(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明を実施するための形態(以下、単に「本実施形態」という。)について詳細に説明する。以下の本実施形態は、本発明を説明するための例示であり、本発明を以下の内容に限定する趣旨ではない。本発明は、その要旨の範囲内で適宜に変形して実施できる。
【0022】
本実施形態の酸素吸収剤組成物は、少なくとも1種の上記一般式(1)で表されるインダン骨格を有する化合物と、遷移金属触媒と、を含有する。インダン骨格を有する化合物は、酸素吸収後も酸化による分子鎖の切断がなく、その構造を維持することができる。
【0023】
<インダン骨格を有する化合物>
本実施形態のインダン骨格を有する化合物は、下記一般式(1)で表される。
【0025】
(式中、R
1〜R
10は、それぞれ独立して、水素原子又は一価の置換基を示し、前記一価の置換基は、ハロゲン原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、複素環基、シアノ基、ヒドロキシ基、カルボキシル基、エステル基、アミド基、ニトロ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アシル基、アミノ基、チオール基、アルキルチオ基、アリールチオ基、複素環チオ基、イミド基、下記一般式(1a)で表される置換基、及び下記一般式(1b)で表される置換基からなる群より選ばれる少なくとも1種であり、これらはさらに置換基を有していてもよく、R
1〜R
10のうち2つの置換基が結合して環を形成していてもよい。インダン骨格のベンジル位には少なくとも1つ以上の水素原子が結合している。)
【0028】
(一般式(1a)及び一般式(1b)中、Rは、それぞれ独立して、一価の置換基を示し、前記一価の置換基は、ハロゲン原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、複素環基、シアノ基、ヒドロキシ基、カルボキシル基、エステル基、アミド基、ニトロ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アシル基、アミノ基、チオール基、アルキルチオ基、アリールチオ基、複素環チオ基、及びイミド基からなる群より選ばれる少なくとも1種であり、これらはさらに置換基を有していてもよく、Rのうち2つの置換基が結合して環を形成していてもよい。Wは、結合手又は二価の有機基であり、前記二価の有機基は、芳香族炭化水素基、飽和もしくは不飽和の脂環式炭化水素基、直鎖状もしくは分岐状の飽和もしくは不飽和の脂肪族炭化水素基及び複素環基、−C(=O)−、−OC(=O)−、−N(H)C(=O)−、及びこれらの任意の組み合わせからなる群より選ばれる少なくとも1種である。mは0〜4の整数を示し、nは0〜5の整数を示し、pは0〜6の整数を示し、qは0〜3の整数を示す。)
【0029】
上記一般式(1)において、R
1〜R
10で示す一価の置換基としては、ハロゲン原子(例えば、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子)、アルキル基(好ましくは炭素数が1〜15、より好ましくは炭素数が1〜6の直鎖状、分岐状又は環状アルキル基、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、t−ブチル基、n−オクチル基、2−エチルヘキシル基、シクロプロピル基、シクロペンチル基)、アルケニル基(好ましくは炭素数が2〜10、より好ましくは炭素数が2〜6の直鎖状、分岐状又は環状アルケニル基、例えば、ビニル基、アリル基)、アルキニル基(好ましくは炭素数が2〜10、より好ましくは炭素数が2〜6のアルキニル基、例えば、エチニル基、プロパルギル基)、アリール基(好ましくは炭素数が6〜16、より好ましくは炭素数が6〜10のアリール基、例えば、フェニル基、ナフチル基)、複素環基(好ましくは炭素数が1〜12、より好ましくは炭素数が2〜6の5員環或いは6員環の芳香族又は非芳香族の複素環化合物から1個の水素原子を取り除くことによって得られる一価の基、例えば、1−ピラゾリル基、1−イミダゾリル基、2−フリル基)、シアノ基、ヒドロキシ基、カルボキシル基、エステル基、アミド基、ニトロ基、アルコキシ基(好ましくは炭素数が1〜10、より好ましくは炭素数が1〜6の直鎖状、分岐状又は環状アルコキシ基、例えば、メトキシ基、エトキシ基)、アリールオキシ基(好ましくは炭素数が6〜12、より好ましくは炭素数が6〜8のアリールオキシ基、例えば、フェノキシ基)、アシル基(ホルミル基を含む。好ましくは炭素数が2〜10、より好ましくは炭素数が2〜6のアルキルカルボニル基、好ましくは炭素数が7〜12、より好ましくは炭素数が7〜9のアリールカルボニル基、例えば、アセチル基、ピバロイル基、ベンゾイル基)、アミノ基(好ましくは炭素数が1〜10、より好ましくは炭素数が1〜6のアルキルアミノ基、好ましくは炭素数が6〜12、より好ましくは炭素数が6〜8のアニリノ基、好ましくは炭素数が1〜12、より好ましくは炭素数が2〜6の複素環アミノ基、例えば、アミノ基、メチルアミノ基、アニリノ基)、チオール基、アルキルチオ基(好ましくは炭素数が1〜10、より好ましくは炭素数が1〜6のアルキルチオ基、例えば、メチルチオ基、エチルチオ基)、アリールチオ基(好ましくは炭素数が6〜12、より好ましくは炭素数が6〜8のアリールチオ基、例えば、フェニルチオ基)、複素環チオ基(好ましくは炭素数が2〜10、より好ましくは炭素数が1〜6の複素環チオ基、例えば、2−ベンゾチアゾリルチオ基)、イミド基(好ましくは炭素数が2〜10、より好ましくは炭素数が4〜8のイミド基、例えば、N−スクシンイミド基、N−フタルイミド基)等が例示されるが、これらに特に限定されない。
【0030】
上記一般式(1)で表される化合物は、インダン骨格のベンジル位には少なくとも1つ以上の水素原子が結合されているものである。後述するが、インダン骨格のベンジル位に結合された水素原子と、後述する遷移金属触媒とが作用することによって、優れた酸素吸収能等を発現することができる。インダン骨格のベンジル位には少なくとも1つ以上の水素原子が結合されている化合物としては、例えば、一般式(1)のR
1、R
3、R
8、及びR
10のいずれか1つが水素原子である化合物等が挙げられる。
【0031】
なお、上記の一価の置換基R
1〜R
10が水素原子を有する場合、その水素原子が置換基T(ここで、置換基Tは、上記の一価の置換基Rで説明したものと同義である。)でさらに置換されていてもよい。その具体例としては、ヒドロキシ基で置換されたアルキル基(例えば、ヒドロキシエチル基)、アルコキシ基で置換されたアルキル基(例えば、メトキシエチル基)、アリール基で置換されたアルキル基(例えば、ベンジル基)、第1級或いは第2級アミノ基で置換されたアルキル基(例えば、アミノエチル基)、アルキル基で置換されたアリール基(例えば、p−トリル基)、アルキル基で置換されたアリールオキシ基(例えば、2−メチルフェノキシ基)等が挙げられるが、これらに特に限定されない。なお、上記の一価の置換基Rが一価の置換基Tを有する場合、上述した炭素数には、置換基Tの炭素数は含まれないものとする。例えば、ベンジル基は、フェニル基で置換された炭素数1のアルキル基と看做し、フェニル基で置換された炭素数7のアルキル基とは看做さない。また、上記の一価の置換基Rが置換基Tを有する場合、その置換基Tは複数あってもよい。
【0032】
また、一価の置換基R
1〜R
