(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6083255
(24)【登録日】2017年2月3日
(45)【発行日】2017年2月22日
(54)【発明の名称】車体の後部構造
(51)【国際特許分類】
B62D 25/08 20060101AFI20170213BHJP
B60R 22/18 20060101ALI20170213BHJP
【FI】
B62D25/08 L
B60R22/18
【請求項の数】4
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2013-33777(P2013-33777)
(22)【出願日】2013年2月22日
(65)【公開番号】特開2014-162315(P2014-162315A)
(43)【公開日】2014年9月8日
【審査請求日】2015年12月18日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006286
【氏名又は名称】三菱自動車工業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000176811
【氏名又は名称】三菱自動車エンジニアリング株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100101236
【弁理士】
【氏名又は名称】栗原 浩之
(72)【発明者】
【氏名】松永 聡志
(72)【発明者】
【氏名】野島 隆哉
(72)【発明者】
【氏名】市橋 茂治
【審査官】
川村 健一
(56)【参考文献】
【文献】
実開昭57−031257(JP,U)
【文献】
特開2006−256351(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62D 17/00 − 25/08
B62D 25/14 − 29/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
荷室の上部に車幅方向に亘って配され、リヤシートのシートベルトのリトラクタが取り付けられるパネル部材と、
荷室側部に備えられるストラットハウスと、
車両上下方向に延設され、前記パネル部材の前記リトラクタの取り付け部における前記パネル部材の下面に一端が接合されると共に、前記ストラットハウスのストラット支持部の上面に他端が接合される補強部材とを備え、
前記補強部材は、前記一端から前記他端に亘って車幅方向外側に湾曲するアーチ状に形成され、前記一端と前記他端との間の部位が車体パネルの内側に接合される
ことを特徴とする車体の後部構造。
【請求項2】
請求項1に記載の車体の後部構造において、
前記補強部材は、長手方向に沿った両側縁部に車幅方向内側に曲折したフランジ部を有する断面コ字状に形成されている
ことを特徴とする車体の後部構造。
【請求項3】
荷室の上部に車幅方向に亘って配され、リヤシートのシートベルトのリトラクタが取り付けられるパネル部材と、
荷室側部に備えられるストラットハウスと、
車両上下方向に延設され、前記パネル部材の前記リトラクタの取り付け部における前記パネル部材の下面に一端が接合されると共に、前記ストラットハウスのストラット支持部の上面に他端が接合される補強部材とを備え、
前記補強部材は、長手方向に沿った両側縁部に車幅方向内側に曲折したフランジ部を有する断面コ字状に形成されている
ことを特徴とする車体の後部構造。
【請求項4】
請求項2もしくは請求項3に記載の車体の後部構造において、
前記パネル部材の前記リトラクタの支持部の前方には、車幅方向に亘ってクロスメンバ部材が設けられており、前記補強部材は、その車両前方側のフランジ部が前記クロスメンバ部材の後側面に接合されている
ことを特徴とする車体の後部構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車の車体の後部構造に関する。
【背景技術】
【0002】
車両のリヤシートのシートベルトとして3点式のシートベルトが採用され、シートベルトのリトラクタがリヤシェルフパネルに収容される技術が知られている(特許文献1)。リトラクタにはシートベルトの荷重が加わるため、リトラクタが収容されるリヤシェルフパネルにはリトラクタ補強部材が備えられている。
【0003】
