(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6084093
(24)【登録日】2017年2月3日
(45)【発行日】2017年2月22日
(54)【発明の名称】回転ツール埋没位置検出方法及び摩擦攪拌接合方法
(51)【国際特許分類】
B23K 20/12 20060101AFI20170213BHJP
G01B 7/00 20060101ALI20170213BHJP
【FI】
B23K20/12 330
B23K20/12 310
G01B7/00 101M
【請求項の数】11
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2013-72323(P2013-72323)
(22)【出願日】2013年3月29日
(65)【公開番号】特開2014-195815(P2014-195815A)
(43)【公開日】2014年10月16日
【審査請求日】2016年2月15日
(73)【特許権者】
【識別番号】712004783
【氏名又は名称】株式会社総合車両製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100148013
【弁理士】
【氏名又は名称】中山 浩光
(72)【発明者】
【氏名】河田 直樹
(72)【発明者】
【氏名】増田 藍
【審査官】
奥隅 隆
(56)【参考文献】
【文献】
特開2010−188367(JP,A)
【文献】
特開2009−082950(JP,A)
【文献】
特開2003−098161(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23K 20/12
G01B 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被接合材同士の当接部分に押し込んだ回転ツールを回転させることによって前記当接部分に沿って接合部を形成する摩擦攪拌接合に用いる回転ツール埋没位置検出方法であって、
前記被接合材と前記回転ツールとに互いにフェライト含有量の異なる材料を用い、
前記接合部に沿ってフェライト量を測定する測定センサを走査する測定ステップと、
前記測定ステップにおいて測定されたフェライト量に基づいて前記接合部における前記回転ツールの破損部分の埋没位置を検出する検出ステップと、を備えることを特徴とする回転ツール埋没位置検出方法。
【請求項2】
前記被接合材と前記回転ツールとに、前記回転ツールのフェライト含有量が前記被接合材のフェライト含有量より多くなるような材料を用い、
前記検出ステップにおいて、フェライト量が閾値より大きくなる位置を回転ツールの破損部分の埋没位置として検出することを特徴とする請求項1に記載の回転ツール埋没位置検出方法。
【請求項3】
前記被接合材と前記回転ツールとに、前記被接合材のフェライト含有量が前記回転ツールのフェライト含有量より多くなるような材料を用い、
前記検出ステップにおいて、フェライト量が閾値より小さくなる位置を回転ツールの破損部分の埋没位置として検出することを特徴とする請求項1に記載の回転ツール埋没位置検出方法。
【請求項4】
前記測定ステップと、前記検出ステップとを、前記被接合材同士の接合完了後に実施することを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の回転ツール埋没位置検出方法。
【請求項5】
前記測定ステップと、前記検出ステップとを、前記被接合材同士の接合中に実施することを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の回転ツール埋没位置検出方法。
【請求項6】
被接合材同士の当接部分に押し込んだ回転ツールを回転させることによって前記当接部分に沿って接合部を形成する接合ステップを備える摩擦攪拌接合方法であって、
前記被接合材と前記回転ツールとに互いにフェライト含有量の異なる材料を用い、
前記接合ステップは、
前記接合部に沿ってフェライト量を測定する測定センサを走査する測定ステップと、
前記測定ステップにおいて測定されたフェライト量に基づいて前記接合部における前記回転ツールの破損部分の埋没位置を検出する検出ステップと、を備えることを特徴とする摩擦攪拌接合方法。
【請求項7】
前記被接合材と前記回転ツールとに、前記回転ツールのフェライト含有量が前記被接合材のフェライト含有量より多くなるような材料を用い、
