特許第6083921号(P6083921)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6083921
(24)【登録日】2017年2月3日
(45)【発行日】2017年2月22日
(54)【発明の名称】銀−スズ合金の電気めっき浴
(51)【国際特許分類】
   C25D 3/64 20060101AFI20170213BHJP
   C25D 3/60 20060101ALI20170213BHJP
   C25D 7/00 20060101ALI20170213BHJP
   H01L 21/60 20060101ALI20170213BHJP
【FI】
   C25D3/64
   C25D3/60
   C25D7/00 J
   H01L21/92 604B
【請求項の数】7
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2016-517970(P2016-517970)
(86)(22)【出願日】2014年6月4日
(65)【公表番号】特表2016-522327(P2016-522327A)
(43)【公表日】2016年7月28日
(86)【国際出願番号】US2014040941
(87)【国際公開番号】WO2014165867
(87)【国際公開日】20141009
【審査請求日】2015年12月16日
(31)【優先権主張番号】13/910,109
(32)【優先日】2013年6月4日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】591016862
【氏名又は名称】ローム アンド ハース エレクトロニック マテリアルズ エルエルシー
【氏名又は名称原語表記】Rohm and Haas Electronic Materials LLC
(74)【代理人】
【識別番号】110000589
【氏名又は名称】特許業務法人センダ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】アドルフ・フォイェット
(72)【発明者】
【氏名】マルギト・クラウス
(72)【発明者】
【氏名】ワン・チャン−ベグリンガー
(72)【発明者】
【氏名】ジュリア・ウォーティンク
(72)【発明者】
【氏名】イー・チン
(72)【発明者】
【氏名】ジョナサン・ディー・プランゲ
(72)【発明者】
【氏名】ペドロ・オー・ロペスモンテシノ
【審査官】 内藤 康彰
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−174373(JP,A)
【文献】 特開2009−185381(JP,A)
【文献】 特開2013−049921(JP,A)
【文献】 国際公開第2012/175249(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C25D1/00−3/66
C25D5/00−7/12
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
1つ以上の銀イオン源と、1つ以上のスズイオン源と、次の構造式を有する1つ以上の化合物であって、
X−S−Y(I)
式中、X及びYは、置換または非置換フェノール基、HO−R−、または−R’S−R ”−OHであり得るが、但し、X及びYが同じであるとき、それらは、置換または非置換フェノール基であり、そうでない場合、X及びYは、異なり、R、R’、及びR”は、同じであるか、または異なり、また、1〜20個の炭素原子を有する直鎖または分岐アルキレンラジカルである、1つ以上の化合物と、次の構造式を有する1つ以上の化合物であって、
【化1】
式中、Mは、水素、NH、ナトリウム、またはカリウムであり、Rは、置換もしくは非置換、直鎖もしくは分岐(C−C20)アルキ、または置換もしくは非置換(C−C10)アリールである、1つ以上の化合物と、
を含む、スズ/銀合金電気めっき浴。
【請求項2】
銀イオンとスズイオンとの比率が1〜12の範囲である、請求項1に記載の前記電気めっき浴。
【請求項3】
銀イオンとスズイオンとの前記比率が1〜6の範囲である、請求項2に記載の前記電気めっき浴。
【請求項4】
X及びYは、異なり、また、HO−R−または−R’−S−R”−OHである、請求項
1に記載の前記電気めっき浴。
【請求項5】
前記構造式(III)の化合物と前記構造式(I)の化合物との比率が3〜300である、請求項1に記載の前記電気めっき浴。
【請求項6】
a)基板を、1つ以上の銀イオン源と、1つ以上のスズイオン源と、次の構造式を有する1つ以上の化合物であって、
X−S−Y
式中、X及びYは、置換または非置換フェノール基、HO−R−、または−R’S−R ”−OHであり得るが、但し、X及びYが同じであるとき、それらは、置換または非置換フェノール基であり、そうでない場合、X及びYは、異なり、R、R’、及びR”は、同じであるか、または異なり、また、1〜20個の炭素原子を有する直鎖または分岐アルキレンラジカルである、1つ以上の化合物と、次の構造式を有する1つ以上の化合物であって、
【化2】
式中、Mは、水素、NH、ナトリウム、またはカリウムであり、Rは、置換もしくは非置換、直鎖もしくは分岐(C−C20)アルキ、または置換もしくは非置換(C−C10)アリールである、1つ以上の化合物とを含む、スズ/銀合金電気めっき浴と接触させることと、
b)銀−スズ合金を前記基板上に電気めっきすることと、
を含む、スズ/銀合金電気めっき方法。
【請求項7】
a)複数の相互接続バンプパッドを有する半導体ダイを提供することと、
b)前記相互接続バンプパッドを覆ってシード層を形成することと、
c)前記半導体ダイを、1つ以上の銀イオン源と、1つ以上のスズイオン源と、次の構造式を有する1つ以上の化合物であって、
X−S−Y
式中、X及びYは、置換または非置換フェノール基、HO−R−、または−R’S−R ”−OHであり得るが、但し、X及びYが同じであるとき、それらは、置換または非置換フェノール基であり、そうでない場合、X及びYは、異なり、R、R’、及びR”は、同じであるか、または異なり、また、1〜20個の炭素原子を有する直鎖または分岐アルキレンラジカルである、1つ以上の化合物と、次の構造式を有する1つ以上の化合物であって、
【化3】
式中、Mは、水素、NH、ナトリウム、またはカリウムであり、Rは、置換もしくは非置換、直鎖もしくは分岐(C−C20)アルキ、または置換もしくは非置換(C−C10)アリールである、1つ以上の化合物とを含む、スズ/銀合金電気めっき浴と接触させることと、
d)銀−スズ合金相互接続バンプを、前記相互接続バンプパッドを覆って電気めっきすることと、
e)前記銀−スズ合金相互接続バンプをリフローすることと、
