特許第6083173号(P6083173)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6083173空気調和装置及びそれに用いられる圧縮機
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6083173
(24)【登録日】2017年2月3日
(45)【発行日】2017年2月22日
(54)【発明の名称】空気調和装置及びそれに用いられる圧縮機
(51)【国際特許分類】
   F25B 1/00 20060101AFI20170213BHJP
   F25B 31/02 20060101ALI20170213BHJP
   F04C 29/12 20060101ALI20170213BHJP
【FI】
   F25B1/00 321N
   F25B31/02 Z
   F04C29/12 A
   F04C29/12 E
【請求項の数】5
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2012-213599(P2012-213599)
(22)【出願日】2012年9月27日
(65)【公開番号】特開2014-66472(P2014-66472A)
(43)【公開日】2014年4月17日
【審査請求日】2015年8月31日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006611
【氏名又は名称】株式会社富士通ゼネラル
(72)【発明者】
【氏名】板倉 俊二
(72)【発明者】
【氏名】船田 和也
(72)【発明者】
【氏名】藤 利行
【審査官】 鈴木 充
(56)【参考文献】
【文献】 特開平08−319965(JP,A)
【文献】 特開昭62−106265(JP,A)
【文献】 特開2011−047535(JP,A)
【文献】 特開平06−002680(JP,A)
【文献】 特開2001−99080(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F25B 1/00,31/02
F04C 29/04,29/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
冷媒の圧縮部および前記圧縮部を駆動するモータを密閉容器に内蔵した内部低圧型の圧縮機を有する冷凍サイクルを備えた空気調和装置であって、
前記圧縮機には、冷媒を吐出する吐出管と、冷媒を吸入する第一の冷媒導入管と第二の冷媒導入管とが設けられており、
前記吐出管は、前記密閉容器の一端に接続され、
前記第二の冷媒導入管は、前記密閉容器の他端に接続され、
前記密閉容器内には、前記第二の冷媒導入管から前記吐出管にかけて前記モータ、前記圧縮部が順に配置されており、
前記第一の冷媒導入管は、前記密閉容器の前記モータの上方から前記圧縮部までの間の位置に接続され、
前記第一の冷媒導入管と前記第二の冷媒導入管は、前記第二の冷媒導入管に供給する冷媒量を調整する流量調整手段を介して接続され
前記密閉容器内において、前記第一の冷媒導入管の先端開口部に対向する位置にガイド板が設けられ、前記ガイド板は、前記第一の冷媒導入管によって前記密閉容器内に導入された冷媒の一部を前記モータへ案内することを特徴とする空気調和装置。
【請求項2】
前記空気調和装置は、運転を制御する制御手段と、前記圧縮機の負荷を検知する負荷検知手段とを備え、
前記制御手段は、前記負荷検知手段で高負荷状態を検知した時に、前記第二の冷媒導入管を通過する冷媒量を増大させる方向に前記流量調整手段を制御し、かつ、前記負荷検知手段で低負荷状態を検知した時に、前記第二の冷媒導入管を通過する冷媒量を減少させる方向に前記流量調整手段を制御する制御手段と、を備えたことを特徴とする請求項1に記載の空気調和装置
【請求項3】
前記負荷検知手段は、前記圧縮機の吐出温度を検出する吐出温度検出手段であり、
前記制御手段は、前記吐出温度検出手段の検出値が所定温度以上の場合、前記高負荷状態と判断し、所定温度以下の場合、前記低負荷状態と判断することを特徴とする請求項2に記載の空気調和装置
【請求項4】
