【実施例】
【0021】
<インフルエンザウイルス測定用イムノクロマト試薬の作製>
1.青色カラーラテックス標識抗A型インフルエンザウイルス抗体、赤色カラーラテック
ス標識抗B型インフルエンザウイルス抗体の調製
(1)下記(i)から(iv)を準備し、(i)5mL、(ii)0.2mL、及び(iii)0
.8mLを加えて撹拌後、これに(iv)4mLを添加し、室温で2時間撹拌した。
(2)上記(1)で得られた溶液を13,000rpmで10分間遠心し上清を除去後、
10%スクロース含有2%ウシ血清アルブミン(BSA)水溶液を10mL添加し、さら
に2時間撹拌後、13,000rpmで10分間遠心し、沈渣(コンジュゲート)を得た
。
(3)上記(2)により得られたコンジュゲートに対し、10%スクロース含有2%BS
A水溶液を10mL添加しコンジュゲートを懸濁させて、青色カラーラテックス標識抗A
型インフルエンザウイルス抗体および赤色カラーラテックス標識抗B型インフルエンザウ
イルス抗体を得た。
以下の試験において、コンジュゲートの吸光度の測定は、青色カラーラテックスを用い
た場合は655nm(青色カラーラテックスの最大吸収波長)、赤色カラーラテックスを
用いた場合は551nm(赤色カラーラテックスの最大吸収波長)、緑色カラーラテック
スを用いた場合は655nm(緑色カラーラテックスの最大吸収波長)で測定した。
(i)2% 青色又は赤色カラーラテックスを含む20mM MES(pH6.5)緩衝液
(ii) 20mM MES(pH6.5)緩衝液
(iii) 架橋剤1−ethyl−3−[3−(dimethylamino)propyl
]carbodiimide(EDC)15mg/mL
(iv) 2.5mg/mL 抗A型又は抗B型インフルエンザウイルスモノクローナル抗体を
含む20mM MES(pH6.5)緩衝液
【0022】
2.コントロール用緑色カラーラテックス標識KLH(カコ貝ヘモシアニン:Keyho
le−limpet hemocyanin)の調製
(1)下記(i)から(iv)を準備し、(i)5mLに、(ii)1.4mL、(iii)1.
6mLを加えて撹拌後、(iv)2mLを添加し、室温で2時間撹拌した。
(2)上記(1)で得られた溶液を13,000rpmで10分間遠心し上清を除去後、
10%スクロース含有2%BSA水溶液を10mL添加し、さらに2時間撹拌後、13,
000rpmで10分間遠心し、沈渣(コンジュゲート)を得た。
(3)上記(2)で得られたコンジュゲートに対し、10%スクロース含有2%BSA水
溶液を10mL添加しコンジュゲートを懸濁させて、コントロール用緑色カラーラテック
ス標識KLHを得た。
(i)2% 緑色カラーラテックスを含む20mM MES(pH6.5)緩衝液
(ii)20mM MES(pH6.5)緩衝液
(iii)15mg/mL EDC
(iv)0.5mg/mL KLHを含む20mM MES(pH6.5)緩衝液
【0023】
3.コンジュゲート塗布パッドの作製
上記1.および上記2.で調製したコンジュゲートを、青色6.4 OD/mL、赤色
10.4 OD/mL、緑色6.5 OD/mLとなるように、0.5%カゼイン及び1
0%スクロース含有トリス緩衝液(pH8.5)と混合して3色が混合したコンジュゲー
ト溶液を作製した。そして、22.0mm×254mm×0.56mm(幅×長さ×厚さ
)のグラスファイバー製パッド(Lydall社)にイムノクロマト用ディスペンサー「
XYZ3050」(BIO DOT社)を用いて該コンジュゲート溶液を10uL/cm
で滲みこませた。その後、ドライオーブン内で70℃で30分間加温することにより乾燥
させ、コンジュゲート塗布パッドとした。また、界面活性剤などの添加剤を添加する場合
には、前記コンジュゲート溶液に必要量を添加した後、同様の操作を行った。
【0024】
4.抗インフルエンザウイルス抗体固定化膜の作製
25mm×254mm×0.235mm(短辺×長辺×厚さ)のニトロセルロース膜(
Sartorius社)に、0.75mg/mLに調製した前記青色カラーラテックス標
識抗A型インフルエンザウイルス抗体とはエピトープを異にする抗A型インフルエンザウ
イルス抗体、1.0mg/mLに調製した前記赤色カラーラテックス標識抗B型インフル
エンザウイルス抗体とはエピトープを異にする抗B型インフルエンザウイルス抗体、0.
