特許第6083681号(P6083681)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6083681
(24)【登録日】2017年2月3日
(45)【発行日】2017年2月22日
(54)【発明の名称】ミスト制御方法
(51)【国際特許分類】
   B01D 53/62 20060101AFI20170213BHJP
   B01D 53/34 20060101ALI20170213BHJP
   B01D 53/58 20060101ALI20170213BHJP
【FI】
   B01D53/62
   B01D53/34ZAB
   B01D53/58
【請求項の数】5
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2014-517785(P2014-517785)
(86)(22)【出願日】2012年7月4日
(65)【公表番号】特表2014-522715(P2014-522715A)
(43)【公表日】2014年9月8日
(86)【国際出願番号】EP2012062997
(87)【国際公開番号】WO2013004731
(87)【国際公開日】20130110
【審査請求日】2015年6月11日
(31)【優先権主張番号】20110974
(32)【優先日】2011年7月5日
(33)【優先権主張国】NO
(73)【特許権者】
【識別番号】513323243
【氏名又は名称】エイカー エンジニアリング アンド テクノロジー エーエス
(74)【代理人】
【識別番号】100114775
【弁理士】
【氏名又は名称】高岡 亮一
(74)【代理人】
【識別番号】100121511
【弁理士】
【氏名又は名称】小田 直
(74)【代理人】
【識別番号】100191086
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 香元
(72)【発明者】
【氏名】ベイド,オット モルテン
(72)【発明者】
【氏名】ウッドハウス,サイモン
(72)【発明者】
【氏名】ゴーセット,オッドヴァー
(72)【発明者】
【氏名】アンデルソン,ヴィベケ
【審査官】 小久保 勝伊
(56)【参考文献】
【文献】 特開平10−202053(JP,A)
【文献】 特開2011−115724(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D 53/14−53/18
B01D 53/34−53/96
C01B 31/00−31/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
含有ガスからCOを捕捉するための方法であって、前記方法は、
アミン系のCO吸収溶媒によって前記CO含有ガス中に存在するCOが吸収されるように、吸収装置(2)のCO吸収部(3)中に導入されるアミン系のCO吸収溶媒とは反対方向に前記CO含有ガスを流すことによって、CO前記CO含有ガスから捕捉する工程と
COを吸収したCO吸収溶媒前記吸収装置(2)の底部で収集する工程と
前記CO吸収溶媒を再生のために回収する工程と
前記CO含有ガスを洗浄水とは反対方向の流れで洗浄する工程
洗浄されたCO含有ガス大気中へ放出する工程と、
COを取り除かれたCO吸収溶媒を60〜85℃で前記CO吸収部(3)の最上部に導入する工程とを含み、
記CO吸収部(3)中に導入されるC吸収溶媒の温度は、前記吸収装置(2)のCO吸収部(3)内の最大温度よりも5℃未満だけことを特徴とする方法。
【請求項2】
前記CO吸収部(3)の吸収域を出る洗浄されたCO含有ガスは、前記洗浄されたCO含有ガスが前記洗浄水とは反対方向の流れで洗浄される2つ以上の下流の洗浄工程を受け、前下流の洗浄工程のうち第1の洗浄工程中へ導入される洗浄水の温度は、前記第1の洗浄工程中に導入される燃焼ガスの湿球温度に等しいかまたはそれよりも高い、請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記COを取り除かれたCO吸収溶媒は、70〜80℃の間の温度で前記吸収部(3)中へ導入される、請求項1〜2のいずれか1項に記載の方法。
