特許第6083907号(P6083907)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許6083907-偽陽性反応を抑制する検体抽出液 図000007
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6083907
(24)【登録日】2017年2月3日
(45)【発行日】2017年2月22日
(54)【発明の名称】偽陽性反応を抑制する検体抽出液
(51)【国際特許分類】
   G01N 33/543 20060101AFI20170213BHJP
   G01N 33/569 20060101ALI20170213BHJP
【FI】
   G01N33/543 521
   G01N33/569 L
【請求項の数】6
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2015-200704(P2015-200704)
(22)【出願日】2015年10月9日
(62)【分割の表示】特願2011-264278(P2011-264278)の分割
【原出願日】2011年2月25日
(65)【公開番号】特開2016-29384(P2016-29384A)
(43)【公開日】2016年3月3日
【審査請求日】2015年10月9日
(31)【優先権主張番号】特願2010-42718(P2010-42718)
(32)【優先日】2010年2月26日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】390037327
【氏名又は名称】積水メディカル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000774
【氏名又は名称】特許業務法人 もえぎ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】浦本 武
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 由佳
【審査官】 赤坂 祐樹
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2005/121794(WO,A1)
【文献】 国際公開第2009/007120(WO,A2)
【文献】 国際公開第2008/115411(WO,A1)
【文献】 特開2007−315883(JP,A)
【文献】 特開2006−084351(JP,A)
【文献】 フナコシニュース,日本,フナコシ株式会社,2008年 2月15日,No.407,p15
【文献】 Nancy M. Lorenzon et al.,Metabolic Biotinylation as a Probe of Supramolecular Structure of the Triad Junction in Skeletal Mus,THE JOURNAL OF BIOLOGICAL CHEMISTRY,米国,The American Society for Biochemistry and Molecula,2004年10月15日,Vol.279/No.42,p44057-44064
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 33/48−33/98
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の1)から4)の性質を有する偽陽性反応原因成分と親和性を有する抗インフルエンザウイルス抗体を用いてインフルエンザウイルスを検出するイムノクロマト法に用いられる検体抽出液であって、
0.5〜10%(w/w)のStartingBlockTM(CAS番号 1189033-39-3)を含む、検体抽出液。
1)鼻咽頭由来検体中に含まれる
2)検出対象物以外である
3)抗検出対象物抗体と親和性を有する
4)非還元条件下、ポリアクリルアミドゲル(4〜20%)で電気泳動に供した場合に260kDa付近及び/又は52〜72kDaの間にバンドが現れる
【請求項2】
さらに、リン酸緩衝液、トリス緩衝液、およびグッド緩衝液からならなる群から選択されるいずれか1以上の緩衝液であってpH6〜10である緩衝液を含む請求項1に記載の検体抽出液。
【請求項3】
さらに、塩化カリウム、L−アルギニン、BSAを含む請求項1又は2に記載の検体抽出液。
【請求項4】
以下の構成を含む検出対象物測定用イムノクロマト試薬。
(1)抗インフルエンザウイルス抗体固定化ストリップ
(2)請求項1〜3のいずれかに記載の検体抽出液
【請求項5】
抗インフルエンザウイルス抗体固定化ストリップが、以下の構成を含む請求項4に記載のイムノクロマト試薬。
(a)標識された抗インフルエンザウイルス抗体が塗布されたコンジュゲートパッド
(b)抗インフルエンザウイルス抗体固定化膜
【請求項6】
検体の抽出方法であって、鼻咽頭由来の検体と請求項1〜3のいずれかに記載の検体抽出液を接触させる工程を含む、検体の抽出方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鼻腔拭い液、鼻腔吸引液、鼻かみ液、咽頭拭い液などの検体中のウイルスを
イムノクロマト法にて検出するウイルス測定用イムノクロマト試薬に関し、特定の蛋白成
分を含む検体抽出液を用いることによって、偽陽性反応を抑制する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