前記流量調整手段は、前記第二の冷媒導入管を通過する冷媒量を段階的に制御する流量制御弁であることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか一つに記載の空気調和装置。
【請求項5】
冷媒の圧縮部および前記圧縮部を駆動するモータを密閉容器に内蔵した内部低圧型の圧縮機であって、
前記密閉容器には、冷媒を吐出する吐出管と、冷媒を吸入する第一の冷媒導入管と第二の冷媒導入管とが設けられており、
前記吐出管は、前記密閉容器の一端に接続され、
前記第二の冷媒導入管は、前記密閉容器の他端に接続され、
前記密閉容器内には、前記第二の冷媒導入管から前記吐出管にかけて前記モータ、前記圧縮部が順に配置されており、
前記第一の冷媒導入管は、前記密閉容器の前記モータの上方から前記圧縮部までの間の位置に接続され、
前記第一の冷媒導入管と前記第二の冷媒導入管は、前記第二の冷媒導入管に供給する冷媒量を調整する流量調整手段を介して接続され
前記密閉容器内において、前記第一の冷媒導入管の先端開口部に対向する位置にガイド板が設けられ、前記ガイド板は、前記第一の冷媒導入管によって前記密閉容器内に導入された冷媒の一部を前記モータへ案内することを特徴とする圧縮機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、冷媒の圧縮部および駆動モータを密閉容器に内蔵した圧縮機を冷凍サイクルに備えた空気調和装置に関し、特に、圧縮機が内部低圧型である空気調和装置に関する。
【背景技術】
【0002】
空気調和装置の冷凍サイクルに用いられる圧縮機は、圧縮部とモータとが一体となって密閉容器に内蔵された密閉型の圧縮機として構成されるのが一般的である。
【0003】
このような密閉型の圧縮機は、冷凍サイクルを循環して低圧となって戻ってきた冷媒を密閉容器内に導入し、その密閉容器に導入した冷媒を圧縮部に供給して圧縮するようになっている。このとき、密閉容器に導入する低圧冷媒の一部を密閉容器内で分流してモータの冷却用として用い、モータを冷却した後に圧縮部に供給するようにした内部低圧型の圧縮機が存在する。
【0004】
ところが、このように分流した冷媒の一部でモータを冷却する場合、冷却の際に冷媒がモータから吸熱するため冷媒密度が低下する。すると、モータを冷却して密度が低下した冷媒が圧縮部に供給されるため、圧縮機の圧縮効率が低下し、ひいては、冷暖房能力が低下してしまう。
【0005】
また、外気温度が高い条件下では圧縮機が高負荷状態となり、モータの発熱も大きくなる。しかし、モータを冷却する冷媒の量は通常時と変わらないため、モータを十分に冷却できなくなってモータ効率が低下してしまう。
【0006】
これに対して、従来では、戻ってきた冷媒を密閉容器に導入する吸入管を2つに分岐し、一方の吸入管を、この吸入管から流入する冷媒がモータの配置室に導入される位置に連通するようにし、もう一方は直接圧縮部へ導入される位置に連通するようにした圧縮機がある(例えば、特許文献1参照)。この場合、モータの配置室に一部の冷媒を直接導入することができるため、モータを積極的に冷却できるようになり、高負荷時におけるモータ効率の低下を抑制することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平9−236092号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1に開示された圧縮機では、分岐管からモータの配置室に導入される冷媒量は、モータの発熱量が最も大きい時にモータを十分に冷却する量を確保する必要がある。従って、圧縮機が低負荷状態でモータの冷却があまり必要の無い状態であっても、分岐管から必要量以上の冷媒がモータの配置室に導入されることになる。
【0009】
このため、モータの配置室に導入された必要量以上の冷媒がモータから吸熱することになり、圧縮部に供給される冷媒の密度が低下するため、低負荷時に圧縮機の圧縮効率が低下してしまう。
【0010】
また、前記分岐管からモータの配置室に冷媒を導入した場合、この冷媒はモータの配置室を経由して圧縮部に至ることになる。このため、圧縮部の吸入口までの流入経路が長くなって低負荷時における圧損が増大し、これによっても冷媒の密度が更に低下されて圧縮機の圧縮効率が低下してしまう。
【0011】
