特許第6083294号(P6083294)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6083294
(24)【登録日】2017年2月3日
(45)【発行日】2017年2月22日
(54)【発明の名称】電動圧縮機及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   F04B 39/00 20060101AFI20170213BHJP
   F04C 29/00 20060101ALI20170213BHJP
【FI】
   F04B39/00 106Z
   F04B39/00 106A
   F04B39/00 106B
   F04C29/00 B
   F04C29/00 T
【請求項の数】7
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2013-70303(P2013-70303)
(22)【出願日】2013年3月28日
(65)【公開番号】特開2014-194169(P2014-194169A)
(43)【公開日】2014年10月9日
【審査請求日】2015年7月6日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003218
【氏名又は名称】株式会社豊田自動織機
(74)【代理人】
【識別番号】110001117
【氏名又は名称】特許業務法人ぱてな
(72)【発明者】
【氏名】矢野 順也
【審査官】 新井 浩士
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−193660(JP,A)
【文献】 特開2009−295340(JP,A)
【文献】 特開2003−097436(JP,A)
【文献】 特開2006−220032(JP,A)
【文献】 特開2012−117479(JP,A)
【文献】 特開2004−181637(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F04B 39/00
F04C 29/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハウジングと、電動機構と、前記電動機構によって駆動され、冷媒の圧縮を行う圧縮機構と、前記電動機構を駆動するための駆動回路とを備え、
前記ハウジングは、前記電動機構及び前記圧縮機構を収容するハウジング本体と、前記ハウジング本体に固定され、前記ハウジング本体との間に前記駆動回路を収容する収容室を形成するカバーとを有し、
前記カバーは、外部コネクタが係合されるコネクタ部を有し、
前記コネクタ部は、金属製の配線と、前記配線を前記カバーに固定する絶縁性樹脂とを有し、
前記配線は、前記外部コネクタに電気接続される端子部と、前記端子部及び前記駆動回路を電気接続するリード部とをもつ電動圧縮機において、
前記配線は、前記端子部の前記リード部側に配置された蓋部を一体的に有し、
前記絶縁性樹脂は、前記端子部と前記リード部とに跨っており、
前記端子部は円筒形状であり、
前記蓋部は前記端子部の開口端部を塞いでいることを特徴とする電動圧縮機。
【請求項2】
前記カバーは、前記収容室を電磁遮蔽するシールドカバーと、前記コネクタ部内を電磁遮蔽するシールドコネクタとを有し、
前記絶縁性樹脂は、前記シールドカバー及び前記シールドコネクタを固定している請求項1記載の電動圧縮機。
【請求項3】
前記絶縁性樹脂は、前記配線を固定した第1樹脂部と、前記第1樹脂部と一体をなし、残部を形成する第2樹脂部とからなる請求項2記載の電動圧縮機。
【請求項4】
前記端子部は、前記端子部の径内方向に凹設され、前記蓋部を支持する複数の凹部を有している請求項1乃至3のいずれか1項記載の電動圧縮機。
【請求項5】
各前記凹部は、前記端子部の軸心周りで等角度離間されている請求項4記載の電動圧縮機。
【請求項6】
ハウジングと、電動機構と、前記電動機構によって駆動され、冷媒の圧縮を行う圧縮機構と、前記電動機構を駆動するための駆動回路とを備え、
前記ハウジングは、前記電動機構及び前記圧縮機構を収容するハウジング本体と、前記ハウジング本体に固定され、前記ハウジング本体との間に前記駆動回路を収容する収容室を形成するカバーとを有し、
