(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
立設された複数の柱状体の位置に整合させて上下に貫通した柱挿入部を有する既製部材を前記各柱状体が前記柱挿入部に挿入される位置までクレーンで移送するための吊り枠であって、
前記クレーンに吊り持ちされる吊り枠本体と、該吊り枠本体下に配置した前記既製部材を前記吊り枠本体に支持させる吊り具と、前記吊り枠本体の前記柱挿入部に整合させた位置に下向きに突設された伸縮により高さ調整可能な支持脚部とを備え、前記柱挿入部に挿入された柱状体の上面に前記支持脚部が載置され、前記既製部材を支持した状態で吊り枠本体が前記柱状体に支持脚部を介して高さ調整可能に支持されるようにしたことを特徴とする吊り枠。
前記支持脚部には、前記吊り枠本体に上端が固定された伸縮可能な可動部と、該可動部の下端に固定された下脚部と、前記可動部の高さを調整するための高さ調整用ジャッキとを備えている請求項1に記載の吊り枠。
立設された複数の柱状体の位置に整合させて上下に貫通した柱挿入部を有する既製部材を前記各柱状体が前記柱挿入部に挿入されるように仮設し、その状態で前記柱状体と既製部材とを接合させて柱状体と既製部材とを一体化させる構造物の構築方法において、
クレーンに吊り持ちされる吊り枠本体と、該吊り枠本体下に配置した前記既製部材を前記吊り枠本体に支持させる吊り具と、前記吊り枠本体の前記柱挿入部に整合させた位置に下向きに突設された伸縮により高さ調整可能な支持脚部とを備えた吊り枠を使用し、
前記吊り枠本体下に前記既製部材を吊り下げた状態でクレーンによって前記吊り枠を吊り上げ、前記柱状体を前記柱挿入部内に挿入させるとともに、前記支持脚部を前記柱状体上面に載置させ、前記既製部材を前記柱状体に前記吊り枠を介して支持させ、
しかる後、前記支持脚部の高さを調整し、柱状体頭部と前記既製部材との相対高さを調整することを特徴とする構造物の構築方法。
前記既製部材は、側面に開口した凹欠状の柱挿入部用凹部を有するプレキャストコンクリート造の一対の主梁部材と、該主梁部材間に配置される互いに平行なプレキャストコンクリート造の横梁部材とを別個に備え、前記柱挿入部用凹部の側面開口側に前記横梁部材を配置するとともに、前記柱挿入部用凹部の両側面開口縁と前記横梁部材とをそれぞれ着脱可能な型枠兼用連結具を介して連結することにより、前記主梁部材と横梁部材とを連結するとともに前記柱挿入部を形成し、
該既製部材を前記吊り枠に吊り持ちさせ、前記柱状体を前記柱挿入部内に挿入させるとともに、前記支持脚部を前記柱状体上面に載置させることにより、前記主梁部材と前記横梁部材とを前記柱状体に前記吊り枠を介して支持させる請求項3に記載の構造物の構築方法。
【背景技術】
【0002】
従来、複数の杭等の柱状体に梁を支持させた桟橋等の構造物は、水底等に各柱状体を打設した後、隣接するこれら柱状体間に鉄骨の架設や鉄筋の配筋等を行うとともに、柱状体に支持させた支保工を利用して柱状体間に型枠を形成し、コンクリートを現場打ちすることによって梁を形成するとともに梁と柱状体頭部とを接合していた。
【0003】
しかしながら、このような工法では、梁を現場打ちコンクリートで形成するため、各作業を行うための作業足場や支保工の設置、鉄筋・鉄骨の配置、型枠の組立・解体、コンクリートの打設・養生等の全ての作業を施工現場で行わなければならず、海象・気象条件の影響が大きいとともに、工期が長期化するという問題があった。
【0004】
そこで、このような問題を鑑み、従来では、梁を構成する1又は複数のプレキャストコンクリート造の既製部材を予め陸上の工場又は製作ヤードで製造し、それを施工現場に搬送し、柱状体頭部に当該既製部材を支持させ、その状態で柱状体頭部と既製部材との間にコンクリートを打設することにより接合させるようにした工法が用いられている(例えば、特許文献1を参照)。
