(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6083978
(24)【登録日】2017年2月3日
(45)【発行日】2017年2月22日
(54)【発明の名称】ワイヤ式ウインドレギュレータ
(51)【国際特許分類】
E05F 11/48 20060101AFI20170213BHJP
B60J 1/17 20060101ALI20170213BHJP
【FI】
E05F11/48 F
E05F11/48 Z
B60J1/17 A
B60J1/17 C
【請求項の数】3
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2012-185352(P2012-185352)
(22)【出願日】2012年8月24日
(65)【公開番号】特開2014-43686(P2014-43686A)
(43)【公開日】2014年3月13日
【審査請求日】2015年7月2日
(73)【特許権者】
【識別番号】390000996
【氏名又は名称】株式会社ハイレックスコーポレーション
(72)【発明者】
【氏名】高岡 宏幸
【審査官】
藤脇 昌也
(56)【参考文献】
【文献】
特開2011−231551(JP,A)
【文献】
特開2009−287310(JP,A)
【文献】
特公昭46−003001(JP,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E05F 1/00 − 13/04,17/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
窓ガラスが接続されるキャリアプレートと、
駆動部と、
前記駆動部の駆動力により回転するドラムと、
前記ドラムを収容するドラムハウジングと、
前記キャリアプレートに連結され、前記ドラムの回転により巻き取られること及び送り出されることによって、前記キャリアプレートを昇降移動させるワイヤと、
前記ワイヤの配索方向を転換する方向転換部材と、
前記ワイヤを挿通可能な保持パイプと、
を備えたワイヤ式ウインドレギュレータであって、
前記保持パイプは、前記方向転換部材と前記ドラムハウジングとの間に配索された前記ワイヤが挿通された状態で、前記方向転換部材の方向転換部材側取付手段と前記ドラムハウジングのドラムハウジング側取付手段とに前記保持パイプの一端部と他端部とがそれぞれ挿入されることにより前記方向転換部材と前記ドラムハウジングに取り付けられ、
前記方向転換部材と前記ドラムハウジングとの間に配索された前記ワイヤの配索経路が最も長い状態となるような所定の引張力によって前記方向転換部材を前記ドラムハウジングに対して相対移動させた際には、
前記方向転換部材及び前記ドラムハウジングのいずれか一方の移動に追従して前記保持パイプが移動可能となるように前記方向転換部材及び前記ドラムハウジングの他方の取付手段に取り付けられた前記保持パイプの端部が前記他方の取付手段内において移動可能であり、
前記方向転換部材と前記ドラムハウジングとを車体へ取り付ける際には、
前記方向転換部材と前記ドラムハウジングとの距離が車体への取付可能な距離範囲であって、前記ワイヤの張力が窓ガラスを昇降させるのに必要な張力となるような長さ範囲において、前記保持パイプが移動可能となるように前記他方の取付手段に取り付けられた前記保持パイプの端部が前記他方の取付手段内において移動可能である
ことを特徴とするワイヤ式ウインドレギュレータ。
【請求項2】
前記保持パイプは、遊嵌部を有し、
前記他方の取付手段は遊嵌部取付手段を有し、
前記遊嵌部と前記遊嵌部取付手段とによって前記保持パイプが遊嵌するように前記他方の取付手段に取り付けられることを特徴とする請求項1記載のワイヤ式ウインドレギュレータ。
【請求項3】
前記遊嵌部は、小径部と大径部とを有し、
前記遊嵌部取付手段は、前記大径部と係止可能な係止手段を有し、
前記小径部は、前記遊嵌部取付手段において移動可能となるよう形成され、
前記大径部は、前記小径部から前記遊嵌部取付手段に取り付けられる前記保持パイプの端部側に形成され、前記係止手段と係止することで、前記保持パイプが前記他方の取付手段から一方の取付手段に向かって移動することを規制されることを特徴とする請求項2記載のワイヤ式ウインドレギュレータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ワイヤ式ウインドレギュレータに関し、さらに詳しくは、車両の窓等に適用することができるワイヤ式ウインドレギュレータに関する。
