(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
高分子材料を含むマイクロ粒子であって、ここで前記高分子材料が、マトリクスポリマーを含む連続相、ならびに前記連続相内に個別領域の形態で分散されているマイクロ包含添加剤およびナノ包含添加剤を含有する熱可塑性組成物から形成され、さらに複数のナノ細孔およびマイクロ細孔を含む多孔質ネットワークが前記材料中に画定されている、マイクロ粒子。
【発明を実施するための形態】
【0016】
ここで、本発明のさまざまな実施形態を詳細に参照するが、その一つ以上の例を以下で説明する。各例は、本発明の説明方法として提供されており、本発明を限定するものではない。実際に、本発明の範囲または精神から逸脱することなく、本発明に様々な改造および変形をしうることは、当業者にとって明らかであろう。例えば、一つの実施形態の一部として図示または記述された特徴は、別の実施形態で使用して、なおさらなる実施形態を生じうる。従って、本発明が、添付した請求項の範囲およびそれらの均等物の範囲内に収まるような改造や変形を網羅することが意図される。
【0017】
一般的に、本発明はマルチモードの細孔径分布を持つマイクロ粒子を対象とし、これは特定の用途に応じてさまざまに異なる利益を提供できる。例えば、足場構造として用いられた時、マイクロ細孔は足場内の機能性組織の形成を強化できる一方、ナノ細孔は細胞と細胞の接触、栄養素および酸素の細胞への拡散、代謝廃棄物の細胞からの除去、および細胞の誘導を助ける表面パターン化を増加させるのに役立ちうる。マルチモードの細孔分布はまた、インビボで粒子を通した、およびその周りの血流動態を改善し、ならびに粒子によって生じる血流抵抗、乱流および圧力差を減少させ、それによってかん流勾配および血の塊の形成(血栓形成)の可能性を減少させうる。マルチモードの分布は、マイクロ細孔またはナノ細孔のいずれかによる粒子を通したかん流を維持しながら、マイクロ細孔での細胞の捕捉、接着、固定または分化の部位も準備しうる。
【0018】
同様に、活性薬剤の送達に用いられた時、マイクロ粒子は、薬剤の送達速度を特定使用のために調整することも可能にしうる。例えば、活性薬剤の流速は、マイクロ細孔を通した場合、ナノ細孔よりも大きくなる傾向がある。こうして、異なるクラスの細孔径の存在は、活性薬剤の一部がマイクロ細孔を通して比較的素早く放出される一方、薬剤の別の部分は長時間にわたって送達されるようにナノ細孔を通ってよりゆっくりと通過しうる放出プロファイルを作るのに役立つ。しかし、多孔質ネットワークは、異なるタイプの細孔の単なる組み合わせではない。その代わり、その高度な複雑性および合計細孔容量のために、多孔質ネットワークは、長時間にわたって活性薬剤を制御可能に送達する能力をさらに増強する蛇行経路を形成しうる。
【0019】
とりわけ、本発明のユニークな多孔質ネットワークは、多孔質マイクロ粒子を形成するために従来的に用いられる複雑な技術および溶媒化学を必要とすることなく、形成されうる。その代わり、マイクロ粒子は、熱可塑性組成物から形成される高分子材料を含み、これはある程度まで単に変形されて望ましい多孔質ネットワーク構造を達成する。より具体的には、高分子材料を形成するために使用される熱可塑性組成物は、マトリクスポリマーを含む連続相内に分散されたマイクロ包含添加剤およびナノ包含添加剤を含む。包含添加剤は、それらがマトリクスポリマーと部分的に不適合(例えば、異なる弾性係数)であるように一般的に選択される。このようにすると、マイクロ包含添加剤およびナノ包含添加剤は、それぞれ個別のマイクロスケールおよびナノスケールの相領域として、連続相内に分散されうる。変形歪みを受ける時、領域の所およびその周りに応力増大エリアが作られる可能性があり、その場所は添加剤の特定の性質に応じて異なる。例えば包含添加剤がマトリクスポリマーよりも大きな係数を持つ時、最大応力増大エリアは、領域の極に位置し、加えられた応力の方向に整列する。マイクロ包含添加剤によって作られる応力増大エリアは、ナノ包含添加剤によって作られるものと重複しうる。このようにして、局所的応力の劇的な増加(すなわち、応力拡大)が、包含境界の所およびその周りで起こる可能性があり、マイクロ包含添加剤の応力増大エリアに位置するより小さなナノ包含添加剤が最も大きな応力拡大を示す。本発明者は、この応力拡大減少が包含添加剤の所またはその周りでの剥離および細孔形成の制御されたカスケードプロセスを開始でき、これはより小さなナノ包含領域が大きな応力拡大を示すことで始まり、外部から加えられる応力が増加するにつれて、より大きなマイクロ包含領域に伝搬することを発見した。さらに、細孔は個別領域に隣接して位置するので、内部的構造ヒンジとしての役割を果たして細孔がつぶれるのを防止するのに役立つ橋が、細孔の境界の間に形成されうる。
【0020】
細孔形成が開始されうるカスケード様式によって、望ましいマルチモード分布を持つ多孔質ネットワークの形成が可能となる。例えば、約0.5〜約30マイクロメートル、一部の実施形態では約1〜約20マイクロメートル、および一部の実施形態では約2〜約15マイクロメートルの平均断面寸法(例えば、幅または直径)を持つマイクロ包含領域の所および/またはその周りに複数のマイクロ細孔が形成されうる。さらに、約1〜約500ナノメートル、一部の実施形態では約2〜約450ナノメートル、および一部の実施形態では約5〜約400ナノメートルの平均断面寸法(例えば、幅または直径)を持つ第二の領域の所および/またはその周りに複数のナノ細孔が形成されうる。当然のことながら、細孔の複数のサブタイプが上述の一般的範囲内に存在する。特定の実施形態では、例えば、約50〜約500ナノメートル、一部の実施形態では、約60〜約450ナノメートル、および一部の実施形態では約100〜約400ナノメートルの平均断面寸法を持つ第一のナノ細孔が形成されうる一方、約1〜約50ナノメートル、一部の実施形態では約2〜約45ナノメートル、および一部の実施形態では約5〜約40ナノメートルの平均断面寸法を持つ第二のナノ細孔が形成されうる。
【0021】
マイクロ細孔および/またはナノ細孔は、球状、細長い形など、任意の規則的または不規則な形状を持つ場合があり、約1〜約30、一部の実施形態では約1.1〜約15、および一部の実施形態では約1.2〜約5のアスペクト比(断面寸法に対する軸方向寸法の比)も持ちうる。材料の一定単位容量内にマイクロ細孔およびナノ細孔によって占められる平均容量パーセントも、材料の約15%〜約80%/cm
3、一部の実施形態では約20%〜約70%、また一部の実施形態では約30%〜約60%/立方センチメートルでありうる。特定の場合、ナノ細孔は比較的高い量で存在しうる。例えば、ナノ細孔は、高分子材料の合計細孔容量の約15容量%〜約99容量%、一部の実施形態では、約20容量%〜95容量%、一部の実施形態では、約40容量%〜約90容量%を構成しうる。同様に、マイクロ細孔は、高分子材料の合計細孔容量の約1容量%〜約85容量%、一部の実施形態では、約5容量%〜80容量%、一部の実施形態では、約10容量%〜約60容量%を構成しうる。
【0022】
細孔(例えば、マイクロ細孔、ナノ細孔、または両方)は材料全体にわたって実質的に均一な様式でも分配されうる。例えば、細孔は、応力が加えられる方向に対して概して垂直方向に方向付けられたカラム中に分布されうる。これらのカラムは、材料の幅を横切って互いに概して平行でありうる。理論に拘束されるものではないが、このような均一に分布された多孔質ネットワークの存在は、活性薬剤を制御可能に放出するその能力を強化することによってなど、マイクロ粒子の性能をさらに強化しうる。
【0023】
本発明のさまざまな実施形態をこれから詳細に説明する。
【0024】
I.
熱可塑性組成物
A.
マトリクスポリマー
上述のように、熱可塑性組成物は、その中にマイクロ包含添加剤およびナノ包含添加剤が分散されている連続相を含む。連続相は一つ以上のマトリクスポリマーを含み、これは典型的には、熱可塑性組成物の約60重量%〜約99重量%、一部の実施形態では約75重量%〜約98重量%、および一部の実施形態では約80重量%〜約95重量%を占める。連続相を形成するために使用されるマトリクスポリマーの性質は重要ではなく、ポリエステル、ポリオレフィン、合成ポリマー、ポリアミドなど、任意の適切なポリマーが一般的に用いられうる。特定の実施形態では、例えば、ポリエステルを組成物中に用いてポリマーマトリクスを形成しうる。脂肪族ポリエステルなど、ポリカプロラクトン、ポリエステルアミド、ポリ乳酸(PLA)およびその共重合体、ポリグリコール酸、炭酸ポリアルキレン(例えば、炭酸ポリエチレン)、ポリ−3−ヒドロキシ酪酸(PHB)、ポリ−3−ヒドロキシ吉草酸(PHV)、ポリ−3−ヒドロキシ酪酸−コ−4−ヒドロキシ酪酸、ポリ−3−ヒドロキシ酪酸−コ−3−ヒドロキシ吉草酸共重合体(PHBV)、ポリ−3−ヒドロキシ酪酸−コ−3−ヒドロキシヘキサン酸、ポリ−3−ヒドロキシ酪酸−コ−3−ヒドロキシオクタン酸、ポリ−3−ヒドロキシ酪酸−コ−3−ヒドロキシデカン酸、ポリ−3−ヒドロキシ酪酸−コ−3−ヒドロキシオクタデカン酸、およびコハク酸ベース脂肪族ポリマー(例えば、ポリブチレンサクシネート、ポリブチレンサクシネートアジペート、ポリエチレンサクシネートなど)、脂肪族方向族コポリエステル(例えば、ポリブチレンアジペートテレフタレート、ポリエチレンアジペートテレフタレート、ポリエチレンアジペートイソフタレート、ポリブチレンアジペートイソフタレートなど)、芳香族ポリエステル(例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレートなど)など、さまざまなポリエステルの任意のものを一般的に用いうる。
【0025】
特定の場合、熱可塑性組成物は、硬い性質のために比較的高いガラス転移温度を持つ少なくとも一つのポリエステルを含みうる。例えば、ガラス転移温度(「T
g」)は、約0℃以上、一部の実施形態では約5℃〜約100℃、一部の実施形態では約30℃〜約80℃、および一部の実施形態では約50℃〜約75℃でありうる。ポリエステルは、約140℃〜約300℃、一部の実施形態では約150℃〜約250℃、および一部の実施形態では約160℃〜約220℃の溶融温度も持ちうる。溶融温度は、ASTM D−3417に従い、示差走査熱量測定(「DSC」)を使用して決定されうる。ガラス転移温度は、ASTM E1640−09に従って、動的機械分析で決定されうる。
【0026】
一つの特に適切な硬質ポリエステルはポリ乳酸であり、これは、左旋性乳酸(「L−乳酸」)、右旋性乳酸(「D−乳酸」)、メソ乳酸、またはその混合物など、乳酸の任意のアイソマーのモノマー単位から一般的に由来しうる。モノマー単位も、L−ラクチド、D−ラクチド、メソ−ラクチド、またはその混合物を含む、乳酸の任意のアイソマーの無水物から形成されうる。このような乳酸の環状二量体および/またはラクチドも使用しうる。重縮合または開環重合など、既知の任意の重合方法を、乳酸の重合のために使用しうる。少量の鎖延長剤(例えば、ジイソシアン酸化合物、エポキシ化合物または酸無水物)も使用しうる。ポリ乳酸は、L−乳酸から由来するモノマー単位およびD−乳酸から由来するモノマー単位を含むものなど、ホモポリマーまたは共重合体でありうる。必須ではないが、L−乳酸から由来するモノマー単位およびD−乳酸から由来するモノマー単位のうち一つの含有率は、約85モル%以上、一部の実施形態では約90モル%以上、および一部の実施形態では約95モル%以上であることが好ましい。それぞれがL−乳酸から由来するモノマー単位とD−乳酸から由来するモノマー単位の間の異なる比率を持つ複数のポリ乳酸を、任意のパーセントで混合しうる。当然、ポリ乳酸は、その他のタイプのポリマー(例えば、ポリオレフィン、ポリエステルなど)と混合することもできる。
【0027】
一つの特定の実施形態では、ポリ乳酸は以下の一般的構造を持つ:
【0029】
本発明に使用されうる適切なポリ乳酸ポリマーの一つの具体例は、BIOMER(商標) L9000という名前でBiomer, Inc.(ドイツ、クレイリング)から市販されている。その他の適切なポリ乳酸ポリマーは、ミネソタ州ミネトンカのNatureworks LLC(NATUREWORKS(登録商標))または三井化学株式会社(LACEA(商標))から市販されている。さらにその他の適切なポリ乳酸が、米国特許第4,797,468号、第5,470,944号、第5,770,682号、第5,821,327号、第5,880,254号、および第6,326,458号に記述されている場合がある。
【0030】
ポリ乳酸は、一般的に、約40,000〜約180,000グラム/モル、一部の実施形態では約50,000〜約160,000グラム/モル、および一部の実施形態では約80,000〜約120,000グラム/モルの範囲の数平均分子量(「M
n」)を持つ。同様に、ポリマーも、一般的に、約80,000〜約250,000グラム/モル、一部の実施形態では約100,000〜約200,000グラム/モル、および一部の実施形態では約110,000〜約160,000グラム/モルの範囲の重量平均分子量(「M
w」)を持つ。数平均分子量に対する重量平均分子量の比(「M
w/M
n」)、すなわち「多分散指数」も比較的低い。例えば、多分散指数は、一般的に約1.0〜3.0の範囲で、一部の実施形態では約1.1〜約2.0、および一部の実施形態では約1.2〜約1.8である。重量および数平均分子量は、当業者に知られている方法で決定されうる。
【0031】
ポリ乳酸はまた、190℃の温度および1000秒
−1のせん断速度で測定した時、約50〜約600パスカル秒(Pa・s)、一部の実施形態では約100〜500Pa・s、および一部の実施形態では約200〜400Pa・sの見かけ粘度を持ちうる。ポリ乳酸のメルトフローレート(ドライベース)もまた、2160グラムの負荷および190℃で測定された場合、約0.1〜約40グラム/10分、一部の実施形態では約0.5〜約20グラム/10分、および一部の実施形態では約5〜約15グラム/10分でありうる。
【0032】
一部のタイプの純のポリエステル(例えば、ポリ乳酸)は、開始ポリ乳酸の乾燥重量に基づいて約500〜600百万分率(「ppm」)またはそれ以上の水分含量を持つように、周囲環境から水を吸収することができる。水分含量は、下記のように、ASTM D 7191−05に従ってなど、当技術分野で知られているさまざまな方法で決定されうる。溶融処理中の水の存在は、ポリエステルを加水分解的に分解しその分子量を減少させる可能性があるので、混合前にポリエステルを乾燥させることが望ましいことがある。ほとんどの実施形態では、例えば、マイクロ包含添加剤およびナノ包含添加剤を混合する前に、ポリエステルが、約300百万分率(「ppm」)以下、一部の実施形態では約200ppm以下、一部の実施形態では約1〜100ppmの水分含量を持つことが望ましい。ポリエステルの乾燥は、例えば、約50℃〜約100℃、一部の実施形態では約70℃〜約80℃の温度で起こりうる。
【0033】
B.
