(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6083845
(24)【登録日】2017年2月3日
(45)【発行日】2017年2月22日
(54)【発明の名称】キックボード
(51)【国際特許分類】
A63C 17/01 20060101AFI20170213BHJP
【FI】
A63C17/01
【請求項の数】1
【全頁数】5
(21)【出願番号】特願2016-182453(P2016-182453)
(22)【出願日】2016年9月18日
【審査請求日】2016年9月18日
【権利譲渡・実施許諾】特許権者において、権利譲渡・実施許諾の用意がある。
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】305025795
【氏名又は名称】井手 昊基
(72)【発明者】
【氏名】井手 昊基
【審査官】
砂川 充
(56)【参考文献】
【文献】
登録実用新案第3072486(JP,U)
【文献】
特開2002−320702(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A63C 17/00−17/28
B62K 17/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
地面からの高さを低く配して立乗する後輪側フレームの前端付近の連結部と前輪側ヘッドパイプの連結部をリンクで繋ぎ、その両方の連結部をそれぞれ回転自在にして2か所の折りたたみ点とし、組立状態においてはリンクと後輪側フレームと前輪側フレームを結合し、折りたたみは結合を開放して後輪側フレームの前端側を持ち上げ後輪側フレームの連結部は180度以上回転しリンクが上下反転しながら折りたたまれて前後輪が近接位置となるようにしたことを特徴とする折りたたみ式キックボード。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、キックボードの折りたたみ構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
キックボードは携帯性を良くするために折りたたむものが現存しておりその方法は様々であるが、それらの狙いとするところは折りたたみの作業が簡単で且つ折りたたんだ状態がコンパクトなことである。以下に従来の事例を示す
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−275482
【特許文献2】特許第3759730
【特許文献3】実用新案登録第3073603
【特許文献4】実用新案登録第3074809
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
車輪は径が大きいほど走行が滑らかであり、特に前輪が大きいことは荒れた路面や凹凸路を走行する場合に有効である。本願発明は、前輪の径がある程度大きくても折りたたみが簡単且つ折りたたんだ状態はコンパクトで車輪を転がして持ち運べ、通勤・通学・買い物・散歩・旅行等どんなシーンにも手軽な足として携帯できることをコンセプトとして考案したものである。以下に従来の事例文献とその課題を記す。
【特許文献4】はヘッドパイプの直上でハンドルポストを折りたためるようにしたものである。この事例は、折りたたんだ状態のものを腕に抱えて持ち運ぶものであり、車輪を転がして運ぶことは想定されていない。これは車輪が小径で全体の大きさも比較的小さい為であり、腕に抱えて持ち運ぶことにさほどの支障はない。しかしながら、走行性を滑らかにするために前輪を大きくし又大人がゆったりと乗れるように全体的にも大きくした場合、折りたたみ部の突起張り出しも大きくなり、両端には車輪があって服を汚し易いなど、抱えて持ち運ぶことには難があり、また車輪を転がして運ぶこともできない。つまり、この折りたたみ方式は小径車輪の比較的小型のキックボードには良いものの、大人がゆったりと乗れて前輪径も比較的大きいキックボードには適していない。
【特許文献3】は上記の特許文献4に対して、前輪の直ぐ後ろにおいて後輪側フレームを折りたたむようにしたものであるが、折りたたんだ状況は特許文献4と同様である。
【特許文献1】は車輪が比較的大きく、後輪側フレームとハンドルポストの2か所を折りたたむようにしたものである。折りたたむことで全長と全高は小さくなり前後車輪も近接した状態となる。しかし車輪が大きいこともあり車輪外径円からのフレーム等構造物の張り出しが大きく、また広範囲である。このキックボードは抱えて持ち運ぶことも車輪を転がして運ぶことも簡単ではない。
【特許文献2】は参考としての自転車の事例である。前下がりに配した2本の平行リンクで前輪側と後輪側を繋ぎ、この平行リンクで構成する平行四辺形を変形させることで折りたたみ状態と組立状態に変化するようになっている。折りたたみ状態に於いて前後輪が近接し且つ車輪外径円からの構造物の張り出しは一定部分に集約され、車輪を転がして運ぶことも可能である。しかしながらこの構造は2本のリンクが上下に配され高さ方向に一定のスパンが必要であるため地面からの高さが高くなり、ステップの低いキックボードでは成立しない。さらには、平行リンクで平行四辺形を構成する複雑構造のため構成部品が多くなり、また重くなることは携帯にとって好ましくない。尚、本事例のリンクの折りたたみ角度は約60度であるが、これはリンク前端を低く後端を高くできるためであり、キックボードのように後輪側リンク連結点が低い場合はリンクの回転角度も大きくならざるを得ない。因みに平行リンクの場合、回転できる角度は最大180度でありそれを超えることは出来ない。
【0005】
以上、従来のキックボードにおいては、車輪の直径がある程度大きく、折りたたみが容易且つ折りたたみ状態がコンパクトで車輪を転がして持ち運べ、便利な足として通勤・通学・買い物・散歩・旅行等どんなシーンに適した携帯し易いものは無かった。
【発明の効果】
【0006】
