【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、腫瘍発生細胞のマーカー及び/又は腫瘍治療の標的/分子標的を探索、識別又は同定する方法であって、腫瘍発生細胞に富んだ再発性腫瘍源に由来する細胞を用いて動物を免疫化する工程を含む、方法を提供する。
【0012】
本発明は、腫瘍を診断、治療及び予防する方法であって、本発明における腫瘍発生細胞のマーカー及び/又は腫瘍治療の標的/分子標的を探索、識別又は同定する方法を採用する工程と、
マーカー及び/又は標的/分子標的に基づいて抗体若しくは抗原結合フラグメント、一本鎖オリゴヌクレオチド若しくは二本鎖オリゴヌクレオチド、核酸、短ペプチド又はその低分子配合剤を開発及び/又はスクリーニングする工程(ここで、抗体若しくは抗原結合フラグメント、一本鎖オリゴヌクレオチド若しくは二本鎖オリゴヌクレオチド、核酸、短ペプチド又はその低分子配合剤が、マーカー若しくは標的/分子標的の遺伝子発現及び/又はタンパク質活性を低減するか、又はマーカー又は標的/分子標的を標的化した後に細胞傷害性反応を引き起こす)、続いて治療的に有効な量の少なくとも1つの抗体若しくは抗原結合フラグメント、一本鎖オリゴヌクレオチド若しくは二本鎖オリゴヌクレオチド、核酸、短ペプチド又はその低分子配合剤を、それを必要とする被験体に投与する工程を含む、方法を更に提供する。
【0013】
本発明は、腫瘍又はCACNA2D1タンパク質に関連する疾患若しくは障害の診断又は治療のためのモノクローナル抗体又はその抗原結合フラグメントを更に提供する。
【0014】
本発明は、腫瘍又はCACNA2D1タンパク質に関連する疾患若しくは障害の診断、予後診断及び治療におけるモノクローナル抗体又はその抗原結合フラグメントの使用を更に提供する。
【0015】
本発明者らは、電位依存性カルシウムチャネルα2δ−1サブユニット(CACNA2D1と称される、GenBank番号NM_000722.2)が、腫瘍発生細胞の分子マーカー及び腫瘍治療の分子標的又は標的であることを見出した。CACNA2D1の核酸又はタンパク質に対する診断用試薬及び治療薬を開発することは有用である。本発明者らは、Hep−11細胞株(原発性肝細胞がん組織に由来する)及びHep−12細胞株(再発性肝細胞がん組織に由来する)を、それぞれ単一のHCC(肝細胞がん)患者の原発病変及び再発病変から確立した。本発明者らは、集団分析及びクローニング分析に基づいて、再発性HCC組織由来のHep−12細胞の大半(80%超)が、腫瘍発生細胞としての特性を有することが見出された一方で、原発性HCC組織由来のHep−11細胞が最大で10
7細胞の注射後6ヶ月にわたって非腫瘍形成性であることも発見した。Hep−12細胞を用いてbalb/cマウスに接種し、ハイブリドーマを作製すると、Hep−12細胞を特異的に認識する特異的抗体1B50−1を得ることができる。本発明者らは、5つの肝臓がん細胞株及び4つの肝臓がんの臨床検体からフローサイトメトリーによって分類される100個〜1000個の1B50−1陽性細胞が、NOD/SCIDマウスにおいて皮下腫瘍を発生させるのに十分であることを見出した。遺伝子発現及び細胞分化から、これらの抗体陽性細胞が腫瘍発生細胞としての特性を有することが示された。一方、本発明者らは、かかる抗体をHep−12腫瘍及びHuh7腫瘍を保有するNOD/SCIDマウスに腹腔内注射すると、移植腫瘍を用量依存的に阻害することができ、阻害率がそれぞれ80.4%及び65.5%である(重量により測定、IgG対照群と比較した)ことを見出した。免疫沈降及び質量分析(MS)から、1B50−1によって認識される抗原が150kdのイオンチャネルタンパク質であることが示された。イオンチャネルタンパク質の遺伝子の発現をRNA干渉によって阻害することで、ヌードマウスにおけるHep−12細胞の成長も阻害することができる。これら全ての結果から、1B50−1によって認識される抗原が肝臓がんに対する新規の腫瘍発生細胞のマーカー、更には腫瘍治療の分子標的であることが示唆された。
【0016】
本発明の一実施の形態によると、本発明は、腫瘍発生細胞のマーカー又は腫瘍治療の標的/分子標的を探索、識別又は同定する方法を提供する。本発明は、腫瘍発生細胞の単離、同定及び治療において使用することができる分子標的を探索、識別又は同定する方法を更に提供する。上記方法は、腫瘍発生細胞に富んだ再発性腫瘍源に由来する細胞で動物を免疫化する工程を含む。本発明の腫瘍発生細胞のマーカー及び/又は治療の標的/分子標的を探索する方法の特定の実施の形態では、腫瘍は肝臓がん、結腸がん、直腸がん、腎臓がん、食道がん、胃がん、肺がん、乳がん、前立腺がん又はCACNA2D1の遺伝子を高度に発現する他の腫瘍であり得る。本発明の別の実施の形態では、腫瘍は肝臓がんであり、腫瘍発生細胞に富んだ再発性腫瘍源に由来する細胞は、再発性肝臓がんに由来し、腫瘍発生細胞に富んだHep−12細胞である。本発明における腫瘍発生細胞のマーカー及び/又は治療の標的を探索する方法では、方法は、単一のHCC患者の原発性肝臓がん組織及び再発性肝臓がん組織にそれぞれ由来するHep−12細胞及びHep−11細胞を、スクリーニング用の細胞対として使用することを更に含む。
