(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態について図面を用いて説明する。
【0018】
(実施形態1)
実施形態1では、車両システム100は、スマートエントリシステムの一機能として実現されている。
図1は、車両システム100の概略的な構成の一例を示す図である。
図1に示す車両システム100は、車両に搭載される車載装置10と、携帯機20とを含む。
【0019】
車載装置10は、照合のための信号を携帯機20へ無線通信によって送信し、この信号の受信に応じて携帯機20から返信される信号を受信することにより、携帯機20の照合を行う。そして、照合が成立した場合に、車両のドアの施錠制御及び解錠制御を行う。車載装置10は、
図1に示すように、LF送信部11、チューナ12、及び制御部13を備えている。
【0020】
LF送信部11には、送信アンテナとして第1室内アンテナ11a、第2室内アンテナ11b、及びトランク内アンテナ11cが接続されている。第1室内アンテナ11a及び第2室内アンテナ11bは車室内に配置されており、トランク内アンテナ11cはトランクルーム内に配置されている。また、各送信アンテナ11a〜11cのうち、少なくとも2つ同士が、直交な関係に配置されている。なお、第1室内アンテナ11a、第2室内アンテナ11b、及びトランク内アンテナ11cの更なる詳細な配置については後述する。
【0021】
LF送信部11は、制御部13から入力される信号をLF帯の電波にのせて、順次時分割で各アンテナ11a〜11cから送出させる。各アンテナ11a〜11cが請求項の送信アンテナに相当する。各アンテナ11a〜11cの送信周波数は、同一であって、一例としては、21kHz帯、125kHz帯、134kHz帯等とすればよい。
【0022】
また、LF送信部11は、各アンテナ11a〜11cからLF帯の電波を、任意の位相差にて送信できるものである。例えば、LF送信部11は、各アンテナ11a〜11cから同時且つ同位相にてLF帯の電波を送信することもできるし、各アンテナ11a〜11cから同時且つ所定の位相差にてLF帯の電波を送信することもできる。よってLF送信部11が請求項の車載側送信部に相当する。
【0023】
所定の位相差とは、お互いに直交な関係に配置されている送信アンテナ同士の磁界発生エリアの重複領域において回転磁界が発生する位相差であればよい。好ましくは、互いに直交な関係に配置された送信アンテナが2つまでの場合には、90°の位相差とすればよい。また、互いに直交な関係に配置された送信アンテナが3つの場合には、120°の位相差とすればよい。
【0024】
ここで、
図2(a)を用いて、第1室内アンテナ11aと第2室内アンテナ11bとの間の位相差を90°とした場合の合成磁界の例を示す。また、
図2(b)を用いて、第1室内アンテナ11aと第2室内アンテナ11bとの間の位相差を120°とした場合の合成磁界の例を示す。
【0025】
図2中の破線で示す曲線が第1室内アンテナ11aから発生する磁界の強度の時間変化を表しており、破線で示す矢印が第1室内アンテナ11aから発生する磁界の磁界ベクトルを現している。また、
図2中の点線で示す曲線が第2室内アンテナ11bから発生する磁界の強度の時間変化を表しており、点線で示す矢印が第2室内アンテナ11bから発生する磁界の磁界ベクトルを表している。さらに、
図2中の実線で示す矢印が、第1室内アンテナ11aについての磁界ベクトルと第2室内アンテナ11bについての磁界ベクトルとを合成した磁界ベクトル(以下、合成磁界ベクトル)を表している。
【0026】
第1室内アンテナ11aと第2室内アンテナ11bとの間の位相差を90°とした場合、
図2(a)の合成磁界ベクトルが示すように、第1室内アンテナ11aから発生する磁界と第2室内アンテナ11bから発生する磁界とから、回転磁界が発生する。また、第1室内アンテナ11aと第2室内アンテナ11bとの間の位相差を120°とした場合にも、
図2(b)の合成磁界ベクトルが示すように、第1室内アンテナ11aから発生する磁界と第2室内アンテナ11bから発生する磁界とから、回転磁界が発生する。回転磁界、つまり、円偏波の発生イメージは
図3に示す通りである。
【0027】