10のうちの2つが結合して環を形成していてもよい。その具体例としては、例えば、R
1〜R
10のうちの2つが縮合し、5〜8員環を形成した化合物が挙げられる。なお、ここでいう環とは、公知の環構造のいずれであっても構わず、特に限定されないが、好ましくは炭素数が4〜7の芳香族環又は脂肪族環或いはヘテロ環(より好ましくは、シクロヘキサン環、シクロヘプタン環、酸無水物環(例えば、コハク酸無水物環、グルタル酸無水物環、アジピン酸無水物環等)、ベンゼン環、ビシクロ環等)である。)である。
【0033】
使用中の揮発による損失を抑制するとともに化合物単位質量当たりの酸素吸収量を大きくする観点から、上記の一般式(1)で表されるインダン骨格を有する化合物は、R
1〜R
10のうち少なくとも1つが、置換又は無置換のアルキル基、置換又は無置換のアリール基、ヒドロキシ基、カルボキシル基、置換又は無置換のエステル基、アルコキシ基、アシル基、置換もしくは無置換のアミド基及び置換もしくは無置換のイミド基からなる群(以下、単に「置換基群S」ともいう。)より選択される1種であるもの;2以上のRが縮合して5〜6員環を形成したものが好ましい。これら置換基群Sの中でも、置換又は無置換のアルキル基、置換又は無置換のアリール基、ヒドロキシ基、カルボキシル基、アルコキシ基、置換又は無置換のエステル基、及び置換又は無置換のアミド基がより好ましい。
【0034】
上記の一般式(1)で表されるインダン骨格を有する化合物の好ましい第一の態様としては、以下に示す構造のものが挙げられる。
【0036】
(式中、R
1〜R
7は、それぞれ独立して、一価の置換基を示し、一価の置換基は上記において説明したR
1〜R
10と同義であり、但し、R
1〜R
7が2つ以上結合して環を形成していない。)
【0037】
上記の第一の態様においては、R
1〜R
7のうち少なくとも2以上が上述した置換基群Sより選択される1種であり、且つ、それ以外のR
1〜R
7は水素原子であることが好ましく、R
1〜R
7のうち2つが置換基群Sより選択される1種であり、且つ、R
1〜R
7のうち6が水素原子であることがより好ましい。
【0038】
また、上記の一般式(1)で表されるインダン骨格を有する化合物の好ましい第二の態様としては、以下に示す構造のものが挙げられる。
【0040】
(式中、R
8は、芳香族炭化水素基、飽和又は不飽和の脂環式炭化水素基、直鎖状又は分岐状の飽和又は不飽和の脂肪族炭化水素基、複素環基からなる群から選ばれる少なくとも1つの基を含有する2価の基を示す。)
【0041】
上記一般式(1d)で表される化合物は公知の方法で合成できる。例えば、2−インダノールとジカルボン酸エステルのエステル交換反応や、2−インダノールとジカルボン酸の脱水縮合反応で合成することができる。
【0042】
R
8としては、2価の芳香族炭化水素基、又はアルキレン基(炭素数1〜10、好ましくは2〜8)が好ましい。
【0043】
本実施形態のインダン骨格を有する化合物の特に好ましい具体例を、以下の式(2)〜(5)に示す。
【0048】
上述した一般式(1)で表されるインダン骨格を有する化合物は、いずれも、インダン骨格のベンジル位に水素を有するものであり、後述する遷移金属触媒と併用することでベンジル位の水素が引き抜かれ、これにより優れた酸素吸収能を発現する。
【0049】
また、本実施形態の酸素吸収剤組成物は、酸素吸収後の臭気強度の増大が抑制されたものである。その理由は明らかではないが、例えば以下の酸化反応機構が推測される。すなわち、上記の一般式(1)で表されるインダン骨格を有する化合物においては、まずインダン骨格のベンジル位にある水素が引き抜かれてラジカルが生成し、その後、ラジカルと酸素との反応によりベンジル位の炭素が酸化され、ヒドロキシ基又はケトン基が生成すると考えられる。そのため、酸素吸収剤組成物としては、従来技術のような酸化反応による酸素吸収主剤の分子鎖の切断がなく、酸素吸収主剤(化合物)の構造が維持されるため、臭気の原因となる低分子量の有機化合物が酸素吸収後に生成し難く、その結果、酸素吸収後の臭気強度の増大が抑制されているものと推測される。この観点からも、インダン骨格を有する化合物においては、インダン骨格の数が多いほど好ましい。これによって酸素との反応点が多くなり、一層優れた酸素吸収能となる。さらに、上記したインダン骨格のベンジル位にある水素は、少なくとも1つのインダン骨格上に存在していればよいが、例えば、置換基として一般式(1a)や一般式(1b)を有する場合、上記した観点から、一般式(1a)や一般式(1b)のインダン骨格にも上記したベンジル位に結合した水素が存在することが好ましい。
【0050】
上述した一般式(1)で表されるインダン骨格を有する化合物の分子量は、所望する特性や導入する置換基R
1〜R
10に応じて適宜調整でき、特に限定されない。使用中の揮発による損失を抑制するとともに化合物単位質量当たりの酸素吸収量を大きくする観点から、その分子量は150〜1500の範囲であることが好ましく、より好ましくは180〜1200、さらに好ましくは200〜1000である。なお、上述した一般式(1)で表されるインダン骨格を有する化合物は、1種を単独で或いは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0051】
また、一般式(1)で表されるインダン骨格を有する化合物の中でも、使用時の揮発による損失を抑制する観点では、沸点が高い、すなわち使用時の温度における蒸気圧が低いものが好ましく用いられる。例えば、前記化合物としては、熱可塑性樹脂との混練温度における蒸気圧が低いものほど、酸素吸収剤組成物の製造時の揮発による損失を抑制できるため好ましい。かかる揮発による損失の指標としては、例えば、3%重量減少温度を採用することができる。すなわち、前記化合物は、3%重量減少温度が100℃以上であることが好ましく、より好ましくは150℃以上、さらに好ましくは200℃以上である。なお、かかる3%重量減少温度の上限値は特に限定されない。
【0052】
酸素吸収剤組成物中の、一般式(1)で表されるインダン骨格を有する化合物と後述する熱可塑性樹脂との総量に対する、一般式(1)で表されるインダン骨格を有する化合物の割合は、1〜30質量%であることが好ましく、より好ましくは1.5〜25質量%であり、さらに好ましくは2〜20質量%である。一般式(1)で表されるインダン骨格を有する化合物の割合を、上記下限値以上とすることで、酸素吸収性能をより高めることができ、上記上限値以下とすることで、成形性をより高めることができる。
【0053】
<遷移金属触媒>
本実施形態の酸素吸収剤組成物おいて使用される遷移金属触媒としては、上記のインダン骨格を有する化合物の酸化反応の触媒として機能し得るものであれば、公知のものから適宜選択して用いることができ、特に限定されない。
【0054】
かかる遷移金属触媒の具体例としては、例えば、遷移金属の有機酸塩、ハロゲン化物、燐酸塩、亜燐酸塩、次亜燐酸塩、硝酸塩、硫酸塩、酸化物、水酸化物等が挙げられる。ここで、遷移金属触媒に含まれる遷移金属としては、例えば、チタン、バナジウム、クロム、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、銅、亜鉛、ルテニウム、ロジウム等が挙げられるが、これらに限定されない。これらの中でも、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、銅が好ましい。また、有機酸としては、例えば、酢酸、プロピオン酸、オクタノイック酸、ラウリン酸、ステアリン酸、アセチルアセトン、ジメチルジチオカルバミン酸、パルミチン酸、2−エチルヘキサン酸、ネオデカン酸、リノール酸、トール酸、オレイン酸、カプリン酸、ナフテン酸が挙げられるが、これらに限定されない。遷移金属触媒は、これらの遷移金属と有機酸とを組み合わせたものが好ましく、遷移金属がマンガン、鉄、コバルト、ニッケル又は銅であり、有機酸が酢酸、ステアリン酸、2−エチルヘキサン酸、オレイン酸又はナフテン酸である組み合わせがより好ましい。なお、遷移金属触媒は、1種を単独で或いは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0055】
