(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、このような構造ではコイルばねを係合部に挿入していく過程で、コイルばねによって発生する力の方向が、挿入当初は挿入方向と逆向きであるのに対して、内側に折れ曲がった所から急激に反対の挿入方向へと変化してしまう。そうすると、作業者に急激な力の変化を与えてしまうことで、指を挟んでしまったり、化粧板が装置本体へと思いがけない勢いで衝突してしまったりなどの問題が生じていた。
【0006】
そこで、本発明は、送風装置本体に取り付けられる部材を取り付ける過程において、作業者に急激な力の変化を与えることを防止する取付具、取付構造およびその取付具、取付構造を備えた送風装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、一の部材に備えられ、その一の部材を他の部材の所定の位置に取り付けるため他の部材に備えられた係合部に係合させる取付具であって、弾性力を発生させるばね部と、そのばね部の一端から延伸し、係合部の第一部分を摺動する第一摺動部と、ばね部の他端から延伸し、係合部の第二部分を摺動する第二摺動部と、を備え、第一摺動部と第二摺動部の形状が異な
り、第一摺動部は、ばね部の一端から延伸する第一腕部と、第一腕部からさらに延伸し、第一腕部との接続部分で第二摺動部に接近する方へ屈曲または湾曲する第一手部と、を有し、第二摺動部は、ばね部の他端から延伸する第二腕部と、第二腕部からさらに延伸し、第二腕部との接続部分で第一摺動部に接近する方へ屈曲または湾曲する第二手部と、を有し、第一腕部と第二腕部の長さが相違し、第一腕部と第二手部の長さがほぼ同一であり、第二腕部と第一手部の長さがほぼ同一であることを特徴とする取付具が提供される。
これによれば、部材を装置本体に取り付ける過程において、
作業者に力の急な変化を与えるポイントが2つに分散するため、作業者に急激な力の変化を与えることを防止する取付具を提供することができる。
【0009】
また、上記課題を解決するために、一の部材と他の部材を取り付ける取付構造であって、その一の部材に備えられた上記の取付具と、他の部材に備えられた係合部と、を備え、第一手部が係合部の第一部分と係合し、かつ第二腕部が係合部の第二部分と係合している時、第一手部と第二腕部とがほぼ平行である取付構造が提供される。
これによれば、部材を装置本体に取り付ける過程において、作業者に力の急な変化を与えるポイントが2つに分散すると共に、その2つのポイントの間に作業者に力の変化を感じさせないようにすることで、作業者に急激な力の変化を与えることを防止する安定した取付構造を提供することができる。
【0010】
また、上記課題を解決するために、一の部材と他の部材を取り付ける取付構造であって、一の部材に備えられた上記の取付具と、他の部材に備えられた係合部と、を備え、第一腕部の長さは第二腕部の長さより短く、ばね部と第一部分との距離は、ばね部と第二部分との距離より長い取付構造が提供される。
これによれば、長い方の腕が係合部の直下に近づくことで2つの力の変化ポイントの間の距離を長くすることができるため、短い時間で変化が繰り返されることが防げるので安定した取付作業が可能となる。
【0011】
上記課題を解決するために、一の部材に備えられ、その一の部材を他の部材の所定の位置に取り付けるため他の部材に備えられた係合部に係合させる取付具であって、弾性力を発生させるばね部と、そのばね部の一端から延伸し、係合部の第一部分を摺動する第一摺動部と、ばね部の他端から延伸し、係合部の第二部分を摺動する第二摺動部と、を備え、第一摺動部と第二摺動部の形状が異なり、第一摺動部は、ばね部の一端から延伸する第一腕部と、第一腕部からさらに延伸し、第一腕部との接続部分で第二摺動部に接近する方へ屈曲または湾曲する第一手部と、を有し、第二摺動部は直線状であることを特徴としてもよい。
これによれば、部材を装置本体に取り付ける過程において、力の変化を小さくすることで、作業者に急激な力の変化を与えることを防止する取付具を提供することができる。
【0012】
また、上記課題を解決するために、一の部材と他の部材を取り付ける取付構造であって、その一の部材に備えられた上記の取付具と、他の部材に備えられた係合部と、を備え、第一手部が係合部の第一部分と係合し、かつ第二摺動部が係合部の第二部分と係合している時、第一手部と第二摺動部とが略平行である取付構造が提供される。
