特許第6083951号(P6083951)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6083951
(24)【登録日】2017年2月3日
(45)【発行日】2017年2月22日
(54)【発明の名称】車両用ミラー装置
(51)【国際特許分類】
   B60R 1/072 20060101AFI20170213BHJP
【FI】
   B60R1/072
【請求項の数】5
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2012-121166(P2012-121166)
(22)【出願日】2012年5月28日
(65)【公開番号】特開2013-244906(P2013-244906A)
(43)【公開日】2013年12月9日
【審査請求日】2014年11月20日
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000003551
【氏名又は名称】株式会社東海理化電機製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100079049
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 淳
(74)【代理人】
【識別番号】100084995
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 和詳
(74)【代理人】
【識別番号】100099025
【弁理士】
【氏名又は名称】福田 浩志
(72)【発明者】
【氏名】辻 拓也
【審査官】 岸 智章
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−081864(JP,A)
【文献】 特開2004−243819(JP,A)
【文献】 特開2000−127854(JP,A)
【文献】 特開2003−312364(JP,A)
【文献】 特開2001−138812(JP,A)
【文献】 特開平06−286525(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60R 1/06−1/072
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に設けられるミラーと、
前記ミラーを支持し、前記ミラーを傾動させることで前記ミラーの鏡面角度が調整される傾動機構と、
前記傾動機構による前記ミラーの傾動を制御可能にされ、前記傾動機構が前記ミラーを初期位置から目標位置へ向けて傾動させた際に前記ミラーが実際に傾動された実際位置が目標位置に対し誤差を発生した場合に前記誤差を記憶すると共に前記傾動機構が前記ミラーを実際位置から目標位置へ傾動させ、その後に前記傾動機構が前記ミラーを初期位置から目標位置へ向けて傾動させる際に記憶した前記誤差分を減算したのみの修正目標位置へ向けて前記傾動機構が前記ミラーを傾動させる制御手段と、
を備えた車両用ミラー装置。
【請求項2】
前記制御手段は、前記ミラーの初期位置と目標位置との位置関係毎に前記誤差を記憶する請求項1記載の車両用ミラー装置。
【請求項3】
前記傾動機構は、前記ミラーを初期位置から目標位置へ向けて傾動させる際に前記ミラーを一方向から他方向の順番又は他方向から一方向の順番で傾動させ、かつ、前記制御手段は、前記傾動機構が前記ミラーを初期位置から目標位置へ向けて傾動させた際に前記ミラーを傾動させた一方向と他方向との順番毎に前記誤差を記憶する請求項1又は請求項2記載の車両用ミラー装置。
【請求項4】
前記制御手段は、前記傾動機構が前記ミラーを初期位置から目標位置へ向けて傾動させた毎に前記誤差を記憶する請求項1〜請求項3の何れか1項記載の車両用ミラー装置。
【請求項5】
