(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記硬化性樹脂は光硬化性樹脂であり、前記基板は透明基板であり、紫外線を、前記凹部を有する前記透明基板の裏側から照射することによって前記光硬化性樹脂を硬化させる、請求項1〜6の何れか一項に記載の製造方法。
前記凹部の断面積から、前記凹部中に充填された前記硬化性樹脂が硬化収縮する分の面積を除いた面積が、前記凹凸形状中に充填された前記硬化性樹脂が硬化収縮する分の面積より大きくなるように設定される、請求項1〜7の何れか一項に記載の製造方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
フレネルレンズの製造方法について、
図7を用いて説明する。
図7は、フレネルレンズ50のインプリント(転写)工程の説明図である。以下では、インプリント樹脂として、紫外線(UV)や可視光、赤外光により硬化する光硬化樹脂を用いた例を説明する。
【0007】
まず、
図7(a)に示すように、透明基板21にディスペンサ60によって光硬化性の樹脂25を滴下する。なお、予め透明基板21の表面にプラズマ照射をおこなったり、透明基板21の表面改質を行ったり、透明基板21にプライマー処理等を施したりすることができる。このような処理によって、透明基板21と樹脂25の接着性が悪い場合に、接着層を設けて接着性を向上させることができる。
【0008】
次に、
図7(b)及び
図7(c)に示すように、透明基板21に滴下した樹脂25に、金型モールド70を加圧しながら押し当てる。金型モールド70にはフレネルレンズ50の形状が凹凸反転で形成されている。金型モールド70の表面には、予めフッ素系の離型剤を塗布することにより離型処理が施されている。
【0009】
その後、樹脂25が金型モールド70の隙間に十分に入り込んだ状態で、
図7(c)に示すように紫外線80を照射して樹脂25を硬化させる。照射の際に、透明基板21の紫外線80側にマスク75を設けておくことで、マスク75の開口部のみに紫外線80が透過し、開口部の形状に樹脂25が硬化する。
【0010】
樹脂25が十分硬化したのち、
図7(d)に示すように、金型モールド70を樹脂25から離型し、マスク75によって紫外線が照射されず未硬化のままの樹脂を溶剤で洗い流す。以上の工程により、透明基板21上に、フレネルレンズ50が転写され、外側の樹脂が取り除かれてパターニングされたインプリント樹脂層30が作製される。
【0011】
しかしながら、プリズム形単位レンズを有するレンズ樹脂層の1ピッチごとの体積を、フレネルレンズのどの部位においても一定となるように形成しただけでは、フレネルレンズを構成する光学構造毎にカールやしわが発生するという問題を十分には解決することができなかった。特に、複雑な構成の光学構造を形成する場合には、設計が更に複雑になるという問題もあった。
【0012】
本発明の目的は、上記の問題点を解決することを可能とした、光学構造を備えた基板及びそれを用いた光学素子を提供することである。
【0013】
また、本発明の目的は、モールドの凹凸形状を正確に転写させることができて、レンズ表面の良好な品質を保証することが可能とした、光学構造を備えた基板及びそれを用いた光学素子を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
光学構造を備えた基板の製造方法は、凹部を有する基板上に硬化性樹脂を塗布し、硬化性樹脂の上部から凹凸形状を有するモールドを基板に対して押し当て、硬化性樹脂を硬化させることによって凹凸形状を有する光学構造を形成し、凹部は、モールドが基板に対して押し当てられた際に、未硬化の硬化性樹脂を保持できるように、凹凸形状が配置されている領域の下部を覆うように配置されている。
【0015】
光学構造を備えた基板の製造方法では、凹凸形状は、フレネルレンズを構成することが好ましい。
【0016】
光学構造を備えた基板の製造方法では、凹部は光学構造における凹凸形状の少なくとも一部に対応して配置されていることが好ましい。
