特許第6083939号(P6083939)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6083939
(24)【登録日】2017年2月3日
(45)【発行日】2017年2月22日
(54)【発明の名称】真空断熱パネルおよび断熱箱体
(51)【国際特許分類】
   F16L 59/065 20060101AFI20170213BHJP
   B65D 81/38 20060101ALI20170213BHJP
【FI】
   F16L59/065
   B65D81/38 E
【請求項の数】8
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2012-54727(P2012-54727)
(22)【出願日】2012年3月12日
(65)【公開番号】特開2013-189996(P2013-189996A)
(43)【公開日】2013年9月26日
【審査請求日】2015年3月11日
(73)【特許権者】
【識別番号】591017065
【氏名又は名称】株式会社松田技術研究所
(74)【代理人】
【識別番号】100104776
【弁理士】
【氏名又は名称】佐野 弘
(74)【代理人】
【識別番号】100119194
【弁理士】
【氏名又は名称】石井 明夫
(72)【発明者】
【氏名】松田 真次
【審査官】 杉山 豊博
(56)【参考文献】
【文献】 特開2003−137613(JP,A)
【文献】 特開2011−122610(JP,A)
【文献】 特開2007−246059(JP,A)
【文献】 特開2010−255804(JP,A)
【文献】 特表2008−542578(JP,A)
【文献】 特開2003−147872(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16L 59/065
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに所定の距離だけ離れて対向配置された一対の側板とこれら側板の周縁部を閉じる枠材とを用いて形成された密閉空間と、この密閉空間内に、前記一対の側板と略平行に配置された内板と、少なくとも一方の前記側板の内側面に当接することにより、前記密閉空間の内外の気圧差によって前記一対の側板が変形することを抑制するために、前記内板に設けられた複数の突起部とを有する真空断熱パネルであって、
少なくとも一方の前記側板は、ガラスで形成されており、
前記枠材は、断面U字形状に形成されており、前記一対の側板の端部に接続されるU字形状の両端部と、該両端部以外の部分で前記密閉空間側に突出する突出部を有し、前記両端部のみが前記各側板に接触して前記突出部は前記各側板と離間しており、前記突出部と前記各側板との間にそれぞれ隙間が生じるように構成されていることを特徴とする真空断熱パネル。
【請求項2】
前記一対の側板は、凸部が前記枠材の前記突出部に当接して支持されていることを特徴とする請求項1に記載の真空断熱パネル。
【請求項3】
前記突起部は、前記内板に設けられた貫通孔に挿通された状態で配置され、両端部分がそれぞれ前記一対の側板の各内側面に当接していることを特徴とする請求項1または2に記載の真空断熱パネル。
【請求項4】
前記枠材の少なくとも一部は、ガラスで形成されていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の真空断熱パネル。
【請求項5】
前記突起部は、前記側板にそれぞれ当接する各先端部分が略円錐形であることを特徴とする請求項3または4に記載の真空断熱パネル。
【請求項6】
前記突起部には、当該突起部を前記内板に固定する固定手段が設けられていることを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の真空断熱パネル。
【請求項7】
前記突起部は、ガラスまたはセラミックで形成されていることを特徴とする請求項1乃至6のいずれかに記載の真空断熱パネル
【請求項8】
請求項1乃至7のいずれかに記載の真空断熱パネルを用いて構成されていることを特徴とする断熱箱体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、中空パネルの内部空間を真空引きした真空断熱パネルと、この真空断熱パネルを用いて構成される断熱箱体とに関するものである。
【背景技術】
【0002】
断熱パネルは、冷蔵庫、保冷容器等の筐体や、航空輸送用コンテナの壁材等に使用されている。従来より、断熱パネルとして、一対の側板の間に発泡ウレタンや発泡ポリスチレン等の断熱材を埋設したものが知られている。しかし、これらの断熱材を用いて断熱パネルを作製する場合、十分な断熱性を得るためには、非常に厚い断熱材が必要になる。