を含む、スズ/銀合金電気めっき方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、銀−スズ合金の電気めっき浴、及び銀−スズ合金を電気めっきする方法を対象とする。より具体的には、本発明は、銀−スズ合金の電気めっき浴、及び該電気めっき浴が、銀リッチ合金またはスズリッチ合金を可能にする錯化剤を含有する、銀−スズ合金を電気めっきする方法を対象とする。
【背景技術】
【0002】
銀−スズ合金には2つの分類がある。1つは、銀含有量が50%を超える、銀系の、または銀リッチの銀/スズ合金である。そのような合金は、純銀と比較して、より高い硬度及びより高い耐摩耗性を有し、また、装飾用途で使用される。該合金の優れた電気伝導率のため、該合金はまた、硬質金の量を低減させるために、電子コネクタでも使用され得る。硬質金は、良好な耐摩耗性及び耐腐食性を有するので、接点材料の表面仕上げとして電子コネクタで使用される。硬質金は、電荷輸送に必要とされる低電気接点抵抗を提供するが、金の価格が上昇しており、よって、低コストのコネクタ表面仕上げに対する制限要因になっている。銀/スズ合金は、硬質金を置き換えるかまたはその量を低減させるために、接点表面仕上げに使用されている。そのような合金は、銀及びスズの1つ以上の交互層をめっきし、続いて、非酸化雰囲気中で拡散させて銀/スズ合金を形成することによって生成されている。米国第5,438,175号は、薄い金の表面仕上げ層がより低コストの物品を生成することを可能にするために、銀/スズならびに銀/パラジウムフラッシュ層を有する電子コネクタを開示している。
【0003】
第2のタイプの合金は、銀含有量が約3.5%等の近共晶混合物である、スズ系合金である。スズ/銀合金は、銀/スズ合金よりも軟質な合金であり、また、純スズと同程度の硬度を有する。そのような合金は、低ウィスカ性の無鉛はんだとして使用され得る。スズ/銀合金に関する種々の電子的用途のうち、半導体製造業界では、現在、ウエハレベルパッケージング(WLP)に注目している。ウエハレベルパッケージングによって、ICの相互接続がウエハ上にひとまとめに製作され、ICモジュールをダイシング加工する前に、完全なICモジュールをウエハ上に構築することができる。WLPを使用して得られる利益としては、例えば、I/O密度の増加、動作速度の向上、電力密度及び熱管理の強化、及びパッケージサイズの縮小が挙げられる。
【0004】
WLPの鍵の1つは、フリップチップ導電性相互接続バンプをウエハ上に構築することである。これらの相互接続バンプは、半導体構成要素のプリント配線板への電気的及び物理的接続部としての役割を果たす。相互接続バンプを半導体デバイス上に形成する複数の方法、例えば、はんだめっきバンピング、蒸着バンピング、導電性接着接合、ステンシル印刷はんだバンピング、スタッドバンピング、及びボール配置バンピングが提案されている。これら技術のうち、微細ピッチ配列を形成するための最もコスト効率的な技法は、はんだめっきバンピングであると考えられており、該技法は、一時的なフォトレジストめっきマスクと電気めっきとの組み合わせを含む。この技法は、マイクロプロセッサ、デジタル信号プロセッサ、及び特定用途向け集積回路等の、高付加価値アセンブリ用の全領域相互接続バンプ技術として急速に採用されている。
【0005】
はんだバンプの形成には、一般的に、スズ/鉛合金が使用されるが、鉛の毒性のため、業界は、容易に共堆積させることができる許容可能な無鉛スズ合金を探している。堆積させている材料が大幅に異なる堆積電位を有するときに、電気めっきによる無鉛スズ合金の共堆積と関連付けられる問題が起こる。例えば、スズ(−0.137V)と銀(0.799V)との合金を堆積させようとしたときに、複雑な問題が起こる可能性がある。業界は、所与の用途に対して高過ぎるまたは低過ぎる温度での溶融を防止するために、堆積物の組成を効果的に制御することを望んでいる。不十分な組成制御は、処理されている構成要素が耐えるには高過ぎる温度、または他の極端で不完全なはんだ接合部の形成のいずれかをもたらす可能性がある。
【0006】
バンプを電気めっきする際にしばしば発生する他の問題は、バンプの形態である。例えば、スズ/銀バンプは、フォトレジストで画定されるバイアを通して、バンプ金属の下の銅またはニッケル上へ電着される。フォトレジストをストリップし、そして、スズ/銀をリフローして球面バンプを形成する。バンプの全てが、対応するフリップチップ構成要素上のそれらの電気接続部と接触するように、バンプサイズの均一性が重要である。バンプサイズの均一性に加えて、バンプのリフロー中に、低密度で低容量の空隙が形成されることが重要である。理想的には、いかなる空隙もリフロー中に形成されない。バンプの中の空隙はまた、相互接続部の対応するフリップチップ構成要素に接合されるときに、相互接続部の信頼性問題につながり得る。めっきバンプと関連付けられる別の問題は、数多くの従来の走査型電子顕微鏡で容易に検出可能である、バンプ表面におけるノジュールの形成である。そのようなノジュールは、リフローを空隙化させ得、ノジュールを伴う外観的な堆積物は商業的に受け入れられない。
【0007】
故に、硬質金を置き換えるために銀リッチの銀/スズ合金を提供することができ、また、実質的にノジュールを含まず、かつ空隙を含まないはんだバンプを提供するためにスズリッチのスズ/銀合金を提供することができる、安定した銀−スズ合金電気めっき浴に対する必要性がある。
【発明の概要】
【0008】
電気めっき浴は、1つ以上の銀イオン源と、1つ以上のスズイオン源と、次の構造式を有する1つ以上の化合物であって、
X−S−Y
式中、X及びYは、置換または非置換フェノール基、HO−R−、または−R’−S−R”−OHであり得るが、但し、X及びYが同じであるとき、それらは、置換または非置換フェノール基であり、そうでない場合、X及びYは、異なり、R、R’、及びR”は、同じであるか、または異なり、また、1〜20個の炭素原子を有する直鎖または分岐アルキレンラジカルである、1つ以上の化合物と、次の構造式を有する1つ以上の化合物であって、
【0009】
【化1】
【0010】
式中、Mは、水素、NH、ナトリウム、またはカリウムであり、Rは、置換もしくは非置換、直鎖もしくは分岐(C−C20)アルキ、置換もしくは非置換(C−C10)アリールである、1つ以上の化合物と、を含む。
【0011】
電気めっき方法は、基板を、1つ以上の銀イオン源と、1つ以上のスズイオン源と、次の構造式を有する1つ以上の化合物であって、
X−S−Y
式中、X及びYは、置換または非置換フェノール基、HO−R−、または−R’−S−R”−OHであり得るが、但し、X及びYが同じであるとき、それらは、置換または非置換フェノール基であり、そうでない場合、X及びYは、異なり、R、R’、及びR”は、同じであるか、または異なり、また、1〜20個の炭素原子を有する直鎖または分岐アルキレンラジカルである、1つ以上の化合物と、次の構造式を有する1つ以上の化合物であって、