【0005】
この種の工法においては、既製部材に柱状体頭部が挿入される貫通孔を形成するとともに、貫通孔の内周面より鉄骨等の支持部材を突出させておき、この鉄骨等の支持部材の下面を柱状体上面又は柱状体外周面に突設されたブラケットによって受けて既製部材を柱状体に仮支持させ、その状態で鉄筋の配筋・接続を行うとともに、貫通孔内にコンクリートを打設するようにしている。
【0006】
一方、この既製部材を柱状体頭部に設置するには、既製部材をクレーン船又は陸上に設置したクレーンによって吊り上げ、それをクレーン操作によって既製部材の鉄骨下面が柱状体上面又は柱状体外周面に突設されたブラケットに載置される位置まで移動させるようにしている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上述の如き従来の技術では、既製部材を柱状体頭部に設置する際の高さ調整は、クレーン操作によって行わなければならず、微妙な高さ調整をすることが難しく、クレーンのオペレータに熟練した技術が要求されるとともに、気象・海象条件の影響を受けやすいという問題があった。
【0009】
また、従来の技術では、既製部材の鉄骨等の支持部材を柱状体上面部又は柱状体外周面に固定されたブラケットで支持する構造であるので、既製部材を所望の高さに設置するためには、各柱状体の既製部材を支持する部分の高さが一致してなければならず、その為、各柱状体又はブラケットを高い精度で設置する必要があり、作業が煩雑で工費及び工期が増大するという問題があった。
【0010】
更に、従来の技術では、既製部材が例えば、複数のプレキャストコンクリート造の部品によって構成されている場合、部品毎に柱状体への設置を行わなければならず、その分、工期が長期化するという問題があった。
【0011】
そこで、本発明は、このような従来の問題に鑑み、気象・海象条件の影響を受け難く、柱状体に対する既製部材の高さ調整が容易な吊り枠及びそれを使用した構造物の構築方法の提供を目的としてなされたものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上述の如き従来の問題を解決するための請求項1に記載の発明の特徴は、立設された複数の柱状体の位置に整合させて上下に貫通した柱挿入部を有する既製部材を前記各柱状体が前記柱挿入部に挿入される位置までクレーンで移送するための吊り枠であって、前記クレーンに吊り持ちされる吊り枠本体と、該吊り枠本体下に配置した前記既製部材を前記吊り枠本体に支持させる吊り具と、前記吊り枠本体の前記柱挿入部に整合させた位置に下向きに突設された
伸縮により高さ調整可能な
支持脚部とを備え、前記柱挿入部に挿入された柱状体の上面に
前記支持脚部が
載置され、前記既製部材を支持した状態で吊り枠本体が前記柱状体に
支持脚部を介して高さ調整可能に支持されるようにした吊り枠にある。
【0013】
請求項2に記載の発明の特徴は、請求項1の構成に加え、前記支持脚部には、前記吊り枠本体に上端が固定された伸縮可能な可動部と、該可動部の下端に固定された下脚部と、前記可動部の高さを調整するための高さ調整用ジャッキとを備えていることにある。
【0014】
請求項3に記載の発明の特徴は、立設された複数の柱状体の位置に整合させて上下に貫通した柱挿入部を有する既製部材を前記各柱状体が前記柱挿入部に挿入されるように仮設し、その状態で前記柱状体と既製部材とを接合させて柱状体と既製部材とを一体化させる構造物の構築方法において、