【背景技術】
【0002】
ガイドレールを有さないレールレスのワイヤ式ウインドレギュレータでは、ドラムハウジングとプーリ等の方向転換部材との間の距離が固定されていないため、方向転換部材とドラムハウジングとの距離が車体へ取り付けるのに十分な距離を有しているか、ワイヤが窓ガラスを昇降させるのに必要な張力を有しているかについて検査を行なう必要がある。
【0003】
このようなワイヤ式ウインドレギュレータには、荷姿保持用の保持パイプ等の筒状部材を有しているものがある(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−321345号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前記検査では、所定の力でドラムハウジングに対して方向転換部材を移動させることによって検査を行なうものであるが、ワイヤ式ウインドレギュレータが荷姿保持用の保持パイプ等の筒状部材を有しているような場合は、この筒状部材によって、方向転換部材の移動が阻害されてしまうことがあり、移動が阻害されることによって検査自体が行なえなくなるという問題が生じる。また、検査時に筒状部材が抜けてしまうと、再度筒状部材を取付る必要があり、取付るのに力が必要な場合は、特に時間がかかってしまい、生産性が低下してしまう。
【0006】
本発明は、上記のような課題に鑑みてなされたものであって、生産性が低下するのを抑制することができるワイヤ式ウインドレギュレータを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明のワイヤ式ウインドレギュレータは、窓ガラスが接続されるキャリアプレートと、駆動部と、前記駆動部の駆動力により回転するドラムと、前記ドラムを収容するドラムハウジングと、前記キャリアプレートに連結され、前記ドラムの回転により巻き取られること及び送り出されることによって、前記キャリアプレートを昇降移動させるワイヤと、前記ワイヤの配索方向を転換する方向転換部材と、前記ワイヤを挿通可能な保持パイプと、を備えたワイヤ式ウインドレギュレータであって、前記保持パイプは、前記方向転換部材と前記ドラムハウジングとの間に配索された前記ワイヤが挿通された状態で、前記方向転換部材の方向転換部材側取付手段と前記ドラムハウジングのドラムハウジング側取付手段とに前記保持パイプの一端部と他端部とがそれぞれ挿入されることにより前記方向転換部材と前記ドラムハウジングに取り付けられ、前記方向転換部材と前記ドラムハウジングとの間に配索された前記ワイヤの配索経路が最も長い状態となるような所定の引張力によって前記方向転換部材を前記ドラムハウジングに対して相対移動させた際には、前記方向転換部材及び前記ドラムハウジングのいずれか一方の移動に追従して前記保持パイプが移動可能となるように前記方向転換部材及び前記ドラムハウジングの他方の取付手段に取り付けられた前記保持パイプの端部が前記他方の取付手段内において移動可能であり、前記方向転換部材と前記ドラムハウジングとを車体へ取り付ける際には、前記方向転換部材と前記ドラムハウジングとの距離が車体への取付可能な距離範囲であって、前記ワイヤの張力が窓ガラスを昇降させるのに必要な張力となるような長さ範囲において、前記保持パイプが移動可能となるように前記他方の取付手段に取り付けられた前記保持パイプの端部が前記他方の取付手段内において移動可能であることを特徴とするワイヤ式ウインドレギュレータ。
【発明の効果】
【0008】
