものであれば、隆起部の先端面と各リールのホイル部と、テープを巻装する胴部との相互位置を調整することによって、少なくともリフィルベースの形状を変えること無く種々のテープ幅に対応しやすくすることができる。
【0010】
ここで、リフィルベースから突設される隆起部は円柱状のものに限られない。多角形や、一部切り欠かれた円柱状等。要するに、先端面でリールのホイル部をガイドできればよい。
【0011】
そして、本発明の転写具が繰出用のリールから巻取用のリールに向かう前記転写テープを案内する転写ヘッドを備えてなる転写具である場合、前記転写テープの幅方向中央が前記転写ヘッドの中央を通過し得るように、前記各リールが前記転写ヘッドに対して位置づけられたものとすれば、転写テープの幅が変わっても、使用者の使用感が変わることが有効に回避される。
【0012】
転写具自体の大きさを変えることなく幅寸法が異なる複数の転写テープに対応し易くする構成として、前記各リールにおける胴部の一部が、前記各隆起部の外周囲に被さるように配されている構成を挙げることができる。
【0013】
転写具本体を構成する部品を転写テープの幅寸法に拘わらず共通化させやすくするための態様として、前記各隆起部における各リールの胴部に被われていない露出部分の露出幅寸法に対応した幅寸法を有する余白空間が、前記各リールの両側にそれぞれ形成されている態様を挙げることができる。
【0014】
そして上記転写具を構成するリフィルにおいて、小さい幅寸法を有する転写テープを適用させやすいリフィルベース及びリールの構成の一例として、前記各リールが、ホイル部の外周に胴部を、該胴部のリフィルベース側の端面が前記ホイル部のリフィルベース側の側面に略面一となるように設けるようにしたものが挙げられる。
【0015】
また共通のリフィルベースを使用しながら幅寸法が大きな転写テープを適用する場合は、前記各リールが、ホイル部の外周に胴部を、該胴部のリフィルベース側の端部が前記ホイル部のリフィルベース側の側面よりもリフィルベース方向に延出させて設けたものであり、その延出寸法が、前記隆起部の突出寸法よりも小さな値に設定されているようにすることが望ましい。
【0016】
転写テープの幅寸法に拘わらず良好な使用感を得やすいリフィルを構成するためには、リフィルベースに、繰出用のリールから巻取用のリールに向かう転写テープを案内する転写ヘッドを設けてなるリフィルであって、前記転写テープの幅方向中央が前記転写ヘッドの中央を通過し得るように、前記各リールが前記転写ヘッドに対して位置づけられているようにすることが好ましい。
【0017】
隆起部に胴部の幅寸法が異なるリールを適用しても好適にリールを支持させるための構成として、リール前記各隆起部が、軸心を前記リールの軸心に合致させて設けられ外径が前記胴部の内径よりも小さく設定された円柱状のものであり、それら各隆起部の先端中心部分に前記各リールのホイル部を軸支する支軸が突設されている構成を挙げることができる。ここで、隆起部は、必ずしも全体が支軸より大径である必要はない。
【0018】
そして、幅寸法が異なる転写テープのうち所望の転写テープを選択することができ、且つ何れの幅寸法のリフィルを適用しても好適に使用し得る本発明に係る転写具セットは、上記のリフィルを含む複数のリフィルを用意しておき、共通の転写具本体に前記リフィルのいずれかを選択的に装着し得るようにしたことを特徴とする。
【0019】
すなわち本発明に係る転写具は、転写テープの繰出し及び巻取りを行うための対をなすリールをリフィル本体に支持させてなるリフィルと、このリフィル及び前記リールと異なった幅寸法を有する他のリールを備えた他のリフィルのいずれかを内部に選択的に収容可能なケースを備えた転写具本体とを具備してなり、前記各リールの両側に、当該リールよりも大きな幅寸法を有する他のリールを備えた他のリフィルを前記ケース内に代替収容し得るようにするための余白空間がそれぞれ
略等しく形成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、部品点数の増加を抑えながら、複数種類の幅寸法を有する転写テープを適用することができる転写具セットを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図12】同実施形態に係る第三の転写具の
図6に対応した断面図。
【
図15】同実施形態に係る大幅リフィルの