遷移金属触媒の配合量は、使用する前記インダン骨格を有する化合物や、熱可塑性樹脂、遷移金属触媒の種類及び所望の性能に応じて適宜設定でき、特に限定されない。酸素吸収剤組成物の酸素吸収量の点から、遷移金属触媒の配合量は、インダン骨格を有する化合物100質量部に対し、遷移金属量として0.001〜10質量部であることが好ましく、より好ましくは0.002〜2質量部、さらに好ましくは0.005〜1質量部である。
【0056】
ここで、本実施形態の酸素吸収剤組成物は、必要に応じて、さらに担体物質を含有していてもよい。このとき、担体物質を含有する酸素吸収剤組成物は、前記化合物と遷移金属触媒と担体物質との混合物として、そのまま酸素吸収剤として用いることができる。また、上述した一般式(1)で表されるインダン骨格を有する化合物を必要に応じて遷移金属触媒とともに担体物質に担持或いは含浸させることで、前記化合物が担体物質に担持或いは含浸された担持体(以下、「酸素吸収剤担持体」ともいう。)とすることができ、この担持体を酸素吸収剤として用いることもできる。このように前記化合物を担体物質に担持或いは含浸させることにより、酸素との接触面積を大きくし、酸素吸収速度又は酸素吸収量を増加させることができ、また、取り扱いを簡便にすることができる。
【0057】
上記の担体物質としては、当業界で公知のものの中から適宜選択して用いることができる。その具体例としては、例えば、合成ケイ酸カルシウム、消石灰、活性炭、ゼオライト、パーライト、珪藻土、活性白土、シリカ、カオリン、タルク、ベントナイト、活性アルミナ、石膏、シリカアルミナ、ケイ酸カルシウム、酸化マグネシウム、黒鉛、カーボンブラック、水酸化アルミニウム、酸化鉄等の粉末が挙げられるが、これらに特に限定されない。これらの中でも、合成ケイ酸カルシウム、珪藻土、シリカ、活性炭が好ましく用いられる。なお、担体物質は、1種を単独で或いは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0058】
担体物質の配合量は、使用する前記化合物や熱可塑性樹脂や遷移金属触媒の種類及び所望の性能に応じて適宜設定でき、特に限定されないが、一般式(1)で表されるインダン骨格を有する化合物100質量部に対し、10〜1000質量部であることが好ましく、より好ましくは20〜800質量部である。
【0059】
なお、前記化合物の担体物質への担持は、常法にしたがって行うことができ、特に限定されない。例えば、上述した一般式(1)で表されるインダン骨格を有する化合物を含有する混合液、又はこの化合物と遷移金属触媒とを含有する混合液を調製し、担体物質にこの混合液を塗布し、或いは、この混合液中に担体物質を浸漬させる等して、前記化合物(及び必要に応じて遷移金属触媒)が担体物質に担持(含浸)された酸素吸収剤担持体を得ることができる。なお、前記混合液の調製時には、さらに溶媒を含有させることができる。前記化合物や遷移金属触媒が固体である場合、溶媒を用いることでこれらを担体物質に効率的に担持させることができる。ここで使用する溶媒は、前記化合物や遷移金属触媒の溶解性等を考慮して公知のものの中から適宜選択して用いることができ、特に限定されないが、例えば、メタノール、2−プロパノール、エチレングリコール、トルエン、キシレン、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、ジイソプロピルエーテル、テトラヒドロフラン、メチルエチルケトン、ジクロロメタン、クロロホルム等の有機溶媒が好ましく、メタノール、2−プロパノール、酢酸エチル、メチルエチルケトンがより好ましい。なお、溶媒は、1種を単独で或いは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0060】
<熱可塑性樹脂>
本実施形態の酸素吸収剤組成物は、熱可塑性樹脂を含有していてもよい。このとき、酸素吸収剤組成物中における前記インダン骨格を有する化合物と遷移金属触媒の含有形態は、特に限定されない。例えば、前記インダン骨格を有する化合物及び遷移金属触媒が熱可塑性樹脂中にそのまま含有されていても、前記インダン骨格を有する化合物及び遷移金属触媒が上述した担体物質に担持された状態で熱可塑性樹脂中に含有されていてもよい。
【0061】
上記の酸素吸収剤組成物の調製方法は、常法にしたがって行うことができ、特に限定されない。例えば、前記インダン骨格を有する化合物と遷移金属触媒と必要に応じて配合される担体物質とを、熱可塑性樹脂に混合又は混練することで、酸素吸収剤組成物を得ることができる。
【0062】
上記の熱可塑性樹脂としては、公知のものを適宜用いることができ、特に限定されないが、例えば、低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、線状低密度ポリエチレン、線状超低密度ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ−1−ブテン、ポリ−4−メチル−1−ペンテン、あるいはエチレン、プロピレン、1−ブテン、4−メチル−1−ペンテン等のα−オレフィン同士のランダム又はブロック共重合体等のポリオレフィン;無水マレイン酸グラフトポリエチレンや無水マレイン酸グラフトポリプロピレン等の酸変性ポリオレフィン;エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−ビニルアルコール共重合体、エチレン−塩化ビニル共重合体、エチレン−(メタ)アクリル酸共重合体やそのイオン架橋物(アイオノマー)、エチレン−メタクリル酸メチル共重合体等のエチレン−ビニル化合物共重合体;ポリスチレン、アクリロニトリル−スチレン共重合体、α−メチルスチレン−スチレン共重合体等のスチレン系樹脂;ポリアクリル酸メチル、ポリメタクリル酸メチル等のポリビニル化合物;ナイロン6、ナイロン66、ナイロン610、ナイロン12、ポリメタキシリレンアジパミド(MXD6)等のポリアミド;ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリトリメチレンテレフタレート(PTT)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、グリコール変性ポリエチレンテレフタレート(PETG)、ポリエチレンサクシネート(PES)、ポリブチレンサクシネート(PBS)、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、ポリカプロラクトン、ポリヒドロキシアルカノエート等のポリエステル;ポリカーボネート;ポリエチレンオキサイド等のポリエーテル等あるいはこれらの混合物等が挙げられる。なお、熱可塑性樹脂は、1種を単独で或いは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0063】
