(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態の一例について、図面を参照しながら詳細に説明する。
図1〜
図11は第1の実施形態を、
図12,13は第2の実施形態を、
図14〜
図16は第3の実施形態をそれぞれ示す。
【0015】
なお、本明細書において、「取り出し部」の用語は、容器外部と容器内部空間である充填部とを連通させる開口部だけでなく、シート材が切断される等して当該開口部が形成される部分(即ち、開口部形成予定部)も含むことを意図する。実施形態では、前者を取り出し口18、後者を取り出し口形成予定部18zと称して説明する。
【0016】
実施形態では、取り出し口18が設けられる部分を容器の「上部」とし、上部に対向する部分を容器の「下部」とする。また、各シート材が積層される方向を容器の「表裏方向」とし、上下方向及び表裏方向に直交する方向を容器の「幅方向又は左右方向」とする。以下では、単に、上下方向、表裏方向、幅方向という場合がある。
【0017】
実施形態では、パウチ容器に充填される内容物を粉ミルクやプロテイン粉末などを意図する粉体100として説明する。但し、内容物は、粉体100に限定されず、例えば、計量スプーン101で掬って擦り切ることができる砂糖、塩等の調味料や小麦粉など、又は粒径がより大きなコーヒー豆や茶葉など、或いは液状物やゼリー等の半固形物であってもよい。
【0018】
<第1の実施形態>
図1〜
図7を参照して、第1の実施形態であるパウチ容器10の構成を説明する。
図1は、粉体100が充填されたパウチ容器10を、
図2は、
図1のA−A線断面をそれぞれ示す。
図3は、パウチ容器10の斜視図であって、取り出し口18を開口した様子を示す。なお、
図3では、図面の明瞭化のため、チャック16を省略し、一部のシール部のみにハッチングを付する。
図4は、展開した摺り切りガゼット部30を斜め上方から見た図である。
図5,6は、取り出し口18を開口して保護ガゼット部40を上方側に折り曲げた状態を示す。なお、
図5では、保護ガゼット部40が折り曲げられる前の状態を二点鎖線で示している。
図7は、上方側に折り曲げた保護ガゼット部40を斜め上方から見た図である。
【0019】
図1等に示すように、パウチ容器10は、壁面シートとして、表面シート11と、裏面シート12と、底ガゼットシート13とを備え、内容物の充填により自立可能なスタンディングパウチである。表面シート11及び裏面シート12(以下、これらを総称して「表裏面シート」という場合がある)は、容器の表面部及び裏面部をそれぞれ構成するシート材である。底ガゼットシート13は、上方に向かって山折りされた上向きガゼットシートであって、粉体100の充填により展開する底ガゼット部を構成するシート材である。パウチ容器10に粉体100を充填すると、表裏面シートが互いに離間し、底ガゼットシート13が展開して、特に容器下部が膨らんだ形態となる。こうして、パウチ容器10の自立性が発現する。
【0020】
パウチ容器10は、互いに重ね合わされた表面シート11と裏面シート12との間に、底ガゼットシート13を容器下端側から挿入した状態で各シート材の端縁同士を接合するシール部を形成し、シート材で囲まれた容器内部空間を密閉した構造である。この容器内部空間が、粉体100が充填される充填部14となる。表裏面シートは、いずれも上下方向にやや長く延びた略矩形状を呈する。底ガゼットシート13も略矩形状を呈し、例えば、表裏面シートの下端から1/4程度の範囲に設けられる。
【0021】
また、パウチ容器10は、計量スプーン101による粉体100の擦り切り計量を可能とする摺り切りガゼット部30を備える。さらに、パウチ容器10は、粉体100が収容される充填部14における後述のチャック16の下方側の壁面シートに接合され、容器幅方向に沿って配置された下向きガゼットシートからなる保護ガゼット部40を備える。保護ガゼット部40は、取り出し口18を鉛直下方に向けて粉体100を取り出す際にチャック16を保護する機能を有する。本実施形態では、摺り切りガゼット部30及び保護ガゼット部40は、いずれも下方に向かって山折りされた同一の下向きガゼットシート25から構成される。粉体100は、下向きガゼットシート25にかからない範囲で充填部14(下向きガゼットシート25よりも下方側の部分)に充填される。
【0022】