検体中のウイルスを測定する方法としては、分離培養法やPCR法が知られている。前
述の方法は、操作が煩雑で測定に時間がかかることから、迅速診断には適していない。一
方、迅速診断に一定の役割を果たしているのが簡易検査キットであり、迅速性、簡便性に
優れているため、近年急速に広まってきた。
簡易検査法としては、ニトロセルロース等のメンブレンを用いたイムノクロマト法が知
られており、被検出物に特異的に結合するメンブレン固相物質、被検出物、被検出物に特
異的に結合する標識物の複合体をメンブレン上に形成させて被検出物を測定する方法であ
る。標識物としては、被検出物と特異的に結合する抗体にアルカリフォスファターゼのよ
うな酵素、金コロイドのような金属コロイド及び着色ラテックス粒子が一般的であり、特
に金コロイド粒子や着色ラテックス粒子を用いる場合が多い。着色ラテックス粒子の場合
、色、粒子径、官能基等、様々な種類のものが製造可能であり、選択性に優れている。ま
た複数の色調のラテックス粒子を用いて、複数の被検出物を検出する方法も提案されてい
る。
これらの簡易検査法では、被検出物と被検出物に対する抗体との特異的な結合以外で生
じる偽陽性反応が検出されることがある。偽陽性反応の原因の一つとして、被検検体に含
まれるムチンのような粘性物質やIgA、IgMといった免疫グロブリンなどが標識物の
凝集を促進し、その凝集塊がメンブレン固相物質に非特異的にトラップされることが考え
られる。この様な問題を解決するために、例えば、塩基性アミノ酸、無機塩類、及び界面
活性剤からなる群より選択される少なくとも2種類の化合物を含むフロースルー式検査法
用検体浮遊液組成物を用いる方法(特許文献1)、免疫クロマトグラフィーによるインフ
ルエンザウイルスの検査用検体の前処理液であって、少なくとも非イオン性界面活性剤及
びアルカリ金属イオンのみ、このアルカリ金属イオンを少なくとも0.3M含むことを特
徴とする検体前処理液を用いる方法(特許文献2)、及び、イオン性界面活性剤を含む、
免疫測定に供する検体浮遊液調製用媒体組成物を用いる方法(特許文献3)、動物由来免
疫グロブリン等を添加する方法等(特許文献4)が提案されている。しかし、これらの方
法は、偽陽性の発生率を減少させることはできたが、完全に除去するには至っていない。
ウイルスの感染を測定する際にこのような偽陽性反応が生じてしまうと、誤った処置が施
されてしまう可能性があり、偽陽性を完全に抑制することは簡易検査法において極めて重
要な課題といえる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003−279577号公報
【特許文献2】特開2005−24323号公報
【特許文献3】特開2005−291783号公報
【特許文献4】特開2004−301684号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、鼻腔拭い液、鼻腔吸引液、鼻かみ液、咽頭拭い液などの検体中のウイルスを
イムノクロマト法にて検出するウイルス測定用イムノクロマト試薬に関し、従来の方法で
抑制しきれなかった偽陽性反応を簡便で安価に抑制できる検体抽出液を提供することにあ
る。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者は、鼻腔拭い液、鼻腔吸引液、鼻かみ液、咽頭拭い液などの鼻咽頭由来検体に
おける偽陽性反応を抑制する方法を鋭意検討した結果、偽陽性原因成分と抗検出対象物抗
体との親和性を抑制する成分を見出し、これを検体抽出液に添加することによって、これ
まで検出されていた偽陽性反応を抑制できることを見出し本発明を完成した。
すなわち本発明は、以下の構成を有する。
〔1〕抗検出対象物抗体を用いて検出対象物を検出するイムノクロマト法に用いられる検
体抽出液であって、以下の偽陽性反応抑制剤を含む、検体抽出液。
偽陽性反応抑制剤;
以下の1)から3)の性質を有する偽陽性反応原因成分と抗検出対象物抗体との親和性を
抑制する成分を含む偽陽性反応抑制剤
1)鼻咽頭由来検体中に含まれる
2)検出対象物以外である
3)抗検出対象物抗体と親和性を有する
〔2〕抗検出対象物抗体が、抗インフルエンザウイルス抗体である前記〔1〕に記載の検
体抽出液。
〔3〕偽陽性反応原因成分が、非還元条件下、ポリアクリルアミドゲル(4〜20%)で
電気泳動に供した場合に260kDa付近及び/又は52〜72kDaの間にバンドが現
れる成分である前記〔1〕または〔2〕に記載の検体抽出液。
〔4〕偽陽性反応抑制剤の濃度が、1%〜10%である前記〔1〕〜〔3〕のいずれかに
記載の検体抽出液。
〔5〕偽陽性反応抑制剤が、StartingBlockTM及びSmartBlockTM
から選ばれる1種以上である前記〔1〕〜〔4〕のいずれかに記載の検体抽出液。
〔6〕抗検出対象物抗体を用いて検体中の検出対象物を検出するイムノクロマト法であっ
て、以下の偽陽性反応抑制剤を含む検体抽出液と検体を接触させて検出対象物を抽出する
工程と、
抽出された検出対象物と抗検出対象物抗体固定化ストリップを接触させて検出対象物を検
出する工程と、を含むイムノクロマト法。
偽陽性反応抑制剤;
以下の1)から3)の性質を有する偽陽性反応原因成分と抗検出対象物抗体との親和性を
抑制する成分を含む偽陽性反応抑制剤
1)鼻咽頭由来検体中に含まれる
2)検出対象物以外である
3)抗検出対象物抗体と親和性を有する
〔7〕抗検出対象物抗体が、抗インフルエンザウイルス抗体である前記〔6〕に記載の方
法。
〔8〕偽陽性反応原因成分が、非還元条件下、ポリアクリルアミドゲル(4〜20%)で
電気泳動に供した場合に260kDa付近及び/又は52〜72kDaの間にバンドが現
