(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0019】
[第1実施形態]
以下、本発明の一実施形態を
図1〜
図7に基づいて説明する。
図1に示した搬送容器99の上面壁は蓋体90になっていて、その蓋体90は、本発明の「容器構成壁」に相当する蓋枠壁91と、その蓋枠壁91の枠孔94(本発明の「壁貫通孔」に相当する)を閉塞した閉塞壁81とからなる
。また、蓋枠壁91は、例えば不透明な第1樹脂(例えば、ブロックPP)で構成される一方、閉塞壁81は、例えば透明な第2樹脂(例えば、ランダムPP)で構成され、これら蓋枠壁91と閉塞壁81とを二色成形して蓋体90が製造される。そして、この蓋体90の製造方法に本発明に係る「搬送
容器の製造方法」が適用され、別途製造した容器本体98の上面に蓋体90が取り付けられて搬送容器99になる。
【0020】
具体的には、蓋枠壁91は、全体が四角形の枠状になっていて、その内側の枠孔94は、蓋枠壁91全体の外縁形状に相似した四角形になっている。また、蓋枠壁91の外縁部全体には、外縁補強部91Aが形成されている。外縁補強部91Aは、上方に膨出する一方、
図2に示すように下面側が溝状に窪み、その溝内に溝内補強リブ91Lを備えている。
【0021】
図3に示すように、蓋枠壁91のうち外縁補強部91Aより内側の天井板部91Cには、外縁補強部91A寄り位置に環状傾斜部91Eが形成され、天井板部91Cのうち環状傾斜部91Eより内側部分が下方に陥没している。また、天井板部91Cのうち環状傾斜部91Eより外側部分の下面には、嵌合筒壁91Bが突出形成され、その嵌合筒壁91Bが容器本体98(
図1参照)の上面開口の内側に嵌合するようになっている。
【0022】
図3に示すように、天井板部91Cには、枠孔94の開口縁を段付き状に陥没させて開口縁凹部92が形成されている。詳細には、天井板部91Cは、枠孔94の一回り外寄りの位置で下方にクランク状に屈曲していて、その屈曲部分の内側が開口縁凹部92になっている。また、開口縁凹部92の底を構成する支持壁93は、天井板部91C全体と略同一の板厚をなし、開口縁凹部92の陥没深さは、天井板部91C全体の板厚より僅かに大きくなっている。さらに、開口縁凹部92内の段差面91Dの裏側には、水平方向に対して傾斜した傾斜段差面93Dが備えられている。なお、天井板部91Cの下面には、支持壁93と嵌合筒壁91Bとの間に延びた天井板補強リブ91Mが、
図2に示すように、枠孔94の各辺毎に2つずつ備えられている。また、
図3に示すように、天井板補強リブ91Mの下面は、支持壁93の下面と面一になっている。
【0023】
図1に示すように、閉塞壁81は、平坦な四角形の板状をなして外縁部が開口縁凹部92に嵌合している。そして、閉塞壁81の外側面と開口縁凹部92の段差面91Dとが結合し、開口縁凹部92の底面と閉塞壁81の下面の外縁部とが結合している。そして、
図3に示すように、本発明の「壁交差面」としての枠孔94の内側面94Sが閉塞壁81の下面と直交した状態に配置され、その内側面94S(
図5参照)を覆った状態に結合補強フィン82が閉塞壁81の下面に突出形成されている。この結合補強フィン82は、
図7(C)に示すように、閉塞壁81の全体の板厚に比べて薄くなっている。なお、
図3では、結合補強フィン82が、見易くするために、肉厚にして示されている。
【0024】
図4には、蓋体90を製造するための二色成形金型10の一部が拡大して示されている。同図において符号11は、固定型であって、符号31は可動型である。可動型31は、固定型11に接合した型閉じ位置(