図11に対応する断面図。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の一実施の形態について図面を参照して説明する。
【0023】
本実施形態に係る転写具セットSは、複数のリフィル、例えば小幅リフィル3a、中幅リフィル3b、大幅リフィル3cを用意しておき、共通の転写具本体2に前記リフィルのいずれかを選択的に装着し得るようにしたものである。しかしてこの転写具セットSにより構成される転写具としては、共通の転写具本体2に小幅リフィル3aを装着した第一の転写具1aと、中幅リフィル3bを装着した第二の転写具1bと、大幅リフィル3cを装着した第三の転写具1cとが挙げられる。
【0024】
まず、第二の転写具1bについて
図1乃至
図11に示して説明する。
【0025】
第二の転写具1bは、所定の幅寸法を有した転写テープT、例えば10mm幅の転写テープTの繰出し及び巻取りを行うための対をなすリール32、33をリフィル本体31に支持させてなる中幅リフィル3bと、この中幅リフィル3bを着脱可能に収容するケースを備えた共通の転写具本体2とを具備してなる。なお本実施形態では繰出し側のリールである繰出リール32と巻取り側のリールである巻取リール33とは互いに同形状をなしている。
【0026】
前記各リール32、33は、前記リフィル本体31の支軸311に支持されるホイル部32a、33aと、このホイル部32a、33aの外周に連続させて設けられ外周に転写テープTが巻装される胴部32b、33bと、この胴部32b、33bの両側縁に設けたフランジ32c、33cとを備えたものであり、合成樹脂により一体に成形されている。ホイル部32a、33aは、円形ディスク32e,33eと、この円形ディスク32e,33eの中心部に設けられた軸受32f、33fとを備えたものである。円形ディスク32e,33eは、中心に前記軸受32f、33fを一体にそなえた円板状のものでリフィル本体31に対向する一側面における前記軸受32f、33fを包囲する部位には図示しない逆転防止用のラチェット溝が放射状に形成され、本実施形態では巻取リール33のみが逆転を防止されている。また、円形ディスク32e,33eは、他側面には空転防止用のリブ32g、33gが形成されている。前記軸受32f、33fは、前記支軸311に回転可能に外装される円筒体状をなしている。前記胴部32b、33bは、前記軸受32f、33fよりも径が大きな円筒体状をなすもので、その一端部が前記ホイル部32a、33aの外周に一体化されている。すなわち、前記各リールは、胴部32b、33bの一部が、前記各隆起部の外周囲に被さるように配されているものである。緒述すると、胴部32b、33bは、リフィルベース側の端部が前記ホイル部32a、33aのリフィルベース側の側面よりもリフィルベース方向に延出させて設けたものであり、その延出寸法が、前記隆起部の突出寸法よりも小さな値に設定されている。フランジ32c、33cは、胴部32b、33bに巻装された転写テープTの横ずれを防止するためのもので、このフランジ32c、33cには転写テープTの残量を視認するための複数の円形窓32d、33dが円周方向に所定の間隔を空けて穿設されている。
【0027】
前記リフィル本体31は、扁平なリフィルベース5と、このリフィルベース5の一面から前記各リール32、33のホイル部32a、33aに向けて突設された対をなす隆起部4と、これら隆起部4の先端中心部分に突設された支軸311と、前記リフィルベース5の先端付近に設けられた取付部312とを備えたものであり、前記取付部312に、転写ヘッド34が設けられている。リフィルベース5は、各リールに対応する部位を円形状に構成した対をなす円板部分5aとこの円板部分5a同士及び一方の円板部分5a及び前記取付部312に対応する部位を直線状に繋ぐ帯板部分5bとを有した薄板状のものである。隆起部4は、前記リフィルベース5の円板部分5a一面から前記各リール32、33のホイル部32a、33aに向けて突設された対をなすものであり、前記各隆起部4の先端面4aで対応する各リールのホイル部32a、33aをそれぞれガイドしている。詳述すれば、各隆起部4は、軸心を前記リール32、33の軸心に合致させて設けられ外径が前記胴部32b、33bの内径よりも小さく設定された円柱状のものである。これら各隆起部4の先端中心部分に前記各リールのホイル部32a、33aを軸支する支軸311が突設されている。