(1)前記保持パイプは、前記方向転換部材と前記ドラムハウジングとの間に配索された前記ワイヤが挿通された状態で、前記方向転換部材の方向転換部材側取付手段と前記ドラムハウジングのドラムハウジング側取付手段とに前記保持パイプの一端部と他端部とがそれぞれ挿入されることにより前記方向転換部材と前記ドラムハウジングに取り付けられ、前記方向転換部材と前記ドラムハウジングとの間に配索された前記ワイヤの配索経路が最も長い状態となるような所定の引張力によって前記方向転換部材を前記ドラムハウジングに対して相対移動させた際にあっては、前記方向転換部材及び前記ドラムハウジングのいずれか一方の移動に追従して前記保持パイプが移動可能となるように前記方向転換部材及び前記ドラムハウジングの他方の取付手段に取り付けられた前記保持パイプの端部が前記他方の取付手段内において移動可能とされている。そのため、例えば前記ワイヤの端部が前記方向転換部材及び前記ドラムハウジングに対して移動可能とされてる際など、前記ワイヤの配索経路が最大となった場合であっても、前記方向転換部材及び前記ドラムハウジングの距離が所定の範囲となることを確認するため、方向転換部材とドラムハウジングとの間の距離の検査で所定の引張力によって方向転換部材をドラムハウジングに対して相対移動させても、方向転換部材又はドラムハウジングの移動が阻害されてしまうことがなく、保持パイプが抜けることを防止するこができるので、生産性の低下を抑制することができる。
また、更に、本発明のワイヤ式ウインドレギュレータは、前記方向転換部材と前記ドラムハウジングとを車体へ取り付ける際には、前記方向転換部材と前記ドラムハウジングとの距離が車体への取付可能な距離範囲であって、前記ワイヤの張力が窓ガラスを昇降させるのに必要な張力となるような長さ範囲において、前記保持パイプが移動可能となるように前記他方の取付手段に取り付けられた前記保持パイプの端部が前記他方の取付手段内において移動可能とされているため、車体へ取り付ける際に、前記ワイヤに十分な張力を付与した状態で、方向転換部材とドラムハウジングとの車体への取付位置を調節することもできる。
【0009】
(2)本発明のワイヤ式ウインドレギュレータによれば、前記保持パイプは、遊嵌部を有し、前記他方の取付手段は遊嵌部取付手段を有し、前記遊嵌部と前記遊嵌部取付手段とによって前記保持パイプが遊嵌するように前記他方の取付手段に取り付けられることにより、摺動抵抗が少なくなり、保持パイプを移動し易くすることができる。
【0010】
(3)本発明のワイヤ式ウインドレギュレータによれば、前記遊嵌部は、小径部と大径部とを有し、前記遊嵌部取付手段は、前記大径部と係止可能な係止手段を有し、前記小径部は、前記遊嵌部取付手段において移動可能となるよう形成され、前記大径部は、前記小径部から前記遊嵌部取付手段に取り付けられる前記保持パイプの端部側に形成され、前記係止手段と係止することで、前記保持パイプが前記他方の取付手段から一方の取付手段に向かって移動することを規制されるため、前記保持パイプが前記他方の取付手段において移動可能であるとともに、前記保持パイプが前記他方の取付手段から抜去されてしまうことを防止することができる。
【0011】
(4)本発明のワイヤ式ウインドレギュレータによれば、前記小径部は、前記保持パイプを縮径することにより形成されるため、前記遊嵌部を容易に形成することができる。
【0012】
(5)本発明のワイヤ式ウインドレギュレータによれば、当該ワイヤ式ウインドレギュレータは、前記方向転換部材と前記ドラムハウジングとの位置関係が窓ガラスの昇降方向に沿って配置されるように車体へ取り付けられるため、前記方向転換部材と前記ドラムハウジングとを窓ガラスの昇降方向において車体へ取り付ける場合に特に適している。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明に係るワイヤ式ウインドレギュレータ1の一実施形態を示す概略図である。
【
図3】ドラムハウジング5の内部構造の一例を示す概略図である。
【
図4】
図3のドラムハウジング5の要部を拡大した概略図である。
【
図5】
図3のドラムハウジング5の側面を示す概略図である。
【
図6】
図3のドラムハウジング5の遊嵌部取付手段22に保持パイプ8の遊嵌部14を取り付けた状態におけるドラムハウジング5の要部を拡大した概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照しつつ、本発明の実施の形態について説明する。本発明のワイヤ式ウインドレギュレータ1は、車両の窓ガラスの開閉を行うために車両のドア等に設けられるものであり、
図1及び
図3に示すように、窓ガラスが接続されるキャリアプレート2と、駆動部3と、駆動部3の駆動力により回転するドラム(不図示)と、ドラムを収容するドラムハウジング5と、キャリアプレート2に連結され、ドラムの回転により巻き取られること及び送り出されることによって、キャリアプレート2を昇降移動させるワイヤ6と、ワイヤ6の配索方向を転換する方向転換部材7と、ワイヤ6を挿通可能な保持パイプ8とを備えている。ワイヤ式ウインドレギュレータ1は、キャリアプレート2を案内するためのレールであるガイドレールを有さないタイプ、すなわちレールレスタイプのものである。