そこで、本発明は、上記の問題に鑑みてなされたものであり、高負荷時にモータの冷却効率を高めつつ、低負荷時に圧縮機の圧縮効率の低下を抑制して、空調能力をより高めることができる空気調和装置及びそれに用いられる圧縮機を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の請求項1に記載の空気調和装置は、冷媒の圧縮部および前記圧縮部を駆動するモータを密閉容器に内蔵した内部低圧型の圧縮機を有する冷凍サイクルを備えた空気調和装置であって、前記圧縮機には、冷媒を吐出する吐出管と、冷媒を吸入する第一の冷媒導入管と第二の冷媒導入管とが設けられており、前記吐出管は、前記密閉容器の一端に接続され、前記第二の冷媒導入管は、前記密閉容器の他端に接続され、前記密閉容器内には、前記第二の冷媒導入管から前記吐出管にかけてモータ、圧縮部が順に配置されており、前記第一の冷媒導入管は、前記密閉容器の前記モータの上方から前記圧縮部までの間の位置に接続され、前記第一の冷媒導入管と前記第二の冷媒導入管は、前記第二の冷媒導入管に供給する冷媒量を調整する流量調整手段を介して接続され、前記密閉容器内において、前記第一の冷媒導入管の先端開口部に対向する位置にガイド板が設けられ、前記ガイド板は、前記第一の冷媒導入管によって前記密閉容器内に導入された冷媒の一部を前記モータへ案内することを特徴とする。
【0013】
本発明の請求項2に記載の空気調和装置は、請求項1に記載の空気調和装置において、
前記空気調和装置は、運転を制御する制御手段と、前記圧縮機の負荷を検知する負荷検知手段とを備え、前記制御手段は、前記負荷検知手段で高負荷状態を検知した時に、前記第二の冷媒導入管を通過する冷媒量を増大させる方向に前記流量調整手段を制御し、かつ、前記負荷検知手段で低負荷状態を検知した時に、前記第二の冷媒導入管を通過する冷媒量を減少させる方向に前記流量調整手段を制御する制御手段と、を備えたことを特徴とする。
【0014】
本発明の請求項3に記載の空気調和装置は、請求項2に記載の空気調和装置において、前記負荷検知手段は、前記圧縮機の吐出温度を検出する吐出温度検出手段であり、前記制御手段は、前記吐出温度検出手段の検出値が所定温度以上の場合、前記高負荷状態と判断し、所定温度以下の場合、前記低負荷状態と判断することを特徴とする。
【0015】
本発明の請求項4に記載の空気調和装置は、請求項1ないし3に記載の空気調和装置において、前記流量調整手段は、前記第二の冷媒導入管を通過する冷媒量を段階的に制御する流量制御弁であることを特徴とする。
【0016】
本発明の請求項5に記載の圧縮機は、冷媒の圧縮部および前記圧縮部を駆動するモータを密閉容器に内蔵した内部低圧型の圧縮機であって、前記密閉容器には、冷媒を吐出する吐出管と、冷媒を吸入する第一の冷媒導入管と第二の冷媒導入管とが設けられており、前記吐出管は、前記密閉容器の一端に接続され、前記第二の冷媒導入管は、前記密閉容器の他端に接続され、前記密閉容器内には、前記第二の冷媒導入管から前記吐出管にかけて前記モータ、前記圧縮部が順に配置されており、前記第一の冷媒導入管は、前記密閉容器の前記モータの上方から前記圧縮部までの間の位置に接続され、前記第一の冷媒導入管と前記第二の冷媒導入管は、前記第二の冷媒導入管に供給する冷媒量を調整する流量調整手段を介して接続され、前記密閉容器内において、前記第一の冷媒導入管の先端開口部に対向する位置にガイド板が設けられ、前記ガイド板は、前記第一の冷媒導入管によって前記密閉容器内に導入された冷媒の一部を前記モータへ案内することを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明の請求項1に記載の空気調和装置によれば、第一の冷媒導入管から導入された冷媒の大部分は圧縮部で圧縮され、また、第二の冷媒導入管から導入された冷媒は、必ずモータを通過するのでモータを積極的に冷却することができる。このとき、前記第一の冷媒導入管と前記第二の冷媒導入管は、前記第二の冷媒導入管に供給する冷媒量を調整する流量調整手段を介して接続されているので、前記流量調整手段によって前記モータを通過する冷媒量を変化させることができる。従って、前記圧縮機の負荷状態に応じて前記流量調整手段を動作させることにより、高負荷時に前記モータの冷却効率を高めつつ、低負荷時に前記圧縮機の圧縮効率の低下を抑制して、空気調和装置の空調能力を高めることができる。