前輪がある程度大きくて走行がスムーズ、且つ折りたたみ作業が簡単で折りたたんだ状態は前後のフレームが集約され前後輪も近接した位置となって取り扱いやすく、車輪を転がしても持ち運べるため、通勤・通学・買い物・散歩・旅行などでの活用普及が期待される。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】本願発明の第1の事例であり、組立状態と折りたたみ状態の図である。
【
図2】本願発明の第2の事例であり、組立状態と折りたたみ状態の図である。
【
図3】本願発明の第3の事例であり、組立状態と折りたたみ状態の図である。
【
図4】
図2のA方向から見たリンク周辺の詳細説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本願発明について図を参照して説明する。
図1は本願発明の第1の事例であり、組立状態と折りたたみ状態の図である。
構成の概要は前輪側と後輪側およびそれらを繋ぐリンクからなっており、リンク8は前輪側ヘッドパイプ5の前輪側リンク連結部11と後輪側フレーム7の後輪側リンク連結部9を繋いでおり、組立状態においてはリンク8と後輪側フレーム7は結合部10でヘッドパイプ5と一体の前輪側フレーム6に結合されている。
折りたたみは、結合部10を開放し、後輪側フレーム7の前端側を持ち上げリンク8の両端が上下反転するように回転させながら、リンク8と後輪側フレーム7をハンドルポスト15に沿うように近接させる。折りたたんだ状態はコンパクトであり、また前輪周りに突出物のない範囲が広く確保され、階段などの段差部も転がして運ぶことが可能である。
尚、キックボードは立乗し地面を蹴って走行するものであり、後輪側フレーム7は地面からの高さを低くする必要がある。その為、前輪側リンク連結部11と連結するリンク8は前上がりの配置となり後輪側フレーム7との為す角αが180度を超えており、つまり折りたたみ状態を図のようにコンパクトな状態にするには後輪側リンク連結部9の折りたたみの角度を180度以上
(β2−β1)回転できるようにすることが必要である。
【0009】
図2は本願発明の第2の事例であり、組立状態と折りたたみ状態の図である。
第1の事例に対し後輪側リンク連結部9の位置を若干高くし、合わせて前輪側リンク連結部11の位置を下げ、折りたたみ状態において後輪2が前輪1の直ぐ後で接地するようにしている。後輪2を左右二輪式とすれば前輪1と合わせた3点で立てることができ、また左右両輪で横倒れしにくい後輪2を転がして運ぶこともできる。
尚、本事例の場合、図のB部分でリンク8と後輪側フレーム7が交差するが、
図4に示すように構造を工夫することで干渉を回避している。
【0010】
図3は本願発明の第3の事例であり、組立状態と折りたたみ状態の図である。
第1の事例に対し、後輪2を前輪1と同じ大きさとし、前輪側リンク連結部11と後輪側リンク連結部9の回転の軸を若干傾けることでリンク8の折りたたみ方向を左右にずらすようにし、さらにリンク8を円筒状にしてその軸心回りに回せるようにすることにより、折りたたんだ状態に於いて後輪2が前輪1の横に揃って並ぶようにしたものである。図には、組立状態と後輪側リンク連結部9を上方に持ち上げた状態およびリンク8の軸心回りに後輪側を反転させた状態を表している。前輪1と後輪2が横に並ぶことにより、車輪を転がして運ぶ際に横に倒れにくく安定しており楽である。
【0011】
図4は
図2のA方向から見たリンク周辺の詳細説明図である。
後輪側フレーム7は左右のフレームで構成され両側フレーム間の内側幅をリンク8の幅よりも広くし、またステップ板12は先端部分を切り欠くことで、
図2のB部分のような交差があっても干渉しないようにしている。この折りたたみ状態からの組立は、後輪側フレーム7の前端側を持って押し下げながらリンク8の両端が上下反転するように回転させ、リンク8と後輪側フレーム7の結合部10を前輪側フレーム6の結合部10に重ね合わせてボルト13で締付け固定する。
図5は結合部の結合方法の一事例である。
後輪側フレーム7とリンク8と前輪側フレーム6の結合部10を重ねた状態を、ボルト13で締めつけて固定している。後輪側フレーム7とリンク8はそれぞれ別々に前輪側フレーム6に固定してもよいが、一緒に重ねて固定することにより着脱作業を簡単化している。
尚、本願発明は、立乗し地面を蹴って走行するキックボードの折りたたみ方法に関するものであるが、これをベースとしてハンドルポストを伸縮式にしたり、着脱式のサドルや駆動装置を付加することも可能である。
また、折りたたみ状態がばらばらにならないようにするには折りたたんだ状態に固定する締結部を設ける方法もあるが、バンド等で縛る方法が手軽で簡単である。
【産業上の利用可能性】
【0012】
前輪がある程度大きくて走行がスムーズ、且つ折りたたみ作業が簡単で折りたたんだ状態は前後のフレームが集約され前後輪も近接した位置となって取り扱いやすく、車輪を転がしても持ち運べるため、通勤・通学・買い物・散歩・旅行など手軽な足として活用普及が期待される。
【符号の説明】
【0013】
1 前輪
2 後輪
3 前輪車軸
4 ヨーク
5 ヘッドパイプ
6 前輪側フレーム
7 後輪側フレーム
8 リンク
9 後輪側リンク連結部
10 結合部
11 前輪側リンク連結部
12 ステップ板
13 ボルト
14 ナット
15 ハンドルポスト
【要約】
【課題】
キックボードは車輪の径が大きいほど走行が滑らかであり、特に前輪が大きいことは荒れた路面や凹凸路を走行する場合に有効である。本願発明は、前輪の径がある程度大きくても折りたたみが簡単且つ折りたたんだ状態はコンパクトで車輪を転がして持ち運べ、通勤・通学・買い物・散歩・旅行等どんなシーンにも手軽な足として携帯できるものを提供する。
【解決手段】
後輪側フレーム前端付近の連結部と前輪側の連結部をリンクで繋ぎ、その両方の連結部をそれぞれ回転自在にして2か所の折りたたみ点とし、且つ後輪側の連結部は180度以上回転できるようにして、リンクが上下反転しながら折りたたまれて前後輪が近接位置となるようにした。
【選択図】
図1