(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載の技術では、吐出側開口部から吐出されたオイルが、ポンプボディの外部に設けられたポンプ吐出側圧力室に流通される。このため、省スペース化及び軽量化の観点から1台の電動オイルポンプでオイルの供給を行っているにも拘らず、複数の油路
を設けているので、外形サイズが大きくなってしまう。このため、配置の自由度が小さくなり、レイアウトが制限される。また、質量が増加する。
【0006】
本発明の目的は、上記問題に鑑み、省スペース化及び軽量化を実現可能な電動オイルポンプを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するための本発明に係る電動オイルポンプの特徴構成は、モータにより駆動回転されるロータ、及び、前記ロータが収容されるポンプ室と、前記ロータの回転に応じて前記ポンプ室にオイルを吸入する吸入ポートと、前記ロータの回転に応じて前記ポンプ室から前記オイルを吐出する吐出ポートと、前記吐出ポートに設けられた第1連通孔と連通すると共に、前記吐出ポートから吐出されたオイルが流通し前記吐出ポートより断面積が縮小される第1吐出路と、前記吐出ポートに前記第1連通孔とは別体で設けられた第2連通孔と連通すると共に、前記吐出ポートから吐出されたオイルが流通し前記吐出ポートより断面積が縮小される第2吐出路とが形成されたポンプボディを備え
、前記吐出ポートから吐出されたオイルの圧力によって開閉する第1チェックバルブが前記第1吐出路に設けられ、前記吐出ポートから吐出されたオイルの圧力によって開閉する第2チェックバルブが前記第2吐出路に設けられており、前記第2吐出路は、前記第2チェックバルブの下流側に前記第1吐出路への流量と前記第2吐出路への流量を分配するオリフィスが設けられている点にある。
【0008】
このような特徴構成とすれば、第1吐出路と第2吐出路とが吐出ポートから別体でポンプボディ内に設けられるので、第1吐出路及び第2吐出路の夫々が接続される外部配管との接続部までの配管をポンプボディ外に設ける必要がない。したがって、コンパクトに構成することができるので、省スペース化及び軽量化された電動オイルポンプを実現できる。また、第1吐出路と第2吐出路とが吐出ポートから別体でポンプボディ内に設けられるので、電動オイルポンプの周囲にある機器等と干渉することもない。したがって、電動オイルポンプを配置する場所の自由度や第1吐出路及び第2吐出路の配置の自由度を向上させることができる。また、このような構成とすれば、ポンプボディ内で第1吐出路と第2吐出路とを分岐させることがなく、電動オイルポンプによるオイルの供給先が設けられている方向に応じて第1吐出路及び第2吐出路の夫々を配置することができる。このため、第1吐出路及び第2吐出路を供給先の方向に応じて最短経路で構成することができるので、加工をし易くすることができる。したがって、製造コストを低減することが可能となる。
また、このような構成とすれば、第1吐出路及び第2吐出路よりも下流側の圧力が第1吐出路及び第2吐出路の圧力よりも高くなった場合であっても、当該下流側から電動オイルポンプにオイルが流入してくることを防止できる。したがって、電動オイルポンプの運転停止中であっても、外部からオイルが流入することがないので、電動オイルポンプを保護できる。また、チェックバルブが夫々の吐出路内に設けられているので、電動オイルポンプを有する油圧システム全体をコンパクトに構成することができる。したがって、配置等の自由度を向上させることが可能となる。さらに、このような構成とすれば、オリフィスをポンプボディ内に設けることができるので、電動オイルポンプを有する油圧システムをコンパクトに構成することができる。したがって、配置等の自由度を向上させることが可能となる。
【0009】
【0010】
【0011】