マイクロ包含添加剤
本明細書で使用される場合、「マイクロ包含添加剤」という用語は、ポリマーマトリクス内にマイクロスケールサイズの個別領域の形態で分散されることのできる任意の非晶質、結晶または半結晶材料を一般的に指す。例えば、変形前に、領域は、約0.05μm〜約30μm、一部の実施形態では約0.1μm〜約25μm、一部の実施形態では約0.5μm〜約20μm、および一部の実施形態では約1μm〜約10μmの平均断面寸法を持ちうる。「断面寸法」という用語は、領域の特性寸法(例えば、幅または直径)を一般的に指し、これはその主軸(例えば、長さ)に実質的に直交し、また変形させている間に加えられる応力の方向に一般的には実質的に直交する。一般的にはマイクロ包含添加剤から形成されるが、当然のことながら、マイクロスケール領域はマイクロ包含添加剤およびナノ包含添加剤および/または組成物のその他の成分の組み合わせからも形成されうる。
【0034】
特定の実施形態では、マイクロ包含添加剤は一般的に高分子の性質であり、比較的高い分子量を持ち、熱可塑性組成物の溶融強度および安定性の改善に役立つ。典型的には、マイクロ包含ポリマーは、一般的にマトリクスポリマーと非混和性でありうる。このように、添加剤は、マトリクスポリマーの連続相内に個別相領域として、より良く分散しうる。個別領域は、外部力から生じるエネルギーを吸収することができ、結果として生じる材料の全体的靱性および強度を増加させる。領域は、楕円形、球形、円筒形、プレート状、管状などのさまざまな異なる形状を持ちうる。例えば、一つの実施形態では、領域は実質的に楕円の形状を持つ。個々の領域の物理的寸法は、一般的に、外部応力が加わった時、高分子材料を通した割れ目の伝播を最小化するために十分小さいが、プラスチックの微小な変形を開始させ、粒子含有物の所およびその周りのせん断および/または応力強度ゾーンを可能にするために十分大きい。
【0035】
ポリマーは非混和性でありうるが、それでもなおマイクロ包含添加剤は、マトリクスポリマーと比較的類似した溶解パラメータを持つように選択されうる。これは、個別相と連続相の境界の界面適合性および物理的相互作用を向上させ、従って組成物が砕ける可能性を減少させる。この点で、添加剤に対するマトリクスポリマーの溶解パラメータの比は、典型的に約0.5〜約1.5であり、一部の実施形態では約0.8〜約1.2である。例えば、マイクロ包含添加剤は、約15〜約30Mジュール
1/2/m
3/2、一部の実施形態では約18〜約22Mジュール
1/2/m
3/2の溶解パラメータを持つことがある一方、ポリ乳酸は、約20.5Mジュール
1/2/m
3/2の溶解パラメータを持ちうる。「溶解パラメータ」という用語は本書で使用される時、「ヒルデンブランド溶解パラメータ」を指すが、これは凝集エネルギー密度の平方根で、以下の等式に従って計算される:
【0037】
ここで、
ΔHv=蒸発熱
R=理想気体定数
T=温度
Vm=モル体積
【0038】
多くのポリマーのヒルデンブランド溶解パラメータは、Wyeychのプラスチックの溶解性ハンドブック(2004年)からも利用可能で、これは参照により本書に組み込まれる。
【0039】
マイクロ包含添加剤はまた、個別領域および結果生じる細孔が適切に維持されることを確実にするために一定のメルトフローレート(または粘度)を持ちうる。例えば、添加剤のメルトフローレートが高すぎると、流れて、連続相を通して制御されないで分散する傾向がある。これは、維持が難しく、また時期尚早に砕ける可能性の高い層状のプレート様領域または共連続相構造を生じる。反対に、添加剤のメルトフローレートが低すぎると、凝集して非常に大きな楕円形領域を形成する傾向があり、これは混合中に分散させることが困難である。これは、連続相の全体を通して、添加剤の不均一な分布を生じうる。この点で、本発明者は、マトリクスポリマーのメルトフローレートに対するマイクロ包含添加剤のメルトフローレートの比は、一般的に約0.2〜約8、一部の実施形態では約0.5〜約6、および一部の実施形態では約1〜約5であることを発見した。例えば、マイクロ包含添加剤のメルトフローレートは、2160グラムの負荷および190℃で測定された場合、約0.1〜約250グラム/10分、一部の実施形態では約0.5〜約200グラム/10分、および一部の実施形態では約5〜約150グラム/10分でありうる。
【0040】
上述の特性に加えて、マイクロ包含化添加剤の機械的特性も、望ましい多孔質ネットワークを達成するために選択されうる。例えば、マトリクスポリマーおよびマイクロ包含添加剤の混合物に外部力が加えられる時、添加剤とマトリクスポリマーの弾性係数の差から生じる応力集中の結果として、応力集中(例えば、垂直またはせん断応力を含む)およびせん断および/またはプラスチック降伏域が、個別相領域およびその周りで開始されることがありうる。応力集中が大きいほど、領域でのより強い局所的プラスチックの流れを促進し、これによって、応力が伝えられた時、領域が大きく伸長することが可能になる。これらの伸長領域は、組成物が硬質ポリエステル樹脂などである時、マトリクスポリマーよりもよりしなやかで柔軟な挙動を示すことを可能にする。応力集中を高めるために、マイクロ包含添加剤は、マトリクスポリマーと比べて比較的低いヤング弾性係数を持つように選択されうる。例えば、添加剤の弾性係数に対するマトリクスポリマーの弾性係数の比は、一般的に約1〜約250、一部の実施形態では約2〜約100、および一部の実施形態では約2〜約50である。マイクロ包含添加剤の弾性係数は、例えば、約2〜約1000メガパスカル(MPa)、一部の実施形態では約5〜約500MPa、および一部の実施形態では約10〜約200MPaの範囲でありうる。それとは反対に、ポリ乳酸の弾性係数は、例えば、一般的に約800MPa〜約3000MPaである。
【0041】
上記で特定された特性を持つ多種多様のマイクロ包含添加剤を使用しうるが、このような添加剤の特に適切な例には、ポリオレフィン(例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブチレンなど)、スチレン共重合体(例えば、スチレン−ブタジエン−スチレン、スチレン−イソプレン−スチレン、スチレン−エチレン−プロピレン−スチレン、スチレン−エチレン−ブタジエン−スチレンなど)、ポリテトラフルオロエチレン、ポリエステル(例えば、再生ポリエステル、ポリエチレンテレフタレートなど)、ポリ酢酸ビニル(例えば、ポリ(エチレン酢酸ビニル)、ポリ塩化ビニル−酢酸ビニルなど)、ポリビニルアルコール(例えば、ポリビニルアルコール、ポリ(エチレンビニルアルコール)など)、ポリビニルブチラール、アクリル樹脂(例えば、ポリアクリル酸塩、ポリアクリル酸メチル、ポリメタクリル酸メチルなど)、ポリアミド(例えば、ナイロン)、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリスチレン、ポリウレタンなどの合成ポリマーを含みうる。適切なポリオレフィンには、例えば、エチレンポリマー(例えば、低密度ポリエチレン(「LDPE」)、高密度ポリエチレン(「HDPE」)、直鎖低密度ポリエチレン(「LLDPE」}など)、プロピレンホモポリマー(例えば、シンジオタクチック、アタクチック、イソタクチックなど)、プロピレン共重合体などを含みうる。
【0042】
一つの特定の実施形態では、ポリマーは、ホモポリプロピレンまたはプロピレンの共重合体など、プロピレンポリマーである。プロピレンポリマーは、例えば、実質的にイソタクチックポリプロピレン・ホモポリマーまたはその他のモノマーを約10重量%以下(すなわち、プロピレンの少なくとも約90重量%)を含む共重合体から形成されうる。このようなホモポリマーは、約160℃〜約170℃の融点を持ちうる。
【0043】
また別の実施形態では、ポリオレフィンは、エチレンまたはプロピレンと別のα−オレフィン(C
3−C
20 α−オレフィンまたはC
3−C
12 α−オレフィンなど)の共重合体でありうる。適切なα−オレフィンの具体例には、1−ブテン、3−メチル−1−ブテン、3,3−ジメチル−1−ブテン、1−ペンテン、一つ以上のメチル、エチルまたはプロピル置換基を持つ1−ペンテン、一つ以上のメチル、エチルまたはプロピル置換基を持つ1−ヘキセン、一つ以上のメチル、エチルまたはプロピル置換基を持つ1−ヘプテン、一つ以上のメチル、エチルまたはプロピル置換基を持つ1−オクテン、一つ以上のメチル、エチルまたはプロピル置換基を持つ1−ノネン、エチル、メチルまたはジメチル置換1−デセン、1−ドデセン、およびスチレンを含む。特に望ましいα−オレフィンコモノマーは、1−ブテン、1−ヘキセンおよび1−オクテンである。このような共重合体のエチレンまたはプロピレン含量は、約60モル%〜約99モル%、一部の実施形態では約80モル%〜約98.5%、および一部の実施形態では約87モル%〜約97.5モル%でありうる。α−オレフィン含量は、同様に約1モル%〜約40モル%、一部の実施形態では約1.5モル%〜約15モル%、および一部の実施形態では約2.5モル%〜約13モル%の範囲でありうる。
【0044】
本発明で使用するための模範的オレフィン共重合体には、テキサス州ヒューストンのExxonMobil Chemical CompanyからEXACT(商標)という名称で市販されているエチレンベースの共重合体を含む。その他の適切なエチレン共重合体は、ミシガン州ミッドランドのDow Chemical CompanyからENGAGE(商標)、AFFINITY(商標)、DOWLEX(商標)(LLDPE)およびATTANE(商標)(ULDPE)という名称で市販されている。その他の適切なエチレンポリマーは、
Ewenらの米国特許第4,937,299号、
Tsutsuiらの第5,218,071号、
Laiらの第5,272,236号、および
Laiらの第5,278,272号に記述されている。適切なプロピレン共重合体も、ExxonMobil Chemical Co.(テキサス州ヒューストン)のVISTAMAXX(商標)、Atofina Chemicals(ベルギー、フェルイ)のFINA(商標)(例えば、8573)、三井石油化学工業のTAFMER(商標)、およびDow Chemical Co.(ミシガン州ミッドランド)のVERSIFY(商標)という名称で市販されている。適切なポリプロピレンホモポリマーには同様に、Exxon Mobil 3155ポリプロピレン、Exxon Mobil Achieve(商標)樹脂およびTotal M3661 PP樹脂を含みうる。プロピレンポリマーのその他の例は、
Dattaらの米国特許第6,500,563号、
Yangらの第5,539,056号、および
Resconiらの第5,596,052号に記述されている。
【0045】
さまざまな既知の技術のいずれでも、オレフィン共重合体を形成するために一般的に使用されうる。例えば、オレフィンポリマーは、フリーラジカルまたは配位触媒(例えば、チーグラー・ナッタ)を使用して形成されうる。好ましくは、オレフィンポリマーは、メタロセン触媒などの、単一部位配位触媒から形成される。このような触媒系は、コモノマーが、分子鎖内に無作為に分布され、異なる分子量分画にわたって均一に分布されたエチレン共重合体を生成する。メタロセン触媒によるポリオレフィンは、例えば、
McAlpinらの米国特許第5,571,619号、
Davisらの第5,322,728号、
Obijeskiらの第5,472,775号、
Laiらの第5,272,236号、および
Wheatらの第6,090,325号に記述されている。メタロセン触媒の例には、ビス(n−ブチルシクロペンタジエニル)チタニウム・ジクロリド、ビス(n−ブチルシクロペンタジエニル)ジルコニウム・ジクロリド、ビス(シクロペンタジエニル)スカンジウム・クロリド、ビス(インデニル)ジルコニウム・ジクロリド、ビス(メチルシクロペンタジエニル)チタニウム・ジクロリド、ビス(メチルシクロペンタジエニル)ジルコニウム・ジクロリド、コバルトセン、シクロペンタジエニルチタニウム・トリクロリド、フェロセン、ハフノセン・ジクロリド、イソプロピル(シクロペンタジエニル,−1−フルオレニル)ジルコニウム・ジクロリド、二塩化モリブドセン、ニッケロセン、二塩化ニオボセン、ルテノセン、二塩化チタノセン、ジルコノセンクロリドヒドリド、二塩化ジルコノセンなどを含む。メタロセン触媒を使用して作ったポリマーは、一般的に狭い分子量範囲を持つ。例えば、メタロセン触媒によるポリマーは、4より小さい多分散数(M
w/M
n)、制御された短鎖分岐分布、および制御されたイソタクシチシーを持ちうる。
【0046】
使用する材料に関わらず、熱可塑性組成物中のマイクロ包含添加剤の相対的パーセントは、組成物の基本特性に大きく影響することなく、望ましい特性を達成するように選択される。例えば、強化添加剤は、マイクロ包含添加剤は一般的に、連続相(マトリクスポリマー)の重量に基づいて、熱可塑性組成物の約1重量%〜約30重量%、一部の実施形態では、約2重量%〜約25重量%、および一部の実施形態では約5重量%〜約20重量%の量で使用される。熱可塑性組成物全体のマイクロ包含添加剤の濃度は、同様に、約0.1重量%〜約30重量%、一部の実施形態では約0.5重量%〜約25重量%、および一部の実施形態では約1重量%〜約20重量%を占めうる。
【0047】
C.
