(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記(a)は、前記筐体として、前記筐体側挿入口の端部が凹形状を有する連結部を有する筐体と、前記コネクタとして、前記溶接部が前記凹形状に対応した凸形状を有するコネクタを用意し、
前記(b)は凹形状の前記連結部に、凸形状の前記溶接部を挿入し、
前記(c)は、前記連結部側から前記溶接部に加熱用レーザ光を照射する、
請求項10に記載のコネクタ固定構造の製造方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1の構造では、シール材およびシール材を固定するための構成が必須となるため、部品点数の削減が困難であり、小型化が困難であると共に、組立てが複雑になり、高コストになるという問題があった。
【0007】
即ち、特許文献1の構造では、シール材6を筐体2とボトムケース110に密着させるために傾斜面を有する案内部114、楔部122、山形の突起241を有する複雑な構造を有しており、これを小型化するのは困難であると共に、組立ても複雑化し、高コスト化の原因となる。
【0008】
そのため、特に携帯電話やスマートフォンに代表される小型電子機器のコネクタにおいては、防水構造の小型化が必須の要件であることから、シール材を設ける構造は採用し難いという問題があった。
【0009】
本発明は、このような問題点の改善の為になされたものであり、その目的は、従来よりも簡易な構造で防水が可能なコネクタ固定構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するため、本発明の第1の態様は、内側に突出した筒状の樹脂製の筐体側挿入口が一体成形された筐体と、前記筐体内に設けられ、前記筐体側挿入口に連結されるコネクタと、を有し、前記コネクタは、前記筐体側挿入口に対応した形状を有するコネクタ側挿入口と、前記コネクタ側挿入口に設けられ、前記筐体側挿入口と組み合わされる樹脂製の溶接部と、を有し、
前記溶接部と前記筐体側挿入口の表面同士が全周に亘り溶け合って隙間無く一体化して、前記筐体側挿入口と前記コネクタ側挿入口が
溶着している、コネクタ固定構造である。
【0011】
前記筐体側挿入口は前記筐体の外側まで閉塞されずに開放され、相手側コネクタが挿入される筐体側貫通孔を有するのが望ましい。
【0013】
また、前記筐体側挿入口は、高さ方向の厚さが幅方向の厚さよりも薄いのが望ましく、この場合、前記筐体側貫通孔は、正面形状が例えば丸円であり、前記筐体側挿入口は、正面形状が例えば長円である。
【0014】
一方、前記コネクタ側挿入口も、高さ方向の厚さが幅方向の厚さよりも薄いのが望ましい。この場合も、前記コネクタ側挿入口は、相手側コネクタが挿入されるコネクタ側貫通孔を有し、前記コネクタ側貫通孔は、正面形状が例えば丸円であり、前記コネクタ側挿入口も、正面形状が例えば長円である。
【0015】
さらに、前記筐体側挿入口の端部は、凹形状を有する連結部を有し、前記溶接部は、前記連結部の凹形状に対応した凸形状を有するのが望ましい。
【0016】
本発明の第2の態様は、(a)内側に突出した筒状の樹脂製の筐体側挿入口が一体成形された筐体と、前記筐体内に設けられ、前記筐体側挿入口に連結されるコネクタと、を用意し、(b)前記筐体側挿入口と、前記コネクタに設けられ、筐体側挿入口に対応した形状を有するコネクタ側挿入口とを組み合わせ、(c)前記コネクタ側挿入口の溶接部
と前記筐体側挿入口の表面同士を全周に亘り溶け合わせて隙間無く一体化させることにより、前記筐体側挿入口と前記コネクタ側挿入口を
溶着させる、コネクタ固定構造の製造方法である。
【0017】
前記(c)は、前記筐体側挿入口の筐体側貫通孔が前記筐体の外側に、閉塞されずに開放されるように
溶着させるのが望ましい。
【0018】
また、前記(a)は、前記筐体として
、加熱用レーザ光を透過する樹脂で構成された筐体と、前記コネクタとして、少なくとも前記溶接部が、前記加熱用レーザ光を吸収する樹脂で構成されたコネクタを用意するのが望ましく、この場合、前記(c)は、
前記加熱用レーザ光を照射して前
記溶接部
と前記筐体側挿入口の表面同士を全周に亘り溶解させることにより、前記筐体側挿入口と前記コネクタ側挿入口を
溶着させる。
【0019】