電動オイルポンプの特徴構成は、モータにより駆動回転されるロータ、及び、前記ロータが収容されるポンプ室と、前記ロータの回転に応じて前記ポンプ室にオイルを吸入する吸入ポートと、前記ロータの回転に応じて前記ポンプ室から前記オイルを吐出する吐出ポートと、前記吐出ポートに設けられた第1連通孔と連通すると共に、前記吐出ポートから吐出されたオイルが流通し前記吐出ポートより断面積が縮小される第1吐出路と、前記吐出ポートに前記第1連通孔とは別体で設けられた第2連通孔と連通すると共に、前記吐出ポートから吐出されたオイルが流通し前記吐出ポートより断面積が縮小される第2吐出路とが形成されたポンプボディを備え、前記吐出ポートから吐出されたオイルの圧力によって開閉する第1チェックバルブが前記第1吐出路に設けられ、前記吐出ポートから吐出されたオイルの圧力によって開閉する第2チェックバルブが前記第2吐出路に設けられて
おり、前記第1チェックバルブは前記ポンプボディに形成された開口孔から前記第1吐出路内に進入する固定ネジで固定され、前記固定ネジの胴部の外周面と前記第1吐出路の内周面との間に筒状の外側油路が形成され、前記胴部の径方向内側に前記胴部に形成した連通部を介して前記外側油路と連通する内側油路が形成されている点にある。
【0012】
このような特徴構成とすれば、第1吐出路と第2吐出路とが吐出ポートから別体でポンプボディ内に設けられるので、第1吐出路及び第2吐出路の夫々が接続される外部配管との接続部までの配管をポンプボディ外に設ける必要がない。したがって、コンパクトに構成することができるので、省スペース化及び軽量化された電動オイルポンプを実現できる。また、第1吐出路と第2吐出路とが吐出ポートから別体でポンプボディ内に設けられるので、電動オイルポンプの周囲にある機器等と干渉することもない。したがって、電動オイルポンプを配置する場所の自由度や第1吐出路及び第2吐出路の配置の自由度を向上させることができる。また、このような構成とすれば、ポンプボディ内で第1吐出路と第2吐出路とを分岐させることがなく、電動オイルポンプによるオイルの供給先が設けられている方向に応じて第1吐出路及び第2吐出路の夫々を配置することができる。このため、第1吐出路及び第2吐出路を供給先の方向に応じて最短経路で構成することができるので、加工をし易くすることができる。したがって、製造コストを低減することが可能となる。また、このような構成とすれば、第1吐出路及び第2吐出路よりも下流側の圧力が第1吐出路及び第2吐出路の圧力よりも高くなった場合であっても、当該下流側から電動オイルポンプにオイルが流入してくることを防止できる。したがって、電動オイルポンプの運転停止中であっても、外部からオイルが流入することがないので、電動オイルポンプを保護できる。また、チェックバルブが夫々の吐出路内に設けられているので、電動オイルポンプを有する油圧システム全体をコンパクトに構成することができる。したがって、配置等の自由度を向上させることが可能となる。
さらに、このような構成とすれば、第1チェックバルブを固定する固定ネジを油路に利用することができるので、電動オイルポンプをコンパクトに構成することができる。したがって、配置等の自由度を向上させることが可能となる。
【0013】
また、前記第1吐出路及び前記第2吐出路が、前記ポンプボディにおける前記オイルの供給先との接合面まで延出してあると好適である。
【0014】
このような構成とすれば、吐出ポートから吐出されたオイルが、第1吐出路及び第2吐出路を流通し、直接、複数の箇所への油圧供給が可能となる。
【0015】
また、前記第1チェックバルブは前記ポンプボディに形成された開口孔から前記第1吐出路内に進入する固定ネジで固定され、前記固定ネジの胴部の外周面と前記第1吐出路の内周面との間に筒状の外側油路が形成され、前記胴部の径方向内側に前記胴部に形成した連通部を介して前記外側油路と連通する内側油路が形成されていると好適である。
【0016】
このような構成とすれば、第1チェックバルブを固定する固定ネジを油路に利用することができるので、電動オイルポンプをコンパクトに構成することができる。したがって、配置等の自由度を向上させることが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明に係る電動オイルポンプは、油圧により駆動される油圧駆動装置への油圧の供給、及び機構部品への潤滑オイルの供給が行うことが可能に構成される。以下、本実施形態の電動オイルポンプ1について説明する。本実施形態では、電動オイルポンプ1が、例えばハイブリッド車両に搭載された自動変速機に備えられている場合の例を挙げて説明する。
