(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
電動義手のハンドを開閉させるためのモータ(制御対象)を制御するための制御信号として、電動義手が装着される人体の前腕部に取付けられ、筋肉を動かすために脳から送られる微弱な電気的な信号(表面筋電位)を検知して制御信号として出力する筋電センサが提案されている(特許文献1)。
【0003】
しかしながら、特許文献1のような技術では、人体の表面筋電位を検知するようにしているため、使用者の意思どおりにハンドを動作させることが困難であった。詳述すると、一般の使用者では、表面筋電位を安定して発生させることが難しく、使用者が同じように操作した(表面筋電位を発生させた)つもりでも、筋電センサにより検知される値が異なるため、電動義手のハンドによって物を掴むことができたり、掴むことができなかったりして、動作が不安定となる問題があった。そのため、表面筋電位を安定して発生させることができるように、長期に亘って訓練を行う必要があり、電動義手の操作の習熟に時間がかかってしまう問題があった。
【0004】
また、訓練によって表面筋電位を安定して発生させることができるようになったとしても、例えば、ハンドによって物を掴ませた状態で、その物を移動させるために腕を動かす場合、腕を動かすことによって筋電センサで検知している部位で意図しない表面筋電位が発生してしまうことがあり、その意図しない表面筋電位が筋電センサによって検知されると、ハンドに掴ませた物を放してしまうような誤動作をする問題があった。
【0005】
ところで、筋電センサとは別に、タッチ式のスイッチを設け、スイッチを操作することで使用状況に応じた動作モードで動作させることができるようにした電動義手が提案されている(特許文献2)。
【0006】
しかしながら、特許文献2の技術では、電動義手を装着している腕とは反対側の腕でスイッチを操作する必要があるため、両腕を用いた作業を行う場合、反対側の腕でスイッチを操作することができない問題がある。そこで、スイッチを、例えば、人体の肩に取付けて顎や首筋等で操作できるようにしたり、足で操作できるようにしたりすることが考えられるが、使用者に無理な姿勢を強いることとなり、使用し辛くなる虞がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
そこで、本発明は上記の実情に鑑み、制御対象の誤動作を低減すると共に使用者が簡単に入力操作できる人体検知装置の提供を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の課題を解決するために、本発明に係る人体検知装置は、「人体における関節間に装着される装着部材と、該装着部材に取付けられており、人体における該装着部材が装着されている部位において互いに異なる動きを夫々検知する
第一検知センサ及び第二検知センサと、
前記第一検知センサ及び前記第二検知センサによる検知信号を、制御対象を制御するための制御信号に変換して出力する出力部とを具備し、
前記装着部材は、前記第二検知センサが取付けられ、可撓性を有したシート状のベース部と、該ベース部の一方の面に取付けられており人体表面に着脱可能に貼付けられるシート状の粘着部と、該粘着部と前記ベース部との間において、互いに対向している面とは反対側の面に接着力を弱める離型層を有しており、互いの間に前記第一検知センサが取付けられている一対の第三シートとを有している」ことを特徴とする。
また、本発明に係る人体検知装置は、上記の構成に加えて、「前記第一検知センサは、前記装着部材が装着されている部位の人体表面の形状変化を検知するものであり、前記第二検知センサは、人体における前記装着部材が装着されている部位に作用する加速度又は角速度を検知するものである」ことを特徴としても良い。なお、以下において、「複数の検知センサ」の記載は、第一検知センサ及び第二検知センサのことである。
【0010】
ここで、「関節間」としては、「肩関節とひじ関節の間」、「ひじ関節と手関節の間」、「手関節よりも手先側」、「股関節とひざ関節との間」、「ひざ関節と足関節との間」、「足関節よりも足先側」、「肩関節と股関節の間」、「首(頸椎)よりも頭側」、「首関節と股関節の間(胴体)」、を例示することができる。
【0011】