クレーンに吊り持ちされる吊り枠本体と、該吊り枠本体下に配置した前記既製部材を前記吊り枠本体に支持させる吊り具と、前記吊り枠本体の前記柱挿入部に整合させた位置に下向きに突設された
伸縮により高さ調整可能な
支持脚部とを備えた吊り枠を使用し、前記吊り枠本体下に前記既製部材を吊り下げた状態でクレーンによって前記吊り枠を吊り上げ、前記柱状体を前記柱挿入部内に挿入させるとともに、前記支持脚部を前記柱状体上面に載置させ、前記既製部材を前記柱状体に前記吊り枠を介して支持させ、しかる後、前記支持脚部の高さを調整し、
柱状体頭部と前記既製部材との相対高さを調整する構造物の構築方法にある。
【0015】
請求項4に記載の発明の特徴は、請求項3の構成に加え、前記既製部材は、側面に開口した凹欠状の杭挿入部用凹部を有するプレキャストコンクリート造の一対の主梁部材と、該主梁部材間に配置される互いに平行なプレキャストコンクリート造の横梁部材とを別個に備え、前記杭挿入部用凹部の側面開口側に前記横梁部材を配置するとともに、前記杭挿入部用凹部の両側面開口縁と前記横梁部材とをそれぞれ着脱可能な型枠兼用連結具を介して連結することにより、前記主梁部材と横梁部材とを連結するとともに前記柱挿入部を形成し、該既製部材を前記吊り枠に吊り持ちさせ、前記柱状体を前記柱挿入部内に挿入させるとともに、前記支持脚部を前記柱状体上面に載置させることにより、前記主梁部材と前記横梁部材とを前記柱状体に前記吊り枠を介して支持させることにある。
【発明の効果】
【0016】
本発明に係る吊り枠は、上述したように、立設された複数の柱状体の位置に整合させて上下に貫通した柱挿入部を有する既製部材を前記各柱状体が前記柱挿入部に挿入される位置までクレーンで移送するための吊り枠であって、前記クレーンに吊り持ちされる吊り枠本体と、該吊り枠本体下に配置した前記既製部材を前記吊り枠本体に支持させる吊り具と、前記吊り枠本体の前記柱挿入部に整合させた位置に下向きに突設された
伸縮により高さ調整可能な
支持脚部とを備え、前記柱挿入部に挿入された柱状体の上面に
前記支持脚部が
載置され、前記既製部材を支持した状態で吊り枠本体が前記柱状体に
支持脚部を介して高さ調整可能に支持されるようにしたことにより、吊り枠本来の機能に加え、既製部材を柱状体頭部に安定して保持させるための構造として機能し、気象・海象条件の影響を受け難く、柱状体毎に柱状体に対する既製部材の高さ調整を容易に行うことができる。
【0017】
また、本発明においては、前記支持脚部には、前記支持脚部には、前記吊り枠本体に上端が固定された伸縮可能な可動部と、該可動部の下端に固定された下脚部と、前記可動部の高さを調整するための高さ調整用ジャッキとを備えていることによって、
支持脚部毎に容易に高さ調整をする
ことができる。
【0018】
更に、本発明に係る構造物の構築方法では、立設された複数の柱状体の位置に整合させて上下に貫通した柱挿入部を有する既製部材を前記各柱状体が前記柱挿入部に挿入されるように仮設し、その状態で前記柱状体と既製部材とを接合させて柱状体と既製部材とを一体化させる構造物の構築方法において、
クレーンに吊り持ちされる吊り枠本体と、該吊り枠本体下に配置した前記既製部材を前記吊り枠本体に支持させる吊り具と、前記吊り枠本体の前記柱挿入部に整合させた位置に下向きに突設された
伸縮により高さ調整可能な
支持脚部とを備えた吊り枠を使用し、前記吊り枠本体下に前記既製部材を吊り下げた状態でクレーンによって前記吊り枠を吊り上げ、前記柱状体を前記柱挿入部内に挿入させるとともに、前記支持脚部を前記柱状体上面に載置させ、前記既製部材を前記柱状体に前記吊り枠を介して支持させ、しかる後、前記支持脚部の高さを調整し、
