(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
卵の代表例である鶏卵は、鶏舎で産卵されてから市場に流通するまでに、重量によりサイズ分けされ、各サイズに応じてパック詰めされる。このサイズ分けおよびパック詰め作業は、一般に、卵の選別充填システムにより自動化されている。そのような鶏卵は、鶏舎で産卵されてから、アメリカントレイと称呼される卵の収容容器(トレイ)に一時的に貯えられ、その後、選別充填システムに供給されるものがある。
【0003】
収容容器から選別充填システムへの卵の供給は、移載装置が行う。移載装置は、収容容器から卵を捕獲し、選別充填システムの卵搬送装置に移載する。卵搬送装置には、卵を受ける卵座が設けられており、卵座の移動により卵座に受けられた卵が搬送される。移載装置は、一般に、複数の吸盤が設けられた吸着部を備え、移載する卵を収容容器から吸盤により吸着する。吸着部は卵を吸着した状態で選別充填システムの卵搬送装置に移転され、搬送装置の上で卵の吸着を解除し、卵を卵座に移載する。
【0004】
ところで、近年、選別充填システムは、大型化、すなわち単位時間当たりの処理能力が増加しており、選別充填システムの搬送装置も搬送速度が増加している。したがって、搬送装置の卵座の移動が高速化する。これにより、移載装置が卵座に卵を移載する際の衝撃も大きくなり、その衝撃により破壊される卵も増える。
【0005】
そのような衝撃を緩和すべく、特許文献1に記載の移載装置では、吸盤が、搬送装置の卵座の移動する方向を含む鉛直面内で、卵座の移動方向に接する円弧に沿って卵座に近づき、卵座に卵を移載する。したがって、吸盤に吸着された卵は、卵座の移動方向と同一方向の速度を有しながら、すなわち卵座に同調しながら卵座に移載される。これにより、卵は、卵座に移載されるときの衝撃を緩和される。特に、特許文献1に記載の移載装置において、卵座の移動方向の吸盤の速度が、円弧の最低位置で最大となるため、円弧の最低位置で卵を卵座に移載させることにより、卵への衝撃を緩和している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、特許文献1に記載の移載装置では、円弧の最低位置で卵を卵座に移載するように卵の吸着を解除(真空破壊)している。しかし、真空破壊は、空気の圧力制御に関し、電気制御、機構制御等に対して時定数が比較的大きく(入力から出力までに時間がかかり)、また時定数に影響を与える外乱も多数ある。よって、真空破壊のタイミングが目的のタイミングに対して狂うことがある。さらに、真空破壊が行われても、吸盤と卵の密着性が高い場合に、吸盤の開口に卵が接着した状態となり、卵の移載タイミングが遅れることがあった。
【0008】
したがって、真空破壊のタイミングによっては、卵が円弧の最低位置で移載されず、卵への衝撃を十分に緩和できないといった問題があった。また、卵の移載タイミングが遅れることにより、卵が移載される目標の卵座の隣の卵座に乗り移ってしまい、隣の卵座の卵に衝突するといった問題があった。
【0009】
本発明は、上記のような、卵を卵座に移載するタイミングに関する問題を解決すべくなされたものであり、その目的は、卵への衝撃を緩和し、目標の卵座に卵を確実に移載することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係る卵の移載装置は、卵の長軸を水平方向に沿わせた状態の卵を搬送すべく移動する複数の卵座に卵を移載する。前記卵の移載装置は、各卵座に卵を移載すべく、卵の長軸を垂直方向に沿わせた状態で卵を吸着し、卵を吸着した状態で前記卵座の移動