また、「装着部材」としては、「可撓性を有したシート状のベース部と、ベース部の一方の面に接着されており人体表面に貼付けられる粘着部と、を有している装着部材」、「人体に巻き掛けられる帯状のベース部と、ベース部の一方の面と反対側の面とに取付けられており互いに係合可能な面ファスナーと、を有している装着部材」、「人体に巻き掛けられる帯状のベース部と、ベース部の一端に取付けらておりベース部の他端側を取付けるためのバックルと、を有している装着部材」、「人体の一部を挿入可能とされており伸縮性を有した筒状の装着部材」、を例示することができる。また、装着部材は、検知センサ毎に分離していても良い。
【0012】
更に、「人体における装着部材が装着されている部位の動き」としては、「人体表面の形状(凹凸)変化」、「関節間を結んだ軸線に対して直角方向に加速度が作用する動き」、「関節間を結んだ軸線の延びている方向に加速度が作用する動き」、「関節間を結んだ軸線の周りを回動(回旋)する動き」、「人体表面の伸縮」、を例示することができる。
【0013】
また、「検知センサ」としては、「歪センサ」、「加速度センサ」、「感圧センサ」、「ジャイロセンサ(ジャイロスコープ)」、「ポテンショメータ」、「人体表面に発光部から照射た光を受光部で受光して動きを検知する光学センサ」、「振動センサ」、を例示することができる。また、複数の検知センサは、異なる種類のセンサであっても良いし、同じ種類のセンサであっても良い。
【0014】
また、「出力部」としては、「検知センサによる検知信号を増幅する増幅回路を有しているもの」、「検知センサによる検知信号からノイズを除去したり特定の周波数(動き)や閾値以上の検知信号等を取り出したりするフィルタ回路を有しているもの」、「検知センサによる検知信号が予め設定された閾値を超えたか否かを判定する判定回路を有しているもの」、「検知センサによる検知信号に対して演算処理を行う演算回路を有しているもの」、「検知センサを駆動させるためのセンサ駆動回路を有しているもの」、「検知センサによる検知信号をそのまま制御信号として出力するもの」、を例示することができる。また、「出力部」からは、複数の検知センサからの検知信号を夫々別々の制御信号として出力させるようしても良いし、複数の検知センサからの検知信号をまとめて一つの制御信号として出力させるようにしても良い。
【0015】
更に、「制御対象」としては、「駆動源により駆動される義肢(電動義手、電動義足、等)」、「パワーアシストスーツ」、「車椅子」、「工具」、「介護装置」、「パーソナルコンピュータ」、を例示することができる。
【0016】
本構成では、人体の関節間に装着部材を装着することで、互いに異なる動きを検知する複数の検知センサを、当該関節間に取付けている。そして、当該関節間において使用者が或る動きを行うと、複数の検知センサのうち、或る動きに対応している検知センサのみが動きを検知し、その検知信号を、制御対象を制御するための制御信号に変換して出力する。一方、複数の検知センサのうち、或る動きに対応していない検知センサでは、或る動きを検知しないため、それら検知センサに係る制御信号は出力されない。従って、装着部材を装着している人体の関節間において、特定の動きに対応している検知センサのみがその動き検知して制御信号を出力するため、他の検知センサが誤検知することはなく、誤検知による制御対象の誤動作を低減させることができる。
【0017】
また、上記のように、互いに異なる動きを検知する複数の検知センサが、誤検知することがないため、使用者が、装着部材を装着している関節間において異なる動き(入力操作)を行うことにより、互いに干渉することのない異なる複数の制御信号を制御対象へ出力することができる。従って、異なる複数の制御信号を出力することができるため、制御対象に対してより複雑な入力操作を行うことができる。換言すると、複雑な入力操作を必要する制御対象にも、本構成の人体検知装置を用いることができる。
【0018】
更に、人体における関節間に、複数の検知センサが取付けられている装着部材を装着することで、上記のように、異なる複数の制御信号を出力することができるため、特許文献2のような従来の技術と異なり、装着部材を装着していない反対側の腕等の部位を用いて別の制御信号を出力するスイッチを操作する必要がない。従って、装着部材を装着した当該関節間のみで制御対象に対して入力操作を行うことが可能となるため、人体における他の部位を自由に使用することができる。
【0020】
ここで、「人体表面の形状変化」としては、「骨の移動による表面の形状変化(具体的には、ひじ関節と手関節の間の前腕部や、ひざ関節と足関節の間の下腿部のように二本の骨が延びている関節間において、互いの骨が捩れるように移動させることによる表面の形状変化)」、「筋肉の伸長・収縮による表面の形状変化」、を例示することができる。