続いて、第1室内アンテナ11a、第2室内アンテナ11b、及びトランク内アンテナ11cの配置の一例について
図4を用いて説明を行う。一例として、第1室内アンテナ11a、第2室内アンテナ11b、及びトランク内アンテナ11cの配置パターンとしては、
図4に示す配置パターン1〜4がある。なお、
図4中の破線で示す円が各アンテナ11a〜11cの電波の送信範囲を表している。また、
図4中のArで示す実線で囲まれた範囲が後述の回転磁界の発生エリアを表している。
【0028】
配置パターン1では、第1室内アンテナ11aと第2室内アンテナ11bとをセンターコンソール付近に、お互いが直交するように配置している。また、トランク内アンテナ11cはトランクルーム内に、第1室内アンテナ11aと直交するように配置している。つまり、配置パターン1では、第1室内アンテナ11aと第2室内アンテナ11b、第1室内アンテナ11aとトランク内アンテナ11cとがそれぞれお互いに直交な関係に配置されている。
【0029】
配置パターン2では、第1室内アンテナ11aをセンターコンソール付近に、第2室内アンテナ11bをリアシートに、お互いが直交するように配置している。また、トランク内アンテナ11cはトランクルーム内に、第2室内アンテナ11bと直交するように配置している。つまり、配置パターン2では、第1室内アンテナ11aと第2室内アンテナ11b、第2室内アンテナ11bとトランク内アンテナ11cとがそれぞれお互いに直交な関係に配置されている。
【0030】
配置パターン3では、第1室内アンテナ11aを左フロントドア内側付近に、第2室内アンテナ11bを右フロントドア内側付近に、お互いが直交するように配置している。また、トランク内アンテナ11cはトランクルーム内に、第1室内アンテナ11aと第2室内アンテナ11bとのいずれとも直交するように配置している。つまり、配置パターン3では、第1室内アンテナ11aと第2室内アンテナ11bとトランク内アンテナ11cとがお互いに直交な関係に配置されている。
【0031】
配置パターン4では、第1室内アンテナ11aをセンターコンソール付近に、第2室内アンテナ11bを左リアドア内側付近に、お互いが直交するように配置している。また、トランク内アンテナ11cはトランクルーム内に、第2室内アンテナ11bと直交するように配置している。つまり、配置パターン4では、第1室内アンテナ11aと第2室内アンテナ11b、第2室内アンテナ11bとトランク内アンテナ11cとがそれぞれお互いに直交な関係に配置されている。
【0032】
例えば、配置パターン1、2、4では、互いに直交な関係に配置された送信アンテナが2つまでなので、互いに直交な関係に配置された2つの送信アンテナ間の位相差は90°とすればよい。また、配置パターン3では、互いに直交な関係に配置された送信アンテナが3つなので、互いに直交な関係に配置された3つの送信アンテナ間の位相差は120°とすればよい。
【0033】
このようにすることで、
図4に示すように、配置パターン1〜4のいずれについても、フロントドア及びリアドアの外側近辺までを回転磁界の発生エリア(
図4中のAr)とすることができる。実施形態1では、各アンテナ11a〜11cの配置が配置パターン3であって、位相をずらす場合には各アンテナ11a〜11c間の位相差を120°とする場合を例に挙げて説明を行う。
【0034】
なお、車両システム100では、前述の配置パターン1〜4に限らず、複数の送信アンテナのうち、少なくとも2つの送信アンテナ同士が、直交な関係に配置されている構成とすればよい。
【0035】
ここで、
図5のフローチャートを用いて、車載装置10でのLF帯の電波にのせた信号の送信に関連する処理(以下、信号送信関連処理)の一例についての説明を行う。
図5のフローチャートは、ユーザが車両ドア付近の後述するドアスイッチ31を操作して、ドアスイッチ31からユーザ操作に応じた信号が入力されたときに開始される構成とすればよい。
【0036】
まず、ステップS1では、制御部13が、例えば第1室内アンテナ11aからWake信号を送信させるようにLF送信部11に指示を行い、ステップS2に移る。これにより、Wake信号が第1室内アンテナ11aからLF帯の電波にのせて送信される。Wake信号は、スリープ状態にある携帯機20をウェークアップ状態に移行させるための信号である。
【0037】