方向と同一の方向の速度を有して前記卵座に近づき、所定の位置で卵座から離れるように移動する吸盤と、前記吸盤に連通され、前記吸盤内の圧力を変化させる空圧機構とを含む。前記吸盤は、鉛直方向に伸縮可能な蛇腹の側部を有し、前記空圧機構により負圧に減圧されて卵を吸着した状態で収縮しており、
移動中の前記卵座に近づきながら吸着が解除されることにより、前記蛇腹の側部を伸張しながら卵を
移動中の前記卵座に接触させ、
移動中の前記卵座と協働して長軸を垂直方向に沿わせた状態で卵を挟持し、
移動中の前記卵座から離れるときに前記空圧機構により正圧に与圧されて卵を開放する。
そして、前記卵座は、搬送方向に移動中の複数のローラにより形成されるものである。
【0011】
本発明に係る移載装置によれば、吸盤が、卵座に近づきながら吸着を解除され、伸張しながら卵を卵座に接触させ、接触した卵を卵座と協働して挟持する。その後、吸盤は、所定の位置までは、吸盤を収縮させながら卵を挟持した状態を維持し、所定の位置から吸盤を伸張させながら卵を挟持した状態を維持する。その後、吸盤は、卵座から離れるように移動し、正圧に与圧され、卵を解放する。
【0012】
これにより、卵は、吸盤と卵座とに挟持されながら卵座に移載されるため、吸盤が真空破壊されるタイミングが狂っても、卵が挟持される時間が変動するだけで、卵は吸盤と卵座とに挟持されて安定した状態で卵座に移載される。さらに、卵は、吸盤が正圧に与圧されることで吸盤に接着されることを防止され、確実に目標の卵座に移載される。
【0013】
前記吸盤は、前記卵座に接する仮想的な円弧に沿って前記卵座に近づき、前記円弧の最低位置よりも前に吸着を解除され、前記円弧の最低位置よりも前に卵を前記卵座に接触させて卵を挟持し、前記円弧の最低位置を超えて卵を挟持した状態を維持し、前記円弧の最低位置を超えた後に正圧に与圧されてもよい。
【0014】
この卵の移載装置によれば、円弧に沿って吸盤が卵座に近づき、円弧に沿って卵座から離れるため、卵が真空開放されるタイミングを制御し易く、卵が、吸盤と卵座とに卵を確実に挟持される。これにより、卵は、衝撃を確実に緩和されて卵座に移載される。
【0015】
前記吸盤は、卵座
の移動方向と同一の方向の速度を有して移動するときに、
前記吸盤における前記卵座の移動方向の速度が前記卵座よりも速く設定されていてもよい。
【0016】
この卵の移載装置によれば、吸盤
における卵座の移動方向の速度が卵座よりも
速く設定されているため、吸盤は卵座を追い越すように卵を開放することになる。これにより、卵は吸盤側の端部を移動方向の前方に傾けた状態で吸盤から開放される。したがって、卵は、卵座の上で長軸を水平方向に沿わせた状態に倒れるときの衝撃を緩和される。
【発明の効果】
【0017】
本発明の卵の移載装置によれば、卵への衝撃を緩和し、目標の卵座に卵を確実に移載することができる。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明の実施の形態に係る卵の移載装置1について説明する。以下では、鶏卵の移載装置について説明するが、移載装置はアヒル等の他の卵の移載に用いられてもよい。
【0020】
本発明の第1の実施の形態に係る卵の移載装置1は、
図1〜3に示すように、卵の選別充填システムSに組み込まれ、または併設される。卵の選別充填システムSとは、卵を重量でサイズ別に分類(選別)し、パック詰め(充填)するシステムである(たとえば、特開2011−142880号公報)。移載装置1は、選別充填システムSに卵Eを供給すべく用いられる。
【0021】
本発明の実施の形態に係る移載装置1は、トレイ20に充填された選別前の複数の卵Eをローラコンベアのような卵搬送装置3に移載する。複数の卵Eを充填されたトレイ20は、選別充填システムSの前の工程から、トレイ搬送装置2により移載装置1の付近まで搬送される(