【0021】
また、人体表面の形状変化を検知する「第一検知センサ」としては、「歪センサ」、「感圧センサ」、「人体表面に光を照射して動きを検知する光学センサ」、を例示することができる。
【0022】
更に、「装着部材が装着されている部位に作用する加速度」としては、「互いに直交した三方向に作用する加速度」、「関節間を結んだ軸線に対して直交した方向に作用する加速度」、「関節間を結んだ軸線の延びた方向に作用する加速度」、「関節間を結んだ軸線の周りを回る方向へ作用する加速度」、を例示することができる。
【0023】
また、加速度又は角速度を検知する「第二検知センサ」としては、「互いに直交した三方向に作用する加速度を検知する加速度センサ」、「一方向に作用する加速度のみを検知する加速度センサ」、「ジャイロセンサ」、「振動センサ」、を例示することができる。
【0024】
装着部材を装着する関節間では、当該関節間にある筋肉を伸長・収縮させたり、当該関節間に亘って二本の骨が延びている場合はそれら二本の骨が捩れるように骨を移動させたりすることで、人体表面の形状を変化させることができる。また、当該関節間では、当該関節間において胴体に近い側の関節よりも胴体側の筋肉(例えば、上腕二頭筋、上腕三頭筋、三角筋、大腿二頭筋、大腿四頭筋、等)を伸長・収縮させることで、胴体に近い側の関節を中心に当該関節間を回動させたり、当該関節間における胴体に近い側の関節を含む胴体に近い側の複数の関節を夫々中心に適宜回動させたりすることで、当該関節間に加速度を作用させることができる。
【0025】
そして、当該関節間において、人体表面の形状を変化させた場合、表面の形状変化だけでは十分な加速度を当該関節間に作用させることは難しい。一方、当該関節間において加速度を作用させた場合、当該関節間における人体表面の形状を変化させることなく加速度を作用させることが可能である。
【0026】
本構成によれば、装着部材を装着している関節間の表面形状を変化させると、第一検知センサのみがその動きを検知し、当該関節間に加速度を作用させると、第二検知センサのみがその動きを検知することとなり、第一検知センサと第二検知センサとによって、当該関節間における互いに異なる動きを確実に検知することができる。従って、上述した作用効果を確実に奏することが可能な人体検知装置を具現化することができる。
【0028】
ここで、可撓性を有したシート状の「ベース部」としては、「発泡樹脂シート」、「ゴムシート」、「シリコーン樹脂シート」、「織布」、「不織布」、を例示することができる。
【0029】
また、「粘着部」としては、「親水性ゲルシート」、「疎水性ゲルシート」、「導電性ゲルシート」、等を例示することができる。また、「粘着部」の材質としては、「シリコーン樹脂」、「アクリル樹脂」、「ゴム」、「ウレタン樹脂」、等を例示することができる。
【0030】
本構成によれば、複数の検知センサが取付けられている装着部材を、粘着部によって人体表面に貼付けて装着しているため、例えば、帯状の装着部材を人体に巻き付けて装着する場合と比較して、人体に対して装着部材が移動することはない。従って、人体に対する検知センサの位置ズレを防止することができ、人体の動きを確実に検知させることができる。また、検知センサの位置ズレを防止することができるため、位置ズレによる誤検知を抑制することができ、制御対象の誤動作を低減させることができる。
【0031】
また、粘着部を人体表面に貼付けることで装着部材を装着することができるため、例えば、装着部材を帯状の部材として、面ファスナーやバックルを用いて装着するようにした場合と比較して、片手でも装着部材を人体表面に貼付けて簡単に装着することができ、使い易くすることができる。
【発明の効果】
【0032】
このように、本発明によれば、制御対象の誤動作を低減すると共に使用者が簡単に入力操作できる人体検知装置を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0034】
本発明の一実施形態である人体検知装置10について、
図1乃至
図8を参照して詳細に説明する。本実施形態では、人体検知装置10を、制御対象としての電動義手20に適用した例について説明する。本実施形態の人体検知装置10は、人体1における関節間2に装着される装着部材11と、装着部材11に取付けられており、人体における装着部材11が装着されている部位において互いに異なる動きを夫々検知する複数の検知センサ12と、複数の検知センサ12による検知信号を、電動義手20を制御するための制御信号に変換して出力する出力部13と、を備えている。