柱状体頭部と前記既製部材との相対高さを調整することにより、柱状体設置時の精度等によって生じた柱状体毎の誤差を吸収して柱状体頭部に対する既製部材の位置を容易に調整することができる。
【0019】
また、本発明において、前記既製部材は、側面に開口した凹欠状の杭挿入部用凹部を有するプレキャストコンクリート造の一対の主梁部材と、該主梁部材間に配置される互いに平行なプレキャストコンクリート造の横梁部材とを別個に備え、前記杭挿入部用凹部の側面開口側に前記横梁部材を配置するとともに、前記杭挿入部用凹部の両側面開口縁と前記横梁部材とをそれぞれ着脱可能な型枠兼用連結具を介して連結することにより、前記主梁部材と横梁部材とを連結するとともに前記柱挿入部を形成し、該既製部材を前記吊り枠に吊り持ちさせ、前記柱状体を前記柱挿入部内に挿入させるとともに、前記支持脚部を前記柱状体上面に載置させることにより、前記主梁部材と前記横梁部材とを前記柱状体に前記吊り枠を介して支持させることにより、それぞれ別個に製作されたプレキャスト品を同時に柱状体頭部に設置することができ、工期の短縮を図ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0021】
次に、本発明に係る吊り枠の実施態様を
図1、
図2に示した実施例に基づいて説明する。尚、図中符号1は水底に打設された杭等の柱状体、符号2は各柱状体1,1...に支持される梁を構成する既製部材、符号30は既製部材2をクレーンで吊り持ちするための吊り枠である。
【0022】
既製部材2は、例えば、
図3に示すように、互いに平行に配置されたプレキャストコンクリート造の一対の主梁部材5,5と、主梁部材5,5間に架け渡されたプレキャストコンクリート造の横梁部材6,6とを備え、主梁部材5,5と横梁部材6,6とが交差する部分に柱状体頭部1aが挿入される上下に貫通した柱挿入部7が形成されている。
【0023】
本発明に係る吊り枠30は、この種の既製部材2をクレーンで吊り上げ、柱状体頭部1aに設置する際に使用するものであって、
図1に示すように、クレーンに吊り持ちされる吊り枠本体33と、吊り枠本体33下に配置した既製部材2を吊り枠本体33に支持させる吊り具34,34...と、吊り枠本体33の柱挿入部7に整合させた位置に下向きに突設させた支持脚部35,35とを備えている。
【0024】
吊り枠本体33は、所望の間隔をおいて並列させた複数の縦枠材50,50...と、縦枠材50,50...下を横切るように配置された複数の横枠材51,51とを備え、縦枠材50,50...と横枠材51,51とが組み付けられて格子枠状を成している。
【0025】
各縦枠材50,50...は、溝形鋼等の上下端より外向きに張り出したフランジ部52a,52bを有し、それぞれフランジ部52a,52bを外側に向けて対向する一対の鋼材52,52と、所望の間隔を置いて両鋼材52,52を連結する複数の連結材53,53...とを備え、鋼材52,52間に吊り具34,34...を挿通し、上下各フランジ部52a,52bに定着できるようになっている。
【0026】
また、側方に配置された一対の縦枠材50,50は、それぞれ既製部材2を構成する主梁部材5,5の短手幅に整合させた幅で並列し、各縦枠材50,50より垂下させた吊り具34,34...の下端に各主梁部材5,5の上面部が支持されるようになっている。
【0027】
吊り具34,34...は、上端に雄ねじ部54aを有する鋼棒等からなる吊り具本体54と、吊り具本体54の下端に固定された取付けフック部55とを備え、吊り具本体54を縦枠材50,50...の鋼材52,52間に挿通させるとともに、縦枠材50,50...を挟んだ雄ねじ部54aの上下側にそれぞれナット56を締め付け、吊り具本体54の上端が縦枠材50,50...に定着されている。