一方、車両用のサスペンションの一例として、ストラット式のサスペンションが知られている。ストラット式のサスペンションにおいては、ストラットの上部が車体のストラットハウスに支持されるようになっている。ストラットハウスのストラット支持部には、ストラットの荷重が入力されるため、ストラットハウスにはストラット補強部材が備えられている。
【0004】
近年、車両の小型化が図られている一方、乗員の居住スペースの拡大が図られている。車両の後部には、給油口を始めとした燃料の供給系統が配置されている。このため、限られた狭い空間の中で、リヤシェルフパネルやストラットハウスの配置や周囲の構造の設計を最適に行う必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2000−177641号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は上記状況に鑑みてなされたもので、シートベルトのリトラクタが収容されるパネル部材、及び、ストラットハウスの構造や周辺の構造を最適にした車体の後部構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するための請求項1に係る本発明の車体の後部構造は、荷室の上部に車幅方向に亘って配され、リヤシートのシートベルトのリトラクタが取り付けられるパネル部材と、荷室側部に備えられるストラットハウスと、車両上下方向に延設され、前記パネル部材の前記リトラクタの取り付け部における前記パネル部材の下面に一端が接合されると共に、前記ストラットハウスのストラット支持部の上面に他端が接合される補強部材とを備え
、前記補強部材は、前記一端から前記他端に亘って車幅方向外側に湾曲するアーチ状に形成され、前記一端と前記他端との間の部位が車体パネルの内側に接合されることを特徴とする。
【0008】
請求項1に係る本発明では、リトラクタの取り付け部を補強する補強材と、ストラットハウスのストラット支持部を補強する補強材を一体にして共通の部材とすることができ、部品点数を削減して軽量化を図ることができる。
そして、補強部材は、一端と他端との間のアーチ状に形成された部位が車体パネルの内側に接合されるので、荷室のパネル部材からストラットハウスまでの剛性を一つの補強部材で高めることができ、簡単な構造により、リトラクタからの荷重、及び、ストラットの荷重に対する強度を高めることができる。
【0009】
このため、車両の小型化が図られ、乗員の居住スペースの拡大が図られている車両であっても、シートベルトのリトラクタが収容されるパネル部材、及び、ストラットハウスの構造や周辺の構造を最適にすることが可能になる。
【0010】
そして、請求項2に係る本発明の車体の後部構造は、請求項1に記載の車体の後部構造において、
前記補強部材は、長手方向に沿った両側縁部に車幅方向内側に曲折したフランジ部を有する断面コ字状に形成されていることを特徴とする。
【0011】
請求項2に係る本発明では、
長手方向に沿った両側縁部にフランジ部が備えられ、断面コ字状に形成されているので、補強部材の剛性を十分に確保することができる。
【0012】
また、請求項3に係る本発明の車体の後部構造は、
荷室の上部に車幅方向に亘って配され、リヤシートのシートベルトのリトラクタが取り付けられるパネル部材と、荷室側部に備えられるストラットハウスと、車両上下方向に延設され、前記パネル部材の前記リトラクタの取り付け部における前記パネル部材の下面に一端が接合されると共に、前記ストラットハウスのストラット支持部の上面に他端が接合される補強部材とを備え、前記補強部材は、長手方向に沿った両側縁部に車幅方向内側に曲折したフランジ部を有する断面コ字状に形成されていることを特徴とする。
【0013】
請求項3に係る本発明では、
リトラクタの取り付け部を補強する補強材と、ストラットハウスのストラット支持部を補強する補強材を一体にして共通の部材とすることができ、部品点数を削減して軽量化を図ることができる。
そして、長手方向に沿った両側縁部にフランジ部が備えられ、断面コ字状に形成されているので、補強部材の剛性を十分に確保することができる。
【0014】
また、請求項4に係る本発明の車体の後部構造は、
請求項2もしくは請求項3に記載の車体の後部構造において、前記パネル部材の前記リトラクタの支持部の前方には、車幅方向に亘ってクロスメンバ部材が設けられており、前記補強部材は、その車両前方側のフランジ部が前記クロスメンバ部材の後側面に接合されていることを特徴とする。