【0003】
また、中空パネルの内部空間を真空引きすることによって、この中空パネルの断熱性を向上させる技術が、従来より知られている。このような断熱パネルは、真空断熱パネルと呼ばれている。真空断熱パネルによれば、断熱材を使用しただけの場合と比較して、断熱性を向上させることができる。しかし、真空断熱パネルでは、内部空間の気圧と大気圧との差によって側板が変形して、側板どうしが接触し、側板間で直接熱が伝導するようになってしまうおそれがある。このため、真空断熱パネルには、こうした変形を抑えるための補強手段を設けることが望ましい。
【0004】
例えば、特許文献1の技術では、凹凸を有する鋼板を積層することによって、真空断熱パネルの変形を抑制している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−114028号公報(段落〔0015〕の欄、図1等)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1の技術は、複数枚の鋼板を使用するため、真空断熱パネルの重量が大きくなるという欠点がある。
【0007】
また、これらの鋼板を介して2枚の側板の間で熱が伝導するようになるので、真空断熱パネルの断熱性を悪化させるという欠点がある。
【0008】
さらには、このような鋼板を積層したので、真空断熱パネルを十分に薄くすることができないという欠点もある。例えば、このような真空断熱パネルを用いて輸送用コンテナを作製する場合が考えられるが、輸送用コンテナでは外形寸法が予め規定されている場合が多い。そのため、真空断熱パネルが厚いほど内部容積が小さくなってしまい、積載容量が減ってしまう。
【0009】
本発明は、このような事情に鑑み、軽量で薄く、かつ断熱性に優れた真空断熱パネルを提供することを第1の目的とする。また、このような真空断熱パネルを用いた断熱箱体を提供することを第2の目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
かかる目的を達成するため、請求項1に記載の発明は、互いに所定の距離だけ離れて対向配置された一対の側板とこれら側板の周縁部を閉じる枠材とを用いて形成された密閉空間と、この密閉空間内に、前記一対の側板と略平行に配置された内板と、少なくとも一方の前記側板の内側面に当接することにより、前記密閉空間の内外の気圧差によって前記一対の側板が変形することを抑制するために、前記内板に設けられた複数の突起部とを有する真空断熱パネルであって、少なくとも一方の前記側板は、ガラスで形成されており、前記枠材は、断面U字形状に形成されており、前記一対の側板の端部に接続されるU字形状の両端部と、該両端部以外の部分で前記密閉空間側に突出する突出部を有し、前記両端部のみが前記各側板に接触して前記突出部は前記各側板と離間しており、前記突出部と前記各側板との間にそれぞれ隙間が生じるように構成されている真空断熱パネルとしたことを特徴とする。
また、請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の構成に加え、前記一対の側板は、凸部が前記枠材の前記突出部に当接して支持されていることを特徴とする。
【0011】
また、請求項に記載の発明は、請求項1または2に記載の構成に加え、前記突起部は、前記内板に設けられた貫通孔に挿通された状態で配置され、両端部分がそれぞれ前記一対の側板の各内側面に当接していることを特徴とする。
【0012】
また、請求項に記載の発明は、請求項1乃至3のいずれかに記載の構成に加え、前記枠材の少なくとも一部は、ガラスで形成されていることを特徴とする。
【0013】
また、請求項に記載の発明は、請求項3または4に記載の構成に加え、前記突起部は、前記側板にそれぞれ当接する各先端部分が略円錐形であることを特徴とする。
【0014】
また、請求項に記載の発明は、請求項1乃至のいずれかに記載の構成に加え、前記突起部には、当該突起部を前記内板に固定する固定手段が設けられていることを特徴とする。
【0015】
また、請求項に記載の発明は、請求項1乃至のいずれかに記載の構成に加え、前記突起部は、ガラスまたはセラミックで形成されていることを特徴とする。
【0016】
また、請求項に記載の発明は、請求項1乃至のいずれかに記載の真空断熱パネルを用いて構成されている断熱箱体としたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