【請求項4】
ルカリ気相化合物を除去するために、前記洗浄する工程を経たガスを、酸洗浄部(40)中の水溶性酸溶液とは反対方向に流程を更に含む、請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記アルカリ気相化合物は揮発性アミンおよびアンモニアである、請求項4に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アミン系CO吸収装置からのアミンおよびアミン分解生成物の放出の減少に関する。より詳細には、本発明は吸収装置のアミンおよびアミン分解生成物を含むミストの形成の制御に関する。
【背景技術】
【0002】
COのための典型的な吸収装置は、COを吸収/除去する排ガスが接触表面において、アミンなどの水溶性CO吸収剤と逆流接触される塔である。通常、接触領域は、吸収材とガスとの間の接触表面を増やすためにCOの吸収部を含む。
【0003】
吸収されたCOを含む吸収剤は接触表面下に収集され、CO含有量が低減された排ガスは吸収装置の先端から放出される。
【0004】
通常、アミン系CO吸収装置は、CO吸収接触域より上に、1つ以上の水洗浄部を備える。水洗浄の主な目的は、大気中へのアミンの放出を最小限にするために、アミン蒸気を吸収することである。別の目的は、吸収装置の全体にわたる水収支の要件を満たすために、ガスおよび凝縮水を冷却することである。燃焼ガスから凝縮して得た水が洗浄水の構成となる。水洗浄システム中の過剰水は取り出され、下部のアミン部に輸送され、この構成および流れを抜き取ることにより、水洗浄液中のアミン含有量が低減するという効果がある。
【0005】
通常、液体の再利用による水洗浄充填部の上部で平衡に近づくことが想定される。つまり、ガスが、液体アミン蒸気圧に相当するアミン分圧を含み、これは再び液体温度、アミン濃度、CO充填およびPHによって決定される。従って、低温度および低アミン濃度がアミン蒸気圧を減少させるので、大気中へのアミン漏れを最小限にするために、高い液体交換率と共に低温で行う水洗浄が好ましい。
【0006】
1992年9月9日の欧州特許出願公開第0502596 A号(三菱重工業株式会社)は、COリーン排ガスが洗浄および冷却され、吸収装置を出るガスの温度が吸収装置中に導入されるガスの温度と実質的に等しいCO捕捉装置のための吸収装置に関する。洗浄はアミン放出を低減するために行われる。装置内の水の損失または蓄積を避けるために温度が制御される。
【0007】
2003年6月3日の米国特許公開第2003/045756 A号(MIMURA TOMIO)は、吸収および洗浄部の間で、ならびに洗浄部との間でアミン放出を低減するためにデミスタが設けられているCO捕捉装置内の吸収装置に関する。更に、ガスを洗浄および冷却することによってガスからアミン蒸気が除去される。
【0008】
広範囲な放出測定が、石炭焚きボイラからの燃焼ガスを処理するパイロットを実施することにより、出願人によって行われた。30wt%MEAを含む各種のCO吸収溶媒が試験された。パイロットは、上部を専用のキャンペーンにおける酸洗浄として利用することができる2つの水洗浄部を含む。酸洗浄剤は、2011年6月22日の欧州特許出願公開第2335802 A号(三菱重工業株式会社)および2010年9月16日の国際公開第2010/102877 A号(AKER CLEAN CARBON AS)に記載されているように、気相アルカリ性化合物の捕捉に有効であることが実証されている。図1(従来技術)は、パイロットの簡略化したスキームを示す。ガスのオンライン分析(FTIR)およびオフラインサンプリングの両方が行われた。
【0009】