前記傾動機構は、前記ミラーを初期位置から目標位置へ向けて傾動させる際に前記ミラーを一方向及び他方向へ傾動可能にされ、かつ、前記制御手段は、一方向における前記誤差のみを記憶する請求項1〜請求項4の何れか1項記載の車両用ミラー装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両に設けられるミラーを傾動機構が傾動させる車両用ミラー装置に関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1に記載された車両用電動ミラー装置では、シフトレバーがリバースレンジに対応したシフト位置に移動された際に、モータがミラーを復帰位置から後輪視認位置へ回動させる。その後、シフトレバーがリバースレンジに対応したシフト位置から離脱された際に、モータがミラーを後輪視認位置から復帰位置へ向けて回動させる。
【0003】
ここで、この車両用電動ミラー装置では、ミラーが後輪視認位置から復帰位置へ向けて回動された際に、ミラーが実際に回動された実際位置が復帰位置を含む所定範囲外にある場合には、モータがミラーを実際位置から復帰位置へ回動させるが、ミラーの実際位置が所定範囲内にある場合には、モータがミラーを実際位置から復帰位置へ回動させない。これにより、乗員が煩わしさを感じることが抑制されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−243819号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記事実を考慮し、傾動機構がミラーを傾動させた際に再度ミラーが傾動されることを抑制できる車両用ミラー装置を得ることが目的である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に記載の車両用ミラー装置は、車両に設けられるミラーと、前記ミラーを支持し、前記ミラーを傾動させることで前記ミラーの鏡面角度が調整される傾動機構と、前記傾動機構による前記ミラーの傾動を制御可能にされ、前記傾動機構が前記ミラーを初期位置から目標位置へ向けて傾動させた際に前記ミラーが実際に傾動された実際位置が目標位置に対し誤差を発生した場合に前記誤差を記憶すると共に前記傾動機構が前記ミラーを実際位置から目標位置へ傾動させ、その後に前記傾動機構が前記ミラーを初期位置から目標位置へ向けて傾動させる際に記憶した前記誤差分を減算したのみの修正目標位置へ向けて前記傾動機構が前記ミラーを傾動させる制御手段と、を備えている。
【0007】
請求項2に記載の車両用ミラー装置は、請求項1に記載の車両用ミラー装置において、前記制御手段は、前記ミラーの初期位置と目標位置との位置関係毎に前記誤差を記憶する。
【0008】
請求項3に記載の車両用ミラー装置は、請求項1又は請求項2に記載の車両用ミラー装置において、前記傾動機構は、前記ミラーを初期位置から目標位置へ向けて傾動させる際に前記ミラーを一方向から他方向の順番又は他方向から一方向の順番で傾動させ、かつ、前記制御手段は、前記傾動機構が前記ミラーを初期位置から目標位置へ向けて傾動させた際に前記ミラーを傾動させた一方向と他方向との順番毎に前記誤差を記憶する。
【0009】
請求項4に記載の車両用ミラー装置は、請求項1〜請求項3の何れか1項に記載の車両用ミラー装置において、前記制御手段は、前記傾動機構が前記ミラーを初期位置から目標位置へ向けて傾動させた毎に前記誤差を記憶する。
【0010】
請求項5に記載の車両用ミラー装置は、請求項1〜請求項4の何れか1項に記載の車両用ミラー装置において、前記傾動機構は、前記ミラーを初期位置から目標位置へ向けて傾動させる際に前記ミラーを一方向及び他方向へ傾動可能にされ、かつ、前記制御手段は、一方向における前記誤差のみを記憶する。
【発明の効果】
【0011】
請求項1に記載の車両用ミラー装置では、傾動機構がミラーを支持しており、傾動機構がミラーを傾動させることで、ミラーの鏡面角度が調整される。さらに、制御手段が傾動機構によるミラーの傾動を制御可能にされている。
【0012】
ここで、制御手段においては、傾動機構がミラーを初期位置から目標位置へ向けて傾動させた際に、ミラーが実際に傾動された実際位置が目標位置に対し誤差を発生した場合に、当該誤差を記憶すると共に、傾動機構がミラーを実際位置から目標位置へ傾動させる。その後に、傾動機構がミラーを初期位置から目標位置へ向けて傾動させる際に、傾動機構がミラーを当該誤差分を修正した修正目標位置へ向けて傾動させる。このため、ミラーの実際位置が目標位置に対し誤差を発生することを抑制でき、再度ミラーが傾動されることを抑制できる。