れる成分である前記〔6〕または〔7〕に記載の方法。
〔9〕検体抽出液中の偽陽性反応抑制剤の濃度が、1%〜10%である前記〔6〕〜〔8
〕のいずれかに記載の方法。
〔10〕偽陽性反応抑制剤が、StartingBlockTM及びSmartBlock
TMから選ばれる1種以上である前記〔6〕〜〔9〕のいずれかに記載の方法。
〔11〕以下の構成を含む検出対象物測定用イムノクロマト試薬。
(1)抗検出対象物抗体固定化ストリップ
(2)前記〔1〕〜〔5〕のいずれかに記載の検体抽出液
〔12〕抗検出対象物抗体固定化ストリップが、以下の構成を含む前記〔11〕に記載の
イムノクロマト試薬。
(a)標識された抗検出対象物抗体が塗布されたコンジュゲートパッド
(b)抗検出対象物抗体固定化膜
〔13〕検体の抽出方法であって、鼻咽頭由来の検体と前記〔1〕〜〔5〕のいずれかに
記載の検体抽出液を接触させる工程を含む、検体の抽出方法。
〔14〕以下の工程を有するイムノクロマト法の偽陽性反応抑制剤選択方法。
(A)鼻咽頭由来検体のうちイムノクロマト法において偽陽性反応を示す検体に偽陽性反
応抑制剤候補物質を添加して混合し、当該混合物を非還元条件下、ポリアクリルアミドゲ
ル(4〜20%)で電気泳動に供して分離する工程
(B)工程(A)において分離されたバンド群と、偽陽性反応を示す検体もしくは偽陽性
反応抑制剤候補物質のバンド群とを比較し、(i)〜(iii)のいずれかのバンドが消滅も
しくは薄くなっているかどうかを判定する工程
(i)偽陽性反応を示す検体のバンド群のうち、260kDa付近に現れるバンドのう
ちいずれか一以上
(ii)偽陽性反応を示す検体のバンド群のうち、52〜72kDaの間に現れるバンド
のうちいずれか一以上
(iii)偽陽性反応抑制剤候補物質のバンドのうちいずれか一以上
(C)工程(B)においていずれか一以上のバンドが消滅もしくは薄くなっている場合に
、前記偽陽性反応抑制剤候補物質を偽陽性反応抑制物質であると判断する工程
【発明の効果】
【0006】
本発明の検体抽出液によれば、カラーラテックス又は金コロイドなどの粒子を標識物と
して使用し、検体中の被測定物を検出するイムノクロマト法において、偽陽性反応を回避
した精度の高いテストストリップを提供できる。また、偽陽性反応による誤った臨床診断
を回避できる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】テストストリップの模式構成図である。(a)プラスチック製粘着シート、(b)抗インフルエンザウイルス抗体固定化膜、(c)コンジュゲート塗布パッド、(d)吸収パッド、(e)ポリエステルフィルム
図2】SDS−PAGEの分離パターンを示す図である。レーン1:C607、レーン2:C621、レーン3:C622、レーン4:URA、レーン5:C607+DW、レーン6:C607+5% StartingBlockTM、レーン7:5% StartingBlockTM+DW
図3】native−PAGEの分離パターンを示す図である。レーン1:C607、レーン2:URA、レーン3:C621、レーン4:C622、レーン5:C607+DW、レーン6:C607+5% StartingBlockTM、レーン7:5% StartingBlockTM+DW
【発明を実施するための形態】
【0008】
(検体)
本発明が適用可能な検体は、ウイルスの存在が疑われる鼻腔拭い液、鼻腔吸引液、鼻か
み液、咽頭拭い液等の鼻咽頭由来検体(以下、鼻咽頭由来検体という)であり、このうち
鼻腔拭い液、鼻腔吸引液が特に好ましい。
【0009】
(検出対象物)
本発明における検出対象物は、上記検体に含まれる可能性のあるウイルスや菌体全般で
あり、例えばインフルエンザウイルス、アデノウイルス、RSウイルスなどがあるが、特
にインフルエンザウイルスが好ましい。インフルエンザウイルスとしてはA型インフルエ
ンザウイルスおよびB型インフルエンザウイルス等が挙げられる。
【0010】
(検体抽出液)
本発明の検体抽出液は、以下の偽陽性反応抑制剤を含むものであればいずれのものであ
ってもよい。
偽陽性反応抑制;
以下の1)から3)の性質を有する偽陽性反応原因成分と抗検出対象物抗体との親和性を
抑制する成分を含む偽陽性反応抑制剤
1)鼻咽頭由来検体中に含まれる
2)検出対象物以外である
3)抗検出対象物抗体と親和性を有する
ここで、偽陽性反応原因成分としては、イムノクロマト法において偽陽性反応を示す検
体を非還元条件下、SDS−PAGEに供した場合に分子量が260KDa付近および/
又は52〜72KDaにバンドが現れる成分が挙げられる。本発明者らは、鼻咽頭由来検
体のうちイムノクロマト法において偽陽性反応を示す検体の共通成分について分析し、偽
陽性原因成分が上記特定のバンドの成分であることをつきとめた。ここで、偽陽性反応原
因成分と抗検出対象物抗体との親和性を抑制する成分であるか否か、すなわち、本発明の
偽陽性反応抑制剤かどうかは、以下のように判断することができる。
(1)偽陽性反応抑制候補物質を偽陽性原因成分を含む検体と混合したものをイムノクロ
マト法で検出した場合に、偽陽性反応を示さない。
(2)偽陽性反応抑制候補物質を、偽陽性原因成分を含む検体と混合した場合に、偽陽性
反応抑制剤の有効成分が変化する。
(3)偽陽性反応抑制候補物質を、偽陽性原因成分を含む検体と混合した場合に、偽陽性
原因成分が変化する。
【0011】
上記(2)の変化は、例えば、偽陽性反応抑制剤の有効成分の量が減少することにより
確認できる。量の減少は、SDS−PAGE上で当該有効成分に対応するバンドの発色が