パウチ容器10を構成する各シート材は、通常、樹脂フィルムから構成される。シート材を構成する樹脂フィルムには、耐衝撃性、耐磨耗性、及び耐熱性など、包装体としての基本的な性能を備えることが要求される。また、上記シール部は、通常、ヒートシールにより形成されるので、シート材には、ヒートシール性も要求される。シート材としては、ベースフィルム層と、ヒートシール性を付与するシーラント層とを有する複層シート材が好適であり、高いガスバリア性が要求される場合には、ベースフィルム層とシーラント層との間にガスバリア層を設けることが好適である。
【0023】
ここで、ベースフィルム層、シーラント層、及びガスバリア層の構成材料を例示する。なお、これら各層の積層は、慣用のラミネート法、例えば、接着剤によるドライラミネーション、熱接着性層を挟んで熱により接着させる熱ラミネーションなどにより行うことができる。
【0024】
ベースフィルム層を構成するフィルムとしては、ポリエステル(ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレ−ト(PEN)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリカーボネート(PC)など)、ポリオレフィン(ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)など)、ポリアミド(ナイロン−6、ナイロン−66など)、ポリアクリロニトリル(PAN)、ポリイミド(PI)、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリ塩化ビニリデン(PVDC)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、及びポリエーテルスルフォン(PES)等から構成される一層又は二層以上の延伸又未延伸フィルムが例示できる。
【0025】
シーラント層を構成するフィルムとしては、低密度ポリエチレン(LDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、エチレン−プロピレン共重合体(EP)、未延伸ポリプロピレン(CPP)、二軸延伸ナイロン(ON)、エチレン−オレフィン共重合体、エチレン−アクリル酸共重合体(EAA)、エチレン−メタクリル酸共重合体(EMAA)及びエチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)等から構成される一層又は二層以上の延伸又未延伸フィルムが例示できる。
【0026】
ガスバリア層としては、アルミニウム等の金属薄膜、又は塩化ビニリデン(PVDC)、エチレン−ビニルアルコール共重合体(EVOH)などの樹脂フィルム、或いは任意の合成樹脂フィルム(例えば、ベースフィルム層であってもよい)に、アルミニウム、酸化アルミニウムやシリカ等の無機酸化物などを蒸着(又はスパッタリング)したフィルムが例示できる。
【0027】
シート材には、内容物の商品名や原材料・使用上の注意事項等の商品説明、その他各種デザインなどを表示するための印刷層(図示せず)を設けることができる。例えば、印刷層は、グラビア印刷等の公知の方法により、ベースフィルム層の内側の面に形成できる。
【0028】
上記シール部は、ヒートシールにより形成されることが好適である。ヒートシールによるシール部は、各シート材のシーラント層が容器の内側となるように重ね合わせて熱圧着することで形成できる。
【0029】
パウチ容器10は、上記シール部として、上縁シール部20と、下縁シール部21と、サイドシール部22とを有する。上縁シール部20は、粉体100の充填後に形成されるシール部であって、表面シート11及び裏面シート12の上縁同士を接合して形成される。下縁シール部21は、底ガゼットシート13の端縁に形成されるシール部であり、底ガゼットシート13と表面シート11及び裏面シート12とが接合されて形成される。また、底ガゼットシート13には、幅方向両端に切り欠き15が形成されており、切り欠き15を通して表面シート11と裏面シート12とが直接接合されている。サイドシール部22は、容器幅方向両端部において、表面シート11と裏面シート12とを直接接合して形成される。
【0030】
また、パウチ容器10には、上縁シール部20の近傍に、取り出し口18を閉じる封止部材であるチャック16と、取り出し口18を形成するためのノッチ17とが設けられている。チャック16は、下向きガゼットシート25よりも上方側に設けられ、ノッチ17は、チャック16よりも上方側に設けられる。