【0013】
請求項2に記載の車両用ミラー装置では、制御手段において、ミラーの初期位置と目標位置との位置関係毎に、当該誤差を記憶する。このため、ミラーの初期位置と目標位置との位置関係毎にミラーの修正目標位置の修正量を変更でき、ミラーの実際位置が目標位置に対し誤差を発生することを一層抑制できて、再度ミラーが傾動されることを一層抑制できる。
【0014】
請求項3に記載の車両用ミラー装置では、傾動機構が、ミラーを初期位置から目標位置へ向けて傾動させる際に、ミラーを一方向から他方向の順番又は他方向から一方向の順番で傾動させる。
【0015】
ここで、制御手段において、傾動機構がミラーを初期位置から目標位置へ向けて傾動させた際にミラーを傾動させた一方向と他方向との順番毎に、当該誤差を記憶する。このため、傾動機構がミラーを傾動させた一方向と他方向との順番毎にミラーの修正目標位置の修正量を変更でき、ミラーの実際位置が目標位置に対し誤差を発生することを一層抑制できて、再度ミラーが傾動されることを一層抑制できる。
【0016】
請求項4に記載の車両用ミラー装置では、制御手段において、傾動機構がミラーを初期位置から目標位置へ向けて傾動させた毎に、当該誤差を記憶する。このため、傾動機構がミラーを初期位置から目標位置へ向けて傾動させた毎にミラーの修正目標位置の修正量を変更でき、ミラーの実際位置が目標位置に対し誤差を発生することを一層抑制できて、再度ミラーが傾動されることを一層抑制できる。
【0017】
請求項5に記載の車両用ミラー装置では、傾動機構が、ミラーを初期位置から目標位置へ向けて傾動させる際に、ミラーを一方向及び他方向へ傾動可能にされている。
【0018】
ここで、制御手段が一方向における当該誤差を記憶する。このため、制御手段が、他方向における当該誤差を記憶しないため、処理を簡単にできる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明の実施の形態に係る車両用ドアミラー装置を示す車両後方から見た正面図である。
図2】本発明の実施の形態に係る車両用ドアミラー装置の主要部を示す車幅方向内方から見た断面図(図1の2−2線断面図)である。
図3】本発明の実施の形態に係る車両用ドアミラー装置におけるミラーの傾動位置を示すグラフである。
図4】本発明の実施の形態に係る車両用ドアミラー装置におけるミラーの自動傾動制御のフローチャートである。
図5】本発明の実施の形態に係る車両用ドアミラー装置におけるズレ補正テーブルである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
図1には、本発明の車両用ミラー装置が適用された実施の形態に係る車両用ドアミラー装置10が車両後方から見た正面図にて示されており、図2には、車両用ドアミラー装置10の主要部が車幅方向内方(車両左方)から見た断面図(図1の2−2線断面図)にて示されている。なお、図面では、車両前方を矢印FRで示し、車幅方向外方(車両右方)を矢印OUTで示し、上方を矢印UPで示している。
【0021】
本実施の形態に係る車両用ドアミラー装置10は、車両のドア(フロントドア)の上下方向中間部の前端外側に設置されている。
【0022】
図1に示す如く、車両用ドアミラー装置10は、外周部材としての略直方体形容器状のバイザ12を備えており、バイザ12の車幅方向内側部分がドア(車体側)に支持されることで、車両用ドアミラー装置10がドアに設置されている。また、バイザ12内は、車両後側へ開口されている。
【0023】
バイザ12内には、略矩形平板状のミラー14が設けられており、ミラー14は、バイザ12の開口部分に配置されている。ミラー14の車両後側部分には、ミラー本体16(鏡体)が設けられており、ミラー本体16は、反射膜の車両後側面が鏡面16Aにされている。また、ミラー本体16の車両前側及び外周は、ミラーホルダ18(ミラーホルダアウタ)によって被覆されている。
【0024】