前記検出ステップにおいて、フェライト量が閾値より大きくなる位置を回転ツールの破損部分の埋没位置として検出することを特徴とする請求項6に記載の摩擦攪拌接合方法。
【請求項8】
前記被接合材と前記回転ツールとに、前記被接合材のフェライト含有量が前記回転ツールのフェライト含有量より多くなるような材料を用い、
前記検出ステップにおいて、フェライト量が閾値より小さくなる位置を回転ツールの破損部分の埋没位置として検出することを特徴とする請求項6に記載の摩擦攪拌接合方法。
【請求項9】
前記測定ステップと、前記検出ステップとを、前記被接合材同士の接合完了後に実施することを特徴とする請求項6〜8のいずれか一項に記載の摩擦攪拌接合方法。
【請求項10】
前記測定ステップと、前記検出ステップとを、前記被接合材同士の接合中に実施することを特徴とする請求項6〜8のいずれか一項に記載の摩擦攪拌接合方法。
【請求項11】
前記接合ステップは、
前記検出ステップにおいて前記回転ツールの埋没位置が検出されたときに、当該埋没位置に穴を形成して埋没している回転ツールを除去し、前記穴を溶加材で充填して再接合する再接合ステップをさらに備えることを特徴とする、請求項6〜10のいずれか一項に記載の摩擦攪拌接合方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転ツール埋没位置検出方法及び摩擦攪拌接合方法に関する。
【背景技術】
【0002】
被接合材同士の当接部分に回転ツールを押し込んで回転させることによって当接部分に接合部を形成する摩擦攪拌接合が知られている。摩擦攪拌接合では、回転ツールを高速で回転させて被接合材の当接部分に押し込むため、接合中に回転ツールの一部(例えばプローブ)が破損し、被接合材に埋まってしまうことがある。回転ツールの破損が生じると、その後の接合が完了したとしても破損部分の埋没位置で接合不良が生じるおそれがある。このような問題に対し、従来では目視や超音波・X線を用いた検査によって回転ツールの破損部分の埋没位置の検出が行われていた(例えば特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003−98161号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、目視による検出では、被接合材を反転させて裏面の状態を観察する必要があるため被接合材が大きい場合には検出が困難となる。また、超音波・X線による検出では、特殊な測定環境や測定スキルが要求されるため容易に検出できないという問題がある。
【0005】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、回転ツールの破損部分の埋没位置を簡便かつ精度よく検出できる回転ツール埋没位置検出方法及び摩擦攪拌接合方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る回転ツール埋没位置検出方法は、被接合材同士の当接部分に押し込んだ回転ツールを回転させることによって当接部分に沿って接合部を形成する摩擦攪拌接合に用いる回転ツール埋没位置検出方法であって、被接合材と回転ツールとに互いにフェライト含有量の異なる材料を用い、接合部に沿ってフェライト量を測定する測定センサを走査する測定ステップと、測定ステップにおいて測定されたフェライト量に基づいて接合部における回転ツールの破損部分の埋没位置を検出する検出ステップと、を備えることを特徴とする。
【0007】
この回転ツール埋没位置検出方法では、被接合材と回転ツールとに互いにフェライト含有量の異なる材料を用いている。このため、接合部に沿ってフェライト量を測定すると、回転ツールに破損が生じている場合には回転ツールの破損部分の埋没位置でフェライト量が変化し、当該位置を回転ツールの破損部分の埋没位置として検出できる。この回転ツール埋没位置検出方法では、被接合材が大きい場合の被接合材の反転が不要であり、測定環境や測定スキルに依存しないため、簡便かつ精度よく回転ツールの破損部分の埋没位置を検出することができる。
【0008】
また、被接合材と回転ツールとに、回転ツールのフェライト含有量が被接合材のフェライト含有量より多くなるような材料を用い、検出ステップにおいて、フェライト量が閾値より大きくなる位置を回転ツールの埋没位置として検出することが好ましい。回転ツールのフェライト含有量が被接合材のフェライト含有量より多いことに基づいて閾値を設定し、接合部におけるフェライト量が閾値より大きい位置を回転ツールの破損部分の埋没位置とすることで、より精度よく回転ツールの破損部分の埋没位置を検出することができる。