ステップS2では、制御部13が、例えば第1室内アンテナ11aからChallenge信号を送信させるようにLF送信部11に指示を行い、ステップS3に移る。これにより、Challenge信号が第1室内アンテナ11aからLF帯の電波にのせて送信される。
【0038】
Challenge信号は、例えば、コード照合に用いるためのコード(以下、車両側照合コード)や後続するBurst信号での位相に関する制御のデータ(以下、位相制御データ)等を含んでいる。車両側照合コードとしては、例えば車両に固有のコードを用いる構成とすればよい。また、位相制御データは、後続するBurst信号での同位相や位相ずらしの制御についてのデータである。一例として、実施形態1では、位相制御データは、同位相でのBurst信号の送信に続き、位相をずらしたBurst信号の送信を行うことを示すデータとする。
【0039】
ステップS3では、制御部13が、各アンテナ11a〜11cから同時且つ同位相にてBurst信号を送信させるようにLF送信部11に指示を行い、ステップS4に移る。これにより、Burst信号が各アンテナ11a〜11cからLF帯の電波にのせて、同時且つ同位相にて送信される。この場合、回転磁界は発生しない。なお、便宜上、この同時且つ同位相にて送信される1回目のBurst信号を、実施形態1ではBurst1信号と呼ぶ。
【0040】
ステップS4では、制御部13が、各アンテナ11a〜11cから同時且つ120°の位相差にてBurst信号を送信させるようにLF送信部11に指示を行い、フローを終了する。これにより、Burst信号が各アンテナ11a〜11cからLF帯の電波にのせて、同時且つ120°ずつ位相をずらして送信される。この場合、回転磁界が発生する。なお、便宜上、この同時且つ位相をずらして送信される2回目のBurst信号を、実施形態1ではBurst2信号と呼ぶ。
【0041】
まとめて説明すると、
図8に示すように、第1室内アンテナ11aからWake信号、Challenge信号の順に送信される。そして、それに続いて各アンテナ11a〜11cから、同時且つ同位相でのBurst1信号の送信、同時且つ位相をずらしてのBurst2信号の送信が行われる。なお、Wake信号、Challenge信号、Burst1信号、Burst2信号は、いずれもLF帯の電波にのせて送信する信号であり、以降ではまとめてLF信号と呼ぶ。
【0042】
図1に戻って、チューナ12には、RF受信アンテナ12aが接続されている。チューナ12は、RF受信アンテナ12aによって受信された信号に対する増幅、復調等の処理を行う。
【0043】
制御部13は、CPU、ROM、RAM、バックアップRAM、I/O等(いずれも図示せず)よりなるマイクロコンピュータを主体として構成され、ROMに記憶された各種の制御プログラムを実行することで各種の処理を実行するものである。制御部13には、LF送信部11、チューナ12、ドアスイッチ31、ドア開閉検出部32、ドア施錠検出部33、及びドア施解錠部34が接続されている。
【0044】
ドアスイッチ31は、車両のドアを開閉するためのドアノブの近くに設けられたタッチスイッチや車両のトランクドアのドアノブ付近に設けられたタッチスイッチである。ユーザのドアスイッチ31に対する操作に応じた信号が制御部13へ出力されるようになっている。
【0045】
ドア開閉検出部32は、車両のドアやトランクドアの開閉状態を検出するためのスイッチである。ドア開閉検出部32から制御部13へ、車両のドアやトランクドアの開閉状態を示す信号が出力されるようになっている。
【0046】
ドア施錠検出部33は、車両のドアやトランクドアの施錠状態を検出するスイッチである。ドア施錠検出部33から制御部13へ、車両のドアやトランクドアの施錠状態を示す信号が出力されるようになっている。
【0047】
ドア施解錠部34は、車両のドアやトランクドアの施解錠を行うためのアクチュエータを有し、各アクチュエータを駆動することにより車両のドアやトランクドアの施解錠を行う。
【0048】
次に、
図6を用いて携帯機20についての説明を行う。携帯機20はユーザに携帯されるものである。ここで言うところの「ユーザに携帯される」とは、ユーザが実際に携帯している場合に限られるものではなく、ユーザが携帯することが可能であるが実際には携帯していない場合も含んでいる。