また、前記(a)は、前記筐体として、前記筐体の端部が凹形状を有する連結部を有する筐体と、前記コネクタとして、前記溶接部が前記凹形状に対応した凸形状を有するコネクタを用意するのが望ましい。この場合、前記(b)は凹形状の前記連結部に、凸形状の前記溶接部を挿入し、前記(c)は、前記連結部側から前記溶接部に加熱用レーザ光を照射するのが望ましい。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、従来よりも簡易な構造で防水が可能なコネクタ固定構造を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、図面に基づき、本発明に好適な実施形態を詳細に説明する。
【0023】
まず、
図1〜
図6を参照して、本実施形態に係るコネクタ固定構造100の概略について説明する。
【0024】
ここではコネクタ固定構造100として、スマートフォンの筐体1に、オーディオプラグ210が挿入されるレセプタクルコネクタ3が固定された固定構造が例示されている。
【0025】
図1および
図2に示すように、コネクタ固定構造100は、筐体1とレセプタクルコネクタ3を有している。
【0026】
より詳細には、
図3〜
図5に示すように、コネクタ固定構造100は、内側に突出した筒状の樹脂製の筐体側挿入口5が一体成形された筐体1と、
図1および
図2に示すように、筐体1内に設けられ、筐体側挿入口5に連結されるレセプタクルコネクタ3を有している。
【0027】
図6に示すように、レセプタクルコネクタ3は、筐体側挿入口5に対応した形状を有するコネクタ側挿入口7と、コネクタ側挿入口7に設けられ、筐体側挿入口5と組み合わされる樹脂製の溶接部9を有している。
【0028】
また、詳細は後述するが、コネクタ固定構造100は、溶接部9の全周を溶解させることにより、筐体側挿入口5にコネクタ側挿入口7が溶接されている(本発明では溶接部9と筐体側挿入口5の表面同士が溶け合って隙間無く一体化するので溶着といってもよい)。
【0029】
次に、コネクタ固定構造100を構成する各部材について、より詳細に説明する。
【0030】
まず、筐体1の構造について、
図3〜
図5を参照して説明する。
【0031】
図3に示すように、筐体1は箱型の本体11を有しており、本体11は正面の一部が開放された開放部17を形成している。
【0032】
開放部17は、スマートフォンを構成する図示しない電子部品およびレセプタクルコネクタ3を組み込むために開放されており、かつ液晶等の表示部がはめ込まれる部分である。
【0033】
本体11はまた、
図5に示すように、上面の一部に、内側に突出した筒状の樹脂製の筐体側挿入口5が設けられている。
【0034】
なお、ここでいう「筒状」という用語は円筒状のみならず、外観が角型のものも含まれるものとする。
【0035】
筐体側挿入口5は
図5に示すように、長円(トラック状)の正面形状を有する部材であり、中心には後述するオーディオプラグ210の形状に対応した形状、ここでは正面形状が丸穴状の筐体側貫通孔13が形成されている。筐体側貫通孔13にはオーディオプラグ210が挿入される。
【0036】
また、
図5に示すように、筐体側挿入口5の肉厚は、幅方向の肉厚L1よりも高さ方向の肉厚L2が薄くなっている。
【0037】
そのため、肉厚L2を厚くすることにより、高さ方向の肉厚L1を厚くしなくとも筐体側挿入口5の強度を確保でき、薄型低背化と強度の確保を両立できる。
【0038】
なお、筐体側挿入口5には蓋のような、筐体側貫通孔13を閉塞する部材は設けられておらず、筐体側貫通孔13は筐体1の内部から外部まで開放されている。
【0039】
また、
図4および
図5に示すように、筐体側挿入口5の筐体内側への突出方向の端部は他の部分よりも薄肉状の円環形状を有する凹形状の連結部15を有している。
【0040】
詳細は後述するが、連結部15はレセプタクルコネクタ3のコネクタ側挿入口7が挿入される部分である。
【0041】
次に、レセプタクルコネクタ3の構造について、
図6〜
図14を参照して説明する。
【0042】
図6に示すように、レセプタクルコネクタ3は基板21と、基板21上に実装された箱形のインシュレータ23と、インシュレータ23の一面に設けられ、筐体1の筐体側挿入口5に連結されるコネクタ側挿入口7を有している。
【0043】
より詳細には、
図7に示すように、インシュレータ23は、箱型の底部を構成するベースインシュレータ25と、ベースインシュレータ25と組み合わせられ、箱型の側部および上部を構成するカバーインシュレータ29を有している。
【0044】
ベースインシュレータ25にはオーディオプラグ210(