【0015】
請求項4に係る本発明では、補強部材は、車両前方側のフランジ部がクロスメンバ部材の後側面に接合されているので、クロスメンバ部材の補強を行うことができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明の車体の後部構造は、シートベルトのリトラクタが収容されるパネル部材、及び、ストラットハウスの構造や周辺の構造を最適にすることが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明の一実施例に係る車体の後部構造を表す骨格の外観図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本実施例の車体の後部構造は、荷室の上部に車幅方向に亘って配されるリヤシェルフパネルのリトラクタの収容部が補強部材で補強され、荷室側部に備えられるストラットハウスが補強部材で補強されている。そして、リヤシェルフパネルの補強部材とストラットハウスの補強部材が一つのアーチ状の補強部材として一体化されている。
【0019】
このため、補強部材の部品点数を削減して軽量化を図ることができる。そして、車両の小型化が図られ、乗員の居住スペースの拡大が図られている車両であっても、シートベルトのリトラクタが収容されるリヤシェルフパネル、及び、ストラットハウスの構造や周辺の構造を最適にすることが可能になる。
【0020】
つまり、リヤシェルフパネルのリトラクタの支持部の真下にストラットハウスのストラット支持部を配置することで、小型化された車両で乗員の居住スペースが拡大されている状態で、補強部材の形状を単純化して簡略化することができる。
【0021】
図面を参照して車体の後部構造を具体的に説明する。
【0022】
図1には本発明の一実施例に係る車体の後部構造を表す骨格を車両の斜め後方側から見た外観状況、
図2にはリトラクタが設けられている部位の外観状況、
図3には車体後部を側面から見た状態の概略断面、
図4にはリトラクタの取り付き部のリヤシェルフパネルの断面を表す
図2中のIV−IV線矢視、
図5には補強部材の外観を示してある。
【0023】
図1に示すように、車体1の後部には荷室2が形成され、荷室2の側部にはストラットハウス3が設けられている。ストラットハウス3の上部面にサスペンションのストラットの頂部が支持される。荷室2の上部にはリヤシェルフパネル4が車幅方向に亘り設けられ、リヤシェルフパネル4の前側端部の裏側には閉断面を形成するクロスメンバ部材31が車幅方向に延びて配されている。
【0024】
リヤシェルフパネル4にはリヤシートのシートベルトのリトラクタ5が取り付けられている。即ち、リヤシェルフパネル4には開口部4aが形成され、開口部4a内のクロスメンバ部材31との間の閉断面内にリトラクタ5の本体が収容されている。
【0025】
図3に示すように、リヤシート6のシートバック7の後側のリヤシェルフパネル4の開口部4a内にクロスメンバ部材31との間で形成されるリトラクタ収容部8が設けられている。
図2、
図3に示すように、リトラクタ収容部8に収容されたリトラクタ5からシートベルト11が繰り出されるようになっている。
【0026】
図2から
図4に示すように、リトラクタ5には板状のブラケット12が設けられ、ブラケット12がリヤシェルフパネル4の開口部4aの後側の面、即ち、クロスメンバ部材31の後側に固定されることで、リトラクタ5がリヤシェルフパネル4に取り付けられる。
【0027】
図2、
図3に示すように、リヤシェルフパネル4のブラケット12が固定されている部位から、ストラットハウス3の上部面に亘りアーチ状の補強部材15が設けられている。
【0028】
図5に示すように、補強部材15は、一端面部21(一端)及び他端面部22(他端)を備え、一端面部21から他端面部22に亘って車幅方向外側に湾曲するアーチ状に形成されている。つまり、一端面部21と他端面部22が中央部23で連結されて一体の補強部材15が構成されている。
【0029】
補強部材15は、長手方向に沿った両側縁部に車幅方向内側に曲折したフランジ部32が設けられ、補強部材15は断面コ字状に形成されている。フランジ部32が設けられたことにより、補強部材15の剛性を十分に確保することができる。
【0030】
図2から