隆起部4の先端周縁部には円弧状をなす突条が形成されており、その突条により隆起部4の先端面4aが構成されている。この隆起部4の先端面4aは、リール32、33におけるホイル部32a、33aの一側面に摺接している。具体的には前記隆起部4の先端面4aは前記一側面におけるラチェット溝を囲う外側領域に摺接することにより前記各リール32、33をガイドしている。また前記隆起部4のうち巻取り用のリールである巻取リール33に対応する隆起部4には、前記ラチェット溝に係り合い巻取リール33の逆転を防止するための図示しないラチェット爪が設けられている。リフィルベース5の他面側には、転写具本体2の後述する第二ケース22に係わり合って中幅リフィル3b自体を位置決めするための位置決め凸部5c及び位置決め凹部5dが設けられている。詳述すれば、位置決め凸部5cは、巻取リール33に対応する隆起部4の内部に形成されている。位置決め凹部5dは、繰出用のリールである繰出リール32に対応する隆起部4の内部に形成されている。これら各隆起部4の先端に設けられた支軸311は、前記リールの軸受32f、33fに回転可能に貫装される切欠部分を有した円筒状の軸本体311aと、この軸本体311aの切欠部分に配設され前記軸受32f、33fの端面に弾性係合して該軸受32f、33fが軸本体から抜けることを防止する抜け止め爪311bとを有している。支軸311の先端には転写具本体2の後述する第一ケース2に当接して中幅リフィル3bを位置決めするための円形凸部311c及び十字凸部311dが設けられている。すなわち、巻取リール33側の支軸311には、横断面円形状の円形凸部311cが設けられている。繰出リール32側の支軸311には、横断面十字形状の十字凸部311dが設けられている。取付部312は、リフィルベース5の一面側から突設され第一のケースに係合する第一リブ312aと、他面側から突設され第二のケースに係合する第二リブ312bとを有している。第一リブ312aは、横断面十字状をなしたもので、この第一リブ312aに転写ヘッド34が設けられている。具体的には、転写ヘッド34はこの第一リブ312aに一体に形成されたヘッド本体34aと、このヘッド本体34aに支持された転写ローラ34bとを備えたものである。ヘッド本体34aは第一リブ312aに一体に設けられた板状のものであり、先端側両側には転写テープTの横ずれを防止するための対をなす概略三角経状をなしたガイド34cが設けられている。転写ローラ34bは、前記ガイド34cの先端間に回転可能に取り付けられている。
【0028】
続いて、第三の転写具1cを構成する大幅リフィル3cについて
図1、
図12及び
図15に特に示して説明する。大幅リフィル3cは、幅が最も広い転写テープT、例えば15mm幅の転写テープTの繰出し及び巻取りを行うための対をなすリール32、33をリフィル本体31に支持させてなる。この大幅リフィル3cを構成する部品であるリフィルベース5及び転写ヘッド34は、上記中幅リフィル3bを構成するもの同じものを使用している。しかして大幅リフィル3cはリール32、33の具体的寸法が中幅リフィル3bのリール32、33に比べて異なる。すなわち大幅リフィル3cでは中幅リフィル3bと比較した場合、15mm幅の転写テープTを巻装すべく、胴部32b、33bの寸法を5mm程度大きく設定してある。さらに胴部32b、33bは、リフィルベース5側の端部が前記ホイル部32a、33aのリフィルベース5側の側面よりもリフィルベース5方向に延出する寸法を大きく設定している。詳述すると、前記延出する寸法を2.5mm大きく設定している。これにより、転写テープTの中心は、上記中幅リフィル3b同様、転写ヘッド34の中央に位置付けられている。またこの大幅リフィル3cは転写ヘッド34の形状を上記中幅リフィル3bと同じくしている。
【0029】
さらに、第一の転写具1aを構成する小幅リフィル3aについて、
図1、
図13、
図14及び
図16に特に示して説明する。小幅リフィル3aは、幅が最も狭い転写テープT、例えば5mm幅の転写テープTの繰出し及び巻取りを行う為の対をなすリール32、33をリフィル本体31に支持させてなる。この小幅リフィル3aを構成する部品であるリフィルベース5は上記中幅リフィル3bと略同じ形状となっている。一方この小幅リフィル3aは上記転写ヘッド34に代えて、小幅ヘッド34sを適用している。この小幅ヘッド34sは、