【0049】
図6に示すように、携帯機20は、3軸LF受信アンテナ21、LF受信カスタムIC22、RF送信回路27、及びRF送信アンテナ28を備えている。また、LF受信カスタムIC22は、3軸合成回路23、コード判定回路24、軸別強度検出回路25、及び制御回路26を備えている。
【0050】
3軸LF受信アンテナ21は、車載装置10から順次時分割で送信されてくるLF帯の電波を受信する。すなわち、車載装置10からLF信号を受信する。受信するLF信号としては、前述したWake信号、Challenge信号、Burst1信号、Burst2信号がある。この3軸LF受信アンテナ21は、水平2方向(以下、X軸、Y軸)及び垂直方向(以下、Z軸)の3軸アンテナにより構成されている。この3軸LF受信アンテナ21が請求項の3軸受信アンテナに相当する。
【0051】
3軸合成回路23は、3軸LF受信アンテナ21から入力されるX軸、Y軸、Z軸の各軸の受信信号を合成し、合成した3軸合成受信信号をコード判定回路24に出力する。コード判定回路24は、Challenge信号を受信した場合に、その3軸合成受信信号に含まれる前述の車両側照合コードをもとに、コード照合を行う。例えばコード照合は、予め記憶してあるコードと、3軸合成受信信号に含まれる車両側照合コードとが一致するか否かによって行う構成とすればよい。また、コード照合の結果は制御回路26に出力する。
【0052】
軸別強度検出回路25は、3軸LF受信アンテナ21のX軸、Y軸、Z軸の各軸の磁界強度を個別に逐次検出することで、各軸個別の磁界強度の時間変化を検出する。検出した各軸の磁界強度の時間変化のデータについては制御回路26に出力する。軸別強度検出回路25が請求項の磁界強度検出部に相当する。
【0053】
制御回路26は、コード判定回路24のコード照合の結果や軸別強度検出回路25での検出結果に応じ、RF送信回路27及びRF送信アンテナ28を介して、Response信号をRF帯の電波にのせて送信させる。制御回路26での処理の詳細については後述する。
【0054】
ここで、
図7のフローチャートを用いて、携帯機20でのLF信号への応答に関連する処理(以下、応答関連処理)の一例についての説明を行う。
図7のフローチャートは、車載装置10から携帯機20がWake信号を受信してウェークアップ状態に移行したときに開始される構成とすればよい。
【0055】
まず、ステップS21では、3軸LF受信アンテナ21でChallenge信号を受信し、受信したChallenge信号を3軸合成回路23で合成して、ステップS22に移る。ステップS22では、合成した3軸合成受信信号に含まれる車両側照合データをもとに、コード判定回路24で前述のコード照合を行い、ステップS23に移る。
【0056】
ステップS23では、コード照合が成立した場合(ステップS23でYES)には、ステップS24に移る。一方、コード照合が不成立だった場合(ステップS23でNO)には、フローを終了する。
【0057】
ステップS24では、3軸LF受信アンテナ21でBurst1信号、Burst2信号を順次受信し、ステップS25に移る。ステップS25では、制御回路26が、不正な中継器を介して車載装置10と携帯機20との間で無線通信が行われたか否かを判定する不正判定処理を行って、ステップS26に移る。よって、この制御回路26が請求項の不正判定部に相当する。
【0058】
不正判定処理では、受信したChallenge信号を3軸合成回路23で合成した3軸合成受信信号に含まれる位相制御データと、軸別強度検出回路25で検出した各軸の磁界強度の時間変化のデータとから、不正な中継器を介して無線通信が行われたか否かを判定する。一例としては、以下の通りである。
【0059】
制御回路26は、位相制御データに併せて、同時且つ同位相にて送信されたBurst1信号の受信時における各軸の磁界強度と、同時且つ位相をずらして送信されたBurst2信号の受信時における各軸の磁界強度とを比較する。そして、両者の傾向が同じ場合には、不正な中継器を介して無線通信が行われたと判定する一方、両者の傾向が異なる場合には、不正な中継器を介して無線通信が行われていないと判定する。
【0060】