バイザ12内には、図2に示す傾動機構としての電動式の鏡面調整ユニット20(鏡面角度調整装置)が設けられている。
【0025】
鏡面調整ユニット20の車両前側部分には、略半球形容器状のケース22が設けられており、ケース22内は、車両後側に開口されている。ケース22は、バイザ12に支持されており、これにより、鏡面調整ユニット20がバイザ12に支持されている。
【0026】
鏡面調整ユニット20の車両後側部分には、傾動体24(ミラーホルダインナ)が設けられており、傾動体24は、ケース22に傾動(揺動、回動)可能に保持されている。傾動体24には、略円筒状の摺動筒24Aが設けられており、摺動筒24Aは、車両前側へ向かうに従い径が徐々に小さくされて、ケース22の周壁に対し摺動可能にされている。摺動筒24Aの車両後側端には、略円盤状の装着板24Bが一体に設けられており、装着板24Bの車両後側には、ミラー14のミラーホルダ18が着脱可能に装着されている。これにより、ミラー14が、重心位置(鏡面16Aの面中心位置)を中心として、傾動体24と一体にケース22に対し傾動可能にされている。
【0027】
ケース22内には、傾動手段(モータ)としての上下モータ26及び内外モータ(図示省略)が固定されており、上下モータ26及び内外モータには、それぞれ移動部材(調整ロッド)としての棒状の上下ロッド28及び内外ロッド(図示省略)がギヤ機構(図示省略)を介して接続されている。上下ロッド28及び内外ロッドは、ケース22内に、車両前後方向(軸方向)へスライド(移動)可能に保持されており、上下ロッド28の先端(車両後側端)は、ミラー14の重心位置の上方(下方でもよい)において、装着板24Bに回動可能に保持されると共に、内外ロッドの先端(車両後側端)は、ミラー14の重心位置の車幅方向外方(車幅方向内方でもよい)において、装着板24Bに回動可能に保持されている。
【0028】
上下モータ26及び内外モータは、バイザ12内又は車体側の制御手段としてのECU30(ミラーECU)に電気的に接続されており、ECU30には、車両の操作手段としての調整操作装置32が電気的に接続されている。車両の乗員(特に運転手)により調整操作装置32が操作された際には、ECU30の制御により、鏡面調整ユニット20が作動されて、上下モータ26及び内外モータが駆動されることで、上下ロッド28及び内外ロッドが車両前後方向へスライドされて、傾動体24及びミラー14がケース22に対し傾動される。これにより、ミラー14の傾動位置が調整されて、ミラー14の鏡面16A角度(鏡面16Aが向けられる方向)が調整される。
【0029】
上下ロッド28が車両前方へスライドされる際には、傾動体24及びミラー14が上方(上向き方向)に傾動されて、ミラー14の鏡面16Aが上向き方向に傾動される。上下ロッド28が車両後方へスライドされる際には、傾動体24及びミラー14が下方(下向き方向)に傾動されて、ミラー14の鏡面16Aが下向き方向に傾動される。内外ロッドが車両前方へスライドされる際には、傾動体24及びミラー14が外方(外向き方向)に傾動されて、ミラー14の鏡面16Aが車幅方向の外向き方向に傾動される。内外ロッドが車両後方へスライドされる際には、傾動体24及びミラー14が内方(内向き方向)に傾動されて、ミラー14の鏡面16Aが車幅方向の内向き方向に傾動される。
【0030】
図3に示す如く、ミラー14の内外方向(一方向)への傾動位置をXとし、ミラー14の上下方向(他方向)への傾動位置をYとすると、ミラー14の傾動可能範囲は、傾動可能領域Q内に限定されている。
【0031】
図2に示す如く、ケース22には、検出手段(センサ)としての上下センサ34及び内外センサ(図示省略)が設けられており、上下センサ34及び内外センサは、それぞれECU30に電気的に接続されている。上下センサ34及び内外センサには、それぞれ略直方体形箱状のハウジング36が設けられており、ハウジング36がケース22の底壁外側に固定されることで、上下センサ34及び内外センサがケース22に固定されている。
【0032】
