【発明が解決しようとする課題】
【0007】
  しかし、上記従来の圧縮機では、各配線が平板状の平板部を有しており、平板部と外部コネクタとの接触面積が十分でない。このため、平板部と外部コネクタとの間の抵抗が大きく、特に大電流が流れた時の発熱や省電力に反するとの懸念がある。また、この圧縮機が例えば車両に搭載された場合、車両の走行時に発生する振動により、平板部と外部コネクタとの接点に摩耗を生じることから、より耐久性を向上させたいという要望がある。
【0008】
  このため、配線と外部コネクタとの接触面積を大きくすべく、中実の丸ピンを有する配線を採用することも考えられる。しかしながら、この場合には製造コストが高騰化する懸念がある。特に、丸ピンにメッキ加工や溶接を行う場合には、作業工程の増加により、この傾向が顕著になる。
【0009】
  他方、配線として、中空の円筒形状である端子部を有する配線を採用するとすれば、カバーを成形する際、流動性のある絶縁性樹脂が端子部内まで流れ込み、不良品を生じ易い。
【0010】
  本発明は、上記従来の実情に鑑みてなされたものであって、発熱の抑制や省電力に寄与し、優れた耐久性を発揮し、製造コストの低廉化を実現しつつ、不良品を生じにくい電動圧縮機を提供することを解決すべき課題としている。
 
【課題を解決するための手段】
【0011】
  本発明の電動圧縮機は、ハウジングと、電動機構と、前記電動機構によって駆動され、冷媒の圧縮を行う圧縮機構と、前記電動機構を駆動するための駆動回路とを備え、
  前記ハウジングは、前記電動機構及び前記圧縮機構を収容するハウジング本体と、前記ハウジング本体に固定され、前記ハウジング本体との間に前記駆動回路を収容する収容室を形成するカバーとを有し、
  前記カバーは、外部コネクタが係合されるコネクタ部を有し、
  前記コネクタ部は、金属製の配線と、前記配線を前記カバーに固定する絶縁性樹脂とを有し、
  前記配線は、前記外部コネクタに電気接続される端子部と、前記端子部及び前記駆動回路を電気接続するリード部とをもつ電動圧縮機において、
  
前記配線は、前記端子部の前記リード部側に配置された蓋部を一体的に有し、
  前記絶縁性樹脂は、前記端子部と前記リード部とに跨っており、
  前記端子部は円筒形状であり、
  
前記蓋部は前記端子部の開口端部を塞
いでいることを特徴とす
る。
【0012】
  本発明の圧縮機では、中空の円筒形状である端子部を採用しているため、平板状の平板部を有する端子部に比べ、端子部と外部コネクタとの接触面積が大きい。このため、端子部と外部コネクタとの間の抵抗を小さくすることができる。
【0013】
  また、この圧縮機では、端子部と外部コネクタとの接触面積が大きいことから、この圧縮機が例えば車両に搭載された場合、車両の走行時に発生した振動によっても、端子部と外部コネクタとが擦れ難く、端子部に摩耗を生じ難い。
【0014】
  さらに、この圧縮機では、中空の円筒形状である端子部を採用しているため、中実の丸ピンを有する端子部に比べて製造コストをより低廉化することができる。
【0015】
  また、この圧縮機では、配線を絶縁性樹脂によってインサート成形する際、端子部のリード部側に設けられた蓋部が円筒形状の開口端部から端子部内に流動性のある絶縁性樹脂が入ることを防止する。
【0016】
  したがって、本発明の圧縮機では、発熱の抑制や省電力に寄与し、優れた耐久性を発揮し、製造コストの低廉化を実現しつつ、不良品を生じにくい。
【0017】
  カバーは、収容室を電磁遮蔽するシールドカバーと、コネクタ部内を電磁遮蔽するシールドコネクタとを有し得る。絶縁性樹脂は、シールドカバー及びシールドコネクタを固定していることが好まし
い。この場合、配線を固定する絶縁性樹脂によりシールドカバー及びシールドコネクタを固定することができる。
【0018】
  絶縁性樹脂は、配線を固定した第1樹脂部と、第1樹脂部と一体をなし、残部を形成する第2樹脂部とからなり得
る。第1樹脂部で配線を固定した後、第2樹脂部でシールドカバー及びシールドコネクタを固定することができるため、カバーを容易に製造することが可能になる。
【0019】
  端子部は、端子部の径内方向に凹設され、蓋部を支持する複数の凹部を有していることが好まし
い。この場合、配線を絶縁性樹脂によってインサート成形する際、各凹部が蓋部を支持し、端子部内に流動性のある絶縁性樹脂が入ることを確実に防止することができる。
【0020】
  各凹部は、端子部の軸心周りで等角度離間されていることが好まし
い。この場合、蓋部をバランスよく支持することができるため、インサート成形中に蓋部が傾斜し難く、端子部内に流動性のある絶縁性樹脂が入ることをより確実に防止することができる。
【0021】
  本発明の電動圧縮機の製造方法は、ハウジングと、電動機構と、前記電動機構によって駆動され、冷媒の圧縮を行う圧縮機構と、前記電動機構を駆動するための駆動回路とを備え、
  前記ハウジングは、前記電動機構及び前記圧縮機構を収容するハウジング本体と、前記ハウジング本体に固定され、前記ハウジング本体との間に前記駆動回路を収容する収容室を形成するカバーとを有し、
  前記カバーは、外部コネクタが係合されるコネクタ部を有し、
  前記コネクタ部は、金属製の配線と、前記配線を前記カバーに固定する絶縁性樹脂とを有し、
  前記配線は、前記外部コネクタに電気接続される端子部と、前記端子部及び前記駆動回路を電気接続するリード部とをもつ電動圧縮機の製造方法において、
  金属製の平板を準備する準備工程と、
  前記平板を曲げ加工することにより、円筒形状の前記端子部と、前記リード部と、前記端子部の前記リード部側に配置される蓋部とを有する成形前配線を得る曲げ工程と、
  前記成形前配線を射出成形金型のキャビティ内に設けた後、前記蓋部によって絶縁性樹脂が開口端部から前記端子部内に入ることを防止しながら前記絶縁性樹脂からなる溶融樹脂を前記キャビティ内に射出し、前記カバーを得る射出工程とを備えていることを特徴とす
る。
【0022】
  本発明の製造方法では、準備工程において、金属製の平板を準備する。次いで、曲げ工程において、平板を曲げ加工する。これにより、軸方向の先端側に延びる円筒形状の端子部と、軸方向の後端側で端子部と繋がるリード部と、端子部のリード部側に配置される蓋部とを有する成形前配線を得る。そして、射出工程において、成形前配線を射出成形金型のキャビティ内に設けた後、蓋部によって絶縁性樹脂が端子部内に入ることを防止しながら絶縁性樹脂からなる溶融樹脂をキャビティ内に射出し、カバーを得る。こうして、この製造方法により、本発明の圧縮機を製造することができる。
【0023】
  本発明の製造方法において、カバーは、収容室を電磁遮蔽するシールドカバーと、コネクタ部内を電磁遮蔽するシールドコネクタとを有し得る。また、射出工程は、第1樹脂部によって配線を固定した第1成形品を得る第1射出工程と、絶縁性樹脂から第1樹脂部を除いた第2樹脂部によって第1成形品、シールドカバー及びシールドコネクタを固定する第2射出工程とからなることが好まし
い。
【0024】
  この場合、第1樹脂部で配線を固定した第1成形品を得た後、第2樹脂部で第1成形品、シールドカバー及びシールドコネクタを固定することができるため、カバーを容易に製造することが可能になる。