【0035】
装着部材11は、
図1に示すように、人体1の関節間2として、ひじ関節3と手関節の間(前腕部2a)に装着されるものである。装着部材11は、長方形のシート状(パッド状)に形成されている。この装着部材11は、
図2等に示すように、可撓性を有したシート状のベース部11aと、ベース部11aの一方の面に取付けられており人体表面に着脱可能に貼付けられるシート状の粘着部11bと、を有している。ベース部11aと粘着部11bは、同じ大きさに形成されており、粘着部11bの粘着力によって互いに取付けられている。ベース部11aは、発泡樹脂シートによって形成されている。また、粘着部11bは、親水性高分子からなる親水性ゲルシートによって形成されている。
【0036】
また、装着部材11は、
図2に示すように、ベース部11aと粘着部11bとの間に取付けられ湾曲状に曲がる平板状のサポート部11cと、サポート部11cのベース部11a側の面に取付けられる第一シート11dと、第一シート11dのベース部11a側の面に取付けられる第二シート11eと、第二シート11eのベース部11a側の面に取付けられる一対の第三シート11fと、を有している。サポート部11cは、ベース部11a及び粘着部11bよりも大きさが小さい。このサポート部11cは、ステンレス合金やアルミ合金等の金属板、合成樹脂板、厚紙、等により、曲げた時に皺が生じない厚さに形成されている。
【0037】
第一シート11d、及び、第二シート11eは、サポート部11cと同じ大きさで、合成樹脂により形成されている。これら、サポート部11c、第一シート11d、及び、第二シート11eは、両面のうちの少なくともベース部11aを向いた面に、粘着層を有している。また、一対の第三シート11fは、サポート部11c等よりも大きさが小さい。これら第三シート11fは、紙、又は、合成樹脂によって形成されており、互いに対向している面に粘着層を有していると共に、それとは反対の面に接着力を弱める離型層を有している。
【0038】
複数の検知センサ12は、人体表面の形状変化を検知する第一検知センサ12Aと、人体における装着部材11が装着されている部位に作用する加速度を検知する第二検知センサ12Bと、で構成されている。
【0039】
第一検知センサ12Aは、撓み量によって電気抵抗値が変化する歪センサである。この第一検知センサ12Aは、
図2に示すように、長方形で平板状のセンサ本体12aと、センサ本体12aから外部へ延び出しているリード線12bと、リード線12bを被覆している被覆管12cと、センサ本体12aと被覆管12cとの間で露出しているリード線12bを覆う被覆部12dと、を有している。被覆部12dは、熱可塑性樹脂により構成されており、リード線12bが断線しないように保護している。
【0040】
この第一検知センサ12Aは、
図2に示すように、装着部材11において、ベース部11aと粘着部11bとの間に取付けられている。詳しくは、第一検知センサ12Aは、センサ本体12aの長手方向を、装着部材11の長手方向と同じ方向へ向けて、センサ本体12aと被覆部12dとが一対の第三シート11fの間に取付けられている。また、第一検知センサ12Aは、被覆管12cに被覆されたリード線12bが、装着部材11の長辺から外部に延び出すように取付けられている(
図1を参照)。
【0041】
また、第二検知センサ12Bは、互いに直交した三方向に作用する加速度を検知する。この第二検知センサ12Bは、
図1等に示すように、装着部材11のベース部11aにおいて、粘着部11bとは反対側の面に取付けられている。第二検知センサ12Bは、被覆管に被覆されたリード線12eを有しており、このリード線12eが、第一検知センサ12Aの被覆管12cと一緒に装着部材11から外部の出力部13まで延び出している。
【0042】
出力部13は、
図4に示すように、検知センサ12を駆動させるための電力を供給するセンサ駆動回路13aと、検知センサ12からの検知信号を制御信号に変換する変換回路13bと、を備えている。変換回路13bは、検知センサ12からの検知信号を増幅する増幅回路13cと、検知信号に含まれているノイズを除去したり特定の周波数のみを通したりするフィルタ回路13dと、検知信号に対して演算処理を行う演算回路13eと、を備えている。この出力部13は、図示は省略するが、電動義手20に取付けられている。