【0018】
本発明の請求項2及び3に記載の空気調和装置によれば、請求項1に記載の空気調和装置の効果に加えて、制御手段は、負荷検知手段によって検知した前記圧縮機の負荷状態に応じて前記流量調整手段を制御し、前記第二の冷媒導入管を通過する冷媒量を制御するようになっている。つまり、前記流量調整手段を制御する前記制御手段は、高負荷時に前記第二の冷媒導入管を通過する冷媒量を増大する方向に制御し、かつ、低負荷時に前記第二の冷媒導入管を通過する冷媒量を減少する方向に制御することができる。
【0019】
従って、前記圧縮機の高負荷状態で前記モータが過熱状態の場合は、前記第二の冷媒導入管を通過する冷媒量が増大されることにより、前記モータの冷却効率を高めることができる。一方、前記圧縮機の低負荷状態で前記モータを積極的に冷却する必要の無い場合は、前記第二の冷媒導入管を通過する冷媒量を減少させることにより、前記モータから吸熱して密度低下する冷媒量を減少させ、かつ、前記圧縮部までの長い経路を通過する冷媒量を減少させて圧損を低減することができる。これにより、低負荷時に、密度が低下した状態で前記圧縮部に至る冷媒量および冷媒の圧損を減少して、前記圧縮機の圧縮効率が低下するのを抑制できる。
【0020】
本発明の請求項4に記載の空気調和装置によれば、請求項1ないし3に記載の空気調和装置の効果に加えて、前記流量調整手段を流量制御弁とし、前記第二の冷媒導入管を通過する冷媒量を段階的に制御できるようにしたので、前記第二の冷媒導入管を通過する冷媒量をより緻密に制御できるようになる。これにより、前記圧縮機の負荷状態に応じて前記モータを通過する冷媒量を緻密に調整できるので、前記空気調和装置の空調能力をより高めることができる。
【0021】
本発明の請求項5に記載の圧縮機によれば、請求項1と同様の効果を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1図1は、本発明の空気調和装置の一実施形態を示す概略構成図である。
図2図2は、図1に示す空気調和装置に用いられる圧縮機の拡大断面図である。
図3図3は、圧縮機の第二の冷媒導入管を通過する冷媒量を制御するフローチャートである。
図4図4は、他の実施例において、吐出温度と流量制御弁の開度との関係を示す表である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明に係る好適な実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0024】
図1に示すように、本実施形態の空気調和装置1は、圧縮機2、室外熱交換器3、減圧手段4および室内熱交換器5を有する冷凍サイクル6を備えている。減圧手段4としては、一般に膨張弁やキャピラリチューブが用いられている。また、空気調和装置1は、通常、冷房および暖房が可能となっており、冷凍サイクル6には、冷房と暖房を切り換えるための四方弁7が圧縮機2の吐出側に設けられている。
【0025】
そして、空気調和装置1で室内を冷房する際には、図中の四方弁7内の実線に沿って冷媒流路を形成し、圧縮機2の吐出冷媒を室外熱交換器3へと供給して、冷媒は図中a方向に循環する。一方、室内を暖房する際には、図中の四方弁7内の破線に沿って冷媒流路を形成し、圧縮機2の吐出冷媒を室内熱交換器5へと供給して、冷媒は図中b方向に循環する。
【0026】
従って、空気調和装置1で室内を冷房する際には、圧縮機2から吐出された高温高圧の気相冷媒を室外熱交換器3で冷却して高圧の液相冷媒とし、この冷媒を減圧手段4で断熱膨張させて圧力と温度を下げた後、室内熱交換器5で気化させ、その後、圧縮機2に戻すようになっている。この場合、室外熱交換器3は凝縮器として機能し、室内熱交換器5は蒸発器として機能する。これによって、室内熱交換器5で低温低圧の冷媒が室内空気と熱交換を行い、冷房運転を行う。
【0027】
一方、空気調和装置1で室内を暖房する際には、冷房の時とは逆に、圧縮機2から吐出された高温高圧の気相冷媒を室内熱交換器5で冷却して高圧の液相冷媒とし、この冷媒を減圧手段4で断熱膨張させて圧力と温度を下げた後、室外熱交換器5で気化させて気相冷媒とし、圧縮機2に戻すようになっている。この場合、室外熱交換器3は蒸発器として機能し、室内熱交換器5は凝縮器として機能する。これによって、室内熱交換器5で高温高圧の冷媒が室内空気と熱交換を行い、暖房運転を行う。