【0031】
チャック16は、例えば、凸条部付きの第1のシートと、凸条部に嵌合する凹条部付きの第2のシートとを対向配置して構成される。例えば、第1のシートが表面シート11の内面に接合され、第2のシートが裏面シート12の内面に接合される。
【0032】
ノッチ17は、表裏面シートを切断して開封するための切断起点となる切り込みであり、左右のサイドシール部22にそれぞれ設けることができる。ノッチ17から表裏面シートを幅方向に沿って切断すると、上縁シール部20が除去されて、容器外部と充填部14とを連通させる取り出し口18が形成される。なお、
図1のノッチ17から延びる二点鎖線は、開封時に切断されて取り出し口18となる取り出し口形成予定部18zを示す。以下、シート材を切断して取り出し口形成予定部18zに取り出し口18を形成することを開封という。開封後はチャック16により取り出し口18を開閉できる。
【0033】
以下、摺り切りガゼット部30、保護ガゼット部40、及びこれらを構成する下向きガゼットシート25の構成について、さらに詳説する。
【0034】
摺り切りガゼット部30及び保護ガゼット部40(以下、これらを総称して「ガゼット部」という場合がある)は、チャック16よりも下方側に位置する表裏面シートの内面に展開可能に接合されている。摺り切りガゼット部30は、取り出し口18を開口することにより展開する(
図3参照)。また、保護ガゼット部40は、上方側に折り曲げ可能な後述の非接合領域を有し、該非接合領域が上下方向に沿うように折り曲げられた状態でチャック16を覆う。
【0035】
各ガゼット部は、容器幅方向に沿って配置された同一の下向きガゼットシート25から構成されている。下向きガゼットシート25には、その幅方向一端側に摺り切りガゼット部30が設けられ、その幅方向他端側に保護ガゼット部40が設けられている。下向きガゼットシート25(各ガゼット部)の下端に沿って折り目線26が形成されており、上端に沿って表裏面シートとの接合部27が形成されている。
【0036】
具体的には、折り目線26よりも表面シート11側に位置するガゼット半部である表側半部25aの上端が表面シート11の内面に、折り目線26よりも裏面シート12側に位置するガゼット半部である裏側半部25bの上端が裏面シート12の内面にそれぞれ接合され、幅方向に沿った帯状の接合部27が形成されている。即ち、各ガゼット部の表側半部30a,40aの上端、裏側半部30b,40bの上端、及び後述の連結部29に接合部27が形成される。
【0037】
下向きガゼットシート25は、生産性の観点から、表裏面シートの全幅に亘って設けられることが好適であり、粉体100の取り出しを可能とするガゼット開口部28を有する。下向きガゼットシート25は、その長手方向が容器幅方向に対して多少傾いて設けられてもよいが、好ましくは長手方向が容器幅方向に略平行となるように配置される。また、下向きガゼットシート25は、チャック16と略平行に設けられ、充填部14の大容量化等の観点から、チャック16に接触しない範囲でチャック16に近接して設けられることが好ましい。
【0038】
各ガゼット部は、下向きガゼットシート25の幅方向中央(容器幅方向中央)に形成されたガゼット開口部28を挟んで幅方向両側に設けられている。そして、各ガゼット部は、帯状の連結部29によって互いに繋がっている。なお、連結部29の幅(上下方向長さ)は、製造時における長尺体25z(後述)の搬送性が損なわれない寸法に設定されることが好適である。
図1では、接合部27及び連結部29の幅を同程度としているが、接合部27の幅はより細くすることができ、また連結部29に接合部27を設けない構成とすることもできる。
【0039】
摺り切りガゼット部30は、上記のように、容器幅方向一端とガゼット開口部28との間に設けられており、容器幅方向一端から容器幅方向に沿って充填部14の一部を覆うように設けられている。摺り切りガゼット部30の幅方向長さW
30は、擦り切り性や粉体100の取り出し性等の観点から、パウチ容器10の幅方向長さWの10%〜50%程度が好ましく、Wの15%〜40%程度がより好ましい(
図1参照)。
【0040】
摺り切りガゼット部30は、剛的安定性を担保して擦り切り性を向上させる等の観点から、一方の幅方向端部である第1端部31がサイドシール部22により表裏面シートに接合されていることが好適である。そして、摺り切りガゼット部30の他方の幅方向端部である第2端部32が擦り切りに利用される。即ち、第2端部32に計量スプーン101が押し当てられる。