意外にも、一定の期間で、アンモニアおよび揮発性アルキルアミンの放出を除去する吸収装置最上部で酸洗浄を行った場合でも、アミンの高い放出が検出された。アミン放出は、水洗浄気液平衡の仮定では説明できない。この放出はミストの形態であり、MEAなどのより親水溶性の高い化合物はミスト中に非常に蓄積される傾向があることが見出された。FTIRガス分析計は、加熱されたサンプリング管(180℃で運転)中のミストをサンプリングして蒸発させ、蒸気としての全アミン含有量を測定する。ミストの前駆体は吸収装置に入る燃焼ガス中のフライアッシュ、煤または塩の超固体微粒子であることが見出された。
【0010】
別の試験を、燃焼ガス源がプロパンバーナーであるより小規模なパイロットで行った。通常運転中は、パイロットからの放出はFTIRによって検出されなかった。次いで、余剰燃料を燃焼させるためにバーナーを作動させると、COが増加し煤が形成される。ミスト核形成種として機能する煤粒子を示す高アミン放出および可視ミストプルームが観察された。
【0011】
これら微粒子は主に、水飽和ガスが急速に冷却される吸収装置内部の領域内の水分凝縮のための核生成として機能する。このようなミスト粒子は、形成されると、周囲のガス相からアミンを吸収する。MEAなどのアミン媒体を伴うキャンペーン中の排出測定は、2つの水洗浄部を備える吸収装置システムにおいて、ミスト媒介性放出が全体的なアミン放出の主要な一因であることを示した。一方、アンモニア(これは例えばMEAなどのアミンの分解生成物である)の放出はミスト放出に関連しない。これは、アンモニアの溶解度が低く、従ってミスト液滴中の蓄積の低下に起因する。
【0012】
液滴サイズの小さなミストは、形成されると、ウェットスクラバーおよび従来のデミスタで除去することは非常に困難である。ミスト液滴は、0.1〜10μm直径のサイズ範囲内にあり、ミストはパイロット吸収装置の最上部から目に見えるホワイトプルームを形成する。
【0013】
繊維型デミスタによるミスト除去は、他の業界で周知である。例えば、このデミスタを介した空塔速度は非常に低くなければならず、圧力降下は大きく、火力発電装置燃焼ガス洗浄などの大量のガスの用途では、このタイプのデミスタの吸着力が一層低下する。湿式電気集塵装置(ESP)もミストおよび微細粉塵の除去に効率的であることが示されているが、この装置は高額の投資および運転コストを要する。
【0014】
ミストの形成は、CO吸収装置に排ガスを導入する前に、導入ガスからの微粒子及び超微粒子の含有量を除去または低減することによっても低減できることを出願人は経験している。ESPおよび湿式排煙脱硫(FGD)などの微粒子及び超微粒子を除去するための従来のプロセスは、サブミクロン範囲の粒子を捕捉する際に能率が低い。湿式ESPは、ミストの除去または減少のため、サブミクロン粒子を低減または除去するために使用され得る。上述したように、湿式ESPのための投資および運転コストは高額である。
【0015】
従来技術に係る解決策は、ガスの洗浄後にミストを低減するには効率的ではない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
本発明が解決しようとする課題は、アミン系炭素捕捉装置からアミンまたはその分解生成物の放出をなくすか、または実質的には低減することである。より具体的には、本発明は、COリーン排ガスと共に周囲に放出されるミストの形成によって引き起こされるアミンの放出の低減に焦点をおく。
【0017】
従って、CO捕捉のためのアミン系装置の吸収装置からのミストまたは液滴、最も具体的には、高濃度のアミンまたはその分解生成物を含むミストの放出の削減を可能にする代替の解決策が求められている。
【0018】
炭素質燃料を燃焼させる火力発電装置からの排ガスなどのCO含有ガス、または任意の他のCO含有工業ガス任意の他のCO含有工業ガスからCOを捕捉するための方法であって、COリッチ溶媒を形成するためにCO吸収溶媒によってガス中のCOが吸収されるように、吸収部のCO吸収部中に導入されるCO吸収溶媒とは反対方向にガスを流すことによって、COがガスから捕捉され、COリッチ溶媒は吸収塔の底部で収集されて、再生のために回収され、1つ以上の洗浄工程を受けた後、処理された排ガスが大気中へ放出され、CO吸収部に導入されたCO吸収溶媒の温度は吸収部の吸収区部内の最高温度よりも低く、5℃未満である。