【0028】
本実施形態の圧縮機2は、図2に示すように、上下端が上部閉止板231、下部閉止板232によって閉塞される円筒状をなしている密閉容器230に、冷媒を圧縮する圧縮部210と、この圧縮部210を駆動するモータ220とが内蔵されている。以下、圧縮機2は図2における上方を上方、下方を下方として証明するものとする。
【0029】
圧縮機2は、図1にも示すように、密閉容器230の一端、すなわち、上端部に冷媒吐出管240が接続される。そして、冷媒吐出管240は、吐出経路6aを介して四方弁7に接続され、圧縮機2で圧縮した冷媒を冷凍サイクル6に循環させるようになっている。
【0030】
また、本実施形態では、密閉容器230の側面に第一の冷媒導入管241および第二の冷媒導入管242が接続されている。第一の冷媒導入管241は、図1に示すように、戻り経路6bを介して四方弁7に接続され、かつ、第一の冷媒導入管241は、分岐経路6cを介して第二の冷媒導入管242に接続されている。ここで、分岐経路6cは銅パイプなどの冷媒配管が用いられ、通過させる冷媒流量に合わせて配管の径を選択することができる。また、この分岐経路6cには、詳細に後述するように流量調整手段としての開閉弁250が設けられる。
【0031】
第二の冷媒導入管242は、図2にも示すように、密閉容器230の側方下部に接続されている。本実施形態では、モータ220と下部閉止板231との間に接続されている。
【0032】
密閉容器230の内部は、密閉容器230内に部屋を区画する隔成壁233が設けられており、第二の冷媒導入管242から冷媒吐出管240にかけて、モータ220、隔成壁233、圧縮部210が順に配置されている。すなわち、隔成壁233を境にして、上方に圧縮部210が配置され、下方に圧縮部210を駆動するモータ220が配置される。このとき、隔成壁233を境にして圧縮部210を配置した内部が圧縮部配置室R1となり、かつ、モータ220を配置した内部がモータ配置室R2となっている。
【0033】
圧縮部210は、本実施形態ではスクロール圧縮機の圧縮部として構成されている。このスクロール圧縮機は、一対の同一形状の渦巻き体211、212を有し、それぞれの渦巻き体211、212を対向させて、それぞれを部分的に密接させるようにして圧縮部210を構成しているものである。
【0034】
圧縮部210の外周側から吸い込まれた冷媒は、圧縮部210内で圧縮されつつ中心方向へと案内される。その後圧縮部上方へ流出した高温高圧の冷媒は冷媒吐出管241へ導出される。
【0035】
また、隔成壁233は、これの外周縁部の一部が切り欠かれて、モータ配置室R2と圧縮部配置室R1とを連通する連通路233となっている。尚、図1中には圧縮機2内の冷媒の流れを矢印で示してある。
【0036】
モータ220は、密閉容器230の内周に圧入固定される環状のステータ221と、このステータ221の内周に僅かな隙間δを設けて回転自在に配置されるロータ222とを備えている。
【0037】
ステータ221には、モータ巻線223が巻回されており、かつ、ロータ222は、外周にN極とS極が交互に等間隔をもって複数着磁された永久磁石が配置されている。そして、モータ巻線223に、制御手段8によって制御された電流が印加されることにより、ロータ222が回転されるようになっている。
【0038】
ロータ222の回転中心には、このロータ222と一体となって回転するように回転出力軸224が貫通している。この回転出力軸224の上端部は、隔成壁233に設けた軸受部B1に回転自在に支持される。この回転出力軸224の回転で渦巻き体212が偏心回転運動をするようになっており、これによって圧縮部210が冷媒の圧縮を行う。
【0039】
第一の冷媒導入管241は、密閉容器230のモータ230より上方から圧縮部210までの間の位置、すなわち、圧縮部配置室R1とモータ配置室R2との間の連通路237に対応する位置に接続されている。このとき、第一の冷媒導入管241が密閉容器230内に接続する先端開口部241aに対向する位置に、ガイド板243が設けられている。
【0040】