【0015】
ワイヤ6は、一端がキャリアプレート2に連結され、他端が方向転換部材7を経てドラムハウジング5内のドラムに連結される上昇用ワイヤ6aと、一端がキャリアプレート2に連結され、他端がドラムハウジング5内のドラムに連結される下降用ワイヤ6bとを含んでいる。
【0016】
キャリアプレート2は、上昇用ワイヤ6a及び下降用ワイヤ6bの一端がそれぞれ連結する公知のワイヤ端末連結部(不図示)と、窓ガラスを螺子等によって固定するための固定孔9a,9bとを有している。前記ワイヤ端末連結部は、上昇用ワイヤ6a及び下降用ワイヤ6bの各一端を僅かに遊びがある状態で嵌入可能な筒状を呈している。なお、上昇用ワイヤ6a及び下降用ワイヤ6bの各一端に不図示の鍔を設け、当該鍔と前記ワイヤ端末連結部の軸方向外側の内壁との間に上昇用ワイヤ6a及び下降用ワイヤ6bの弛みを取るための公知の弾性部材(不図示)をそれぞれ取り付けていても良い。
【0017】
方向転換部材7は、ワイヤ6を掛け渡して、ワイヤ6の配索方向を転換可能な部材であり、保持パイプ8の一端部を取付可能な方向転換部材側取付手段10を備えている。ここでは、方向転換部材7が、上昇用ワイヤ6aを掛け渡して、上昇用ワイヤ6aの配索方向を転換しており、方向転換部材側取付手段10には、上昇用ワイヤ6aが挿通された保持パイプ8の一端部が取り付けられている。
【0018】
ドラムは、公知のドラムであり、上昇用ワイヤ6a及び下降用ワイヤ6bの他端をそれぞれ連結する公知のワイヤ端末連結部(不図示)と、上昇用ワイヤ6a及び下降用ワイヤ6bの他端付近をそれぞれ巻き取るための公知のワイヤ溝(不図示)とを有し、ドラムハウジング5内において往復回転可能に収容される。
【0019】
駆動部3は、ドラムを往復回転可能なものであれば特に限定されないが、モーター等を用いることができる。そして、駆動部3がドラムを一方向に回転させることにより、上昇用ワイヤ6aがドラムに巻き取られるとともにドラムから下降用ワイヤ6bが送り出され、キャリアプレート2が上昇方向に移動させられる。一方、駆動部3がドラムを逆方向に回転させることにより、下降用ワイヤ6bがドラムに巻き取られるとともに上昇用ワイヤ6aがドラムから送り出され、キャリアプレート2が下降方向に移動させられる。
【0020】
ドラムハウジング5は、保持パイプ8の他端部を取付可能なドラムハウジング側取付手段11と、ドラムを収容可能な収容部12と、収容部12に収容されたドラムへ外部から挿入された上昇用ワイヤ6a及び下降用ワイヤ6bを案内する各ワイヤ案内溝13a,13bとを有している。
【0021】
保持パイプ8は、方向転換部材7とドラムハウジング5との間に配索されたワイヤ6を挿通可能な筒状を呈したものであり、ワイヤ6が挿通された状態でワイヤ式ウインドレギュレータ1の荷姿を保持することができる。ここでは、保持パイプ8に上昇用ワイヤ6aを挿通している。保持パイプ8は、方向転換部材7とドラムハウジング5との間に配索されたワイヤ6が挿通された状態で、保持パイプ8の両側の端部が、方向転換部材7の方向転換部材側取付手段10とドラムハウジング5のドラムハウジング側取付手段11とに挿入されて方向転換部材7とドラムハウジング5とにそれぞれ取り付けられている。
【0022】
保持パイプ8は、
図2に示すように、方向転換部材7の方向転換部材側取付手段10又はドラムハウジング5のドラムハウジング側取付手段11に取り付けられる遊嵌部14を有しており、遊嵌部14が取り付けられる方向転換部材側取付手段10又はドラムハウジング側取付手段11は、遊嵌部取り付け手段22を有している。なお、本発明の目的が達成できるのであれば、遊嵌部14は保持パイプ8のどちらか一方の端部に設けられたものであってもよい。
遊嵌部14と遊嵌部取付手段22とによって、保持パイプ8が遊嵌するように、すなわち遊びがある状態で嵌るように方向転換部材側取付手段10又はドラムハウジング側取付手段11に取り付けられる。ここでは、保持パイプ8は、ドラムハウジング側取付手段11に取り付けられる遊嵌部14を他端部に有し、方向転換部材側取付手段10に取り付けられる取付部21を一端部に有している。また、ドラムハウジング側取付手段11は遊嵌部取付手段22を有している。なお、保持パイプ8の素材としては、合成樹脂等が挙げられる。