【0017】
光学構造を備えた基板の製造方法では、凹部は、光学構造の凹凸形状の厚みが最も大きくなる箇所に対応して配置されていることが好ましい。
【0018】
光学構造を備えた基板の製造方法では、凹部は光学構造の凹凸形状が形成された全領域に配置されていることが好ましい。
【0019】
光学構造を備えた基板の製造方法では、凹部の体積は、光学構造の体積に硬化性樹脂の体積収縮率を乗じた体積より大きいことが好ましい。
【0020】
光学構造を備えた基板の製造方法では、光学構造と基板との屈折率が同じであることが好ましい。
【0021】
光学構造を備えた基板の製造方法では、光学構造と基板との材料が同一であることが好ましい。
【0022】
光学構造を備えた基板の製造方法では、硬化性樹脂は光硬化性樹脂であり、基板は透明基板であり、紫外線を、前記凹部を有する前記透明基板の裏側から照射することによって前記光硬化性樹脂を硬化させることが好ましい。
【0023】
光学構造を備えた基板の製造方法では、凹部の断面積から、凹部中に充填された硬化性樹脂が硬化収縮する分の面積を除いた面積が、凹凸形状中に充填された硬化性樹脂が硬化収縮する分の面積より大きくなるように設定されることが好ましい。
【0024】
光学素子は、前述した製造方法によって製造された第1の基板と、第2の基板と、光学構造及び前記第2の基板間に配置された液晶層と、光学構造の外側に配置され且つ光学構造及び第2の基板間に液晶層を封止するためのシール材を有することを特徴とする。
【0025】
光学素子は、前述した製造方法によって製造された第1の基板と、第2の基板とを有し、凹部はレンズ形状に形成され、光学構造の屈折率と第1及び第2の透明基板の屈折率を異なるように設定したことを特徴とする。
【0026】
基板上に硬化性樹脂を塗布し後に硬化させることで凹凸形状を有する光学構造を備えた基板を製造する方法では、基板は、樹脂が塗布される面側に、光学構造の凹凸形状の位置に対応して凹部が形成されていることを特徴とする。
【0027】
硬化性樹脂で形成された凹凸形状を有する光学構造を上面に備えた基板であって、光学構造の凹凸形状に対応する箇所には、凹部が形成されていることを特徴とする。一対の基板間に液晶を挟持した光学素子であって、先に記載した基板を、一対の基板のうち少なくとも一方の基板に用いたことを特徴とする。
【0028】
光学構造を備えた基板の製造方法及び光学素子では、光学構造の凹凸形状に対応する位置に凹部を形成したので、硬化性樹脂によって形成した光学構造の硬化収縮時のレンズ表面の歪みを問題のないレベルにまで低減させることが可能となった。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下図面を参照して、光学構造を備えた基板の製造方法及び液晶光学素子について説明する。しかしながら、本発明が、図面又は以下に記載される実施形態に限定されるものではないことを理解されたい。
【0031】
図1(a)は基板を示す断面図、
図1(b)は基板の平面図である。便宜上、
図1では実際とは異なるアスペクト比で模式的に表示してある。
【0032】
透明基板1として、光硬化性樹脂である、三菱ガス化学製ルミプラス(登録商標)を用いた。
図1に示すように、透明基板1の上に、光学構造としてのフレネルレンズ10が一部にパターニングされたインプリント樹脂層6を設けた。インプリント樹脂層6は、透明基板1と同じ材料を用いた。フレネルレンズ10は、高さ(サグ量)が等しいブレーズ(輪帯)を持ち、凹凸形状を形成する7つの単位レンズ11、12、13、14、15、16及び17から構成されている。単位レンズの形状を以下の表1に記載する。
【0034】
ここで、単位レンズ11に関するピッチは、単位レンズ11の中心部から周辺部までの距離を示し、断面積は単位レンズの断面を三角形近似した値である。なお、上記に示す単位レンズの数や形状は一例であって、これに限定されるものではなく、他の単位レンズの数や形状を選択することができる。
【0035】