75mg/mLに調製した抗KLH抗体、及び2.5%スクロースを含む10mM リン
酸緩衝液(pH7.2)を、幅約1mmのライン状に塗布した。塗布は、イムノクロマト
用ディスペンサー「XYZ3050」(BIO DOT社)を用い、吐出量を1μL/c
mとなるよう設定した。ライン塗布後のニトロセルロース膜をドライオーブン内で70℃
、45分乾燥し、抗インフルエンザウイルス抗体固定化膜とした。ニトロセルロース膜上
の抗A型インフルエンザウイルス抗体を塗布したラインをAライン、抗B型インフルエン
ザウイルス抗体を塗布したラインをBライン、抗KLH抗体を塗布したラインをコントロ
ールラインという。
【0025】
5.テストストリップの作製
プラスチック製粘着シート(a)に上記抗インフルエンザウイルス抗体固定化膜(b)を
貼り、上記3.で作製したコンジュゲート塗布パッド(c)を配置装着し、反対側の端に
は吸収パッド(d)(Whatman社、740−E)を配置装着した。また、最後に抗
体固定化膜および吸収パッドを被覆するように上面にポリエステルフィルム(e)を配置
装着しラミネートした。このように各構成要素を重ね合わせた構造物を4mm幅に切断し
てテストストリップを作製した。該テストストリップの外寸は、4mm×98mm(幅×
長さ)であり、イムノクロマトテストストリップの形態にした。
図1にテストストリップ
の模式構成図を示した。
【0026】
6.検体抽出液の調製
200mM 塩化カリウム、150mM L−アルギニン、0.5% Brij35、
0.25% BSA、及び0.05% プロクリン(登録商標)950を含む50mM ト
リス緩衝液(pH8.5)を検体抽出液とした。
【0027】
試験例1
鼻腔拭い液、もしくは鼻腔吸引液を用いた偽陽性反応原因成分の検討
(1)試験方法
(1−1)使用検体
培養法もしくはPCR法にてインフルエンザウイルス陰性が確認されている検体のうち
、前記5.で作成されたテストストリップ(イムノクロマト試薬)で偽陽性を示す鼻腔拭
い検体1本(検体名:URA)と鼻腔吸引検体1本(検体名:C607)、及び偽陽性を
示さない鼻腔吸引検体2本(検体名:C621、C622)を用いた。
(1−2)サンプルの調製
a.鼻腔吸引検体の場合
鼻腔吸引液に綿棒1本を浸し、検体を浸み込ませた綿棒を320μLのPBSへ入れて、
検体成分をPBSへ溶解させて本試験のサンプルとした。
b.鼻腔拭い検体の場合
綿棒2本で鼻腔を拭い、綿棒を320μLのPBSへ溶解して本試験のサンプルとした。
(1−3)測定
サンプルに上記5.で作成したテストストリップを浸し、10分後にAライン、Bライン
およびコントロ−ルラインの発色強度を測定した。発色強度測定には、青、赤、緑色の各
色の発色見本から0.25〜4.0の数値をつけたカラーチャートを用いた。発色強度の
測定方法は以下の試験において同様である。
【0028】
(1−4) 発色強度測定結果
結果を表1に示す。表中、数値が高いほど、偽陽性反応を示しており、「−」は検出限
界以下を示している。また、A lineの数値は、青色カラーラテックス標識抗A型イ
ンフルエンザウイルス抗体による発色ラインの発色強度を示し、B lineの数値は、
赤色カラーラテックス標識抗B型インフルエンザウイルス抗体による発色ラインの発色強
度を示し、Cont.は緑色カラーラテックス標識抗KLHによる発色ラインの発色強度
を示す。これより、検体C621とC622は偽陽性反応を示さない検体であり、検体U
RAおよびC607が偽陽性反応を示す検体であることがわかる。以後、偽陽性検体とし
てURAおよびC607を用いた。
【0029】
【表1】
【0030】
(2−1)SDS−PAGE
(1−1)で用いた4検体について、SDS−PAGEにて分離パターンを比較した。
SDS−PAGE:非還元条件下、ポリアクリルアミドゲル(4〜20%)を用いて電気
泳動を行った。