一例として、X軸、Y軸、Z軸の磁界強度の比率が、Burst1信号の受信時とBurst2信号の受信時とで略一致する場合に、両者の傾向が同じと判定する構成とすればよい。ここで言うところの略一致とは、誤差程度の範囲におさまることを示す。
【0061】
ここで、不正な中継器を介して無線通信が行われたか否かに応じて、Burst1信号の受信時とBurst2信号の受信時とでの、3軸LF受信アンテナ21の各軸の磁界強度の傾向が変わることについて以下で説明を行う。
【0062】
リレーアタックに用いられる中継器は、通常はアンテナが1軸のみであることが多いと考えられる。よって、不正な中継器を介して無線通信が行われた場合には、Burst1信号の受信時とBurst2信号の受信時とのいずれでも、3軸LF受信アンテナ21の特定の1軸のみの磁界強度が高くなる。
【0063】
一方、不正な中継器を介して無線通信が行われていない場合には、Burst1信号の受信時には回転磁界が発生しないのに対して、Burst2信号の受信時には回転磁界が発生する。よって、
図9に一例を示す通り、Burst1信号の受信時には1軸のみの磁界強度が大きくなるのに対して、Burst2信号の受信時には、Burst1信号の受信時とは異なる軸の磁界強度が最も大きくなったり、他の軸の磁界強度も大きくなったりする。
【0064】
以上のような傾向があるため、Burst1信号の受信時とBurst2信号の受信時とでの、3軸LF受信アンテナ21の各軸の磁界強度の傾向から、不正な中継器を介して無線通信が行われたか否かを判定することが可能となっている。
【0065】
図7に戻って、ステップS26では、不正な中継器を介して無線通信が行われたと判定した場合(ステップS26でYES)には、後述するResponse信号の送信を行わずに、フローを終了する。一方、不正な中継器を介して無線通信が行われていないと判定した場合(ステップS26でNO)には、ステップS27に移る。
【0066】
ステップS27では、制御回路26が、RF送信回路27及びRF送信アンテナを介して、Response信号をRF帯の電波にのせて送信させ、フローを終了する。Response信号には、例えば携帯機20に固有の携帯機側照合コードを含む。
【0067】
なお、本実施形態では、Challenge信号に位相制御データを含む構成を示したが、必ずしもこれに限らず、Challenge信号に位相制御データを含ませない構成としてもよい。また、Challenge信号に位相制御データをランダムに含ませ、この位相制御データに併せて前述の不正判定処理を行うことで、より中継器の介入を困難として、秘匿性をより向上させる構成としてもよい。
【0068】
続いて、
図10のフローチャートを用いて、車載装置10の制御部13での携帯機20からのResponse信号を受信した際の処理(以下、応答受信時処理)についての説明を行う。
図10のフローチャートは、携帯機20からのResponse信号をRF受信アンテナ12aで受信したときに開始される構成とすればよい。
【0069】
まず、ステップS41では、RF受信アンテナ12a及びチューナ12を介して得られたResponse信号に含まれる携帯機側照合データをもとに、コード照合を行う。例えばコード照合は、予め記憶してあるコードと、Response信号に含まれる携帯機側照合コードとが一致するか否かによって行う構成とすればよい。
【0070】
ステップS42では、コード照合が成立した場合(ステップS42でYES)には、ステップS43に移る。一方、コード照合が不成立だった場合(ステップS42でNO)には、フローを終了する。
【0071】
ステップS43では、スマート駆動を行わせて、フローを終了する。一例としては、ドアスイッチ31に対する操作に応じた信号が制御部13に入力されてから一定時間内である場合には、ドア施解錠部34に対してドアの解錠を指示する。ドア施解錠部34は、このドアの解錠の指示に応じて車両のドアの施錠を行うためのアクチュエータを駆動し、車両のドアの施錠を行う。なお、車両のドアの解錠だけでなく、車両のエンジン等の始動許可等を行う構成としてもよい。
【0072】
実施形態1の構成によれば、同時且つ同位相にて送信されたBurst1信号の受信時における3軸LF受信アンテナ21の各軸の磁界強度と、同時且つ位相をずらして送信されたBurst2信号の受信時における各軸の磁界強度とに基づき、不正な中継器を介して無線通信が行われたか否かを精度良く判定することができる。従って、応答性の低下を抑えながらも秘匿性をより向上させることが可能になる。