図1は、このような車両に備えられた電動オイルポンプ1が組み込まれた油圧システム100の構成を模式的に示した図である。
【0019】
図1に示されるように、油圧システム100は、電動オイルポンプ1、エンジン2、ギアユニット3、メカオイルポンプ4、オイルパン5、前進クラッチ6、油圧回路8、逆止弁9を備えて構成される。エンジン2は車両の動力源であり、例えばガソリン等の燃料を燃焼させて回転動力を出力する。エンジン2の回転動力は自動変速機Aに伝達される。駆動用モータMはEV走行時の動力源であり、例えばバッテリに蓄えられた電力により回転動力を出力する。駆動用モータMの回転動力はタイヤ7に伝達される。
【0020】
ギアユニット3はギヤ比が異なる複数のギヤ段を有して構成され、車両の走行状態(例えば車両の走行速度やアクセルの踏み具合)に応じて自動的にギヤ段が変更される。エンジン2の回転動力をトルクコンバータ及び前進クラッチ6を介してギヤ段に伝達し、また、ギヤ段の変更が行われる。ギアユニット3の出力は出力軸3Aを介して車両のタイヤ7のうち車両の前部に設けられるタイヤ7に伝達される。
【0021】
メカオイルポンプ4は、エンジン2の回転動力により回転駆動され、オイルパン5に貯留されるオイルを、吐出路4Aを介してギアユニット3に潤滑油として供給する。また、吐出路4Bを介してその他の前進クラッチ6(車両発進時に結合されるクラッチ)に対して係合油圧を供給する。このような構成によりエンジン2の運転中には、ギアユニット3及び前進クラッチ6に対してオイルを供給することが可能となる。
【0022】
一方、上述のように本油圧システム100が搭載される車両はEV走行が可能である。このため、信号等により停車した場合や、必要駆動が駆動用モータMで供給できる場合にはエンジン2の運転が停止され、メカオイルポンプ4も停止される。したがって、ギアユニット3や前進クラッチ6に対するオイルの供給も停止される。その結果、前進クラッチ6への油圧の供給も停止されるので、前進クラッチ6は完全に離間した状態となる。仮に、このような状態で、車両が走行を再開する場合には、エンジン2が運転を再開し、メカオイルポンプ4を回転した後、前進クラッチ6に油圧を供給する必要がある。係る場合、前進クラッチ6が完全に離間した状態となるので前進クラッチ6が係合するまでに時間を要し、また、係合を急ぐあまり係合時のショックが大きくなる可能性がある。
【0023】
そこで、本発明に係る電動オイルポンプ1は、アイドリングストップが解除された場合に前進クラッチ6を係合するまでの時間を短縮すると共に、係合時のショックが大きくならないように、アイドリングストップ時におけるエンジン2の停止中に前進クラッチ6に対して補助的にオイルを供給し、前進クラッチ6を係合状態で保持するように構成されている。また、電動走行時においてギアユニット3に潤滑油としてのオイルを供給する。以下、電動オイルポンプ1について図面を用いて説明する。
【0024】
図2は、電動オイルポンプ1を模式的に示した図である。ここで、本実施形態に係る電動オイルポンプ1は、公知のトロコイドポンプから構成される。よって、以下では、電動オイルポンプ1がトロコイドポンプであるとして説明する。
図2に示されるように、本実施形態に係る電動オイルポンプ1は、ロータ10及びポンプボディ20を備えて構成される。
【0025】
ロータ10は、モータにより駆動回転される。モータはエンジン2のアイドリングストップ中において、バッテリから供給される電気エネルギーにより回転され、モータから出力される回転動力はロータ10の径方向中央部に設けられるロータ軸11に入力される。ロータ10は、このロータ軸11の回転に伴い駆動回転される。ロータ10の外周面に複数の外歯10Aを有し、ロータ軸11の軸心を中心に回転する。ロータ10の外歯10Aはトロコイド曲線やサイクロイド曲線等に従う歯面形状に構成されている。
【0026】