図4に示すように、アーチ状の補強部材15の一端は、ブラケット12が固定されている部位のリヤシェルフパネル4の下面と平行な一端面部21とされ、一端面部21はリヤシェルフパネル4の下面にクロスメンバ部材31と一体に接合されている。これにより、リトラクタ5の支持部、即ち、ブラケット12の固定部が補強部材15により補強されている。
【0031】
図2、
図3に示すように、アーチ状の補強部材15の他端は、ストラットハウス3の上部面に対応する他端面部22とされ、他端面部22はストラットハウス3の上部面に接合されている。これにより、ストラットの支持部が補強部材15により補強されている。
【0032】
このため、リトラクタ5の取り付け部を補強する補強材と、ストラットハウス3のストラット支持部を補強する補強材を一体にして共通の補強部材15とすることができ、部品点数を削減して軽量化を図ることができ、コストを低減することが可能になる。
【0033】
図3に示すように、リヤシェルフパネル4のブラケット12が固定されている部位の位置、即ち、補強部材15の一端面部21の位置と、ストラットハウス3の上部面の位置、即ち、補強部材15の他端面部22の位置とは、車両の前後方向で同じ位置となっている。
【0034】
従って、本実施例が適用される車両は、小型化された車両で、後部座席の乗員の居住スペースが最大限に広げられた車両となっている。リヤシェルフパネル4のブラケット12が固定されている部位の直下にストラットハウス3の上部面が配されているため、補強部材15の形状が単純化され、補強部材15を簡略化することができる。
【0035】
図2、
図3、
図5に示すように、補強部材15は、車両の上下方向に延設され、一端面部21と他端面部22が中央部23で連結されて一体構造とされている。そして、アーチ状の補強部材15の中央部23は、クォータパネル9のインナ面に沿った形状とされ、中央部23はクォータパネル9に接合されている。
【0036】
図4に示すように、補強部材15の車両前方側(図中右側)のフランジ部32は、クロスメンバ部材31の後側面31aに接合されている。補強部材は、車両前方側のフランジ部32がクロスメンバ部材31の後側面31aに接合されているので、補強部材15によりクロスメンバ部材31の補強を行うことができる。
【0037】
上述した補強部材15は、リヤシェルフパネル4、クォータパネル9及びストラットハウス3に亘って接合され、一つの補強部材15により、リヤシェルフパネル4のブラケット12が取り付けられた部位、及び、ストラットハウス3の上部面の補強が行え、簡単な構造により、リトラクタ5からの荷重、及び、ストラットの荷重に対する強度を高めることができる。
【0038】
そして、一つの補強部材15により、荷室2のリヤシェルフパネル4からストラットハウス3までの構造物としての強度を高めることができる。更に、リヤシェルフパネル4のクロスメンバ部材31の剛性を高めることができる。
【0039】
上述した車体の後部構造は、リヤシェルフパネル4のブラケット12が取り付けられた部位とストラットハウス3の上面部の位置が重なる構造の車体1において、一つの補強部材15により、リトラクタ5からの荷重、及び、ストラットの荷重に対する強度を高めることができる。
【0040】
即ち、シートベルト11のリトラクタ5が収容されるリヤシェルフパネル4、及び、ストラットハウス3の構造や周辺の構造が、重量増加や部品点数の増加を伴うことなく、所望の補強状態が確保された状態になり、最適な状態の車体の後部構造となる。
【0041】
尚、上述した実施例は、リヤシェルフパネル4のブラケット12が取り付けられた部位の真下にストラットハウス3の上面部が配されている車両を例に挙げて説明したが、リヤシェルフパネル4のブラケット12が取り付けられた部位と、ストラットハウス3の上面部とが車両の前後方向で異なる位置に配されている車両であっても本発明を適用することが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0042】
本発明は、自動車の車体の後部構造の産業分野で利用することができる。
【符号の説明】
【0043】
1 車体
2 荷室
3 ストラットハウス
4 リヤシェルフパネル
5 リトラクタ
6 リヤシート
7 シートバック
8 リトラクタ収容部
11 シートベルト
12 ブラケット
15 補強部材
21 一端面部
22 他端面部
23 中央部
31 クロスメンバ部材
32 フランジ部