薄くなること等で確認できる。すなわち、当該有効成分が有効に働き偽陽性反応を抑制す
ることで消費されるからである。また、偽陽性原因成分と結合するなどして複合体を形成
したり、化学変化をした場合も、当該有効成分の量の減少として捉えることができる。ま
た、上記(3)の変化は、例えば、偽陽性原因成分の量が減少することで確認できる。量
の減少は、上記(2)と同様に確認できる。
したがって、本発明の偽陽性反応抑制剤の選択は、例えば、次のステップ(A)〜(C
)により行うことができる。
(A)鼻咽頭由来検体のうちイムノクロマト法において偽陽性反応を示す検体に偽陽性反
応抑制剤候補物質を添加して混合し、当該混合物を非還元条件下、ポリアクリルアミドゲ
ル(4〜20%)で電気泳動に供して分離する工程
(B)工程(A)において分離されたバンド群と、偽陽性反応を示す検体もしくは偽陽性
反応抑制剤候補物質のバンド群とを比較し、(i)〜(iii)のいずれかのバンドが消滅も
しくは薄くなっているかどうかを判定する工程
(i)偽陽性反応を示す検体のバンド群のうち、260kDa付近に現れるバンドのい
ずれか一以上
(ii)偽陽性反応を示す検体のバンド群のうち、52〜72kDaの間に現れるバンド
のうちいずれか一以上
(iii)偽陽性反応抑制剤候補物質のバンドのうちいずれか一以上
(C)工程(B)においていずれか一以上のバンドが消滅もしくは薄くなっている場合に
、偽陽性反応抑制剤候補物質を偽陽性反応抑制物質であると判断する工程
【0012】
本発明の検体抽出液は、偽陽性反応抑制剤の効果を維持できるものであれば他の成分を
含むことができ、例えば緩衝液が挙げられる。また、本発明の検体抽出液は、偽陽性原因
成分に対してなんらかの作用をする偽陽性反応抑制剤を含むものであるが、当該偽陽性反
応抑制剤は、イムノクロマト試薬に用いられるテストストリップにあらかじめ固定化して
おくこともできる。
検体抽出液中の偽陽性反応抑制剤の濃度は、1%〜10%が好ましく、2.5〜8%が
さらに好ましく、4.5〜5.5%がもっとも好ましい。尚、後述の実施例に記載のSt
artingBlockTM(PBS)Blocking Buffer、およびSmar
tBlockTMの好ましい濃度もこれと同じである。
【0013】
(緩衝液の種類)
本発明の検体抽出液に用いられる緩衝液の種類としては、リン酸緩衝液、トリス緩衝液
、グッド緩衝液など通常使用される緩衝液をあげることができる。緩衝液のpHはpH6
.0〜10.0の範囲が好ましく、pH8.0〜9.0がさらに好ましい。pH8.0〜
9.0の緩衝液としては、トリス緩衝液が特に好ましい。前記緩衝液には、さらにNaC
l、KClなどの塩類、アルギニンなどの塩基性アミノ酸、ポリエチレングリコールモノ
−p−イソオクチルフェニルエーテル(例えば、Triton(登録商標)X−100)
等の非イオン性界面活性剤、スクロースなどの安定化剤や保存剤、プロクリン(登録商標
)などの防腐剤等を含んでもよい。塩類は、NaClなどのようにイオン強度の調整のた
めに含ませるもののほか、水酸化ナトリウムなど緩衝液のpHを調整する工程で存在する
ようになるものも含まれる。
【0014】
(検体抽出方法)
本発明の検体を抽出する方法は、鼻咽頭由来の検体と本発明の前記検体抽出液を接触さ
せることにより行われる。例えば、検体が鼻腔吸引検体の場合は、鼻腔吸引液に綿棒等を
浸し、検体を浸み込ませた綿棒を本発明の検体抽出液に入れて検体を溶解させることで抽
出することができる。また、検体が鼻腔拭い検体の場合は、綿棒で鼻腔を拭い、検体を浸
み込ませた綿棒を本発明の検体抽出液に入れて検体を溶解させることで抽出することがで
きる。
【0015】
(検出対象物を検出するイムノクロマト法)
本発明の検出対象物をイムノクロマトグラフィーにより検出する方法(イムノクロマト
法)は、検出対象物に対する抗体(以下、抗検出対象物抗体ということがある。)を用い
た免疫学的検出方法であれば特に限定されないが、抗検出対象物抗体と標識抗検出対象物
抗体を用いたサンドイッチ法がより好ましい。さらに、抗検出対象物抗体としては、ポリ
クローナル抗体、モノクローナル抗体いずれでもよいが、モノクローナル抗体がより好ま
しい。
上記イムノクロマト法は、上記検体抽出方法により抽出された検出対象物と抗検出対象
物抗体を固定化したストリップ等を接触させることにより行われる。
なお、本発明におけるイムノクロマト法は、定性的な検出、定量的な測定のいずれにも
用いることができることはいうまでもない。
【0016】
(標識物)
これらの抗体に標識する標識物としては、金コロイド粒子、白金コロイド粒子、カラー
ラテックス粒子、磁性粒子などが好ましく、特にカラーラテックスが好ましい。
カラーラテックスは、例えば特開平6−306108号公報の〔0022〕記載の方法
に従い、乳化剤を使用しないソープフリー重合によりポリスチレン系粒子を作製し、同〔
0025〕から〔0035〕までに記載された方法に準じて作製可能であり、Serad
yn社やMagsphere社などから市販されている着色粒子を用いることも出来る。
以下の説明では、標識物としてカラーラテックス粒子を用いた場合について詳述する。
【0017】
(標識抗体固定化方法)
上記抗体のカラーラテックスへの固定化は、通常化学結合によって行うが、この際、抗
体濃度は1mg/mL〜5mg/mLに調製されるのが好ましく、緩衝液及びpHは、2
0mM MES緩衝液(pH5.5〜6.5)または50mMホウ酸緩衝液(pH8〜9
)が好ましく、さらに好ましくは20mM MES緩衝液(pH6.5)である。また、