図1および2参照)。また、卵搬送装置3の先には、卵を分類するための計量装置(図示しない)等が設けられている。
【0022】
トレイ搬送装置2は、矢印aの向きにタクト搬送によりトレイ20を搬送するベルトコンベアである。トレイ20は、卵Eを充填された状態で搬送され、搬送路の途中の吸着位置A(
図2参照)に置かれる。移載装置1は、吸着位置Aに置かれたトレイ20から卵Eを吸着し、卵搬送装置3の移載位置B(
図2参照)において、卵搬送装置3に移載する。トレイ搬送装置2は、移載装置1が卵Eを吸着するまで、トレイ20を吸着位置Aに停止させ、移載装置1が卵Eを卵移載装置3の移載位置に移転した後に、次のトレイ20を吸着位置Aに搬送する(
図2参照)。
【0023】
卵搬送装置3は、矢印bの方向に並ぶ複数のローラ30を備え、矢印bの向きにローラ30を移動させる。卵搬送装置3は、隣り合う一対のローラ30で卵Eを挟持し、ローラ30を移動させることにより卵Eを搬送する。すなわち、一対のローラ30は、卵Eを挟持し搬送する卵座32を形成する(
図2参照)。一対のローラ30が移動方向と直交する方向に延在することにより、卵座32は、移動方向と直交する方向に複数の卵が並べて載置される空間として形成されるため、一対のローラがローラ30の延在方向に複数の卵座32を形成する(
図1および
図2参照)。複数の卵座32は、卵Eが長軸を水平方向に沿わせた状態で、卵Eを安定して保持する。
【0024】
卵搬送装置3には、チェーンのような一対の無限軌道体(図示しない)が間隔をおいて設けられており、その間隔に複数のローラ30が配置され、各ローラ30の両端が前記無限軌道体に結合されている。したがって、前記無限軌道体が回転することにより、前記無限軌道体に結合されたローラ30が移動し、卵Eが矢印bの方向へ搬送される。前記無限軌道体は、モータのような動力源(図示しない)から動力を受けて回転する。
【0025】
移載装置1は、トレイ20に充填された複数の卵Eを吸着する複数の吸盤10と、吸盤10を支持する支持体12と、支持体12を吸着位置Aから移載位置Bに移転させる移転機構14と、支持体14を移載位置で円弧運動させる回動機構16と、吸盤の内部の圧力を変化させる空圧機構(図示しない)とを備える。
【0026】
移転機構14は、
図3に示すように、トレイ搬送装置2と卵搬送装置3との間に設けられた一対の支柱142と、両支柱142の上端部に渡って設けられた支軸144と、各支柱142に対して支軸144を軸として回転可能に支持された一対の回転アーム146と、回転アーム146の一端から下方に延びて、回動機構を介して支持体を支持する一対の支持アーム148と、回転アーム146を回転させる第1の駆動部(図示しない)とを備える。
【0027】
一対の支柱142は、吸着位置Aと移載位置Bとを結ぶ方向に直行する方向に間隔をおいて配置されており、回転アーム146は、吸着位置Aおよび移載位置Bの間で支持体12を往復運動させるべく、支軸144を中心として略半円の軌跡を描くように往復する。支持アーム148は、回転アーム146に対して回転自在に結合されており、回転アーム146がいずれの位置のときでも、鉛直方向に沿った姿勢を維持される。
【0028】
回動機構16は、支持アーム148に水平に支持された板状部材160と、支持体12を回動可能に支持する回動部材160aと、回動部材160aを駆動する第2の駆動部(図示しない)とを備える。板状部材160は、一対の支持アーム148に直角に結合されている。したがって、支持アーム148が鉛直方向の姿勢を維持されることにより、板状部材160は、水平方向に沿った姿勢を維持される。
【0029】