ナノ包含添加剤
本明細書で使用される場合、「ナノ包含添加剤」という用語は、ポリマーマトリクス内にナノスケールサイズの個別領域の形態で分散されることのできる任意の非晶質、結晶または半結晶材料を一般的に指す。例えば、変形する前に、領域は、約1〜約1000ナノメートル、一部の実施形態では約5〜約800ナノメートル、一部の実施形態では約10〜約500ナノメートル、および一部の実施形態では約20〜約200ナノメートルの平均断面寸法を持ちうる。これも当然のことながら、ナノスケール領域はマイクロ包含添加剤およびナノ包含添加剤および/または組成物のその他の成分の組み合わせからも形成されうる。ナノ包含添加剤は一般的に、連続相(マトリクスポリマー)の重量に基づいて、熱可塑性組成物の約0.05重量%〜約20重量%、一部の実施形態では、約0.1重量%〜約10重量%、および一部の実施形態では約0.5重量%〜約5重量%の量で使用される。熱可塑性組成物全体のナノ包含添加剤の濃度は、同様に、約0.01重量%〜約15重量%、一部の実施形態では約0.05重量%〜約10重量%、および一部の実施形態では約0.3重量%〜約6重量%でありうる。
【0048】
ナノ包含添加剤は高分子の性質であり、比較的高い分子量を持ち、熱可塑性組成物の溶融強度および安定性の改善に役立つ。ナノスケール領域中に分散するその能力を強化するために、ナノ包含添加剤は、マトリクスポリマーおよびマイクロ包含添加剤と一般的に適合する材料からも選択されうる。これは、マトリクスポリマーまたはマイクロ包含添加剤が、ポリエステルなどの極性部分を有する時、特に有用でありうる。一例では、このようなナノ包含添加剤は官能性ポリオレフィンである。例えば、極性成分は一つ以上の官能基によって提供され、非極性成分はオレフィンによって提供されうる。ナノ包含添加剤のオレフィン成分は、概して、上述のようなオレフィンモノマーから由来する任意の直鎖または分岐α−オレフィンモノマー、オリゴマー、またはポリマー(共重合体を含む)から形成されうる。
【0049】
ナノ包含添加剤の官能基は、分子に極性成分を提供し、マトリクスポリマーと適合しない任意の基、分子セグメントおよび/またはブロックでありうる。ポリオレフィンと適合しない分子セグメントおよび/またはブロックの例には、アクリレート、スチレン、ポリエステル、ポリアミドなどが含まれうる。官能基は、イオン性質を持ち、荷電金属イオンを含みうる。特に適切な官能基は、無水マレイン酸、マレイン酸、フマル酸、マレイミド、マレイン酸ヒドラジド、無水マレイン酸とジアミンの反応生成物、メチルナド酸無水物、ジクロロマレイン酸無水物、マレイン酸アミドなどである。無水マレイン酸修飾ポリオレフィンは、本発明の使用に特に適している。このような修飾ポリオレフィンは、ポリマー骨格材料に無水マレイン酸をグラフトすることによって一般的に形成される。このようなマレイン酸化ポリオレフィンは、E. I. du Pont de Nemours and CompanyからFusabond(登録商標)という名前で市販されており、Pシリーズ(化学修飾ポリプロピレン)、Eシリーズ(化学修飾ポリエチレン)、Cシリーズ(化学修飾エチレン酢酸ビニル)、Aシリーズ(化学修飾エチレンアクリレート共重合体またはターポリマー)、またはNシリーズ(化学修飾エチレン−プロピレン、エチレン−プロピレンジエンモノマー(「EPDM」)またはエチレン−オクタン)などがある。代替的に、マレイン酸化ポリオレフィンは、Polybond(登録商標)という名称でChemtura Corp.から、Eastman Gシリーズという名称でEastman Chemical Companyからも市販されている。
【0050】
特定の実施形態では、ナノ包含添加剤も反応性でありうる。このような反応性のナノ包含添加剤の一例は、分子あたり平均して少なくとも二つのオキシレン環を含むポリエポキシドである。理論に制限されるものではないが、このようなポリエポキシド分子は、特定条件下でマトリクスポリマー(例えば、ポリエステル)の反応を誘発し、それによってガラス転移温度を大きく低下させることなく溶融強度を改善することができると考えられる。反応には、鎖延長、側差分岐、グラフト、共重合体形成などが伴いうる。例えば、鎖延長は、さまざまな異なる反応経路を通して起こりうる。例えば、修飾剤は、ポリエステルのカルボニル末端基を通して(エステル化)またはヒドロキシル基を通して(エーテル化)、求核的開環反応を可能にしうる。オキサゾリン副反応が同様に起こって、エステルアミド部分を形成しうる。このような反応を通して、マトリクスポリマーの分子量を増加させて、溶融処理中によく見られる分解に対抗しうる。上述のようにマトリクスポリマーの反応を誘発することが望ましい場合があるが、本発明者らは、反応が進みすぎると、ポリマー骨格間の架橋を生じうることを発見した。このような架橋がかなりの程度まで進むと、結果生じるポリマー混合物が脆くなって、望ましい強度および伸長特性を持つ材料へと処理することが困難になりうる。
【0051】
この点で、本発明者は、比較的低いエポキシ官能性を持つポリエポキシドが特に効果的であり、これはその「エポキシ当量」によって定量化しうることを発見した。エポキシ当量は、エポキシ基の1分子を含む樹脂の量を反映し、これは、修飾剤の数平均分子量を分子中のエポキシ基の数で割ることによって計算されうる。本発明のポリエポキシドは、一般的に、約7,500〜約250,000グラム/モル、一部の実施形態では約15,000〜約150,000グラム/モル、および一部の実施形態では約20,000〜約100,000グラム/モルの範囲の数平均分子量を持ち、多分散指数は一般的に2.5〜7の範囲である。ポリエポキシドは、50個未満、一部の実施形態では5〜45個、および一部の実施形態では15〜40個のエポキシ基を含みうる。同じく、エポキシ当量は、約15,000/モル未満、一部の実施形態では約200〜約10,000グラム/モル、および一部の実施形態では約500〜約7,000グラム/モルでありうる。
【0052】
ポリエポキシドは、末端エポキシ基、骨格オキシレン単位、および/または張り出したエポキシ基を含む、直鎖または分岐の、ホモポリマーまたは共重合体(例えば、ランダム、グラフト、ブロックなど)でありうる。このようなポリエポキシドを形成するために使用されるモノマーは異なりうる。一つの特定の実施形態では、例えば、ポリエポキシドは、少なくとも一つのエポキシ官能性(メタ)アクリルモノマー成分を含む。本書で使用される時、「(メタ)アクリル」という用語は、アクリルおよびメタクリルモノマー、並びにアクリレートおよびメタクリレートモノマーなど、その塩またはエステルを含む。例えば、適切なエポキシ官能性(メタ)アクリルモノマーには、アクリル酸グリシジルおよびメタクリル酸グリシジルなどの、1,2−エポキシ基を含むものが含まれうるがこれに限定されない。その他の適切なエポキシ官能性モノマーには、アリルグリシジルエーテル、エタクリル酸グリシジル、およびイタコン酸グリシジルが含まれる。
【0053】
ポリエポキシドは、鎖延長をもたらすだけでなく、望ましい混合形態を達成するのに役立つように、上述のように比較的高い分子量を一般的に持つ。こうして、ポリマーの結果生じるメルトフローレートは、2160グラムの負荷および190℃で測定された場合、約10〜約200グラム/10分、一部の実施形態では約40〜約150グラム/10分、および一部の実施形態では約60〜約120グラム/10分でありうる。
【0054】
必要に応じて、望ましい分子量を達成するのを助けるためにポリエポキシド中に追加的モノマーも使用しうる。このようなモノマーは異なることがあり、例えば、エステルモノマー、(メタ)アクリルモノマー、オレフィンモノマー、アミドモノマーなどを含みうる。一つの特定の実施形態では、例えば、ポリエポキシドは、2〜20個の炭素原子、好ましくは2〜8個の炭素原子を持つものなどの、少なくとも一つの直鎖または分岐α−オレフィンモノマーを含む。具体例には、エチレン、プロピレン、1−ブテン、3−メチル−1−ブテン、3,3−ジメチル−1−ブテン、1−ペンテン、一つ以上のメチル、エチルまたはプロピル置換基を持つ1−ペンテン、一つ以上のメチル、エチルまたはプロピル置換基を持つ1−ヘキセン、一つ以上のメチル、エチルまたはプロピル置換基を持つ1−ヘプテン、一つ以上のメチル、エチルまたはプロピル置換基を持つ1−オクテン、一つ以上のメチル、エチルまたはプロピル置換基を持つ1−ノネン、エチル、メチルまたはジメチル置換1−デセン、1−ドデセン、およびスチレンを含む。特に望ましいα−オレフィンコモノマーは、エチレンおよびプロピレンである。
【0055】
別の適切なモノマーには、エポキシ官能性でない(メタ)アクリルモノマーを含みうる。このような、(メタ)アクリルモノマーの例には、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n−プロピル、アクリル酸i−プロピル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸s−ブチル、アクリル酸i−ブチル、アクリル酸t−ブチル、アクリル酸n−アミル、アクリル酸i−アミル、アクリル酸イソボルニル、アクリル酸n−ヘキシル、アクリル酸2−エチルブチル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸n−オクチル、アクリル酸n−デシル、アクリル酸メチルシクロヘキシル、アクリル酸シクロペンチル、アクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル、メタクリル酸n−プロピル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸i−プロピル、メタクリル酸i−ブチル、メタクリル酸n−アミル、メタクリル酸n−ヘキシル、メタクリル酸i−アミル、メタクリル酸s−ブチル、メタクリル酸t−ブチル、メタクリル酸2−エチルブチル、メタクリル酸メチルシクロヘキシル、メタクリル酸シンナミル、メタクリル酸クロチル、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸シクロペンチル、メタクリル酸2−エトキシエチル、メタクリル酸イソボルニルなど、並びにその組み合わせを含みうる。