【0028】
各横枠材51,51は、H形鋼等の鋼材により構成され、上面に各縦枠材50,50...が所望の間隔を置いて溶接等によって固定されている。
【0029】
また、各横枠材51,51には、上面部の長手方向に間隔を置いて吊り持ち用フック57が突設され、
図4に示すように、吊り持ち用フック57に玉掛けワイヤ31,31...の下端が連結されるようになっている。尚、図中符号32はクレーンより繰り出されたワイヤである。
【0030】
この各横枠材51,51は、既製部材2の柱挿入部7上を横切るように配置され、その下面には、柱挿入部7の位置に整合させて支持脚部35,35の上端が固定されている。
【0031】
各支持脚部35は、
図2に示すように、吊り枠本体33、即ち、横枠材51,51の下面に上端が固定された伸縮可能な可動部36と、可動部36の下端に固定された下脚部37と、可動部36の高さを調整するための高さ調整用ジャッキ38とを備え、高さ調整用ジャッキ38を操作することにより支持脚部35,35の高さ調整ができるようになっている。
【0032】
可動部36は、横枠材51,51の下面に固定された平板状の固定板60と、固定板60の下面外縁部より下向きに突出した複数の上側スライド片61aと、各上側スライド片61aに上下にスライド可能に支持され、下端が下脚部37の上端に固定された下側スライド片61bとを備え、上下スライド片61a,61bの上下の相対移動により伸縮できるようになっている。
【0033】
尚、上下スライド片61a,61bは、何れか一方に上下に向けた長穴状の案内孔62が形成され、案内孔62に貫通させた固定用ボルト63を他方のスライド片61aに締め付けることにより、上下両スライド片61a,61bの相対位置を固定できるようになっている。
【0034】
下脚部37は、上下端が鋼板等の閉鎖板64,65によって閉鎖された角形鋼管等によって構成され、下端部外周にリブ状の補強片66,66が突設されている。
【0035】
高さ調節用ジャッキ38は、上端が可動部36の固定板60に、下端が下脚部37の上閉鎖板64上にそれぞれ固定され、作動させることにより下脚部37に支持されて固定板60を上下移動、即ち、可動部36を伸縮させるようになっている。
【0036】
尚、高さ調節用ジャッキ38の態様は、特に限定されず、ねじ式、ラチェット式等の機械式、油圧式等の流体作動式のいずれでもよく、また、手動式又は電動式であってもよい。
【0037】
次に、このように構成された吊り枠を使用した構造物の構築方法について
図4〜
図6に基づいて説明する。尚、上述の実施例と同様の構成には同一符号を付して説明し、図中符号Aは桟橋等の構造物、符号1は杭等の柱状体、符号2は構造物の梁を構成する既製部材、符号30は吊り枠である。
【0038】
この構造物Aは、立設された複数の柱状体1,1...の位置に整合させて上下に貫通した柱挿入部7を有する既製部材2を各柱状体1(柱状体頭部1a)が柱挿入部7に挿入されるように仮設し、その状態で柱状体頭部1aと既製部材2とを接合させて柱状体1と既製部材2とを一体化させるものである。
【0039】
柱状体1,1...は、円筒状の鋼管によって構成された杭であって、その上端部が水面B上に突出するように所望の根入れ深さまで水底地盤に打設される。
【0040】
既製部材2は、それぞれ別個に製作されたプレキャストコンクリート造の主梁部材5,5と横梁部材6,6とを備え、主梁部材5,5及び横梁部材6,6のそれぞれが柱状体頭部1aに接合される。
【0041】