本発明の方向転換部材側取付手段10又は、ドラムハウジング側取付手段11は、保持パイプ8との取り付けにおいて、本発明の目的を達成することができる範囲で保持パイプ8が方向転換部材側取付手段10又はドラムハウジング側取付手段11内において移動可能となるように取り付けられるものであれば良いが、
図1の実施態様例においては、保持パイプ8の遊嵌部14が遊嵌可能に取り付けられる遊嵌部取付手段22(11)として設けられている。
【0023】
遊嵌部14は、保持パイプ8の他端部に形成され、保持パイプ8の末端の端部には大径部15が形成され、大径部15を除いた末端部付近には保持パイプ8の大径部15及び中間部17よりも径が小径となるように縮径することにより小径部16が形成されている。遊嵌部14の前記縮径は、大径部15より径が小さくなる加工が施されるものであればよく、表面の削り取り、圧縮加工等により行う。
【0024】
ドラムハウジング側取付手段11は、
図3〜
図5に示すように、保持パイプ8の遊嵌部14を挿入可能な筒状を呈し、ドラムハウジング5の外部から遊嵌部14を挿入可能な位置に配置され、内部空間18がワイヤ案内溝13aに連通し、遊嵌部取付手段22を有している。遊嵌部取付手段22は、遊嵌部14の大径部15と係止可能な係止手段19を有している。
【0025】
係止手段19は、遊嵌部取付手段22の内壁20から内側に突出し、大径部15が乗り越えることが可能な突条、突起等の突出形状を形成している。係止手段19は、
図6に示すように、対向する内壁20、20にそれぞれ係止手段19、19が設けられており、遊嵌部取付手段22において係止手段19、19との間の距離が、遊嵌部14の大径部15の外径よりも小さく、小径部16の外径よりも大きくなるように形成されている。これにより、小径部16が係止手段19、19との間に位置する状態となるまで保持パイプ8の他端部の遊嵌部14をドラムハウジング側取付手段11内に挿入した状態において、係止手段19、19との間を小径部16が移動可能となり、保持パイプ8が軸方向に移動可能となる。
【0026】
また、遊嵌部14の大径部15は、小径部16から、遊嵌部取付手段22に取り付けられる保持パイプ8の他端部側に形成されており、上記のように保持パイプ8の他端部の遊嵌部14を遊嵌部取付手段22に挿入した状態において、係止手段19と係止することで、保持パイプ8がドラムハウジング側取付手段11から方向転換部材側取付手段10に向かって移動することを規制される。つまり、保持パイプ8がドラムハウジング側取付手段11から離脱する方向へ移動することが規制される。また、大径部15の先端と奥壁23とが係合することで、ドラムハウジング側取付手段11への挿入方向への移動が規制されている。このため、保持パイプ8がドラムハウジング側取付手段11から抜去されてしまうことを防止することができる。なお、本実施形態では、係止手段19は内壁20、20にそれぞれ設けられているが、大径部15と係止可能であれば対向する内壁20、20の何れか一方にのみに設けれても良い。
【0027】
以下、ワイヤ式ウインドレギュレータ1の更なる構成及び作用効果について、方向転換部材7とドラムハウジング5との間の距離の検査であるピッチ検査に言及しつつ説明する。
【0028】
レールレスタイプのワイヤ式ウインドレギュレータ1では、ドラムハウジング5と方向転換部材7とを車体に取り付ける前において、ガイドレール等のドラムハウジング5と方向転換部材7と間の距離を固定する手段を有していないため、ドラムハウジング5と方向転換部材7との間の距離が固定されていない。このため、ワイヤ6に対して所定の引張力を付与した状態において、方向転換部材7とドラムハウジング5との間の距離が適切であるか否かを検査する必要がある。具体的には、方向転換部材7とドラムハウジング5との間に配索されたワイヤ6の配索経路が最も長い状態となるような所定の引張力によって方向転換部材7をドラムハウジング5から遠ざかる方向に移動させた状態において、方向転換部材7とドラムハウジング5との間の距離が適切であるか否かを検査する。しかし、方向転換部材7とドラムハウジング5との間に配索されたワイヤ6の長さが適切な場合であっても、ドラムハウジング5に取り付けられた保持パイプ8が方向転換部材7の移動に追従して移動しない場合には、方向転換部材7とドラムハウジング5との間の距離が適切でないと判断せざるを得ない場合がある。また、保持パイプ8が方向転換部材7の移動に追従して移動した場合であっても、ドラムハウジング5から保持パイプ8が抜けてしまうと、再度挿入する必要がある。特に、挿入に力を要する場合には特に時間がかかってしまう。従って、これらにより生産性が低下するという問題がある。