これによれば、部材を装置本体に取り付ける過程において、力の変化を小さくすると共に、摺動部を係合させた時から力の変化が生じるまでの間に作業者に力の変化を感じさせないようにすることで、作業者に急激な力の変化を与えることを防止する安定した取付構造を提供することができる。
【0014】
また、上記課題を解決するために、上記取付具または上記取付構造を備えた送風装置が提供される。
これによれば、部材を装置本体に取り付ける過程において、作業者に急激な力の変化を与えることを防止する取付具または取付構造を備える送風装置を提供することができる。
【0015】
また、上記課題を解決するために、一の部材と他の部材を取り付ける取付構造であって、一の部材に備えられた取付具と、他の部材に備えられた係合部と、を備え、その取付具は、弾性力を発生させるばね部と、そのばね部の一端から延伸し、係合部の第一部分を摺動する第一摺動部と、ばね部の他端から延伸し、係合部の第二部分を摺動する第二摺動部と、を備え、第一摺動部は、ばね部の一端から延伸する第一腕部と、第一腕部からさらに延伸し、第一腕部との接続部分で第二摺動部に接近する方へ屈曲または湾曲する第一手部と、を有し、第二摺動部は、ばね部の他端から延伸する第二腕部と、第二腕部からさらに延伸し、第二腕部との接続部分で第一摺動部に接近する方へ屈曲または湾曲する第二手部と、を有し、第一腕部、第一手部、第二腕部、および第二手部の長さがすべてほぼ等しく、ばね部と第一部分との距離は、ばね部と第二部分との距離と等しくない取付構造が提供される。
これによれば、両摺動部の形状が同じであっても、係合部とばね部の位置関係により、部材を装置本体に取り付ける過程において、作業者に力の急な変化を与えるポイントを2つに分散することができる。
【発明の効果】
【0016】
以上説明したように、本発明によれば、装置本体に取り付けられる部材を取り付ける過程において、作業者に急激な力の変化を与えることを防止する取付具、取付構造およびその取付具、取付構造を備えた装置を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下では、図面を参照しながら、本発明に係る各実施例について説明する。
<第一実施例>
図1を参照し、本発明にかかる取付具および取付構造が備えられる送風装置1について説明する。本図は、本実施例における送風装置1の中央部付近での断面図である。なお、後述する従来技術の説明においても、同じ送風装置として説明する。送風装置1は、送風装置本体10と送風装置本体10から着脱自在の送風装置カバー2を備える。送風装置本体10は部屋の天井の裏に設置されるものであり、ほぼ全体が天井面Cより上に存在する。
【0019】
送風装置本体10は、ファンを内蔵するファンユニット12と、ファンが発生させる空気の流れにより空気を下方から吸い込む吸込口13と、吸込口13から吸込んだ空気を排出する排出口14と、送風装置カバー2を取り付けるための係合部(図示せず。後述する。)を備える。排出口14の先は建物に備えられたダクトに繋げられ、吸込まれた空気は、そのダクトを通して空調設備や屋外に運ばれる。送風装置本体10の下面は天井面Cに現われ、そこに送風装置カバー2が取り付けられるように構成されている。
【0020】
送風装置カバー2は、天井下の部屋空間にある空気を吸い込むためのカバー吸込みスリット3と、取付具(図示せず。後述する。)を備える。送風装置カバー2は、空気を吸い込む機能と共に、部屋空間に対する送風装置本体10の化粧面としての機能を有する。送風装置カバー2は、清掃時やメンテナンス時の時のために、送風装置本体10に対して着脱自在に取り付けられる。
【0021】
なお、本実施例の送風装置1は、居室、台所、お風呂場等に設置される換気扇、レンジフード、天井設置型空気清浄機、天井設置型エアコンなど、天井に埋め込まれるタイプの送風装置であるが、これに限定されることはなく、例えば、壁に埋め込まれるタイプ、大型の据え置きタイプの送風装置であっても本発明にかかる取付具および取付構造は適用できることは言うまでもない。即ち、本発明に係る取付具は、送風装置カバーなどの一の部材に備えられ、その一の部材を、送風装置本体などの他の部材の所定の位置に取り付けるため他の部材に備えられた係合部に係合させるものである。