図4に示した位置)と固定型11から離間した型開き位置(図示せず)との間を直動する。また、可動型31には、蓋体90における枠孔94に対応した断面四角形のコア受容孔31Aが形成され、そのコア受容孔31A内に、スライドコア32が受容されている。そして、スライドコア32は、可動型31が型開き位置から型閉じ位置に移動したときに、初期位置に配置されて固定型11と接合し、可動型31が型閉じ位置に維持された状態でコアバック位置へと移動して(即ち、コアバックして)、固定型11から離間する。
【0025】
以下、二色成形金型10の説明と併せて蓋体90の製造方法について説明する。蓋体90を製造するために、二色成形金型10を起動すると、
図5に示すように、可動型31が型閉じ位置に配置されかつスライドコア32が初期位置に配置された第1成形状態になり、二色成形金型10内に蓋枠壁91を成形するための第1キャビティ38が形成される。そして、第1キャビティ38のうち天井板部91Cを成形する部分に開口した固定型11の第1樹脂射出口12Aから第1樹脂が溶融状態になって射出されて、第1キャビティ38に充填される。その充填された第1樹脂は暫くすると固化して、第1キャビティ38内に臨んだ固定型11の成形面によって、蓋枠壁91の内面と枠孔94の内側面94Sとが成形され、第1キャビティ38内に臨んだ可動型31の成形面によって、蓋枠壁91のうち開口縁凹部92の内面を除く全体の外面が成形され、さらには、第1キャビティ38内に臨んだスライドコア32の成形面によって開口縁凹部92の内面が成形される。
【0026】
詳細には、
図5に示すように、スライドコア32の先端面は平坦になっていて、固定型11のうちスライドコア32の先端面と対向する部分は、スライドコア32の先端面が面当接する平坦面の回りに環状凹部13を陥没形成した構造をなしている。そして、
図7(A)に示すように、第1キャビティ38のうちスライドコア32の先端面と環状凹部13の内面との間に挟まれた部分で蓋枠壁91の支持壁93が成形され、スライドコア32の先端部側面によって開口縁凹部92の段差面91Dが形成される。
【0027】
ここで、溶融状態の樹脂は、冷えて固化するときに熱収縮する。即ち、蓋枠壁91が、二色成形金型10の内部で固化する過程で熱収縮する。その結果、蓋枠壁91のうち天井板部91C及び支持壁93が、外縁補強部91A及び嵌合筒壁91B(
図3参照)側に引き寄せられ、
図7(B)に示すように蓋枠壁91の枠孔94の内側面94Sと固定型11における環状凹部13内の成形面との間に第1隙間S1が形成される。また、開口縁凹部92の段差面91Dとスライドコア32の先端部側面の成形面との間には、第2隙間S2が形成される。
【0028】
次いで、上記第1及び第2の隙間S1,S2が形成された状態で、
図6に示すように、スライドコア32がコアバック位置に移動して二色成形金型10が第2成形状態になり、二色成形金型10内に閉塞壁81を成形するための第2キャビティ39が形成される。このとき、
図7(C)に示すように、上記第1隙間S1は、第2キャビティ39内の成形空間に連通した状態になる。また、上記第2隙間S2は、スライドコア32のコアバックにより隙間ではなくなり第2キャビティ39内の成形空間の一部になる。
【0029】
そして、第2キャビティ39の中央部分に開口した固定型11の第2樹脂射出口12B(
図4参照)から第2樹脂が溶融状態になって射出される。すると、その溶融状態の第2樹脂は、第2キャビティ39に充填されると共に、第2キャビティ39から第1隙間S1に流れ込む。そして、その充填された第2樹脂が暫くして固化し、第2キャビティ39内で閉塞壁81が成形されると共に、第1隙間S1内で結合補強フィン82が閉塞壁81と一体に成形される。これにより、閉塞壁81の外側面が蓋枠壁91の開口縁凹部92における段差面91Dに結合すると共に、閉塞壁81の下面外縁部が開口縁凹部92における底面に結合し、さらに、閉塞壁81と一体になった結合補強フィン82が、蓋枠壁91の内側面94Sに結合した状態になる。そして、閉塞壁81が完全に固化したら、可動型31がスライドコア32と共に型開き位置に移動して二色成形金型10から蓋体90が取り出され、蓋体90の製造が完了する。