【0012】
【化2】
【0013】
式中、Mは、水素、NH、ナトリウム、またはカリウムであり、Rは、置換もしくは非置換、直鎖もしくは分岐(C−C20)アルキ、または置換もしくは非置換(C−C10)アリールである、1つ以上の化合物とを含む、電気めっき浴と接触させることと、銀−スズ合金を基板上に電気めっきすることと、を含む。
【0014】
電気めっき方法はまた、複数の相互接続バンプパッドを有する半導体ダイを提供することと、相互接続バンプを覆ってシード層を形成することと、半導体ダイを、1つ以上の銀イオン源と、1つ以上のスズイオン源と、次の構造式を有する1つ以上の化合物であって、
X−S−Y
式中、X及びYは、置換または非置換フェノール基、HO−R−、または−R’S−R”−OHであり得るが、但し、X及びYが同じであるとき、それらは、置換または非置換フェノール基であり、そうでない場合、X及びYは、異なり、R、R’、及びR”は、同じであるか、または異なり、また、1〜20個の炭素原子を有する直鎖または分岐アルキレンラジカルである、1つ以上の化合物と、次の構造式を有する1つ以上の化合物であって、
【0015】
【化3】
【0016】
式中、Mは、水素、NH、ナトリウム、またはカリウムであり、Rは、置換もしくは非置換、直鎖もしくは分岐(C−C20)アルキ、または置換もしくは非置換(C−C10)アリールである、1つ以上の化合物とを含む、銀−スズ合金電気めっき浴と接触させることと、銀−スズ合金相互接続バンプを相互接続バンプパッドの上に電気めっきすることと、銀−スズ合金相互接続バンプをリフローすることと、を含む。
【0017】
銀−スズ合金浴は、鉛を含まず、また、安定している。これらの浴は、銀リッチまたはスズリッチの銀−スズ合金を堆積させることができる。銀リッチの銀/スズ合金は、装飾目的に使用することができる光沢のある銀/スズ合金を提供し、また、電気コネクタの表面仕上げ層として、硬質金を置き換えるのに十分な硬さである。スズリッチのスズ/銀合金浴は、共晶または近共晶であるスズ/銀合金を堆積させるために使用することができる。加えて、スズ/銀合金浴を使用して堆積させた相互接続バンプは、実質的に均一の形態を有し、また、リフロー後に、実質的に空隙を含まない相互接続バンプを提供する。相互接続バンプはまた、実質的にノジュールも含まない。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本明細書を通して使用される場合、文脈上明らかに指示のある場合を除き、以下の略語は以下の意味を有する。℃=摂氏度、g=グラム、mm=ミリメートル、cm=センチメートル、mL=ミリリットル、L=リットル、ppm=100万分の1、DI=脱イオン、nm=ナノメートル、μm=ミクロン、wt%=重量パーセント、A=アンペア、A/dm及びASD=アンペア/平方デシメートル、Ah=アンペア時、HV=硬度値、mN=ミリニュートン、cps=センチポアズ、rpm=毎分回転数、IEC=国産電機標準会議、及びASTM=米国標準試験方法。電気めっき電位は、水素参照電極に関して提示される。電気めっき過程に関連して、「堆積」、「被覆」、「電気めっき」、及び「めっき」は、本明細書の全体を通して同じ意味で使用される。「ハロゲン化物」は、フッ化物、塩化物、臭化物、及びヨウ化物を指す。「共晶」は、成分の比率を変動させることによって得ることができる合金の最低融点意味し、また、他の同じ金属の組み合わせとは対照的に明確な最低融点を有することを意味する。別途注記のない限り、全てのパーセンテージは、重量パーセントである。全ての数値範囲は、包括的であり、任意の順序で組み合わせることできるが、但し、そのような数値範囲が合計で100%になると解釈されることが論理的である場合を除く。
【0019】
銀−スズ合金電気めっき浴は、実質的に鉛を含まない。「実質的に鉛を含まない」とは、浴及び銀−スズ合金の堆積物が50ppm以下の鉛を含むことを意味する。加えて、銀−スズ合金電気めっき浴は、好ましくは、シアン化物を含まない。シアン化物は、主に、CN−アニオンを含む浴中に任意の銀もしくはスズ塩、または他の化合物を用いないことによって回避される。
【0020】
銀−スズ合金電気めっき浴はまた、好ましくは、低発泡性でもある。めっき中に電気めっき浴がより多く発泡するほど、めっき中に、単位時間あたりに浴が解放する成分も多くなるので、金属めっき業界においては、低発泡性の電気めっき浴が非常に望まれる。めっき中の成分の喪失は、商業的に劣る銀−スズ合金堆積物の生成をもたらし得る。故に、作業者は、成分濃度を厳重に監視しなければならず、また、喪失した成分をそれらの元の濃度に戻さなければならない。重要な成分のいくつかは、比較的低い濃度で含まれ、よって、該成分を正確に測定し、最適なめっき性能を維持するように戻すことは困難なので、めっき中に成分濃度を監視することは、時間がかかり、かつ困難であり得る。低発泡性の電気めっき浴は、合金組成の均一性及び基材表面全体にわたる厚さの均一性を向上させ、また、リフロー後に堆積物中に空隙を生じさせる、堆積物中に捕捉される有機物及びガス気泡を低減させることができる。
【0021】
電気めっき浴は、1つ以上の銀イオン源を含む。銀イオン源は、ハロゲン化銀、グルコン酸銀、クエン酸銀、乳酸銀、硝酸銀、硫酸銀、アルカンスルホン酸銀、及びアルカノールスルホン酸銀等が挙げられるが、それらに限定されない、銀塩によって提供され得る。ハロゲン化銀を使用するときには、ハロゲン化物が塩化物であることが好ましい。好ましくは、銀塩は、硫酸銀、アルカンスルホン酸銀、またはそれらの混合物であり、より好ましくは、硫酸銀、メタンスルホン酸銀、またはそれらの混合物である。銀塩は、全般的に、商業的に入手可能であり、または文献で説明される方法によって調製され得る。好ましくは、銀塩は、易水溶性である。浴中で使用される1つ以上の銀塩の量は、例えば、堆積させる所望の合金組成及び動作条件に依存する。全般に、浴中の銀塩は、0.01g/L〜100g/L、一般的には、0.02g/L〜80g/Lの範囲であり得る。光沢のある銀リッチ合金が所望されるときに、電気めっき浴中の銀イオンとスズイオンとの濃度は、1〜12、好ましくは、1〜6の範囲である。銀が合金の少ない方の金属であるとき、銀塩は、0.01g/L〜20g/L、一般的には、0.01g/L〜15g/Lの範囲であり得る。
【0022】