ミストは飽和ガス混合物の冷却中に主に発生し、飽和核を含む飽和ガス混合物の急速な冷却中に最も顕著である。冷却を回避するかまたは少なくとも吸収部の吸収域の上方へ流れるガス混合物の急激な冷却を回避することで、吸収部域に形成されるミストの形成を回避するかまたは実質的に低減する。任意の形成されるミストは、ガス混合物中の凝縮流体の組成物を反映する組成物を有するであろう。従って、吸収域で形成される任意のミストは高含有のアミンまたはその分解生成物を有するであろう。伝統的に吸収部の吸収部門は吸収域中への冷CO溶媒の導入によって冷却される。冷溶媒の温度は典型的には30℃かまたはそれ以上で、吸収部の吸収域中の最も高い温度よりも低く、冷却は吸収域の最上部で比較的急激である。吸収域中の含有量の冷却を低減または回避することは、域におけるミスト形成を実質的に低減するかまたは回避することになる。
【0019】
一実施形態によれば、CO吸収部中へ導入されたCO溶媒の温度は、実質的に吸収装置の吸収部内の最大温度以上である。吸収域内の最大温度と同じ温度またはそれよりも高い温度で溶媒を導入することによって吸収域で冷却が生じず、そのためその中でミストは形成されない。
【0020】
一実施形態によれば、湿球温度未満でのガスの冷却を避け、それによって第1の洗浄工程内でのミスト形成を回避するために、吸収域を出る処理されたガスは、ガスが洗浄される2つ以上の下流の洗浄工程を受け、ガスは水とは反対方向の流れで洗浄され、ここでは、第1の洗浄工程中へ導入される洗浄水は、洗浄工程中に導入される燃焼ガスの湿球温度以上の温度を有し、この燃焼ガスは洗浄工程中へ導入される。
【0021】
一実施形態によれば、リーン吸収剤が60〜85℃で吸収部の最上部に導入されるように、吸収装置内の温度は制御される。
【0022】
特定の実施形態によれば、吸収域中へ導入される吸収剤の温度は70〜80℃の間である。
【0023】
一実施形態によれば、酸洗浄部は、排ガスからの揮発性アミンおよびアンモニアなどのアルカリ気相化合物を除去するために洗浄工程の下流に設けられる。アミンおよびその主分解生成物は基本的な種類であり、まだ処理排ガス中に存在する気相アミンまたはその分解産物は、酸洗浄によって効果的に除去されるかまたは実質的に低減される。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】従来の炭素捕捉装置の原理略図である。
図2】本発明の一実施形態を示す原理略図である。
図3】本発明の代替の実施形態を示す原理略図である。
図4】本発明の代替の実施形態を示す原理略図である。
図5】吸収装置のCO吸収部内のシミュレートされた温度特性を示す図である。
【0025】
図1は、従来技術に係る炭素捕捉装置を示す。炭素質燃料を燃焼させる発電装置からの排ガスなどのCO含有ガスは、排ガス入口1を介して吸収装置2中へ導入される。吸収装置2では、排ガスをCO吸収部3内の水溶性吸収剤とは反対方向に流させる。1つ以上のアミン水溶液である水溶性吸収剤はリーン吸収剤管4を介してCO吸収部3の最上部で導入される。
【0026】
吸収されたCOを有するリッチ吸収剤は吸収装置の底部で収集され、リッチ吸収剤管5を介して回収される。次いで、CO吸収部3を出るCO減損燃焼ガスは、燃焼ガスを冷却し燃焼ガスと共に運ばれる吸収剤からの大量のアミンおよび分解生成物を除去または低減するために1つ以上の洗浄域6、7において洗浄される。冷却および洗浄された排ガスは、その後CO減損燃焼ガス管8を介して吸収装置から回収され、大気中に放出される。
【0027】
洗浄水再循環管10、10′を介して再循環用の洗浄水を収集するために、コレクショントレー9、9′はそれぞれの洗浄域6、7より下に設けられ、先の洗浄域6または接触域3より下で充填物に対して抜取管11、11′を通って過剰液用に取り出されるべきである。洗浄水循環冷却器12、12′は洗浄水を冷却するために再循環管10、10′内に設けられる。
【0028】
リッチ吸収剤管5を介して回収されるCOリッチ吸収剤は、リッチ吸収剤からCOを放出するための再生塔20中へ導入される前に、クロス熱交換器13内の管4のリーン吸収剤に対して熱される。COリッチ吸収剤を、充填物21の最上部上の再生塔中に導入し、充填物21中のCOおよび蒸気に対して反対方向に流させる。