【0030】
このように、本実施形態の搬送容器99の壁構造によれば、閉塞壁81の下面に対して蓋枠壁91の内側面94Sを交差した配置にしたので、上述の如く、先に蓋枠壁91を二色成形金型10の第1キャビティ38内で成形してからスライドコア32をコアバックして第2キャビティ39を形成したときに、蓋枠壁91の熱収縮によって二色成形金型10の成形面と蓋枠壁91の内側面94Sとの間に生じる第1隙間S1が第2キャビティ39内の成形空間と連通した状態になる。これにより、閉塞壁81と一体に結合補強フィン82が第1隙間S1内で成形され、その結合補強フィン82によって、蓋枠壁91と閉塞壁81との結合面積が広くなり、蓋枠壁91と閉塞壁81とを高い強度で結合させることができる。また、蓋枠壁91に開口縁凹部92を形成し、閉塞壁81の外縁部を開口縁凹部92に嵌合した状態に成形したので、閉塞壁81が開口縁凹部92の段差面91Dと底面の両方で結合されて、結合面積が広くなり、この点においても蓋枠壁91と閉塞壁81との結合強度が高くなる。
【0031】
[第2実施形態]
本実施形態は、
図8に示されており、二色成形金型10Vの固定型11Vにおける環状凹部13Vの構造が第1実施形態と異なる。即ち、
図8(A)に示すように、本実施形態では、環状凹部13Vにおける枠孔94の内側面94Sを成形する面と、支持壁93の下面を成形する面とが交差する角部が、湾曲した湾曲成形面13Rになっている。そして、その湾曲成形面13Rによって、支持壁93に第1湾曲面94Rが成形される。また、支持壁93が熱収縮して上記第1隙間S1が生じ(
図8(B)参照)、その第1隙間S1内で成形される結合補強フィン82Vによって、蓋枠壁91Vの内側面94S及び第1湾曲面94Rとが覆われると共に、結合補強フィン82Vにも環状凹部13Vの湾曲成形面13Rによって第2湾曲面82Rが成形される(
図8(C)参照)。
【0032】
本実施形態によれば、結合補強フィン82Vが支持壁93の内側面94S側を巻き込むように覆い、蓋枠壁91Vと閉塞壁81Vとの結合強度が高くなる。また、二色成形金型10Vの固定型11Vに設けた湾曲成形面13Rにより、蓋枠壁91Vの第1湾曲面94Rと結合補強フィン82Vの第2湾曲面82Rとの両方を成形することができる。
【0033】
[第3実施形態]
図9(C)に示すように、本実施形態の蓋体90Wは、天井板部91Cに前記した第1実施形態の開口縁凹部92を備えず、天井板部91Cの下面における枠孔94の開口縁に開口縁突部97が突出形成された構造になっている。そして、枠孔94の内側面94Sが、天井板部91Cから開口縁突部97まで連続して形成されている。また、開口縁突部97のうち内側面94Sと反対側は、傾斜面97Dになっていて、開口縁突部97の下端部には、枠孔94の内側面94Sと開口縁突部97の傾斜面97Dとを連絡するように第1湾曲面97Rが形成されている。また、閉塞壁81Wは、天井板部91Cと略同一の厚さをなしている。本実施形態では、開口縁突部97における内側面94Sが、本発明に係る「壁交差面」をなして、閉塞壁81Wの下面に直交した状態に配置されている。そして、閉塞壁81Wの下面から突出した結合補強フィン82Wが開口縁突部97の内側面94S及び第1湾曲面97Rを覆っている。
【0034】
図9(A)に示すように、本実施形態の蓋体90Wを成形するための二色成形金型10Wは、固定型11Wにおけるスライドコア32との対向部分の外側に、開口縁突部97を成形するための環状凹部14を備えている。また、その環状凹部14の底部には、開口縁突部97の第1湾曲面97Rを成形するための湾曲成形面14Rが設けられている。そして、この二色成形金型10Wにて蓋枠壁91Wが成形されて、その蓋枠壁91Wの天井板部91Cが熱収縮すると、