ハウジング36には、検出部材としての棒状の検出ロッド38が車両前後方向(軸方向)へスライド可能に設けられており、検出ロッド38は、ハウジング36から車両後側へ突出されると共に、車両後側へ付勢されている。検出ロッド38は、ケース22の底壁を貫通されて、ケース22内に挿入されており、上下センサ34及び内外センサの検出ロッド38は、それぞれ上下ロッド28及び内外ロッドの車両前側に同軸上に配置されている。上下センサ34及び内外センサの検出ロッド38の先端(車両後側端)は、それぞれ上下ロッド28及び内外ロッドの基端(車両前側端)に付勢力によって接触されており、上下センサ34及び内外センサの検出ロッド38は、常にそれぞれ上下ロッド28及び内外ロッドと一体に車両前後方向へスライド可能にされている。このため、上下センサ34及び内外センサがそれぞれ検出ロッド38の車両前後方向へのスライド位置を検出することで、上下センサ34及び内外センサが、それぞれ、上下ロッド28及び内外ロッドの車両前後方向へのスライド位置を検出して、ミラー14の上下方向及び内外方向への傾動位置を検出する。
【0033】
ECU30には、車両の自動変速機40(変速機)が電気的に接続されており、自動変速機40には、車両の操作装置としてのシフトレバー装置42が機械的又は電気的に接続されている。車両の乗員(運転手)によりシフトレバー装置42が操作された際には、自動変速機40のシフトレンジ(シフトポジション)が例えば「P」レンジ(パーキングレンジ)、「R」レンジ(リバースレンジ)、「N」レンジ(ニュートラルレンジ)、「D」レンジ(ドライブレンジ)等に変更される。
【0034】
次に、本実施の形態の作用を説明する。
【0035】
以上の構成の車両用ドアミラー装置10では、調整操作装置32が操作された際に、ECU30の制御により、鏡面調整ユニット20が作動されて、上下モータ26及び内外モータが駆動されることで、上下ロッド28及び内外ロッドが車両前後方向へスライドされる。このため、傾動体24及びミラー14がケース22に対し上下方向及び内外方向へ傾動されることで、ミラー14の傾動位置(鏡面16A角度)が調整されて、乗員(運転手)のミラー14による視認範囲が調整される。
【0036】
上下ロッド28及び内外ロッドが車両前後方向へスライドされる際には、それぞれ上下センサ34及び内外センサにおいて、検出ロッド38が上下ロッド28又は内外ロッドと一体に車両前後方向へスライドされる。これにより、ミラー14の傾動位置が調整される際には、上下センサ34及び内外センサによってそれぞれミラー14の上下方向及び内外方向における傾動位置が検出される。
【0037】
また、ECU30の制御により、鏡面調整ユニット20が自動(AUTO)で作動される場合がある。
【0038】
例えば、シフトレバー装置42が操作されて、自動変速機40のシフトレンジが「R」レンジに変更された際には、ECU30の制御により、鏡面調整ユニット20が作動されて、上下モータ26及び内外モータの少なくとも一方が駆動されることで、ミラー14が上下方向及び内外方向の少なくとも一方へ傾動されて、ミラー14が通常位置からリバース位置まで自動で傾動される。これにより、ミラー14の鏡面16Aが車両後斜め下方へ向けられて、乗員(運転手)がミラー14によって車両の後輪及びその周辺を視認可能にされる。
【0039】
その後、シフトレバー装置42が操作されて、自動変速機40のシフトレンジが「R」レンジ以外(例えば「P」レンジ)に変更された際には、ECU30の制御により、鏡面調整ユニット20が作動されて、上下モータ26及び内外モータの少なくとも一方が駆動されることで、ミラー14が上下方向及び内外方向の少なくとも一方へ傾動されて、ミラー14がリバース位置から通常位置まで自動で傾動される。
【0040】
ところで、図3に示す如く、ECU30の制御により鏡面調整ユニット20が自動で作動されて、ミラー14が初期位置としての例えばリバース位置である現在位置(Xg、Yg)から例えば通常位置である目標位置(Xc、Yc)へ向けて自動で傾動された際には、ミラー14が実際に傾動された実際位置としての停止位置が目標位置(Xc、Yc)に対し誤差(ズレ)を発生する場合ある。
【0041】