電気めっき浴は、1つ以上のスズイオン源を含む。スズイオン源としては、ハロゲン化スズ、硫酸スズ、アルカンスルホン酸スズ、アルカノールスルホン酸スズ、及び酸等の塩が挙げられるが、それらに限定されない。ハロゲン化スズを使用するときには、ハロゲン化物が塩化物であることが一般的である。スズ化合物は、好ましくは、硫酸スズ、塩化スズ、またはアルカンスルホン酸スズであり、より好ましくは、硫酸スズまたはメタンスルホン酸スズである。スズ化合物は、全般的に、商業的に入手可能であり、または文献で知られている方法によって調製され得る。好ましくは、スズ塩は、易水溶性である。浴中で使用されるスズ塩の量は、堆積させる所望の合金組成及び動作条件に依存する。全般に、スズ塩は、1g/L〜100g/L、一般的には、5g/L〜80g/Lの範囲であり得る。合金がスズリッチであるとき、スズ塩は、一般的には、30g/L〜100g/Lの範囲である。スズが2つの金属のうちの少ない方であるときに、銀イオンとスズイオンとの重量比は、上で説明される通りである。
【0023】
銀−スズ合金電気めっき浴は、次の構造式を有する1つ以上の化合物を含み、
X−S−Y(I)
式中、X及びYは、置換または非置換フェノール基、HO−R−、または−R’−S−R”−OHであり得るが、但し、X及びYが同じであるとき、それらは、置換または非置換フェノール基であり、そうでない場合、X及びYは、異なり、R、R’、及びR”は、同じであるか、または異なり、また、1〜20個の炭素原子を有する直鎖または分岐アルキレンラジカルである。フェノールの置換基としては、直鎖または分岐(C−C)アルキルが挙げられるが、それに限定されない。全般に、そのような化合物は、0.1g/L〜25g/L、一般的には、0.5g/L〜10g/Lの量で浴中に含まれる。
【0024】
変数X及びYがフェノール基である化合物は、4,4’−チオジフェノール及び4,4’−チオビス(2−メチル−6−tert−ブチルフェノール)である。好ましくは、化合物は、4,4’−チオジフェノールである。
【0025】
X及びYが異なるときに、化合物は、好ましくは、以下の一般構造式を有する。
HO−R−S−R’−S−R”−OH(II)
式中、R、R’、及びR”は、同じであるか、または異なり、また、1〜20個の炭素原子、好ましくは、1〜10個の炭素原子、より好ましくは、R及びR”が2〜10個の炭素原子及びR’が2個の炭素原子を有する、直鎖または分岐アルキレンラジカルである。そのような化合物は、ジヒドロキシビススルフィド化合物として知られている。好ましくは、ジヒドロキシビススルフィド化合物は、フェノール含有化合物を超えて合金浴中に含まれる。
【0026】
そのようなジヒドロキシビススルフィド化合物の例としては、2,4−ジチア−1,5−ペンタンジオール、2,5−ジチア−1,6−ヘキサンジオール、2,6−ジチア−1,7−ヘプタンジオール、2,7−ジチア−1,8−オクタンジオール、2,8−ジチア−1,9−ノナンジオール、2,9−ジチア−1,10−デカンジオール、2,11−ジチア−1,12−ドデカンジオール、5,8−ジチア−1,12−ドデカンジオール、2,15−ジチア−1,16−ヘキサデカンジオール、2,21−ジチア−1,22−ドエイコサンジオール、3,5−ジチア−1,7−ヘプタンジオール、3,6−ジチア−1,8−オクタンジオール、3,8−ジチア−1,10−デカンジオール、3,10−ジチア−1,8−ドデカンジオール、3,13−ジチア−1,15−ペンタデカンジオール、3,18−ジチア−1,20−エイコサンジオール、4,6−ジチア−1,9−ノナンジオール、4,7−ジチア−1,10−デカンジオール、4,11−ジチア−1,14−テトラデカンジオール、4,15−ジチア−1,18−オクタデカンジオール、4,19−ジチア−1,22−ドデカンジオール、5,7−ジチア−1,11−ウンデカンジオール、5,9−ジチア−1,13−トリデカンジオール、5,13−ジチア−1,17−ヘプタデカンジオール、5,17−ジチア−1,21−ヘンエイコサンジオール、及び1,8−ジメチル−3,6−ジチア−1,8−オクタンジオールが挙げられる。
【0027】
銀−スズ合金浴はまた、以下の構造式を有するメルカプトテトラゾール化合物も含む。
【0028】
【化4】
【0029】
式中、Mは、水素、NH、ナトリウム、またはカリウムであり、Rは、置換もしくは非置換、直鎖もしくは分岐(C−C20)アルキ、置換もしくは非置換(C−C10)アリール、好ましくは、置換もしくは非置換、直鎖もしくは分岐(C−C10)アルキル、及び置換もしくは非置換(C)アリール、より好ましくは、置換もしくは非置換、直鎖もしくは分岐(C−C10)アルキルである。置換基としては、アルコキシ、フェノキシ、ハロゲン、ニトロ、アミノ、置換アミノ、スルホ、スルファミル、置換スルファミル、スルホニルフェニル、スルホニルアルキル、フルオロスルホニル、スルホアミドフェニル、スルホンアミドアルキル、カルボキシ、カルボン酸塩、ウレイドカルバミル、カルバミルフェニル、カルバミルアルキル、カルボニルアルキル、及びカルボニルフェニルが挙げられるが、それらに限定されない。好ましい置換基としては、アミノ及び置換アミノ基が挙げられる。メルカプトテトラゾールの例としては、1−(2−ジエチルアミノエチル)−5−メルカプト−1,2,3,4−テトラゾール、1−(3−ウレイドフェニル)−5−メルカプトテトラゾール、1−((3−N−エチルオキサルアミド)フェニル)−5−メルカプトテトラゾール、1−(4−アセトアミドフェニル)−5−メルカプトテトラゾール、及び1−(4−カルボキシフェニル)−5−メルカプトテトラゾールが挙げられる。全般に、構造式(III)のメルカプトテトラゾール化合物は、1g/L〜200g/L、一般的には、5g/L〜150g/Lの量で浴中に含まれる。
【0030】
構造式(I)及び(II)の1つ以上の化合物と、構造式(III)のメルカプトテトラゾール化合物のうちの1つ以上との組み合わせは、貯蔵中または電気めっき中に、合金浴に安定性を提供し、同様に、許容可能な電流密度範囲にわたって安定した合金組成を提供し、よって、硬質で光沢のある銀リッチの銀/スズ合金が硬質金の代わりとして堆積され得るか、または、リフロー後に、良好な形態を有し、ノジュールが低減されるかまたは含まず、また、空隙が低減されるかまたは含まないはんだバンプを提供するために、スズリッチのスズ/銀合金が堆積され得る。加えて、銀−スズ合金の堆積物は、銀よりも曇りに対して耐性がある。全般に、構造式(III)の化合物と構造式(I)の化合物との重量比は、3〜300である。構造式(I)の変数X及びYが同じであるとき、構造式(III)の化合物と構造式(I)の化合物との重量比は、25〜300、好ましくは、25〜150である。構造式(II)の化合物が浴中に含まれるとき、メルカプトテトラゾールと構造式(II)の化合物との重量比は、3〜30、好ましくは、3〜15である。
【0031】