【0056】
本発明の特に望ましい一つの実施形態では、ポリエポキシドは、エポキシ官能性の(メタ)アクリル単量体成分、α−オレフィン単量体成分、および非エポキシ官能性の(メタ)アクリル単量体成分である。例えば、ポリエポキシドは、ポリ(エチレン−コ−メチルアクリレート−コ−グリシジルメタクリレート)であることがあり、これは以下の構造を持つ:
【0058】
ここで、x、y、およびzは1以上である。
さまざまな既知の技術を使用して、エポキシ官能性モノマーをポリマーにしうる。例えば、極性官能基を含むモノマーは、ポリマー骨格にグラフトされてグラフト共重合体を形成しうる。このようなグラフト技術は、当技術分野でよく知られており、例えば、米国特許第5,179,164号に記述されている。その他の実施形態では、エポキシ官能基を含むモノマーは、高圧反応、チーグラー・ナッタ触媒反応系、単一部位触媒(例えば、メタロセン)反応系などの、既知のフリーラジカル重合技術を使用して、モノマーと共重合されてブロックまたはランダム共重合体を形成しうる。
【0059】
単量体成分の相対的部分は、エポキシ反応性とメルトフローレートの間のバランスを達成するように選択されうる。より具体的には、高いエポキシモノマー含量は、マトリクスポリマーとの良好な反応性をもたらしうるが、含量が高すぎると、ポリエポキシドがポリマー混合物の溶融強度に悪影響を与えるほど、メルトフローレートを減少させうる。従って、ほとんどの実施形態では、エポキシ官能性(メタ)アクリルモノマーは、共重合体の約1重量%〜約25重量%、一部の実施形態では約2重量%〜約20重量%、および一部の実施形態では約4重量%〜約15重量%を占める。同様にα−オレフィンモノマーは、共重合体の約55重量%〜約95重量%、一部の実施形態では約60重量%〜約90重量%、および一部の実施形態では約65重量%〜約85重量%を占めうる。使用される場合、その他の単量体成分(例えば、非エポキシ官能性(メタ)アクリルモノマー)は、共重合体の約5重量%〜約35重量%、一部の実施形態では約8重量%〜約30重量%、および一部の実施形態では約10重量%〜約25重量%を占めうる。本発明で使用されうる、適切なポリエポキシドの一つの具体例は、LOTADER(登録商標)AX8950またはAX8900という名前でArkemaから市販されている。例えば、LOTADER(登録商標)AX8950は、70〜100g/10分のメルトフローレートを持ち、7重量%〜11重量%のメタクリル酸グリシジルモノマー含量、13重量%〜17重量%のアクリル酸メチルモノマー含量、および72重量%〜80重量%のエチレンモノマー含量を持つ。別の適切なポリエポキシドは、ELVALOY(登録商標)PTWという名称でDuPontから市販されており、これはエチレン、ブチルアクリレート、およびグリシジルメタクリレートのターポリマーであり、12g/10分のメルトフローレートを持つ。
【0060】
ポリエポキシドを形成するために使用するモノマーのタイプおよび相対的含量を制御することに加えて、望ましい利益を達成するために全体的重量パーセントも制御されうる。例えば、修飾レベルが低すぎると、溶融強度および機械的特性の望ましい増加が達成されないことがある。しかし本発明者は、修飾レベルが高すぎると、エポキシ官能基による強い分子間相互作用(例えば、架橋)および物理的ネットワーク形成のために、プロセスが制限されうることも発見した。従って、ポリエポキシドは、一般的に、組成物に使用されるマトリクスポリマーの重量に基づいて、約0.05重量%〜約10重量%、一部の実施形態では、約0.1重量%〜約8重量%、一部の実施形態では約0.5重量%〜約5重量%、および一部の実施形態では約1重量%〜約3重量%の量で使用される。またポリエポキシドは、組成物の総重量に基づいて、約0.05重量%〜約10重量%、一部の実施形態では約0.05重量%〜約8重量%、一部の実施形態では約0.1重量%〜約5重量%、および一部の実施形態では約0.5重量%〜約3重量%を占めうる。
【0061】
オキサゾリン官能性化ポリマー、シアニド官能性化ポリマーなど、その他の反応性のナノ包含添加剤も本発明で使用しうる。使用された場合、このような反応性のナノ包含添加剤は、ポリエポキシドに対して上述の濃度内で使用されうる。一つの特定の実施形態では、オキサゾリン環を含むモノマーでグラフトされたポリオレフィンである、オキサゾリングラフト化ポリオレフィンが使用されうる。オキサゾリンには、2−ビニル−2−オキサゾリン(例えば、2−イソプロペニル−2−オキサゾリン)、2−脂肪−アルキル−2−オキサゾリン(例えば、オレイン酸、リノレン酸、パルミトオレイン酸、ガドレイン酸、エルカ酸および/またはアラキドン酸のエタノールアミドから取得可能)およびその組み合わせなどの、2−オキザロリンを含みうる。別の実施形態では、オキサゾリンは、例えば、マレイン酸リシノールオキサゾリン、ウンデシル−2−オキサゾリン、ソヤ−2−オキサゾリン、リシヌス−2−オキサゾリンおよびその組み合わせから選択されうる。また別の実施形態では、オキサゾリンは、2−イソプロペニル−2−オキサゾリン、2−イソプロペニル−4,4−ジメチル−2−オキサゾリンおよびその組み合わせから選択される。
【0062】
カーボンブラック、カーボンナノチューブ、カーボンナノ繊維、ナノクレイ、金属ナノ粒子、ナノシリカ、ナノアルミナなどの、ナノフィラーも使用しうる。ナノクレイは特に適している。「ナノクレイ」という用語は、クレイ材料(天然鉱物、有機修飾された鉱物、または合成名の材料)のナノ粒子を一般的に指し、これは典型的には板状構造を持つ。ナノクレイの例には、例えば、モンモリロナイト(2:1層状スメクタイト粘土構造)、ベントナイト(モンモリロナイトで主に形成されたフィロケイ酸アルミニウム)、カオリナイト(1:1板状構造およびAl
2Si
2O
5(OH)
4)の経験式を持つ)アルミノケイ酸塩)、ハロイサイト(1:1管状構造およびAl
2Si
2O
5(OH)
4)を持つアルミノケイ酸塩などが含まれる。適切なナノクレイの一例はCloisite(登録商標)で、これは、モンモリロナイトナノクレイであり、Southern Clay Products, Inc.から市販されている。合成ナノクレイのその他の例には、混合金属水酸化物ナノクレイ、層状二重水酸化物ナノクレイ(例えば、セピオサイト)、ラポナイト、ヘクトライト、サポナイト、インドナイトなどが含まれるがこれらに限定されない。
【0063】
望ましい場合、ナノクレイは、マトリクスポリマー(例えば、ポリエステル)との適合性を改善するのを助ける表面処理剤を含みうる。表面処理剤は有機または無機でありうる。一つの実施形態では、有機カチオンとクレイの反応によって得られる有機表面処理剤が用いられる。適切な有機カチオンには、例えば、ジメチルビス[水素化獣脂]塩化アンモニウム(2M2HT)、メチルベンジルビス[水素化獣脂]塩化アンモニウム(MB2HT)、メチルトリス[水素化獣脂アルキル]クロリド(M3HT)など、クレイとカチオンを交換することのできる有機第四級アンモニウム化合物を含みうる。市販されている有機ナノクレイの例には、例えば、ジメチルベンジル水素化獣脂アンモニウム塩で修飾されたモンモリロナイトクレイであるDellite(登録商標) 43B(イタリア、リボルノのLaviosa Chimica)が含まれうる。その他の例には、Cloisite(登録商標)25AおよびCloisite(登録商標)30B(Southern Clay Products)およびNanofil 919(Svd Chemie)が含まれる。望ましい場合、ナノフィラーを担体樹脂と混合して、添加剤と組成物のその他のポリマーとの適合性を向上させるマスターバッチを形成できる。特に適切な担体樹脂には、上記にさらに記述されるように、例えば、ポリエステル(例えば、ポリ乳酸、ポリエチレンテレフタル酸など)、ポリオレフィン(例えば、エチレンポリマー、プロピレンポリマーなど)などが含まれる。
【0064】
本発明の特定の実施形態では、複数のナノ包含添加剤を組み合わせて使用しうる。例えば、第一のナノ包含添加剤(例:ポリエポキシド)は、約50〜約500ナノメートル、一部の実施形態では約60〜約400ナノメートル、および一部の実施形態では約80〜約300ナノメートルの平均断面寸法を持つ領域の形態で分散されうる。第二のナノ包含添加剤(例えば、ナノフィラー)は、約1〜約50ナノメートル、一部の実施形態では約2〜約45ナノメートル、および一部の実施形態では約5〜約40ナノメートルの平均断面寸法を持つものなど、第一のナノ包含添加剤より小さい領域の形態でも分散されうる。用いられる時、第一および/または第二のナノ包含添加剤は一般的に、連続相(マトリクスポリマー)の重量に基づいて、熱可塑性組成物の約0.05重量%〜約20重量%、一部の実施形態では、約0.1重量%〜約10重量%、および一部の実施形態では約0.5重量%〜約5重量%の量を占める。熱可塑性組成物全体の第一および/または第二のナノ包含添加剤の濃度は、同様に、熱可塑性組成物の約0.01重量%〜約15重量%、一部の実施形態では約0.05重量%〜約10重量%、および一部の実施形態では約0.1重量%〜約8重量%でありうる。
【0065】
D.