ECU30は、ミラー14が現在位置(Xg、Yg)から目標位置(Xc、Yc)へ向けて傾動された際におけるミラー14の停止位置の目標位置(Xc、Yc)に対する誤差を、上下センサ34及び内外センサが検出したミラー14の上下方向及び内外方向における傾動位置に基づき、補正値(修正値)として記憶(学習)する。
【0042】
一般に、ミラー14の停止位置の目標位置(Xc、Yc)に対する誤差は、ミラー14の現在位置(Xg、Yg)と目標位置(Xc、Yc)との位置関係毎に変動する。例えば、ミラー14の停止位置の目標位置(Xc、Yc)に対する誤差は、ミラー14の現在位置(Xg、Yg)から目標位置(Xc、Yc)への傾動量が大きい程大きくなると共に、ミラー14の傾動経路がミラー14の傾動可能領域Qの中心位置(Xo、Yo)から離間する程大きくなる。
【0043】
このため、ECU30では、ミラー14の傾動可能領域Qを複数のエリア(本実施の形態では、9個のエリアA〜エリアI)に分割しており、ECU30は、ミラー14の現在位置(Xg、Yg)のエリア(例えばエリアG)と目標位置(Xc、Yc)のエリア(例えばエリアC)との組合せ毎に、ミラー14の停止位置の目標位置(Xc、Yc)に対する誤差を補正値(Xh、Yh)として記憶する(図5参照)。例えば、停止位置が(Xc+3、Yc−1)である場合には、補正値(Xh、Yh)は(+3、−1)にされる。さらに、停止位置が(Xc±0、Yc±0)である場合には、補正値(Xh、Yh)は(0、0)にされる。
【0044】
また、A=(Xg−Xo)2+(Yc−Yo)2とし、B=(Xc−Xo)2+(Yg−Yo)2とする。A≧B(A>Bでもよい)の場合には、ミラー14が現在位置(Xg、Yg)から目標位置(Xc、Yc)へ向けて傾動される際に、上下モータ26が駆動されてミラー14が上下方向へ傾動された後に、内外モータが駆動されてミラー14が内外方向へ傾動される。A<B(A≦Bでもよい)の場合には、ミラー14が現在位置(Xg、Yg)から目標位置(Xc、Yc)へ向けて傾動される際に、内外モータが駆動されてミラー14が内外方向へ傾動された後に、上下モータ26が駆動されてミラー14が上下方向へ傾動される。これにより、ミラー14の傾動可能領域Qの外周線がX軸及びY軸に平行でない場合でも、ミラー14が傾動可能領域Q内を傾動できて、ミラー14が傾動可能領域Q外を傾動する必要をなくすことができ、ミラー14が現在位置(Xg、Yg)から目標位置(Xc、Yc)へ傾動できる。
【0045】
さらに、ミラー14が上下方向から内外方向の順番で傾動される場合には、ミラー14が内外方向へ傾動される際にミラー14の上下方向における傾動位置が誤差を発生し易い。ミラー14が内外方向から上下方向の順番で傾動される場合には、ミラー14が上下方向へ傾動される際にミラー14の内外方向における傾動位置が誤差を発生し易い。
【0046】
このため、ECU30は、ミラー14が傾動される上下方向と内外方向との順番毎に、ミラー14の停止位置の目標位置(Xc、Yc)に対する誤差を補正値(Xh、Yh)として記憶する(図5参照)。
【0047】
図4に示す如く、ECU30の制御により鏡面調整ユニット20が自動で作動されてミラー14が現在位置(Xg、Yg)から目標位置(Xc、Yc)へ向けて自動で傾動される際には、先ず、ステップ100において、鏡面調整ユニット20が自動で作動されるための条件が成立したか否か(例えば自動変速機40のシフトレンジが「R」レンジから「R」レンジ以外に変更されたか否か)が判断される。
【0048】
ステップ100において、鏡面調整ユニット20が自動で作動されるための条件が成立していないと判断された際には、再度ステップ100の処理が行われる。
【0049】
ステップ100において、鏡面調整ユニット20が自動で作動されるための条件が成立したと判断された際には、ステップ102において、ミラー14の現在位置(Xg、Yg)及び目標位置(Xc、Yc)と、現在位置(Xg、Yg)のエリア(例えばエリアG)及び目標位置(Xc、Yc)のエリア(例えばエリアC)と、が判断される。
【0050】
次に、ステップ104において、A(=(Xg−Xo)2+(Yc−Yo)2)とB(=(Xc−Xo)2+(Yg−Yo)2)との大きさが比較される。
【0051】