【0043】
出力部13の変換回路13bにおいて、第一検知センサ12Aからの検知信号に対しては、
図5に示すように、増幅回路13cにて増幅処理(ステップS11)を行った後に、フィルタ回路13dにてローパスフィルタ処理(ステップS12)を行うことで、制御信号に変換し、演算回路13eを通さずに出力する。
【0044】
一方、第二検知センサ12Bからの検知信号に対しては、
図6に示すように、まず、増幅回路13cにて増幅処理(ステップS21)を行った後に、フィルタ回路13dにてバンドパスフィルタ処理(ステップS22)を行う。続いて、演算回路13eにおいて、三方向の各方向に対して夫々2乗平均処理(ステップS23)を行い、それらの値に対して時間微分処理(ステップS24)を行って躍度(加速度の時間微分)を求める。その後、各方向の躍度に対して絶対値処理(ステップS25)を行った後に、それらを合算することで、制御信号に変換して出力する。このように、本実施形態の変換回路13bは、第一検知センサ12Aと第二検知センサ12Bとでは異なる回路を通って制御信号に変換する。
【0045】
次に、本実施形態の人体検知装置10を適用した電動義手20について説明する。電動義手20は、
図1に示すように、使用者の人体1の前腕部2aを覆う義手取付部材21と、義手取付部材21の前端に取付けられている把持装置25と、人体検知装置10からの制御信号に基づいて把持装置25を制御する制御装置30(
図4を参照)と、を備えている。
【0046】
義手取付部材21は、前腕部2aの外周の半分以上を覆うように筒状又は断面がC字状に形成されている。義手取付部材21は、前腕部2aに取付けた状態で、前腕部2aよりも前端(失われた部位)側へ突出する長さに形成されている。
【0047】
この義手取付部材21内に前腕部2aを挿入することにより、前腕部2aに義手取付部材21を取付けることができる。また、義手取付部材21を前腕部2aに取付けた状態では、前腕部2aの前端側を自由に回旋させることができる。
【0048】
把持装置25は、義手取付部材21の前端に取付けられる本体部26と、本体部26によって開閉可能に取付けられている一対の把持部27と、一対の把持部27を開閉駆動し本体部26内に取付けられているモータ28(
図4を参照)と、を備えている。モータ28は、回転位置を出力することができるサーボモータである。
【0049】
制御装置30は、制御プログラムを実行させて演算を行うCPUを備えている制御部31と、制御部31で実行される制御プログラムや設定値、演算の際の一時的な数値、等を記憶するための記憶部32と、制御部31からの駆動信号に基いてモータ28を駆動させるモータ駆動部33と、を備えている。また、図示は省略するが、制御装置30は、制御部31や、モータ駆動部33等に電力を供給するための電源部を備えている。
【0050】
本実施形態の制御装置30は、マイクロコンピュータ(マイコン)である。制御装置30の制御部31には、人体検知装置10からの制御信号と、モータ28からの回転位置信号が入力される。人体検知装置10からの制御信号は、第一検知センサ12Aに係る制御信号と、第二検知センサ12Bに係る制御信号とが、夫々別々に制御部31に入力される。また、制御部31からは、モータ駆動部33へモータ28の駆動信号が出力される。この制御装置30は、本体部26または、使用者の身体や着衣に取付けられる。
【0051】
続いて、本実施形態の人体検知装置10の使用方法について説明する。人体1の関節間2としての前腕部2aの前端付近に、人体検知装置10の装着部材11を装着する。具体的には、装着部材11の粘着部11bを、前腕部2aに対向するように向けると共に、その長手方向を前腕部2aの軸線周りの方向へ向ける。そして、装着部材11を、前腕部2aに巻き付けるように、前腕部2aに粘着部11bを接触させる。これにより、粘着部11bの粘着力によって、検知センサ12と一緒に装着部材11が前腕部2aに取付けられる。
【0052】
前腕部2aに装着部材11を取付けた状態では、
図3に示すように、橈骨2bと尺骨2cとが互いに捩れるように前腕部2aを回旋させると、橈骨2bと尺骨2cが並んでいる向きに応じて、前腕部2aの表面形状(曲率)が変化する。これにより、前腕部2aの表面に貼付けられ(装着され)ている第一検知センサ12Aの曲率も変化するため、第一検知センサ12Aによって前腕部2aの回旋位置に応じた制御信号を出力することができる。なお、