他の点で悪影響を浴に与えない任意の水溶性の酸も使用され得る。適切な酸としては、アリールスルホン酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、及びプロパンスルホン酸等のアルカンスルホン酸、フェニルスルホン酸及びトリルスルホン酸等のアリールスルホン酸、ならびに硫酸、スルファミン酸、塩酸、臭化水素酸、及びフルオロホウ酸等の無機酸が挙げられるが、それらに限定されない。一般的に、酸は、アルカンスルホン酸及びアリールスルホン酸である。酸の混合物が使用され得るが、単一の酸が使用されることが一般的である。酸は、全般的に、商業的に入手可能であり、または文献で知られている方法によって調製され得る。
【0032】
所望の合金組成及び動作条件に依存するが、電解質組成中の酸の量は、0.01〜500g/L、または10〜400g/L等、または100〜300g/L等の範囲であり得る。銀イオン及びスズのイオンが金属ハロゲン化物に由来するときには、対応する酸の使用が所望され得る。例えば、塩化スズまたは塩化銀のうちの1つ以上が使用されるときには、酸成分としての塩酸の使用が所望され得る。また、酸の混合物も使用され得る。
【0033】
随意に、1つ以上のサプレッサーが浴中に含まれ得る。一般的に、このサプレッサーは、0.5〜15g/L、または1〜10g/L等の量で使用され得る。そのようなサプレッサーとしては、アルカノールアミン、ポリエチレンイミン、及びアルコキシル化芳香族アルコールが挙げられるが、それらに限定されない。適切なアルカノールアミンとしては、置換または非置換、メトキシ化、エトキシ化、及びプロポキシ化アミン、例えば、テトラ(2−ヒドロキシプロピル)エチレンジアミン、2−{[2−(ジメチルアミノ)エチル]−メチルアミノ}エタノール、N,N’−ビス(2−ヒドロキシエチル)−エチレンジアミン、2−(2−アミノエチルアミン)−エタノール、及びそれらの組み合わせが挙げられるが、それらに限定されない。
【0034】
適切なポリエチレンイミンは、置換または非置換、直鎖または分岐鎖ポリエチレンイミン、または800〜750,000の分子量を有するそれらの混合物が挙げられるが、それらに限定されない。適切な置換基としては、例えば、カルボキシアルキル、例えば、カルボキシメチル、カルボキシエチルが挙げられる。
【0035】
有用なアルコキシル化芳香族アルコールとしては、エトキシル化ビスフェノール、エトキシル化ベータナフトール、及びエトキシル化ノニルフェノールが挙げられるが、それらに限定されない。
【0036】
随意に、スズを可溶性で二価の状態に保つのを支援するために、1つ以上の還元剤を浴に加えることができる。適切な還元剤としては、ヒドロキノン、ヒドロキノンスルホン酸、カリウム塩、ならびにレゾルシノール及びカテコール等の水酸化芳香族化合物が挙げられるが、それらに限定されない。そのような還元剤は、組成物中で使用されるときに、0.01〜20g/L、または0.1〜5g/L等の量で存在する。
【0037】
良好な濡れ能力を必要とする用途の場合、1つ以上の界面活性剤が浴中に含まれ得る。適切な界面活性剤は、当業者に知られており、また、良好なはんだ付け性、必要な場合には良好な艶消しまたは艶あり表面仕上げ、十分な結晶粒微細化を有する堆積物をもたらし、また、酸性の電気めっき浴中で安定している任意のものが挙げられる。好ましくは、低発泡性界面活性剤が使用される。従来の量が使用され得る。
【0038】
随意に、1つ以上の光沢剤が含まれ得る。そのような光沢剤は、当業者によく知られている。適切な光沢剤としては、クロロベンズアルデヒド等の芳香族アルデヒド、またはベンジリデンアセトン等のその誘導剤が挙げられるが、それらに限定されない。光沢剤の適切な量は、当業者に知られている。
【0039】
さらなる結晶粒微細化を提供するために、他の随意の化合物が浴に加えられ得る。そのような化合物としては、ポリエトキシル化アミンであるJEFFAMINE T−403もしくはTRITON RW等のアルコキシレート、または、TRITON QS−15等の硫酸化アルキルエトキシレート、及びゼラチンもしくはゼラチン誘導体が挙げられるが、それらに限定されない。アルコキシル化アミンオキシドも含まれ得る。様々なアルコキシル化アミンオキシド界面活性剤が知られているが、好ましくは、低発泡性アミンオキシドが使用される。そのような好ましいアルコキシル化アミンオキシド界面活性剤は、#2スピンドルを有するBrookfield LVT粘度計を使用して測定して、5000cps未満の粘度を有する。一般的に、この粘度は、周囲温度で決定される。従来の量のそのような結晶粒微細化剤が使用され得る。一般的に、結晶粒微細化剤は、0.5g/L〜20g/Lの量で浴中に含まれる。
【0040】
フラボン化合物も、結晶粒微細化剤として浴中に含まれ得る。そのようなフラボン化合物としては、ペンタヒドロキシフラボン、モリン、クリシン、クエルセチン、フィセチン、ミリセチン、ルチン、及びケルシトリンが挙げられるが、それらに限定されない。フラボン化合物は、1〜200mg/L、一般的には、10〜100mg/L、より一般的には、25〜85mg/Lの量で存在し得る。
【0041】
電気めっき浴は、一般的に、酸の1つ以上、構造式(I)、(II)の化合物のうちの1つ以上、及び構造式(III)の1つ以上の化合物を、続いて、1つ以上の溶液可溶性銀−スズ化合物、1つ以上の随意の添加剤、及び平衡水を、容器に加えることによって調製される。好ましくは、構造式(I)、(II)、及び(III)の化合物は、溶液可溶性銀−スズ化合物より先に、容器に加えられる。水性浴が調製されると、濾過等によって望ましくない材料を除去することができ、次いで、一般的に、水を加えて浴の最終的な容量を調整する。めっき速度を増加させるために、浴は、かき混ぜ、ポンピング、または再循環等の任意の既知の手段によって攪拌することができる。浴は、7未満、一般的には、1未満、より一般的には、1以下〜2のpHを有する酸性である。
【0042】
浴は、銀−スズ合金が所望される数多くのめっき方法において有用であり、また、低発泡性である。めっき方法としては、水平または垂直ウエハめっき、バレルめっき、ラックめっき、ならびにリールツーリール及びジェットめっき等の高速めっきが挙げられるが、それらに限定されない。銀−スズ合金は、基板を浴と接触させるステップと、銀−スズ合金を基板上に堆積させるために電流を浴に通すステップとによって、基板上に堆積され得る。めっきされ得る基板としては、銅、銅合金、ニッケル、ニッケル合金、黄銅含有材料、電気コネクタ等の電子構成要素、及びシリコンウエハ等の半導体ウエハが挙げられるが、それらに限定されない。浴は、電気コネクタ、宝石、装飾物、及び相互接続バンプめっき用途等の電子構成要素の電気めっきに使用され得る。基板は、当技術分野で知られている任意の手法で浴と接触され得る。
【0043】