【0073】
なお、実施形態1では、不正な中継器を介して無線通信が行われたと携帯機20で判定した場合に、携帯機20からのResponse信号を送信させない構成を示したが、必ずしもこれに限らない。例えば、不正な中継器を介して無線通信が行われたと携帯機20で判定した場合に、不正な中継器を介して無線通信が行われたことを示すデータ(以下、不正判定データ)をResponse信号に含ませて携帯機20から送信する構成(以下、変形例1)としてもよい。
【0074】
変形例1の場合、不正判定データを含まないResponse信号を受信した車載装置10では、制御部13がスマート駆動を行わせる一方、不正判定データを含むResponse信号を受信した車載装置10では、制御部13がスマート駆動を行わせない構成とすればよい。他にも、不正判定データを含むResponse信号を車載装置10で受信した場合に、これをログとして制御部13のメモリに残す構成としてもよい。
【0075】
また、実施形態1では、不正な中継器を介して無線通信が行われたか否かを携帯機20で判定する構成を示したが、必ずしもこれに限らない。例えば、不正な中継器を介して無線通信が行われたか否かを車載装置10で判定する構成(以下、変形例2)としてもよい。
【0076】
変形例2の場合、携帯機20は、Challenge信号を受信した場合に、軸別強度検出回路25で検出した3軸LF受信アンテナ21の各軸の磁界強度の時間変化のデータを含むResponse信号を送信する構成とすればよい。このResponse信号に前述の携帯機側照合コードや位相制御データも含む構成としてもよい。
【0077】
そして、車載装置10の制御部13が、受信したResponse信号に含まれる各軸の磁界強度の時間変化のデータをもとに、前述した不正判定処理と同様にして、不正な中継器を介して無線通信が行われたか否かを判定する構成とすればよい。この場合、制御部13が請求項の不正判定部に相当する。不正な中継器を介して無線通信が行われたと制御部13で判定した場合には、制御部13がスマート駆動を行わせないようにする構成とすればよい。
【0078】
変形例2の場合であっても、実施形態1と同様の効果を奏する。また、変形例2において、不正な中継器を介して無線通信が行われたと制御部13で判定した場合に、これをログとして制御部13のメモリに残す構成としてもよい。
【0079】
(実施形態2)
本発明は前述の実施形態に限定されるものではなく、次の実施形態2も本発明の技術的範囲に含まれる。以下では、この実施形態2について説明を行う。なお、説明の便宜上、前述の実施形態の説明に用いた図に示した部材と同一の機能を有する部材については、同一の符号を付し、その説明を省略する。
【0080】
実施形態2の車両システム100は、車載装置10での信号送信関連処理の一部と、携帯機20での応答関連処理のうちの不正判定処理が異なる点を除けば、実施形態1の車両システム100と同様である。
【0081】
ここで、
図11のフローチャートを用いて、実施形態2における車載装置10での信号送信関連処理の一例についての説明を行う。
図11のフローチャートも、ユーザが車両ドア付近のドアスイッチ31を操作して、ドアスイッチ31からユーザ操作に応じた信号が入力されたときに開始される構成とすればよい。
【0082】
まず、ステップS61〜ステップS62までの処理は、前述のステップS1〜ステップS2までの処理と同様にして行う。なお、Challenge信号に含ませる位相制御データは、実施形態2では、位相をずらしたBurst信号の送信に続き、位相をずらしたBurst信号の送信を再度行うことを示すデータとする。
【0083】
ステップS63では、制御部13が、各アンテナ11a〜11cから同時且つ所定の位相差にてBurst信号を送信させるようにLF送信部11に指示を行い、ステップS64に移る。これにより、Burst信号が各アンテナ11a〜11cからLF帯の電波にのせて、同時且つ位相をずらして送信される。この場合、回転磁界が発生する。なお、便宜上、この同時且つ位相をずらして送信される1回目のBurst信号を、実施形態2ではBurst1信号と呼ぶ。