各々の単位レンズの底面は透明基板1の上面と一致している。また、図では便宜上、単位レンズごとに境界線を示しているが、インプリント樹脂層6は同材料で一体形成されている。透明基板1には、少なくとも、光学構造に対応した(光学構造である単位レンズ11〜17が配置されている領域の下部を全て覆うように配置された窪みである)凹部1aが形成されており、フレネルレンズ10を構成する材料の一部が、凹部1aを満たしている。なお、凹部1aは、単位レンズ11〜17が配置されている領域の下部を含みさらに大きな領域を覆うような窪みであっても良い。
【0036】
図2は、光学素子用の基板を用いて光学構造を製造する方法を示す断面図である。
図2において、
図7に示す製造方法と同じ構成要素には同じ符号を付してその説明を省略する場合がある。
【0037】
最初に、
図2(a)に示すように、凹部1aを形成した透明基板1を用意する。
【0038】
次に、透明基板1上にディスペンサ60によって、適量の光硬化性の樹脂5として例えば、透明基板と同材料の三菱ガス化学製のルミプラス(登録商標)を滴下する。樹脂5は、透明基板1の中央から周辺に向かって徐々に広がって行く。ここで、透明基板1上の凹部1aは、キャスティングによる成型によって形成したが、インジェクションによる成型、又はタイヤモンドバイトなどによる切削加工等で形成しても良い。また、凹部1aは、透明基板1がガラスである場合、ケミカルエッチングによって形成しても良い。
【0039】
次に、
図2(b)に示すように、樹脂5に対してフレネルレンズ10の形状が凹凸反転で形成されている金型モールド70を降下させる。
図2(c)に示すように、金型モールド70を加圧しながら樹脂5に押し当てる。このとき、樹脂5は周辺へ広がっていくが、加える圧力に対して外側には流出しないように、予め樹脂5の滴下量を最適化している。
【0040】
なお、
図2では、金型モールド70と透明基板1の横幅が一致しているが、実際は、離型しやすくしたり、樹脂の回りこみを防いだりするために、金型モールド70の方を大きくしている。なお、フレネルレンズ10の径が小さく、透明基板1が大きければ、金型モールド70の方が小さくなるようにしても良い。
【0041】
その後、樹脂5が金型モールド70の隙間に十分に入り込んだ状態で透明基板1の下方から紫外線80を照射して樹脂5を硬化させる。照射の際、透明基板1の紫外線80を照射する側にマスク75を設けているので、マスク75の開口部からのみ紫外線80が透過し、マスク75の開口部の形状に樹脂5が硬化する。
【0042】
樹脂5の硬化反応は、紫外線80の照射側である透明基板1側から始まり、徐々に金型モールド70と接する樹脂5側に進んでいく。その際、硬化反応の進行に応じて、樹脂5には、硬化収縮が生じる。凹部1aの透明基板1側で硬化した樹脂が収縮することにより、硬化した樹脂の周囲の未硬化又は半硬化の樹脂を引き寄せる。さらに、硬化収縮時にも樹脂5に対して圧力がかかっており、硬化収縮した隙間を埋めるように金型が押される。このような圧力によって、凹部1a内に存在する未硬化や半硬化状態の樹脂5が、補充剤又は緩衝剤として働き、金型モールド70の転写形状内のすみずみ行き渡るように移動する。したがって、金型モールド70の転写形状通りにきれいな光学構造を転写することができるようになる。
【0043】
樹脂5全体が十分硬化した後、
図2(d)に示すように、金型モールド70を樹脂5から離型し、マスク75によって紫外線80が照射されず、未硬化のままの樹脂5を溶剤で洗い流す。以上の工程により、透明基板1上にフレネルレンズ10が転写され、外側の樹脂が取り除かれて、パターニングされたインプリント樹脂層6が作製される。
【0044】
凹部1aは、光学構造の単位レンズ11〜17の全領域に配置されていても良いが、断面積のうち少なくとも最大になる箇所、すなわち光学構造のもっとも厚みの大きい箇所に対応する透明基板1上に形成するのが好ましい。凹部1aの体積は、各々の単位レンズの体積に樹脂5の体積収縮率を乗じた体積より、少なくとも大きいことを特徴とする。具体的には、凹部1aの断面積から、凹部1a中に充填された樹脂が硬化収縮する分の面積を除いた面積が、単位レンズ全体中に充填された樹脂が硬化収縮する分の面積より大きくなるように設定される。