図3では、人体検知装置10において、便宜上、ベース部11a、粘着部11b、及び第一検知センサ12Aのみを記載している。また、
図3は、前腕部2aに対する装着部材11の装着の一例であり、橈骨2b及び尺骨2cと装着部材11(第一検知センサ12A)との位置関係を限定するものではない。
【0053】
ところで、第一検知センサ12Aのセンサ本体12aの両面に取付けられている第三シート11fにおいて、センサ本体12aとは反対側の面に離型層を有しているため、この離型層を境にして、センサ本体12aをベース部11aや粘着部11bに対して滑らせることができる。従って、第一検知センサ12Aと一緒に装着部材11を曲げた時に、第三シート11fの離型層を境に滑ることで、ベース部11aや粘着部11b等との曲率の違いを吸収することができ、装着部材11(第一検知センサ12A)をスムーズに曲げることができ、前腕部2aの回旋を検知することができる。
【0054】
また、装着部材11では、第一検知センサ12Aと粘着部11bの間に、皺が生じないサポート部11cを有しているため、サポート部11cによって前腕部2aの表面の部分的な凹凸を平滑化させることができ、第一検知センサ12Aにより前腕部2aの表面形状の変化を安定して検知させることができる。詳述すると、センサ本体12aを粘着部11bに直接取付けた場合、センサ本体12aが前腕部2aの表面の部分的な凹凸に沿って変形してしまうため、その凹凸の部分が検知信号の全体に影響を与えてしまい、センサ本体12aの撓み量に対する本来の検知信号とは異なった検知信号を出力することがある。これに対して、センサ本体12aと粘着部11bの間にサポート部11cを取付けることで、サポート部11cによって部分的な凹凸を生じさせることなくセンサ本体12aを撓ませることができ、撓み量に対する本来の検知信号を確実に出力させることができる。
【0055】
このように、前腕部2aに装着部材11を装着したら、続いて、前腕部2aに電動義手20の義手取付部材21を取付ける。そして、人体検知装置10の出力部13と、電動義手20の制御装置30とを電気的に接続する。なお、出力部13と制御部31との接続は、人体検知装置10や電動義手20を前腕部2aに装着する前に行っても良い。
【0056】
人体検知装置10と電動義手20の装着が完了したら、電動義手20における図示しない電源スイッチをONにする。この際に、前腕部2aの回旋位置を、回旋範囲の中央の位置(
図3の(a)と(b)との間の位置)としておく。本実施形態では、電動義手20の電源を入れると、人体検知装置10にも電源が供給される。そして、電動義手20の制御部31では、記憶部32から制御プログラムを読み出して実行する。この制御プログラムは、実行当初は「補正・ホールドモード」が実行される。
【0057】
「補正・ホールドモード」は、
図7に示すように、まず初めに、モータ28の駆動をホールド、つまり、動かないようにロックする(ステップS31)。続いて、第一検知センサ12Aからの制御信号が適正範囲内か否かが判定される(ステップS32)。そして、第一検知センサ12Aからの制御信号が適正範囲であれば(ステップS32においてYES)、現状のままの状態で、「補正・ホールドモード」を終了させる。一方、第一検知センサ12Aからの制御信号が適正範囲でなければ(ステップS32においてNO)、第一検知センサ12Aからの制御信号が適正範囲よりも低いか否かが判定される(ステップS33)。
【0058】
そして、第一検知センサ12Aからの制御信号が適正範囲よりも低いと判定される(ステップS33においてYES)と、制御信号が適正範囲内となるように、制御信号に対して増加補正(ステップS34)を行って、「補正・ホールドモード」を終了させる。一方、第一検知センサ12Aからの制御信号が適正範囲よりも低くないと判定された(ステップS33においてNO)場合、先のステップS32において第一検知センサ12Aからの制御信号が適正範囲内ではない(NO)と判定されていることから、第一検知センサ12Aからの制御信号が適正範囲よりも高いと判断し、制御信号が適正範囲内となるように、制御信号に対して減少補正(ステップS35)を行って、「補正・ホールドモード」を終了させる。
【0059】
このように、「補正・ホールドモード」では、開始(ステップS31においてモータ28の駆動をホールド)した時点での、第一検知センサ12Aからの制御信号(前腕部2aの回旋位置)を、後述する「動作モード」における原点信号(前腕部2aの回旋原点)として、自動的に補正することができる。また、「補正・ホールドモード」では、ステップS31の処理によって、モータ28の駆動をホールドすることができる。