ステップ104において、A≧B(A>Bでもよい)と判断された場合には、ステップ106において、図5のズレ補正値テーブルに基づき、目標位置(Xc、Yc)を修正目標位置としての補正目標位置Ch(Xc−Xh、Yc−Yh)に補正する。例えば、補正値(Xh、Yh)が(+3、−1)である場合には、補正目標位置Ch(Xc−Xh、Yc−Yh)が(Xc−3、Yc+1)にされる。
【0052】
ステップ104において、A<B(A≦Bでもよい)と判断された場合には、ステップ108において、図5のズレ補正値テーブルに基づき、目標位置(Xc、Yc)を補正目標位置Ch(Xc−Xh、Yc−Yh)に補正する。例えば、補正値(Xh、Yh)が(0、0)である場合には、補正目標位置Ch(Xc−Xh、Yc−Yh)が(Xc、Yc)にされる。
【0053】
ステップ106又はステップ108の次には、ステップ110において、鏡面調整ユニット20が自動で作動されて、ミラー14が現在位置(Xg、Yg)から補正目標位置Ch(Xc−Xh、Yc−Yh)へ向けて自動で傾動される。ステップ110では、ステップ104においてA≧B(A>Bでもよい)と判断された場合に、ミラー14が上下方向から内外方向の順番で傾動されると共に、ステップ104においてA<B(A≦Bでもよい)と判断された場合にミラー14が内外方向から上下方向の順番で傾動される。
【0054】
次に、ステップ112において、ミラー14が実際に傾動(停止)された停止位置が目標位置(Xc、Yc)であるか否かが判断される。
【0055】
ステップ112において、ミラー14の停止位置が目標位置(Xc、Yc)でない場合には、ステップ114において、ミラー14の停止位置の目標位置(Xc、Yc)に対する誤差を記憶する共に、当該誤差に基づき補正値を更新する。例えば、更新前の補正値(Xh、Yh)が(+3、−1)であった際において、停止位置が(Xc−1、Yc+2)であった場合には、補正値(Xh、Yh)が(+3−1、−1+2)=(+2、+1)に更新される。
【0056】
その後、ステップ116において、再度、鏡面調整ユニット20が自動で作動されて、ミラー14が停止位置から目標位置(Xc、Yc)まで自動で傾動されることで、ステップ118において、鏡面調整ユニット20の自動作動処理が終了されて、ステップ100に戻される。
【0057】
ステップ112において、ミラー14の停止位置が目標位置(Xc、Yc)である場合には、ステップ118において、鏡面調整ユニット20の自動作動処理が終了されて、ステップ100に戻される。
【0058】
ここで、上述の如く、ECU30においては、ミラー14が現在位置(Xg、Yg)から目標位置(Xc、Yc)へ向けて自動で傾動された際に、ミラー14の停止位置が目標位置(Xc、Yc)に対し誤差を発生した場合には、当該誤差を補正値(Xh、Yh)として記憶すると共に、ミラー14が停止位置から目標位置(Xc、Yc)へ傾動される。
【0059】
その後に、ミラー14が現在位置(Xg、Yg)から目標位置(Xc、Yc)へ向けて自動で傾動される際には、ミラー14が補正目標位置Ch(Xc−Xh、Yc−Yh)へ向けて自動で傾動される。このため、ミラー14の停止位置が目標位置(Xc、Yc)に対し誤差を発生することを抑制でき、再度ミラー14が停止位置から目標位置(Xc、Yc)へ自動で傾動されることを抑制できて、乗員が煩わしさを感じることを抑制できる。
【0060】
さらに、ミラー14の現在位置(Xg、Yg)のエリアと目標位置(Xc、Yc)のエリアとの組合せ毎に、ミラー14の停止位置の目標位置(Xc、Yc)に対する誤差が補正値(Xh、Yh)として記憶される。このため、ミラー14の停止位置の目標位置(Xc、Yc)に対する誤差がミラー14の現在位置(Xg、Yg)と目標位置(Xc、Yc)との位置関係によって変動することに対応して、ミラー14の現在位置(Xg、Yg)のエリアと目標位置(Xc、Yc)のエリアとの組合せ毎に補正値(Xh、Yh)を変更できる。これにより、ミラー14が現在位置(Xg、Yg)から目標位置(Xc、Yc)へ向けて自動で傾動される際に、ミラー14の停止位置が目標位置(Xc、Yc)に対し誤差を発生することを一層抑制でき、再度ミラー14が停止位置から目標位置(Xc、Yc)へ自動で傾動されることを一層抑制できる。