【0045】
凹部1aの形状は球面形状で、凹部1aの直径は15mm(フレネルレンズ10の直径は20mm)、凹部1aの深さは0.02mm、凹部1aの断面積は0.15mm
2である。なお、凹部1aの形状は、球形、円柱、円錐、立方体、直方体などのほか多数の微細な凹凸形状等でも構わない。また、上記の凹部1aの数値は一例であって、これに限定されるものではない。
【0046】
図3(a)〜
図3(g)は、凹部の変形例を示す図である。
【0047】
図3(a)に示した凹部1bは、フレネルレンズ10の全域に亘って形成されており、中華鍋型をしている。
図3(b)に示した凹部1cは、フレネルレンズ10の一部の領域にのみに形成されており、円柱型をしている(即ち、凹部1cは、一定の深さを有している)。
図3(b)に記載の凹部1cは、フレネルレンズ10を構成する単位レンズの一番大きいところ、即ち、硬化収縮が一番大きいところに対応して設定されている。また、凹部1cの深さも十分に取っているので、フレネルレンズ10内に充填された硬化性樹脂の硬化収縮分を十分補填できる樹脂量を凹部1c内に蓄積することが可能である。
【0048】
図3(c)の凹部1dは、フレネルレンズ10が形成された全領域に亘って形成されており、円柱型をしている(即ち、凹部1dは、一定の深さを有している)。
図3(d)、
図3(e)及び
図3(f)に示した凹部1e、1f及び1gは、いずれもフレネルレンズ10の全域に亘って形成されており、透明基板1の中央に向かって徐々に深くなるような形状を有している。
図3(g)に示した凹部1hはフレネルレンズ10の全域に亘って形成されており、微細な凹凸形状を有している(即ち、同心円状の溝が複数本形成されている)。
【0049】
図4は、更に他の凹部の変形例を示す図である。
【0050】
図4に示したフレネルレンズ20は、各々のブレーズのピッチが等しいものであり、単位レンズの体積はレンズ周縁部において最大になっている。したがって透明基板2の凹部2aは、この周縁部に対応した位置に形成されている。凹部2aは、ドーナツを上下に半分に切断した場合の一方の側の内側のような形状をしている。
【0051】
図5(a)は
図7に示す方法で製造したフレネルレンズの断面の測定図であり、
図5(b)は
図2に示す方法で製造したフレネルレンズの断面の測定図である。なお、
図5(a)及び
図5(b)では、同じ形状の金型を利用し、その金型のモールド形状を点線pとして示している。
【0052】
図5(a)には、
図7に示す方法で実際に製造した参考例におけるフレネルレンズに含まれる単位レンズの一部の断面形状mが示めされている。
図5(a)の参考例では、フレネルレンズを形成する樹脂としてNIF−A−1(硬化収縮率9±2%)を利用した。
【0053】
また、
図5(b)には、
図2に示す方法で実際に製造した実施例におけるフレネルレンズに含まれる単位レンズの一部の断面形状nが示めされている。
図5(b)の実施例でも、フレネルレンズを形成する樹脂として、
図5(a)と同じ、NIF−A−1(硬化収縮率9±2%)を利用した。
【0054】
図5(a)に示す場合では、フレネルレンズの断面形状mは、点線pで示した金型モールド形状との間で大きな誤差を生じている。これに対して、
図5(b)に示す場合では、フレネルレンズの断面形状nと、点線pで示した金型モールド形状はほぼ等しく、良好なフレネルレンズの表面品質が得られることが確認できた。
【0055】
図2に示した製造方法に利用される透明基板1には、予め凹部1aが形成されているので、樹脂5を滴下し金型モールド70を押し当てた場合に、周辺への樹脂5の広がりが制限されて、フレネルレンズ10の中央に樹脂5が残る。したがって、
図5(b)に示す様に、樹脂5の硬化収縮による形状の転写不良がなく、精度良く金型モールド70を転写できるようになった。
【0056】