【0022】
まず、
図9を参照し、上述した送風装置1と同じタイプの送風装置において、従来の取付具や取付構造がどのように機能するのかについて説明する。本図は、従来の取付具20Zを備えた送風装置カバー2Zを送風装置本体10Zに取り付ける過程において、コイルばね23Zによって発生する力の方向と大きさがどのようになっているかを説明する図である。
【0023】
取付具20Zは、(C)に示すように、弾性力を発生させるコイル部23Zと、コイル部23Zの一端から延伸し、係合部11Zの第一部分111Zを摺動する第一摺動部21Zと、コイル部23Zの他端から延伸し、係合部11Zの第二部分112Zを摺動する第二摺動部22Zとを備えるが、第一摺動部21Zと第二摺動部22Zの形状は同じじであり、コイル部23Zを挟んで対称である。
【0024】
より具体的には、第一摺動部21Zは、コイル部23Zの一端から延伸する第一腕部211Zと、第一腕部211Zからさらに延伸し、第一腕部211Zとの接続部分で第二摺動部22Zに接近する方へ屈曲する第一手部212Zとを有し、第二摺動部22Zは、コイル部23Zの他端から延伸する第二腕部221Zと、第二腕部221Zからさらに延伸し、第二腕部221Zとの接続部分で第一摺動部21Zに接近する方へ屈曲する第二手部222Zとを有し、第一腕部211Zと第二腕部221Zの長さが同じであり、第一手部212Zと第二手部222Zの長さが同じであり、また、第一腕部211Zと第一手部212Zが屈曲する角度と第二腕部221Zと第二手部222Zが屈曲する角度が同じである。
【0025】
取付具20Zは送風装置カバー2Zの送風装置本体10Z側(裏面)に備えられ、また、係合部11Zは送風装置本体10Zの送風装置カバー2Zが取り付けられる方に備えられる。係合部11Zの上下位置は、送風装置カバー2Zが送風装置本体10Zに取り付けられた際係合部11Zとコイル部23Zが近接した方が係合する力が強くなり、送風装置本体10Zが送風装置カバー2Zを保持する力が大きくなるので、なるべく送風装置カバー2Zに近接した位置に備えられる方が好ましい。これは、本発明に係る取付構造においても、同じである。
【0026】
送風装置カバー2Zを送風装置本体10Zに取り付けようとする際、まず作業者は、通常取付具20Zの第一摺動部21Zと第二摺動部22Zを手で挟むなどして、コイル部23Zの弾性力に抗して第一端部213Zと第二端部223Zの距離を狭めて、スリットになっている係合部11Zの第一部分111Zと第二部分112Zの間に挿入する。そして、挿入後、作業者は取付具20Zから手を放す。そうすると、第一手部212Zと第二手部222Zはコイル部23Zの弾性力により互いに外側へ広がろうとするので、第一手部212Zと第一部分111Zおよび第二手部222Zと第二部分112Zが係合することとなる。
【0027】
次に作業者は、第一手部212Zと第一部分111Zおよび第二手部222Zと第二部分112Zが係合した状態で、送風装置カバー2Zを送風装置本体10Zの方へ(矢印DIの方へ)、さらに取付具20Zを係合部11Zへ押し込むように摺動させながら移動させる。この場合、第一手部212Zは第一部分111Zから、第二手部222Zは第二部分112Zから、コイル部23Zからの付勢力である押し広げようとする力に対する反力を受ける。
【0028】
両手部が両部分に係合している間(以下、手部区間と呼ぶ)両手部は互いに下に広がるハの字型をなしているので、この反力は、移動方向(矢印DI)とは逆の方向へ、換言すれば送風装置カバー2Zを下へ押し戻すように働く。従って、作業者は、DIの方向へ送風装置カバー2Zを移動させて送風装置本体10Zに取り付けようとすると、この反力に対抗するようにして移動させるための押す力が必要となる(本明細書では、第一手部などと第一部分などとから生ずる摩擦力および送風装置カバーに働く重力は無視することとする)。
【0029】
両手部が両部分に係合する場所が両手部の端部(213Z、223Z)の方からコイル部23Zの方へ摺動するにつれて、コイル部23Zからの距離が小さくなることと、コイル部23Zの変形量が大きくなることから、この反力は大きくなる。そうすると、作業者が押す力もだんだん大きくしていく必要がある。(A)に示す手部区間はかかることを示している。
【0030】