【0061】
しかも、ミラー14が傾動される上下方向と内外方向との順番毎に、ミラー14の停止位置の目標位置(Xc、Yc)に対する誤差が補正値(Xh、Yh)として記憶される。このため、ミラー14の停止位置の目標位置(Xc、Yc)に対する誤差がミラー14が傾動される上下方向と内外方向との順番によって変動することに対応して、ミラー14が傾動される上下方向と内外方向との順番毎に補正値(Xh、Yh)を変更できる。これにより、ミラー14が現在位置(Xg、Yg)から目標位置(Xc、Yc)へ向けて自動で傾動される際に、ミラー14の停止位置が目標位置(Xc、Yc)に対し誤差を発生することを一層抑制でき、再度ミラー14が停止位置から目標位置(Xc、Yc)へ自動で傾動されることを一層抑制できる。
【0062】
また、ミラー14が現在位置(Xg、Yg)から目標位置(Xc、Yc)へ向けて自動で傾動された毎に、ミラー14の停止位置の目標位置(Xc、Yc)に対する誤差が記憶されて、補正値(Xh、Yh)が更新される。このため、ミラー14の停止位置の目標位置(Xc、Yc)に対する誤差が鏡面調整ユニット20の経年劣化によって変動することに対応して、ミラー14が現在位置(Xg、Yg)から目標位置(Xc、Yc)へ向けて自動で傾動された毎に補正値(Xh、Yh)を更新できる。これにより、ミラー14が現在位置(Xg、Yg)から目標位置(Xc、Yc)へ向けて自動で傾動される際に、ミラー14の停止位置が目標位置(Xc、Yc)に対し誤差を発生することを一層抑制でき、再度ミラー14が停止位置から目標位置(Xc、Yc)へ自動で傾動されることを一層抑制できる。
【0063】
なお、本実施の形態では、ミラー14が現在位置(Xg、Yg)から目標位置(Xc、Yc)へ向けて自動で傾動された毎に、ECU30が、ミラー14の停止位置の目標位置(Xc、Yc)に対する誤差のX座標とY座標とを記憶して、補正値のXhとYhとを更新する。しかしながら、ミラー14が現在位置(Xg、Yg)から目標位置(Xc、Yc)へ向けて自動で傾動された際に、ECU30が、ミラー14の停止位置の目標位置(Xc、Yc)に対する誤差のX座標及びY座標の一方を記憶して、補正値のXh及びYhの一方のみを更新してもよい。
【0064】
例えば、ミラー14が現在位置(Xg、Yg)から目標位置(Xc、Yc)へ向けて自動で傾動される際に、ミラー14が上下方向のみにおいて傾動された場合には、ミラー14の停止位置の目標位置(Xc、Yc)に対する誤差がY座標においては発生しにくいため、当該誤差のX座標のみを記憶して、補正値のXhのみを更新してもよい。一方、ミラー14が現在位置(Xg、Yg)から目標位置(Xc、Yc)へ向けて自動で傾動される際に、ミラー14が内外方向のみにおいて傾動された場合には、ミラー14の停止位置の目標位置(Xc、Yc)に対する誤差がX座標においては発生しにくいため、当該誤差のY座標のみを記憶して、補正値のYhのみを更新してもよい。これにより、ECU30の処理を簡単にできる。
【0065】
また、本実施の形態では、シフトレバー装置42が操作されて自動変速機40のシフトレンジが「R」レンジに対して変更された際にミラー14が傾動される、所謂「リバース連動式」に本発明を適用した。しかしながら、例えば車両の右折時や左折時のターンスイッチに連動させてミラー14を傾動させる所謂「ターン連動式」等の他の用途にも本発明を適用できる。
【0066】
さらに、本実施の形態では、鏡面調整ユニット20がミラー14を互いに直交する上下方向と内外方向とへ傾動させる。しかしながら、鏡面調整ユニット20は、ミラー14を互いに交差する一方向と他方向とへ傾動させればよい。
【0067】
また、本実施の形態では、本発明を車両用ドアミラー装置10に適用した。しかしながら、本発明を他の車外や車内のミラー装置に適用してもよい。
【符号の説明】
【0068】
10 車両用ドアミラー装置(車両用ミラー装置)
14 ミラー
16A 鏡面
20 鏡面調整ユニット(傾動機構)
30 ECU(制御手段)
図1
図2
図3
図4
図5