請求項1に記載の発明によれば、真空断熱パネルが、対向配置された一対の側板とこれら側板の周縁部を閉じる枠材とを用いて形成された密閉空間と、この密閉空間内に、一対の側板と略平行に配置された内板と、少なくとも一方の側板の内側面に当接することにより、密閉空間の内外の気圧差によって一対の側板が変形することを抑制するために、内板に設けられた複数の突起部とを有しているので、軽量で薄く、かつ断熱性に優れた真空断熱パネルを提供することができる。
【0018】
しかも、少なくとも一方の側板がガラス、つまり、ステンレス等の金属に比べて熱伝導率の低い材料で形成されているので、この側板自体の断熱性をも高めることができる。その結果、真空断熱パネル全体の断熱性を一層向上させることが可能となる。
請求項2に記載の発明によれば、一対の側板は凸部が枠材の突出部に当接して支持されているので、内板を非常に薄く形成しても側板に対して十分な補強を行うことができ、真空断熱パネルを軽量化しつつ十分な強度を得ることが可能となる。
【0019】
請求項に記載の発明によれば、枠材の少なくとも一部がガラスで形成されているので、この枠材自体の断熱性をも高めることができる。その結果、真空断熱パネル全体の断熱性を一層向上させることが可能となる。
【0020】
請求項に記載の発明によれば、突起部と側板との接触面積が小さくなるので、突起部と側板との間の熱伝導が抑制される。したがって、突起部を介して2枚の側板間で熱が伝導しにくくなり、真空断熱パネルの断熱性がますます向上する。
【0021】
請求項に記載の発明によれば、固定手段によって突起部が内板に固定されるので、真空断熱パネルが振動を受けるような用途に用いられる場合であっても、突起部による側板の変形抑制機能を長期にわたって維持することが可能となる。
【0022】
請求項に記載の発明によれば、突起部がガラスまたはセラミックで形成されているので、この突起部自体の断熱性をも高めることができる。その結果、真空断熱パネル全体の断熱性を一層向上させることが可能となる。
【0023】
請求項に記載の発明によれば、上述した効果を奏する真空断熱パネルを用いた断熱箱体を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】本発明の実施の形態1に係る真空断熱パネルを示す斜視図である。
図2】同実施の形態1に係る真空断熱パネルを示す拡大断面図である。
図3】同実施の形態1に係る真空断熱パネルの突起部の取付状態を示す断面図である。
図4】同実施の形態1に係る真空断熱パネルの突起部の取付方法を示す斜視図である。
図5】同実施の形態1に係る真空断熱パネルを用いて作製された収容箱を示す斜視図である。
図6】同実施の形態1に係る真空断熱パネルを用いて作製された血液輸送箱を示す図であって、(a)はその斜視図、(b)はその縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の実施の形態について説明する。
[発明の実施の形態1]
【0026】
図1乃至図6には、本発明の実施の形態1を示す。
【0027】
実施の形態1に係る真空断熱パネル100では、図1および図2に示すように、一対の長方形平板状の側板101、102が、互いに向き合うように配置されている。また、側板101、102の間には、長方形平板状の内板110が配置されている。さらに、側板101、102の各辺に沿って、4つの枠材103〜106が配置されており、側板101、102および枠材103〜106はそれぞれ互いに溶接によって密着固定されている。これにより、側板101、102と枠材103〜106とによる密閉空間120が形成されている。この密閉空間120は、排気管119を用いて、10-2Pa〜10-1Paの真空状態(中真空または高真空)に真空引きされる。
【0028】
以下、真空断熱パネル100の構成について、詳細に説明する。
【0029】
側板101、102は、いずれも強化ガラスなどのガラスで形成されている。側板101、102の寸法は、幅550mm、長さ700mm、厚さ0.5mmとした。また、側板101、102の内面には、凸部107が形成されており、この凸部107は枠材103に当接している。
【0030】
3つの枠材103、104、105はいずれも、図2に示すように、厚さ0.5mmの強化ガラスなどのガラスでU字断面の溝状に形成されている。また、枠材106は、厚さ0.2mmのステンレスで段付きU字断面の溝状に形成されている。
【0031】
内板110は、アルミニウム、ステンレス等の金属で形成されている。内板110の寸法は、幅500mm、長さ650mm、厚さ0.2mmとした。断熱性を高めるため、内板110は、枠材103〜106と接触しないように配置されている。
【0032】