サンプルの調製は、上記(1−2)と同様に行い、調製されたサンプル10μLにトリ
ス−SDSサンプル処理液(コスモバイオ社製)10μLを添加し混合したものを10μ
Lアプライした。
【0031】
(2−2)SDS−PAGEの結果
結果を
図2に示す。
図2によれば、偽陽性反応を示すサンプル(URA、C607)の
SDS−PAGEのパターン(レーン4、レーン1)において分子量が260KDa付近
、および52〜72KDaの間のバンドが、偽陽性反応を示さない検体(C621、C6
22)のパターン(レーン2、レーン3)に比べて濃いことが判明した。したがって、こ
れらの2種類のバンドの成分が偽陽性反応の原因成分であると考えられた。なお、nat
ive−PAGEでも同様に分離を行ったところ、同様の結果が得られた。すなわち、偽
陽性反応を示さない検体に比べて偽陽性を示す検体で濃くなるバンドが認められた(
図3
)。
【0032】
試験例2
偽陽性反応抑制効果を示す偽陽性反応抑制剤のスクリーニング
(1)試験方法
上記6.で調製した検体抽出液に下記9種類の偽陽性反応抑制剤候補物質を終濃度5%
となるように添加して9種類の試験用検体抽出液を調製し、当該試験用検体抽出液320
μLに偽陽性反応を起こす鼻腔拭い検体(鼻腔を拭った綿棒4本の綿球部分)を加えて検
体を抽出した。
該検体抽出液に上記5.で作製したテストストリップを浸し、10分、30分、60分
後にAライン、Bライン、コントールラインの発色強度を測定した。
偽陽性反応抑制剤候補物質:
NEO PROTEIN SAVER(TOYOBO製)、イムノブロック
TM(大日本製
薬製)、ApplieBlock(生化学バイオビジネス製)、SEA BLOCK
TM/
EIA/WB(PIERCE製)、Blocking One(ナカライテスク製)、B
SA(プロリアント製)、Blocking Peptide Fragment(TO
YOBO製)、StartingBlock
TM(PBS)Blocking Buffe
r(PIERCE製)、SmartBlock
TM(CANDOR bioscience
GmbH製)
【0033】
(2)試験結果
各種の偽陽性反応抑制剤候補物質を添加した試験用検体抽出液を用いた場合の発色強度
測定結果を表2に示す。表2より、NEO PROTEIN SAVER、イムノブロッ
ク
TM、ApplieBlock、SEA BLOCK
TM/EIA/WB、Blocking
One、BSA、Blocking Peptide Fragmentの7種では偽
陽性反応抑制効果を示さなかったのに対し、StartingBlock
TM(PBS)B
locking Buffer(以下、StartingBlock
TM)、SmartBl
ock
TMは顕著に偽陽性反応抑制効果を示した。このことから、StartingBlo
ck
TMやSmartBlock
TMは、偽陽性反応原因成分と抗検出対象物抗体との親和性
を抑制することにより、偽陽性反応を抑制したと考えられた。
【0034】
【表2】
【0035】
試験例3
StartingBlock
TMの効果確認試験
(1)試験方法
試験例2のStartingBlock
TMを添加した各検体抽出液検体C607(偽陽
性反応を起こす検体)を添加したものと、当該検体を添加しないものについて、試験例1
と同様に非還元条件下、ポリアクリルアミドゲル(4〜20%)を用いて電気泳動した。
試験例1で調製されたC607のSDS−PAGEサンプルに純水、又は5%にStar
tingBlock
TMを等量混合した溶液10μLとサンプル処理液10μLを添加し混
合したものから10μLをアプライした(レーン5,6)。また、StartingBl
ock
TMと純水(DW)を等量混合した溶液10μLとサンプル処理液10μLを添加し
混合したものから10μLをアプライした(レーン7)。
【0036】
(2)試験結果