図14参照)が挿入される空間を形成する柱状のガイド部31が設けられており、ガイド部31の後方には、オーディオプラグ210を挟み込んで保持する一対の「く」の字の板状のロック部33、オーディオプラグ210の先端が突き当たるストッパである接触部35、および接触部35をオーディオプラグ210の挿入の向きと逆向きに押圧するバネ37が設けられている。
【0045】
また、
図7〜
図13に示すように、カバーインシュレータ29には、ガイド部31を囲むようにして、複数のコンタクト34が一体成形で設けられている。
【0046】
コンタクト34はオーディオプラグ210とレセプタクルコネクタ3を電気的に接続する部材であり、
図13に示すように、その一端がオーディオプラグ210と接触するように接点部36を構成し、かつ他端がカバーインシュレータの外側に露出し、基板21の接点45と半田等で接続される実装部43を構成している。
【0047】
一方、コネクタ側挿入口7は筐体側挿入口5に対応する形状を有している。
【0048】
具体的には、
図8に示すように、コネクタ側挿入口7は長円(トラック状)の正面形状を有する部材であり、中心にはオーディオプラグ210の形状に対応した形状、ここでは丸穴状のコネクタ側貫通孔39が形成されている。コネクタ側貫通孔39にはオーディオプラグ210が挿入される。
【0049】
また、
図8に示すように、コネクタ側挿入口7の肉厚は、幅方向の肉厚L3よりも高さ方向の肉厚L4が薄くなっている。
【0050】
そのため、肉厚L3を厚くすることにより、高さ方向の肉厚L4を厚くしなくともコネクタ側挿入口7の強度を確保でき、薄型低背化と強度の確保を両立できる。
【0051】
一方、コネクタ側挿入口7の端部は筐体側挿入口5の連結部15に対応した形状を有しており、溶接部9を構成している。具体的には、溶接部9は、
図12および
図13に示すように、連結部15の肉厚分だけ肉厚が薄い凸形状(ボス状)の形状を有しており、筐体側挿入口5の連結部15に挿入される。
【0052】
さらに、溶接部9は、その全周に渡って連結部15に溶接されており、防水構造を形成している。
【0053】
溶接の方法としては、溶接部9を溶解させることが可能な方法であれば、特に限定されるものではない。具体的な溶接方法としては、例えばレーザや超音波を用いたものが挙げられるが、必ずしもこれらに限定されるものではない。
【0054】
また、レーザの種類も特に限定されるものではなく、YAG(Yttrium Aluminum Garnet)レーザやレーザーダイオード等が利用できる。
【0055】
なお、レーザにより溶接を行う場合は、筐体1は、加熱用レーザ光を透過する樹脂で構成され、レセプタクルコネクタ3は、少なくとも溶接部9が、加熱用レーザ光を吸収する樹脂で構成される必要がある。
【0056】
レーザ光を透過する樹脂としては、非晶性樹脂や結晶性樹脂等が例示されるが、必ずしもこれに限定されるものではない。また、レーザ光を透過する樹脂を着色する場合は、染料系着色材料を用いて着色することにより、着色した状態でもレーザ光を透過させることが可能である。
【0057】
一方、加熱用レーザ光を吸収する樹脂としては、レーザ吸収性に優れた色素(黒色等)が用いられた樹脂を例示することができる。着色材料としては、顔料系吸収色素と、染料系吸収色素の組み合わせが望ましい。
【0058】
このように、コネクタ固定構造100においては、筐体1とレセプタクルコネクタ3とが溶接により連結され、防水構造を形成しているため、シール材が不要である。
【0059】
そのため、コネクタ固定構造100はシール材のない簡易な構造で防水構造を形成でき、コネクタ固定構造100の小型化・薄型化が容易となる。
【0060】
また、筐体1とレセプタクルコネクタ3は、溶接部9を連結部15に挿入し、溶接するだけで組み立て可能であるため、シール材を用いる場合と比較して、シール材を保持するための部材や保持するための工数が不要となる。
【0061】
そのため、組立ての手順も簡略化することができ、製造コストも低減できる。
【0062】
さらに、コネクタ固定構造100は溶接部9を連結部15に溶接するだけで組立てられるため、筐体側挿入口5を機械的に変形させることなく防水形状を構成できる。
【0063】
そのため、シール材を設ける場合と比較して筐体側挿入口5の形状や設置する位置の制約が少なく、設計の自由度が大きい。
【0064】
なお、前述のように、コネクタ固定構造100は、相手側コネクタとしてオーディオプラグ210が挿入されるものであるため、挿入の手順について、
図14を参照して簡単に説明する。
【0065】
まず、オーディオプラグ210のピン状の端子211を筐体側挿入口5の筐体側貫通孔13おおよびコネクタ側挿入口7のコネクタ側貫通孔39に挿入し、端子211の先端213を接触部35に突き当てる。