図14に特に示すように厚み寸法が大きいガイド34cを適用するとともに寸法が短い転写ローラ34bを取り付けた態様をなす。これにより、5mm幅の転写テープTの横ずれを確実に抑制し得る。さらにリール32、33は、中幅リフィル3bよりも胴部32b、33bの寸法を5mm程度小さく設定している。詳述すると、前記各リール32、33が、ホイル部32a、33aの外周に胴部32b、33bを、該胴部32b、33bのリフィルベース5側の端面が前記ホイル部32a、33aのリフィルベース5側の側面に略面一となるように設けたものとしている。
【0030】
以下、共通の転写具本体2について説明する。
【0031】
転写具本体2は、上述した小幅リフィル3a、中幅リフィル3b及び大幅リフィル3cの何れも選択的に収容し、第一の転写具1a、第二の転写具1b、第3の転写具3cの何れかを構成し得る。換言すれば転写具本体2は、所定の幅寸法を有する転写テープを巻装するリール32、33を有するリフィル3a、3b、3c及び前記リール32、33と異なった幅寸法を有する他のリール32、33を備えた他のリフィル3a、3b、3cのいずれかを内部に選択的に収容し得るものである。この転写具本体2は、第一ケース21と、この第一ケース21に回転可能に取り付けられた第二ケース22と、第2ケース22にスライド可能に取り付けられたキャップ23と、第一ケース21に取り付けられた繰出ギヤ24と、繰出ギヤ24にクラッチ25を介して取り付けられた繰出端26と、繰出ギヤ24に噛合する中間ギヤ27及びこの中間ギヤ27に噛合する巻取ギヤ28と、この巻取ギヤ28に一体に形成される巻取端29とを有している。上記繰出ギヤ24、クラッチ25、繰出端26、中間ギヤ27、巻取ギヤ28及び巻取端29により、繰出リール32及び巻取リール33の回転を連動させる連動機構を構成している。第一ケース21は、何れかのリフィル3a、3b、3cの背面側を覆う背面板21aと、側面を覆う周壁21bによりリフィル3a、3b、3cを略収容し得る形状をなすものであり、リフィル本体31の取付部312を固定するための第一取付リブ21cと、巻取ギヤ28を支持する巻取軸21dと、繰出ギヤ24を支持する繰出軸21eと、第二ケース22に回転可能に係り合いヒンジを構成し得る第一ヒンジ部21fとを有している。第二ケース22は、リフィル3a、3b、3cの正面側を覆う正面板22aと、この正面板22aの縁部から起立して第一ケース21の周壁21bに対して着脱可能に係り得る周壁22bとを有した透明な樹脂からなるものである。この第二ケース22は、リフィル本体31の取付部312を固定する第二取付リブ22cと、リフィル3a、3b、3c装着後の繰出リール32及び巻取リール33をそれぞれ押える軸止凹部22e及び軸止凸部22dと、キャップ23をスライド可能に取り付けてなるキャップ取付部22gと、前記第一ヒンジ部21fに係り合いヒンジを構成する第二ヒンジ部22fとを有している。キャップ取付部22gは、第二ヒンジ部22fとは反対側の端部に形成されており、キャップ23を取り付けるための長穴であるスリット22hと、キャップ23の正確な動作を促すための溝であるレール22iとを有している。キャップ23は、第二ケース22にスライド可能に取り付けられたものであり、転写ヘッド34又は小幅ヘッド34sを被覆して不使用時に転写ヘッド34又は小幅ヘッド34sが周りのものに当接することを回避する被覆姿勢と、第二ケース22に添接して転写ヘッド34又は小幅ヘッド34sを転写具本体2から表出させる使用姿勢とで位置決めし得るものとなっている。このキャップ23は、その主体をなす湾曲板状のキャップ本体23aと、このキャップ本体23aから突設され上記スリット22hにおいて幅広く形成された中間位置に先端の膨出部分を通過させて第二ケース22側に取り付けられる膨出突起23bと、上記レールに沿って摺動し得るスライダ23cとを有している。繰出ギヤ24は、繰出軸21eに抜脱不能且つ回転可能に取り付けられており、繰出軸21eの先端側に繰出端26を取り付けている。詳述すると、繰出ギヤ24は、歯車形状の部分と繰出軸21eの先端側に近接した先端部分とを有し、先端部分をオーバーハング形状に形成している。そして当該オーバーハング部分に歯車部分から繰出端26を押し付けるべく例えば金属製のスプリングを取り付けることによりクラッチ25を構成している。また繰出端26の形状は上記円形ディスク32e,33eに設けられたリブ32gに係り合い得る形状としているので、使用による繰出リール32の回転は確実に繰出端26に伝えられる。