【実施例】
【0033】
以下、本発明を実施例に基づきより詳細に説明する。
(使用した凝集剤)
・ポリ塩化アルミニウム(PAC;カチオン系高分子凝集剤)
製品名 タイパック(大明化学工業株式会社製)
・ジメチルアミノエチルメタクリラートメチルクロリド塩ホモポリマー(カチオン系高分子凝集剤)
製品名 タイポリマーTC-580(大明化学工業株式会社製)
・アクリルアミド-アクリル酸ソーダ共重合物(アニオン系高分子凝集剤)
製品名 タイポリマーTA945(大明化学工業株式会社製)
・キチンキトサン(カチオン系高分子凝集剤)
・活性炭
製品名 フジ活性炭 花F1-W50(セラケム株式会社製)
【0034】
実施例1
(方法)
スピルリナ乾燥藻体をリン酸ナトリウム溶液(0.82%リン酸二水素ナトリウム+0.84%リン酸水素二ナトリウム)に懸濁し、20℃16時間ゆっくり攪拌してフィコシアニン成分を抽出した。本抽出液に、各種凝集剤を添加し、ろ紙を用いたろ過(100mlスケール)を行い、最初の1分間のろ液量の測定ならびにろ液の分析を行った。フィコシアニンの吸収ピークはA618nm、不純物の指標として、A618値に対するA260nm(核酸の吸収極大)値を計算した。色価残存率(ろ過工程の回収率)は、未処理(凝集剤処理を行っていないろ液)のA618値に対する相対値で表した。
【0035】
(結果)
表1、表2に示すとおり、キトサン処理のろ過速度が最も速く、ろ液中の不純物の割合が最も低かった。色価残存率も、キトサン処理が最も高かった。さらに、無菌化用フィルターのろ液通過量もキトサン処理が最も多かった。
【0036】
【表1】
【0037】
【表2】
【0038】
得られたフィコシアニン溶液は、260nm付近の核酸等の不純物の極大吸収が凝集剤未処理およびリン酸カルシウム処理の従来法と比較して大きく低減されており、本発明の色素液がスピルリナ由来の不純物をほとんど含まないことが明らかになった。
【0039】
実施例2
(方法)
スピルリナ乾燥藻体をリン酸ナトリウム溶液(リン酸二水素ナトリウムとリン酸水素二ナトリウムの重量比は変えず、濃度を変えたそれぞれの溶液)もしくは酢酸ナトリウムと酢酸の混合液に懸濁し、20℃16時間ゆっくり攪拌してフィコシアニン成分を抽出した。本抽出液に、キトサン(フローナックC)を添加し、ろ紙を用いたろ過(100mlスケール)を行い、最初の1分間のろ液量の測定ならびにろ液の分析を行った。フィコシアニンの吸収ピークはA618nm、不純物の指標として、A618値に対するA260nm(核酸の吸収極大)値を計算した。色価残存率(ろ過工程の回収率)は、未処理(凝集剤処理を行っていないろ液)のA618値に対する相対値で表した。
【0040】
(結果)
表3に示すとおり、塩濃度0%(水道水)、もしくは各濃度のリン酸緩衝液、あるいは酢酸緩衝液にスピルリナ乾燥藻体を懸濁したいずれの場合においても、キトサン処理によって良好なろ過速度をもってろ過を行うことができ、ろ液中の不純物の割合も低かった。また無菌化用フィルターのろ液通過量も十分に確保できた。
【0041】
【表3】
【0042】
実施例3及び比較例1
以下のプロトコールに従って、フィコシアニンの調製を遠心分離(比較例1)又はろ過(実施例3)により行った。
【0043】
(i)抽出 :リン酸Buffer(0.86%リン酸二水素ナトリウム+ 0.88%リン酸水
素二ナトリウム)にスピルリナ粉末を3%分散させ、15h撹拌抽
出する。
(ii)凝集 :抽出液に水溶性キトサンを0.3%添加し、凝集させる。
(iii)固液分離:ろ過はろ紙を用い、ろ液を回収する。
遠心は440〜10,000xgの条件で10分間遠心分離を行い、上澄