基板表面からの樹脂残膜を薄くするため、金型に圧力を高く加えても、凹部1aの効果によって、凹部1a領域の樹脂が外側に流れ出て行くことはないので、硬化収縮の発生による転写不良を抑えられ、良好に転写することができる。なお、基板とインプリント樹脂層6の屈折率を同じにすることによって、凹部部位形状によるレンズ効果は生じさせないようにすることが可能である。一方、透明基板1とインプリント樹脂層6の屈折率を異ならせることによってレンズ効果をもたせることもできる。フレネルレンズの有効径よりも凹部の径を小さくすることで(例えば、
図2(d)及び
図3(b)参照)、金型と基板の平坦部分が基準となって、フレネル形状が、基板に対してより平行にインプリントされるようになる。
【0057】
なお、上記では、金型モールド70を利用した例について説明したが、シリコンモールド及び樹脂モールド等を利用することも可能である。
【0058】
図6(a)は液晶光学素子の断面図を示し、
図6(b)はフレネルレンズ及びシール材の形状の位置関係を示す平面図である。便宜上、
図6では実際とは異なるアスペクト比で模式的に表示している。
【0059】
図6(a)に示すように、液晶光学素子40は、第1の透明基板41と第2の透明基板42とが、それぞれの基板表面に形成された透明電極43及び44が対向するようにシール材48を介して貼り合わされた構成を有する。
【0060】
第1の透明基板41には透明電極43と配向膜45とが形成されている。第2の透明基板42として、
図2で示した製造方法によって形成した光学素子用の基板を用いた。したがって、第2の透明基板42には、
図2に示す凹部1aと同様な凹部42aが形成されている。光学構造(フレネルレンズ30)がインプリント(転写)工程で一体に形成されたインプリント樹脂層31を備えている。インプリント樹脂層31の上には、透明電極44と配向膜46とが形成されている。
【0061】
シール材48には、スペーサ49が混入されており、第1の透明基板41と第2の透明基板42とのセルギャップが規制されている。シール材48は同心円状のフレネルレンズ30を取り囲むように輪体状に形成されており、シール材48の内側には液晶47が充填されている。インプリント樹脂層31とシール材48は接しており、インプリント樹脂層31上に液晶47の領域がある構成となっている。
【0062】
液晶光学素子40の製造方法について説明する。
【0063】
最初に、
図2に示した製造方法によって、第2の透明基板42の上にインプリント樹脂層31を形成する。
【0064】
次に、インプリント樹脂31の表面上にスパッタリング法等により透明電極44を形成する。特に透明基板42がプラスチック基板である場合には、インプリント樹脂層31にSiO2等のバリア層を設けた方が好適である。また、透明電極43と透明電極44の上下ショートを防ぐために、少なくともどちらかの透明電極の上にSiO
2等の絶縁膜層を設けている。
【0065】
次に、インプリント樹脂層31の表面に設けられた透明電極44上に、配向膜46を形成する。配向膜46は、例えばスプレーコーターにより形成される。基板に有効領域が開口されたマスクを用いてマスキング処理を施し、その上から配向膜材料を吐出する。その後、焼成によって配向膜の溶剤を飛ばし、配向膜の種類によってはイミド化を行い、配向膜46を完成する。
【0066】
次に、形成された配向膜46に対して、ラビング方式による配向処理を行うことによって、液晶の配向方向を制御する。なお、ラビング布の押し当てでフレネルレンズにダメージを与えないように注意が必要である。しかしながら、ラビング布、ローラの回転速度、ラビング圧力等の各種の条件の最適化、インプリント樹脂材料の選定、表面のハードコート処理などを行うことで、良好なラビング方式による配向処理を行うことができる。
【0067】
第1の透明基板41上にも、同様に、透明電極43及び配向膜45を形成する。
【0068】
配向膜の形成方法としては、例えば斜方蒸着法を用いることができる。蒸着材料としては、例えばSiOx等の無機材料が用いられる。蒸着角度によって蒸着膜のカラム構造を変化させることができ、それにより液晶の配向状態を制御することができる。斜方蒸着法では、フレネルレンズ30の形状にダメージを与えることなく、非接触で配向膜45を形成することができる。