回動部材160aは、板状部材160に対して回動可能に取り付けられ、板状部材160に対して平行に支持体12を軸止めする。回動部材160aは、前記第2の駆動部により、移転機構14の回転アーム146の前記略半円の軌跡と直交する方向に、板状部材160に対して回動する。
【0030】
これにより、支持体12は、回動部材160aが板状部材160に対して回動すると、板状部材160に平行な状態、すなわち水平方向の姿勢を維持して回動する。前記第2の駆動部は、モータまたはシリンダーのような駆動機構である。本実施の形態において、回動部材160aは、板状部材160および支持体12の両側に各1つずつ設けられている。しかし、板状部材および支持体の両側のそれぞれに複数の回動部材を設けてもより。
【0031】
また、支持体12は、トレイ20に充填された複数の卵Eの配置に対応し、卵の数と同数の吸盤10を支持する。図示の例では5行×6列で30個の卵Eがトレイ20に充填されているため、支持体12は、5行×6列で30個の吸盤10を支持する。
【0032】
また、支持体12は、複数の吸盤10間のピッチP(
図3参照)を変更するピッチ変換機構(図示しない)を備え、吸着位置Aにおいて、トレイ20に充填された卵のピッチに対応したピッチPaで複数の吸盤10を支持し、また、移載位置Bにおいて、トレイ20のピッチよりも広いピッチPbで複数の吸盤10を支持する(
図2参照)。
【0033】
支持体12に支持される各吸盤10は、卵Eに接触する開口100と、開口100に連続する蛇腹の側部102とを有する。吸盤10は、蛇腹の側部102が上下方向に沿うように支持体12に支持されており、鉛直方向に伸縮可能とされている(
図4参照)。複数の吸盤10は、支持体12が水平方向の姿勢を維持されることにより、相互に概同じ高さ位置を維持される。
【0034】
各吸盤10は、
図5に示すように、移載位置Bにおいて、回動機構16が支持体12を回動することにより、卵搬送装置3の搬送方向を接線とする円弧Cに沿って移動する。これにより、吸盤10は、卵搬送装置3の卵座32の移動(ローラ30の移動)に同調して、すなわち卵座32の移動方向と同一の方向の速度を有して、卵座32に近づき、円弧Cの最低位置V4を通過した後は、卵座32から離れるように移動可能である。
【0035】
前記空圧機構は、いわゆるブロアを含み、前記ブロアの吐出口または吸引口から支持体12を介して各吸盤10に連通しており、各吸盤10内の圧力を負圧、大気圧または正圧に変化させる。各吸盤10は、前記ブロアの吸引口に接続された状態で減圧され、ブロアから切断された状態で大気圧に解放され、吐出口に接続された状態で与圧される。ブロアの吸引口もしくは吐出口への接続またはブロアからの切断は電磁弁を切り替えることにより行われる。各吸盤10は、開口102を卵Eに密着させた状態で、前記空圧機構が吸盤10内を負圧に減圧し、かつ減圧状態を維持することにより、卵Eを吸着することができる。吸盤10は、卵Eを吸着した状態で、蛇腹の側部102が最も収縮した状態となる(
図4(B)参照)。
【0036】
前記ブロアは、前記電磁弁により減圧、与圧の動作を制御される。前記電磁弁は、前記ブロアに、吸着位置Aに到達した支持体12を検知して減圧の動作をさせる。すなわち、吸盤10が前記ブロアに接続される。また、前記電磁弁は、移載位置Bに達した支持体12が回動する動作に応じて、真空開放(減圧の動作解除)、または与圧の動作をさせる。すなわち、吸盤10は、前記ブロアから切断、または前記ブロアの吐出口に接続される。前記ブロアは、卵搬送装置3の搬送に同期されており、電磁弁の切り替えが卵座32の移動に適合される。
【0037】
次に、本実施の形態に係る卵の移載装置の動作について説明する。
