特許第6083989号(P6083989)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ パイオニア株式会社の特許一覧 ▶ 東北パイオニア株式会社の特許一覧 ▶ ダイニック株式会社の特許一覧

<>
  • 特許6083989-吸湿性成形体 図000003
  • 特許6083989-吸湿性成形体 図000004
  • 特許6083989-吸湿性成形体 図000005
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6083989
(24)【登録日】2017年2月3日
(45)【発行日】2017年2月22日
(54)【発明の名称】吸湿性成形体
(51)【国際特許分類】
   H05B 33/04 20060101AFI20170213BHJP
   H01L 51/50 20060101ALI20170213BHJP
【FI】
   H05B33/04
   H05B33/14 A
【請求項の数】7
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2012-209763(P2012-209763)
(22)【出願日】2012年9月24日
(65)【公開番号】特開2014-67485(P2014-67485A)
(43)【公開日】2014年4月17日
【審査請求日】2015年6月9日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005016
【氏名又は名称】パイオニア株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000221926
【氏名又は名称】東北パイオニア株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000109037
【氏名又は名称】ダイニック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】特許業務法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】高橋 正樹
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 雄司
(72)【発明者】
【氏名】大橋 裕樹
(72)【発明者】
【氏名】宮島 梨江
(72)【発明者】
【氏名】大山 兼人
【審査官】 大竹 秀紀
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−142099(JP,A)
【文献】 国際公開第2004/006628(WO,A1)
【文献】 欧州特許出願公開第02445029(EP,A1)
【文献】 特開2007−000817(JP,A)
【文献】 国際公開第2009/139292(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05B 33/04
H01L 51/50
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
吸湿剤及びバインダーを含有する吸湿性成形体であって、前記吸湿剤はSrOとCaOとの混合物からなり、SrOとCaOとの重量比はSrO:CaO=50.0〜87.5:50.0〜12.5であることを特徴とする吸湿性成形体。
【請求項2】
前記CaOは、比表面積10m/g以上である、請求項1に記載の吸湿性成形体。
【請求項3】
前記吸湿剤の含有量が30〜95重量%である、請求項1又は2に記載の吸湿性成形体。
【請求項4】
前記バインダーは、樹脂成分である、請求項1〜3のいずれかに記載の吸湿性成形体。
【請求項5】
前記樹脂成分は、フッ素系樹脂である、請求項4に記載の吸湿性成形体。
【請求項6】
前記フッ素系樹脂は、フィブリル化されている、請求項5に記載の吸湿性成形体。
【請求項7】
有機EL素子用である、請求項1〜6のいずれかに記載の吸湿性成形体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機EL素子用として有用な吸湿性成形体に関する。
【背景技術】
【0002】