ロータ10の径方向外側にはアウターロータ12が設けられる。アウターロータ12は、ロータ10の外歯10Aに噛み合う複数の内歯12Aを有した環状で形成され、ロータ10の回転中心に対して偏心した回転中心で回転する。アウターロータ12の内歯12Aは、ロータ10の外歯10Aより1つ多い歯数となるように構成され、アウターロータ12が回転した際に、ロータ10の外歯10Aに接触する歯面形状に成形されている。したがって、アウターロータ12の径方向内側には所定の空間が形成され、当該空間にロータ10が収容される。本実施形態では、当該空間が本発明に係るポンプ室30に相当する。このようなポンプ室30は、ポンプボディ20に形成される。また、ロータ10をポンプ室30に収容することにより、外歯10Aと内歯12Aとの間に所定の隙間Qが形成される。
【0027】
また、ポンプボディ20には、吸入ポート40と吐出ポート50とが形成される。吸入ポート40とは、ポンプボディ20の壁部20Aに形成された開口部である。具体的には、吸入ポート40は、ポンプボディ20の内壁のうち、アウターロータ12の軸方向端面に対向する壁部20Aに設けられ、アウターロータ12の径方向に沿って設けられる。このような吸入ポート40からは、ロータ10の回転に応じてポンプ室30にオイルが吸入される。上述のように、外歯10Aと内歯12Aとの間とは上述の所定の隙間Qが形成され、ロータ10の回転に応じて当該隙間Qにオイルが吸入される。
【0028】
吸入ポート40には、オイルパン5からのオイルが流通する吸入通路41が連通する。本実施形態では、このような吸入通路41もポンプボディ20に形成される。
【0029】
吐出ポート50も、吸入ポート40と同様に、ポンプボディ20の壁部20Aに形成された開口部からなる。具体的には、吐出ポート50は、ポンプボディ20の内壁のうち、アウターロータ12の軸方向端面に対向する壁部20Aに設けられ、アウターロータ12の径方向に沿って設けられる。本実施形態では、吐出ポート50は、吸入ポート40が設けられる側の壁部20Aに設けられる。すなわち、吸入ポート40と吐出ポート50とは、同じ方向を向く壁部20Aに設けられる。また、吐出ポート50を構成する開口部は、吸入ポート40を構成する開口部と離間して、アウターロータ12の径方向に沿って設けられる。このような吐出ポート50からは、ロータ10の回転に応じてポンプ室30からオイルが吐出される。すなわち、吐出ポート50からは、吸入ポート40から吸入されたオイルが、外歯10Aと内歯12Aとの間に形成された所定の隙間Qから吐出される。
【0030】
第1吐出路60は、吐出ポート50から吐出されたオイルが流通する。ここで、吐出ポート50には、開口孔からなる第1連通孔52が形成される。第1吐出路60は、この第1連通孔52を介して吐出ポート50と連通する。このような第1吐出路60はポンプボディ20に形成される。第1吐出路60を流通するオイルは、上述の前進クラッチ6に供給される。具体的には、ポンプボディ20の外の吐出路61及び吐出路4B(
図1参照)を介して前進クラッチ6に流通される。このような、第1吐出路60は吐出ポート50より断面積が縮小して構成される。
【0031】
第2吐出路70は、吐出ポート50から吐出されたオイルが流通する。また、吐出ポート50には、開口孔からなる第2連通孔54が形成される。第2吐出路70は、この第2連通孔54を介して吐出ポート50と連通する。このような第2吐出路70も、ポンプボディ20に形成される。第2吐出路70を流通するオイルは、上述のギアユニット3に潤滑油として供給される。具体的には、ポンプボディ20の外の吐出路71及び吐出路4A(
図1参照)を介してギアユニット3に流通される。このような、第2吐出路70は吐出ポート50より断面積が縮小して構成される。
【0032】
本実施形態では、吐出ポート50に、第1連通孔52と第2連通孔54とが、別体で設けられる。別体に設けられるとは、第1連通孔52と第2連通孔54とが併用されていない状態をいう。したがって、第1吐出路60と第2吐出路70とは、吐出ポート50よりも下流側で分岐されておらず、吐出ポート50から直接、分岐して設けられることを意味する。
【0033】
このように第1連通孔52と第2連通孔54とをポンプボディ内で別体に形成することにより、吐出路61及び吐出路71が設けられる位置に対応して、第1吐出路60及び第2吐出路70を最短経路で構成することができる。したがって、ポンプボディ20の加工をし易くすることができるので、製造コストを低減することが可能となる。