内板110には、多数の円形の貫通孔111が設けられている。貫通孔111の直径は、例えば6mmである。この貫通孔111には、突起部112が挿通される。この突起部112は、図3に示すように、小径の円柱部112a(例えば高さ2mm、直径6mm)と大径の円柱部112b(例えば高さ1mm、直径8mm)とが、一方の端面同士を接するように一体に形成されている。さらに、小径の円柱部112aの他方の端面には小径で略円錐形の先端部112c(例えば高さ3mm、直径6mm)が、大径の円柱部112の他方の端面には大径で略円錐形の先端部112d(例えば高さ4mm、直径8mm)が、それぞれ一体に形成されている。本実施形態では、これらの突起部112は、小径の円柱部112aおよび先端部112cを貫通孔111に挿通することにより、内板110に保持される。
【0033】
さらに、各突起部112には、図2および図3に示すように、それぞれ輪状のサークリップ114が固定手段の一例として取り付けられており、このサークリップ114により、突起部112が内板110に固定された状態となっている。このサークリップ114を用いて突起部112を内板110に固定するには、まず、図4に一点鎖線で示すように、内板110の貫通孔111の下方に突起部112を位置決めし、この突起部112を上昇させて貫通孔111に下側から通した後、内板110から上方に突出した突起部112の円柱部112aに対して、その上方からサークリップ114を嵌着する。すると、サークリップ114は、図3に示すように、突起部112の円柱部112aと内板110の上面110aの双方に係止され、突起部112が内板110の貫通孔111から脱落しないように固定された状態となる。
【0034】
そして、密閉空間120内では、突起部112の一方の先端部112cが、側板102の内側面に当接して側板102を支えるとともに、突起部112の他方の先端部112dが、側板101の内側面に当接して側板101を支えている。
【0035】
この突起部112は、ガラスまたはセラミックで形成されている。ここで、例えば、ステンレスの熱伝導率は約18W/mK(Wはワット、mはメートル、Kはケルビン)であるのに対して、ガラスの熱伝導率は約0.7W/mKであり、セラミックの熱伝導率は約0.6W/mKである。
【0036】
排気管119は、密閉空間120を真空引きするために使用される。排気管119の種類等は限定されないが、密閉空間120内を長期間にわたって真空状態(例えば、高真空)に維持できるような処理が施されることが望ましい。例えば、排気管119を二重パイプ構造とし、外側パイプとして直径約10mm、長さ約1mmのステンレス・パイプを使用し、内側パイプとして銅パイプを使用することもできる。そして、真空引き後にプレス加工して排気管119を高圧着し、さらに、排気管119の外側先端を溶接した。これにより、密閉空間120の内部への大気ガスの侵入を防止することができて、密閉空間120が例えば高真空に維持される。
【0037】
図5は、本実施形態の真空断熱パネル100を用いて作製された断熱箱体の一例としての収容箱を示す斜視図である。
【0038】
この収容箱200は、図5に示すように、略正六面体の形状を有しており、6枚の真空断熱パネル100を用いて作製される。なお、図5では、3枚の真空断熱パネル100−1〜100−3のみを示した。
【0039】
枠体201としては、例えば、硬質発泡樹脂が使用される。この枠体201は、図5に示すように、隣接する2枚の真空断熱パネル100の端部及びその近傍をそれぞれ覆うようにして、これら2枚の真空断熱パネル100を平面が直角になるように固定する。これにより、6枚の真空断熱パネル100の各辺を隣接する他の真空断熱パネル100に固定して、密閉状態の収容箱200を作製することができる。
【0040】
なお、収容箱200に貨物を収容する場合や、収容箱200から貨物を取り出す場合には、枠体201を上方向に引き抜いて真空断熱パネル100−1を取り外せばよい。
【0041】
図6は、本実施形態の真空断熱パネル100を用いて作製された断熱箱体の一例としての血液輸送箱を示す図であって、(a)はその斜視図、(b)はその縦断面図である。
【0042】
この血液輸送箱300は、図6に示すように、略直方体の箱本体301を有しており、箱本体301の上側には略直方体の蓋体302がヒンジ(図示せず)を介して開閉自在に取り付けられている。
【0043】
箱本体301は、真空断熱パネル100を所定の形状(略直方体)に形成し、この真空断熱パネル100の表裏両面に樹脂303を貼り合わせ、真空断熱パネル100の枠材103の外周部にゴム製のパッキン304を取り付けた構造を有している。
【0044】