前記カバーは、外部コネクタが係合されるコネクタ部を有し、
前記コネクタ部は、金属製の配線と、前記配線を前記カバーに固定する絶縁性樹脂とを有し、
前記配線は、前記外部コネクタに電気接続される端子部と、前記端子部及び前記駆動回路を電気接続するリード部とをもつ電動圧縮機の製造方法において、
金属製の平板を準備する準備工程と、
前記平板を曲げ加工することにより、円筒形状の前記端子部と、前記リード部と、前記端子部の前記リード部側に配置される蓋部とを有する成形前配線を得る曲げ工程と、
前記成形前配線を射出成形金型のキャビティ内に設けた後、前記蓋部によって絶縁性樹脂が開口端部から前記端子部内に入ることを防止しながら前記絶縁性樹脂からなる溶融樹脂を前記キャビティ内に射出し、前記カバーを得る射出工程とを備えていることを特徴とする電動圧縮機の製造方法。
【請求項7】
前記カバーは、前記収容室を電磁遮蔽するシールドカバーと、前記コネクタ部内を電磁遮蔽するシールドコネクタとを有し、
前記射出工程は、第1樹脂部によって前記配線を固定した第1成形品を得る第1射出工程と、
前記絶縁性樹脂から前記第1樹脂部を除いた第2樹脂部によって前記第1成形品、前記シールドカバー及び前記シールドコネクタを固定する第2射出工程とからなる請求項6記載の電動圧縮機の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は電動圧縮機及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に従来の電動圧縮機(以下、単に圧縮機という。)が開示されている。この圧縮機は、ハウジングと、電動機構と、電動機構によって駆動され、冷媒の圧縮を行う圧縮機構と、電動機構を駆動するための駆動回路とを備えている。ハウジングは、ハウジング本体とカバーとを有している。ハウジング本体には、電動機構及び圧縮機構が収容されている。カバーは、ハウジング本体に固定され、ハウジング本体との間に駆動回路を収容する収容室を形成している。駆動回路としては、インバータが採用されている。
【0003】
カバーは、外部コネクタが係合されるコネクタ部を有している。コネクタ部は、金属製の一対の配線と、両配線をカバーに固定する絶縁性樹脂とを有している。両配線は、外部コネクタに電気接続される端子部と、端子部及び駆動回路を電気接続するリード部とをもっている。
【0004】
特許文献2にも記載されているように、各配線は、金属製の平板が曲げられてなる。より詳細には、各配線は、外部コネクタに向かって先端側に延びる平板状の平板部と、後端側で平板部と繋がり、インバータに向かって延びるとともに絶縁性樹脂に固定されたリード部とを有している。
【0005】
この圧縮機では、両配線を絶縁性樹脂によってインサート成形することにより、両配線がコネクタ部内に配置されたカバーとされている。カバーのコネクタ部に外部コネクタが係合されれば、両配線が外部コネクタと接続され、インバータに外部コネクタから給電を行うことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2004−190547号公報
【特許文献2】特開2009−295340号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、上記従来の圧縮機では、各配線が平板状の平板部を有しており、平板部と外部コネクタとの接触面積が十分でない。このため、平板部と外部コネクタとの間の抵抗が大きく、特に大電流が流れた時の発熱や省電力に反するとの懸念がある。また、この圧縮機が例えば車両に搭載された場合、車両の走行時に発生する振動により、平板部と外部コネクタとの接点に摩耗を生じることから、より耐久性を向上させたいという要望がある。
【0008】
このため、配線と外部コネクタとの接触面積を大きくすべく、中実の丸ピンを有する配線を採用することも考えられる。しかしながら、この場合には製造コストが高騰化する懸念がある。特に、丸ピンにメッキ加工や溶接を行う場合には、作業工程の増加により、この傾向が顕著になる。
【0009】
他方、配線として、中空の円筒形状である端子部を有する配線を採用するとすれば、カバーを成形する際、流動性のある絶縁性樹脂が端子部内まで流れ込み、不良品を生じ易い。
【0010】