【0029】
上記問題に対処するために、ワイヤ式ウインドレギュレータ1では、方向転換部材7とドラムハウジング5との間に配索されたワイヤ6の配索経路が最も長い状態となるような所定の引張力によって方向転換部材7をドラムハウジング5に対して移動させた際には、方向転換部材7の移動に追従して保持パイプ8が移動可能となるように、ドラムハウジング側取付手段11に取り付けられた保持パイプ8の端部がドラムハウジング側取付手段11内において移動可能であるという構成を採用している。
【0030】
より詳細には、保持パイプ8の遊嵌部14を遊嵌部取付手段22に挿入した状態において、方向転換部材7とドラムハウジング5との間に配索されたワイヤ6の配索経路が最も長い状態となるような所定の引張力によって方向転換部材7をドラムハウジング5に対して移動させた際には、保持パイプ8の小径部16により保持パイプ8の他端部に形成された遊嵌部14がドラムハウジング側取付手段11において軸方向に移動可能となり、保持パイプ8の大径部15が遊嵌部取付手段22の係止手段19と係止することにより、遊嵌部14が方向転換部材側取付手段10に向かって移動することを規制される。これにより、方向転換部材7の前記移動に追従して保持パイプ8がドラムハウジング側取付手段11内から抜け出ない範囲で移動可能となるため、保持パイプ8の端部がドラムハウジング側取付手段11内において移動可能となる。このため、所定の引張力によって方向転換部材7をドラムハウジング5に対して移動させて行う検査において方向転換部材7の移動が阻害されてしまうことがなく、また、ドラムハウジング側取付手段11から保持パイプ8が抜け出ることがなく、生産性の低下を抑制することができる。
【0031】
ここで、方向転換部材7とドラムハウジング5との間に配索されたワイヤ6の配索経路が最も長い状態となるような前記所定の引張力とは、方向転換部材7をドラムハウジング5に対して移動させた際に、キャリアプレート2の前記ワイヤ端末連結部において、前記ワイヤ端末連結部の前記ワイヤ6が延出される側の内壁と上昇用ワイヤ6a及び下降用ワイヤ6bの各一端との距離が略最短となることによって、方向転換部材7とドラムハウジング5との間に配索されたワイヤ6の配索経路が略最長となるような所定の引張力のことである。なお、前記ワイヤ端末連結部において上昇用ワイヤ6a及び下降用ワイヤ6bの弛みを取るための前記弾性部材を取り付けた場合には、前記所定の引張力が付与されたときに、当該バネが略最も圧縮された状態となる。
【0032】
また、ワイヤ式ウインドレギュレータ1では、方向転換部材7とドラムハウジング5とを車体へ取り付ける際には、方向転換部材7とドラムハウジング5との距離が車体への取付可能な距離範囲であって、ワイヤ6の張力が窓ガラスを昇降させるのに必要な張力となるような長さ範囲において、前記保持パイプ8が移動可能となるようにドラムハウジング側取付手段11に取り付けられた保持パイプ8の端部がドラムハウジング側取付手段11内において移動可能である。
【0033】
ここでの、ワイヤ式ウインドレギュレータ1を車体へ取り付け可能とするには、車体側の方向転換部材7の取付位置とドラムハウジング5の取付位置との間の距離には通常公差を含むので、少なくともこの公差を吸収するためにドラムハウジング5と方向転換部材7との位置を調節することができることが必要となる。また、前記公差の範囲で位置を調節できたとしても、前記ワイヤ6が窓ガラスを上昇・下降させるのに必要な張力を有した状態で取り付けられる必要があるため、その張力となる長さ範囲でドラムハウジング5と方向転換部材7との位置を調節する必要がある。従って、保持パイプ8の他端部が、ドラムハウジング側取付手段11内において少なくともその公差を含む距離の範囲内では移動可能あり、かつ、ワイヤ6の張力が窓ガラスを昇降させるのに必要な張力となるような範囲においてドラムハウジング側取付手段11内で移動可能となるように、小径部16と大径部15とが設けられている。