蓋体302は、真空断熱パネル100を所定の形状(略直方体)に形成し、この真空断熱パネル100の表裏両面に樹脂305を貼り合わせ、真空断熱パネル100の枠材103の外周部にゴム製のパッキン306を取り付け、さらに、上面に取っ手307を取り付けた構造を有している。
【0045】
箱本体301と蓋体302との間には、ロック装置308が取り付けられており、このロック装置308により、蓋体302を箱本体301にロックすることができるように構成されている。
【0046】
したがって、この血液輸送箱300は、その内部収容空間309が真空断熱パネル100によって包囲されて高い断熱性を発現するため、血液バッグ等をその温度のまま輸送することができる。
【0047】
以下、本実施形態に係る真空断熱パネル100の原理について説明する。
【0048】
本実施形態に係る真空断熱パネル100を使用する場合、密閉空間120内を例えば高真空(中真空または低真空でもよい)に設定する。このため、密閉空間120内の空気対流による熱伝導(側板101、102間の熱伝導)を非常に少なくすることができるので、十分に高い断熱性を得ることができる。
【0049】
その一方で、密閉空間120内を高真空にすると、この密閉空間120の負圧によって、側板101、102が内側に変形しようとする。こうした変形を抑制する方法としては、強度の高い側板を使用する方法や内板を使用する方法が考えられる。しかしながら、この変形を抑制するために強度の高い側板を使用する場合、この側板の板厚を厚くする必要が生じるので、真空断熱パネル100の総重量が大きくなってしまう。また、特許文献1のような補強手段を使用する場合も、内板110自体の重量が大きいため、真空断熱パネル100の総重量が大きくなってしまう。
【0050】
これに対して、本実施形態では、内板110に複数の貫通孔111を設けて、各貫通孔111にそれぞれ突起部112を挿通し、これらの突起部112の両端を側板101、102に当接させて支持させることとした。さらに、側板101、102は、凸部107が枠材103に当接して支持されている。このため、内板110を非常に薄く形成しても、側板101、102に対して十分な補強を行うことができる。したがって、真空断熱パネル100を軽量化しつつ十分な強度を得ることができる。
【0051】
本発明者の検討結果によれば、密閉空間120内が高真空の場合であっても、このような突起部112を使用するだけで十分な強度を得ることができた。
【0052】
しかも、2枚の側板101、102は、上述したとおり、ガラス、つまり、ステンレス等の金属に比べて熱伝導率の低い材料で形成されているので、この側板101、102自体の断熱性をも高めることができる。その結果、真空断熱パネル100全体の断熱性を一層向上させることが可能となる。
【0053】
また、3つの枠材103、104、105は、上述したとおり、ガラス、つまり、ステンレス等の金属に比べて熱伝導率の低い材料で形成されているので、これらの枠材103、104、105自体の断熱性をも高めることができる。その結果、真空断熱パネル100全体の断熱性を一層向上させることが可能となる。
【0054】
さらに、突起部112は、上述したとおり、先端部112c、112dがいずれも略円錐形となっているので、突起部112と側板101、102との接触面積、つまり熱流面積が小さくなる。その結果、突起部112と側板101、102との間の熱伝導が抑制され、突起部112を介して2枚の側板101、102間で熱が伝導しにくくなる。この点でも、真空断熱パネル100は高い断熱性を発現する。
【0055】
例えば、本発明者の検討結果によれば、この真空断熱パネル100は、発泡ウレタン等の一般の断熱材(熱伝導率が0.038W/mKであると想定)に比べて、約540倍の断熱性を得ることができた。すなわち、側板101、102の寸法を幅836mm、長さ836mmとし、49個の突起部112を7行7列の等ピッチで配置し、各突起部112が直径1mmの円で側板101、102と接触していると仮定する。この場合、側板101、102の面積が698896mm2 となり、また、各突起部112と側板101、102との接触面積が0.78mm2 となる。そのため、ガラスの熱伝導率を1.3W/mKとすると、真空断熱パネル100の熱伝導率は、0.000071W/mKとなり、一般の断熱材の熱伝導率0.038W/mKの概ね1/540の値となる結果が得られた。
【0056】
また、各突起部112は、上述したとおり、ガラスまたはセラミック、つまり、ステンレス等の金属に比べて熱伝導率の低い材料で形成されているので、この突起部112自体の断熱性をも高めることができる。その結果、真空断熱パネル100全体の断熱性を一層向上させることが可能となる。