本発明は、上記従来の実情に鑑みてなされたものであって、発熱の抑制や省電力に寄与し、優れた耐久性を発揮し、製造コストの低廉化を実現しつつ、不良品を生じにくい電動圧縮機を提供することを解決すべき課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の電動圧縮機は、ハウジングと、電動機構と、前記電動機構によって駆動され、冷媒の圧縮を行う圧縮機構と、前記電動機構を駆動するための駆動回路とを備え、
前記ハウジングは、前記電動機構及び前記圧縮機構を収容するハウジング本体と、前記ハウジング本体に固定され、前記ハウジング本体との間に前記駆動回路を収容する収容室を形成するカバーとを有し、
前記カバーは、外部コネクタが係合されるコネクタ部を有し、
前記コネクタ部は、金属製の配線と、前記配線を前記カバーに固定する絶縁性樹脂とを有し、
前記配線は、前記外部コネクタに電気接続される端子部と、前記端子部及び前記駆動回路を電気接続するリード部とをもつ電動圧縮機において、
前記配線は、前記端子部の前記リード部側に配置された蓋部を一体的に有し、
前記絶縁性樹脂は、前記端子部と前記リード部とに跨っており、
前記端子部は円筒形状であり、
前記蓋部は前記端子部の開口端部を塞いでいることを特徴とする。
【0012】
本発明の圧縮機では、中空の円筒形状である端子部を採用しているため、平板状の平板部を有する端子部に比べ、端子部と外部コネクタとの接触面積が大きい。このため、端子部と外部コネクタとの間の抵抗を小さくすることができる。
【0013】
また、この圧縮機では、端子部と外部コネクタとの接触面積が大きいことから、この圧縮機が例えば車両に搭載された場合、車両の走行時に発生した振動によっても、端子部と外部コネクタとが擦れ難く、端子部に摩耗を生じ難い。
【0014】
さらに、この圧縮機では、中空の円筒形状である端子部を採用しているため、中実の丸ピンを有する端子部に比べて製造コストをより低廉化することができる。
【0015】
また、この圧縮機では、配線を絶縁性樹脂によってインサート成形する際、端子部のリード部側に設けられた蓋部が円筒形状の開口端部から端子部内に流動性のある絶縁性樹脂が入ることを防止する。
【0016】
したがって、本発明の圧縮機では、発熱の抑制や省電力に寄与し、優れた耐久性を発揮し、製造コストの低廉化を実現しつつ、不良品を生じにくい。
【0017】
カバーは、収容室を電磁遮蔽するシールドカバーと、コネクタ部内を電磁遮蔽するシールドコネクタとを有し得る。絶縁性樹脂は、シールドカバー及びシールドコネクタを固定していることが好ましい。この場合、配線を固定する絶縁性樹脂によりシールドカバー及びシールドコネクタを固定することができる。
【0018】
絶縁性樹脂は、配線を固定した第1樹脂部と、第1樹脂部と一体をなし、残部を形成する第2樹脂部とからなり得る。第1樹脂部で配線を固定した後、第2樹脂部でシールドカバー及びシールドコネクタを固定することができるため、カバーを容易に製造することが可能になる。
【0019】
端子部は、端子部の径内方向に凹設され、蓋部を支持する複数の凹部を有していることが好ましい。この場合、配線を絶縁性樹脂によってインサート成形する際、各凹部が蓋部を支持し、端子部内に流動性のある絶縁性樹脂が入ることを確実に防止することができる。
【0020】
各凹部は、端子部の軸心周りで等角度離間されていることが好ましい。この場合、蓋部をバランスよく支持することができるため、インサート成形中に蓋部が傾斜し難く、端子部内に流動性のある絶縁性樹脂が入ることをより確実に防止することができる。
【0021】
本発明の電動圧縮機の製造方法は、ハウジングと、電動機構と、前記電動機構によって駆動され、冷媒の圧縮を行う圧縮機構と、前記電動機構を駆動するための駆動回路とを備え、
前記ハウジングは、前記電動機構及び前記圧縮機構を収容するハウジング本体と、前記ハウジング本体に固定され、前記ハウジング本体との間に前記駆動回路を収容する収容室を形成するカバーとを有し、
前記カバーは、外部コネクタが係合されるコネクタ部を有し、
前記コネクタ部は、金属製の配線と、前記配線を前記カバーに固定する絶縁性樹脂とを有し、
前記配線は、前記外部コネクタに電気接続される端子部と、前記端子部及び前記駆動回路を電気接続するリード部とをもつ電動圧縮機の製造方法において、
金属製の平板を準備する準備工程と、