ガイド板243は、第一の冷媒導入管241から密閉容器230内に導入される冷媒を、圧縮部配置室R1とモータ配置室R2とに分流する。ガイド板243による冷媒の分流割合は、ガイド板243の圧縮部配置室R1側端部よりモータ配置室R2側端部が密閉容器230の内壁に近接するように傾斜させることにより、第一の冷媒導入管241から導入される冷媒の多くを圧縮部配置室R1側に案内し、残りの必要かつ最少量の冷媒をモータ配置室R2側に案内するようになっている。
【0041】
従って、本実施形態の圧縮機2では、第一の冷媒導入管241から圧縮部配置室R1とモータ配置室R2との間に導入されて、ガイド板243によって圧縮部配置室R1に案内された冷媒のうちの大部分は、圧縮部210に直接取り込まれて圧縮される。
【0042】
一方、第二の冷媒導入管242からモータ220と下部閉止板231との間に導入された冷媒は、モータ220の上述した上下に連通する隙間を通過してモータ220を冷却する。また、上述したように、第一の冷媒導入管241から導入されてガイド板243によってモータ配置室R2側に案内された必要かつ最少量の冷媒によってもモータ220の冷却が行われる。そして、モータ220を冷却した後の全ての冷媒は、連通路237を通って圧縮部配置室R1へと流入して圧縮部210に取り込まれる。
【0043】
ところで、第一の冷媒導入管241および第二の冷媒導入管242から密閉容器230内に導入される冷媒は、冷凍サイクル6を循環した戻り冷媒であり低圧となっている。このため、本実施形態の圧縮機2は、モータ配置室R2内が低圧の気相冷媒で充満されるため内部低圧型となっている。
【0044】
また、本実施形態では、第二の冷媒導入管242へ冷媒を供給する分岐経路6cに流量調整手段としての開閉弁250を設け、この開閉弁250の開閉により第二の冷媒導入管242を通過する冷媒量を調整できるようになっている。従って、開閉弁250を開弁した時には、第二の冷媒導入管242からモータ220と下部閉止板231との間に冷媒の一部が供給されて、モータ220を積極的に冷却できるようになっている。一方、開閉弁250を閉弁した時には、第二の冷媒導入管242からモータ220に冷媒が供給されるのが停止されるようになっている。
【0045】
ここで、図1に示すように、空気調和装置1は、運転を制御するための制御手段8が設けられており、この制御手段8は、負荷検知手段としての吐出温度センサK1の温度情報を取り込んで、圧縮機2の負荷状態を検知するようになっている。そして、制御手段8は、検知した負荷状態に応じて開閉弁250に開閉駆動信号を出力するようになっている。
【0046】
すなわち、制御手段8は、吐出温度センサK1からの信号によって高負荷状態を検知した時に、開閉弁250に開弁信号を出力して、第二の冷媒導入管242を通過する冷媒量を増大させる方向に制御する。また、低負荷状態を検知した時に、開閉弁250に閉弁信号を出力して、第二の冷媒導入管242を通過する冷媒量を減少させる方向に制御する。尚、本実施形態では、低負荷状態は通常負荷状態を含むものとする。
【0047】
本実施形態では、図3のフローチャートに示すように、吐出温度が、例えば100゜C以上で圧縮機2が高負荷状態にあると判断し、吐出温度が、例えば90゜C以下で圧縮機2が低負荷状態にあると判断するようになっている。
【0048】
すなわち、上記フローチャートでは、空気調和装置1がオンされて制御がスタートすると、まず、吐出温度が100゜C以上かどうかを判断し(ステップS1)、100゜C以上である場合は開閉弁250を開弁する(ステップS2)。そして、この開弁状態で運転した後、吐出温度が90゜C以下になったかどうかを判断し(ステップS3)、90゜C以下になった場合は開閉弁250を閉弁する(ステップS4)。尚、高負荷状態や低負荷状態を判断する吐出温度は、圧縮機2の容量やモータ220の種類あるいは冷媒の種類等によって異なるため、上述した100゜Cや90゜Cに限定されるものでは無い。
【0049】
ところで、本実施形態では、吐出温度センサK1を負荷検知手段として用い、圧縮機2の吐出温度情報で負荷状態を判断するようにしたが、これ以外の情報であっても圧縮機2の負荷状態を判断することができる。
【0050】