【0066】
さらに端子211をバネ37の反発力に逆らって挿入すると、先端213がロック部33に挟み込まれ、オーディオプラグ210が固定される。
【0067】
この状態では、コンタクト34が端子211の側面に接触し、オーディオプラグ210とコンタクト34が電気的に接続される。
以上が挿入の手順である。
【0068】
次に、コネクタ固定構造100の製造方法について、
図3、
図6、
図7、および
図15〜
図17を参照して簡単に説明する。
【0069】
まず、
図3に示す筐体1および
図6に示すレセプタクルコネクタ3を用意する。
【0070】
なお、レセプタクルコネクタ3を組み立てる場合は、例えば以下のような手順で組み立てる。
【0071】
まず、バネ37を接触部35に組み込んだ状態でカバーインシュレータ29に装着し、さらに、ロック部33をカバーインシュレータ29に組み込む。
【0072】
次に
図7に示すように、カバーインシュレータ29にコネクタ側挿入口7を連結する。
【0073】
カバーインシュレータ29とコネクタ側挿入口7の連結方法は例えば溶着が挙げられるが、必ずしもこれに限定されるものではない。
【0074】
次に、
図7に示すように、ベースインシュレータ25をコンタクト34と一体に形成し、ベースインシュレータ25とカバーインシュレータ29を組み合わせてインシュレータ23を形成する。
【0075】
最後に、
図6に示すように、コンタクト34(の実装部43)を基板21の接点45に半田等で接続し、レセプタクルコネクタ3が完成する。
【0076】
次に、レセプタクルコネクタ3と筐体1を組み合わせる。
【0077】
具体的には、まず、
図15に示すように、コネクタ側挿入口7の溶接部9を筐体側挿入口5の連結部15に位置を合わせ、
図16に示すように、溶接部9を連結部15に挿入する。
【0078】
次に、
図17に示すように、コネクタ側挿入口7の連結部15側からレーザ装置200を用いて溶接部9にレーザ光(
図17の矢印D)を照射する。
【0079】
この際、前述のように、筐体側挿入口5の連結部15はレーザ光を透過するが、コネクタ側挿入口7の溶接部9はレーザ光を吸収するため、照射されたレーザ光は連結部15を透過して溶接部9を加熱し、溶解させる。
【0080】
溶解した溶接部9は連結部15に溶接され、連結部15と溶接部9が接続される。
【0081】
さらに、レーザ光を溶接部9の全周に渡って照射することにより、溶接部9の全周が連結部15に溶接され、連結部15と溶接部9は防水構造を形成する。
【0082】
なお、溶接の際に筐体側挿入口5は変形しないため、筐体側貫通孔13の形状も変形しない。
【0083】
そのため、筐体側貫通孔13が変形・閉塞されることなく連結部15と溶接部9が連結される。
以上がコネクタ固定構造100の製造方法である。
【0084】
このように、本実施形態によれば、コネクタ固定構造100は、内側に突出した筒状の樹脂製の筐体側挿入口5が一体成形された筐体1と、筐体1内に設けられ、筐体側挿入口5に連結されるレセプタクルコネクタ3を有し、レセプタクルコネクタ3は、筐体側挿入口5に対応した形状を有するコネクタ側挿入口7と、コネクタ側挿入口7に設けられ、筐体側挿入口5と組み合わされる溶接部9を有し、溶接部9の全周を溶解させることにより、筐体側挿入口5とコネクタ側挿入口7が溶接されている。
【0085】
そのため、コネクタ固定構造100は、シール材が不要であり、簡易な構造で防水構造を形成できる。
【0086】
また、筐体1とレセプタクルコネクタ3は、溶接部9を連結部15に挿入し、溶接するだけで組み立て可能であるため、シール材を用いる場合と比較して、シール材を保持するための部材や保持するための工数が不要となる。
【0087】
そのため、組立ての手順も簡略化することができ、製造コストも低減できる。
【0088】
さらに、コネクタ固定構造100は溶接部9を連結部15に溶接するだけで組立てられるため、筐体側挿入口5を機械的に変形させることなく防水形状を構成できる。
【0089】
そのため、シール材を設ける場合と比較して筐体側挿入口5の形状や設置する位置の制約が少なく、設計の自由度が大きい。
【0090】
また、筐体側挿入口5は、高さ方向の肉厚L2よりも幅方向の肉厚L1が厚くなっており、幅方向の肉厚で強度を確保している。同様に、コネクタ側挿入口7の高さ方向の肉厚L4よりも幅方向の肉厚L3が厚くなっており、幅方向の肉厚で強度を確保している。
【0091】
そのため、コネクタ側挿入口7および筐体側挿入口5は、低背化が容易である。