一方巻取ギヤ28は巻取軸21dに回転可能且つ抜脱不能に取り付けてある。この巻取ギヤ28は歯数が適宜設定されることにより、リフィル3a、3b、3cの使用期間中は常に、繰り出される転写テープTの量よりも、多くの量の転写テープTを巻き取り得るスピードで回転する。これにより転写中の転写テープTの弛みが防止される。また繰出し側に対して早く巻き取ろうとすることにより発生するスピード差は上記クラッチ25により解消される。巻取ギヤ28に一体に成形されている巻取端29は、上記繰出端26同様上記円形ディスク33eに設けられたリブ33gに係り合い得る形状とし、繰出リール32から繰出端26、クラッチ25、巻取ギヤ28、中間ギヤ27を介して伝えられる巻取端29の回転は確実に巻取リール33に伝えられる。中間ギヤ27は、本実施形態では繰出ギヤ24、巻取ギヤ28に介在する位置で第一ケース21に形成された小突起に回転可能に取り付けられており、繰出ギヤ24、巻取ギヤ28に噛合する歯車部分よりも第一ケース21よりには前記歯車部分より大径の円板部分が形成されている。この円板部分が繰出ギヤ24、巻取ギヤ28と第一ケース21の背面板21aに挟まることで、第一ケース21からの抜脱が禁止されている。
【0032】
このような転写具を実現することができる前述した転写具セットSは、転写テープTの幅寸法が異なる複数種類の、具体的には3種類のリフィル3a、3b、3cを用意しておき、共通の転写具本体2に前記リフィル3a、3b、3cのいずれかを選択的に装着し得るように構成する。そして
図6、
図12及び
図13に示すように、何れのリフィル3a、3bを前記転写具本体2に装着すると、前記各リール32、33の両側に相互に略等しい幅寸法の余白空間s1、s2が第一の転写具1a及び第二の転写具1bにおいて形成されるようにしたものである。すなわち第一の転写具1a及び第二の転写具1bでは各リール32、33の両側に、当該リール32、33よりも大きな幅寸法を有する他のリール32、33を備えた大幅リフィル3aを前記ケースたる第一ケース21、第二ケース22内に代替収容し得るようにするための余白空間s1、s2がそれぞれ形成されている。また大幅リフィル3cを装着した場合は各リール32、33の両側には動作を許容し得る程度に略隙間無く配置される。
【0033】
このように、中幅リフィル3b、小幅リフィル3cにおいてリール32、33と隆起部4により形成される余白空間s1、s2がリール32、33の両側で略等しく形成されることで、各リフィル3a、3b、3cは転写テープTの幅寸法がそれぞれ異なっていても常に中心が転写ヘッド34の中心cに等しくなるようにしている。そして転写ヘッド34が取り付けられているリフィルベース5は転写具本体2に対して何れのリフィル3a、3b、3cにおいても同じ相対位置をとる。これにより、3種類のリフィル3a、3b、3cの何れを使用しても転写テープTの中心cと転写具本体2との相対位置は一定となる。その結果、本実施形態に係る転写具セットSは何れのリフィル3a、3b、3cを使用しても互いに使用感が変わることが無い。そのため、使用者はリフィル3a、3b、3cの互いの差異に拘わらず好適に転写具1a、1b、1cを使用することができる。
【0034】
以上のような構成とすることにより、本実施形態に係る各転写具は、隆起部4の先端面4aと各リールのホイル部32a、33aと、テープを巻装する胴部32b、33bとの相互位置を調整することによって、少なくともリフィルベース5の形状を変えること無く種々の幅寸法を有する転写テープTに対応しやすい仕様となっている。
【0035】
特に本実施形態では、前記転写テープTの幅方向中央が前記転写ヘッド34の中央を通過し得るように、前記各リールが前記転写ヘッド34に対して位置付けられたものとすれば、転写テープTの幅が変わっても、使用者の使用感が変わることが有効に回避されている。
【0036】
転写具1a、1b、1c自体の大きさを変えることなく幅寸法が異なる複数の転写テープTに対応し易くするために本実施形態では、中幅リフィル3b、大幅リフィル3cの前記各リールにおける胴部32b、33bの一部が、前記各隆起部4の外周囲に被さるように配されている構成を挙げることができる。
【0037】