これらの中でも、熱可塑性樹脂としては、ポリオレフィン、ポリエステル、ポリアミド、エチレン−ビニルアルコール共重合体、植物由来樹脂及び塩素系樹脂からなる群より選ばれる少なくとも1種であることが好ましい。さらに、ポリオレフィン、ポリエステル、ポリアミド、エチレン−ビニルアルコール共重合体、及び塩素系樹脂からなる群より選ばれる少なくとも1種であることが好ましい。以下、これらの好ましい熱可塑性樹脂について詳述する。
【0064】
<ポリオレフィン>
本実施形態の酸素吸収剤組成物に用いられるポリオレフィンとしては、例えば、低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、線状低密度ポリエチレン、線状超低密度ポリエチレン等のポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン−1、ポリ−4−メチルペンテン−1等のオレフィン単独重合体;エチレン−プロピレンランダム共重合体、エチレン−プロピレンブロック共重合体、エチレン−プロピレン−ポリブテン−1共重合体、エチレン−環状オレフィン共重合体等のエチレンとα−オレフィンとの共重合体;エチレン−(メタ)アクリル酸共重合体等のエチレン−α,β−不飽和カルボン酸共重合体、エチレン−(メタ)アクリル酸エチル共重合体等のエチレン−α,β−不飽和カルボン酸エステル共重合体、エチレン−α,β−不飽和カルボン酸共重合体のイオン架橋物、エチレン−酢酸ビニル共重合体等のその他のエチレン共重合体;環状オレフィン類開環重合体及びその水素添加物;環状オレフィン類−エチレン共重合体;とこれらのポリオレフィンを無水マレイン酸等の酸無水物等でグラフト変性したグラフト変性ポリオレフィン等を挙げることができる。
【0065】
<ポリエステル>
本実施形態の酸素吸収剤組成物に用いられるポリエステルとしては、例えば、ジカルボン酸を含む多価カルボン酸及びこれらのエステル形成性誘導体から選ばれる1種又は2種以上とグリコールを含む多価アルコールから選ばれる1種又は2種以上とからなるもの、又はヒドロキシカルボン酸及びこれらのエステル形成性誘導体からなるもの、又は環状エステルからなるもの等が挙げられる。エチレンテレフタレート系熱可塑性ポリエステルは、エステル反復単位の大部分、一般に70モル%以上をエチレンテレフタレート単位が占めるものであり、ガラス転移点(Tg)が50〜90℃、融点(Tm)が200〜275℃の範囲にあるものが好適である。エチレンテレフタレート系熱可塑性ポリエステルとしてポリエチレンテレフタレートが耐圧性、耐熱性、耐熱圧性等の点で特に優れているが、エチレンテレフタレート単位以外にイソフタル酸やナフタレンジカルボン酸等のジカルボン酸とプロピレングリコール等のジオールからなるエステル単位の少量を含む共重合ポリエステルも使用できる。
【0066】
ジカルボン酸の具体例としては、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、デカンジカルボン酸、ドデカンジカルボン酸、テトラデカンジカルボン酸、ヘキサデカンジカルボン酸、3−シクロブタンジカルボン酸、1,3−シクロペンタンジカルボン酸、1,2−シクロヘキサンジカルボン酸、1,3−シクロヘキサンジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、2,5−ノルボルナンジカルボン酸、ダイマー酸等に例示される飽和脂肪族ジカルボン酸又はこれらのエステル形成性誘導体、フマル酸、マレイン酸、イタコン酸等に例示される不飽和脂肪族ジカルボン酸又はこれらのエステル形成性誘導体、オルソフタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、1,3−ナフタレンジカルボン酸、1,4−ナフタレンジカルボン酸、1,5−ナフタレンジカルボン酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、2,7−ナフタレンジカルボン酸等のナフタレンジカルボン酸類、4,4’−ビフェニルジカルボン酸、4,4’−ビフェニルスルホンジカルボン酸、4,4’−ビフェニルエーテルジカルボン酸、1,2−ビス(フェノキシ)エタン−p,p’−ジカルボン酸、アントラセンジカルボン酸等に例示される芳香族ジカルボン酸又はこれらのエステル形成性誘導体、5−ナトリウムスルホイソフタル酸、2−ナトリウムスルホテレフタル酸、5−リチウムスルホイソフタル酸、2−リチウムスルホテレフタル酸、5−カリウムスルホイソフタル酸、2−カリウムスルホテレフタル酸等に例示される金属スルホネート基含有芳香族ジカルボン酸又はそれらの低級アルキルエステル誘導体等が挙げられる。
【0067】
上記のジカルボン酸のなかでも、得られるポリエステルの物理特性等の観点から、特に、テレフタル酸、イソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸類の使用が好ましい。なお、必要に応じて他のジカルボン酸を共重合してもよい。
【0068】
これらジカルボン酸以外の多価カルボン酸の具体例としては、エタントリカルボン酸、プロパントリカルボン酸、ブタンテトラカルボン酸、ピロメリット酸、トリメリット酸、トリメシン酸、3,4,3’,4’−ビフェニルテトラカルボン酸、及びこれらのエステル形成性誘導体等が挙げられる。
【0069】
グリコールの具体例としては、エチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロピレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,2−ブチレングリコール、1,3−ブチレングリコール、2,3−ブチレングリコール、1,4−ブチレングリコール、1,5−ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,6−ヘキサンジオール、1,2−シクロヘキサンジオール、1,3−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジオール、1,2−シクロヘキサンジメタノール、1,3−シクロヘキサンジメタノール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、1,4−シクロヘキサンジエタノール、1,10−デカメチレングリコール、1,12−ドデカンジオール、ポリエチレングリコール、ポリトリメチレングリコール、ポリテトラメチレングリコール等に例示される脂肪族グリコール、ヒドロキノン、4,4’−ジヒドロキシビスフェノ−ル、1,4−ビス(β−ヒドロキシエトキシ)ベンゼン、1,4−ビス(β−ヒドロキシエトキシフェニル)スルホン、ビス(p−ヒドロキシフェニル)エーテル、ビス(p−ヒドロキシフェニル)スルホン、ビス(p−ヒドロキシフェニル)メタン、1,2−ビス(p−ヒドロキシフェニル)エタン、ビスフェノールA、ビスフェノールC、2,5−ナフタレンジオール、これらのグリコールにエチレンオキシドが付加されたグリコール等に例示される芳香族グリコールが挙げられる。
【0070】
上記のグリコールのなかでも、特に、エチレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,4−ブチレングリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノールを主成分として使用することが好適である。
【0071】
これらグリコール以外の多価アルコールの具体例としては、トリメチロールメタン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、グリセロ−ル、ヘキサントリオール等が挙げられる。