【0038】
複数の卵Eを充填されたトレイ20は、タクト搬送でトレイ搬送装置2の吸着位置Aまで搬送される(
図1および2参照)。トレイ20が吸着位置Aにおかれた状態で、移載装置1は、移転機構14により支持体12を吸着位置Aまで移動する。
【0039】
このとき、卵Eは長軸を上下方向に沿わせた状態でトレイ20に充填されており、支持体12に支持された複数の吸盤10は、対応する卵の上端(一般には鈍端)に開口100を密着させる(
図4A参照)。開口100を密着させた状態で前記空圧機構により吸盤10の内部が負圧に減圧される。すなわち、吸盤10は、ブロアの吸引口に接続される。これにより、吸盤10は、長軸を上下方向に沿わせた状態で卵Eを吸着する。卵を吸着した吸盤10は、蛇腹の側部102を収縮させる(
図4B参照)。
【0040】
吸盤10が卵Eを吸着した状態で、支持体12は、移転機構14により吸着位置Aから移載位置Bまで移動される(
図2のX方向)。吸着位置Aから移載位置Bに移動するまでに、複数の吸盤およびこれに吸着された卵は、前記ピッチ変換機構により相互のピッチがPaからPb変更される(
図2参照)。移載位置Bにおいて、移転機構14は、卵の下端が卵搬送装置3の卵座32から所定の間隔をおいた状態となる位置で一時的に停止する(
図5のV1の位置)。このとき、吸盤は最も収縮した第1の状態L1となっている。
【0041】
移転機構14が一時的に停止した状態で、回働機構16が動作し、支持体12を介して吸盤10を円弧Cに沿って移動させる(
図2のY方向)。これにより、卵座32と吸盤10およびこれに吸着された卵Eとは、同調、すなわち、同一方向(矢印bの方向)の速度を有して移動する。ここで、卵Eが所定の卵座32に移載されるように、回働機構16は、円弧の移動動作を開始するタイミングを調整される。
【0042】
円弧Cに沿って移動する際に、吸盤10は、円弧Cの最低位置に達する前、すなわち卵座32に近づきながら吸着が解除(真空破壊)される(
図5のV2の位置)。このとき、吸盤10は、前記ブロアから切断されており、真空破壊により伸張し、第1の状態L1よりも長い第2の状態L2になる。
【0043】
その後、吸盤10は、円弧Cに沿って移動し、蛇腹の側部102を伸張させながら卵を卵座に接触させる(
図5のV3の位置)。これにより、吸盤10は、卵座32と協働して長軸を垂直方向に沿わせた状態で卵を挟持する。支持体12は、移載位置Bにおいて、卵Eが円弧Cの最低位置に達する前に、卵の下端を卵座に接触する高さに調整されている。卵が卵座32に接した後は、吸盤10は円弧Cの最低位置に向かって収縮しながら移動する。したがって、吸盤10は、第2の状態L2よりも短い第3の状態L3になる。
【0044】
その後、吸盤10は、円弧Cの最低位置(
図5のV4の位置)に向けて移動する。円弧Cの最低位置において、吸盤10は、卵Eを卵座32と挟持するように、さらに収縮し、第3の状態L3よりも短い第4の状態L4になる。このとき、吸盤10と卵座32は、卵座の移動方向(矢印bの方向)に、略同一の速度で移動する。
【0045】
吸盤10は、円弧Cの最低位置(
図5のV4の位置)を超えると、円弧Cに沿って卵座32から離れる方向に移動する。しかし、最低位置V4を超えても、吸盤10は、伸張して、しばらくの間、卵座32と協働で卵を挟持する(
図4のV5の位置)。このとき、吸盤10は、第4の状態L4より伸張した第5の状態L5になる。
【0046】
その後、吸盤10は、開口100が卵Eから分離することにより、卵Eを開放する(
図4のV6の位置)。吸盤10から解放された卵Eは、卵座32が長軸を水平方向に寝かせた状態で卵Eを搬送するため、長軸が鉛直方向から水平方向に変化するように傾倒する。このとき、吸盤10は、自然長である第6の状態L6となる。
