特許第6083863号(P6083863)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許6083863-電車線のテンションバランサ 図000002
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6083863
(24)【登録日】2017年2月3日
(45)【発行日】2017年2月22日
(54)【発明の名称】電車線のテンションバランサ
(51)【国際特許分類】
   B60M 1/26 20060101AFI20170213BHJP
【FI】
   B60M1/26 B
【請求項の数】4
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2013-65538(P2013-65538)
(22)【出願日】2013年3月27日
(65)【公開番号】特開2014-189112(P2014-189112A)
(43)【公開日】2014年10月6日
【審査請求日】2016年1月18日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001890
【氏名又は名称】三和テッキ株式会社
(72)【発明者】
【氏名】山田 賢司
【審査官】 大内 俊彦
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−114850(JP,A)
【文献】 特開2008−55986(JP,A)
【文献】 実公昭49−31402(JP,Y1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60M 1/00−1/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸線方向一端側に開口を有する蓋を具備し、構築物に支持される円筒状のばねケースと、
前記ばねケースの蓋の外側に固着されるフレームと、
不等辺三角形の各頂点に配置される第1ないし第3の3つの枢止点を有し、第1の枢止点において主軸によって前記フレームに枢着される回転アームと、
回転軸によって前記回転アームの第2の枢止点に一端が枢着され、前記ばねケースの蓋の開口を貫通してばねケース内を延び、他端部にばね押さえを具備するテンションロッドと、
前記ばね押さえと前記ばねケースの蓋との間に挿入されるコイルばねとを具備し、
前記回転アームの第3の枢止点に一端部が引き止められる電車線をそれの伸縮量にかかわらずほぼ一定の張力を維持したまま構築物に支持するテンションバランサにおいて、
一端が前記ばねケースの蓋の内側に固着され、前記コイルばねの内側をコイルばねに沿って延び、他端側に軸線方向に延びる対向一対の切欠溝を有するガイドパイプをさらに具備し、
前記テンションロッドのばね押さえは、前記ガイドパイプの外径より大径の開口を有するリング部材と、当該開口を横断するように設けられガイドパイプの前記切欠溝に相対移動自在に係合するガイドプレートとを具備し、
前記テンションロッドは、前記ガイドパイプ内を延び、他端側において前記ばね押さえのガイドプレートに結合され、
収縮によってばねにたわみが生じると、ばね押さえのリング部材がガイドパイプに当接してコイルばねの位置を保持することを特徴とする電車線のテンションバランサ。
【請求項2】
前記ばね押さえのリング部材が、開口内へわずかに突出する複数のスペーサを具備することを特徴とする請求項1に記載の電車線のテンションバランサ。
【請求項3】
前記スペーサは、銅板をL字状に屈曲させてなり、前記リング部材の開口側の縁部に掛け止められ、前記コイルばねの他端とリング部材との間に挟持されることを特徴とする請求項2に記載の電車線のテンションバランサ。
【請求項4】
前記ばね押さえは、前記ガイドプレートから前記ガイドパイプ内へ起立する引き手を具備し、
前記テンションロッドは、他端側を前記引き手に枢ピンで枢着されることを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の電車線のテンションバランサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、温度変化等により伸縮する電車線を一定の張力で構築物に引き止めるテンションバランサに関する。
【背景技術】
【0002】
電車線のような架空線、特にトロリ線においては、温度変化による伸縮や、クリープ、摩耗による弾性伸び、さらに経年による支持物の傾斜などにより、その張力が影響を受けるため、張力を一定範囲に保持する必要がある。このため、従来、種々のテンションバランサが提案されている。
特許文献1に記載のテンションバランサは、構築物に支持される円筒状のばねケースと、ばねケースの一端側に固着されるフレームと、第1の枢止点においてフレームに枢着される回転アームと、回転アームの第2の枢止点に一端が枢着され、蓋を貫通してばねケース内を延び、他端部にばね押さえを具備するテンションロッドと、ばね押さえとばねケースの蓋との間に挿入されるコイルばねとを具備し、回転アームの第3の枢止点に電車線が引き止められる。
このようなテンションバランサにおいては、電車線の伸縮量への追従範囲を拡大するために、ばねを長くすると、収縮するときに大きなたわみを生じ、ばねケースの内側に接触する可能性がある。ばねがばねケースに接触すると、摺動抵抗が発生して、ばね力が低下する。ばね力が低下すると、トロリ線の張力が低下して、トロリ線と電車のパンタグラフが滑らかに接触し続けることができなくなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特公昭50−18651号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記従来のテンションバランサにおいては、鋼製のばねとばねケースの内側との摺動抵抗が大きく筒同士の摺動抵抗が大きく、コイルばねのばね力に影響を及ぼすおそれがある。また、鋼製のばねとばねケースとの摺動の繰り返しによる摩耗が激しく、経年劣化を早めてしまうという課題がある。