【0072】
ヒドロキシカルボン酸の具体例としては、乳酸、クエン酸、リンゴ酸、酒石酸、ヒドロキシ酢酸、3−ヒドロキシ酪酸、p−ヒドロキシ安息香酸、p−(2−ヒドロキシエトキシ)安息香酸、4−ヒドロキシシクロヘキサンカルボン酸、又はこれらのエステル形成性誘導体等が挙げられる。
【0073】
環状エステルの具体例としては、ε−カプロラクトン、β−プロピオラクトン、β−メチル−β−プロピオラクトン、δ−バレロラクトン、グリコリド、ラクチド等が挙げられる。
【0074】
多価カルボン酸、ヒドロキシカルボン酸のエステル形成性誘導体の具体例としては、これらのアルキルエステル、酸クロライド、酸無水物等が挙げられる。
【0075】
上述したものの中でも、主たる酸成分がテレフタル酸又はそのエステル形成性誘導体もしくはナフタレンジカルボン酸類又はそのエステル形成性誘導体であり、主たるグリコール成分がアルキレングリコールであるポリエステルが好ましい。
【0076】
なお、主たる酸成分がテレフタル酸又はそのエステル形成性誘導体であるポリエステルは、全酸成分に対してテレフタル酸又はそのエステル形成性誘導体を合計して70モル%以上含有するポリエステルであることが好ましく、より好ましくは80モル%以上含有するポリエステルであり、さらに好ましくは90モル%以上含有するポリエステルである。同様に、主たる酸成分がナフタレンジカルボン酸類又はそのエステル形成性誘導体であるポリエステルは、ナフタレンジカルボン酸類又はそのエステル形成性誘導体を合計して70モル%以上含有するポリエステルであることが好ましく、より好ましくは80モル%以上含有するポリエステルであり、さらに好ましくは90モル%以上含有するポリエステルである。
【0077】
上述したナフタレンジカルボン酸類又はそのエステル形成性誘導体の中でも、ジカルボン酸類において例示した1,3−ナフタレンジカルボン酸、1,4−ナフタレンジカルボン酸、1,5−ナフタレンジカルボン酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、2,7−ナフタレンジカルボン酸、又はこれらのエステル形成性誘導体が好ましい。
【0078】
また、上述した主たるグリコール成分がアルキレングリコールであるポリエステルは、全グリコール成分に対してアルキレングリコールを合計して70モル%以上含有するポリエステルであることが好ましく、より好ましくは80モル%以上含有するポリエステルであり、さらに好ましくは90モル%以上含有するポリエステルである。なお、ここでいうアルキレングリコールは、分子鎖中に置換基や脂環構造を含んでいてもよい。
【0079】
上記テレフタル酸/エチレングリコール以外の共重合成分は、透明性と成形性とを両立する観点から、イソフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、ジエチレングリコール、ネオペンチルグリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール及び2−メチル−1,3−プロパンジオールからなる群より選ばれる少なくとも1種以上であることが好ましく、イソフタル酸、ジエチレングリコール、ネオペンチルグリコール及び1,4−シクロヘキサンジメタノールからなる群より選ばれる少なくとも1種以上であることがより好ましい。
【0080】
本実施形態の酸素吸収剤組成物に用いられるポリエステルの好ましい一例は、主たる繰り返し単位がエチレンテレフタレートから構成されるポリエステルである。より好ましくはエチレンテレフタレート単位を70モル%以上含む線状ポリエステルであり、さらに好ましくはエチレンテレフタレート単位を80モル%以上含む線状ポリエステルであり、特に好ましいのはエチレンテレフタレート単位を90モル%以上含む線状ポリエステルである。
【0081】
また本実施形態の酸素吸収剤組成物に用いられるポリエステルの好ましい他の一例は、主たる繰り返し単位がエチレン−2,6−ナフタレートから構成されるポリエステルである。より好ましくはエチレン−2,6−ナフタレート単位を70モル%以上含む線状ポリエステルであり、さらに好ましくはエチレン−2,6−ナフタレート単位を80モル%以上含む線状ポリエステルであり、特に好ましいのは、エチレン−2,6−ナフタレート単位を90モル%以上含む線状ポリエステルである。
【0082】
また、本実施形態の酸素吸収剤組成物に用いられるポリエステルの好ましいその他の例としては、プロピレンテレフタレート単位を70モル%以上含む線状ポリエステル、プロピレンナフタレート単位を70モル%以上含む線状ポリエステル、1,4−シクロヘキサンジメチレンテレフタレート単位を70モル%以上含む線状ポリエステル、ブチレンナフタレート単位を70モル%以上含む線状ポリエステル、又はブチレンテレフタレート単位を70モル%以上含む線状ポリエステルである。
【0083】
透明性と成形性との両立の観点から、特に好適なポリエステルとしては、ポリエステル全体の組み合わせとして、テレフタル酸/イソフタル酸/エチレングリコールの組み合わせ、テレフタル酸/エチレングリコール/1,4−シクロヘキサンジメタノールの組み合わせ、テレフタル酸/エチレングリコール/ネオペンチルグリコールの組み合わせである。なお、当然ではあるが、上記のポリエステルは、エステル化(エステル交換)反応や重縮合反応中のエチレングリコールの二量化により生じるジエチレングリコールを少量(5モル%以下)含んでいてもよいことはいうまでもない。
【0084】
また本実施形態の酸素吸収剤組成物に用いられるポリエステルの好ましいその他の例としては、グリコール酸やグリコール酸メチルの重縮合もしくは、グリコリドの開環重縮合にて得られるポリグリコール酸が挙げられる。なお、このポリグリコール酸は、ラクチド等の他成分が共重合されているものであってもよい。
【0085】
<ポリアミド>
本実施形態の酸素吸収剤組成物に用いられるポリアミドとしては、例えば、ラクタムもしくはアミノカルボン酸から誘導される単位を主構成単位とするポリアミドや、脂肪族ジアミンと脂肪族ジカルボン酸とから誘導される単位を主構成単位とする脂肪族ポリアミド、脂肪族ジアミンと芳香族ジカルボン酸とから誘導される単位を主構成単位とする部分芳香族ポリアミド、芳香族ジアミンと脂肪族ジカルボン酸とから誘導される単位を主構成単位とする部分芳香族ポリアミド等が挙げられる。なお、ここでいうポリアミドは、必要に応じて、主構成単位以外のモノマー単位が共重合されたものであってもよい。
【0086】
ラクタムもしくはアミノカルボン酸の具体例としては、ε−カプロラクタムやラウロラクタム等のラクタム類、アミノカプロン酸、アミノウンデカン酸等のアミノカルボン酸類、パラ−アミノメチル安息香酸のような芳香族アミノカルボン酸等が挙げられる。
【0087】
脂肪族ジアミンの具体例としては、炭素数2〜12の脂肪族ジアミン或いはその機能的誘導体、脂環族のジアミン等が挙げられる。なお、脂肪族ジアミンは、直鎖状の脂肪族ジアミンであっても分岐を有する鎖状の脂肪族ジアミンであってもよい。このような直鎖状の脂肪族ジアミンの具体例としては、エチレンジアミン、1−メチルエチレンジアミン、1,3−プロピレンジアミン、テトラメチレンジアミン、ペンタメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ヘプタメチレンジアミン、オクタメチレンジアミン、ノナメチレンジアミン、デカメチレンジアミン、ウンデカメチレンジアミン、ドデカメチレンジアミン等の脂肪族ジアミン等が挙げられる。また、脂環族ジアミンの具体例としては、シクロヘキサンジアミン、1,3−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、1,4−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン等が挙げられる。