【0084】
所定の位相差は、前述したように、お互いに直交な関係に配置されている送信アンテナ同士の磁界発生エリアの重複領域において回転磁界が発生する位相差であればよい。実施形態2では、互いに直交な関係に配置された送信アンテナが3つの場合であって、120°の位相差とする。
【0085】
ステップS64では、制御部13が、各アンテナ11a〜11cから同時且つ120°の位相差にてBurst信号を送信させるようにLF送信部11に指示を行い、フローを終了する。これにより、Burst信号が各アンテナ11a〜11cからLF帯の電波にのせて、同時且つ120°ずつ位相をずらして送信される。この場合、回転磁界が発生する。なお、便宜上、この同時且つ位相をずらして送信される2回目のBurst信号を、実施形態2ではBurst2信号と呼ぶ。
【0086】
まとめて説明すると、
図12に示すように、第1室内アンテナ11aからWake信号、Challenge信号の順に送信される。そして、それに続いて各アンテナ11a〜11cから、同時且つ位相をずらして、Burst1信号の送信、Burst2信号の送信が順次行われる。
【0087】
続いて、実施形態2における携帯機20での応答関連処理のうちの不正判定処理についての説明を行う。実施形態2における不正判定処理では、制御回路26は、位相制御データに併せて、同時且つ位相をずらして送信されたBurst1信号の受信時における3軸LF受信アンテナ21の各軸の磁界強度と、同時且つ位相をずらして送信されたBurst2信号の受信時における3軸LF受信アンテナ21の各軸の磁界強度とを比較する。そして、両者の傾向が同じ場合には、不正な中継器を介して無線通信が行われたと判定する一方、両者の傾向が異なる場合には、不正な中継器を介して無線通信が行われていないと判定する。
【0088】
一例として、X軸、Y軸、Z軸の磁界強度の比率が、Burst1信号の受信時とBurst2信号の受信時とで略一致する場合に、両者の傾向が同じと判定する構成とすればよい。ここで言うところの略一致とは、誤差程度の範囲におさまることを示す。
【0089】
ここで、不正な中継器を介して無線通信が行われたか否かに応じて、Burst1信号の受信時とBurst2信号の受信時とでの、3軸LF受信アンテナ21の各軸の磁界強度の傾向が変わることについて以下で説明を行う。
【0090】
リレーアタックに用いられる中継器は、通常はアンテナが1軸のみであることが多いと考えられる。よって、不正な中継器を介して無線通信が行われた場合には、Burst1信号の受信時とBurst2信号の受信時とのいずれでも、3軸LF受信アンテナ21の特定の1軸のみの磁界強度が高くなる。
【0091】
一方、不正な中継器を介して無線通信が行われていない場合には、Burst1信号の受信時にもBurst2信号の受信時にも回転磁界が発生する。よって、
図13に一例を示す通り、時間的に前後するBurst1信号の受信時とBurst2信号の受信時とでは、磁界強度が最も大きくなる軸が切り替わる。
【0092】
以上のような傾向があるため、Burst1信号の受信時とBurst2信号の受信時とでの、3軸LF受信アンテナ21の各軸の磁界強度の傾向から、不正な中継器を介して無線通信が行われたか否かを判定することが可能となっている。
【0093】
実施形態2の構成によれば、同時且つ位相をずらして送信されたBurst1信号の受信時における3軸LF受信アンテナ21の各軸の磁界強度と、同時且つ位相をずらして送信されたBurst2信号の受信時における各軸の磁界強度とに基づき、不正な中継器を介して無線通信が行われたか否かを精度良く判定することができる。従って、応答性の低下を抑えながらも秘匿性をより向上させることが可能になる。なお、実施形態2と変形例1や変形例2とを組み合わせた構成としてもよい。
【0094】
(実施形態3)
本発明は前述の実施形態に限定されるものではなく、次の実施形態3も本発明の技術的範囲に含まれる。以下では、この実施形態3について説明を行う。なお、説明の便宜上、前述の実施形態の説明に用いた図に示した部材と同一の機能を有する部材については、同一の符号を付し、その説明を省略する。
【0095】
実施形態3の車両システム100は、車載装置10での信号送信関連処理と、携帯機20での応答関連処理とが一部異なる点を除けば、実施形態1の車両システム100と同様である。