カラーラテックス上の抗体が結合していない領域は、BSAなどを結合させブロッキング
するのが好適である。このようにして作製されたカラーラテックス標識抗体は、変性を阻
止するための保存試薬中に分散され保存される。この変性阻止剤としては、BSAなどの
蛋白質、グリセリン、糖などが用いられる。
【0018】
(固相)
また、固相の素材としては、ポリエチレン、ポリエチレンテレフタレート、ナイロン類
、ガラス、セルロースやセルロース誘導体などの多糖類、あるいはセラミックス等が挙げ
られる。具体的には、ミリポア社、東洋濾紙社、ワットマン社、ライデル社などより販売
されているガラス繊維ろ紙や、セルロースろ紙などの他、ポリスチレンプレート、ガラス
繊維膜、ナイロン膜、ニトロセルロース膜などが好ましく、特にニトロセルロース膜が好
ましい。
以下、固相の素材としてニトロセルロース膜を用いた場合について詳述する。
【0019】
(固相への捕捉用抗体の固定化)
検出対象物としての抗原(例えば、インフルエンザウイルス)と標識抗体との複合体を
検出するための捕捉用抗体のニトロセルロース膜への固定化は、一般に周知の方法で実施
することができる。例えば、ラテラルフロー式の場合には、ノズルから捕捉用抗体を含む
液を一定の速度で吐出しながら水平方向に移動させることのできる機構を有する装置など
を用いて、ライン状にニトロセルロース膜に捕捉用抗体液を塗布することにより行われる
。この際、抗体の濃度は0.1mg/mL〜5mg/mLが好ましく、0.5mg/mL
〜2mg/mLがさらに好適である。また、上記の抗体液は、通常、所定の緩衝液を用い
て調製され得る。
前記緩衝液の種類としては、リン酸緩衝液、トリス緩衝液、グッド緩衝液など通常使用
される緩衝液をあげることができる。緩衝液のpHはpH6.0〜9.5の範囲が好まし
く、pH6.5〜8.5がより好ましく、pH7.0〜8.0がさらに好ましい。緩衝液
には、さらにNaClなどの塩類、スクロースなどの安定剤や保存剤、プロクリン(登録
商標)などの防腐剤等を含んでもよい。塩類はNaClなどのようにイオン強度の調整の
ために含ませるもののほか、水酸化ナトリウムなど緩衝液のpHを調整する工程で存在す
るようになるものも含まれる。
ニトロセルロース膜に抗体を固定化した後、さらに、通常使用されるブロッキング剤を
溶液あるいは蒸気状にして被覆し、ブロッキングを行うこともできる。
ニトロセルロース膜の孔径を適宜選択することにより、カラーラテックス標識抗体と検
出対象物である抗原(例えば、インフルエンザウイルス)との免疫複合体が膜中を流れる
速度を制御することが可能である。この流れる速度により、膜に固定化された上記抗体に
結合する標識抗体量を調節することができるため、適切な孔径を有する膜を選択すること
が好ましい。好適には、ミリポア社、Hi Flow Plus HF180などが用い
られる。
【0020】
(イムノクロマト試薬、イムノクロマト試薬キット)
本発明の検体抽出液は、従来のイムノクロマト試薬とともに用いることができ、両者を
併せてイムノクロマト試薬またはイムノクロマト試薬キットとして用いることもできる。
尚、「イムノクロマト試薬」とは、イムノクロマト法による測定に必要な試薬成分や、
テストストリップ等の部材をも含めたものである。

次に、検出対象物をインフルエンザウイルスとした場合に、本発明の検体抽出液を用い
て、インフルエンザウイルス測定用イムノクロマト試薬の偽陽性反応を抑制する技術に関
して実施例を挙げて説明するが、本発明は何らこれらに限定されるものではない。
【実施例】
【0021】
<インフルエンザウイルス測定用イムノクロマト試薬の作製>
1.青色カラーラテックス標識抗A型インフルエンザウイルス抗体、赤色カラーラテック
ス標識抗B型インフルエンザウイルス抗体の調製
(1)下記(i)から(iv)を準備し、(i)5mL、(ii)0.2mL、及び(iii)0
.8mLを加えて撹拌後、これに(iv)4mLを添加し、室温で2時間撹拌した。
(2)上記(1)で得られた溶液を13,000rpmで10分間遠心し上清を除去後、
10%スクロース含有2%ウシ血清アルブミン(BSA)水溶液を10mL添加し、さら
に2時間撹拌後、13,000rpmで10分間遠心し、沈渣(コンジュゲート)を得た

(3)上記(2)により得られたコンジュゲートに対し、10%スクロース含有2%BS
A水溶液を10mL添加しコンジュゲートを懸濁させて、青色カラーラテックス標識抗A
型インフルエンザウイルス抗体および赤色カラーラテックス標識抗B型インフルエンザウ
イルス抗体を得た。

以下の試験において、コンジュゲートの吸光度の測定は、青色カラーラテックスを用い
た場合は655nm(青色カラーラテックスの最大吸収波長)、赤色カラーラテックスを
用いた場合は551nm(赤色カラーラテックスの最大吸収波長)、緑色カラーラテック
スを用いた場合は655nm(緑色カラーラテックスの最大吸収波長)で測定した。

(i)2% 青色又は赤色カラーラテックスを含む20mM MES(pH6.5)緩衝液
(ii) 20mM MES(pH6.5)緩衝液
(iii) 架橋剤1−ethyl−3−[3−(dimethylamino)propyl
]carbodiimide(EDC)15mg/mL
(iv) 2.5mg/mL 抗A型又は抗B型インフルエンザウイルスモノクローナル抗体を
含む20mM MES(pH6.5)緩衝液
【0022】
2.コントロール用緑色カラーラテックス標識KLH(カコ貝ヘモシアニン:Keyho
le−limpet hemocyanin)の調製
(1)下記(i)から(iv)を準備し、(i)5mLに、(ii)1.4mL、(iii)1.