作業者が取付具20Zをさらに押し込んでいくと、手部と腕部が接続された屈曲した部分に差し掛かる。取付具20Zは、摺動部は同じ形状であり対称形なので、第一摺動部の屈曲部が係合部11Zの第一部分111Zに差し掛かる時と、第二摺動部の屈曲部が第二部分112Zに差し掛かる時とが、同じである。従って、両手部が摺動を終え、両腕部が係合し摺動を開始する(以下、腕部区間と呼ぶ)ことが、第一摺動部21Zと第二摺動部22Zとで同時に起こる。
【0031】
腕部区間では、両手部は互いに下に狭まる逆ハの字型をなしているので、係合部11Zからの反力は、移動方向(矢印DI)と同じ方向へ、換言すれば送風装置カバー2Zを引き上げるように働く。そうすると、作業者は、DIの方向へ送風装置カバー2Zを移動させて送風装置本体10Zに取り付ける過程において、手部区間では移動させるために押す力が必要となるが、屈曲部を挟み腕部区間になると逆に引っ張られる力となるので、急激な力の変化が生じてしまう。(A)の矢印PCは、かかる急激な力の変化を示している。
【0032】
このような従来の取付具20Zでは、送風装置カバー2Zを移動させて送風装置本体10Zに取り付ける過程において、係合部11Zからの反力の方向が、挿入当初は挿入方向と逆向きであるのに対して、屈曲した部分から急激に反対の挿入方向へと変化してしまう。そうすると、作業者に急激な力の変化を与えてしまうことで、送風装置カバー2Zと送風装置本体10Zとの間に指を挟んでしまったり、送風装置カバー2Zが送風装置本体10Zへと思いがけない勢いで衝突してしまったりなどの問題があった。
【0033】
次に、
図2を参照し、本実施例に係る取付具20を説明する。送風装置本体10と送風装置カバー2を備える送風装置1は、
図1で説明した送風装置である。上述したように、取付具20は送風装置カバー2の送風装置本体10側(裏面)に備えられ、また、係合部11は送風装置本体10の送風装置カバー2が取り付けられる方に備えられる。
【0034】
取付具20は、弾性力を発生させるばね部23と、ばね部23の一端から延伸し、係合部11の第一部分111を摺動する第一摺動部21と、ばね部23の他端から延伸し、係合部11の第二部分112を摺動する第二摺動部22とを備え、第一摺動部21と第二摺動部22の形状は異なり、ばね部23を挟んで非対称である。
【0035】
より具体的には、第一摺動部21は、ばね部23の一端から延伸する第一腕部211と、第一腕部211からさらに延伸し、第一腕部211との接続部分で第二摺動部22に接近する方へ屈曲する第一手部212とを有し、第二摺動部22は、ばね部23の他端から延伸する第二腕部221と、第二腕部221からさらに延伸し、第二腕部221との接続部分で第一摺動部21に接近する方へ屈曲する第二手部222とを有し、第一腕部211と第二腕部221の長さが相違し、第一手部212と第二手部222の長さも相違する。
【0036】
図3の(A)および(B)は素材が線材の取付具20を、(C)および(D)は素材が板材の取付具20’を示している。いずれであっても、取付具20/20’は、弾性力を発生させるばね部23/23’と、ばね部23/23’の一端から延伸し、係合部11の第一部分111を摺動する第一摺動部21/21’と、ばね部23/23’の他端から延伸し、係合部11の第二部分112を摺動する第二摺動部22/22’とを備え、第一摺動部21/21’と第二摺動部22/22’の形状は異なり、ばね部23/23’を挟んで非対称である。線材の取付具20の場合、ばね部23はねじりコイルばねで形成され、板材の取付具20’の場合、ばね部23’は板ばねで形成されている。本実施例では、線材・板材は金属製であるが、これに限定されず、同等の弾性力を発生する素材であればよい。
【0037】
図4を参照して、送風装置カバー2を送風装置本体10に取り付ける工程を説明する。なお、以下は、取付具の素材は線材として説明する。送風装置カバー2を送風装置本体10に取り付けようとする際、まず作業者は、取付具20の第一摺動部21と第二摺動部22を手で挟むなどして、ばね部であるコイル部23の弾性力に抗して第一端部213と第二端部223の距離を狭めて、係合部11の第一部分111と第二部分112の間に挿入する。そして、挿入後、作業者は取付具20から手を放す。そうすると、第一手部212と第二手部222はコイル部23の弾性力により互いに外側へ広がろうとするので、第一手部212と第一部分111および第二手部222と第二部分112が係合することとなる。(A)は、この状態を示している。