【0088】
また、脂肪族ジカルボン酸の具体例としては、直鎖状の脂肪族ジカルボン酸や脂環族ジカルボン酸等が挙げられる。とりわけ、炭素数4〜12のアルキレン基を有する直鎖状脂肪族ジカルボン酸が好ましい。直鎖状脂肪族ジカルボン酸としては、アジピン酸、セバシン酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、ウンデカン酸、ウンデカジオン酸、ドデカンジオン酸、ダイマー酸及びこれらの機能的誘導体等が挙げられる。また、脂環族ジカルボン酸としては、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、ヘキサヒドロテレフタル酸、ヘキサヒドロイソフタル酸等が挙げられる。
【0089】
また、芳香族ジアミンの具体例としては、メタキシリレンジアミン、パラキシリレンジアミン、パラ−ビス(2−アミノエチル)ベンゼン等が挙げられる。
【0090】
また、芳香族ジカルボン酸の具体例としては、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、ジフェニル−4,4’−ジカルボン酸、ジフェノキシエタンジカルボン酸及びその機能的誘導体等が挙げられる。
【0091】
具体的なポリアミドとしては、ポリアミド4、ポリアミド6、ポリアミド10、ポリアミド11、ポリアミド12、ポリアミド4,6、ポリアミド6,6、ポリアミド6,10、ポリアミド6T、ポリアミド9T、ポリアミド6IT、ポリメタキシリレンアジパミド(ポリアミドMXD6)、イソフタル酸共重合ポリメタキシリレンアジパミド(ポリアミドMXD6I)、ポリメタキシリレンセバカミド(ポリアミドMXD10)、ポリメタキシリレンドデカナミド(ポリアミドMXD12)、ポリ1,3−ビスアミノシクロヘキサンアジパミド(ポリアミドBAC6)、ポリパラキシリレンセバカミド(ポリアミドPXD10)等がある。より好ましいポリアミドとしては、ポリアミド6、ポリアミドMXD6、ポリアミドMXD6Iが挙げられる。
【0092】
また、前記ポリアミドに共重合されていてもよい共重合成分としては、少なくとも一つの末端アミノ基、もしくは末端カルボキシル基を有する数平均分子量が2000〜20000のポリエーテル、又は前記末端アミノ基を有するポリエーテルの有機カルボン酸塩、又は前記末端カルボキシル基を有するポリエーテルのアミノ塩を用いることもできる。その具体例としては、ビス(アミノプロピル)ポリ(エチレンオキシド)(数平均分子量が2000〜20000のポリエチレングリコール)が挙げられる。
【0093】
また、前記部分芳香族ポリアミドは、トリメリット酸、ピロメリット酸等の3塩基以上の多価カルボン酸から誘導される構成単位を実質的に線状である範囲内で含有していてもよい。
【0094】
<エチレン−ビニルアルコール共重合体>
本実施形態の酸素吸収剤組成物に用いられるエチレンビニルアルコール共重合体としては、エチレン含量が15〜60モル%であり、且つ、酢酸ビニル成分のケン化度が90モル%以上のものが好適である。エチレン含量は、好ましくは20〜55モル%であり、より好ましくは29〜44モル%である。また、酢酸ビニル成分のケン化度は、好ましくは95モル%以上である。なお、エチレンビニルアルコール共重合体は、プロピレン、イソブテン、α−オクテン、α−ドデセン、α−オクタデセン等のα−オレフィン、不飽和カルボン酸又はその塩、部分アルキルエステル、完全アルキルエステル、ニトリル、アミド、無水物、不飽和スルホン酸又はその塩等の少量のコモノマーをさらに含んでいてもよい。
【0095】
<植物由来樹脂>
本実施形態の酸素吸収剤組成物に用いられる植物由来樹脂としては、原料として植物由来物質を含む樹脂であればよく、その原料となる植物は特に限定されない。植物由来樹脂の具体例としては、脂肪族ポリエステル系生分解性樹脂が挙げられる。また、脂肪族ポリエステル系生分解性樹脂としては、例えば、ポリグリコール酸(PGA)、ポリ乳酸(PLA)等のポリ(α−ヒドロキシ酸);ポリブチレンサクシネート(PBS)、ポリエチレンサクシネート(PES)等のポリアルキレンアルカノエート等が挙げられる。
【0096】
<塩素系樹脂>
本実施形態の酸素吸収剤組成物に用いられる塩素系樹脂としては、構成単位に塩素を含む樹脂であればよく、公知の樹脂を用いることができる。塩素系樹脂の具体例としては、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、及び、これらと酢酸ビニル、マレイン酸誘導体、高級アルキルビニルエーテル等との共重合体等が挙げられる。
【0097】
上記の例示した熱可塑性樹脂の中でも、線状低密度ポリエチレン(LLDPE)、エチレン−ビニルアルコール共重合体(EVOH)、ナイロン6(PA6)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリ塩化ビニル(PVC)が、食品用包装材料として好ましく用いられる。
【0098】
なお、本実施形態の酸素吸収剤組成物は、酸素吸収反応を促進させるために、必要に応じて、さらにラジカル発生剤や光開始剤を含有していてもよい。ラジカル発生剤の具体例としては、各種のN−ヒドロキシイミド化合物が挙げられ、例えば、N−ヒドロキシコハクイミド、N−ヒドロキシマレイミド、N,N’−ジヒドロキシシクロヘキサンテトラカルボン酸ジイミド、N−ヒドロキシフタルイミド、N−ヒドロキシテトラクロロフタルイミド、N−ヒドロキシテトラブロモフタルイミド、N−ヒドロキシヘキサヒドロフタルイミド、3−スルホニル−N−ヒドロキシフタルイミド、3−メトキシカルボニル−N−ヒドロキシフタルイミド、3−メチル−N−ヒドロキシフタルイミド、3−ヒドロキシ−N−ヒドロキシフタルイミド、4−ニトロ−N−ヒドロキシフタルイミド、4−クロロ−N−ヒドロキシフタルイミド、4−メトキシ−N−ヒドロキシフタルイミド、4−ジメチルアミノ−N−ヒドロキシフタルイミド、4−カルボキシ−N−ヒドロキシヘキサヒドロフタルイミド、4−メチル−N−ヒドロキシヘキサヒドロフタルイミド、N−ヒドロキシヘット酸イミド、N−ヒドロキシハイミック酸イミド、N−ヒドロキシトリメリット酸イミド、N,N−ジヒドロキシピロメリット酸ジイミド等が挙げられるが、これらに特に限定されない。また、光開始剤の具体例としては、ベンゾフェノンとその誘導体、チアジン染料、金属ポルフィリン誘導体、アントラキノン誘導体等が挙げられるが、これらに特に限定されない。なお、これらのラジカル発生剤及び光開始剤は、1種を単独で或いは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0099】
また、上記の酸素吸収剤組成物は、本実施形態の効果を損なわない範囲で、当業界で公知の各種添加剤を含有していてもよい。かかる任意成分としては、例えば、炭酸カルシウム、クレー、マイカ、シリカ等の充填剤、乾燥剤、顔料、染料、酸化防止剤、スリップ剤、帯電防止剤、安定剤、可塑剤、消臭剤等が挙げられるが、これらに特に限定されない。
【0100】