6mLを加えて撹拌後、(iv)2mLを添加し、室温で2時間撹拌した。
(2)上記(1)で得られた溶液を13,000rpmで10分間遠心し上清を除去後、
10%スクロース含有2%BSA水溶液を10mL添加し、さらに2時間撹拌後、13,
000rpmで10分間遠心し、沈渣(コンジュゲート)を得た。
(3)上記(2)で得られたコンジュゲートに対し、10%スクロース含有2%BSA水
溶液を10mL添加しコンジュゲートを懸濁させて、コントロール用緑色カラーラテック
ス標識KLHを得た。

(i)2% 緑色カラーラテックスを含む20mM MES(pH6.5)緩衝液
(ii)20mM MES(pH6.5)緩衝液
(iii)15mg/mL EDC
(iv)0.5mg/mL KLHを含む20mM MES(pH6.5)緩衝液
【0023】
3.コンジュゲート塗布パッドの作製
上記1.および上記2.で調製したコンジュゲートを、青色6.4 OD/mL、赤色
10.4 OD/mL、緑色6.5 OD/mLとなるように、0.5%カゼイン及び1
0%スクロース含有トリス緩衝液(pH8.5)と混合して3色が混合したコンジュゲー
ト溶液を作製した。そして、22.0mm×254mm×0.56mm(幅×長さ×厚さ
)のグラスファイバー製パッド(Lydall社)にイムノクロマト用ディスペンサー「
XYZ3050」(BIO DOT社)を用いて該コンジュゲート溶液を10uL/cm
で滲みこませた。その後、ドライオーブン内で70℃で30分間加温することにより乾燥
させ、コンジュゲート塗布パッドとした。また、界面活性剤などの添加剤を添加する場合
には、前記コンジュゲート溶液に必要量を添加した後、同様の操作を行った。
【0024】
4.抗インフルエンザウイルス抗体固定化膜の作製
25mm×254mm×0.235mm(短辺×長辺×厚さ)のニトロセルロース膜(
Sartorius社)に、0.75mg/mLに調製した前記青色カラーラテックス標
識抗A型インフルエンザウイルス抗体とはエピトープを異にする抗A型インフルエンザウ
イルス抗体、1.0mg/mLに調製した前記赤色カラーラテックス標識抗B型インフル
エンザウイルス抗体とはエピトープを異にする抗B型インフルエンザウイルス抗体、0.