【0034】
また、第1吐出路60及び第2吐出路70は、ポンプボディ20におけるオイルの供給先との接合面まで延出して設けられる。オイルの供給先とは、本実施形態では前進クラッチ6及びギアユニット3である。ポンプボディ20における接合面とは、このようなギアユニット3及び前進クラッチ6との接合面150、151が相当する。したがって、第1吐出路60及び第2吐出路70は、ポンプボディ20が有する接合面150、151まで延出して設けられる。
【0035】
ここで、上述のように本電動オイルポンプ1は、メカオイルポンプ4の停止時にギアユニット3や前進クラッチ6にオイルを供給するのに利用される。このため、メカオイルポンプ4の動作中は、ギアユニット3や前進クラッチ6へはメカオイルポンプ4から十分なオイルが供給されるので、電動オイルポンプ1は運転が停止される。
図1及び
図2に示されるように、メカオイルポンプ4の吐出路4Cに吐出路61を介して電動オイルポンプ1の第1吐出路60が連通して設けられ、油圧回路8の下流側に設けられる吐出路4Aに吐出路71を介して電動オイルポンプ1の第2吐出路70が連通して設けられる。したがって、電動オイルポンプ1の運転停止中に、メカオイルポンプ4から吐出されたオイルが電動オイルポンプ1に流入しないように、第1吐出路60には第1チェックバルブ65が設けられ、第2吐出路70には第2チェックバルブ75が設けられる。
【0036】
第1チェックバルブ65は、吐出ポート50から吐出されたオイルの圧力によって開閉する。本実施形態に係る第1チェックバルブ65は、スプリング66と鉄球67とケージ68とを有する。ケージ68は軸方向に溝部又は開口部を有する筒状の部材で形成され、スプリング66及び鉄球67を囲んで配置される。吐出ポート50から吐出されたオイルの圧力が、スプリング66の付勢力よりも大きい場合に、鉄球67と筒部材99との間に隙間が形成され、第1チェックバルブ65は開弁状態となる。一方、吐出ポート50から吐出されたオイルの圧力が、スプリング66の付勢力よりも小さい場合には、鉄球67と筒部材99との間に隙間が形成されず、第1チェックバルブ65は閉弁状態となる。したがって、電動オイルポンプ1の運転停止中に、メカオイルポンプ4から吐出されたオイルが流入しないようにすることが可能となる。
【0037】
本実施形態では、第1吐出路60に設けられた第1チェックバルブ65は、ポンプボディ20に形成された開口孔23から第1吐出路60内に進入する固定ネジ90の先端部で固定される。開口孔23の軸心は、第1吐出路60の少なくとも一部(第1吐出路60のうち、開口孔23よりも上流側の部分「第1吐出路上流部69」とする)に対して直交して設けると好適であり、更に、開口孔23に進入した固定ネジ90の胴部91の近傍で直交すると好適である。また、本実施形態では、第1チェックバルブ65は、固定ネジ90により筒状の鉄からなる筒部材99を介して固定される。
【0038】
本実施形態では、第1吐出路60(第1吐出路上流部69)は、上述のように開口孔23に対して直交して合流する。また、固定ネジ90は筒部材99を介して第1チェックバルブ65を支持固定する。第1吐出路60(第1吐出路上流部69)から開口孔23に流通するオイルが第1チェックバルブ65の側に流通するように、開口孔23に外側油路93及び内側油路95が形成される。
【0039】
外側油路93は、固定ネジ90の胴部91の外周面91Aと第1吐出路60の内周面60Aとの間に筒状に形成される。固定ネジ90の胴部91の外周面91Aとは、開口孔23に進入する固定ネジ90の進入部の表面である。第1吐出路60の内周面60Aとは、開口孔23に合流した第1吐出路60の内周面である。固定ネジ90の胴部91の外径は、固定ネジ90が進入する第1吐出路60の内径よりも小さく形成される。したがって、外周面91Aと内周面60Aとの間には、少なくとも筒状の隙間を有することとなる。このような筒状の隙間が、外側油路93に相当する。吐出ポート50から吐出されたオイルは、まず、この外側油路93に流入される。
【0040】