本実施形態の酸素吸収剤組成物は、単層の形で包装材料及び包装容器として使用できるのは勿論のこと、酸素吸収剤組成物からなる少なくとも一層と、他の樹脂からなる少なくとも一層の積層物の形で酸素吸収性多層包装材料及び酸素吸収性多層包装容器として使用できる。一般に、本実施形態の酸素吸収剤組成物は、容器等の外表面に露出しないように容器等の外表面よりも内側に設けるのが好ましく、また内容物との直接的な接触を避ける目的で、容器等の内表面より外側に設けるのが好ましい。このように、多層の少なくとも1つの中間層として、酸素吸収剤組成物を用いることが好ましい。
【0101】
また、本実施形態の酸素吸収剤組成物は、フィルム状又はシート状として、少なくとも、ポリオレフィン樹脂を含有するシーラント層、酸素吸収剤組成物を含有する酸素吸収層、及びガスバリア性物質を含有するガスバリア層を有する酸素吸収性多層体として用いることができる。さらに、得られた酸素吸収性多層体は、ガスバリア層の外層に紙基材を更に積層して、酸素吸収性紙容器として用いることができる。
【0102】
本実施形態のガスバリア層に用いるガスバリア性物質としては、ガスバリア性熱可塑性樹脂や、ガスバリア性熱硬化性樹脂、シリカ、アルミナ、アルミ等の各種蒸着フィルム、アルミ箔等の金属箔を用いることができる。ガスバリア性熱可塑性樹脂としては、特に限定されないが、例えば、エチレン−ビニルアルコール共重合体、MXD6、ポリ塩化ビニリデン等が挙げられる。また、ガスバリア性熱硬化性樹脂としては、特に限定されないが、例えば、ガスバリア性エポキシ樹脂(三菱ガス化学(株)製「マクシーブ」等)等が挙げられる。
【0103】
酸素吸収性多層体の製造方法については、各種材料の性状、加工目的、加工工程等に応じて、共押出法、各種ラミネート法、各種コーティング法等の公知の方法を利用することができる。例えば、フィルムやシート状に成形する場合については、溶融させた樹脂組成物を、Tダイ、サーキュラーダイ等を通して押出機から押し出して製造する方法や、酸素吸収性フィルム若しくはシートに接着剤を塗布し、他のフィルムやシートと貼り合わせることで製造する方法が挙げられる。また、射出機を用い、溶融した樹脂を、多層多重ダイスを通して射出金型中に共射出又は逐次射出することによって所定の形状の多層容器もしくは容器製造用のプリフォームに成形することができる。プリフォームは、延伸温度に加熱し、軸方向に延伸するとともに、流体圧によって周方向にブロー延伸することにより、延伸ブローボトルを製造することができる。
【0104】
酸素吸収性多層体は、フィルム状に成形し、袋状や蓋材に加工して用いることができる。また、本実施形態の酸素吸収性多層体は、シート状に成形し、さらに、真空成形、圧空成形、プラグアシスト成形等の成形方法によりトレー、カップ、ボトル、チューブ等の所定の形状の酸素吸収性多層容器に熱成形することができる。さらに、袋状容器に食品等の内容物を充填し、開封口を設け、電子レンジ加熱調理時にその開封口から蒸気を放出する、電子レンジ調理対応の易通蒸口付パウチとしても好ましく用いることができる。
【0105】
[酸素吸収剤包装体]
本実施形態の酸素吸収剤組成物は、粉体状、顆粒状、ペレット状、フィルム状又はその他の小片状に加工し、通気性包装材料に充填することにより、小袋状の酸素吸収剤包装体と使用しても使用することができる。通気性包装材料としては、酸素吸収剤用途に用いられる包装材料であれば特に制限はないが、酸素吸収効果を十分に得るために、できるだけ通気性の高い包装材料を用いることが好ましい。そのような包装材料としては、例えば、和紙、洋紙、レーヨン紙等の紙類、パルプ、セルロース、合成樹脂からなる繊維等の各種繊維類を用いた不織布、プラスチックフィルム又はその穿孔物等、或いは炭酸カルシウム等を添加した後、延伸したマイクロポーラスフィルム等、さらにはこれらから選ばれる2種以上を積層したもの等を挙げることができる。プラスチックフィルムとしては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリアミド、ポリプロピレン、ポリカーボネート等のフィルムと、シール層としてポリエチレン、アイオノマー、ポリブタジエン、エチレンアクリル酸コポリマー、エチレンメタクリル酸コポリマー又はエチレン酢酸ビニルコポリマー等のフィルムとを積層接着した積層フィルム等が挙げられる。
【0106】
[酸素吸収性容器]
本実施形態の酸素吸収剤組成物又は酸素吸収性多層体は、包装容器の全体又は一部に含ませることで酸素吸収性容器とすることもできる。本実施形態の酸素吸収性容器は、容器内の酸素を吸収して、容器外から容器壁面を透過する或いは侵入する酸素がわずかでもある場合にはこの透過或いは侵入する酸素をも吸収して、保存する内容物品(被保存物)の酸素による変質等を防止することができる。
【0107】
本実施形態の酸素吸収性容器の形状は特に限定されず、収納、保存する物品に応じて適宜設定することができる。このような容器としては、パウチ、カップ、トレイ、ボトル等として好適に用いることができる。
【0108】
さらに、例えば、上記のフィルム状或いはシート状の酸素吸収剤組成物又は酸素吸収性多層体を製袋することで、三方シール平袋、スタンディングパウチ、ガセット包装袋、ピロー包装袋、主室と副室とからなり主室と副室との間に易剥離壁を設けた多室パウチ、シュリンクフィルム包装等とすることができる。また、熱成形を施すことで、任意の形状の容器にすることもできる。
【0109】
より具体的には、上記のフィルム状或いはシート状の酸素吸収剤組成物又は酸素吸収性多層体を、真空成形、圧空成形、プラグアシスト成形等の方法で成形することにより、トレイ、カップ、ボトル、チューブ、PTP(プレス・スルー・パック)等の所定の形状の酸素吸収性容器を作製することができる。また、射出機を用い、溶融した樹脂を、多層多重ダイスを通して射出金型中に共射出又は逐次射出することによって所定の形状の多層容器に一挙に成形することもできる。
【0110】
なお、フランジ部を有する熱成形容器を作製する場合には、そのフランジ部に易剥離機能を付与する特殊加工を施してもよい。また、上記の酸素吸収剤組成物又は酸素吸収性多層体を容器の蓋材、トップシール等の部材として用いることで、これらの容器に酸素吸収機能を付与することができる。
【0111】
また、本実施形態の酸素吸収剤組成物又は酸素吸収性多層体は、フィルム状又はシート状に成形して、ラベル、カード、パッキング等の形態の酸素吸収剤として用いることができる。
【0112】
本実施形態の酸素吸収剤組成物又は酸素吸収性多層体を使用するにあたり、エネルギー線を照射して、酸素吸収反応の開始を促進したり、酸素吸収速度を高めたりすることができる。エネルギー線としては、例えば、可視光線、紫外線、X線、電子線、γ線等を利用可能である。照射エネルギー量は、用いるエネルギー線の種類に応じて、適宜選択することができる。
【0113】
本実施形態の酸素吸収剤組成物は、酸素吸収に水分を必須としない、換言すれば被保存物の水分の有無によらず酸素吸収することができるため、被保存物の種類を問わず幅広い用途で使用することができる。とりわけ、酸素吸収後の臭気の発生がないので、例えば、食品、調理食品、飲料、健康食品、医薬品等において特に好適に用いることができる。すなわち、本実施形態の酸素吸収剤組成物およびこれを用いた積層体等の各種成形品は、低湿度から高湿度までの広範な湿度条件下(相対湿度0%〜100%)での酸素吸収性能に優れ、かつ内容物の風味保持性に優れるため、種々の物品の包装に適している。
【0114】