前記平板を曲げ加工することにより、円筒形状の前記端子部と、前記リード部と、前記端子部の前記リード部側に配置される蓋部とを有する成形前配線を得る曲げ工程と、
前記成形前配線を射出成形金型のキャビティ内に設けた後、前記蓋部によって絶縁性樹脂が開口端部から前記端子部内に入ることを防止しながら前記絶縁性樹脂からなる溶融樹脂を前記キャビティ内に射出し、前記カバーを得る射出工程とを備えていることを特徴とする。
【0022】
本発明の製造方法では、準備工程において、金属製の平板を準備する。次いで、曲げ工程において、平板を曲げ加工する。これにより、軸方向の先端側に延びる円筒形状の端子部と、軸方向の後端側で端子部と繋がるリード部と、端子部のリード部側に配置される蓋部とを有する成形前配線を得る。そして、射出工程において、成形前配線を射出成形金型のキャビティ内に設けた後、蓋部によって絶縁性樹脂が端子部内に入ることを防止しながら絶縁性樹脂からなる溶融樹脂をキャビティ内に射出し、カバーを得る。こうして、この製造方法により、本発明の圧縮機を製造することができる。
【0023】
本発明の製造方法において、カバーは、収容室を電磁遮蔽するシールドカバーと、コネクタ部内を電磁遮蔽するシールドコネクタとを有し得る。また、射出工程は、第1樹脂部によって配線を固定した第1成形品を得る第1射出工程と、絶縁性樹脂から第1樹脂部を除いた第2樹脂部によって第1成形品、シールドカバー及びシールドコネクタを固定する第2射出工程とからなることが好ましい。
【0024】
この場合、第1樹脂部で配線を固定した第1成形品を得た後、第2樹脂部で第1成形品、シールドカバー及びシールドコネクタを固定することができるため、カバーを容易に製造することが可能になる。
【発明の効果】
【0025】
本発明の電動圧縮機によれば、発熱の抑制や省電力に寄与し、優れた耐久性を発揮し、製造コストの低廉化を実現しつつ、不良品を生じにくくさせることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】実施例1の圧縮機の断面図である。
図2】実施例1の圧縮機におけるカバーの斜視図である。
図3】実施例1の圧縮機に係り、図2の矢印A方向から見たコネクタ部を示す平面図である。
図4】実施例1の圧縮機の要部拡大断面図である。
図5】実施例1の圧縮機に係り、平板の平面図である。
図6】実施例1の圧縮機に係り、中間品の側面図である。
図7】実施例1の圧縮機の製造方法を示す第1成形金型の断面図である。
図8】実施例1の圧縮機に係り、配線の一部断面の背面図である。
図9】実施例1の圧縮機の製造方法を示す第2成形金型の断面図である。
図10】実施例2の圧縮機に係り、配線の一部断面の背面図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明を具体化した実施例1、2を図面を参照しつつ説明する。
【0028】
(実施例1)
実施例1の圧縮機は、車両に搭載されて車室内の温度調整を行う空調装置に用いられる。この圧縮機は、図1及び図2に示すように、ハウジング1と電動機構3と圧縮機構5と駆動回路7とを備えている。駆動回路7としてはインバータを採用している。ハウジング1は、第1ハウジング1aと第2ハウジング1bとカバー11とを有している。第1ハウジング1a及び第2ハウジング1bがハウジング本体に相当する。
【0029】
図1に示すように、第2ハウジング1b内には、固定ブロック9が支持されている。第1ハウジング1a及び第2ハウジング1bの内部は、後方に位置するモータ室13と前方に位置する作動室15とに固定ブロック9によって仕切られている。作動室15には圧縮機構5が収容され、モータ室13には電動機構3が収容されている。カバー11は、第2ハウジング1bに固定され、第2ハウジング1bとの間に駆動回路7を収容する収容室17を形成している。
【0030】