【0038】
次に作業者は、第一手部212と第一部分111および第二手部222と第二部分112が係合した状態で、送風装置カバー2を送風装置本体10の方へ(矢印DIの方へ)、さらに取付具20を係合部11へ押し込むように摺動させながら移動させる。両手部が両部分に係合している手部区間は、第二手部222が第一手部212より短いので、第二手部222と第二腕部221との間の屈曲部が第二部分に係合した時に終了する。
【0039】
さらに、第二手部222と第二腕部221との間の屈曲部が第二部分112を通り過ぎた場合、第二腕部221と第二部分112とが係合する。この場合、第二摺動部22側では第二腕部221と第二部分112とが係合する一方で、第一摺動部21側ではまだ第一手部212と第一部分111とが係合している。即ち、従来の取付具にはなかった、手部および腕部が同時に係合部に係合し、摺動する区間が生ずることとなる(以下、手部腕部区間と呼ぶ)。(B)は、この状態を示している。
【0040】
さらに作業者が、送風装置カバー2を矢印DIの方向へ移動させると、第一手部212と第一腕部211との間の屈曲部が第一部分111を通り過ぎ、第一腕部211と第一部分111とが係合し、両腕部が係合部に係合する腕部区間が開始する。(C)は、この状態を示している。
【0041】
そして、さらに送風装置カバー2をDI方向へ移動させると、最終的な取付固定位置に到達する。この場合、取付具20はコイル部23の弾性力で大きく摺動部が両側に拡げられ、コイル部23に近いところで係合部が係合しているので、コイル部23の弾性力により送風装置カバー2を送風装置本体10にしっかりと固定する。(D)は、この状態を示している。
【0042】
図5を参照し、送風装置1において、取付具20や取付構造5がどのように機能するのか、送風装置カバー2を送風装置本体10に取り付ける過程において、コイルばね23によって発生する力の方向と大きさがどのようになっているかについて説明する。手部区間における係合部11から反力は、従来の取付具と同様である。即ち、この反力は、移動方向(矢印DI)とは逆の方向へ、換言すれば送風装置カバー2を下へ押し戻すように働く。従って、作業者は、DIの方向へ送風装置カバー2を移動させて送風装置本体10に取り付けようとすると、この反力に対抗するようにして移動させるための押す力が必要となる。また、この反力は、両手部が両部分に係合する場所が両手部の端部(213、223)の方からコイル部23の方へ摺動するにつれて、大きくなる。
【0043】
しかし、手部区間から(B)に示す手部腕部区間に移った時、第二摺動部22の方で逆ハの字を形成する第二腕部221が第二部分と係合することで、第二摺動部22の方は送風装置カバー2を引っ張る力に変わる。一方、第一摺動部21ではまだハの字を形成する第一手部21が係合しているので押す力が必要である。従って、第一手部212からの押す力と第二腕部221からの引っ張られる力が相殺し、手部腕部区間に移った時に矢印PC1分だけ力の変化が生ずる。
【0044】
手部腕部区間の最初に力の変化が生じた後、作業者が取付具20をさらに押し込んでいくと、腕部区間に移るまでは押す力は増加する。しかし、その増加割合は、手部区間に比べると小さい。
【0045】
そして、さらに作業者が取付具20をさらに押し込んでいくと、第一手部211と第一腕部212が接続された屈曲した部分に差し掛かり、両腕部が係合し摺動する腕部区間に移る。腕部区間における係合部11から反力は、従来の取付具と同様である。即ち、この反力は、移動方向(矢印DI)と同じ方向へ、換言すれば送風装置カバー2を上へ引っ張り上げるように働く。従って、第一摺動部21の屈曲した部分を境に両方の摺動部が引っ張り上げる力になるので、腕部区間に移った時に矢印PC2分だけ力の変化が生ずる。そして、腕部区間での力の変化は、上述した従来の取付具と同じである。
【0046】
上述したように、従来の取付具では手部区間から腕部区間への変化が第一摺動部21Zと第二摺動部22Zとで同時に起こり、その時の力の変化が大きく、作業者に急激な力の変化を感じさせていた。しかし、本発明に係る取付具20では、一方の手部と他方の腕部が同時に係合部11に係る手部腕部区間が生じる構成とすることで、力の変化が生じる時を2回にし、一回の力の変化を小さくしている。その結果、送風装置カバー2を送風装置本体10に取り付ける過程において、作業者に力の変化を与えるポイントが2つに分散することで、急激な力の変化を与えることを防止することができる。