例えば、図1に示すように、圧縮機2の回転数センサK2の回転数情報であってもよい。また、これ以外にも室外熱交換器3の温度センサK3、室内熱交換器5の温度センサK4、圧縮機2の吸入温度センサK5、外気温センサK6等の各種温度情報であってもよい。更に、圧縮機2の吸入圧力センサK7、室外熱交換器3の圧力センサK8、室内熱交換器5の圧力センサK9の各種圧力情報であってもよい。この場合、それぞれのセンサK2〜K9を負荷検知手段として用いることができる。なお、これらの情報は、数値が高いと高負荷とし、数値が低いと低負荷とする。
【0051】
勿論、負荷状態は、各センサK1〜K9のうちの1つの
情報に限ることなく、それらの複数の検知情報のうち少なくとも2つ以上の検知情報を組み合わせて負荷状態を判断してもよく、この場合は、負荷状態をより精度良く判断できる。また、各種のセンサK1〜K9で検知される情報以外であっても、負荷状態を検知できる情報であればそれを用いることもできる。
【0052】
次に、本実施形態の空気調和装置1の機能を述べると、圧縮機2の始動初期は低負荷状態であるため開閉弁250は閉弁しており、この状態では冷凍サイクル6を循環する冷媒は第一の冷媒導入管241のみから密閉容器230内に導入される。
【0053】
第一の冷媒導入管241から密閉容器230内に導入された冷媒は、連通路237に対応する位置に導入されるので、導入された冷媒のうち大部分はモータ220を通過することなく圧縮部210に供給される。本実施例ではさらに、圧縮部配置室R1とモータ配置室R2とに適切に分流されるようにガイド板243が設けられている。これによって、第一の冷媒導入管241から密閉容器230内に導入された冷媒は、ガイド板243で分流されて大部分の冷媒が圧縮部配置室R1に案内されて、吸込口216から圧縮部210内に吸い込まれて圧縮される。この圧縮された冷媒は、圧縮部の上方から冷媒吐出管240を介して吐出経路6aへと吐出されて冷凍サイクル6を循環する。
【0054】
一方、ガイド板243で分流された残りの冷媒は、モータ配置室R2に案内されてモータ220を冷却し、そして、モータ220を冷却した後の冷媒は、隔成壁233の連通路237を通って圧縮部210内に吸い込まれる。
【0055】
そして、空気調和装置1の稼働によって圧縮機2が高負荷状態になった場合、開閉弁250が開弁して冷媒は第一の冷媒導入管241と第二の冷媒導入管242の両方から密閉容器230内に導入される。
【0056】
この場合、第一の冷媒導入管241から密閉容器230内に導入された冷媒は、上述したようにガイド板243で分流されて圧縮部配置室R1とモータ配置室R2に案内され、上述したように機能する。
【0057】
一方、第二の冷媒導入管242から密閉容器230内に導入された冷媒は、モータ220と下部閉止板231との間に流入した後、モータ220を積極的に冷却した後に連通路237を通って圧縮部210内に吸い込まれる。
【0058】
以上説明したように、本実施形態の空気調和装置1によれば、圧縮部210およびモータ220を内蔵する密閉容器230に、冷媒吐出管240と、第一の冷媒導入管241と第二の冷媒導入管242の二つの導入管を接続してある。そして、冷媒吐出管240は密閉容器230の一端に接続され、第二の冷媒導入管242は、密閉容器230の他端に接続され、密閉容器230内には、第二の冷媒導入管242から吐出管240にかけてモータ220、圧縮部210が順に配置されており、第一の冷媒導入管241は密閉容器230のモータ220の上方から圧縮部210までの間の位置に接続されている。従って、第二の冷媒導入管242から導入された冷媒はモータ220を通過するため、このモータ220を積極的に冷却することができる。
【0059】
このとき、第二の冷媒導入管242に冷媒を供給する分岐経路6cに開閉弁250を設けてあるので、開閉弁250の開閉によって第二の冷媒導入管242に供給する冷媒量、つまり、モータ220を通過する冷媒量を変化させることができる。従って、圧縮機2の負荷状態に応じて開閉弁250を開閉することにより、高負荷時にモータ220の冷却効率を高めつつ、低負荷時に圧縮機2の圧縮効率の低下を抑制して、空気調和装置1の空調能力を高めることができる。
【0060】