有機ELディスプレイ、照明用有機ELなどの有機EL素子は、超小型化・超軽量化の一途をたどっている。有機EL素子は、封止工程において、UV硬化性樹脂などの樹脂系接着剤を用いて封止が行われる場合がある。ところが、かかる封止方法では、保存中又は使用中にシール材を通過する水分により、発光層と電極層との間での剥離又は構成材料の変質により、ダークスポットと呼ばれる非発光領域が生じ、所望の発光性能が得られなくなるという深刻な問題がある。
【0003】
他方、有機EL素子を組み立てる工程では、全工程にわたって湿度を0に維持することは事実上不可能である。このため、組立工程中に有機EL素子内に侵入した水分を吸湿することが必要不可欠となる。
【0004】
上記課題を解決する技術として、本発明者らは、電子デバイス内に侵入した水分を確実かつ容易に吸湿するCaO、BaO及びSrOの少なくとも1種の吸湿剤と樹脂成分とを含有する吸湿性成形体を開発した(特許文献1)。
【0005】
吸湿剤として、CaO及びSrOは、単独で有機EL素子に使用されるケースは多い。しかしながら、携帯電話用などの非常に薄型且つ小型のディスプレイが要求される場合には次のような問題がある。
【0006】
即ち、吸湿性成形体を有機EL素子に組み込んだ場合を例に挙げると、薄型且つ小型のディスプレイでは使用可能な吸湿性成形体の面積及び体積に制約があるため、CaO単独では吸湿性が不十分となりダークスポットの発生・成長が認められる場合がある。また、SrOを単独で使用した場合にはダークスポットの発生・成長は少ないが、吸湿につれて吸湿性成形体が著しく膨張する。吸湿性成形体は有機EL素子に固定するためにその片面に粘着テープが貼り付けられることがある。吸湿性成形体の膨張が大きい場合には、膨張する吸湿性成形体と膨張しない粘着テープが接着していることによって、吸湿性成形体の表面のうち粘着テープとは反対側にシワが発生する。シワの発生は、近接して配置された有機EL素子と吸湿性成形体とが経時的に接触するという問題を引き起こす。
【0007】
とりわけ吸湿性成形体の著しい膨張に起因するシワの問題は、電子デバイスの安定的な使用及び小型化の要請に応えるための重要な課題である。また、吸湿性成形体を有機EL素子に組み込んだ場合には、吸湿性成形体は極めて水分濃度の少ない筐体内に配置されるため、例えば水分濃度20〜70ppmvのような極低水分濃度の環境下で良好な吸湿性を発揮することが吸湿効率の点で望ましい。
【0008】
従って、従来の吸湿性成形体には更なる改善の余地があり、極低水分濃度の環境下での優れた吸湿性とシワの発生が防止されている低膨張性を兼ね備えた吸湿性成形体の開発が望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】WO2001/088041号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、有機EL素子用として有用な吸湿材料であって、長期に亘り非発光領域の発生・成長を抑制でき、且つシワの発生が防止されている低膨張性を兼ね備えた吸湿性成形体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、吸湿剤として特定の配合割合からなるSrOとCaOとの混合物を採用する場合は、上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0012】
即ち、本発明は、下記の吸湿性成形体及び有機EL素子に関する。
1.吸湿剤及びバインダーを含有する吸湿性成形体であって、前記吸湿剤はSrOとCaOとの混合物からなり、SrOとCaOとの重量比はSrO:CaO=50.0〜87.5:50.0〜12.5であることを特徴とする吸湿性成形体。
2.前記CaOは、比表面積10m/g以上である、上記項1に記載の吸湿性成形体。
3.前記吸湿剤の含有量が30〜95重量%である、上記項1又は2に記載の吸湿性成形体。
4.前記バインダーは、樹脂成分である、上記項1〜3のいずれかに記載の吸湿性成形体。
5.前記樹脂成分は、フッ素系樹脂である、上記項4に記載の吸湿性成形体。
6.前記フッ素系樹脂は、フィブリル化されている、上記項5に記載の吸湿性成形体。
7.有機EL素子用である、請求項1〜6のいずれかに記載の吸湿性成形体。
【0013】
以下、本発明の吸湿性成形体について詳細に説明する。
【0014】
本発明の吸湿性成形体は、吸湿剤及びバインダーを含有する吸湿性成形体であって、前記吸湿剤はSrOとCaOとの混合物からなり、SrOとCaOとの重量比はSrO:CaO=50.0〜87.5:50.0〜12.5であることを特徴とする。
【0015】