【0029】
再生された吸収剤は、再生塔20の底部で収集され、リーン吸収剤回収管22を介してその場所から回収される。管22中のリーン吸収剤はリボイラ24中へ導入されるリボイラ管23に分割されその際、蒸気管25および、上で記載したように吸収装置へと戻されるリーン吸収剤の再利用のためのリーン吸収剤管4を介して再生塔中へ導入される蒸気を生成するために、COリーン吸収剤は熱せられる。
【0030】
管4中のCOリーン吸収剤はクロス熱交換機13内の管5におけるリッチ吸収剤に対して冷却され、さらに吸収装置2中へ導入される前に冷却器14内で冷却される。
【0031】
蒸気と共に吸収剤を除去するCOは、充填物21より上の洗浄域26内の洗浄水とは反対方向の流れによって洗浄される。洗浄水は収集器27内の洗浄域26より下に収集され、洗浄水循環管28を介して再循環される。
【0032】
循環およびまたは液圧を増加するために必要なPでマークされたポンプを設ける。
【0033】
COの混合物および蒸気はCO管29を介して再生塔から回収され、冷却器30によって冷却されCO輸送管32を介したさらなる処理のためにCOが回収される前に、凝縮水はストリッパオーバーヘッドレシーバー31中のCOから分離される。凝縮水は凝縮管33を介して回収され、周囲中へ放出される前にCOリーン燃焼ガスを洗浄するための洗浄水などの水が必要とされる装置におけるプロセスに対して再循環される。
【0034】
溶媒が充填層3のCOと反応し、発熱反応のために熱が放出される。ベル型の温度特性(温度バルジ)はCO吸収部3内で、通常65〜75℃前後の最大温度と共に観察される。大量の水は溶媒から蒸発させられ、放出された蒸気は、冷リーンアミンによりある程度まで冷却される吸収層の最上部へ燃焼ガスに従う。ガスは更に水洗浄で冷却される。
【0035】
本発明者らは、ミストが急峻な温度効果または急冷を特徴とするエリア内の核生成種を含む水飽和ガスにおいて形成されることを発見した。急冷が発生するエリアを回避するかまたは、急冷がアミンまたはその分解生成物の低分圧を伴うエリアのみで発生することを確認することが従って求められる。炭素捕捉装置実行中の異なる関心点での典型的な温度は1〜10によって示される。
【0036】
当装置の状態のための典型的な温度は、以下の表1に示される。
【表1】
【0037】
排ガスの温度は、管4を介して冷却された(典型的には40℃)リーンアミンの導入によってCO吸収部3の上部で低減(急冷)され、冷却された洗浄水の導入によって洗浄部6および7でさらに冷却されることを表1は明らかに示す。急冷ミストを含むそれぞれの工程のために、特にミスト核生成種がガスにおいて利用可能な場合、ミストは形成され得る。
【0038】
ミスト中のアミンおよびその分解生成物の含有量は、ミスト形成の部位でのアミンおよびその分解生成物の蒸気圧と強く関連する。高濃度のアミンおよびその分解生成物を有するミスト形成をもたらす導入リーン吸収剤によって、CO吸収部内の上部へ流れる水飽和ガスが急冷される吸収装置のCO吸収部3の上部において、アミンおよびその分解生成物の分圧は最も高い。
【0039】
アミンおよびその分解生成物の分圧は、CO吸収域3内よりも低い場合でも、第1の洗浄域6においてまだ比較的高い。従って洗浄域6内に形成されたミストはアミンおよびその分解生成物の有意な量を蓄積する。しかしながら、問題は、一時形成されたミスト液滴が、後の洗浄工程または従来デミスタによって停止されないことである。
【0040】
本発明に係るこの問題は、吸収装置の上方へ流れるガスの急冷を回避するか、または少なくとも接触域3もしくは第1の洗浄域6中のガスの急冷を回避することによって解決される。
【0041】
図2〜6は、周囲へのアミンまたはその分解産物の放出を実質的に低減するために、高含有のアミンまたはその分解産物を有するミストの形成を実質的に低減する代替の方法である。図2〜6は、上述の従来技術の解決策の特徴または動作状況とは異なる特徴または動作状況に関してのみ記載される。