銀−スズ合金をめっきするために使用される電流密度は、特定のめっき方法に依存する。全般的に、電流密度は、0.05A/dm以上、または1〜25A/dm等である。一般的に、より低い電流密度は、0.05A/dm〜10A/dmの範囲である。高攪拌を有するジェットめっき等における高い電流密度は、10A/dmを超え、また、25A/dm以上の高さになり得る。
【0044】
銀−スズ合金は、室温〜55℃、または室温〜40℃等、または室温〜30℃等の温度で電気めっきされ得る。一般的に、銀/スズ電気めっきは、室温〜55℃で行われ、スズ/銀は、室温〜40℃で行われる。
【0045】
浴は、種々の組成の銀−スズ合金を堆積させるために使用され得る。合金が光沢のある銀リッチの銀/スズ合金であるとき、銀含有量は、50%超〜95%の範囲であり、合金の残りがスズであり得、一般的に、銀含有量は、60%〜90%の範囲である。スズリッチの合金は、50%超〜99%の範囲のスズを含み、残りが銀であり、一般的に、スズリッチの合金は、80%〜99%のスズを含み、残りが銀である。そのような重量は、原子吸着分光学法(「AAS」)、X線蛍光(「XRF」)法、誘導結合プラズマ(「ICP」)法、または示差走査熱量測定(「DSC」)法のいずれかによる測定値に基づく。数多くの用途に対して、合金の共晶組成が使用され得る。そのようなスズ合金は、実質的に鉛及びシアン化物を含まない。
【0046】
全般に、銀リッチの合金は、スズリッチの合金よりも硬い堆積物を提供する。そのような銀リッチの合金は、宝石の装飾用途等における硬質金の表面仕上げを置き換えるために、他の装飾物に、ならびに耐摩耗性及び耐変色性が必要とされるコネクタの硬質表面仕上げに使用される。一般的に、そのような表面仕上げは、0.4μm〜5μmの厚さの範囲である。
【0047】
スズリッチのスズ/銀合金は、一般的に、ウエハレベルパッケージングの相互接続バンプの形成に使用される。これは、複数の相互接続バンプパッドを有する半導体ダイを提供することと、相互接続バンプパッドを覆ってシード層を形成することと、スズ/銀合金相互接続バンプを基板上に堆積させるために、半導体ダイをスズ/銀合金浴と接触させ、そして、電流を浴に通すことによって、相互接続バンプパッドを覆ってスズ/銀合金相互接続バンプ層を堆積させることと、相互接続バンプをリフローすることとを含む。
【0048】
全般に、デバイスは、複数の導電性相互接続バンプパッドがその上に形成される、半導体基板を含む。半導体基板は、単結晶シリコンウエハ、シリコンオンサファイア(SOS)基板、またはシリコンオンインシュレータ(SOI)基板であり得る。導電性相互接続バンプパッドは、一般的にスパッタリング等の物理蒸着法(PVD)によって形成される、金属、複合金属、または金属合金のうちの1つ以上の層であり得る。代表的な導電性相互接続バンプパッド材料としては、アルミニウム、銅、窒化チタン、及びそれらの合金が挙げられるが、それらに限定されない。
【0049】
エッチングプロセスによって、一般的には、ドライエッチングによって、パッシベーション層が相互接続バンプパッドを覆って形成され、そして、相互接続バンプパッドまで延在する開口部がその中に形成される。パッシベーション層は、一般的に、絶縁材料、例えば、窒化ケイ素、酸窒化ケイ素、またはリンケイ酸塩ガラス(PSG)等の酸化シリコンである。そのような材料は、プラズマ強化CVD(PECVD)等の化学蒸着(CVD)過程によって堆積され得る。
【0050】
一般的に、複数の金属または金属合金層で形成されるアンダーバンプメタライゼーション(UBM)構造が、デバイスを覆って堆積される。UBMは、形成される相互接続バンプの接着剤層及び電気接触基部(シード層)として作用する。UBM構造を形成する層は、スパッタリングまたは蒸着等のPVD、またはCVD過程によって堆積され得る。これに限定されないが、UBM構造は、例えば、底部のクロム層、銅層、及び上部のスズ層の順序で含む、複合構造であり得る。
【0051】
フォトレジスト層をデバイスに適用し、続いて、標準的なフォトリソグラフィ露光及び現像技法を適用して、めっきマスクを形成する。めっきマスクは、I/Oパッド及びUBMを覆うめっきバイアのサイズ及び場所を画定する。これに限定されないが、めっき過程は、全般的に、比較的薄い、一般的には、厚さ25〜70μmのフォトレジスト層を用い、一方で、バイアめっき過程は、全般的に、比較的厚い、一般的には、厚さ70〜120μmのフォトレジスト層を用いる。フォトレジスト材料は、商業的に入手可能であり、また当技術分野でよく知られている。
【0052】
相互接続バンプ材料は、上で説明されるスズリッチのスズ/銀合金電気めっき浴を使用した電気めっき過程によって、デバイス上に堆積される。共晶濃度を提供するスズ/銀合金浴を使用することが所望され得る。バンプ材料は、めっきバイアによって画定される領域において電気めっきされる。この目的のために、水平または垂直ウエハめっきシステム、例えば噴水めっきシステムが、一般的に、直流(DC)またはパルスめっき技法とともに使用される。めっき過程において、相互接続バンプ材料は、めっきマスクの上面の一部分を超えてその上に延在するバイアを完全に満たす。これは、リフロー後に所望のボールサイズを達成するために、十分な量の相互接続バンプ材料が堆積されることを確実にする。バイアめっき過程において、フォトレジストの厚さは、適切な量の相互接続バンプ材料がめっきマスクバイア内に含有されるように、十分に厚い。銅またはニッケルの層は、相互接続バンプ材料にめっきする前に、めっきバイアに電気めっきされ得る。そのような層は、リフローに応じて相互接続バンプに対する濡れ性の下地として作用し得る。
【0053】
相互接続バンプ材料の堆積に続いて、適切な溶媒を使用してめっきマスクをストリップする。そのような溶媒は、当技術分野でよく知られている。次いで、既知の技法を使用してUBM構造を選択的にエッチングし、相互接続バンプの回り及びそれらの間の電磁場領域から全ての金属を除去する。
【0054】
次いで、ウエハを、随意に、フラックス処理し、そして、相互接続バンプ材料が溶融し、先端を切った実質的に球面形状に流れ込む温度まで、リフロー炉において加熱する。加熱技法は、当技術分野で知られており、例えば、赤外線、熱伝導、及び対流技法、ならびにそれらの組み合わせが挙げられる。リフローした相互接続バンプは、全般的に、UBM構造の縁部と同一の領域を占める。熱処理ステップは、不活性ガス雰囲気中で、または空気中で行われ、特定の過程温度及び時間は、相互接続バンプ材料の特定の組成に依存する。
【0055】