【0009】
また、被接合材と回転ツールとに、被接合材のフェライト含有量が回転ツールのフェライト含有量より多くなるような材料を用い、検出ステップにおいて、フェライト量が閾値より小さくなる位置を回転ツールの埋没位置として検出することが好ましい。被接合材のフェライト含有量が回転ツールのフェライト含有量より多いことに基づいて閾値を設定し、接合部におけるフェライト量が閾値より小さい位置を回転ツールの破損部分の埋没位置とすることで、より精度よく回転ツールの破損部分の埋没位置を検出することができる。
【0010】
また、測定ステップと、検出ステップとを、被接合材同士の接合完了後に実施することが好ましい。この場合でも、被接合材の反転や特殊な測定環境・測定スキルを必要としないため、簡便かつ精度よく回転ツールの破損部分の埋没位置を検出することができる。
【0011】
また、測定ステップと、検出ステップとを、被接合材同士の接合中に実施することが好ましい。この場合、接合中にリアルタイムで回転ツールの破損部分が埋没していることを検出できる。
【0012】
また、本発明に係る摩擦攪拌接合方法は、被接合材同士の当接部分に押し込んだ回転ツールを回転させることによって当接部分に沿って接合部を形成する接合ステップを備える摩擦攪拌接合方法であって、被接合材と回転ツールとに互いにフェライト含有量の異なる材料を用い、接合ステップは、接合部に沿ってフェライト量を測定する測定センサを走査する測定ステップと、測定ステップにおいて測定されたフェライト量に基づいて接合部における回転ツールの埋没位置を検出する検出ステップと、を備えることを特徴とする。
【0013】
この摩擦攪拌接合方法では、被接合材と回転ツールとに互いにフェライト含有量の異なる材料を用いている。このため、接合部に沿ってフェライト量を測定すると、回転ツールに破損が生じている場合には回転ツールの破損部分の埋没位置でフェライト量が変化し、当該位置を回転ツールの破損部分の埋没位置として検出できる。この摩擦攪拌接合方法では、被接合材が大きい場合の被接合材の反転が不要であり、測定環境や測定スキルに依存しないため、簡便かつ精度よく回転ツールの破損部分の埋没位置を検出することができる。
【0014】
また、被接合材と回転ツールとに、回転ツールのフェライト含有量が被接合材のフェライト含有量より多くなるような材料を用い、検出ステップにおいて、フェライト量が閾値より大きくなる位置を回転ツールの埋没位置として検出することが好ましい。回転ツールのフェライト含有量が被接合材のフェライト含有量より多いことに基づいて閾値を設定し、接合部におけるフェライト量が閾値より大きい位置を回転ツールの破損部分の埋没位置とすることで、より精度よく回転ツールの破損部分の埋没位置を検出することができる。
【0015】
また、被接合材と回転ツールとに、被接合材のフェライト含有量が回転ツールのフェライト含有量より多くなるような材料を用い、検出ステップにおいて、フェライト量が閾値より小さくなる位置を回転ツールの埋没位置として検出することが好ましい。被接合材のフェライト含有量が回転ツールのフェライト含有量より多いことに基づいて閾値を設定し、接合部におけるフェライト量が閾値より小さい位置を回転ツールの破損部分の埋没位置とすることで、より精度よく回転ツールの破損部分の埋没位置を検出することができる。
【0016】
また、測定ステップと、検出ステップとを、被接合材同士の接合完了後に実施することが好ましい。この場合でも、被接合材の反転や特殊な測定環境・測定スキルを必要としないため、簡便かつ精度よく回転ツールの破損部分の埋没位置を検出することができる。
【0017】
また、測定ステップと、検出ステップとを、被接合材同士の接合中に実施することが好ましい。この場合、接合中にリアルタイムで回転ツールが埋没していることを検出できる。
【0018】
また、接合ステップは、検出ステップにおいて回転ツールの埋没位置が検出されたときに、当該埋没位置に穴を形成して埋没している回転ツールを除去し、穴を溶加材で充填して再接合する再接合ステップをさらに備えることが好ましい。再接合ステップを備えることにより、接合不良の少ない接合体を得ることができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、回転ツールの破損部分の埋没位置を簡便かつ精度よく検出できる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本発明に係る摩擦攪拌接合方法を示す斜視図であり、(a)及び(b)は接合ステップ、(c)は測定ステップを示す斜視図である。