【0042】
図2は本発明の第1の実施形態を示し、リーン吸収剤冷却剤が除去されリーン吸収剤を高温度で吸収装置へ送り、この温度が70〜80℃の間であるように典型的には60〜85℃である。水洗浄6を、外部冷却を行わずに動作し、この目的は、水洗浄部6内のガスの冷却および水の凝縮を回避することである。ミストが水洗浄6内に形成されていないことを確認するために、この第1の洗浄工程中の温度を第1の洗浄工程に入る燃焼ガスの湿球温度以上の温度で保持し続ける必要がある。湿球温度とは、水が凝縮し始める温度である。
【0043】
洗浄水を冷却しリッチアミンを予熱するために、熱交換器15内の第2の洗浄ループ10′中の洗浄水に対して、リッチ吸収剤管5を介して回収されるリッチ吸収剤が熱交換される。図1を参照して記載されるように、リッチアミンは、その後さらに熱交換器13内で加熱される。
【0044】
図2に係る構成は、CO吸収部3および第1の洗浄部6内のミスト形成のリスクに対応する急冷を低減するかまたは回避するために吸収装置内の温度調整を可能にする。この実施形態の代表的な走行温度を表2に示す。
【表2】
【0045】
第2の洗浄部7まで、吸収装置へ上向きに流れる排ガスの温度が増加するか、またはガスが吸収装置内で高くなるにつれ安定して保たれる。第2の洗浄部7では、約40℃の処理排ガスをもたらし、従って吸収装置にわたる全体的な水収支を維持するために、ガスを約40℃の冷洗浄水とは反対方向に流させることは図2から明らかである。
【0046】
吸収装置の上部へ流れる排ガスの冷却を回避することにより、ガスの過飽和が回避される。ミスト形成は、凝結核と水過飽和ガスとの両者を必要とする。従って、たとえ(サブ)ミクロンサイズ粒子がガス中に存在しても、CO吸収部3および洗浄部6内に、ミストが全く形成されないか、形成されても僅かである。ガスが凝結核を含み、例えば(サブ)ミクロンサイズの粒子の形態での場合、ミストは第2の洗浄部に形成する可能性が高い。しかしながら、第2の洗浄部内のガス中のアミンおよびその分解生成物の蒸気圧が低いため、第2の洗浄部内のミスト形成は環境問題を引き起こさない。ミスト形成におけるアミンおよびその分解生成物の濃度は従って微々たるものである。
【0047】
図示された第1のおよび第2の洗浄工程との間に1つ以上の洗浄水工程を導入することによって、アミンおよびその分解生成物の量はなお更に低減され得ることを当業者は理解するであろう。
【0048】
図3は、図2の実施形態と密接に関連する代替の実施形態を示す。主な違いは、アミン、アンモニアおよびアミンの他のガス状分解生成物などの処理排ガス中のガス状アルカリ性種の含有量を除去するかまたは実質的に低減するために、吸収装置の最上部に酸洗浄部40を導入することである。
【0049】
第2の洗浄部を出るCOが排出された排ガスを、酸洗浄部40中の酸水溶液とは反対方向に流させる。酸洗浄溶液は、ポンプPにより酸洗浄ループ41で再循環される。構造管43は、水の損失を補うため、および酸洗浄水のpHを調整する酸を添加するために設けられる。抜取管44は、酸洗浄循環ループ中のアンモニウムおよびアミン塩の安定した濃度を維持するために、酸洗浄抽気を確立するように設けられる。抽気は好ましくはアミン回収器へ送られる。
【0050】
酸洗浄は主に、例えばアンモニアなどの排ガス中の任意のガス状アルカリ性種の改善された除去を確実にするために添加される。
【0051】
表3は図3にかかる実施形態のための典型的な温度を示す。
【表3】
【0052】
処理排ガスの排出における任意のガス状アルカリ性種を除去するかまたは実質的に低減するために、本明細書に記載の他の代替の実施形態のいずれかで酸洗浄が添加され得ることを当業者は理解するであろう。
【0053】
図4は代替の実施形態に関し、これは図2の実施形態とも密接に関連する。吸収装置を介した温度勾配は主として、図2の実施形態の温度勾配に対応する。図2および4の実施形態間の主な違いは、洗浄部下部での洗浄水循環が図4の実施形態では排除されることである。
【0054】