図9(B)に示すように、蓋枠壁91Wの内側面94S及び第1湾曲面97Rと、スライドコア32及び固定型11Wの両成形面との間に第3隙間S3が形成される。その状態で、スライドコア32をコアバックして第2キャビティ39を形成したときに第3隙間S3が第2キャビティ39内の成形空間と連通する。そして、第2キャビティ39内で閉塞壁81Wが成形されると共に、閉塞壁81Wと一体に結合補強フィン82Wが第3隙間S3内で成形される。
【0035】
[第4実施形態]
本実施形態は、
図10に示されており、二色成形金型10Xにおけるスライドコア32のコアバック量を第3実施形態に比べて少なくして、閉塞壁81Xを薄くした点が異なる。この構成によれば、閉塞壁81Xは、下方に突出した結合補強フィン82Wと、上方に突出した結合補強フィン82Xとを備えて、それらが蓋枠壁91Wに結合し、蓋枠壁91Wと閉塞壁81Xとを高い強度で結合させることができる。
【0036】
[第5実施形態]
図11(C)に示すように、本実施形態の蓋体90Yは、支持壁93Y及び結合補強フィン82Yの構造が第1実施形態と異なる。即ち、支持壁93Yは、枠孔94側が鋭角に尖っていて、枠孔94側の斜め下方を向いた内側傾斜面93Cを有している。本実施形態では、支持壁93Yの内側傾斜面93Cが、本発明に係る「壁交差面」をなして、閉塞壁81Yの下面に対して斜めに交差した状態に配置されている。そして、閉塞壁81Yの下面から斜め下方に突出した結合補強フィン82Yが、支持壁93Yの内側傾斜面93C及びその下端部の傾斜段差面93Dを覆っている。
【0037】
図11(A)に示すように、本実施形態の蓋体90Yを成形するための二色成形金型10Yは、固定型11Yにおけるスライドコア32との対向部分の外側に、開口縁突部97を成形するための断面三角形の環状凹部15を備えている。そして、この二色成形金型10Yにて蓋枠壁91Yを成形し、その蓋枠壁91Yの天井板部91C及び支持壁93Yが熱収縮すると、
図11(B)に示すように、支持壁93Yの下方に第4隙間S4が形成されると共に、支持壁93Yの先端が丸みを帯びた状態になる。そして、スライドコア32をコアバックして第2キャビティ39を形成したときに第4隙間S4が第2キャビティ39内の成形空間と連通し、第2キャビティ39内で閉塞壁81Yが成形されると共に、閉塞壁81Yと一体に結合補強フィン82Yが第4隙間S4内で成形される。
【0038】
[他の実施形態]
本発明は、前記実施形態に限定されるものではなく、例えば、以下に説明するような実施形態も本発明の技術的範囲に含まれ、さらに、下記以外にも要旨を逸脱しない範囲内で種々変更して実施することができる。
【0039】
(1)前記第1実施形態では、搬送容器99のうち上面壁としての蓋体90に本発明の「搬送容器の
製造方法」を適用した例を示したが、搬送容器の下面壁又は側面壁に壁貫通孔を形成して、その壁貫通孔を閉塞壁にて閉塞したものに本発明を適用してもよい。
【0040】
(2)前記第1実施形態の蓋体90では、閉塞壁81が透明な樹脂製で構成される一方、蓋枠壁91が不透明な樹脂製で構成されていたが、二色成形の対象となる2種類の樹脂の相違は、透明か不透明かの相違に限定されるものではない。具体的には、弾性、硬度、比重等の材料特性が異なり、共に透明(又は、共に不透明)な樹脂で本発明に係る「孔閉塞部材」と「容器構成壁」とを構成してもよいし、同じ化学組成の樹脂で色(透明か不透明かを含む)のみが異なる樹脂で、本発明に係る「孔閉塞部材」と「容器構成壁」とを構成してもよい。
【0041】
(3)前記第1実施形態では、本発明に係る「壁貫通孔」に相当する枠孔94が四角形であったが、「壁貫通孔」は四角形に限定されるものではなく、円形、四角形以外の多角形であってもよい。