【
図2】(a)は
図1(c)の測定ステップの断面図であり、(b)は測定ステップに後続する検出ステップで得られるフェライト量の測定例を示す模式図である。
【
図3】
図2に後続する再接合ステップを示す断面図である。
【
図4】変形例の検出ステップで得られるフェライト量の測定例を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、図面を参照しながら、本発明に係る回転ツール埋没位置検出方法及び摩擦攪拌接合方法の好適な実施形態について詳細に説明する。
【0022】
図1は、本発明に係る摩擦攪拌接合方法を示す斜視図である。この摩擦攪拌接合方法は、被接合材同士の当接部分に押し込んだ回転ツールを回転させることによって当接部分に沿って接合部を形成する接合ステップを備える。接合ステップにおいては、接合中に回転ツールの一部(例えばプローブ)が破損し、被接合材に埋まってしまうことがある。回転ツールの破損が生じると、その後の接合が完了したとしても破損部分の埋没位置で接合不良が生じるおそれがある。そこで、本実施形態の接合ステップは、回転ツールの破損部分の埋没位置を検出するために、測定ステップと、検出ステップとを備える。
【0023】
接合ステップでは、まず、
図1(a)に示すように、定盤1上に被接合材2aと被接合材2bとを端面同士を当接させて配置する。定盤1は、例えばオーステナイトステンレス鋼で構成されている。被接合材2a,2bは、例えば鉄道車両等の車体を構成する外板であり、例えばアルミニウム合金、マグネシウム合金等の非鉄系材料から構成されている。
【0024】
次に、
図1(b)に示すように、回転ツール3のプローブ3aを被接合材2a,2bの当接部分Lに押し込んで所定の回転数で回転させることによって、当接部分Lに沿って接合部Wを形成する。回転ツール3は、被接合材2a,2bに用いられている材料(本実施形態では非鉄材料)とはフェライト含有量の異なる材料、例えば工具鋼、高速度鋼等の鉄系材料から構成されている。
【0025】
なお、本明細書における「フェライト(含有)量」とは、フェライト含有量測定手段により測定されるフェライト含有量校正用試験片を基準としたFe(フェライト)%を意味する。これによって測定される被接合材2a,2bのフェライト含有量は、例えば限りなく0Fe%に近いことが好ましく、回転ツール3のフェライト含有量は例えば80Fe%であることが好ましく、定盤1のフェライト含有量は例えば1Fe%未満であることが好ましい。また、フェライト含有量校正用試験片には、例えば0.4Fe%、2.5Fe%、10.5Fe%、14.5Fe%、30Fe%、63Fe%及び80Fe%の試験片を用いる。
【0026】
被接合材2a,2b同士の接合が完了した後、
図1(c)に示すように、フェライト量を測定する測定センサ4を接合部Wに沿って走査する(測定ステップ)。測定センサ4としては、例えばフェライト含有量測定器(株式会社フィッシャー・インストルメンツ製「FERITSCOPE FMP30」(商品名))を用いる。測定センサ4は、測定したフェライト量に応じた信号を判断部5へ出力する。
【0027】
図2(a)は、
図1(c)の測定ステップの断面図であり、回転ツール3のプローブ3aが破損して被接合材2a,2bに埋没している例を示している。この場合、測定センサ4は、
図2(b)に示すような接合部Wにおけるフェライト量を測定し、測定したフェライト量に応じた信号を判断部5へ出力する。
【0028】
判断部5は、
図2(b)に示すような信号を測定センサ4から受け取ると、それに基づいて破損したプローブ3aの埋没位置を検出する(検出ステップ)。具体的には、プローブ3aのフェライト含有量が被接合材2a,2bのフェライト含有量より多いため、
図2(b)に示すように、破損したプローブ3aが埋没している位置でフェライト量が極大となる。判断部5は、この極大値が閾値よりも大きい場合に、極大値をとる位置を破損したプローブ3aの埋没位置として検出する。閾値は、例えば回転ツール3のプローブ部に相当する量の工具鋼塊のフェライト含有量とする。なお、破損したプローブ3aが埋没していない位置においても定盤1が微量のフェライトを含む場合には、一定のフェライト量が測定される。
【0029】
破損したプローブ3aの埋没位置が検出された場合には、検出ステップに後続して再接合ステップが行われる。再接合ステップでは、まず、