【0041】
図4に示すように、摺り切りガゼット部30は、第2端部32側において、最大で表側半部30aと裏側半部30bとが略平行になるまで展開する。大きく展開した摺り切りガゼット部30では、略三角形状を呈する上面33が形成される。上面33の三角形は、サイドシール部22に接する頂点P1を下端とし、接合部27に接する頂点P2,P3を上端とする傾斜した二等辺三角形であり、第2端部32が上辺となる。このように、展開した摺り切りガゼット部30は、上面33の各頂点P1〜P3に対応する部分で安定に支持されている。
【0042】
保護ガゼット部40は、上記のように、容器幅方向他端とガゼット開口部28との間に設けられており、容器幅方向他端から容器幅方向に沿って充填部14の一部を覆うように設けられる。保護ガゼット部40は、その幅方向他端部がサイドシール部22により表裏面シートに接合されており、その上端部も接合部27により各ガゼット半部が表裏面シートに各々接合されている。保護ガゼット部40の幅方向長さW
40は、少なくとも後述の非接合領域を上方側に折り曲げた状態において、第2端部42がチャック16よりも上方に位置する長さに設定され、好ましくは第2端部42がパウチ容器10の上端から突出する程度の長さに設定される(
図1,5参照)。なお、ガゼット開口部28の幅方向長さW
28は、少なくともWの20%以上が好ましく、例えば、W
40,W
28に応じてW
30を決定する。
【0043】
保護ガゼット部40は、その幅方向一端部であるガゼット開口部28(即ち、第2端部42)の縁部から容器幅方向他端側に向かって表側半部40a及び裏側半部40bの上部の各々に形成された非接合部分である切り込み44を有する。ガゼット半部(表側半部40a、裏側半部40b)の「上部」とは、その下端に沿って形成された折り目線26と、その上端に沿って形成された接合部27との中間よりも上方側を意味し、好ましくは接合部27に近接して切り込み44が形成される。本実施形態では、下向きガゼットシート25が全幅に亘って設けられているが、切り込み44を入れることで表裏面シートに接合される部分と接合されていない非接合領域とを形成することができ、該非接合領域の上方への折り曲げが可能となる。即ち、非接合部分とは、非接合領域の上縁部分を意味する。
【0044】
切り込み44は、ガゼット開口部28側の一端から、サイドシール部22側の他端に亘って直線状に形成される。切り込み44の他端は、サイドシール部22の内縁から所定長さ離れた位置に設けられることが好適である(
図6参照)。即ち、サイドシール部22の内縁から所定長さの範囲内に切り込み44を形成しないことが好適である。これにより、保護ガゼット部40を用いて粉体100を取り出す際に、保護ガゼット部40と表裏面シートとの間から粉体100が抜け落ちることを防止できる。なお、切り込み44の他端は、第2端部42に位置する。所定長さは、折り目線26から切り込み44までの上下方向長さL2に相当する長さとすることが好ましく、切り込み44の長さL1は、第2端部42からサイドシール部22の内縁までの長さからL2を差し引いた長さとされる。
【0045】
保護ガゼット部40には、切り込み44よりも下方側に位置する部分、即ち上記非接合領域が上方側に折り曲げられることで折り目線45が形成される。つまり、非接合領域は、切り込み44と折り目線45とに囲まれた部分であって、保護ガゼット部40の幅方向一端部から所定幅に亘って形成されている。本実施形態において、かかる所定幅は、例えば、切り込み44の長さを調整することで適宜変更できる。なお、保護ガゼット部40の折り曲げ操作をスムーズにすべく、折り目線45を予め形成しておくこともできる。以下では、折り目線45が予め形成されているものとして説明する。
【0046】
折り目線45は、切り込み44の他端P4から折り目線26とサイドシール部22の内縁との交点P5に亘って形成されることが好適である(
図6参照)。上記の位置に形成されたP4によれば、折り目線45とサイドシール部22の内縁とがなす角度αが略45°となり、非接合領域のスムーズな折り曲げ操作が可能となる。また、角度αが略45°となれば、非接合領域は、上方側に折り曲げたときに上下方向に沿った状態となり、粉体100の取り出し性も向上する。