上記特徴を有する本発明の吸湿性成形体は、特に吸湿剤がSrOとCaOとの混合物からなり、SrOとCaOとの重量比がSrO:CaO=50.0〜87.5:50.0〜12.5であることにより、極めて低い水分濃度(低露点)の環境下(水分濃度20〜70ppmv)で優れた吸湿性とシワの発生が防止されている低膨張性を示す。よって、粘着テープを貼り付けた後で吸湿性成形体が膨張してもシワの発生がない。従って、例えば、有機EL素子に適用した場合には、長期に亘りダークスポットの発生・成長を抑制できるとともに吸湿性成形体と有機EL素子とが近接して配置されていても経時的な接触を抑制できる。
【0016】
一方、SrOとCaOとの重量比がSrO:CaO=100:0になった場合には、吸湿後の膨張率が著しく大きくなり、粘着テープを貼り付けた時に吸湿性成形体にシワが発生し、有機EL素子に適用する場合での吸湿性成形体厚さの予測が不可能となってしまう問題がある。かかる問題に対して、発明者らは、有機EL素子に最適なSrOとCaOとの重量比がSrO:CaO=50.0〜87.5:50.0〜12.5であることを見出して本発明を完成した。
【0017】
吸湿性成形体の形状は限定的でなく、最終製品の用途、使用目的、使用部位等に応じて適宜設定すれば良く、例えば、シート状、ペレット状、板状、フィルム状、粒状(造粒体)等を挙げることができる。
【0018】
本発明の吸湿剤(SrO及びCaOの混合物)は、重量比がSrO:CaO=50.0〜87.5:50.0〜12.5であればよい。
【0019】
本発明の吸湿剤は、粉末の形態で含有させることが好ましい。この場合、CaO粉末の比表面積(BET比表面積)は、通常10m/g以上、更には30m/g以上、特に40m/g以上であることが好ましい。CaOであれば、例えば、水酸化カルシウムを900℃以下(好ましくは700℃以下、最も好ましくは500℃以下(特に490〜500℃)で加熱して得られるCaO(粉末)を好適に用いることができる。
【0020】
本発明の吸湿剤の平均粒径は限定されないが、CaOは3〜20μmが好ましく、4〜9μmがより好ましい。また、SrOは3〜20μmが好ましく、4〜6μmがより好ましい。なお、本明細書における平均粒径は、日機装社製MT3300EX-IIを用いて測定を行った。また、溶媒にはSrOがトルエン、CaOがエタノールを使用し、SrOに限っては分散剤としてZeneca specialities社製のSolsperse28000を使用し測定を行った。なお、吸湿剤の平均粒径が大きすぎる場合には吸湿性成形体の薄膜化が困難となる場合があり、吸湿剤の平均粒径が小さすぎる場合には吸湿性成形体の成形性が低下するおそれがある。
【0021】
バインダーとしては、吸湿剤を固定させる役目を果たし、吸湿剤の水分除去作用を妨げないものであれば特に限定的でなく、気体透過性高分子材料(即ち、ガスバリアー性の低い高分子材料)である樹脂成分を好適に用いることができる。樹脂成分としては、例えば、フッ素系、ポリオレフィン系、ポリアクリル系、ポリアクリロニトリル系、ポリアミド系、ポリエステル系、エポキシ系、ポリカーボーネート系等の高分子材料が挙げられる。気体透過性は、最終製品の用途、所望の特性等に応じて適宜設定すれば良い。
【0022】
本発明では、これらの樹脂成分の中でも、フッ素系、ポリオレフィン系等が好ましい。具体的には、フッ素系としては、ポリテトラフルオロエチレン、ポリクロロトリフルオロエチレン、ポリビニリデンフルオライド、エチレン−テトラフルオロエチレン共重合体等が挙げられる。ポリオレフィン系としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブタジエン、ポリイソプレン等のほか、これらの共重合体等が挙げられる。これら樹脂成分のうち、本発明では、フッ素系樹脂が好ましい。
【0023】
本発明では、吸湿剤及びバインダーの含有量は適宜設定すれば良いが、通常は吸湿剤及びバインダーの合計量を100重量%として吸湿剤30〜95重量%程度及びバインダー70〜5重量%程度にすれば良い。好ましくは吸湿剤50〜85重量%程度及びバインダー50〜15重量%、最も好ましくは吸湿剤55〜85重量%程度及びバインダー45〜15重量%とすれば良い。
【0024】
本発明では、その効果を妨げない範囲内で、吸湿性成形体に、必要に応じて他の成分を適宜含んでもよい。例えば、ヒドラジド化合物は、特にダークスポットの発生防止又は発生したダークスポットの成長抑制効果に寄与する。ヒドラジド化合物としては特に制限されず、分子中に1個のヒドラジド基を有するモノヒドラジド化合物;分子中に2個のヒドラジド基を有するジヒドラジド化合物;分子中に3個以上のヒドラジド基を有するポリヒドラジド化合物等を包含する。通常は吸湿剤及びバインダーの合計量100重量部に対して1〜15重量部程度とすればよい。