電動機構3は、ステータ19とロータ23と駆動軸25とリード線27とクラスタブロック29とを有している。ステータ19は、第2ハウジング1bの内周面で固定されており、コイル21を有している。ステータ19の内側には、駆動軸25に固定されたロータ23が設けられ、ロータ23は駆動軸25と一体的に回転する。固定ブロック9の中央部分は後方に突出しており、その中心には軸孔9aが形成されている。軸孔9aの前方側では、軸封装置31及び軸受装置33aが固定ブロック9に固定されている。駆動軸25の前方側は、軸孔9aを挿通している。第2ハウジング1bの内面の後方側には、円筒状のボス部43が前方側に向かって突設している。ボス部43には軸受装置33bが設けられている。駆動軸25の後方側は軸受装置33bにより支持され、駆動軸25の前方側は軸受装置33aにより支持され、駆動軸25はこれらによって回転可能に支持されている。リード線27の一端側はクラスタブロック29と接続され、リード線27の他端側はコイル21に接続されている。クラスタブロック29は接続端子28によって駆動回路7と接続されている。
【0031】
圧縮機構5は、第1ハウジング1aの内周面に固定された固定スクロール35と、固定スクロール35に対向配置された可動スクロール37とを有している。固定ブロック9と固定スクロール35との間には、可動スクロール37が配置されている。固定スクロール35と可動スクロール37とは噛合して両者間に圧縮室41を形成している。
【0032】
可動スクロール37の後面の中央部分には、円筒状のボス部37aが後方側に向かって突設されている。また、可動スクロール37の後面の外周域には複数個の自転防止孔45が凹設されている。各自転防止孔45には自転防止リング47が固定されている。固定ブロック9の前面には、複数本の自転防止ピン39が前方側に向けて突設されている。各自転防止ピン39はそれぞれ自転防止リング47内を転動するようになっている。
【0033】
駆動軸25の前端部には、偏心軸部49が突出して形成されている。偏心軸部49は、固定ブロック9と可動スクロール37との間に設けられたバランサ付きブッシュ51に対し、回動可能に挿入されている。バランサ付きブッシュ51の円柱部53とボス部37aとの間には軸受装置33cが設けられている。
【0034】
固定スクロール35と第1ハウジング1aとの間に吐出室55が形成されている。固定スクロール35には、圧縮室41を吐出室55と連通する吐出ポート55aが形成されている。また、固定スクロール35の前端面には、吐出ポート55aを開閉する図示しない吐出リード弁と、この吐出リード弁のリフト量を規制するリテーナ57とが固定されている。第1ハウジング1aには、吐出室55と外部とを連通させる吐出孔55bが貫設されている。第2ハウジング1bには、外部とモータ室13とを連通させる吸入孔56が貫設されている。
【0035】
図1〜3に示すように、カバー11には、第1コネクタ部61と第2コネクタ部62とが後側に突出して形成されている。第1コネクタ部61は、駆動回路7に給電するためのものである。第2コネクタ部62は、電動機構3や圧縮機構5の各種状態を検知するための信号線を接続するためのものである。
【0036】
カバー11は、図1に示すように、収容室17を電磁遮蔽するシールドカバー11aを有している。シールドカバー11aには、第1コネクタ部61内を電磁遮蔽するシールドコネクタ11bが一体的に固定されている。カバー11の外面側には、シールドカバー11a及びシールドコネクタ11bを覆う絶縁性樹脂からなる第1、2樹脂部65a、65bが設けられている。
【0037】
第1コネクタ部61内では、図3に示すように、第1、2配線63、64が設けられている。第1、2配線63、64は第1樹脂部65aによって予め第1成形品75とされ(図9参照)、第1成形品75が第2樹脂部65bによってシールドカバー11a及びシールドコネクタ11bとともに固定されている。
【0038】
第1、2配線63、64は、図3及び図4に示すように、それぞれ第1、2端子部63a、64aを有している。第1、2端子部63a、64aは、図示しない外部コネクタに向かって軸方向の先端側に延びる円筒形状である。第1、2端子部63a、64aはそれぞれリード部66a(一方のみ図示)に接続されている。第1、2端子部63a、64aのリード部66a側には、第1、2端子部63a、64aの開口端部74を塞ぐ第1、2蓋部63c、64cが設けられている。両リード部66aにはそれぞれ接続部66b(一方のみ図示)が形成されている。両接続部66bは駆動回路7に接続されている。
【0039】
図1に示すように、モータ室13は、吸入孔56に接続される配管によって図示しない蒸発器と接続されている。蒸発器は配管によって図示しない膨張弁と接続され、膨張弁は配管によって図示しない凝縮器と接続されている。吐出室55は吐出孔55bに接続される配管によって凝縮器に接続されている。圧縮機、蒸発器、膨張弁及び凝縮器は車両用の空調装置の冷凍回路を構成している。