【0096】
ここで、
図14のフローチャートを用いて、実施形態3における車載装置10での信号送信関連処理の一例についての説明を行う。
図14のフローチャートも、ユーザが車両ドア付近のドアスイッチ31を操作して、ドアスイッチ31からユーザ操作に応じた信号が入力されたときに開始される構成とすればよい。
【0097】
まず、ステップS81〜ステップS82までの処理は、前述のステップS1〜ステップS2までの処理と同様にして行う。なお、Challenge信号に含ませる位相制御データは、実施形態3では、位相をずらしたBurst信号の送信を行うことを示すデータとする。
【0098】
ステップS83では、制御部13が、各アンテナ11a〜11cから同時且つ所定の位相差にてBurst信号を送信させるようにLF送信部11に指示を行い、フローを終了する。これにより、Burst信号が各アンテナ11a〜11cからLF帯の電波にのせて、同時且つ位相をずらして送信される。この場合、回転磁界が発生する。
【0099】
所定の位相差は、前述したように、お互いに直交な関係に配置されている送信アンテナ同士の磁界発生エリアの重複領域において回転磁界が発生する位相差であればよい。実施形態3では、互いに直交な関係に配置された送信アンテナが3つの場合であって、120°の位相差とする。
【0100】
まとめて説明すると、
図15に示すように、第1室内アンテナ11aからWake信号、Challenge信号の順に送信される。そして、それに続いて各アンテナ11a〜11cから、同時且つ位相をずらして、Burst信号の送信が行われる。
【0101】
続いて、実施形態3における携帯機20での応答関連処理のうちの不正判定処理についての説明を行う。実施形態3における不正判定処理では、制御回路26は、位相制御データに併せて、同時且つ位相をずらして送信されたBurst信号の受信時における3軸LF受信アンテナ21の各軸の磁界強度の時間変化を比較する。
【0102】
そして、X軸、Y軸、Z軸のうちでの磁界強度の最も大きい軸が時間経過に伴って切り替わる場合には、不正な中継器を介して無線通信が行われていないと判定する一方、3軸のうちでの磁界強度の最も大きい軸が時間経過に伴って切り替わらない場合には、不正な中継器を介して無線通信が行われたと判定する。
【0103】
ここで、不正な中継器を介して無線通信が行われたか否かに応じて、3軸LF受信アンテナ21の各軸の磁界強度の時間変化の傾向が変わることについて以下で説明を行う。
【0104】
リレーアタックに用いられる中継器は、通常はアンテナが1軸のみであることが多いと考えられる。よって、不正な中継器を介して無線通信が行われた場合には、
図16(b)に示すように、3軸LF受信アンテナ21の特定の1軸のみの磁界強度が常に高くなる。
【0105】
一方、不正な中継器を介して無線通信が行われていない場合には、Burst信号の受信時に回転磁界が発生する。よって、
図16(a)に一例を示すように、時間の経過に伴って、磁界強度が最も高くなる軸が切り替わる。
【0106】
以上のような傾向があるため、同時且つ位相をずらして送信されたBurst信号の受信時での、3軸LF受信アンテナ21の各軸の磁界強度の時間変化の傾向から、不正な中継器を介して無線通信が行われたか否かを判定することが可能となっている。
【0107】
実施形態3の構成によれば、同時且つ位相をずらして送信されたBurst信号の受信時における3軸LF受信アンテナ21の各軸の磁界強度の時間変化に基づき、不正な中継器を介して無線通信が行われたか否かを精度良く判定することができる。従って、応答性の低下を抑えながらも秘匿性をより向上させることが可能になる。なお、実施形態3と変形例1や変形例2とを組み合わせた構成としてもよい。
【0108】
また、実施形態3では、軸別強度検出回路25は、3軸LF受信アンテナ21のX軸、Y軸、Z軸の各軸の磁界強度を逓倍の間隔で逐次検出する構成とすることが好ましい。これによれば、サンプリング周波数を低減することができ、携帯機20での電力消費を抑えることができる。
【0109】
なお、本発明は、上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。