【0047】
なお、第一腕部211と第二手部222の長さがほぼ同一であり、第二腕部221と第一手部212の長さがほぼ同一であってもよい。コイル部23から第一端部213および第二端部223までの距離がほぼ同じになり、作業者がスリットになっている係合部11に挿入し易くなる。
【0048】
また、本実施例では、腕部と手部の接続部分は屈曲していたが、屈曲に比し曲率の小さい湾曲を有していてもよい。屈曲比べ湾曲している方が、力の変化が緩やかになる。
【0049】
<第一実施例における変形例>
図6と
図7を参照して、送風装置カバー2を送風装置本体10に取り付ける工程、および送風装置カバー2を送風装置本体10に取り付ける過程において、コイルばね23によって発生する力の方向と大きさがどのようになっているかについて説明する。なお、重複記載を避けるために、第一実施例と異なる点を中心に述べる。
図6の(A)〜(D)は、
図4の(A)〜(D)と同じ状態を示す。
【0050】
本変形例と第一実施例との違いは、コイル部23を送風装置カバー2に取り付けた位置と係合部の位置との関係である。即ち、第一実施例では、コイル部23を送風装置カバー2に取り付けたコイル取付部4から、第一部分111および第二部分112までの距離が等しいが、本変形例では、コイル取付部4Aは第二部分112の真下方向に位置するので、コイル取付部4Aから第一部分111および第二部分112までの距離が異なる。
【0051】
本変形例では、コイル取付部4Aは第二部分112の真下方向に位置するが、これに限定されず、第一腕部211の長さが第二腕部221の長さより短い場合に、コイル部23と第一部分111との距離が、コイル部23と第二部分112との距離より長ければよい。もちろん、第一腕部211の長さが第二腕部221の長さより長い場合に、コイル部23と第一部分111との距離が、コイル部23と第二部分112との距離より短ければよい。即ち、コイル部23を送風装置カバー2に取り付けたコイル取付部4は、第一部分111および第二部分112から距離が等しい中心線上に位置しない。
【0052】
また、取付具20が手部腕部区間にある場合に、係合部11に係合する第一手部212と第二腕部221とがほぼ平行をなすように、係合部11が構成されている。即ち、係合部11のスリット幅(第一部分111と第二部分112の距離)が、取付具20が手部腕部区間にある時に平行四辺形に近い形となるので、その平行四辺形の高さにほぼ等しいこととなる。
【0053】
第一実施例では、手部腕部区間において押す力の変化がある。また、そのために、手部区間から手部腕部区間に移る時の力の変化PC1と、手部腕部区間から腕部区間に移る時の力の変化PC2の和が大きくなる。しかし、本変形例では、第一手部212と第二腕部221とがほぼ平行となることで、手部腕部区間において押す力に大きな変化が生じない(本明細書では摺動部と係合部との摩擦は考えない)。また、そのために、手部区間から手部腕部区間に移る時の力の変化PC1と、手部腕部区間から腕部区間に移る時の力の変化PC2の和が第一実施例に比し小さくなる。また、押す力の変化が生じない手部腕部区間の長さが長くなり、作業者は安定した反力を感じることができる。なお、第一手部と第二腕部とがほぼ平行から若干外れても、押す力に大きな変化は生じない。
【0054】
本変形例に係る発明は、送風装置カバー2である一の部材と、送風装置本体10である他の部材を取り付ける取付構造5であって、その一の部材に備えられた取付具20とその他の部材に備えられた係合部11とを備え、第一手部212が係合部11の第一部分111と係合し、かつ第二腕部221が係合部11の第二部分112と係合している時、第一手部212と第二腕部221とがほぼ平行である。これによれば、部材を装置本体に取り付ける過程において、作業者に力の変化を与えるポイントが2つに分散すると共に、その2つのポイントの間に作業者に力の変化を感じさせないようにすることで、作業者に急激な力の変化を与えることを防止する安定した取付構造を提供することができる。
【0055】