したがって、本発明は、コイルばねが収縮するときに、大きな摺動抵抗を生じることなく、コイルばねのたわみを有効に防止できるテンションバランサを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
以下、添付図面の符号を参照して説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
上記課題を解決するための、本発明のテンションバランサ1は、コイルばね13の内側をそれに沿って延びるガイドパイプ14を具備する。ガイドパイプ14は、一端がばねケース2の蓋3の内側に固着され、他端側に軸線方向に延びる対向一対の切欠溝15を有する。テンションロッド10のばね押さえ12は、リング部材16とガイドプレート17とを具備する。リング部材16は、ガイドパイプ14の外径より大径の開口19を有する。ガイドプレート17は、リング部材の開口19を横断するように設けられ、ガイドパイプ14の切欠溝15に相対移動自在に係合する。テンションロッド10は、ガイドパイプ14内を延び、他端側においてばね押さえ12のガイドプレート16に結合される。収縮によってばね13にたわみが生じると、ばね押さえ12のリング部材16がガイドパイプ14に当接してコイルばね13の位置を保持する。
【発明の効果】
【0006】
本発明のテンションバランサは、コイルばねが収縮するときに、大きな摺動抵抗を生じることなく、コイルばねのたわみを有効に防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】本発明に係るテンションバランサの一部を切り欠いた正面図である。
図2図1のテンションバランサの一部を切り欠いた平面図である。
図3図1のテンションバランサの一部を切り欠いた解斜視図である。
図4図1のテンションバランサの一部の分解斜視図である。
図5図1のテンションバランサにおけるばね押さえの正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。
テンションバランサ1は、構築物に水平又は垂直に支持される円筒状のばねケース2を具備する。ばねケース2は、軸線方向一端側に開口4を有する蓋3を具備し、吊り手5,6により構築物に固定される。
【0009】
ばねケース2の蓋3の外側にフレーム7が固着される。フレーム7は、平行一対の支持板7a,7bを有する。
【0010】
支持板7a,7b間に配置される回転アーム8は、概略不等辺三角形状の平行一対のアーム板8a,8bからなる。回転アーム8は、それの不等辺三角形の一の頂点付近の第1の枢止点において、主軸9によってフレーム7に枢着される。
【0011】
テンションロッド10は、回転アーム8の不等辺三角形の他の頂点付近の第2の枢止点において、回転軸11によって、回転アーム8に枢着される。テンションロッド10の他端側は、ばねケース2の蓋の開口4を貫通してばねケース2内を延び、他端部にばね押さえ12を具備する。
【0012】
ばね押さえ12とばねケースの蓋3との間に、コイルばね13が挿入される。
電車線Wは、回転アーム8の不等辺三角形の他の頂点付近の第3の枢止点22に一端部が引き止められ、それの伸縮量にかかわらずほぼ一定の張力を維持したまま構築物に引き止められる。
【0013】
ガイドパイプ14はステンレス鋼製で、一端が、ばねケース2の蓋3の内側に固着され、コイルばね13の内側をこれに沿って延び、他端側に軸線方向に延びる対向一対の切欠溝15を有する。
【0014】
ばね押さえ12は、図5に示すように、リング部材16と、ガイドプレート17と、引き手18とを具備する。
【0015】
リング部材16は、ガイドパイプ14の外径より大径の開口19を有し、この開口19内へわずかに突出するように等間隔に配置された4つのスペーサ20を具備する。スペーサ20は、短冊状の銅板をL字状に屈曲させてなり、リング部材16の開口19側の縁に掛け止められ、コイルばね13の他端とリング部材16との間に挟持される。スペーサ20は、ガイドパイプ14の外周と擦れ合っており、両者のかじりや焼き付きを防止する。
【0016】
ガイドプレート17は、リング部材16の開口19を横断するように設けられ、ガイドパイプ14の切欠溝15に、ガイドパイプ14の軸線方向に相対移動自在に係合する。
【0017】
テンションロッド10は、ガイドパイプ14内を延び、他端側においてばね押さえ12の引き手18に枢ピン21で結合される。
【0018】
収縮によってばね13にたわみが生じると、ばね押さえ12のリング部材16がスペーサ20を介して、ガイドパイプ14に当接し、コイルばね13の中心位置を保持する。リング部材16とガイドパイプ14との摺動抵抗は比較的小さく、接触による反力は無視できる。
【符号の説明】
【0019】
1 テンションバランサ
2 ばねケース
3 蓋
4 開口
5 吊り手
6 吊り手
7 フレーム
8 回転アーム
9 主軸(第1の枢止点)
10 テンションロッド
11 回転軸(第2の枢止点)
12 ばね押さえ
13 コイルばね
14 ガイドパイプ
15 切欠部
16 リング部材
17 ガイドプレート
18 引き手
19 開口
20 スペーサ
21 枢ピン
22 第3の枢止点
W 電車線
図1
図2
図3
図4
図5