【0040】
この圧縮機は、以下のように製造される。まず、図5に示すように、準備工程として、導電性を有する金属製の2枚の平板68を準備する(1枚のみ図示)。これらの平板68は、ほぼ正方形をなす頭部68aと、頭部68aの一つの辺の中央から離れる方向に延びるリード部68bからなる。リード部68bの先端には二股の接続部68cが形成されている。また、これらの平板68は、頭部68aにおけるリード部68b側の一つの角に円形状をなす蓋部68dを有している。
【0041】
次に、曲げ工程として、図6に示すように、平板68の頭部68aを円筒形状に曲げ、端子部70aとする。この際、端子部70aの中心軸がリード部68bと平行になるようにする。また、蓋部68dが端子部70aの開口端部74を塞ぐように蓋部68dを曲げる。こうして、中間部材70を得る。
【0042】
次いで、図7に示すように、第1射出成形金型67を用意する。この第1射出成形金型67は、第1金型67aと、第2金型67bとからなる。第1金型67aと第2金型67bとの間には第1キャビティ67cが形成されている。第1キャビティ67cには、絶縁性樹脂の溶融樹脂が射出されるゲート67dが設けられている。
【0043】
そして、2個の中間部材70を第1キャビティ67c内に設ける。この際、リード部68bは、端子部70aから一定距離離れた位置で端子部70aの軸方向に対して垂直に折り曲げられるとともに、接続部68cの手前で端子部70aの軸方向と平行に折り曲げられる。こうして、端子部70aと、二か所で曲げられたリード部70bとからなる成形前配線72を得る。次いで、第1射出工程として、第1キャビティ67c内に溶融樹脂を射出する。この際、図8に示すように、蓋部68dは溶融樹脂が端子部70a内に入ることを防止する。こうして、図9に示すように、第1成形品75を得る。第1成形品75は、溶融樹脂が固化した第1樹脂部65aと、この第1樹脂部65aによって2個の成形前配線72が固定された第1、2配線63、64とからなる。
【0044】
また、図9に示すように、第2射出成形金型69を用意する。この第2射出成形金型69は、第3金型69aと、第4金型69bとからなる。第3金型69aと第4金型69bとの間には第2キャビティ69cが形成されている。第2キャビティ69cには、絶縁性樹脂の溶融樹脂が射出されるゲート69d、69eが設けられている。
【0045】
そして、シールドカバー11a及びシールドコネクタ11bと、第1成形品75とを第2キャビティ69c内に設ける。次いで、第2射出工程として、第2キャビティ69c内に溶融樹脂を射出する。こうして、図1に示すように、カバー11を得る。カバー11は、溶融樹脂が固化し、第2樹脂部65bと、この第2樹脂部65bによって固定された第1成形品75、シールドカバー11a及びシールドコネクタ11bとからなる。このため、第1、2配線63、64を固定する絶縁性樹脂によりシールドカバー11a及びシールドコネクタ11bを固定することができている。
【0046】
また、この製造方法では、第1樹脂部65aで第1、2配線63、64を固定した後、第2樹脂部65bでシールドカバー11a及びシールドコネクタ11bを固定することができるため、カバー11を容易に製造することが可能である。
【0047】
そして、カバー11内に駆動回路7を組み付け、第1の組付体とする。また、第1ハウジング1a及び第2ハウジング1b内に電動機構3及び圧縮機構5が組み付けられた第2の組付体を用意し、第2の組付体の後方に第1の組付体を組み付ける。こうして、実施例の圧縮機を製造することができる。
【0048】
こうして得られた圧縮機では、カバー11の第1コネクタ部61に図示しない外部コネクタが係合される。これにより、第1、2配線63、64(第1、2端子部63a、64a)が外部コネクタ内の図示しない外部端子と接続され、駆動回路7に外部コネクタから給電を行うことが可能になる。
【0049】
車両の運転者が空調装置に対する操作を行うことにより、駆動回路7から接続端子28、クラスタブロック29及びリード線27を介してコイル21に給電がされる。このため、電動機構3が作動してロータ23が回転し、駆動軸25が回転する。このため、圧縮機構5が作動し、可動スクロール37が公転運動を行う。このため、蒸発器を経た冷媒がモータ室13から圧縮室41に吸入され、圧縮室41内で圧縮され、吐出室55に吐出される。吐出室55内の冷媒が凝縮器へ排出され、車室内が空調される。