銀−スズ合金浴は、鉛を含まず、また、安定している。好ましくは、これらの浴は、シアン化合物を含まない。一般的に2ヶ月のアイドル時間で分解する従来の銀−スズシアン化物浴とは対照的に、この銀−スズ合金は、一般的に、アイドル時間中に少なくとも8ヶ月にわたって安定した状態を維持する。これらの浴は、銀リッチまたはスズリッチの銀−スズ合金を堆積させることができる。銀リッチの銀/スズ合金は、装飾目的に使用することができる光沢のある銀/スズ合金を提供し、また、電気コネクタの表面仕上げ層として、硬質金を置き換えるのに十分な硬さである。スズリッチのスズ/銀合金浴は、共晶または近共晶であるスズ/銀合金を堆積させるために使用することができる。加えて、スズ/銀合金浴を使用して堆積させた相互接続バンプは、実質的に均一の形態を有し、また、リフロー後に、実質的に空隙を含まない相互接続バンプを提供する。相互接続バンプはまた、実質的にノジュールも含まない。
【0056】
以下の実施例は、本発明をさらに例示することを意図するが、本発明の範囲を制限することを意図しない。
【実施例1】
【0057】
下表の2つの配合物を有する、複数の銀リッチの銀/スズ合金電気めっき浴を調製した。
【0058】
【表1】
【0059】
次いで、配合物Iの電気分解を行った。試験は、浴の電気化学的安定性を示すように行った。7.5cm×10cmの黄銅パネルを計量し、次いで、めっきタンクの中に固定した。15分間にわたって、2ASDの低電流密度をパネルに印加した。パネルをめっきタンクから取り出し、計量した。15分中にめっきされた銀/スズの量を決定した。また、電気の量も、浴のアンペア時/リットルで記録した。結果は、アンペア時/リットルあたりの黄銅パネル上に堆積した銀/スズの量が、100Ah/Lの浴エージングにわたって2ASDにおいて実質的に同じであること、及び電気めっき中に安定していたことを示した。電流効率は、電気分解中に安定しており、100%に近かった。電気分解中に、いかなる浴の分解も観察されなかったが、浴の混濁度及び性能を一定に保つために、スズ(IV)沈殿物を濾過した。めっきしたパネルは、光沢のある銀/スズ堆積物を有した。
【0060】
適切な電流密度が浴エージングとともに安定した状態を維持したかどうかを判定するために、0Ah/L、30Ah/L、70Ah/L、及び100Ah/Lの浴エージングで、2アンペアの全電流によって、配合物IについてHullセル試験を行った。めっきは、電流密度範囲を通じて、3分間にわたって、7.5cm×10cmの黄銅パネルに行った。電流密度は、0.05ASD〜10ASDの範囲であった。全ての事例において、光沢のある銀/スズの堆積物が得られた。
【実施例2】
【0061】
表1の2つの配合物を使用して、銀/スズ合金を、黄銅、銅、銅/ベリリウム合金、銅/ニッケル合金、銅/スズ合金、ニッケル被覆黄銅、及びニッケル被覆銅のパネル上に電気めっきした。各パネルは、7.5cm×10cmであった。パネルの厚さは、0.25mmであった。ニッケル被覆黄銅パネル及びニッケル被覆銅パネルは、ニッケルに対する銀/スズ層の接着を促進するために、100nm未満の銀のストライク層を含有した。銀ストライク層は、2g/Lの銀イオン、15g/Lの3,6−ジチア−1,8−オクタンジオール、67g/Lのメタンスルホン酸を含有する銀ストライク浴を使用して、パネル上に電気めっきした。電気めっきは、10秒〜30秒にわたって、0.5ASD〜1ASDについて行った。
【0062】
パネルを、配合物Iまたは配合物IIのいずれかを含有するめっきタンクの中に配置した。浴の温度は、50℃であり、陽極は、酸化イリジウム不溶性陽極であった。各電極は、整流器に接続した。電気めっきは、2ASDで行った。パネルを電気めっきした後に、銀/スズ堆積物の物理的な外観を調査した。全てが、光沢があり輝きのある堆積物を有した。
【実施例3】
【0063】
直径12mm、高さ8mmの黄銅円柱を電気モーターの軸上に載置し、そして、表1の配合物Iを含有するめっき浴中に浸漬した。モーターは、1000rpmの回転速度に設定した。不溶性の酸化イリジウム電極を陽極として使用した。電極は、整流器に接続した。電気めっき浴は、陰極の回転を通して攪拌し、浴の温度は50℃に維持した。電気めっきは、0.5、1、2、4、6、8、10、12、14、16、18、及び20ASDで行った。円柱は、ある電流密度から別の電流密度に進むときに交換し、めっき時間は、同じ膜厚を保つように調整した。銀/スズ合金堆積物の全てが、0.5ASD〜16ASDの電流密度範囲にわたって、光沢があり輝きのある外観を有した。18ASD及び20ASDでは、少量の焦げた縁部が観察された。
【0064】
Helmut Fischer AGによるFISCHERSCOPE X−RayモデルXDV−SDを使用したX線蛍光(XRF)分析によって、各堆積物の銀及びスズの含有量を決定した。XRF分析は、銀/スズ合金層が、75重量%〜80重量%の銀及び20重量%〜25重量%のスズを含有することを示した。銀/スズ合金の平均合金含有量は、78±2%の銀及び22±2%のスズであると決定された。銀及びスズ含有量は、適用可能な電流密度範囲を通じて大幅に変動しなかった。
【実施例4】
【0065】
5cm×2.5cmの黄銅パネルを、750mL/LのRONOVAL(商標)CM−97メークアップ配合物、17.7g/L(68.2%)のシアン化金カリウム、20mL/LのRONOVAL(商標)CMコバルト濃縮物(Dow Electronic Materialsから入手可能)、及び浴を所望の容量にするための十分なDI水を含有する、金/コバルト合金電気めっき浴からの硬質金層によって、または上記の表1の配合物Iの銀/スズ合金電気めっき浴によって電気めっきした。黄銅パネルは、いずれかの電気めっき浴を有するめっきセルの中に配置した。不溶性の白金めっきチタン電極を陽極として使用した。銀/スズ電気めっきは、50℃で行い、金/コバルトは、60℃で行った。硬質金浴の電流密度は、4ASDであり、銀/スズ浴の電流密度は、2ASDであった。電気めっきは、0.2重量%のコバルトを含有する硬質金、または79重量%の銀及び21重量%のスズを伴う銀/スズ合金のいずれかの5μmの層が黄銅上に堆積するまで行った。
【0066】
ダイヤモンド先端部を有するCSM Instruments Nano−Indentation Testerを使用して、各めっきした黄銅パネルについて、ナノビッカース硬度を室温で試験した。圧子先端部の侵入深さは、黄銅パネル上の硬質金または銀/スズ合金層の厚さの10%以下であった。これは、下層の黄銅が硬度の結果に影響を及ぼさないことを保証した。硬質金の平均硬度は、175HVであると決定され、銀/スズ合金層の硬度は、240HVであると決定された。銀/スズ層は、硬質金の層よりも硬かった。
【0067】
次いで、電気めっきした黄銅パネルを、従来の対流式オーブンにおいて150℃で1時間アニールした。再度、硬質金及び銀/スズ合金層の硬度を試験した。硬質金の層の硬度は、200HVの平均硬度値を有し、銀/スズ合金は、225HVの平均硬度値を有した。アニーリング過程は、銀/スズ合金層を軟化させたが、しれでも、銀/スズ合金層は、硬質金よりも硬い表面を有した。銀/スズ合金は、従来の硬質金を超える向上した硬度を示した。