図3(a)に示すように、被接合材2a,2bの接合部Wにおける破損したプローブ3aの埋没位置に回転ツール3の破損部分3aを除去できる程度の大きさの穴21を形成する。続いて、
図3(b)に示すように、穴21を溶加材で充填して被接合材2a,2b同士の再接合を行う。溶加材としては、例えば被接合材2a,2bと同じ材料を用いる。
【0030】
以上のように、この摩擦攪拌接合方法では、被接合材と回転ツールとに互いにフェライト含有量の異なる材料を用いている。このため、接合部に沿ってフェライト量を測定すると、回転ツールに破損が生じている場合には回転ツールの破損部分の埋没位置でフェライト量が変化し、当該位置を回転ツールの破損部分の埋没位置として検出できる。この摩擦攪拌接合方法では、被接合材が大きい場合の被接合材の反転が不要であり、測定環境や測定スキルに依存しないため、簡便かつ精度よく回転ツールの破損部分の埋没位置を検出することができる。また、この摩擦攪拌接合方法では、回転ツールの破損部分の埋没位置を検出した場合に被接合材同士を再接合するため、接合不良の少ない接合体を得ることができる。
【0031】
本発明は、上記実施形態に限られるものではない。例えば上記実施形態では、被接合材2a,2bに非鉄系材料を用い、回転ツール3に鉄系材料を用いたが、変形例として、被接合材2a,2bに工具鋼、高速度鋼等の鉄系材料を用い、回転ツール3にセラミック、超硬(タングステンカーバイドコバルト)、PCBN等の非鉄系材料を用いてもよい。
【0032】
この変形例の場合、回転ツール3が破損して、例えば破損したプローブ3aが被接合材2a,2bに埋没していると、
図4に示すような接合部Wにおけるフェライト量が測定される。
図4においては、被接合材2a,2bのフェライト含有量がプローブ3aのフェライト含有量より多いため、破損したプローブ3aが埋没している位置でフェライト量は極小となる。判断部5は、この極小値が閾値よりも小さい場合に、極小値をとる位置を破損したプローブ3aの埋没位置として検出する。
【0033】
この変形例の場合でも上記実施形態と同様に、被接合材と回転ツールとに互いにフェライト含有量の異なる材料を用いている。このため、接合部に沿ってフェライト量を測定すると回転ツールに破損が生じている場合には回転ツールの破損部分の埋没位置でフェライト量が変化し、当該位置を回転ツールの破損部分の埋没位置として検出できる。この変形例の場合でも、被接合材が大きい場合の被接合材の反転が不要であり、測定環境や測定スキルに依存しないため、簡便かつ精度よく回転ツールの破損部分の埋没位置を検出することができる。
【0034】
また、上記実施形態では、接合完了後に測定ステップと検出ステップとを行ったが、別の変形例として、接合中に測定ステップと検出ステップとを行ってもよい。
図5は、この変形例の測定ステップを示す断面図である。同図に示すように、回転ツール3のプローブ3aを被接合材2a,2bの当接部分Lに押し込んで回転させることによって、当接部分Lに沿って接合部Wを形成すると同時に、測定センサ4を回転ツール3に追随させて接合部Wにおけるフェライト量の測定を行い、回転ツール3が破損した場合にその破損部分の埋没位置を検出する。
【0035】
回転ツール3の破損部分の埋没位置が検出された場合は、検出ステップに後続して再接合ステップを行う。具体的には、まず、埋没位置検出後ただちに接合を中断し、回転ツール3を新しい回転ツールと交換する。次に、回転ツール3の破損部分の埋没位置に穴21を形成することよって回転ツール3の破損部分を除去する。続いて、穴21に溶加材を充填した後に、新しい回転ツール3を用いた摩擦攪拌接合によって被接合材2a,2b同士を再接合する。
【0036】
この変形例の場合、接合中にリアルタイムで回転ツールの破損部分の埋没位置を検出することができ、また、埋没位置が検出された場合にすぐに再接合を行うことができるため、効率よく接合不良の少ない接合体が得られる。
【0037】
また、上記実施形態では、被接合材2a,2bの端面同士を当接させて接合(突合せ接合)したが、被接合材2a,2bの端部付近同士を重ね合わせて当接させた状態で接合(重ね合わせ接合)してもよい。この場合でも上記実施形態と同様に、簡便かつ精度よく回転ツールの破損部分の埋没位置を検出することができる。
【符号の説明】
【0038】
1…定盤、2a,2b…被接合材、3…回転ツール、3a…プローブ、4…測定センサ、5…判断部、21…穴、L…当接部分、W…接合部。