【0047】
図5〜7に示すように、保護ガゼット部40の非接合領域を、折り目26を反転させて上方側に折り曲げると、第2端部42がチャック16の位置を超えて上方に延び、チャック16が非接合領域によって覆われる。非接合領域は、折り曲げられる前の状態において、表側半部40aと裏側半部40bの上面43同士が向かい合っているが、上方側に折り曲げられて上下方向に沿った状態では、折り目線26が反転して下面46同士が向かい合う。つまり、摺り切りガゼット部30は、折り目線45において上面43がチャック16側に向くように折り返される。そして、下面46上を通って粉体100が取り出されることになる。
【0048】
次に、
図8を参照しながら、パウチ容器10の製造方法の一例について説明する。
図8は、パウチ容器10の製造工程のうち、各シート材の長尺体を積層し、各シール部を形成する工程を模式的に示す。ここでは、長尺体の長手方向をMD方向とし、長尺体の幅方向をTD方向とする。
【0049】
図8に示すように、まず、表面シート11、裏面シート12、底ガゼットシート13、チャック16を構成するシート(例えば、凸条部付きの第1のシート及び凹条部付きの第2のシート)、及び下向きガゼットシート25の長尺体(以下、長尺体11z,12z,13z,16z,25zとする)をそれぞれ準備して互いに積層する。また、長尺体25zには、ダイカットロール等により連結部29を残してガゼット開口部28が形成され、また切り込み44、折り目線45が形成される。長尺体16zは、第1のシートの凸条部と第2のシートの凹条部とが嵌合した状態で積層される。
【0050】
各長尺体の積層工程では、まず、長尺体11zと長尺体12zとを重ね合わせ、長尺体11z及び長尺体12zの下端に長尺体13zを挿入し、長尺体11z及び長尺体12zの上部に長尺体16z,25zをそれぞれ挿入する。このとき、長尺体25zを長尺体16zよりも下端側に挿入する。なお、長尺体16zよりも上端側の部分には、後の工程でノッチ17等が形成される。
【0051】
積層工程を経た上記長尺体には、ヒートシール工程で各シール部が形成される。ヒートシール工程では、上記長尺体の下縁、TD方向に沿って所定部位をヒートシールする。ここで、長尺体の下縁は、パウチ容器10の下縁となる部分であり、所定部位は、パウチ容器10の側端縁となる部分である。即ち、このヒートシール工程により、下縁シール部21及びサイドシール部22(2つの容器分の幅広シール部)を形成する。
【0052】
ヒートシール工程では、さらに、長尺体16z,25zを長尺体11z及び長尺体12zにそれぞれ接合する。長尺体25zの上端には、MD方向に沿った接合部27が形成される。また、パウチ容器10の側端縁となる部分に摺り切りガゼット部30の第1端部31、及び保護ガゼット部40の第1端部41を配置した状態で上記サイドシール部22を形成する。これにより、第1端部31,41が表面シート11及び裏面シート12に固定される。
【0053】
続いて、ダイカットロール等を用いて、例えば、サイドシール部22の仮想線Xに沿って上記長尺体をカットし、個々の容器サイズに分割する。このとき、サイドシール部22にノッチ17を形成できる。そして、容器上端から粉体100を充填した後、上縁シール部20を形成することにより、
図1に示す粉体100が充填されたパウチ容器10が得られる。
【0054】
次に、
図9,10に示す粉体100を擦り切る様子、及び取り出し口18を鉛直下方に向けて粉体100を取り出す様子をさらに参照しながら、パウチ容器10の作用効果について詳説する。
【0055】
充填部14から粉体100を取り出すときには、ノッチ17を用いて取り出し口18を形成した後、チャック16を開放することにより取り出し口18を開口する。そして、取り出し口18を大きく開口することで、容器上部において、表裏面シートが互いに離間し、下向きガゼットシート25が展開する。摺り切りガゼット部30では、第1端部31側は展開しないが、第2端部32側では、例えば、表側半部30aと、裏側半部30bとが互いに略平行な板状となるように展開する。そして、サイドシール部22に接する頂点P1を下端、接合部27に接する頂点P2,P3を上端とする傾斜した略三角形状の上面33が形成される(
図4参照)。
【0056】