これにより、方向転換部材7とドラムハウジング5とを車体へ取り付ける際に、車体の方向転換部材7とドラムハウジング5との取り付け位置に合わせて取り付けることができる。そのため、方向転換部材7とドラムハウジング5との距離を設置可能な適切な距離とすることができ、かつ、ワイヤ6の張力を車両の窓ガラスを上昇・下降させるのに必要な張力とすることできる。また、大径部15と係止手段19とによって保持パイプ8の移動が規制されるので、車両へ取り付けの際に、ドラムハウジング5と方向転換部材7の位置調節をしている最中に保持パイプ8がドラムハウジング側取付手段11から抜けることがない。
【0034】
また、ワイヤ式ウインドレギュレータ1は、方向転換部材7とドラムハウジング5との位置関係が窓ガラスの昇降方向に沿って配置されるように車体へ取り付けられる。このため、方向転換部材7とドラムハウジング5とを窓ガラスの昇降方向において車体へ取り付ける場合に特に適している。例えば、方向転換部材7に対して窓ガラスの下降方向に所定の間隔を置いてドラムハウジング5が配置されるように方向転換部材7とドラムハウジング5とを車体へ取り付ける場合に特に適している。
【0035】
なお、上記の実施形態では、ワイヤ式ウインドレギュレータ1は、係止手段19が、ドラムハウジング5のドラムハウジング側取付手段11に設けられ、遊嵌部14の大径部15が、小径部16から、ドラムハウジング側取付手段11に取り付けられる保持パイプ8の端部側に形成されているものであるが、必ずしもこのようなものである必要はなく、係止手段19が、方向転換部材7の方向転換部材側取付手段10に設けられ、遊嵌部14の大径部15が、小径部16から、方向転換部材側取付手段10に取り付けられる保持パイプ8の端部側に形成されているものであっても良い。このようなワイヤ式ウインドレギュレータ1では、保持パイプ8の小径部16が係止手段19と対向するような状態となる位置まで保持パイプ8の一端側の遊嵌部14を方向転換部材側取付手段10内に挿入した状態において、小径部16が方向転換部材側取付手段10において移動可能となり、保持パイプ8が軸方向に移動可能となる。また、方向転換部材7とドラムハウジング5との間に配索されたワイヤ6の配索経路が最も長い状態となるような所定の引張力によってドラムハウジング5を方向転換部材7に対して移動させた際には、ドラムハウジング5の移動に追従して保持パイプ8が移動可能となるように、保持パイプ8は、方向転換部材側取付手段10において移動可能である。また、方向転換部材7とドラムハウジング5とを車体へ取り付ける際には、保持パイプ8は、方向転換部材7とドラムハウジング5との距離が車体への取付可能な距離範囲であって、ワイヤ6の張力が窓ガラスを昇降させるのに必要な張力となるような長さ範囲において、方向転換部材側取付手段10内において移動可能である。
【0036】
また、上記の実施形態では、ワイヤ式ウインドレギュレータ1は、遊嵌部14が、保持パイプ8の末端部を除いた末端部付近を保持パイプ8の端部及び中間部よりも径が小径となるように縮径することにより形成された小径部16と、小径部16よりも径が大きい、保持パイプ8の末端部である大径部15とを有しているものであるが、必ずしもこのようなものである必要はなく、遊嵌部14が、保持パイプ8の末端部の径を保持パイプ8の末端部以外の部分よりも大きくなるように拡径することによって形成された大径部15と、保持パイプ8の末端部以外の部分である小径部16とを有しているものであっても良い。また、保持パイプ8が抜けることも抑制されるので搬送時のワイヤ式ウインドレギュレータ1の荷姿保持も良好である。
【0037】
なお、本発明の実施の形態は上述の形態に限るものではなく、本発明の思想の範囲を逸脱しない範囲で適宜変更することができる。
【産業上の利用可能性】
【0038】
本発明に係るワイヤ式ウインドレギュレータ1は、車両のドア等に適用することができる。
【符号の説明】
【0039】
1 ワイヤ式ウインドレギュレータ
2 キャリアプレート
3 駆動部
5 ドラムハウジング
6 ワイヤ
6a 上昇用ワイヤ
6b 下降用ワイヤ
7 方向転換部材
8 保持パイプ
10 方向転換部材側取付手段
11 ドラムハウジング側取付手段
14 遊嵌部
15 大径部
16 小径部
19 係止手段
22 遊嵌部取付手段