また、本変形例に係る発明は、送風装置カバー2である一の部材と、送風装置本体10である他の部材を取り付ける取付構造5であって、その一の部材に備えられた取付具20と、その他の部材に備えられた係合部11とを備え、第一腕部211の長さは第二腕部221の長さより短く、コイル部23と第一部分111との距離は、コイル部23と第二部分112との距離より長いことに特徴がある取付構造でもある。これによれば、長い方の腕が係合部の直下に近づくことで2つの力の変化ポイントの間の距離を長くすることができるため、短い時間で変化が繰り返されることが防げるので安定した取付作業が可能となる。
【0056】
また、このような取付構造5が複数からなる取付構造であって、その複数の取付構造に含まれる、ある一対の取付構造において、一の取付構造と他の取付構造が対向するように配置され、一の取付構造における第一摺動部と他の取付構造における第一摺動部とが対向するように同じ向きに配置される取付構造であってもよい。例えば、送風装置は、取付構造5を送風装置の両サイドに備えて、取付具が同じ向きに対向して備えられる。これによれば、作業者は、バランス良く、部材を装置本体に取り付けることができる取付構造を提供することができる。
【0057】
<第二実施例>
図8を参照して、本実施例に係る取付具20B、および送風装置カバー2Bを送風装置本体10Bに取り付ける過程において、コイルばね23Bによって発生する力の方向と大きさがどのようになっているかについて説明する。なお、重複記載を避けるために、第一実施例と異なる点を中心に述べる。送風装置本体10Bと送風装置カバー2Bを備える送風装置1Bは、
図1で説明した送風装置である。
【0058】
取付具20Bは、弾性力を発生させるコイル部23Bと、コイル部23Bの一端から延伸し、係合部11Bの第一部分111Bを摺動する第一摺動部21Bと、コイル部23Bの他端から延伸し、係合部11Bの第二部分112Bを摺動する第二摺動部22Bとを備え、第一摺動部21Bと第二摺動部22Bの形状は異なり、コイル部23Bを挟んで非対称である。
【0059】
より具体的には、第一摺動部21Bは、コイル部23Bの一端から延伸する第一腕部211Bと、第一腕部211Bからさらに延伸し、第一腕部211Bとの接続部分で第二摺動部22Bに接近する方へ屈曲する第一手部212Bと、を有し、第二摺動部22Bは直線状であり、屈曲や湾曲はしていない。
【0060】
また、本実施例に係る取付構造5Bは、送風装置カバー2Bである一の部材と、送風装置本体10Bである他の部材を取り付ける取付構造であって、その一の部材に備えられた取付具20Bと、他の部材に備えられた係合部11Bと、を備え、第一手部212Bが係合部11Bの第一部分111Bと係合し、かつ第二摺動部22Bが係合部11Bの第二部分112Bと係合している時、第一手部212Bと第二摺動部22Bとがほぼ平行である。
【0061】
本実施例と第一実施例との違いは、第一実施例では第二摺動部22は屈曲して手部と腕部を有していたが、本実施例では第二摺動部22Bは屈曲せず直線状である。従って、取付構造5Bにおいては、作業者に力の変化を与えるポイントが1つであり、力の変化を与えるポイントの数では、従来の取付具20Zと同じである。
【0062】
また、コイル部23Bを送風装置カバー2Bに取り付けた位置4Bと係合部11Bの位置との関係も異なる。即ち、第一実施例では、コイル部23を送風装置カバー2に取り付けたコイル取付部4は、第一部分111および第二部分112から距離が等しい中心線上に位置するが、本実施例では、コイル取付部4Bは第二部分112Bの真下方向に位置する。
【0063】
また、取付具20Bが、第一手部212Bが第一部分111Bに係合する手部区間にある場合に、係合部11Bに係合する第一手部212Bと第二摺動部22Bとがほぼ平行をなすように、係合部11Bが構成されている。即ち、係合部11Bのスリット幅(第一部分111Bと第二部分112Bの距離)が、取付具20Bが手部腕部区間にある時に2本の平行線の距離にほぼ等しいこととなる。
【0064】
第一実施例では、手部区間および手部腕部区間において押す力の変化があり、DI方向に移動させるにつれて押す力は増加する。しかし、本実施例では、手部区間において押す力の変化が生じない。即ち、取付具20Bの端部(213B、223B)の方を係合部11Bに係合させてから、第一腕部211Bと第一手部212Bの接続部分である屈曲した部分まで、押す力は一定であり、摩擦力および送風装置カバーに働く重力を考慮しないと、この区間における作業者が押す力はゼロであると言える。