【0060】
「補正・ホールドモード」によって、第一検知センサ12Aからの制御信号に対する補正が完了したら、「モード変更」を行う。「モード変更」は、装着部材11が装着されている部位で後述する閾値以上の加速度が作用するように、前腕部2aを回旋させずに、前腕部2aを振ったり振動させたりするように動かすことにより行う。本実施形態の加速度を検知する第二検知センサ12Bは、三方向の加速度を検知することができるため、前腕部2aを何れの方向へ動かしても良い。また、「モード変更」は、割込みルーチンである。この「モード変更」は、
図8に示すように、第二検知センサ12Bからの制御信号が、予め設定されている閾値を超えるまで待機している(ステップS41においてNO)。
【0061】
そして、第二検知センサ12Bからの制御信号が閾値を超える(ステップS41においてYES)と、現在のモードが「動作モード」であるか否かが判定される(ステップS42)。電動義手20の電源スイッチをONにした当初は、「補正・ホールドモード」となっているため、現在のモードが「動作モード」ではないと判定され(ステップS42においてNO)、「補正・ホールドモード」から「動作モード」に切替える(ステップS43)。その後、モータ28の駆動のホールドを解除して(ステップS44)、「モード変更」を終了させる。
【0062】
一方、現在のモードが「動作モード」であると判定された(ステップS42においてYES)場合は、「動作モード」から「補正・ホールドモード」に切替えて(ステップS45)、「モード変更」を終了させる。
【0063】
このように、「モード変更」では、前腕部2aに装着されている装着部材11の部位に閾値以上の加速度を作用させることにより、「補正・ホールドモード」から「動作モード」、或は、「動作モード」から「補正・ホールドモード」、に変更させることができる。
【0064】
「動作モード」では、前腕部2aの表面形状(回旋位置)の変化を検知する第一検知センサ12Aからの制御信号に基づいて、把持装置25のモータ28を駆動させて一対の把持部27を開閉動作させる。この「動作モード」としては、例えば、前腕部2aの回旋範囲内において、中央の位置から外回旋(手の甲が体の前方へ向かう回旋)させると一対の把持部27が開く方向にモータ28を回転させ、中央の位置から内回旋(手の甲が体の後方へ向かう回旋)させると一対の把持部27が閉じる方向にモータ28を回転させる。
【0065】
この「動作モード」において、前腕部2aを内回旋させて、一対の把持部27により「物」を把持させた状態で、前腕部2aに閾値以上の加速度を作用させると、「モード変更」により「動作モード」から「補正・ホールドモード」に変更される。「補正・ホールドモード」に変更されると、モータ28の駆動がホールドされ、前腕部2aを回旋させても、一対の把持部27は動くことはなく、「物」を把持した状態で維持される。これにより、前腕部2aやその他の身体等を使って、一対の把持部27に把持させた「物」を自由に移動させることができる。把持させた「物」を放す場合は、もう一度、前腕部2aに閾値以上の加速度を作用させると、「補正・ホールドモード」から「動作モード」に変更されると共に、モータ28の駆動のホールドが解除される。その後、前腕部2aを外回旋させることにより、一対の把持部27を開かせて「物」を放すことができる。
【0066】
このように、本実施形態の人体検知装置10では、人体の関節間としてのひじ肘関節3と手関節の間(前腕部2a)に装着部材11を装着することで、互いに異なる動きを検知する第一検知センサ12Aと第二検知センサ12Bを、当該関節間に取付けている。そして、装着部材11を装着している前腕部2aの表面形状を変化させると、第一検知センサ12Aのみがその動きを検知し、前腕部2aに加速度を作用させると、第二検知センサ12Bのみがその動きを検知することとなり、第一検知センサ12Aと第二検知センサ12Bとによって、前腕部2aにおける互いに異なる動きを確実に検知することができる。従って、装着部材11を装着している前腕部2aにおいて、特定の動きに対応している検知センサ12のみがその動き検知して出力部13から制御対象としての電動義手20へ制御信号を出力するため、他の検知センサ12が誤検知することはなく、誤検知による電動義手20の誤動作を低減させることができる。
【0067】