【0057】
このように、本実施形態の真空断熱パネル100は、密閉空間120内を真空状態(高真空、中真空または低真空)にし、かつ、2枚の側板101、102、3つの枠材103、104、105および各突起部112を熱伝導率の低い材料で形成した。このため、真空断熱パネル100を非常に薄くしても、十分に高い断熱性を得ることができる。すなわち、本実施形態によれば、断熱性の高い真空断熱パネル100を非常に薄く形成することができる。本実施形態の真空断熱パネル100では、厚さは11mm、両側板101、102間の熱伝導率は0.00030W/mKであった。これに対して、発泡ウレタンを用いた断熱パネルの熱伝導率は、0.02W/mK程度である。
【0058】
以上説明したように、本実施形態によれば、軽量で薄く、かつ断熱性に優れた真空断熱パネルを提供することができる。
【0059】
しかも、真空断熱パネル100は、2枚の側板101、102および3つの枠材103、104、105などの主要部品がガラス製であることから、主要部品がステンレス製である場合に比べて、油分を除去するための熱処理(ベーキング)コストを削減することができる。すなわち、油分を除去するためには、ステンレスの場合、約300の高温で熱処理する必要があるのに対して、ガラスの場合、約100の低温で熱処理すれば十分であり、この熱処理温度の違いから、油分を除去するための熱処理コストを削減することが可能となる。
【0060】
また、真空断熱パネル100は、上述したとおり、サークリップ114によって突起部112が内板110に固定されている。したがって、この真空断熱パネル100が振動を受けるような用途に用いられる場合であっても、突起部112が内板110から脱落することはなく、突起部112による側板101、102の変形抑制機能を長期にわたって維持することが可能となる。
【0061】
さらに、真空断熱パネル100は、真空の密閉空間120を断熱層として利用するものであるため、発泡ウレタンや発泡ポリスチレン等の断熱材を用いた従来の断熱パネルに比べて、耐久性およびリサイクル性にも優れている。
[発明のその他の実施の形態]
【0062】
なお、上述した実施の形態1では、2枚の側板101、102の両方がガラスで形成された真空断熱パネル100について説明した。しかし、真空断熱パネル100に要求される断熱性の程度などの条件によっては、2枚の側板101、102のいずれか一方のみをガラスで形成することも可能である。
【0063】
また、上述した実施の形態1では、3つの枠材103、104、105がガラスで形成された真空断熱パネル100について説明した。しかし、これらの枠材103、104、105の全部または一部をガラス以外の材料(例えば、ステンレスなどの金属)で形成してもよい。
【0064】
また、上述した実施の形態1では、長方形平板状の側板101、102を有する真空断熱パネル100について説明した。しかし、側板101、102の形状は、長方形平板状に限るわけではなく、例えば、正方形平板状や円形平板状に形成することも可能である。
【0065】
また、上述した実施の形態1では、突起部112を内板110に固定する固定手段としてサークリップ114を用いる場合について説明した。しかし、突起部112を内板110に固定することができるものであれば、サークリップ114以外の固定手段を代用または併用することもできる。
【0066】
また、上述した実施の形態1では、断熱箱体が収容箱200、血液輸送箱300である場合について説明した。しかし、収容箱200、血液輸送箱300以外の断熱箱体(例えば、輸送用コンテナ、保存容器、冷蔵庫、冷凍庫、自動販売機、建築物の壁材、溶鉱炉の遮熱板その他)に本発明を同様に適用することも可能である。
【0067】
また、側板101、102、内板110および突起部112の寸法は、上述したものに限るわけではない。
【0068】
さらに、突起部112の個数は、上述したものに限るわけではない。
【産業上の利用可能性】
【0069】
本発明の真空断熱パネルは、収容箱や血液輸送箱のほか、例えば、輸送用コンテナ、保存容器、冷蔵庫、冷凍庫、自動販売機、建築物の壁材、溶鉱炉の遮熱板など各種の用途の断熱材に使用することができる。
【符号の説明】
【0070】
100……真空断熱パネル
101、102……側板
103〜106……枠材
110……内板
111……貫通孔
112……突起部
112a……小径の円柱部
112b……大径の円柱部
112c、112d……先端部
114……サークリップ(固定手段)
119……排気管
120……密閉空間
200……収容箱(断熱箱体)
300……血液輸送箱(断熱箱体)
図1
図2
図3
図4
図5
図6