内側油路95は、胴部91の径方向内側に当該胴部91に形成した連通部97を介して外側油路93と連通する。連通部97とは、内側油路95と外側油路93とを連通する部位である。本実施形態では、胴部91を径方向に貫通する貫通孔が相当する。特に、本実施形態では、
図2に示されるように、径方向に沿って互いに対向するように連通部97が形成され、このような連通部97が軸方向に互いの位置を変えて形成される。これにより、外側油路93に流入したオイルが、内側油路95に流入し、第1チェックバルブ65に流入することが可能となる。これにより、第1チェックバルブ65を固定する固定ネジ90を油路に利用することができるので、別途油路を設ける場合に比べて電動オイルポンプ1をコンパクトに構成することができる。
【0041】
また、第2チェックバルブ75は、吐出ポート50から吐出されたオイルの圧力によって開閉する。本実施形態に係る第2チェックバルブ75は、スプリング76と鉄球77とケージ78とブッシュ79とを有する。ケージ78は軸方向に溝部又は開口部を有する筒状の部材で形成され、スプリング76及び鉄球77を囲んで配置される。ブッシュ79は鉄により形成される。吐出ポート50から吐出されたオイルの圧力が、スプリング76の付勢力よりも大きい場合に、鉄球77とブッシュ79との間に隙間が形成され、第2チェックバルブ75は開弁状態となる。一方、吐出ポート50から吐出されたオイルの圧力が、スプリング76の付勢力よりも小さい場合には、鉄球77とブッシュ79との間に隙間が形成されず、第2チェックバルブ75は閉弁状態となる。したがって、電動オイルポンプ1の運転停止中に、メカオイルポンプ4から吐出されたオイルが電動オイルポンプ1に流入しないようにすることが可能となる。
【0042】
本実施形態では、第2吐出路70には、第2チェックバルブ75の下流側に第1吐出路60への流量と第2吐出路70への流量を分配するオリフィス80が設けられる。ここで、第2吐出路70を流通するオイルは、潤滑油として利用される。したがって、オリフィス80の開口面積は、当該潤滑油が供給されるギアユニット3に必要な潤滑油のオイルの量及び前進クラッチ6の必要油圧に応じて設定される。このような構成により、オリフィス80をポンプボディ20の外に設ける必要がないので、電動オイルポンプ1を有する油圧システム100をコンパクトに構成することができる。
【0043】
また、このオリフィス80は、オイルの流通方向に所定の厚みTを有するユニット状で形成される。このユニットをポンプボディ20の外側から第2チェックバルブ75の側に圧入される。係る場合、ユニットの所定の厚みTのうち、例えば一部をポンプボディ20から突出して圧入すると好適である。このように圧入することにより、突出した残りの部分(例えば厚みTの半分の部分)でポンプボディ20を組み付けた際の位置決めを行うことが可能となる。
【0044】
以上、本発明によれば、第1吐出路60と第2吐出路70とをポンプボディ20内に設けることができるので、第1吐出路60及び第2吐出路70の夫々が接続される吐出路61及び吐出路71までの配管をコンパクトに構成することができる。したがって、省スペース化及び軽量化された電動オイルポンプ1を実現することが可能となる。また、このような第1吐出路60と第2吐出路70とをポンプボディ20内に設けるので、電動オイルポンプ1の周囲にある機器等と干渉することもない。したがって、電動オイルポンプ1を配置する場所の自由度や第1吐出路60及び第2吐出路70の配置の自由度を向上させることができる。
【0045】
〔その他の実施形態〕
上記実施形態では、電動オイルポンプ1がトロコイドポンプから構成されるとして説明した。しかしながら、本発明の適用範囲はこれに限定されるものではない。電気エネルギーで回転駆動されるものであれば、トロコイドポンプ以外のポンプで構成することも当然に可能である。
【0046】
上記実施形態では、第1吐出路60に第1チェックバルブ65が設けられ、第2吐出路70に第2チェックバルブ75が設けられるとして説明した。しかしながら、本発明の適用範囲はこれに限定されるものではない。第1吐出路60に第1チェックバルブ65を設けず、且つ、第2吐出路70に第2チェックバルブ75を設けずに構成することも当然に可能である。係る場合、ポンプボディ20の外に夫々のチェックバルブを設けると好適である。また、第1吐出路60及び第2吐出路70のいずれか一方にのみチェックバルブを設け、他方はポンプボディ20の外にチェックバルブを設ける構成とすることも当然に可能である。