その他の成分
さまざまな異なる理由で、組成物には多種多様な原料を使用しうる。例えば、一つの特定の実施形態では、熱可塑性組成物に相間修飾剤を使用して、マイクロ包含添加剤とマトリクスポリマーの間の摩擦および結合性の程度を減らすのを助け、そのため剥離の程度および均一性を向上させうる。このように、細孔は、組成物全体に渡って実質的に均一な様式で分布されうる。修飾剤は、比較的低い粘度を持ち、熱可塑性組成物により容易に組み込むことができ、ポリマー表面に簡単に移動できるよう、室温(例えば、25℃)で液体または半固体の形態でありうる。この点で、相間修飾剤の動粘度は、40℃で測定された時、一般的に約0.7〜約200センチストーク(「cs」)、一部の実施形態では、約1〜100cs、および一部の実施形態では約1.5〜約80csである。さらに、相間修飾剤は、マイクロ包含添加剤に対する親和性を持ち、例えばマトリクスポリマーと添加剤との間の界面張力の変化を生じるように、一般的に疎水性でもある。マトリクスポリマーとマイクロ包含添加剤との間の界面での物理的力を減らすことによって、修飾剤の低粘度、疎水性の性質が剥離の促進を助けることができると考えられる。本書で使用されるとき、「疎水性」という用語は、一般的に、空気中の水の接触角が約40度以上、一部の場合は約60度以上の材料を指す。対照的に、「親水性」という用語は、一般的に、空気中の水の接触角が約40度未満の材料を指す。接触角の測定のための一つの適切な試験はASTM D5725−99(2008年)である。
【0066】
適切な疎水性、低粘度の相間修飾剤には、例えば、シリコン、シリコン−ポリエステル共重合体、脂肪族ポリエステル、芳香族ポリエステル、アルキレングリコール(例えば、エチエングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリブチレングリコールなど)、アルカンジオール(例えば、1,3−プロパンジオール、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、2,2,4−トリメチル−1,6ヘキサンジオール、1,3−シクロヘキサンジメタノール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、2,2,4,4,−テトラメチル−1,3−シクロブタンジオールなど)、アミンオキシド(例えば、オクチルジメチルアミン・オキシド)、脂肪酸エステル、脂肪酸アミド(例えば、オレアミド、エルカミド、ステアラミド、エチレンビス(ステアラミド)など)、鉱物、および植物油などを含みうる。一つの特に適切な液体および半固体はポリエーテルポリオールであり、BASF Corp.からPluriol(登録商標)WIという商標名で市販されているものなどがある。別の適切な修飾剤は、部分的に再生可能なエステルであり、HallstarからHALLGREEN(登録商標)IMという名称で市販されているものなどがある。
【0067】
用いられる時、相間修飾剤は、連続相(マトリクスポリマー)の重量に基づいて、熱可塑性組成物の約0.1重量%〜約20重量%、一部の実施形態では、約0.5重量%〜約15重量%、および一部の実施形態では約1重量%〜約10重量%の量を占めうる。熱可塑性組成物全体の相間修飾剤の濃度も、同様に、約0.05重量%〜約20重量%、一部の実施形態では約0.1重量%〜約15重量%、および一部の実施形態では約0.5重量%〜約10重量%を占めうる。
【0068】
上述の量で使用された時、相間修飾剤は、熱可塑性組成物の全体的溶解特性を妨げることなく、ポリマーの界面に容易に移動し、剥離を促進することを可能にする特徴を持つ。例えば、相間修飾剤は、ガラス転移温度を低下させることによる、ポリマーに対する可塑化効果は一般的に持たない。これとは対照的に、本発明者らは、熱可塑性組成物のガラス転移温度は、初めのマトリクスポリマーと実質的に同じでありうることを発見した。この点で、マトリクスポリマーのガラス転移温度に対する組成物のガラス転移温度の比は、一般的に約0.7〜1.3、一部の実施形態では約0.8〜約1.2、および一部の実施形態では約0.9〜約1.1である。熱可塑性組成物は、例えば、約35℃〜約80℃、一部の実施形態では約40℃〜約80℃、および一部の実施形態では約50℃〜約65℃のガラス転移温度を持ちうる。熱可塑性組成物のメルトフローレートも、マトリクスポリマーのメルトフローレートと同様でありうる。例えば、組成物のメルトフローレート(ドライベース)もまた、2160グラムの負荷および190℃で測定された場合、約0.1〜約70グラム/10分、一部の実施形態では約0.5〜約50グラム/10分、および一部の実施形態では約5〜約25グラム/10分でありうる。
【0069】
界面接着を改善し、領域とマトリクスの間の界面張力を減らして、それによって混合中のより小さな領域の形成を可能にする相溶化剤も用いうる。適切な相溶化剤の例には、例えば、エポキシまたは無水マレイン酸化学部分で官能化された共重合体が含まれる。無水マレイン酸相溶化剤の例は、ポリプロピレン−グラフト化−無水マレイン酸で、これはOrevac(商標)18750およびOrevac(商標)CA 100の商標でArkemaから市販されている。用いられる時、相溶化剤は、連続相マトリクスの重量に基づいて、熱可塑性組成物の約0.05重量%〜約10重量%、一部の実施形態では、約0.1重量%〜約8重量%、および一部の実施形態では約0.5重量%〜約5重量%の量を占めうる。
【0070】
熱可塑性組成物に使用されうるその他の適切な材料には、触媒、抗酸化剤、安定剤、界面活性剤、ワックス、固体溶剤、充填剤、核形成剤(例えば、炭酸カルシウムなど)、可塑剤、微粒子、ならびに熱可塑性組成物の処理可能性および機械的特性を高めるために追加されるその他の材料が含まれうる。
【0071】
熱可塑性組成物を形成するために、成分は典型的には、さまざまな既知の技術のいずれかを使用して混合される。一つの実施形態では、例えば、組成物は別々に、または組み合わせて供給されうる。例えば、組成物は、まず乾燥混合されて基本的に均一な乾燥混合物を形成し、同様に、分散的に材料を混合する溶融処理装置に同時または順番に供給されうる。バッチおよび/または連続溶融処理技術を用いうる。例えば、ミキサー/混練機、バンバリーミキサー、ファレル連続ミキサー、単軸スクリュー押出機、二軸スクリュー押出機、ロールミルなどを使用して、材料を混合し溶融処理しうる。特に適切な溶融処理装置は、共回転、二軸スクリュー押出機(例えば、Werner & Pfleiderer Corporation(ニュージャージー州ラムジー)から入手可能なZSK−30押出機またはThermo Electron Corp.(イギリス、ストーン)から入手可能なThermo Prism(商標) USALAB 16押出機でありうる。このような押出機は、供給ポートおよび換気ポートを含み、強力な分配・分散混合をもたらす。例えば、成分は二軸スクリュー押出機の同じまたは異なる供給ポートに供給され溶融混合されて、実質的に均一な溶融混合物を形成しうる。必要に応じて、その他の添加剤も、ポリマー溶解物に注入および/または押出機の長さに沿った異なる点で押出機に別々に供給されうる。
【0072】
選択される特定の処理技術に関わらず、結果得られる溶融混合された組成物は一般的に、上述のようなマイクロ包含添加剤のマイクロスケール領域およびナノ包含添加剤のナノスケール領域を含む。せん断/圧力および熱の程度は、十分な分散を確実にするが、望ましい特性を達成できないほど領域のサイズを不利に減少させないように制御されうる。例えば、混合は一般的に、約180℃〜約300℃、一部の実施形態では約185℃〜約250℃、および一部の実施形態では約190℃〜約240℃の温度で起こる。同様に、溶融処理中の見かけのせん断速度は、約10秒
−1〜約3000秒
−1、一部の実施形態では約50秒
−1〜約2000秒
−1、および一部の実施形態では約100秒
−1〜約1200秒
−1の範囲でありうる。見かけのせん断速度は、4Q/πR
3と等しい場合があり、ここでQはポリマー溶融物の体積流量(「m
3/秒」)であり、Rは溶融ポリマーの流れが通るキャピラリー(例えは、押出機金型)の半径(「m」)である。もちろん、押出し量に反比例する溶融処理中の滞留時間など、その他の変数も、均一の望ましい程度を達成するために制御されうる。
【0073】
望ましいせん断条件(例えば、速度、滞留時間、せん断速度、溶融処理温度など)を達成するために、押出機スクリュー速度を、特定の範囲に選択しうる。一般的に、システムへの追加的な機械エネルギーの投入のために、スクリュー速度の増加と共に、製品温度の上昇が見られる。例えば、スクリュー速度は、約50〜約600回転/分(「rpm」)、一部の実施形態では約70〜500rpm、および一部の実施形態では約100〜約300rpmの範囲でありうる。これは、結果として生じる領域のサイズに悪影響を与えることなく、マイクロ包含添加剤を分散するために十分高い温度をもたらしうる。溶融せん断速度、および同様に添加剤が分散される程度も、押出機の混合セクション内での一つ以上の分配および/または分散混合成分の使用を通して増加させうる。単軸スクリュー押出機のための適切な分配ミキサーには、例えば、Saxon、Dulmage、Cavity Transferミキサーなどが含まれうる。同様に、適切な分散ミキサーには、Blisterリング、Leroy/Maddock、CRDミキサーなどが含まれうる。当技術分野でよく知られているように、Buss Kneader押出機、Cavity Transferミキサー、およびVortex Intermeshing Pin(VIP)ミキサーで使用されるものなど、混合は、ポリマー溶融物の折り畳みおよび再配列を生成するバレルのピンの使用によって、さらに改善されうる。
【0074】
II.
細孔の開始
一旦形成されると、熱可塑性組成物は高分子材料に変換され、その後変形されて望ましいマルチモードの多孔質ネットワークを作りうる。高分子材料の性質は重要でなく、シート、フィルム、繊維、繊維状ウェブ、輪郭、型、バーなどの形状でありうる。典型的には、高分子材料は、約1〜約5000マイクロメートル、一部の実施形態では約2〜約4000マイクロメートル、一部の実施形態では約5〜約2500マイクロメートル、および一部の実施形態では約10〜約500マイクロメートルの厚さを持つ。代替方法として、熱可塑性組成物は、それが高分子材料の望ましい形態(例えば、フィルムまたは繊維)に成形される際に、その場でも変形されうる。
【0075】
いずれにしても、例えば縦方向(例えば、流れ方向)、横方向(例えば、幅方向)など、およびその組み合わせの方向に変形させることによって、変形歪み(例えば、曲げ、引き伸ばし、ねじり、など)が高分子材料に加えられる。変形させることは一般的に、手動で、または従来的機器(例えば、機械的延伸)を使用して実施されうる。一つの適切な機械延伸技術は、例えば、ニップロールプロセスで、このプロセスでは材料が、少なくとも一つが回転可能な二つのロールの間に
画定された間隙の間を通過する。一つの実施形態では、ロールの少なくとも一つは、材料の局所的変形を作ることができる、隆起した型押し要素のパターンを含む。同様にもう一方のロールは、パターンがあるかまたは滑らかでありうる(例えば、アンビルロール)。変形エリアが、キャビテーション降伏応力より高いレベルの応力を受けると、これらのエリアは初期細孔を形成しうる。さらなる延伸応力を受ける時、細孔エリアは、残りの材料が空洞を作る前にサイズが大きくなる。別の適切なニップロールプロセスは、高分子材料がそれを通って流れることのできる溝付きロールの使用を伴う。ニップの使用の他に、ロール自体の回転速度も、望ましい大きさの機械応力を与えるのを助けるために使用されうる。一つの実施形態では、例えば、材料は材料の流れを徐々に引く、一連のロールの上を通過する。このような延伸を達成するための一つの適切な方法は、流れ方向オリエンター(「MDO」)の使用によるものである。MDOユニットは典型的に、高分子材料を流れ方向に徐々に引くことができる複数のロール(例えば、5〜8)を持つ。材料は、単一または複数の個別の引き動作のいずれかで引かれうる。MDO装置のロールの一部は漸進的に高くなる速度で動作していない場合があることに、注意すべきである。上述の方法で材料を引くために、MDOのロールが加熱されないことが一般的には望ましい。いずれにしても、望ましい場合、組成物の温度が上述の範囲より下に留まる限り、延伸プロセスを促進するようなわずかな程度まで一つ以上のロールを加熱しうる。
【0076】
延伸技術の別の例はダイス延伸である。典型的なダイス延伸プロセスでは、材料は最初に前駆形状(例えば、輪郭)に押し出され、冷却される。前駆体は次に、固体状態で収束ダイスを通して機械的に延伸される。一つの特に適切なダイス延伸プロセスは延伸成形で、この間、材料はダイスを通して延伸されるかまたは引かれて、ダイスの形状によって決定される工学的輪郭または形状を形成する。ダイス延伸以外に、その他の機械的延伸技術も用いられうる。一つの実施形態では、例えば、テンターフレーム延伸、ブレーキ延伸など、シート延伸を使用しうる。一つの特定の実施形態では、例えば、高分子材料は、機械的、電気的、油圧または空気圧ブレーキ組立品を使用して、シートの形状に機械的に延伸されうる。ブレーキ組立品は、材料が最初に配置される表面、締め付けバー、および材料に曲げを作るために持ち上げられる曲げ部材を含みうる。より具体的には、ブレーキ組立品は、高分子材料を受け入れるためにそれぞれが反対の締め付け表面を提示する、概してC型の複数の部材を含みうる。さらに、締め付け表面の間に配置された材料を曲げる曲げ部材を回転可能なように支持するために、ソケット継手を使用しうる。ソケット継手は、互いにスライド係合しているか、または互いにピン蝶番継手によって結合されたオス部分およびメス部分を一般的に含む。このようなブレーキ組立品は当技術分野で知られており、例えば、
Breakによる米国特許第4,282,735号、
Breakによる第4,557,132号、および
Chubbによる第6,389,864号にさらに詳細に記述されている。
【0077】
また別の技術には、望ましい程度のエネルギーおよび応力を材料に与えるための流体媒体(例えば、ガス)の使用を伴う。このようなプロセスの一つは、例えば吸引で、これには、材料を延伸するための吹き付け空気の使用を一般的に伴う。例えば、米国特許第3,802,817号および第3,423,255号に示されるタイプの線形繊維アスピレータなどの、繊維延伸アスピレータを使用しうる。繊維延伸アスピレータは一般的に細長い垂直経路を含み、これを通って繊維は、経路の側部から入り、経路を通って下向きに流れる吸引空気によって引き出される。ヒーターまたはブロアーが吸引空気を供給する場合があるが、これは繊維を延伸するかまたは減衰させる。
【0078】
選択される特定の技術に関わらず、(例えば、流れ方向の)歪みの程度は、約1.1〜約3.5、一部の実施形態では約1.2〜約3.0、および一部の実施形態では約1.3〜約2.5の延伸比が達成されるようなものでありうる。延伸比は、変形した材料の長さを変形前のその長さで割ることによって決定されうる。その率も、望ましい特性の達成を助けるために、例えば約5%〜約1500%/変形分、一部の実施形態では約20%〜約1000%/変形分、および一部の実施形態では約25%〜約850%/変形分の範囲内で変化しうる。材料は、変形中、マトリクスポリマーおよび/またはマイクロ包含添加剤のガラス転移温度より下の温度に一般的に保たれる。とりわけ、これは、多孔質ネットワークが不安定になる程度までポリマー鎖が変えられないことを確実にするのに役に立つ。例えば、材料は、マトリクスポリマーのガラス転移温度より少なくとも約10℃、一部の実施形態では約20℃、および一部の実施形態では約30℃下の温度で変形されうる。例えば、材料は約−50℃〜約125℃、好ましくは約−25℃〜約100℃、より好ましくは約−20℃〜約50℃の温度で変形されうる。特定の実施形態では、変形は、約0℃〜約50℃、一部の実施形態では約5℃〜約40℃、および一部の実施形態では約10℃〜約35℃の温度で変形されうる。
【0079】
多孔質ネットワークの形成に加えて、変形させることは、マイクロスケール領域の軸方向寸法も大幅に増加させて、一般的に直線的で細長い形状を持つようにでき、これは結果得られる高分子材料の機械的特性および安定性を強化しうる。例えば、細長いマイクロスケール領域は、変形前の領域の軸方向寸法よりも約10%以上、一部の実施形態では約20%〜約500%、および一部の実施形態では約50%〜約250%大きな軸方向寸法を持ちうる。変形後の平均軸方向寸法は、例えば、約0.5〜約250マイクロメートル、一部の実施形態では約1〜約100マイクロメートル、一部の実施形態では約2〜約50マイクロメートル、および一部の実施形態では約5〜約25マイクロメートルの範囲でありうる。マイクロスケール領域は、比較的薄く、そのため小さな断面寸法も持ちうる。例えば、断面寸法は、約0.05〜約50マイクロメートル、一部の実施形態では約0.2〜約10マイクロメートル、および一部の実施形態では0.5〜約5マイクロメートルの長さでありうる。これは、約2〜約150、一部の実施形態では約3〜約100、および一部の実施形態では約4〜約50のマイクロスケール領域のアスペクト比(断面寸法に対する軸方向寸法の比)をもたらしうる。
【0080】
III.