また、前腕部2aに、第一検知センサ12Aと第二検知センサ12Bとが取付けられている装着部材11を装着することで、異なる二つの制御信号を出力することができるため、従来の技術とは異なり、装着部材11を装着していない反対側の腕等の部位を用いて別の制御信号を出力するスイッチを操作する必要がない。従って、装着部材11を装着した前腕部2aのみで電動義手20に対して入力操作を行うことができるため、人体における他の部位を自由に使用することができる。
【0068】
また、第一検知センサ12A及び第二検知センサ12Bによって、装着部材11を装着している前腕部2aにおける人体の動きを検知しているため、表面筋電位を検知する従来の技術とは異なり、筋肉があれば容易に動かすことができ、使用者の操作に対する意思(動き)を確実に検知することができる。従って、電動義手20に対して簡単に入力操作を行うことができ、入力操作の習熟に必要な訓練期間を短縮することができる。
【0069】
更に、装着部材11を、粘着部11bによって前腕部2aの表面に貼付けて装着しているため、例えば、帯状の装着部材を人体に巻き付けて装着する場合と比較して、前腕部2aの表面に対して装着部材11が移動することはない。従って、前腕部2aの表面に対する検知センサ12の位置ズレを防止することができ、人体の動きを確実に検知させることができる。また、検知センサ12の位置ズレを防止することができるため、位置ズレによる誤検知を抑制することができ、電動義手20の誤動作を低減させることができる。
【0070】
また、粘着部11bを前腕部2aの表面に貼付けることで装着部材11を装着するようにしているため、例えば、装着部材を帯状の部材として、面ファスナーやバックルを用いて装着するようにした場合と比較して、片手でも装着部材11を前腕部2aの表面に貼付けることができる。
【0071】
更に、装着部材11では、第一検知センサ12Aと粘着部11bとの間に、第一シート11d、第二シート11e、及び第三シート11f等の複数のシートを有しているため、粘着部11bに対して第一検知センサ12Aやベース部11aが強力に貼付くのを抑制することができる。従って、第一検知センサ12Aが故障した時や、装着部材11を洗浄する時に、粘着部11bを容易に剥がすことができる。なお、粘着部11bは人体に貼付けられることから汚れ易いため、粘着部11bを二層(二重)としても良い。
【0072】
以上、本発明について好適な実施形態を挙げて説明したが、本発明は上記の実施形態に限定されるものではなく、以下に示すように、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、種々の改良及び設計の変更が可能である。
【0073】
例えば、上記の実施形態では、前腕部2aの回旋による形状変化を第一検知センサ12Aにより検知させる例を示したが、これに限定するものではなく、装着部材11が装着された部位の筋肉の伸長・収縮による形状変化を検知させるようにしても良い。
【0074】
また、上記の実施形態では、検知センサ12からの検知信号を、出力部13の変換回路13bによって制御信号に変換して出力する例を示したが、これに限定するものではなく、検知センサ12からの検知信号を変換せずにそのままの状態で制御信号として出力させる出力部としても良い。
【0075】
また、上記の実施形態では、複数の検知センサ12として、歪センサからなる第一検知センサ12Aと、加速度センサからなる第二検知センサ12Bとを示したが、これに限定するものではなく、検知センサ12として、感圧センサ、ジャイロセンサ(ジャイロスコープ)、ポテンショメータ、光学センサ、振動センサ、等を用いても良い。
【0076】
更に、上記の実施形態では、補正・ホールドモードにおいて、第一検知センサ12Aからの制御信号を補正する例を示したが、これに限定するものではなく、モータ28を駆動する電圧を判定して、その電圧を補正するようにしても良い。
【0077】
また、上記の実施形態では、人体検知装置10を電動義手20に適用した例を示したが、これに限定するものではなく、電動義足、パワーアシストスーツ、車椅子、工具、介護装置、パーソナルコンピュータ、等に適用しても良い。また、上記の実施形態では、人体検知装置10の装着部材11を、前腕部2aに装着する例を示したが、これに限定するものではなく、人体の関節間として、肩関節とひじ関節の間、手関節よりも手先側、股関節とひざ関節との間、ひざ関節と足関節との間、足関節よりも足先側、肩関節と股関節の間、首(頸椎)よりも頭側、胴体、等に装着しても良い。