収集トレーからまたは洗浄充填物それ自体からさえ洗浄水の直接輸送が可能であることを示すために、抜取管11、11′が矢印によって図4に示されている。この部内で排ガスの冷却によって水洗浄部7上部で起きる高水位凝縮率は、一旦最下の洗浄部の動作を介して液体を可能にするのに十分である。洗浄部6最下部のガス比に対する液体は適切な構造充填物を濡らすために十分であろう。
【0055】
表4は、図4にかかる実施形態の典型的な温度を示す。
【表4】
【0056】
正確な構成、ならびに任意の抜取管11、11′を設ける場合も、または直接流す場合も、いずれも可能な選択肢であることを当業者は理解するであろう。
【0057】
トレーふるいまたはバブルベッド配置は、貫流型液体流を備えるこの出願のための充填層配置に対し可能な代替案であることを当業者は理解するであろう。
【実施例】
【0058】
図2に係るパイロットプラントを30wt%で運転した。吸収装置中への燃焼ガスは38℃で水飽和され、13vol%のCOを含む。リボイラは120℃かつ1.9baraで行うと、0.18molCO/molMEAのリーン充填物になる。リーンアミンを75℃で供給し、90%の除去効率を12メートルの高さの充填吸収層において達成した。下部の水洗浄は断熱的に保たれ、つまり外部冷却が適用されなかったことを意味する。40℃の出口ガス温度を得るために、すべての燃焼ガス冷却は、上部の水洗浄で適用された。38℃の吸収装置入口温度および40℃の吸収装置出口温度で、吸収装置全体の水収支はニュートラルに近い。
【0059】
水洗浄の下部の域、2つの水洗浄部の間および水洗浄部の上部の上からの燃焼ガスはiso学的に抽出された。MEA放出測定は以下を示す。
・アミン部より上:2060mg/Nm,
・水洗浄部間:8mg/Nm
・水洗浄上部より上:0.05mg/NmMEA検出限界未満
【0060】
75℃の温かさで運転する場合であっても、下部洗浄は気相アミンを99%まで吸収する。除去率の高さは、液体交換率の高さ、従って低アミン濃度に起因する。
【0061】
CO捕捉効率における高リーンアミン抽気温度の影響が調査された。90%の捕捉効率および40℃のリーンアミン供給温度を伴ってパイロットは安定して動作された。リーン充填温度を75℃まで上昇させた一方で、リーン充填および溶媒循環を一定に保った。捕捉率の変化は観察されなかった。従ってより高温のリーンアミン抽気温度を伴う動作は、CO捕捉性能において悪影響を有するようには見えない。吸収層の超上部から以外は、吸収装置層内の温度特性は、著しい変化はなかった。しかしながら、先に記載したように、40℃のリーンアミン抽気温度と共に実行する場合は、ミストの形態でのMEA放出は時々高くなる。(それぞれmg/Nm
【0062】
吸収装置層内の温度特性のシミュレーション計算は、図1に示される従来技術の解決策および図2に示される本発明に係る第1の実施形態の両方において行われた。シミュレーション結果を図に示す。
【0063】
に示すように、図2の実施形態の吸収装置における温度特性は、吸収装置CO吸収部3の底部から増加し、上昇する。シミュレーションは、吸収装置CO吸収部の最上部に約75℃の熱い吸収剤を導入することがミストの形成を促進する条件を除去することを確認する。従って、本発明に係るCO捕捉装置の運転は、捕捉装置の吸収装置中のミストを含むアミンの形成をなくすか、または実質的には低減するであろうことが想定される
【0064】
リーンアミンの導入のための温度は、吸収装置およびCO吸収部、ならびに当該吸収溶媒の性質に応じて変化し得る。リーン溶媒の導入のための最適温度は、当該充填装置内の温度特性をシミュレートすることによって見出され得る。リーン溶媒のための最適温度は、ここではシミュレーションに係るCO吸収部内の最大温度であるかまたは、わずかに低い上記最大温度である。ミスト形成を生じることなく、3未満、好ましくは2未満などの、例えば5未満のわずかな温度低下が許容され得ると想定される。従って、温度がガス流の方向で増大するかまたは温度が実質的に一定であるという表現は、小さな温度変化または温度低下が起こり得る状況を含むことが意図される。
図1
図2
図3
図4
図5