マイクロ粒子
多孔質ネットワークが形成されると、既知のさまざまな技術のいずれかを使用して、マイクロ粒子を高分子材料から形成しうる。特定の実施形態では、例えば、高分子材料は、機械的プロセスを通して望ましいマイクロ粒子へと単に小型化しうる。例えば、回転粉砕要素を持つグラインダーを一般的に用いる衝撃小型化を使用してマイクロ粒子を形成しうる。回転粉砕要素と固定または反転粉砕要素の間に、反復衝撃および/またはせん断応力が生じうる。衝撃小型化は、気流も用いて、材料を運んで破砕ディスク(またはその他のせん断要素)に衝突させうる。一つの特に適した衝撃小型化装置が、Pallmann Industries(ニュージャージー州クリフトン)からTurbofiner(登録商標)、タイプPLMという名称で市販されている。この装置では、高活動性の空気旋回が、衝撃粉砕ミルの固定粉砕要素と回転粉砕要素の間にある円筒形の粉砕チャンバー内に作られる。高い空気容量のために、高分子材料は衝撃を受けて、望ましい粒子サイズに小型化されうる。その他の適切な衝撃小型化プロセスは、米国特許第6,431,477号および第7,510,133号(両方とも
Pallmann)に記述されている可能性がある。
【0081】
別の適切な粒子形成プロセスは低温押出小型化で、これは一般的にせん断力および圧縮力を用いてマイクロ粒子を形成する。例えば、材料は、材料ポリマーの溶融点より低い温度で金型を通して押し出されうる。固体状態せん断粉砕は、使用しうるもう一つのプロセスである。このようなプロセスには、ポリマーの溶融を避けるために押出機バレルおよびスクリューを冷却しながら、高いせん断および圧縮状態下での材料の連続的押出しを伴う。このような固体状態粉砕技術の例は、例えば、米国特許第5,814,673号(
Khait)、第6,479,003号(
Furgiueleら)、第6,494,390号(
Khaitら)、第6,818,173号(
Khait)、および米国特許公開番号第2006/0178465号
Torkelsonらに記述されている。また別の適切なマイクロ粒子形成技術は低温ディスクミリングとして知られている。低温ディスクミリングは、粉砕前および/または最中に材料を冷却または凍結するために液体(例えば、液体窒素)を一般的に用いる。一つの実施形態では、固定ディスクおよび回転ディスクを持つ単一ランナーディスクミリング装置を用いうる。材料は、ディスク中心の近くの溝を通してディスクの間に入り、ディスクの間に作られた摩擦力によってマイクロ粒子へと形成される。一つの適切な低温ディスクミリング装置が、ICO Polymers(ペンシルバニア州アレンタウン)からWedco(登録商標)低温粉砕システムという名称で市販されている。
【0082】
結果得られる本発明のマイクロ粒子は、フレーク、結節性、球状、チューブなど、任意の望ましい形状を持つ可能性があり、上述の熱可塑性組成物、ならびにその他の材料、コーティングなどを含みうる。粒子のサイズは、特定用途に対して性能を最適化するように制御されうる。しかし一般的に、マイクロ粒子は、約1〜約2,000マイクロメートル、一部の実施形態では約10〜約1,000マイクロメートル、一部の実施形態では約100〜約600マイクロメートルのメジアン径(例えば、直径)を持ちうる。「メジアン」サイズという用語は本明細書で使用される場合、粒子の「D50」サイズ分布を指し、これはマイクロ粒子の少なくとも50%が示されたサイズを持つことを意味する。同様にマイクロ粒子は、上述の範囲内で、D90サイズ分布(マイクロ粒子の少なくとも90%が示されたサイズを持つ)を持ちうる。
【0083】
IV.
活性薬剤
決して必要ではないが、本発明のマイクロ粒子は随意に活性薬剤を含みうる。特定の実施形態では、例えば、マイクロ粒子は活性薬剤を制御可能に放出して特定の治療効果を提供する。本明細書で使用される場合、「活性薬剤」という用語は、特定の結果を生じさせうる任意の化合物または化合物の混合物を一般的に指す。活性薬剤は、さまざまな異なる形態(例えば、液体、固体、ゲル、スラリー、ナノ金属粒子、ナノクレイなど)で提供される場合があり、さまざまな既知のクラスの化合物から選択されうる。活性薬剤には、生物学的活性薬剤、化学的活性薬剤、ならびにその組み合わせを含みうる。例えば生物学的活性薬剤は、生物(例えば、ヒトなどの哺乳類)および/または生物が接触しうる表面との接触時に、望ましい結果(例えば、生理学的)を一般的に達成する。適切な生物学的活性薬剤の一部の例には、例えば、タンパク質、ペプチド、ヌクレオチド、抗肥満薬剤、栄養補給食品、栄養補助食品、カロテノイド、コルチコステロイド、エステラーゼ阻害剤、抗菌活性化合物(例えば、殺生物剤、抗真菌剤、抗生物質、抗菌剤など)、抗アレルギー剤、制吐剤、鎮痛剤、心血管作動薬、抗炎症剤、駆虫薬、抗不整脈薬、抗凝固剤、抗うつ薬、抗糖尿病薬、抗てんかん薬、抗ヒスタミン薬、降圧薬、抗ムスカリン薬、抗腫瘍薬、抗酸化剤(例えば、ビタミンE)、免疫抑制剤、抗甲状腺薬、抗不安鎮静薬(催眠薬および神経弛緩薬)、収斂材、β−アドレナリン受容体遮断薬、血液製剤および代用物、心臓変力薬、造影剤、コルチコステロイド、化粧品、鎮咳薬(去痰薬および粘液溶解薬)、脱臭剤、皮膚薬(例えば、ニキビ薬、しわ取り薬など)、診断薬、画像診断薬、利尿薬、ドーパミン作動薬(抗パーキンソン病薬)、エモリエント、香水、止血剤、免疫薬、防虫剤、脂質調整薬、保湿剤、筋肉弛緩剤、がん治療、副交感神経作用薬、副甲状腺カルシトニンおよびビスホスホネート、プロスタグランジン、放射線医薬品、性ホルモン(ステロイドを含む)、日焼け止め、興奮剤および食欲抑制剤(例えば、カフェイン)、交感神経様作用薬、甲状腺薬、血管拡張剤、およびキサンチンを含みうる。
【0084】
本発明の使用に特に適した生物学的活性薬剤は、抗菌活性剤、日焼け止め、化粧品、皮膚薬、香水、防虫剤、保湿剤、脱臭剤など、表面(例えば、人体、硬い表面など)に局所的に適用できる薬剤である。例えば、一つの特定の実施形態では、活性薬剤は抗菌活性剤でありうる。本発明に用いられうる抗菌活性剤の一つのクラスは、植物油である。植物油は、植物から抽出される「エッセンシャル」オイルでありうる。同様に、植物油は、エッセンシャルオイルから分離または精製されるか、植物から由来する化合物を真似るように単に合成的に作られうる(例えば、合成的に作られたチモール)。植物油は、一般的に脂質に溶解し、生物の細胞膜の脂質成分に損傷を起こし、それによって生物の増殖を抑制する能力のために抗菌有効性を呈すると考えられている。エッセンシャルオイルはハーブ、花、木、およびその他の植物から由来し、植物の細胞の間の小さな液滴として一般的には存在し、当業者に知られた方法(例えば、水蒸気蒸留、アンフルラージュ(すなわち、脂肪を使用した抽出)、浸軟、溶媒抽出、または機械的加圧)によって抽出されうる。本発明での使用に適したエッセンシャルオイルの例には、例えば、アニス油、レモン油、オレンジ油、オレガノ、ローズマリー油、冬緑油、タイム油、ラベンダー油、クローブ油、ホップ、ティーツリー油、シトロネラ油、小麦油、大麦油、レモングラス油、ニオイヒバ油、シーダーツリー油、シナモン油、フリーグラス(fleagrass)油、ゼラニウム油、ビャクダン油、スミレ油、クランベリー油、ユーカリ油、クマツヅラ油、ペパーミント油、ガムベンゾイン、バジル油、フェンネル油、モミ油、バルサム油、メントール、オクメアオルガヌム(ocmea origanum)油、ヒダスチス・カラデンシス(Hydastis carradensis)油、バーベリダソー・ダソー(Berberidaceae daceae)油、ラタニア(Ratanhiae)およびウコン(Curcuma longa)油、ゴマ油、マカダミアナッツ油、マツヨイグサ油、スパニッシュセージ油、スパニッシュローズマリー油、コリアンダー油、タイム油、ピメント・ベリー油、バラ油、ベルガモット油、シタン油、カモミール油、セージ油、クラリー・セージ油、ヒノキ油、シーフェンネル油、乳香油、ショウガ油、グレープフルーツ油、ジャスミン油、杜松油、ライム油、マンダリン油、マヨラナ油、モツヤクジュ油、ネロリ油、パチョリ油、コショウ油、黒コショウ油、プチグレン油、パイン油、ローズオットー油、スペアミント油、カンショウ油、またはベチベル油を含みうる。当業者に知られているまたその他のエッセンシャルオイルも、本発明の文脈内で有用であることが企図されている(例えば、国際化粧品原料辞書(International Cosmetic Ingredient Dictionary)、第10および12版、それぞれ2004年および2008年)。
【0085】
カルバクロールおよびチモール含有油は、hirtum品種のオレガノ(Origanum vulgare)から精製されうる。理想的には、これは高品質油を生成するハイブリッド系統であるが、この属、種または系統に限定されない。油抽出物は、Nepeta racemosa(キャットミント)、Nepeta citriodora、Nepeta elliptica、Nepeta hindostoma、Nepeta lanceolata、Nepeta leucophylla、Nepeta longiobracteata、Nepeta mussinii、Nepeta nepetella、Nepeta sibthorpii、Nepeta subsessilis、Nepeta tuberosa、Thymus glandulosus、Thymus hyemalis、Thymus vulgaris(タチジャコウソウ)およびThymus zygisの種を含むがこれらに限定されない、Nepeta属の植物からも得られうる。
【0086】
上述のように、エッセンシャルオイルの分離物および/または派生物も用いられうる。例えば、植物油抽出物から分離および生成されるか、または既知の方法で合成されうるモノテルペンフェノールは特に適切である。適切なモノテルペンフェノールには、例えば、チモール、カルバクロール、ユーカリプトールなどを含みうる。チモール(イソプロピル−クレゾール)は、一つの特に適切なモノテルペンフェノールであり、これは大気圧で約238℃の沸点を持つ結晶物質である。チモールの異性体、カルバクロール(イソプロピル−o−クレゾール)は、別の適切な化合物である。カルバクロールは、大気圧で約233℃の沸点を持つ液体である。チモールおよびカルバクロール、ならびにそれらの異性体は、植物油抽出物から派生するかまたは合成されうる。例えば、カルバクロールは、亜硝酸と1−メチル−2−アミノ−4−プロピルベンゼンの反応によって合成されうる。分離または事前合成形態で用いられることに加えて、モノテルペンフェノールを主成分として含むエッセンシャルオイルが、本明細書に提供された範囲内のモノテルペンフェノールの最終濃度で用いられうる。「主成分」という用語は、モノテルペンフェノールを50重量%を超える量で持つエッセンシャルオイルを一般的に指す。このようなエッセンシャルオイルは、非芳香テルペン化合物など、その他の成分の少なめの量も含みうることが、当技術分野ではよく知られている。有機フェノール化合物を主成分として持つエッセンシャルオイルには、例えば、アニス油、無テルペンベイ油、チョウジの芽、チョウジの葉、チョウジ油、チョウジの茎、オリガナム油、ペルーバルサム、ピメント油、ユーカリ油、およびタイム油を含む。
【0087】
植物油に加えて、その他の既知の抗菌活性剤も本発明に使用されうる。このような活性薬剤の一部の例には、例えば、金属粒子(例えば、ナノ金属)、ナノクレイ、ハロゲン化化合物(例えば、p−クロロメタキシレノール(「PCMX」)、2,4,4’−トリクロロ−2 ヒドロキシ ジ−フェニルエーテル(「トリクロサン」)、グルコン酸クロルヘキシジン(「CHG」)、など)、ビグアニド化合物(例えば、ポリヘキサメチレン・ビグアニド(「PHMB」))、第4級アンモニウム化合物(例えば、塩化ベンザルコニウム、塩化セチルピリジニウム、有機ケイ素系第4級アンモニウム化合物など)、などを含みうる。
【0088】
上述のように、化学的活性薬剤も本発明に用いられうる。制限なく、このような薬剤の一部の例には、例えば、抗酸化剤(ビタミンE、酢酸トコフェニル、レチニル・パルミテートなど)、粘度調整剤、潤滑剤、消火剤、肥料化合物などを含みうる。
【0089】
用いられる時、熱可塑性組成物中の活性薬剤の相対的パーセントは、望ましい利益を達成するように選択されうる。例えば、活性薬剤は、連続相(マトリクスポリマー)の重量に基づいて、約1重量%〜約60重量%、一部の実施形態では、約5重量%〜約50重量%、および一部の実施形態では約10重量%〜約40重量%の量で用いられうる。熱可塑性組成物全体に対する薬剤の濃度は、同様に、約0.5重量%〜約50重量%、一部の実施形態では約1重量%〜約30重量%、および一部の実施形態では約2重量%〜約25重量%でありうる。
【0090】
活性薬剤は一般的に、多孔質ネットワークの生成の前、最中、および/または後にマイクロ粒子内に組み込まれうる。一つの実施形態では、例えば、活性薬剤は、多孔質ネットワークが形成された後に高分子材料に適用される。例えば、高分子材料が最初に形成され、次に変形されて多孔質ネットワークを作り、その後変形された高分子材料がマイクロ粒子へと形成されうる。このような実施形態では、活性薬剤は、マイクロ粒子の形成前または後に、変形された材料と接触させられうる。高分子材料を活性薬剤と接触させるための技術には、例えば、含浸、コーティング、印刷、溶液槽への浸漬、溶融押出などを含みうる。またその他の実施形態では、活性薬剤は、ネットワークが作られる間または前に高分子材料と接触させられうる。一つの実施形態では、例えば、材料は、変形される際に活性薬剤と接触させられうる(例えば、溶液槽への浸漬)。同様に、活性薬剤は、変形前に熱可塑性組成物の成分と混ぜ合わされうる。一つの実施形態では、例えば、活性薬剤は、上述の方法でマトリクスポリマーおよび包含添加剤と溶融混合されて、その後変形されて多孔質ネットワークを作成しうる。活性薬剤は、形成された後で、変形の前にも高分子材料に組み込まれうる。
【0091】
V.