転写具本体2を構成する部品を転写テープTの幅寸法に拘わらずを構成する部品を共通化させ部品の種類を少なくするために本実施形態では、小幅リフィル3a及び中幅リフィル3bでは、前記各隆起部4における各リールの胴部32b、33bに被われていない露出部分の露出幅寸法に対応した幅寸法を有する余白空間s1、s2が、前記各リール32、33の両側にそれぞれ形成するようにしている。
【0038】
また本実施形態では小幅リフィル3aにおいて、小さい幅寸法を有する転写テープTを適用させやすくするため、前記各リール32、33が、ホイル部32a、33aの外周に胴部32b、33bを、該胴部32b、33bのリフィルベース5側の端面が前記ホイル部32a、33aのリフィルベース5側の側面に略面一となるように設けるようにした。
【0039】
また共通のリフィルベース5を使用しながら幅寸法が大きな転写テープTを適用する中幅リフィル3b、大幅リフィル3cを構成するために本実施形態では、前記各リール32、33が、ホイル部32a、33aの外周に胴部32b、33bを、該胴部32b、33bのリフィルベース5側の端部が前記ホイル部32a、33aのリフィルベース5側の側面よりもリフィルベース5方向に延出させて設けたものとしている。具体的にはその延出寸法が中幅リフィルでは前記隆起部4の突出寸法よりも小さな値に設定するようにし、大幅リフィル3cでは隆起部の突出寸法に近い寸法、具体的には相対動作を許容するに足るクリアランスが生まれる程度の寸法に設定するようにしている。
【0040】
転写テープTの幅寸法に拘わらず良好な使用感を得やすいリフィル3a、3b、3cを構成するために本実施形態では、リフィルベース5に、繰出用のリールから巻取リール33に向かう転写テープTを案内する転写ヘッド34を設けてなるリフィル3a、3b、3cであって、前記転写テープTの幅方向中央が前記転写ヘッド34の中央を通過し得るように、前記各リールが前記転写ヘッド34に対して位置付けられているようにしている。
【0041】
そして、隆起部4に胴部32b、33bの幅寸法が異なるリール32、33を適用しても好適にリール32、33を支持させるために本実施形態では、リール前記各隆起部4が、軸心を前記リールの軸心に合致させて設けられ外径が前記胴部32b、33bの内径よりも小さく設定された円柱状のものであり、それら各隆起部4の先端中心部分に前記各リールのホイル部32a、33aを軸支する支軸311が突設されている構成を適用している。
【0042】
<変形例>
以下、本実施形態の変形例について
図17乃至
図19に示して説明する。なお当該変形例について上記実施形態の構成要素に相当するものについては同じ符号を付すとともに、その詳細な説明を省略する。
【0043】
本変形例に係る転写具セットSは、複数のリフィル、例えば小幅リフィル3a、中幅リフィル3b、大幅リフィル3cを用意しておき、共通の転写具本体2に前記リフィルのいずれかを選択的に装着し得るようにしたものである。本変形例に係る転写具は、上記実施形態同様、転写具セットSにより構成される転写具としては、共通の転写具本体2に小幅リフィル3aを装着した
図17に示す第一の転写具1aと、
図18に示す中幅リフィル3bを装着した第二の転写具1bと、
図19に示す大幅リフィル3cを装着した第三の転写具1cとが挙げられる。
【0044】
しかして本変形例に係る転写具1a、1b、1cは共通の転写具本体2を有するとともにリフィル3a、3b、3cのうちリフィルベースを共通の形状としているが、本変形例では上記実施形態とは異なり隆起部4を具備しない平板状のリフィルベースを適用している。そして各リフィル3a、3b、3cの各リール32、33は何れも、ホイル部32a、33aの外周に胴部32b、33bを、該胴部32b、33bのリフィルベース5側の端面が前記ホイル部32a、33aのリフィルベース5側の側面に略面一となるように設けた形状をなす。そして第一の転写具1a、第二の転写具1bでは、隆起部の代わりにそれぞれ厚み寸法が異なるスペーサ4Aを、小幅リフィル3a及び中幅リフィル3bが有するものとしている。
【0045】
図17及び
図18に示すように、小幅リフィル3a及び中幅リフィル3bでは、リフィルベース5及び各リール32、33とは別体のスペーサ4Aを介在させてなる。具体的にはスペーサ4Aは例えば環状をなした樹脂製の部材である。そしてこのスペーサ4Aの厚みが適宜調節されることにより、転写テープTの幅寸法に対応して厚み寸法がそれぞれことなる各リール32、33を適用しても、大幅リフィル3c同様、転写テープTの中心は、小幅ヘッド34s又は転写ヘッド34の中央に位置付けられている。当該変形例ではこのスペーサ4Aはリフィル3a、3b組立の際に支軸311に挿通させた後、各リール32、33を支軸に対して取り付ける態様をなす。