被保存物の具体例としては、牛乳、ジュース、コーヒー、茶類、アルコール飲料等の飲料;ソース、醤油、めんつゆ、ドレッシング等の液体調味料;スープ、シチュー、カレー等の調理食品;ジャム、マヨネーズ等のペースト状食品;ツナ、魚貝等の水産製品;チーズ、バター、卵等の乳加工品或いは卵加工品;肉、サラミ、ソーセージ、ハム等の畜肉加工品;にんじん、じゃがいも、アスパラ、しいたけ等の野菜類;フルーツ類;卵;麺類;米、精米等の米類;豆等の穀物類;米飯、赤飯、もち、米粥等の米加工食品或いは穀物加工食品;羊羹、プリン、ケーキ、饅頭等の菓子類;粉末調味料、粉末コーヒー、コーヒー豆、茶、乳幼児用粉末ミルク、乳幼児用調理食品、粉末ダイエット食品、介護調理食品、乾燥野菜、おかき、せんべい等の乾燥食品(水分活性の低い食品);接着剤、粘着剤、農薬、殺虫剤等の化学品;医薬品;ビタミン剤等の健康食品;ペットフード;化粧品、シャンプー、リンス、洗剤等の雑貨品;その他の種々の物品を挙げることができるが、これらに特に限定されない。特に、酸素存在下で劣化を起こしやすい被保存物、例えば、飲料ではビール、ワイン、日本酒、焼酎、果汁飲料、フルーツジュース、野菜ジュース、炭酸ソフトドリンク、茶類等、食品では果物、ナッツ、野菜、肉製品、幼児食品、コーヒー、ジャム、マヨネーズ、ケチャップ、食用油、ドレッシング、ソース類、佃煮類、乳製品類等、その他では医薬品、化粧品等の包装材に好適である。なお、水分活性とは、物品中の自由水含有量を示す尺度であって、0〜1の数字で示されるものであり、水分のない物品は0、純水は1となる。すなわち、ある物品の水分活性Awは、その物品を密封し平衡状態に到達した後の空間内の水蒸気圧をP、純水の水蒸気圧をP0、同空間内の相対湿度をRH(%)、とした場合、
Aw=P/P0=RH/100
と定義される。
【0115】
なお、これらの被保存物の充填(包装)前後に、被保存物に適した形で、容器や被保存物の殺菌処理を施すことができる。殺菌方法としては、例えば、100℃以下での熱水処理、100℃以上の加圧熱水処理、130℃以上の超高温加熱処理等の加熱殺菌、紫外線、マイクロ波、ガンマ線等の電磁波殺菌、エチレンオキサイド等のガス処理、過酸化水素や次亜塩素酸等の薬剤殺菌等が挙げられる。
【実施例】
【0116】
以下に実施例及び比較例により本発明を更に詳しく説明するが、本発明は以下の実施例により何ら限定されるものではない。なお、特に記載が無い限り、NMR測定は室温で行った。
酸素吸収量の測定及び酸素吸収後の臭気の評価は以下のとおりに行った。
【0117】
(1)酸素吸収量の測定
アルミ箔積層フィルムからなるガスバリア袋を2つ用意した。酸素吸収剤組成物1gを、空気1000ccとともに2つのガスバリア袋内に充填し、一方の袋内の相対湿度を100%に調整し、他方の袋内の相対湿度を30%に調整した後、それぞれ密封した。このようにして得られた密封袋を温度23℃の雰囲気下にて7日間保管して、保管後の密封袋内の酸素濃度を酸素濃度計(東レエンジニアリング(株)製、商品名:LC−750F)で測定し、この酸素濃度から酸素吸収量を計算した。
【0118】
(2)酸素吸収後の臭気の評価
前記酸素吸収量の測定と同様に、温度23℃、相対湿度100%又は30%にて30日間保管した後の密封袋を開封し、密封袋内の臭気を確認した。
臭気については、酸素吸収前後での臭気の変化の有無についてそれぞれ評価し、酸素吸収後に臭気の変化がなかった場合を、「臭気発生無し」と判断した。
【0119】
(実施例1)
インダン100質量部に対し、コバルト量が0.1質量部となるよう2−エチルヘキサン酸コバルトを配合した混合液を、合成ケイ酸カルシウム(商品名「マイクロセルE」、セライト社製)50質量部に含侵させ、粒状の酸素吸収剤組成物を製造した。
酸素吸収量の測定及び臭気の評価を行い、結果を表1に示した。
【0120】
(実施例2)
2−エチルヘキサン酸コバルトをナフテン酸コバルトに代えたこと以外は、実施例1と同様の方法により酸素吸収剤組成物を製造して、酸素吸収量の測定及び臭気の評価を行った。これらの結果を表1に示した。
【0121】
(実施例3)
2−エチルヘキサン酸コバルトを2−エチルヘキサン酸鉄に代えたこと以外は、実施例1と同様の方法により酸素吸収剤組成物を製造して、酸素吸収量の測定及び臭気の評価を行った。これらの結果を表1に示した。
【0122】
(実施例4)
合成ケイ酸カルシウム50質量部を珪藻土(商品名「RC417」、昭和化学工業(株)製)120重量部に代えたこと以外は、実施例1と同様の方法により酸素吸収剤組成物を製造して、酸素吸収量の測定及び臭気の評価を行った。これらの結果を表1に示した。
【0123】
(実施例5)
2−エチルヘキサン酸コバルトをナフテン酸コバルトに代えたこと以外は、実施例4と同様の方法により酸素吸収剤組成物を製造して、酸素吸収量の測定及び臭気の評価を行った。これらの結果を表1に示した。
【0124】
(実施例6)
撹拌機、分縮器、全縮器、温度計、加熱装置及び窒素導入管を備えた反応容器に、アジピン酸ジメチル5.2g(30mmol)、2−インダノール12.1g(90mmol)を仕込み、窒素雰囲気下で130℃まで加熱し、テトラブチルチタネート15mgを加え、200℃まで加熱し、メタノールの留出がなくなるまで反応させた。次に、150℃、2torrで蒸留し、原料を除去した。得られた粗生成物に酢酸エチルを10g加え、再結晶により精製し、インダン骨格を有する化合物Aを90%の収率で得た。
得られた化合物Aの構造式を表1に示す。なお、NMRの分析結果は下記のとおりである。
1H‐NMR(400MHz CDCl
3)δ7.12−7.30(8H m)、5.51(2H tt)、3.31(4H dd)、2.98(4H dd)、2.26(4H t)、1.57−1.70(4H m)。
【0125】
化合物A100質量部に対し、コバルト量が0.1質量部となるよう2−エチルヘキサン酸コバルトを配合した混合液を、シリカゾル(商品名「MEK−ST 40D」、日産化学工業(株)製、メチルエチルケトン60%含有)750質量部に加え、窒素雰囲気下、60℃で1時間撹拌した後、メチルエチルケトンを減圧留去、粉末化し、粒状の酸素吸収剤組成物を得た。実施例1と同様に、酸素吸収剤組成物の酸素吸収量の測定及び臭気の評価を行った。これらの結果を表1に示した。
【0126】
(実施例7)
アジピン酸ジメチルをセバシン酸ジメチルに代えたこと以外は実施例6と同様の方法によりインダン骨格を有する化合物Bを得た。
得られた化合物Bの構造式を表1に示す。なお、NMRの分析結果は下記のとおりである。
1H‐NMR(400MHz CDCl
3)δ7.11−7.29(8H m)、5.52(2H tt)、3.31(4H dd)、2.98(4H dd)、2.23(4H t)、1.50−1.65(4H m)、1.08−1.22(8H m)。
次いで、実施例6と同様の方法により酸素吸収剤組成物を製造して、酸素吸収量の測定及び臭気の評価を行った。これらの結果を表1に示した。
【0127】
(実施例8)
アジピン酸ジメチルをイソフタル酸ジメチルに代えたこと以外は実施例6と同様の方法によりインダン骨格を有する化合物Cを得た。
得られた化合物Cの構造式を表1に示す。なお、NMRの分析結果は下記のとおりである。
1H‐NMR(400MHz CDCl
3)δ8.60(1H s)、8.15(2H d)、7.47(1H t)、7.17−7.29(8H m)、5.78(2H tt)、3.45(4H dd)、3.19(4H dd)。
次いで、実施例6と同様の方法により酸素吸収剤組成物を製造して、酸素吸収量の測定及び臭気の評価を行った。これらの結果を表1に示した。
【0128】
【表1】
【0129】
実施例1〜8から明らかなように、本発明の酸素吸収剤組成物は、酸素吸収後の臭気発生がなく、また、高湿度下及び低湿度下のいずれにおいても、優れた酸素吸収性能を示した。