図9に示すように、摺り切りガゼット部30が展開すると、第1端部31に粉体100を掬った計量スプーン101の皿部を押し当てることができる。そして、第2端部32に皿部を押し当てながら計量スプーン101を上方に引くことにより余分な粉体100を擦り切ることができる。こうして、計量スプーン101の1杯あたりの粉体100の量を一定にでき、簡便な計量が可能になる。摺り切りガゼット部30は、各頂点P1〜P3に対応する部分で安定に支持されているため、計量スプーン101を押し当てたときに摺り切りガゼット部30が撓み難く、良好な操作性を実現できる。
【0057】
充填部14の粉体100の量が少なくなると、計量スプーン101を用いて掬い出すことが難しいため、保護ガゼット部40を用いて粉体100が取り出される。或いは、粉体100を大量に取り出す場合には、初めから保護ガゼット部40を用いて粉体100を取り出すことができる。具体的には、切り込み44及び折り目線45に囲まれた非接合領域の第2端部42側を上方側に持ち上げ、折り目線45で上面43が表裏面シート側に向くように折り目線26を反転させて折り返すことで、非接合領域が上下方向に沿い第2端部42が容器上端から延出して、チャック16が非接合領域により覆われた状態となる(
図7等参照)。
【0058】
図10に示すように、取り出し口18を鉛直下方側に傾ける、より詳しくは折り曲げた保護ガゼット部40の第2端部42を鉛直下方側に傾けると、粉体100が容器の壁面に沿って滑落する。このとき、粉体100は保護ガゼット部40の下面46上を通って取り出される。粉体100はチャック16上を通過するが、粉体100が通過する部分におけるチャック16は、保護ガゼット部40の非接合領域に覆われているため、チャック16に粉体100が付着することなくスムーズに粉体100を取り出すことが可能になる。なお、保護ガゼット部40の上端には幅方向に沿って接合部27が形成されているため、保護ガゼット部40と表裏面シートとの間を粉体100が通過して取り出されることはない。
【0059】
以上のように、パウチ容器10によれば、摺り切りガゼット部30を用いた粉体100の摺り切り計量が可能であると共に、保護ガゼット部40を用いた粉体100の取り出しが可能である。保護ガゼット部40を用いることにより、取り出し口18を鉛直下方に向け容器の壁面に沿わせて粉体100を取り出す場合であっても、粉体100がチャック16に付着しないため、チャック16の再封性が損なわれることなく、またチャック16を衛生的に保つことができる。
【0060】
図11に、パウチ容器10の変形例であるパウチ容器10xを示す。
図11に示すように、パウチ容器10xの保護ガゼット部40xは、非接合領域が上方側に折り曲げられたときに折り目線45xが形成される部分に沿って表裏面シートとの接合部47を有する点で、パウチ容器10の保護ガゼット部40と異なる。接合部47は、切り込み44の他端P4から折り目線26とサイドシール部22の内縁との交点P5に沿って、且つサイドシール部22、接合部27に連続した正面視略三角形状の領域に形成されている。この場合、接合部47に沿って保護ガゼット部40xの非接合領域が折れ曲がるため、折り目線45を予め形成しておく必要はない。即ち、接合部47により折り目線45xが形成されるといえる。当該構成によれば、保護ガゼット部40xと表裏面シートとの間に粉体100が入り込んで溜まることを防止できる。
【0061】
<第2の実施形態>
図12,13を参照して、第2の実施形態であるパウチ容器50の構成を説明する。ここでは、第1の実施形態と同じ構成には同じ符号を付して重複する説明を省略する。
【0062】
図12に示すように、パウチ容器50は、摺り切りガゼット部30が設けられていない点で、パウチ容器10と異なる。下向きガゼットシート55には、幅方向他端部側に保護ガゼット部60のみが形成されており、幅方向一端側に幅広のガゼット開口部58が形成されている。この場合も、下向きガゼットシート55は、容器の全幅に亘って設けられ、全幅に亘って帯状の接合部57が形成されている。
【0063】
保護ガゼット部60は、パウチ容器10xの保護ガゼット部40xと同様の構成を有している。なお、摺り切りガゼット部30が存在しない分、保護ガゼット部60の幅をより長く設定することができる。
【0064】
図13に、パウチ容器50の変形例であるパウチ容器50xを示す。
図13(b)は、(a)のB‐B線断面を示す図である。