StartingBlock
TMの場合には、C607を添加した検体抽出液のSDS−
PAGEパターンにおいて(レーン6)、C607を添加しないStarting Bl
ock単独の検体抽出液(レーン7)に特有の成分(分子量が28KDa付近のバンド)
の消失が認められた(
図2)。このことから、StartingBlock
TMの特有成分
が偽陽性反応原因成分に何らかの作用をして、偽陽性反応を抑制していることがわかった
。
【0037】
試験例4
StartingBlock
TM、SmartBlock
TMの偽陽性反応を抑制する効果の
持続期間の確認
(1)試験方法
試験例2でStartingBlock
TM、SmartBlock
TMの偽陽性反応抑制
効果が認められたことから、これらの効果持続期間を確認するために、前記6.の検体抽
出液にStartingBlock
TM、SmartBlock
TMをそれぞれ5%(w/w
)となるように添加して、60℃で3日間保管(30℃、2〜3ヶ月相当)した後、再度
、偽陽性検体を摂取し、試験例2と同様にAライン、Bライン、およびコントロールライ
ンの発色強度を測定した。
【0038】
(2)試験結果
測定結果を表3に示す。SmartBlock
TMでは偽陽性抑制効果が消失していたの
に対して、StartingBlock
TMでは、60℃加速試験においても効果を持続し
ていることを確認した。この結果より、StartingBlock
TMは試薬の安定性に
も非常に優れていることがわかった。
【0039】
【表3】
【0040】
試験例5
StartingBlock
TMの濃度検討
(1)試験方法
試験例3,4でStartingBlock
TMがもっとも偽陽性反応の抑制に効果を発
揮することが判明したため、StartingBlock
TM至適濃度を検討することとし
た。検体抽出液におけるStartingBlock
TMの濃度を0.1%、0.5%、1
%、2.5%、5%(w/w)まで変動させて試験例2と同様に各反応ラインの発色強度
を測定した。
また、1%、5%(w/w)の濃度のものについては、60℃加速試験も行い安定性を
評価した。
【0041】
(2)試験結果
至適濃度の試験結果を表4に、60℃加速試験の結果を表5に示す。表4によればSt
artingBlock
TMの濃度が1%(w/w)以上で偽陽性反応を抑制できることを
確認した。また、表5によれば60℃、7日間(30℃、6ヶ月相当)で1%以上におい
て偽陽性反応の安定した抑制効果が認められた。以上の試験例4,5の結果より、Sta
rtingBlock
TMの好ましい濃度は1%以上であり、より好ましくは5%であるこ
とがわかった。
【0042】
【表4】
【0043】
【表5】
【0044】
試験例6
StartingBlock
TM添加による検出感度変化確認
(1)試験方法
5% StartingBlock
TMを検体抽出液に添加することによりインフルエン
ザウイルスの検出感度に影響が見られないかを確認した。具体的には、Starting
Block
TM添加、非添加検体抽出液を用いて、インフルエンザウイルスの検出を行った
。A型インフルエンザウイルスのサンプルとして、FluA抗原 A/Kitakyus
yu/159/93(lot.080521,SEKISUI)を1220倍希釈したも
の、B型インフルエンザウイルスのサンプルとしてFluB抗原 B/Lee(lot.
081003,SEKISUI)を704倍希釈したものを用いた。これらの抗原希釈サ
ンプル135μLに、前記5.で作成したテストストリップを浸し、10分後の発色強度
を検出した。
【0045】
(2)試験結果
A型インフルエンザウイルス、B型インフルエンザウイルスともに検出感度の変化はほ
とんど認められず(図示せず)、検体抽出液へのStartingBlock
TMの添加が
検出感度に影響しないことを確認した。