また、本実施形態によれば、開閉弁250は、吐出温度センサK1で検出した圧縮機2の吐出温度によって圧縮機2の負荷状態を検知し、この負荷状態に応じて開閉弁250を開閉し、第二の冷媒導入管242を通過する冷媒量を制御するようになっている。すなわち、開閉弁250は制御手段8によって開閉駆動され、高負荷時に開閉弁250を開弁して第二の冷媒導入管242に冷媒を通過させ、かつ、低負荷時に開閉弁250を閉弁して第二の冷媒導入管242を冷媒が通過するのを遮断させることができる。
【0061】
従って、圧縮機2の高負荷状態でモータ220が過熱状態の場合は、第二の冷媒導入管242を冷媒が通過して、多量の冷媒をモータ220に積極的に供給できるため、モータ220の冷却効率を高めることができる。
【0062】
一方、圧縮機2の低負荷状態でモータ220を積極的に冷却する必要の無い場合は、開閉弁250が第二の冷媒導入管242を冷媒が通過するのを遮断して、モータ220に多量の冷媒が供給されるのを防止できる。これにより、モータ220から吸熱して密度が低下する冷媒量を減少し、さらに、圧縮部210までの長い経路を通過する冷媒量をも減少して圧損を低減できる。従って、圧縮機2の圧縮効率が低下することを抑制でき、このことによっても、空気調和装置1の空調能力を高めることができる。
【0063】
尚、この低負荷状態では、第一の冷媒導入管241のみから密閉容器230内に冷媒が導入されて、ガイド板243で分流された必要かつ最少量の冷媒でモータ220が冷却される状態となる。
【0064】
ところで、本実施形態では、第二の冷媒導入管242の流量調整手段として開閉弁250を用いた場合を述べたが、この開閉弁250に代えて分岐経路6cを通過する冷媒量を段階的に制御する流量制御弁を用いることができる。この流量制御弁としては、分岐経路6cの開度を無段階に変化させる開閉制御弁であってもよく、また、分岐経路6cをPWM(Pulse Width Modulation)制御により開閉するデューティソレノイドバルブであってもよい。
【0065】
図4は、圧縮機2の負荷状態と流量制御弁の開度との関係を示す表である。表の横軸が圧縮機2の吐出温度(負荷状態)となっており、縦軸が流量制御弁の開度となっている。本実施例では吐出温度に温度aと、温度aより高い温度bと、温度bより高い温度cと、温度cより高い温度dとの4つの閾値を設定し、流量制御弁の開度をA(全閉)、B、C、D、E(全開)の五段階に設定している。
【0066】
図4に示すとおり、吐出温度が温度aを超えた場合、流量制御弁をA(全閉)からBへ開度制御する。同様に、吐出温度が温度bを超えた場合、流量制御弁をBからCへ開度制御し、吐出温度が温度cを超えた場合、流量制御弁をCからDへ開度制御し、吐出温度が温度dを超えた場合、流量制御弁をDからE(全開)へ開度制御する。
【0067】
また、吐出温度が温度dを下回った場合、流量制御弁をE(全開)からDへ開度制御する。同様に、吐出温度が温度cを下回った場合、流量制御弁をDからCへ開度制御し、吐出温度が温度bを下回った場合、流量制御弁をCからBへ開度制御し、吐出温度が温度aを下回った場合、流量制御弁をBからA(全閉)へ開度制御する。
【0068】
このように、流量調整手段として流量制御弁を用いることにより、第二の冷媒導入管242を通過する冷媒量を段階的に制御できるので、圧縮機2の負荷状態に応じてモータ220に供給する冷媒量をより緻密に制御できる。これにより、空気調和装置1の空調能力をより高めることができる。
【0069】
なお、本実施例では吐出温度で負荷状態を判断しているが、負荷状態を判断する情報はこの限りでなく、段落0055に記載された各種情報であってもよい。
【0070】
以上、本発明の好ましい実施形態について詳述したが、本実施形態に限ることなく本発明の要旨を逸脱しない範囲で各種の変更が可能である。例えば、圧縮部210としてスクロール圧縮機を示したが、これ以外の内部低圧型の圧縮機、例えば、ロータリ圧縮機等を用いた圧縮機2であっても本発明を適用することができる。
【符号の説明】
【0071】
1 空気調和装置
2 圧縮機
6 冷凍サイクル
6c 分岐経路
8 制御手段
210 圧縮部
220 モータ220
241 第一の冷媒導入管
242 第二の冷媒導入管
250 開閉弁(流量調整手段)
K1 吐出温度センサ(負荷検知手段)
図1
図2
図3
図4