各主梁部材5,5は、鉄筋コンクリート造の直方体状に形成され、その一方の側部の横梁部材6,6と整合する位置に上下及び側面が開口した凹欠状の柱挿入部用凹部7aが設けられ、柱挿入部用凹部7a側を互いに対向させて並列に配置されている。
【0042】
また、各主梁部材5,5には、長手方向及び短手方向に鉄筋9が埋設され、各鉄筋9には、柱挿入部用凹部7aの内側面に露出する部分に機械継手10が固定されている。
【0043】
各横梁部材6,6は、鉄筋コンクリート造の直方体状に形成され、両主梁部材5,5間であって、柱挿入部用凹部7aに整合した位置に両主梁部材5,5間方向に向けて配置されるようになっている。
【0044】
また、各横梁部材6,6には、その長手方向に向けて鉄筋9が埋設され、各鉄筋9の両端、即ち、横梁部材6,6の端面部に機械継手10が固定されている。
【0045】
構造物Aを構築するには、まず、施工現場付近の陸上において、それぞれ予め工場等で製作されたプレキャストコンクリート造の主梁部材5,5及び横梁部材6,6を施工現場付近の陸上部に搬入し、そこで
図3に示すように、各主梁部材5,5及び横梁部材6,6を型枠兼用連結具8によって連結し、格子版状に既製部材2を組み立てる。
【0046】
型枠兼用連結具8は、鋼材をもって構成され、平板状の連結具本体11と、連結具本体11の両側端よりそれぞれ斜め方向に延出し互いに直角を成すよう配置された一対の取付片12,12とを備えている。
【0047】
そして、型枠用連結具の各取付片12,12を主梁部材5,5の柱挿入部用凹部7aの側面側開口縁部と横梁部材6,6の側面とにそれぞれボルト13,13...で固定することによって、主梁部材5,5と横梁部材6,6とが連結されるとともに、連結具本体11が柱挿入部7の一部内壁を成すようになっている。
【0048】
尚、この型枠兼用連結具8には、連結具本体11の背面に両取付片12,12間を連結する補強片14,14が一体に突設され、主梁部5,5と横梁部6,6とのせん断耐力が強化されている。
【0049】
次に、組み上がった既製部材2上にクレーンで吊り上げた吊り枠30を移動させ、吊り枠本体33より垂下させた吊り具34,34...の取付けフック部55に主梁部材5,5の上面に突設させたフックを連結し、
図4に示すように、既製部材2をクレーン船又は陸上に設置されたクレーンで吊り上げる。
【0050】
その際、別個に製作されたプレキャストコンクリート造の各主梁部材5,5と各横梁部材6,6とが型枠兼用連結具8によって連結されているので、一つの吊り枠30で主梁部材5,5と横梁部材6,6とを同時に吊り上げることができる。
【0051】
そして、クレーン船又は陸上に設置されたクレーンで吊り上げた既製部材2をクレーン操作によって移動させ、
図5に示すように、各柱状体1の柱状体頭部1aを柱挿入部7内に挿入させるとともに、吊り枠30の各支持脚部35,35...を柱状体頭部1a上面に載置させる。
【0052】
これにより吊り枠30は、吊り枠本体33が各支持脚部35,35...を介して柱状体1に支持され、クレーンによって吊り持ちされておらずとも、吊り枠30下に吊り持ちされた既製部材2が柱挿入部7に柱状体頭部1aが挿入された状態で安定して保持される。
【0053】
一方、既製部材2と柱状体頭部1aとは、直接的に拘束されていないので、既製部材2の柱状体頭部1aに対する相対位置を自由に調整することができる状態にある。
【0054】
このとき、各柱状体1,1...の打設精度にばらつきがあり、柱状体1頂面高さ位置に誤差がある場合や、予め設定されている柱状体頭部1aに対する既製部材2又は鉄筋9,9...の相対位置関係と実際の位置関係との間に誤差が生じている場合には、既製部材2の高さを調整する必要が生じる。
【0055】