【0025】
本発明では、その効果を妨げない範囲内で、必要に応じて無機材料又は金属材料の粉末を分散させてもよい。急激な温度変化又は湿度変化に対する耐久性等を高めるためには、マイカ、アルミニウム粉等のリーフィング現象を示す粉末(鱗片状粒子)を分散させてもよい。また、導電性の付与や顔料として、ファーネスブラック、チャネルブラック、アセチレンブラック、サーマルブラック等のカーボンブラック粉末、及び活性炭などを分散させてもよい。上記粉末の含有量は特に限定的でないが、通常は吸湿剤及びバインダーの合計量100重量部に対して0.1〜50重量%程度とすれば良い。
【0026】
本発明の吸湿性成形体は、これらの各成分を均一に混合し、所望の形状に成形することによって得られる。その際、吸湿剤は予め十分乾燥させてから配合することが好ましい。また、バインダーとの混合に際しては、必要に応じて加熱して溶融状態としてもよい。成形方法は、公知の成形方法又はフィブリルを成長させるための混練設備を採用でき、公知の成形方法としては、例えばプレス成形(ホットプレス成形等を含む。)、押し出し成形のほか、カレンダー成形等を適用することができる。
【0027】
本発明の吸湿性成形体は、有機EL素子用とする場合には、形状はシート状であることが好ましい。
【0028】
本発明の吸湿性成形体は、バインダーとして樹脂成分を用いる場合には、樹脂成分がフィブリル化されていることが好ましい。フィブリル化によって、いっそう優れた吸湿性を発揮することができる。フィブリル化は、吸湿性成形体の成形と同時に実施しても良いし、成形後の加工により実施しても良い。例えば、樹脂成分と吸湿剤とを乾式混合して得られた混合物を圧延することにより樹脂成分のフィブリル化を行うことができる。なお、ここで言う乾式混合とは水分を使用しない混合方法を意味するが、必要に応じて有機溶剤等を用いてもよい。また例えば、本発明成形体を更に前記のように延伸加工を施すことによってフィブリル化を行うことができる。
【0029】
より具体的には、吸湿剤粉末とフッ素系樹脂粉末(例えば、ポリテトラフルオロエチレン等)とを乾式混合した後、得られた混合物を圧延することによりフィブリル化された吸湿性成形体を製造することができる。圧延又は延伸は、公知の装置を用いて実施すれば良い。フィブリル化の程度は、最終製品の用途、所望の特性等に応じて適宜調整することができる。吸湿剤粉末は、前記の比表面積を有するものを用いることが好ましい。フッ素系樹脂粉末は限定的でなく、公知又は市販のフッ素系樹脂粉末(粒度)をそのまま使用すれば良い。
【0030】
本発明の吸湿性成形体は、吸湿が必要な箇所又は部位に常法により設置すれば良い。例えば、有機EL素子の容器内雰囲気中の水分を吸湿する場合は、容器内面の一部又は全部に吸湿性成形体を固定すれば良い。
【0031】
有機EL素子はガス成分によってもダークスポットやダークエリアと呼ばれる非発光領域が進行することが知られている。よって、吸湿性成形体の固定に使用する粘着テープや接着剤としてはアウトガスの低いものを用いることが望ましい。
【0032】
本発明によれば、有機EL素子内部に侵入した水分を容易かつ確実に除去することができる。また、吸湿に伴う膨張が抑制されていることにより、粘着テープを貼り付けた時に吸湿性成形体が膨張してもシワが発生しないことによって経時的に吸湿性成形体と電子デバイス等とが接触することを防止し、小型化の要請に応えることができる。更に、吸湿性成形体であるため、乾燥手段の設置を機械化することも可能である。そのため雰囲気内に水分が侵入する機会が減り、当初から高い乾燥状態をもつ雰囲気を作り出すことができる。即ち、高い乾燥状態でデバイスを製造できるとともに製造後も確実に水分を除去でき、安定性・信頼性の高いデバイスを工業的規模で提供することが可能となる。
【発明の効果】
【0033】
本発明の吸湿性成形体は、特に吸湿剤がSrOとCaOとの混合物からなり、SrOとCaOとの重量比がSrO:CaO=50.0〜87.5:50.0〜12.5であることにより、例えば、有機EL素子に適用した場合には、長期に亘り非発光領域の発生・成長を抑制できるとともに、吸湿時の低膨張性を兼ね備えているため吸湿性成形体と有機EL素子とが近接して配置されていても経時的な接触を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