【0047】
上記実施形態では、オリフィス80がポンプボディ20に圧入されるとして説明した。しかしながら、本発明の適用範囲はこれに限定されるものではない。例えば
図3に示されるように、ネジにより締結する構成とすることも可能である。係る場合、ネジ締結の締め過ぎにより樹脂部材からなるケージ78が変形等をすることを防止するために、オリフィス80のユニットにポンプボディ20と当接する座面を有するフランジ部80aを設けておくと好適である。これにより、ケージ78の変形等を防止することが可能となる。
【0048】
上記実施形態では、第2吐出路70は、第2チェックバルブ75の下流側にオリフィス80が設けられているとして説明した。しかしながら、本発明の適用範囲はこれに限定されるものではない。第2チェックバルブ75の下流側にオリフィス80を設けずに構成することも当然に可能である。
【0049】
また、
図4に示されるように、オリフィス80をブッシュ79側に設けることも可能である。係る場合でも、オイルの量を適切に調整することができ、更にケージ78に嵌め込み部78aを形成し、ケージ78がポンプボディ20にスナップフィット固定されることで部品点数を抑制できる。
【0050】
上記実施形態では、第1チェックバルブ65が固定ネジ90で固定されるとして説明した。しかしながら、本発明の適用範囲はこれに限定されるものではない。第1チェックバルブ65を他の形態で当然に可能である。
【0051】
また、固定ネジ90の近傍に外側油路93と内側油路95とが形成されているとして説明した。しかしながら、本発明の適用範囲はこれに限定されるものではない。例えば第1吐出路60を筒部材99の近傍で合流させることにより、外側油路93及び内側油路95の双方を設けずに構成することも可能である。また、外側油路93及び内側油路95の一方のみを設けて構成することも可能である。
【0052】
また、上記実施形態では、開口孔23の軸心は、第1吐出路60の少なくとも一部に対して直交して設けると好適であるとして説明した。しかしながら、本発明の適用範囲はこれに限定されるものではない。開口孔23の軸心が、第1吐出路60に対して直交しないように設けることも当然に可能である。
【0053】
また、上記実施形態では、第1チェックバルブ65は、固定ネジ90により筒部材99を介して固定されるとして説明した。しかしながら、本発明の適用範囲はこれに限定されるものではない。筒部材99を用いずに第1チェックバルブ65を固定ネジ90で固定することも当然に可能である。
【0054】
上記実施形態では、連通部97は、内側油路95と外側油路93とを連通する部位であり、固定ネジ90の胴部91を径方向に貫通する貫通孔が相当するとして説明した。しかしながら、本発明の適用範囲はこれに限定されるものではない。すなわち、連通部97は貫通孔ではなく溝部で構成することも当然に可能である。
【0055】
また、上記実施形態では、連通部97が径方向に沿って互いに対向するように形成され、固定ネジ90の軸方向に互いの位置を変えて形成されるとして説明した。しかしながら、本発明の適用範囲はこれに限定されるものではない。固定ネジ90に連通部97を1つのみ設けることも可能であるし、複数設ける場合には互いに対向しないように設けることも当然に可能である。更には、固定ネジ90の軸方向に対して互いの位置を一致させて設けることも当然に可能である。
【0056】
上記実施形態では、第1チェックバルブ65が固定ネジ90で固定され、第2チェックバルブ75の下流側にオリフィス80が設けられてあるとして説明した。しかしながら、本発明の適用範囲はこれに限定されるものではない。第1チェックバルブ65の下流側にオリフィス80を設け、第2チェックバルブ75が固定ネジ90で固定されるように構成することも当然に可能である。
【0057】
本発明は、オイルを吐出する電動オイルポンプに用いることが可能であり、またオイルの供給先としてギアユニットの他、パワーステアリングユニット、ショックアブソーバーユニット等に用いることが可能である。