用途
本発明のマイクロ粒子は多種多様な用途に用いられうる。例えば、マイクロ粒子は、組織エンジニアリング、組織誘導再生、インビボの幹細胞採取、培養または分化、活性薬剤の送達および懸濁などに使用されうる。例えば、マイクロ粒子は、当技術分野で知られている方法によって、組織または臓器(例えば、心臓、腎臓、脊髄、子宮、肝臓またはすい臓)に投与(またはその他の方法でそれらに接触)されうる。特定の実施形態では、マイクロ粒子は、肝臓、肺、子宮、心臓、神経系(例えば、脊椎、脊髄など)、脳、すい臓などの被験者の組織および/または臓器、および/または組織または臓器内の血管、静脈、動脈などに投与されうる。マイクロ粒子は、全身的または、望ましい組織または臓器に局所的に送達することができる。一部の実施形態では、マイクロ粒子は、手術の前、最中または後に組織または臓器に投与することができる。その他の実施形態では、マイクロ粒子は非外科的方法を使用して組織または臓器に送達され、例えば、選択された組織への直接注入により局所的に遠隔部位へ投与して標的部位に受動的に循環させるか、または遠隔部位に投与し、磁石で標的部位へ能動的に導かれる。このような非外科的送達方法には、例えば、注入または血管内(例えば、静脈内または動脈内)、筋肉内、腹腔内、髄腔内、皮内または皮下投与を含む。例えば、マイクロ粒子は、カテーテルによって投与されるか、またはシリンジに取り付けられた針を使用して注射されうる。
【0092】
マイクロ粒子は、細胞移植(例えば、細胞分離および連続かん流)から、細胞成長、組織再生、活性薬剤の送達などに及ぶ多種多様な目的のために用いられうる。特定の実施形態では、例えば、マルチモードの多孔質マイクロ粒子を哺乳類などの被験者に投与することを含む、組織構築および生成の方法が提供されている場合がある。例えば、マイクロ粒子は、幹細胞分化および組織発生をサポートするための足場として、幹細胞治療に用いられうる。マイクロ粒子の注射(随意に、セレクチン、ホルモン、細胞受容体、ウィルス、薬剤などの活性薬剤と共に)は、幹細胞または標的細胞移動(採取、処理、または末端細胞株への分化のため)または特定の実施形態では、機能性細胞群、または臓器(器官形成)のインビトロ生成をもたらしうる。特定の非限定的な幹細胞治療の用途には、マイクロ粒子および幹細胞の肝臓または肺への注射を含むが、これは、動脈供給および門脈流入の両方ならびに肺を通した血管流入が濃縮、採取または分化のために肺動脈および気管支動脈を通した二重の流入血液供給を持つなど、ユニークな解剖学的特性を持つ。
【0093】
細胞移植または組織生成との関連では、本発明のマイクロ粒子は生分解性ポリマー(例えば、ポリ乳酸)から形成される場合があり、従って経時的に分解して、生成または移植された細胞構造のみが残る。分解可能なマイクロ粒子は、送達された治療への血流を増加させ、標的組織への治療の貫通も増加させうる。マイクロ粒子の漸進的分解は、標的エリアへの局所的治療(薬物治療または放射線治療など)の漸進的送達も可能にしうる。
【0094】
本発明のマイクロ粒子は、動脈内小線源治療(例えば、動脈を通した標的エリアへの放射性物質の注入)、膵島細胞移植(例えば、インスリン生成細胞の被験者の肝臓への移植)、遺伝子治療、細胞捕捉、化学塞栓術、放射線塞栓術、造影剤送達、美容的治療、局所的または経皮的送達、組織採取など、多種多様なその他の目的のためにも用いられうる。マイクロ粒子は、細胞送達と同時に投与されうるが、これには、糖尿病のための膵島細胞移植、心筋合成または保存のための幹細胞投与、骨構造内の骨促進または合成、および肝臓または肺へのカテーテルベースの幹細胞投与を含みうるがこれらに限定されない。一部の実施形態では、細胞(例えば、幹細胞)はマイクロ粒子の投与前に、組織、臓器に投与することができる。またその他の実施形態では、細胞(例えば、幹細胞)は、マイクロ粒子と同時に投与されうる。
【0095】
上述のように、マイクロ粒子は、例えば、それを必要とする細胞、組織および/または臓器に活性薬剤を送達するために、特定の実施形態に用いられうる。一般的に、ユニークなマルチモードの細孔サイズ分布のために、活性薬剤はマイクロ粒子から制御可能に放出することが可能である。正確な放出プロファイルは、マイクロ細孔およびナノ細孔のサイズにある程度依存するが、これは上述のように、変形の程度および/または変形が実施される温度を制御することによって調整されうる。特定の実施形態では、比較的短い時間内に、活性薬剤の一部の放出を引き起こすことが望ましい場合がある。例えば、このような「バースト放出」を使用して、活性薬剤の治療量に素早く達することができる。しかしこのような素早い放出の後でも、多孔質ネットワークのユニークな性質によって、活性薬剤の残りの部分を、長時間にわたって制御可能に放出することができ、例えば薬剤を治療レベルに維持することに役立ちうる。液体(例えば、溶媒)、圧力(例えば、加圧、摩擦、折り畳みなど)、熱などを適用するなど、さまざまな既知の機構を用いて、活性薬剤のバースト放出を引き起こすことができる。一つの実施形態では、例えば、マイクロ粒子は、約40℃〜約200℃、一部の実施形態では約50℃〜約150℃、および一部の実施形態では約70℃〜約120℃など、マトリクスポリマーのガラス転移温度以上に加熱されうる。このような温度では、ポリマーが流れ始め、細孔が不安定化してつぶれ、これは活性薬剤のかなりの部分を材料から素早く放出させうる。
【0096】
当然のことながら、決して必要ではないが、第二の封入層または材料を提供して、望ましい時まで活性薬剤の放出を遅くさせるのを助けうる。またマイクロ粒子は、表面化学、物理的特性(例えば、疎水性または親水性)、油への親和性、生物学的物質(例えば、タンパク質)への親和性など、様々に異なる機能を与えるために、多層コーティング(例えば、高分子電解質)など、その他のタイプの表面処理、コーティングなどと共にも適用されうる。
【0097】
本発明のマイクロ粒子は、吸収性物品、マスク、クリーム、ジェル、ローション、軟膏、オイルなど、多種多様なタイプの物品での使用にも適している場合がある。例えば、マイクロ粒子は、化学的活性薬剤(例えば、粘度調整剤)を送達するために、オイルに組み込まれうる。その他の実施形態では、マイクロ粒子は、生物学的活性薬剤(例えば、抗菌活性剤)の送達などのために、「吸収性物品」に組み込まれうる。吸収性物品は一般的に水またはその他の流体を吸収することができ、おむつ、トレーニングパンツ、吸収性下着、失禁物品、女性用衛生用品(例えば、生理用ナプキン)、水着、おしり拭き、ミットワイプなどのパーソナルケア吸収物品、衣類、穿孔材料、アンダーパッド、ベッドパッド、包帯、吸収性ドレープ、および医療用ワイプなどの医療用吸収性物品、食品サービスタオル、衣料物品、パウチなどを含みうるがこれに限定されない。
【0098】
このような物品の形成に適した材料およびプロセスは、当業者にはよく知られている。例えば吸収性物品は、一般的に、実質的に液体不透過性の層(例えば、外側カバー)、液体透過性の層(例えば、トップシート、サージ管理層、換気層、ラップなど)、および吸収性コアを含む。例えば、トップシートは一般的に、吸収性コアに保持された液体を着用者の皮膚から分離するのを助けるために用いられる。皮膚に近いため、布用の感触を提供するために繊維状ウェブがトップシートに一般的に用いられる。望ましい場合、トップシートに使用される繊維状ウェブは、本発明に従って形成されるマイクロ粒子を含む場合があり、これは活性薬剤を使用者の皮膚に放出するように構成されうる。同様に外側カバーは液体不透過性であるが、気体および水蒸気には一般的に透過性であるように(「通気性」)設計される。これにより、蒸気が吸収性コアから逃れるが、液体浸出物が外側カバーを通過するのを防ぐことができる。外側カバーは、液体に対して望ましい不透過性を与えるフィルムを一般的に含む一方、繊維状ウェブはより布様の感触を与えるために化粧面としてフィルムに積層されることがよくある。
【0099】
また別の実施形態では、本発明のマイクロ粒子は、おしり拭き、大人用ワイプ、ハンドワイプ、顔用ワイプ、化粧ワイプ、家庭用ワイプ、業務用ワイプ、個人用クレンジングワイプ、コットンボール、綿棒など、皮膚に使用するために構成されたワイプに組み込まれうる。ワイプは、概して円形、楕円形、正方形、長方形、または不規則形状を含むがこれらに限定されない、さまざまな形状を取りうる。それぞれの個別ワイプは、折り畳まれた構成に配列され、互いの上に積み重ねられてウェットワイプの山を提供しうる。このような折り畳まれた構成は、当業者にはよく知られており、c折り、z折り、四つ折り構成などを含む。例えば、ワイプは広げた時、約2.0〜約80.0センチメートル、および一部の実施形態では約10.0〜約25.0センチメートルの長さを持ちうる。同様に、ワイプは広げた時、約2.0〜約80.0センチメートル、および一部の実施形態では約10.0〜約25.0センチメートルの幅を持ちうる。折り畳まれたワイプの山は、プラスチックタブ型容器など容器の内部に配置されて、消費者に最終的に販売するためのワイプのパッケージを提供しうる。代替的に、ワイプは、各ワイプの間にミシン目を持ち、取り出しのために山として配置されるかまたはロールに巻かれうる材料の連続的ストリップを含みうる。ワイプは、清浄、殺菌、消毒などのための溶液を含むという点で、「ウェットワイプ」でありうる。特定のウェットワイプ溶液は、本発明にとって重要でなく、米国特許第6,440,437号(
Krzysikら)、第6,028,018号(
Amundsonら)、第5,888,524号(
Cole)、第5,667,635号(
Winら)、第5,540,332号(
Kopaczら)、および第4,741,944号(
Jacksonら)により詳細に記述されている。
【0100】
本発明は、以下の例を参照してより良く理解されうる。
【0101】
試験方法
フィルム引張特性:
フィルムは、引張特性(ピーク応力、係数、破壊歪み、および破断時の容積あたりのエネルギー)に対してMTS Synergie200引張フレームで試験しうる。試験はASTM D638−10(約23℃)に従って実施されうる。フィルムサンプルは、試験前に、中央の幅が3.0mmの犬用の骨の形にカットされうる。犬用の骨の形のフィルムサンプルは、MTS Synergie 200装置のグリップを使用して、18.0mmのゲージ長さで定位置に保持されうる。フィルムサンプルは、破断が起こるまで5.0イン延伸チ/分のクロスヘッド速度で延伸されうる。各フィルムに対して5つのサンプルを、流れ方向(MD)および幅方向(CD)の両方で試験しうる。コンピュータプログラム(例えば、TestWorks 4)を使用して、試験中のデータを収集し、応力対歪み曲線を生成し、それから係数、ピーク応力、伸長、および破断までのエネルギーを含む多くの特性を決定しうる。
【0102】
メルトフローレート:
メルトフローレート(「MFR」)は、一般的に190℃、210℃、または230℃で、2160グラム/10分の負荷をかけた時、押出レオメーター口(直径0.0825インチ)を通して押し出されるポリマーの重量(グラム)である。別段の指示がない限り、メルトフローレートは、Tinius Olsen Extrusion PlastometerでASTM試験方法D1239に従って測定される。
【0103】
密度および細孔容量パーセント:
密度および細孔容量パーセントを決定するために、変形の前に、標本の幅(W
i)および厚さ(T
i)が最初に測定されうる。変形前の長さ(L
i)も、標本の表面上の二つのマークの間の距離を測定することによって決定された。その後、標本を変形させて空隙化を開始しうる。次に、Digimatic Caliper(株式会社ミツトヨ)を使用して、標本の幅(W
f)、厚さ(T
f)、および長さ(L
f)が直近の0.01mmまで測定された。変形の前の体積(V
i)は、W
i×T
i×L
i=V
iで計算されうる。変形後の体積(V
f)も、W
f×T
f×L
f=V
fで計算されうる。密度(P
f)は、P
f=P
i/Φで計算され、ここでP
iは、前駆材料の密度であり、細孔容量パーセント(%V
v)は、%V
v=(1−1/Φ)×100で計算されうる。
【0104】
水分含量:
水分含量は、Arizona Instruments Computrac Vapor Pro水分分析器(モデル番号3100)を使用して、ASTM D 7191−05に実質的に従って決定することができ、これは参照によりすべての目的に対してその全体が本明細書に組み込まれる。試験温度(§X2.1.2)は130℃、サンプルサイズ(§X2.1.1)は2〜4グラム、およびバイアルパージ時間(§X2.1.4)は30秒としうる。さらに、終了基準(§X2.1.3)は、「予測」モードとして定義でき、これはプログラムされた内蔵基準(これは数学的に終了点水分含量を計算する)が満足された時に試験が終了することを意味する。
【実施例1】
【0105】
本発明に従ってマイクロ粒子を形成する能力が実証された。最初に、熱可塑性組成物が、85.3重量%のポリ乳酸(PLA 6201D、Natureworks(登録商標))、9.5重量%のマイクロ包含添加剤、1.4重量%のナノ包含添加剤、および3.8重量%の内部界面修飾剤から形成された。マイクロ包含添加剤はVistamaxx(商標) 2120(ExxonMobil)で、これは、メルトフローレート29g/10分(190℃、2160g)および密度0.866g/cm
3のポリプロピレン−ポリエチレン共重合体エラストマーである。ナノ包含添加剤は、5〜6g/10分(190℃/2160g)のメルトフローレート、7〜11重量%のメタクリル酸グリシジル含量、13〜17重量%のアクリル酸メチル含量、および72〜80重量%のエチレン含量を持つ、ポリ(エチレン−コ−アクリル酸メチル−コ−メタクリル酸グリシジル)(Lotader(登録商標) AX8900、Arkema)であった。内部界面修飾剤はBASF社のPLURIOL(登録商標) WI 285潤滑油で、これはポリアルキレングリコール機能液であった。
【0106】
ポリマーは混合のために、Werner and Pfleiderer Corporation(ニュージャージー州ラムジー)製の共回転、2軸スクリュー押出機(ZSK−30、直径30mm、長さ1328ミリメートル)に供給された。押出機は14個のゾーンを持ち、これらは供給ホッパーから金型へと1から14まで連続的に番号付けされている。第一のバレルゾーン番号1が、重量測定供給器を通して15ポンド/時間の合計押出量で樹脂を受け取った。PLURIOL(登録商標) WI285が、注入ポンプでバレルゾーン番号2に加えられた。樹脂を押し出すために使用された金型は、4ミリメートル離れた3つの金型開口部(直径6ミリメートル)を持っていた。形成されると、押出された樹脂は、ファン冷却コンベヤー上で冷却され、Conairペレタイザーでペレットに成形された。押出機スクリュー速度は200回転/分(「rpm」)であった。次にペレットが射出成型装置(Spritzgiessautomaten BOY 22D)内にフラッド供給され、ASTM D638タイプIに従って引張試験片が形成された。射出成型プロセスの温度ゾーンは185℃〜225℃の範囲、保持圧力は10〜14秒、冷却時間は25〜50秒、サイクル時間は35〜65秒、型温度は約10℃または21℃のいずれかであった。
【0107】
一旦形成されたら、次に引張試験片は、23℃(±3℃)、速度5ミリメートル/分、呼び長さ115ミリメートルで、54%の伸び率までMTS 810システムで延伸された。伸縮率、密度、および空隙容量は、それぞれ1.38、0.86g/cm
3、および27.5%であると決定された。次に空隙材料は、約3〜5ミリメートルのサイズを持つサンプルに切断され、液体窒素中で15分間冷却された。その後、サンプルは、スピード2に設定されたBrinkman Retschベンチトップ粉砕機にかけられた。結果得られた粒子の形態が、走査電子顕微鏡法(SEM)で分析された。結果が
図1〜2に示されている。示されるように、粒子は、マイクロ細孔およびナノ細孔の両方を持つマルチモードの多孔質ネットワークを有していた。
【実施例2】
【0108】
マイクロ粒子へと形成されうる、高分子材料内にユニークな多孔質ネットワークを作る能力が実証された。最初に、熱可塑性組成物のペレットが実施例1に記述されたように形成され、その後212℃に加熱された単軸スクリュー押出機に供給され、ここで溶融混合物は4.5インチ幅のスリットを通して排出され、36μm〜54μmの範囲のフィルム厚さに延伸された。キャビテーションおよび空隙形成を開始するために、フィルムは流れ方向に約100%延伸された。フィルムの形態は、延伸の前後に走査電子顕微鏡法(SEM)で分析された。結果が
図3〜6に示されている。
図3〜4に示されるように、マイクロ包含添加剤は、約2〜約30マイクロメートルの軸方向サイズ(流れ方向)および約1〜約3マイクロメートルの横方向(幅方向)を持つ領域に初めに分散されたのに対して、ナノ包含添加剤は、約100〜約300ナノメートルの軸方向サイズを持つ半球または回転楕円状の領域として最初に分散された。
図5〜6は延伸後のフィルムを示す。図に示されるように、細孔が包含添加剤の周りに形成された。マイクロ包含添加剤の周りに形成されたマイクロ細孔は、軸方向に約2〜約20マイクロメートルの範囲の広いサイズ分布の細長いまたはスリット様の形状を一般的に持っていた。ナノ包含添加剤に関連するナノ細孔は一般的に、約50〜約500ナノメートルのサイズであった。
【実施例3】
【0109】
実施例1の複合ペレットは、第三の包含添加剤と乾燥混合されたが、これは22重量%のスチレン共重合体修飾ナノクレイおよび78重量%のポリプロピレン(Exxon Mobil 3155)を含むハロイサイトクレイマスターバッチ(MacroComp MNH−731−36、MacroM)であった。混合比率はペレット90重量%およびクレイマスターバッチ10重量%で、これは2.2%の合計クレイ含量をもたらした。次に乾燥混合物は、212℃に加熱された単軸スクリュー押出機に供給され、ここで溶融混合物は4.5インチ幅のスリットを通して排出され、51〜58μmの範囲のフィルム厚さに延伸された。キャビテーションおよび空隙形成を開始するために、フィルムは流れ方向に約100%延伸された。
【0110】
フィルムの形態は、延伸の前後に走査電子顕微鏡法(SEM)で分析された。結果が
図7〜10に示されている。
図7〜8に示されるように、(明るい領域として見える)ナノクレイ粒子の一部は非常に小さな領域(すなわち、約50〜約300ナノメートルの範囲の軸方向寸法)の形態で分散された。マスターバッチ自体も、マイクロスケールサイズ(約1〜約5マイクロメートルの軸方向寸法)領域を形成した。また、マイクロ包含添加剤(Vistamax(商標))は細長い領域を形成した一方、ナノ包含添加剤(非常に小さな暗い点として見えるLotader(登録商標))およびナノクレイマスターバッチは回転楕円状の領域を形成した。延伸フィルムが
図9〜10に示されている。示されるように、空隙構造がさらに開いており、細孔径の幅広さを示している。第一の包含物(Vistamaxx(商標))によって形成される非常に細長いマイクロ細孔に加えて、ナノクレイマスターバッチ包含物は、約10ミクロン以下の軸方向サイズおよび約2ミクロンの横サイズを持つより開いた回転楕円状マイクロ細孔を形成した。球状ナノ細孔も、第二の包含添加剤(Lotader(登録商標))および第三の包含添加剤(ナノクレイ粒子)によって形成される。
【実施例4】
【0111】
マイクロ粒子へと形成されうる、ユニークな特性を持つ高分子材料を作る能力が実証された。最初に、85.3重量%のPLA 6201D、9.5重量%のVistamaxx(商標)2120、1.4重量%のLotader(登録商標)AX8900、および3.8重量%のPLURIOL(登録商標))WI 285の混合物が形成された。ポリマーは混合のために、Werner and Pfleiderer Corporation(ニュージャージー州ラムジー)製の共回転、2軸スクリュー押出機(ZSK−30、直径30mm、長さ1328ミリメートル)に供給された。押出機は14個のゾーンを持ち、これらは供給ホッパーから金型へと1から14まで連続的に番号付けされている。第一のバレルゾーン番号1が、重量測定供給器を通して15ポンド/時間の合計押出量で樹脂を受け取った。PLURIOL(登録商標) WI285が、注入ポンプでバレルゾーン番号2に加えられた。樹脂を押し出すために使用された金型は、4ミリメートル離れた3つの金型開口部(直径6ミリメートル)を持っていた。形成されると、押出された樹脂は、ファン冷却コンベヤー上で冷却され、Conairペレタイザーでペレットに成形された。押出機スクリュー速度は200回転/分(「rpm」)であった。次にペレットは、212℃に加熱された単軸スクリュー押出機に供給され、ここで溶融混合物は4.5インチ幅のスリットを通して排出され、0.54〜0.58mmの範囲のフィルム厚さに延伸された。
【実施例5】
【0112】
実施例4に記述されたようにペレットが形成されて、25:1のL/D比でRheomix 252単軸スクリュー押出機に供給され、212℃温度まで加熱されたが、ここで溶融混合物はHaake 6インチ幅のsキャストフィルムダイスを通って排出されて、Haake巻き取りロールによって39.4μm〜50.8μmの範囲のフィルム厚さに延伸された。フィルムは、ゲージ長さ75mmの握りのMTS Synergie 200引張フレームを使用して、50mm/分の引張速度で160%の縦変形まで(67%/分の変形率)、流れ方向に延伸された。
【実施例6】
【0113】
フィルムが、50mmのゲージ長さの握り、50mm/分の引張速度(100%/分の変形率)で、100%の変形まで幅方向にも延伸されたこと以外、フィルムは実施例5に記述されたように形成された。実施例5〜6のフィルムのさまざまな特性が、上述のように試験された。結果が以下の表に記載されている。
【0114】
フィルム特性
【0115】
【表1】
【0116】
引張特性
【0117】
【表2】
【0118】
本発明は、その特定の実施形態に関して詳細に記述されているが、当然のことながら、当業者であれば、上記の理解を得ることで、これらの実施形態に対する改造、その変形、およびそれとの等価物をすぐに思いつくことができる。従って、本発明の範囲は、添付した請求項およびその任意の等価物の範囲として評価されるべきである。
【0119】
特許請求の範囲に記載の数値限定に「約」が記載されているか否かにかかわらず、本発明の技術思想に鑑みて、実質的に同一の範囲を含むものである。