液を回収する。
(iv)分析 :0.45μmメンブレンフィルターにて各回収液の通液量を測定
する。
ろ紙:ADVANTEC No.2定性ろ紙を使用
遠心機:日立 SCR20B、アングルローター(50F-6A)を使用
結果を以下の表4に示す。
【0044】
【表4】
【0045】
ろ過により得られたフィコシアニン調製液の方が、遠心分離により得られたフィコシアニン調製液よりも、0.45μmメンブレンフィルターの通液量が多かった。この結果から、ろ過の方が目詰まりを起こす不純物が少ないことが明らかになった。
【0046】
この結果により、本発明により、実製造においてろ過後の精密ろ過工程の膜への負担を減らし、目詰まりによる膜の再生工程を減らすことが可能となる。
【0047】
以上のことより、キトサンを用いたフィコシアニンの調製には遠心分離よりもろ過の方が優れている。
【0048】
実施例4
以下のプロトコールに従って、フィコシアニンの調製を「キトサンと活性炭の同時処理」あるいは 「キトサンと活性炭の別処理」により行った。
別処理工程:「抽出」→「凝集(キトサン)処理」→「ろ過」→「活性炭処
理」→「ろ過」
同時処理工程:「抽出」→「キトサン+活性炭処理」→「ろ過」
(i)抽出 :リン酸Buffer(0.86%リン酸二水素ナトリウム+ 0.88%
リン酸水素二ナトリウム)にスピルリナ粉末を3%分散させ、
15h撹拌抽出する。
(ii)キトサン処理 :抽出液に水溶性キトサンを0.4%添加し、凝集させる。
(iii)活性炭処理 :抽出液に活性炭を0.5%添加し、1h撹拌する。
(iv)ろ過 :ろ紙を用い、ろ液を回収する。
(v)分析 :0.45μmメンブレンフィルターにて各回収液の通液量を
測定する。
結果を表5に示す。
【0049】
【表5】
【0050】
同時処理工程の方が別処理工程よりも0.45μmメンブレンフィルターの通液量が多かった。同時処理工程の方が目詰まりを起こす不純物が少ないことが明らかになった。
【0051】
キトサンと活性炭の同時処理を行うことで、実製造においてろ過後の精密ろ過工程の膜への負担を減らし、目詰まりによる膜の再生工程を減らすことが可能となる。
【0052】
以上のことより、キトサンと活性炭を用いたフィコシアニンの調製には別処理工程よりも同時処理工程の方が優れている。
【0053】
実施例5及び比較例2
以下のプロトコールに従って、キトサンと活性炭の同時処理によるフィコシアニンの調製を遠心分離(比較例2)又はろ過(実施例5)により行った:
(i)抽出 :リン酸Buffer(0.86%リン酸二水素ナトリウム+ 0.88%リン
酸水素二ナトリウム)にスピルリナ粉末を3%分散させ、
15h撹拌抽出する。
(ii)凝集 :抽出液に水溶性キトサンを0.3%添加し、凝集させる。
:活性炭処理:抽出液に活性炭を0.5%添加し、1hゆっくりと
攪拌する
(iii)固液分離 :ろ過はろ紙を用い、ろ液を回収する。
遠心は10,000xgの条件で10分間遠心分離を行い、上澄液を
回収する。
(v)分析 :0.45μmメンブレンフィルターにて各回収液の通液量を
測定する。
ろ紙:ADVANTEC No.2定性ろ紙を使用
遠心機:日立 SCR20B、アングルローター( 50F-6A)を使用
結果を表6に示す。
【0054】
【表6】
【0055】
同時処理条件において、ろ過と遠心分離で0.45μmフィルターの通液量はろ過処理の方が明らかに良好な結果を得た。
【0056】
表6の結果より、フィコシアニンの調製において、キトサンと活性炭を同時処理し、かつ、遠心分離ではなくろ過法を用いることで、0.45μmメンブレンを目詰まりさせる不純物を除去することができる。