図13に示すように、パウチ容器50xの下向きガゼットシート55xは、容器の全幅に亘って設けられず容器幅方向他端側から中央部付近に亘って設けられている点で、パウチ容器50の下向きガゼットシート55と異なる。下向きガゼットシート55xは、その全体が保護ガゼット部60xを構成しており、また幅方向に沿った帯状の接合部57を有さない。
【0065】
保護ガゼット部60x(下向きガゼットシート55x)は、その幅方向他端部がサイドシール部22及び接合部47により表裏面シートに接合されている。即ち、表側半部60xa及び裏側半部60xbは幅方向他端部及びその近傍だけが表裏面シートにそれぞれ接合されており、保護ガゼット部60xは、幅方向一端部から接合部47に亘って非接合部分及び非接合領域を有する。
【0066】
<第3の実施形態>
図14〜16を参照して、第3の実施形態であるパウチ容器70の構成を説明する。ここでは、上記実施形態と同じ構成には同じ符号を付して重複する説明を省略する。なお、本実施形態では、未開封状態において摺り切りガゼット部30、保護ガゼット部40は形成されていないが、各ガゼット部となる部分にも30,40の符号を付する。
【0067】
図14,15に示すように、パウチ容器70は、下向きガゼットシート75が未開封状態において充填部14上の全域を覆って設けられている点で、パウチ容器10と異なる。
図16に示すように、下向きガゼットシート75は、取り出し口18の開口に伴ってガゼット開口部28が形成されるものであり、ガゼット開口部28を形成するための開口補助部を有する。このため、製造時における下向きガゼットシート75の剛性が高く、搬送性に優れる。
【0068】
開口補助部は、折り目線26に交差して形成されたミシン目線76a,76b、及びミシン目線76a,76bに交差して形成されたミシン目線77を有する。ミシン目線76a,76bとミシン目線77とは、互いに略直交し、ミシン目線77が折り目線26に沿って形成されることが好適である。開口補助部としては、ミシン目線の代わりに又はミシン目線と共に、ハーフカット線を用いてもよい。
【0069】
また、下向きガゼットシート75には、各ミシン目線によって区切られた蓋部78に、蓋部78と表裏面シートとを接合するポイントシール部79が設けられている。蓋部78は、ガゼット開口部28となる部分に対応する部分(
図15の網目ハッチングを付した部分)であって、ポイントシール部79により表裏面シートに固定されて展開しない非展開部である。
【0070】
なお、保護ガゼット部40(保護ガゼット部40となる部分)には、切り込み44及び折り目線45が形成されている。保護ガゼット部40は、ミシン目線76bと容器幅方向他端との間に設けられ、ミシン目線76bから容器幅方向他端側に向かって表側半部40a及び裏側半部40bの各々に形成された切り込み44を有する。或いは、切り込み44の代わりに、切り込み44を形成するためのミシン目線やハーフカット線が形成されていてもよい。
【0071】
図16に示すように、取り出し口18を開口することにより、下向きガゼットシート75に作用する力を利用して蓋部78と各ガゼット部とを区切る各ミシン目線で下向きガゼットシート75が切断され、ガゼット開口部28が形成される。取り出し口18を開口すると、蓋部78以外の部分(摺り切りガゼット部30、保護ガゼット部40)が表裏面シートから離反して展開しようとする。このとき、蓋部78に対しても展開方向に力が作用するが、蓋部78は表裏面シートに固定されているため展開しない。ゆえに、かかる力は蓋部78と各ミシン目線に作用し、これにより、下向きガゼットシート75が各ミシン目線(開口補助部)に沿って切断されてガゼット開口部28、及びその幅方向両側に摺り切りガゼット部30、保護ガゼット部40が形成される。
【0072】
パウチ容器70は、開封した後はパウチ容器10と同様の使用感を有する。つまり、パウチ容器70によれば、使い勝手を損なうことなく、製造時における下向きガゼットシート75の良好な搬送性を実現でき、優れた生産性(量産性)を有する。
【0073】
上記実施形態は、本発明の目的を損なわない範囲で適宜設計変更できる。
例えば、上記各実施形態では、スタンディングパウチを例示したが、自立性を有さない平パウチなど、他のパウチ形態に本発明の構成を適用してもよい。
【0074】
また、摺り切りガゼット部30に粉体回収孔を設けてもよい。粉体回収孔は、摺り切り操作により上面33上に載った粉体100を充填部14に戻す機能を有する。粉体回収孔は、例えば、折り目線26が形成される部分の一部をカットして設けることができる。