【実施例5】
【0068】
5cm×10cm及び厚さ0.25mmの黄銅パネルを、銀リッチの銀/スズ合金または金/コバルト硬質金のいずれかによって、上記の実施例4の方法に従って電気めっきした。電気めっきは、パネル上に3μm層を形成するように行った。各めっきした黄銅パネルの延性を、ASTM規格B489−85に従って、SHEEN Instruments Ltd.によるBend−testerを使用して試験した。硬質金について測定した延性は、4〜5%の範囲であり、銀/スズ合金の延性は、7.8%を超えた。銀/スズ合金試料の伸長中には、いかなるクラッキングの徴候もなかった。クラッキングは、硬質金の試料のいくつかにおいて4%の後に観察され、残りは、5%の後にクラックが生じた。銀/スズ層は、硬質金の試料を超える、向上した延性を有した。
【実施例6】
【0069】
5cm×2.5cm、厚さ0.25mmの2つの黄銅パネルを、SILVERON(商標)GT−101銀電気めっき浴(Dow Electronic Materials,Marlborough,MAから入手可能)、または上記の表1の配合物Iの銀/スズ合金浴のいずれかでめっきした。各パネルは、50℃のめっきセル中で電気めっきした。銀/スズ浴の陽極は、不溶性の白金めっきチタン電極であり、銀浴については、可溶性の銀陽極であった。電流密度は、0.5ASDであった。めっきは、厚さ3μmの銀または銀/スズ層がパネル上に堆積するまで行った。
【0070】
次いで、各被覆の耐変色性を試験するために、各パネルを、10分間、2重量%の硫化カリウム(KS)溶液中に浸漬した。銀の被覆は、濃青色の外観を有したが、これは、AgSの形成及び激しい変色を示す。銀/スズ被覆は、淡褐色を有したが、これは、実質的に純粋な銀の被覆と比較して、硫黄の存在下で、多硫化物が銀/スズ被覆と非常に緩やかに反応したことを示す。銀/スズ被覆は、銀被覆よりも耐変色性のある被覆を提供した。
【実施例7】
【0071】
銀リッチの銀/スズ合金層を、配合物Iを使用して、1cm×3cmの黄銅パネルに電気めっきした。電気めっきは、1ASD及び50℃の温度の電気めっきセル中で行った。陽極は、不溶性の白金めっきチタン電極であった。電気めっきは、3μmの銀/スズ合金層がパネル上に堆積するまで行った。1cm×3cmの第2の黄銅パネルを、SOLDERON(商標)BT−280の光沢スズ電気めっき浴(Dow Electronic Materialsから入手可能)を使用して、光沢スズでめっきした。電気めっきは、30℃、1ASDで、3μmの光沢スズ層がパネル上に堆積するまで行った。
【0072】
次いで、IEC60068−2−69(「濡れ平衡法による表面実装デバイス(SMD)の電子構成部品のはんだ付け性試験)に従って、銀/スズ合金のはんだ付け性能を試験し、従来の光沢スズのはんだ付け性能と比較した。各試料は、はんだ付け前に塵埃、油、及び酸化物を除去するために、最初に、Metronelec(フランス)によって提供される不活性フラックスC25R中に浸漬した。次いで、試料を、Metronelec/MENESCO ST50はんだ付け性装置(Metronelecから入手可能)に載置し、該試料を20mm/秒の速度ではんだの中へ4mm進めた。はんだは、95.5重量%のスズ、3.8重量%の銀、及び0.7重量%の銅を含有する無鉛はんだであった。試験時間は、245℃で、10秒であった。プログラムソフトウェアは、試料をはんだの中へ導入したときの力、ならびにはんだが試料の表面を濡らしたときの力を測定する手段を提供するように命令した。全ての測定は、時間の関数として行った。ゼロ交差時間、5mNでの時間、5秒後の平均力、及び5秒での角度といった重要なパラメータを、ソフトウェアプログラムによって計算される力の測定値から決定した。試験は、5回行った。5件の試験の平均結果は、下記の表2に示される。
【0073】
【表2】
【0074】
結果データは、銀リッチの銀/スズ合金のはんだ付け性能が光沢スズのはんだ付け性能に類似していることを示した。銀/スズ合金及び光沢スズの双方の交差時間、ならびに5mNでの時間、5秒後の平均力、及び5秒での角度は、従来のクラスI分類に該当し、該分類では、業界において、1.2秒未満の任意のゼロ交差時間が非常に良好であるとみなされる。クラスIIは、良好であるとみなされ、1.5秒未満のゼロ交差を有し、クラスIIIは、中間的で、2秒未満のゼロ交差時間を有し、クラスIVは、不十分で、ゼロ交差時間を有しない。銀/スズ合金の良好なはんだ付け性能は、電気コネクタ上の被覆として硬質金の代わりに用いることが許容可能であり得ることを示した。
【実施例8】
【0075】
3つのスズリッチのスズ/銀合金電気めっき浴を、下記の表3で示されるように調製した。
【0076】
【表3】
【0077】
3つ全てのスズ/銀電気めっき浴のpHは、1未満であった。各スズ/銀電気めっき浴を使用して、はんだバンプをバイアの中にめっきした。75μm(直径)×75μm(深さ)のフォトレジストパターン化バイアを有する、4cm×4cmのウエハセグメント、及び銅シード層を、めっきセルのめっき浴中に浸漬し、そして、スズ/銀バンプでめっきした。試料は、8ASDで、各浴中でめっきした。各浴の温度は、30℃であった。各事例において、不溶性酸化イリジウム電極を陽極として使用した。電気めっきは、60μmのバンプがめっきされるまで行った。
【0078】
得られたスズ/銀層の形態は、Hitachi S2460(商標)走査型電子顕微鏡で検査した。堆積物は、均一で、滑らかで、密集し、ノジュールを含まなかった。
【0079】
試料について得られたスズ−銀層の銀濃度は、従来のAAS法で測定した。測定に使用したAAS装置は、Varian,Inc.(Palo Alto,California)製であった。方法は、以下のステップを含んだ。1)フォトレジストを除去する。2)各スズ−銀バンプの重量、すなわち平均10mgを測定する。3)次いで、各スズ−銀バンプを、10〜20mLの30〜40%硝酸を有する別個の容器中で溶解させた(スズ/銀を溶解させるために必要である場合は、さらに硝酸を加えた)。4)次いで、各ビーカーからの溶解したスズ/銀を、別個の100mLフラスコに移し、脱イオン水で容量を調節し、そして、混合する。5)各溶液中の銀の量を測定し、そして、式:%Ag=[10×AASAg(ppm)]/重量(mg)を使用して堆積物中の銀の濃度を決定する。めっきした合金中の各金属の量は、下記の表4にある。
【0080】
【表4】
【0081】
全ての浴が、良好な形態を有し、いかなる観察可能なノジュールも有しない、スズリッチのスズ/銀堆積物を提供した。