75mg/mLに調製した抗KLH抗体、及び2.5%スクロースを含む10mM リン
酸緩衝液(pH7.2)を、幅約1mmのライン状に塗布した。塗布は、イムノクロマト
用ディスペンサー「XYZ3050」(BIO DOT社)を用い、吐出量を1μL/c
mとなるよう設定した。ライン塗布後のニトロセルロース膜をドライオーブン内で70℃
、45分乾燥し、抗インフルエンザウイルス抗体固定化膜とした。ニトロセルロース膜上
の抗A型インフルエンザウイルス抗体を塗布したラインをAライン、抗B型インフルエン
ザウイルス抗体を塗布したラインをBライン、抗KLH抗体を塗布したラインをコントロ
ールラインという。
【0025】
5.テストストリップの作製
プラスチック製粘着シート(a)に上記抗インフルエンザウイルス抗体固定化膜(b)を
貼り、上記3.で作製したコンジュゲート塗布パッド(c)を配置装着し、反対側の端に
は吸収パッド(d)(Whatman社、740−E)を配置装着した。また、最後に抗
体固定化膜および吸収パッドを被覆するように上面にポリエステルフィルム(e)を配置
装着しラミネートした。このように各構成要素を重ね合わせた構造物を4mm幅に切断し
てテストストリップを作製した。該テストストリップの外寸は、4mm×98mm(幅×
長さ)であり、イムノクロマトテストストリップの形態にした。図1にテストストリップ
の模式構成図を示した。
【0026】
6.検体抽出液の調製
200mM 塩化カリウム、150mM L−アルギニン、0.5% Brij35、
0.25% BSA、及び0.05% プロクリン(登録商標)950を含む50mM ト
リス緩衝液(pH8.5)を検体抽出液とした。
【0027】
試験例1
鼻腔拭い液、もしくは鼻腔吸引液を用いた偽陽性反応原因成分の検討
(1)試験方法
(1−1)使用検体
培養法もしくはPCR法にてインフルエンザウイルス陰性が確認されている検体のうち
、前記5.で作成されたテストストリップ(イムノクロマト試薬)で偽陽性を示す鼻腔拭
い検体1本(検体名:URA)と鼻腔吸引検体1本(検体名:C607)、及び偽陽性を
示さない鼻腔吸引検体2本(検体名:C621、C622)を用いた。
(1−2)サンプルの調製
a.鼻腔吸引検体の場合
鼻腔吸引液に綿棒1本を浸し、検体を浸み込ませた綿棒を320μLのPBSへ入れて、
検体成分をPBSへ溶解させて本試験のサンプルとした。
b.鼻腔拭い検体の場合
綿棒2本で鼻腔を拭い、綿棒を320μLのPBSへ溶解して本試験のサンプルとした。
(1−3)測定
サンプルに上記5.で作成したテストストリップを浸し、10分後にAライン、Bライン
およびコントロ−ルラインの発色強度を測定した。発色強度測定には、青、赤、緑色の各
色の発色見本から0.25〜4.0の数値をつけたカラーチャートを用いた。発色強度の
測定方法は以下の試験において同様である。
【0028】
(1−4) 発色強度測定結果
結果を表1に示す。表中、数値が高いほど、偽陽性反応を示しており、「−」は検出限
界以下を示している。また、A lineの数値は、青色カラーラテックス標識抗A型イ
ンフルエンザウイルス抗体による発色ラインの発色強度を示し、B lineの数値は、
赤色カラーラテックス標識抗B型インフルエンザウイルス抗体による発色ラインの発色強
度を示し、Cont.は緑色カラーラテックス標識抗KLHによる発色ラインの発色強度
を示す。これより、検体C621とC622は偽陽性反応を示さない検体であり、検体U
RAおよびC607が偽陽性反応を示す検体であることがわかる。以後、偽陽性検体とし
てURAおよびC607を用いた。
【0029】
【表1】
【0030】
(2−1)SDS−PAGE
(1−1)で用いた4検体について、SDS−PAGEにて分離パターンを比較した。
SDS−PAGE:非還元条件下、ポリアクリルアミドゲル(4〜20%)を用いて電気
泳動を行った。
サンプルの調製は、上記(1−2)と同様に行い、調製されたサンプル10μLにトリ
ス−SDSサンプル処理液(コスモバイオ社製)10μLを添加し混合したものを10μ
Lアプライした。
【0031】
(2−2)SDS−PAGEの結果
結果を図2に示す。図2によれば、偽陽性反応を示すサンプル(URA、C607)の
SDS−PAGEのパターン(レーン4、レーン1)において分子量が260KDa付近
、および52〜72KDaの間のバンドが、偽陽性反応を示さない検体(C621、C6
22)のパターン(レーン2、レーン3)に比べて濃いことが判明した。したがって、こ
れらの2種類のバンドの成分が偽陽性反応の原因成分であると考えられた。なお、nat
ive−PAGEでも同様に分離を行ったところ、同様の結果が得られた。すなわち、偽
陽性反応を示さない検体に比べて偽陽性を示す検体で濃くなるバンドが認められた(図3
)。
【0032】
試験例2
偽陽性反応抑制効果を示す偽陽性反応抑制剤のスクリーニング
(1)試験方法
上記6.で調製した検体抽出液に下記9種類の偽陽性反応抑制剤候補物質を終濃度5%
となるように添加して9種類の試験用検体抽出液を調製し、当該試験用検体抽出液320
μLに偽陽性反応を起こす鼻腔拭い検体(鼻腔を拭った綿棒4本の綿球部分)を加えて検
体を抽出した。
該検体抽出液に上記5.で作製したテストストリップを浸し、10分、30分、60分
後にAライン、Bライン、コントールラインの発色強度を測定した。

偽陽性反応抑制剤候補物質:
NEO PROTEIN SAVER(TOYOBO製)、イムノブロックTM(大日本製
薬製)、ApplieBlock(生化学バイオビジネス製)、SEA BLOCKTM/
EIA/WB(PIERCE製)、Blocking One(ナカライテスク製)、B
SA(プロリアント製)、Blocking Peptide Fragment(TO
YOBO製)、StartingBlockTM(PBS)Blocking Buffe