【0050】
ここで、この圧縮機では、図1及び図4に示すように、第1、2端子部63a、64aを有する第1、2配線63、64を採用している。このため、平板状の平板部を有する配線に比べ、第1、2配線63、64と外部コネクタとの接触面積が大きい。このため、第1、2配線63、64と外部コネクタとの間の抵抗を小さくすることができる。
【0051】
また、この圧縮機では、第1、2配線63、64と外部コネクタとの接触面積が大きいことから、車両の走行時に発生した振動によっても、第1、2配線63、64と外部コネクタとが擦れ難く、第1、2配線63、64の第1、2端子部63a、64aに摩耗を生じ難い。
【0052】
さらに、この圧縮機では、中空の第1、2端子部63a、64aを有する第1、2配線63、64を採用しているため、中実の丸ピンを有する配線に比べて製造コストをより低廉化することができる。
【0053】
また、この圧縮機では、図7に示すように、第1射出工程において、第1、2配線63、64を絶縁性樹脂によってインサート成形して第1成形品75を成形する際、第1、2端子部63a、64aとリード部66aとの間に繋がっている第1、2蓋部63c、64cが開口端部74を塞いでいるので、第1、2端子部63a、64a内に流動性のある絶縁性樹脂が入ることを防止している。このため、第1成形品75には不良品が生じ難い。
【0054】
したがって、この圧縮機では、発熱の抑制や省電力に寄与し、優れた耐久性を発揮し、製造コストの低廉化を実現しつつ、不良品を生じにくい。
【0055】
(実施例2)
実施例2の圧縮機は、図10に示すように、第1、2配線77の端子部77aが径内方向に凹設され、蓋部68dを支持する3つの凹部77eを有している。各凹部77eは、端子部77aの軸心周りで等角度離間されている。各凹部77eは、端子部77aの軸心周りで等角度離間されていれば、2つでもよく、4つ以上でもよい。他の構成は実施例1と同様である。
【0056】
この圧縮機では、第1、2配線77を絶縁性樹脂によってインサート成形する際、各凹部77eが蓋部68dを支持し、端子部77a内に流動性のある絶縁性樹脂が入ることを確実に防ぐことができる。特に、各凹部77eが等角度離間されているため、端子部77aの開口端部74で蓋部68dをバランスよく支持することができる。このため、溶融樹脂をインサート成形する際に、蓋部68dが傾斜し難く、不良品がより生じ難い。他の作用効果は実施例1と同様である。
【0057】
以上において、本発明を実施例1、2に即して説明したが、本発明は上記実施例1、2に制限されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更して適用できることはいうまでもない。
【0058】
例えば、実施例1、2の圧縮機では、カバー11が第2ハウジング1bの後方に設けられているが、カバー11を第2ハウジング1bの上方に設けてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0059】
本発明は車両等の空調装置に利用可能である。
【符号の説明】
【0060】
1…ハウジング
1a…第1ハウジング(ハウジング本体)
1b…第2ハウジング(ハウジング本体)
3…電動機構
5…圧縮機構
7…インバータ(駆動回路)
11…カバー
11a…シールドカバー
11b…シールドコネクタ
17…収容室
61…第1コネクタ部(コネクタ部)
63…第1配線(配線)
63a…第1端子部(端子部)
66a、68b、70b…リード部
66b、68c…接続部(リード部)
63c…第1蓋部(蓋部)
64…第2配線(配線)
64a…第2端子部(端子部)
64c…第2蓋部(蓋部)
65a…第1樹脂部
65b…第2樹脂部
68…平板
67…第1射出成形金型(射出成形金型)
69…第2射出成形金型(射出成形金型)
71a…第1キャビティ(キャビティ)
71b…第2キャビティ(キャビティ)
72…成形前配線
70a、77a…端子部
68d…蓋部
74…開口端部
75…第1成形品
77e…凹部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10