そこで、各支持脚部35,35...の高さ調節用ジャッキ38を操作し、各鉄筋9の位置、既製部材2の平行度等を合わせつつ柱状体1,1...毎に柱状体頭部1aに対する既製部材2の高さを調節する。
【0056】
これにより、柱状体1の打設精度等よって生じる誤差を吸収することができ、柱状体頭部1aに対して既製部材2を最適な位置に容易に調整することができる。
【0057】
そして、各支持脚部35,35の高さ調節が完了したら、既製部材2を構成する主梁部材5,5及び横梁部材6,6を接合支持部材3を介して柱状体頭部1aに固定し、主梁部材5,5及び横梁部材6,6を柱状体1,1間に架設する。
【0058】
次に、必要に応じて既製部材2に埋設された各鉄筋9を柱状体頭部1aに接続し、吊り具34,34...を既製部材2から取り外し、吊り枠30を撤去する。
【0059】
次に、柱挿入部7の下面側開口を底用型枠材によって閉鎖し、その状態で各柱挿入部7内にコンクリート4を打設し、そのコンクリート4を養生固化させることにより、柱状体頭部1aと既製部材2とを接合させ、各柱状体1と既製部材2とを一体化させる。
【0060】
これにより、
図6に示すように、既製部材2を構成する主梁部材5,5と横梁部材6,6とが打設されたコンクリート4を介して一体化されるので、型枠兼用連結具8を取り外すことができ、取り外した型枠兼用連結具8を他に転用することができる。
【0061】
そして、
図4〜
図6に示す一連の作業を必要に応じて繰り返し、柱状体頭部1aに既製部材2からなる梁部を一体化させた構造を成し、その梁部上に現場打ちコンクリート又はプレキャスト造によって床版を形成し桟橋等の構造物が構築される。
【0062】
このように構成された構造物の構築方法では、高さ調整可能な支持脚部35,35を備えた吊り枠30を使用することによって、既製部材2をクレーンで好適に吊り上げられるとともに、支持脚部35,35を柱状体1上に設置した後は、当該吊り枠30が既製部材2を柱状体1に安定した状態で保持させるための支保工的に機能するので、上述した
図4、
図5に示す既製部材2の移動から柱状体頭部1aへの仮支持までの各工程の作業を効率的に行え、また、海象・気象条件の影響も受け難い。
【0063】
また、この構造物の構築方法では、主梁部材5,5と横梁部材6,6とをそれぞれ着脱可能な型枠兼用連結具8を介して連結し、それを吊り枠30で吊り上げるようにしたことによって、別個に製作された複数のプレキャスト部材を一度に柱状体頭部1aに設置でき、効率的に作業を行える。
【0064】
尚、吊り枠本体33の形状は、上述の実施例に限定されず、柱状体頭部1aに設置する既製部材2の形状に合わせ適宜変更することができる。
【0065】
また、上述の実施例では、主梁部材5,5と横梁部材6,6とを別個に形成し、両者を型枠兼用連結具8によって連結した例について説明したが、予め主梁部と横梁部とが一体に形成された既製部材にも適用することができる。
【0066】
更に、既製部材2を柱状体頭部1aに仮支持させる接合支持部材3の態様は、特に限定されず、例えば、上述の実施例のように、柱状体頭部1aに対し所望の位置で固定できるようにしたものであってもよく、従来例の如く既製部材2の柱挿入部7の内周面に鉄骨等の支持部材を突設しておき、その支持部材を柱状体上面部又は柱状体頭部の外周面に固定されたブラケットで支持させるようにしてもよい。
【0067】
尚、上述の実施例では、桟橋を例に説明したが、本発明はこれに限定されず、例えば、橋梁構築やビル等の建築構造物にも適用することができる。
【0068】
また、上述の実施例では、プレキャストコンクリート造の既製部材を例に説明したが、既製部材はこれに限定されず、例えば、鉄板や鉄骨等からなる既製部材であってもよい。