図1】本発明の吸湿性成形体に粘着テープが貼り付けられた一例を示す図である。
図2】本発明の吸湿性成形体を配置した有機EL素子の一例を示す図である。
図3】有機EL素子における発光部と非発光部を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0035】
以下に実施例及び比較例を示して本願発明を具体的に説明する。但し、本発明は実施例に限定されない。
【0036】
実施例1〜3及び比較例1〜5
以下のようなシート状の吸湿性成形体を作製した。
【0037】
吸湿剤としてBET比表面積65m/gのCaO粉末とSrO粉末を表1の割合で混合した。CaOは平均粒径6μm、SrOは平均粒径5μmのものを使用した。吸湿剤としてCaO/SrO混合物、樹脂成分としてフッ素系樹脂(ポリテトラフルオロエチレン(PTFE))を用いた。得られた混合物をカレンダーロールでシート状に成形し、その後190℃で乾燥を行い、表1の厚さのシートを得た。尚シート状吸湿性成形体の片面には固定用の粘着テープを貼り付けた。
【0038】
【表1】
【0039】
試験例1(非発光部発生状況の確認)
上記で作製したシート状の吸湿性成形体を封止空間内に配置した有機EL素子について有機EL素子に発生する非発光部発生状況を調べた。
【0040】
非発光部発生状況は、有機EL素子の発光領域における非発光部発生量を測定することにより調べた。図3に示すように、非発光部発生量とは発光領域において発生する非発光領域の一辺での幅である。
【0041】
気温60℃、湿度60%環境下におけるSrO:CaO=0:100%の吸湿性成形体(比較例1)を用いた有機EL素子における1000時間後の非発光部発生量をリファレンス(100)とし、当該リファレンスに対する各サンプルの非発光部発生量の割合を対リファレンス非発光部発生割合として示した。結果を表1に示す。
【0042】
SrOの比率を増やしていくに従い、対リファレンス非発光部発生割合が減少する傾向にあることが分かる。本試験ではリファレンス(比較例1)の非発光部発生量が1辺あたり30〜40μmの幅であり、有機EL素子の画素の両辺の非発光部発生量は60〜80μmとなった。従来の有機EL素子を利用したディスプレイの画素幅は150μmであったが、近年の有機EL素子を利用したディスプレイは画素の高精細化が求められており、最近では100μmの幅を有する画素も求められてきている。画素の幅が100μmの場合、リファレンス(比較例1)だと、残された発光部の幅は20〜40μmであり、発光領域の全体幅に対して発光部が占める幅の割合が半分以下となってしまい、ディスプレイの表示品質が低くなってしまう。一方、SrOの比率が50%以上になると、対リファレンス非発光部発生割合が59%以下、非発光部発生量を35〜47.2μm以下に抑えることができ、画素の幅が100μmの場合であっても発光領域の全体幅に対する発光部の幅の割合を半分以上確保することができ、高精細を求める有機EL素子の表示品質を確保できることが分かった。
【0043】
試験例2(厚み膨張率測定)
上記で作製したシート状の吸湿性成形体を厚さ3mm金属板に貼り付けた。金属板に貼り付ける際にローラー(0.3kg)を使って圧着させ気泡が入らないようにした。尚、上記の作業は乾燥材が水分を吸着しないように「N環境 露点−40℃以下」の湿度雰囲気で実施した。また、作成した試験片は吸湿しないようにアルミ包材に包装した。
【0044】
次に、20℃、65%RHの恒温恒湿室で下記の測定を行った。
【0045】
アルミ包材から試料を取り出した直後に、マイクロメーターで試験片の厚さを測定した。試験片の厚さから金属板の厚みと粘着テープの厚みを差し引いた厚みをt1(これを初期厚さとする。)とした。
【0046】
測定後試料を15分間静置し、15分後の試験片の厚みをマイクロメーターで測定した。試験片の厚みから金属板の厚みと粘着テープの厚みを差し引いた厚みをt2とした。
次式より厚み増加率σを算出した。
【0047】
σ={(t2−t1)/t1 }×100
結果を表1に示す。
【0048】
試験例3(しわの有無の確認)
試験例2の試験後のサンプルの表面状態を目視により観察した。
【0049】
結果を表1に示す。
【0050】
SrOの比率が87.5%まではしわの存在を確認できなかったが、SrOの比率が100%の場合にはサンプルにしわが発生し、有機EL素子に適用する場合での吸湿性成形体厚さの予測が困難となってしまうことが分かった。
図1
図2
図3