【0065】
また、従来の取付具では、両方の摺動部の屈曲部が係合部を同時に通るので、押す力から引っ張られる力へと変化が大きかったが、本実施例では、一方の摺動部の屈曲部しか係合部を通らないので、手部区間から腕部区間に移る時の力の変化PC2が小さくなる。また、手部区間では押す力の変化が生じないので、力が安定した区間の長さが長くなり、作業者は安定した反力を感じることができる。
【0066】
従って、かかる構成によれば、送風装置カバー2Bを送風装置本体10Bに取り付ける過程において、力の変化を小さくすることで、作業者に急激な力の変化を与えることを防止することができる。また、摺動部を係合させた時から力の変化が生じるまでの間に作業者に力の変化を感じさせないようにすることで、作業者に急激な力の変化を与えることを防止することができる。
【0067】
<第三実施例>
本実施例では、第一実施例の取付構造の特殊な場合を示す。第一実施例と異なる点を中心に記載する。第一実施例の取付構造5における取付具20は、第一摺動部21と第二摺動部22が異なる形状であり、第一腕部211と第二腕部221の長さが異なるものであった。本実施例に係る取付構造は、第一腕部、第一手部、第二腕部、および第二手部の長さがすべてほぼ等しく、かつ、コイル部と第一部分との距離は、コイル部と第二部分との距離と等しくないところに特徴がある取付構造である。
即ち、各腕部や各手部が同じ形状・長さを呈し、両摺動部が同じ形状であっても、コイル部を送風装置カバーに取り付けたコイル取付部が、第一部分および第二部分から距離が等しい中心線上に位置しない場合、取り付ける過程において、作業者に力の急な変化を与えるポイントを2つに分散することができる。
【0068】
従って、本実施例に係る発明は、一の部材と他の部材を取り付ける取付構造であって、一の部材に備えられた取付具と、他の部材に備えられた係合部と、を備え、その取付具は、弾性力を発生させるコイル部と、そのコイル部の一端から延伸し、係合部の第一部分を摺動する第一摺動部と、コイル部の他端から延伸し、係合部の第二部分を摺動する第二摺動部と、を備え、第一摺動部は、コイル部の一端から延伸する第一腕部と、第一腕部からさらに延伸し、第一腕部との接続部分で第二摺動部に接近する方へ屈曲または湾曲する第一手部と、を有し、第二摺動部は、コイル部の他端から延伸する第二腕部と、第二腕部からさらに延伸し、第二腕部との接続部分で第一摺動部に接近する方へ屈曲または湾曲する第二手部と、を有し、第一腕部、第一手部、第二腕部、および第二手部の長さがすべてほぼ等しく、コイル部と第一部分との距離は、コイル部と第二部分との距離と等しくない取付構造である。これによれば、両摺動部の形状が同じであっても、係合部とコイル部の位置関係により、部材を装置本体に取り付ける過程において、作業者に力の急な変化を与えるポイントを2つに分散することができる。
【0069】
なお、本発明は、例示した実施例に限定するものではなく、特許請求の範囲の各項に記載された内容から逸脱しない範囲の構成による実施が可能である。即ち、本発明は、主に特定の実施形態に関して特に図示され、かつ説明されているが、本発明の技術的思想および目的の範囲から逸脱することなく、以上述べた実施形態に関し、形状、材質、数量、その他の詳細な構成において、当業者が様々な変形を加えることができるものである。従って、上記に開示した形状などを限定した記載は、本発明の理解を容易にするために例示的に記載したものであり、本発明を限定するものではないから、それらの形状等の限定の一部もしくは全部の限定を外した部材の名称での記載は、本発明に含まれるものである。
【0070】
例えば、少なくとも1つの摺動部は、他の摺動部に接近する方へ屈曲または湾曲する少なくとも一つの変局点を有すればよく、変局点は複数あってもよい。これによれば、装置本体に取り付けられる部材を取り付ける過程において、作業者に急激な力の変化を与えることを防止する取付具、取付構造およびその取付具、取付構造を備えた装置を提供することができる。
【0071】
また、本発明に係る取付具および取付構造は、実施例で記載した送風装置に使用されるだけでなく、例えば、照明装置本体に係合部、その照明装置本体に取り付ける照明カバーに取付具を備えることで、照明装置に使用することができる。