【0069】
また、インプリント樹脂層31の表面上に、インクジェット、スピンコート、又はスプレーコートにより配向膜を塗布した後、光配向法により配向膜を形成することもできる。この方法を利用した場合でも、フレネルレンズ30の形状にダメージを与えることなく、非接触で配向膜を形成することができる。
【0070】
次に、(インプリント樹脂層31の表面に透明電極44及び配向膜46を形成した後)インプリント樹脂層31の無い位置にディスペンサによりシール材48を塗布する。シール材48として、紫外線硬化樹脂を利用することができる。シール材48は、潰れて広がることを考慮に入れて、インプリント樹脂層31の端ぎりぎりではなく、端から多少内側に塗布する。後述する第1の基板41と第2の基板42とを貼り合わす工程において、シール材48は、潰されて、インプリント樹脂層31の端と密着する。
【0071】
次に、ディスペンサを用いてシール材48の内側、フレネルレンズ30が形成された領域に液晶47を滴下する。フレネルレンズ30へのダメージを防ぐために、非接触で滴下可能なジェットディスペンサを用いることが好適である。液晶47の滴下量は、シール材48の内側の体積に応じて決まる。
【0072】
インプリント樹脂層31上の1箇所に滴下された液晶47は、表面張力及びぬれ性等の特性に応じて、シール材48より高く盛られた状態となる。液晶47が高く盛られた状態で第1の透明基板41と第2の透明基板42とを重ね合わせると、液晶47がシール材48の外側へ広がってしまう恐れがある。そこで、滴下された液晶47の高さを抑えるため、インプリント樹脂層31の複数の箇所に液晶47を滴下することが望ましい。
【0073】
次に、(インプリント樹脂層31上に液晶47を滴下した後)第2の透明基板42の液晶滴下面を上向きに配置して、真空状態で第1の透明基板41と第2の透明基板42とを貼り合わせる。その後、UV(紫外線)をインプリント樹脂層31側から照射してシール材48を硬化させる。紫外線を照射した後、必要に応じて焼成を行ってシール材48を本硬化させる。以上の工程により、液晶光学素子40が製造される。
【0074】
上述したように、液晶光学素子40では、第2の透明基板42に凹部42aを有し、第2の透明基板42側から紫外線を照射するために、フレネルレンズ形状が金型モールドの形状通りの転写形状となり、精度良く形成されている。液晶光学素子40は、透明基板をレンズ形状に加工することによって、眼鏡レンズとして応用することができる。例えば、凹型形状の第1の透明基板41と凸型形状の第2の透明基板42で液晶セル構造を構成すれば、透明基板によるレンズ特性に加えて、液晶47への電圧印加のON、OFFによって、焦点を可変にすることができるので、主に老眼鏡向けの可変焦点電子眼鏡となる。
【0075】
なお、上述した説明において、フレネルレンズ形状や液晶光学素子として単個での図面を示したが、特にこれに限定されるわけでなく、複数個同時に製造するようにしても良い。なお、上述した製造方法は、量産性を考える上での複数個作製においても、単個作製と同様に効果を発揮し有効である。
【0076】
図6では、凹部1a及びフレネルレンズ10が一部にパターニングされたインプリント樹脂層6が設けられた透明基板1(
図1(a)参照)を利用して液晶光学素子40を製造した。この場合、透明基板1の屈折率と、インプリント樹脂層6の屈折率が同じとなるように樹脂が設定されている。
【0077】
しかしながら、
図1(a)に示す透明基板1において、凹部1aをレンズ形状(凹レンズ形状)に形成し、透明基板1の屈折率とインプリント樹脂層6の屈折率とが異なるように樹脂を設定することも可能である。そのように構成すれば、凹部1a及びフレネルレンズ10が一部にパターニングされたインプリント樹脂層6が設けられた透明基板1(
図1(a)参照)は、液晶層47(
図6(a)参照)を用いずに、それ自体で、内在形レンズとフレネルレンズとを有するレンズ(光学素子)として利用することが可能となる。