【0046】
そして本変形例に係る第一の転写具1a及び第二の転写具1bでは、上記の通り厚み寸法がそれぞれ異なるスペーサを各リール32、33とリフィルベース5との間に介在させることにより、各リール32、33の両側には、当該リール32、33よりも大きな幅寸法を有する他のリール32、33を備えた大幅リフィル3aを前記ケースたる第一ケース21、第二ケース22内に代替収容し得るようにするための余白空間s1、s2がそれぞれ形成されていることになる。そして勿論、大幅リフィル3cを装着する場合はスペーサ4Aをリフィルベース5から取り外した状態で各リール32、33が取り付けられる。その結果各リール32、33の両側には動作を許容し得る程度に略隙間無く配置される。
【0047】
このようなものであっても上記実施形態同様、スペーサ4Aの先端面4aと各リールのホイル部32a、33a、胴部32b、33bとの相互位置を調整することによって、少なくともリフィルベース5の形状を変えること無く種々の幅寸法を有する転写テープTに対応しやすい仕様となっている。
【0048】
なお本変形例ではスペーサ4Aとして環状の樹脂部材を適用したが勿論、支軸311に挿嵌するコイルスプリング等をリフィルベース5及び各リール32、33に介在するスペーサ4Aに代えて適用しても良い。
【0049】
以上、本発明の実施形態について説明したが、各部の具体的な構成は、上述した実施形態のみに限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変形が可能である。
【0050】
例えば、上記実施形態並びに変形例ではリフィルベースから隆起した隆起部及びリフィルベース並びにリールとは別体のスペーサや前記コイルスプリング等を適用する態様を開示したが勿論、リールのホイル部を胴部からリフィルベースへ向けて隆起させることにより、リール側に隆起部を設けた態様としても良い。また上記実施形態並びに変形例ではテープの幅寸法が互いに異なる3種類のリフィルを用いた転写具セットを開示したが、勿論、さらに幅寸法がことなる転写テープを実現しても良い。また転写具セットを構成する各リフィルは常に同じ転写物が塗布された転写テープを適用しているとは限らない。例えば粘着剤を塗布し得るリフィルの他に修正剤を塗布し得るリフィルを用いたり、粘着剤がテープに間欠的に塗布されるパターンが互いに異なる転写テープを用いたリフィルを適用したりしたものであってもよい。そして上記実施形態並びに変形例ではクラッチを金属製のスプリングを利用して実現した態様を開示したが勿論、部品同士の係合時の摩擦を利用したものであってもよい。また繰出リールと巻取リールの連動はギヤを利用したものに限られず、繰出側、巻取側にそれぞれプーリを設け、これらプーリにベルトをすべり可能に巻き掛けた態様としても良い。その他テープの幅寸法や転写物自体の特性といった具体的な態様は上記実施形態並びに変形例のものに限定されることはなく、既存のものを含め、種々の態様のものを適用することができる。
【0051】
その他、各部の具体的構成についても上記実施形態並びに変形例に限られるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変形が可能である。
【産業上の利用可能性】
【0052】
本発明は転写テープを巻装保持したリールを有するリフィルを転写具本体に装着した状態で使用する転写具として利用することができる。
【符号の説明】
【0053】
1a…転写具(第一の転写具)
1b…転写具(第二の転写具)
1c…転写具(第三の転写具)
2…転写具本体
21…ケース(第一ケース)
22…ケース(第二ケース)
3a…リフィル(小幅リフィル)
3b…リフィル(中幅リフィル)
3c…リフィル(大幅リフィル)
T…転写テープ
31…リフィル本体
311…支軸
32…繰出用のリール(繰出リール)
33…巻取用のリール(巻取リール)
32a、33a…ホイル部
32b、33b…胴部
34…転写ヘッド
34a…転写ヘッド(小幅ヘッド)
4…隆起部
4A…隆起部(スペーサ)
4a…先端面
5…リフィルベース
s1、s2…余白空間