【0047】
吸盤10は、最低位置V4を超えて卵を開放するまで(V4〜V6の間)に、内部を正圧に与圧、すなわち前記ブロアの吐出口に接続されるにより、吸盤10の開口100と卵Eとが確実に分離される。これにより、卵Eが、吸盤10に密着したまま隣の卵座に移動してしまうことにより、隣の卵に衝突することを防止できる。
【0048】
卵搬送装置3の卵座32に移載された卵Eは、長軸を水平方向に向けて卵搬送装置3により次工程に搬送される。
【0049】
以上のように、本発明の実施の形態に係る卵の移載装置によれば、卵Eは、吸盤10と卵座32とに挟持されながら卵座に移載される。そのとき、たとえば、吸盤が真空破壊されるタイミングが狂っても、卵Eの挟持される時間は変動するが、円弧Cのいずれかの位置で、卵Eは吸盤10と卵座32とに挟持されて安定した状態で卵座に移載される。さらに、卵Eは、吸盤10内が正圧に与圧されることで吸盤10に接着されることを防止され、確実に目標の卵座に移載される。
【0050】
次に、本発明の第2の実施の形態に係る卵の移載装置は、回動機構の動作速度、すなわち吸盤が円弧に沿って移動する速度について異なる以外は、第1の実施例と同様の構成を有する。したがって、同一の構成については同一の符号を付して、説明は省略する。
【0051】
本発明の第2の実施の形態に係る移載装置1において、吸盤10は、円弧Cの最低位置において、卵座の移動方向に向かう速度を卵座よりも大きく設定されている。すなわち、本実施の形態にかかる移載装置は、第1の実施の形態にかかる移載装置に比較して、回動機構16の動作が速い。吸盤10は、
図6に示すように、円弧Cの最低位置付近、卵座32よりも矢印bの方向に大きい速度を有するため、卵座32に卵Eを移すとき、吸盤10は卵座32を追い越すように移動する。
【0052】
卵Eは、真空破壊されても吸盤10に密着しているため、吸盤10が卵座32を追い越すように移動することにより、卵Eは上端を前方に向けて傾斜した状態(
図6のW5の状態)で卵座に移される。この状態で卵Eの開放が行われることにより、卵Eが長軸を水平方向に沿わすように傾倒し衝撃を緩和できる。
【0053】
上記の実施の形態において、吸盤10は、円弧Cの最低位置、すなわち所定の位置に到達するまでに長軸を垂直方向に吸わせた状態で、円弧Cに沿って、卵を保持し、卵座に同調ながら近づくように移動する。その後、吸盤10は、円弧Cの最低位置を通過した後に、円弧Cに沿って、卵座32から離れるように移動する。しかし、吸盤10は、円弧Cに沿って移動しなくてもよい。
【0054】
例えば、吸盤は、V字の軌跡を描くように、V字の折れ曲がり位置を所定の位置として、卵座に近づき、かつ卵座から離れてもよい。さらに、吸盤10は、他の軌跡によって卵座に近づき、かつ卵座から離れてもよい。吸盤10の軌跡は、吸盤10が取り付けられた支持体12の移動により決定される。
【0055】
卵が、吸盤と卵座とにより挟持されるように支持体の移動を制御すれば、吸盤がどのような軌跡であっても、移載による卵への衝撃を緩和することができる。
【0056】
また、上記の実施の形態において、真空破壊は、吸盤をブロアから切断することにより行っている。しかし、吸盤をブロアの吸引口から吐出口に直接切り替えても、負圧から与圧に移り変わる際に、吸盤は一時的に大気圧になる。したがって、本発明の実施の形態による電磁弁の切り替えに関して、吸盤をブロアの吸引口から吐出口に直接切り替えてもよい。このとき、切り替えのタイミングは、卵座の移動に適合される。この場合、吸盤の移動の略最低位置で吸盤内が大気圧になるように切り替えのタイミングが調整される。