r(PIERCE製)、SmartBlockTM(CANDOR bioscience
GmbH製)
【0033】
(2)試験結果
各種の偽陽性反応抑制剤候補物質を添加した試験用検体抽出液を用いた場合の発色強度
測定結果を表2に示す。表2より、NEO PROTEIN SAVER、イムノブロッ
TM、ApplieBlock、SEA BLOCKTM/EIA/WB、Blocking
One、BSA、Blocking Peptide Fragmentの7種では偽
陽性反応抑制効果を示さなかったのに対し、StartingBlockTM(PBS)B
locking Buffer(以下、StartingBlockTM)、SmartBl
ockTMは顕著に偽陽性反応抑制効果を示した。このことから、StartingBlo
ckTMやSmartBlockTMは、偽陽性反応原因成分と抗検出対象物抗体との親和性
を抑制することにより、偽陽性反応を抑制したと考えられた。
【0034】
【表2】
【0035】
試験例3
StartingBlockTMの効果確認試験
(1)試験方法
試験例2のStartingBlockTMを添加した各検体抽出液検体C607(偽陽
性反応を起こす検体)を添加したものと、当該検体を添加しないものについて、試験例1
と同様に非還元条件下、ポリアクリルアミドゲル(4〜20%)を用いて電気泳動した。
試験例1で調製されたC607のSDS−PAGEサンプルに純水、又は5%にStar
tingBlockTMを等量混合した溶液10μLとサンプル処理液10μLを添加し混
合したものから10μLをアプライした(レーン5,6)。また、StartingBl
ockTMと純水(DW)を等量混合した溶液10μLとサンプル処理液10μLを添加し
混合したものから10μLをアプライした(レーン7)。
【0036】
(2)試験結果
StartingBlockTMの場合には、C607を添加した検体抽出液のSDS−
PAGEパターンにおいて(レーン6)、C607を添加しないStarting Bl
ock単独の検体抽出液(レーン7)に特有の成分(分子量が28KDa付近のバンド)
の消失が認められた(図2)。このことから、StartingBlockTMの特有成分
が偽陽性反応原因成分に何らかの作用をして、偽陽性反応を抑制していることがわかった
【0037】
試験例4
StartingBlockTM、SmartBlockTMの偽陽性反応を抑制する効果の
持続期間の確認
(1)試験方法
試験例2でStartingBlockTM、SmartBlockTMの偽陽性反応抑制
効果が認められたことから、これらの効果持続期間を確認するために、前記6.の検体抽
出液にStartingBlockTM、SmartBlockTMをそれぞれ5%(w/w
)となるように添加して、60℃で3日間保管(30℃、2〜3ヶ月相当)した後、再度
、偽陽性検体を摂取し、試験例2と同様にAライン、Bライン、およびコントロールライ
ンの発色強度を測定した。
【0038】
(2)試験結果
測定結果を表3に示す。SmartBlockTMでは偽陽性抑制効果が消失していたの
に対して、StartingBlockTMでは、60℃加速試験においても効果を持続し
ていることを確認した。この結果より、StartingBlockTMは試薬の安定性に
も非常に優れていることがわかった。
【0039】
【表3】
【0040】
試験例5
StartingBlockTMの濃度検討
(1)試験方法
試験例3,4でStartingBlockTMがもっとも偽陽性反応の抑制に効果を発
揮することが判明したため、StartingBlockTM至適濃度を検討することとし
た。検体抽出液におけるStartingBlockTMの濃度を0.1%、0.5%、1
%、2.5%、5%(w/w)まで変動させて試験例2と同様に各反応ラインの発色強度
を測定した。
また、1%、5%(w/w)の濃度のものについては、60℃加速試験も行い安定性を
評価した。
【0041】
(2)試験結果
至適濃度の試験結果を表4に、60℃加速試験の結果を表5に示す。表4によればSt
artingBlockTMの濃度が1%(w/w)以上で偽陽性反応を抑制できることを
確認した。また、表5によれば60℃、7日間(30℃、6ヶ月相当)で1%以上におい
て偽陽性反応の安定した抑制効果が認められた。以上の試験例4,5の結果より、Sta
rtingBlockTMの好ましい濃度は1%以上であり、より好ましくは5%であるこ
とがわかった。
【0042】
【表4】
【0043】
【表5】
【0044】
試験例6
StartingBlockTM添加による検出感度変化確認
(1)試験方法
5% StartingBlockTMを検体抽出液に添加することによりインフルエン
ザウイルスの検出感度に影響が見られないかを確認した。具体的には、Starting
BlockTM添加、非添加検体抽出液を用いて、インフルエンザウイルスの検出を行った
。A型インフルエンザウイルスのサンプルとして、FluA抗原 A/Kitakyus
yu/159/93(lot.080521,SEKISUI)を1220倍希釈したも
の、B型インフルエンザウイルスのサンプルとしてFluB抗原 B/Lee(lot.
081003,SEKISUI)を704倍希釈したものを用いた。これらの抗原希釈サ
ンプル135μLに、前記5.で作成したテストストリップを浸し、10分後の発色強度
を検出した。
【0045】
(2)試験結果
A型インフルエンザウイルス、B型インフルエンザウイルスともに検出感度の変化はほ
とんど認められず(図示せず)、検体抽出液へのStartingBlockTMの添加が
検出感度に影響しないことを確認した。
【産業上の利用可能性】
【0046】
本発明の検体抽出液によれば、検体中の被測定物を検出するイムノクロマト法において
、偽陽性反応を回避した精度の高い測定方法を実現できる。また、偽陽性反応による誤っ
た臨床診断を回避できる。
図1
図2
図3