【0017】
本発明の一実施の形態によると、本発明は、腫瘍を治療する方法であって、
1)腫瘍発生細胞に富んだ再発性腫瘍源に由来する細胞(Hep−12細胞等)を用いて動物(balb/cマウス等)を免疫化するとともに、腫瘍発生細胞のマーカー及び/又は腫瘍治療の標的/分子標的(CACNA2D1等)を探索、識別又は同定する工程、
2)工程1)において探索、識別又は同定したマーカー及び/又は標的/分子標的(CACNA2D1等)に基づいて、抗体若しくは抗原結合フラグメント、一本鎖オリゴヌクレオチド若しくは二本鎖オリゴヌクレオチド、核酸、短ペプチド又はその低分子配合剤を開発及び/又はスクリーニングする工程(ここで、抗体若しくは抗原結合フラグメント、一本鎖オリゴヌクレオチド若しくは二本鎖オリゴヌクレオチド、核酸、短ペプチド又はその低分子配合剤が、マーカー又は標的/分子標的の遺伝子発現及び/又はタンパク質活性を低減するか、又はマーカー又は標的/分子標的を標的化した後に細胞傷害性反応を引き起こす)、
3)治療的に有効な量の少なくとも1つの工程2)において開発又はスクリーニングした抗体若しくは抗原結合フラグメント、一本鎖オリゴヌクレオチド若しくは二本鎖オリゴヌクレオチド、核酸、短ペプチド又はその低分子配合剤を、それを必要とする被験体に投与する工程、
を含む、方法を提供する。
【0018】
本発明の一実施の形態によると、上記に記載の工程1)は、腫瘍発生細胞に富んだ再発性腫瘍源に由来する細胞(Hep−12細胞等)で動物(balb/cマウス等)を免疫化して、ハイブリドーマを作製し、モノクローナル抗体(1B50−1等)を得ることによって行うことができる。得られる抗体(1B50−1等)によって特異的に認識される細胞(Hep−12細胞等)を、腫瘍幹細胞の分化及び同定に対する候補細胞として使用する。動物実験(例えば、100個〜1000個の細胞でNOD/SCIDマウスにおいて皮下腫瘍を誘導することができるか否か)、遺伝子発現及び細胞分化並びに他の研究を行い、抗体陽性細胞が腫瘍幹細胞の特性を有するか否かを決定する。本発明の方法によって得られるモノクローナル抗体(1B50−1等)によって特異的に認識される腫瘍幹細胞の抗原は、本発明によって探索される腫瘍発生細胞のマーカー及び/又は治療の標的/分子標的である。本発明の特定の実施の形態によると、本発明者らはCACNA2D1タンパク質を見出し、それが腫瘍発生細胞のマーカー及び/又は腫瘍/がん治療の標的/分子標的であると決定した。
【0019】
本発明の一実施の形態によると、マーカー、標的若しくは分子標的の遺伝子発現及び/又はタンパク質活性を低減するか、又はマーカー若しくは標的/分子標的を標的化した後に細胞傷害性反応を引き起こす、工程2)において開発又はスクリーニングされる抗体又はその抗原結合フラグメントは、腫瘍発生細胞を探索、識別又は同定する工程1)において得られる抗原(腫瘍/がん治療のマーカー、標的/分子標的)の抗体(1B50−1等)であり得る。それらは探索、識別又は同定したマーカー、標的/分子標的(CACNA2D1タンパク質/抗原等)に基づいて開発又はスクリーニングした他の抗体であってもよい。
【0020】
抗原CACNA2D1に対する新規の抗体及びその誘導体は、本発明において提供される腫瘍発生細胞の抗原であるCACNA2D1に基づいて、様々な抗体作製技術によって得ることができる。これらの技術は、CACNA2D1を様々な発現系によって発現させるか、又はこの抗原を精製するとともに、マウス、ウサギ又は他の動物(遺伝子組み換え動物系統を含む)を免疫化することによって抗原に特異的な抗血清を得ることと、免疫化したマウスに由来する脾臓細胞をSP2/0骨髄腫細胞と融合することと、次いでCACNA2D1抗原に特異的なモノクローナル抗体を、CACNA2D1を用いてスクリーニングすることとを含み、マウス抗CACNA2D1モノクローナル抗体の可変領域をコードする遺伝子をクローニングすることと、次いでヒト−マウスキメラ抗体又はモノクローナル抗体を、直接又はヒト化後に、可変領域を対応するヒト化抗体の定常領域のコード遺伝子に正確に連結することによって原核細胞発現系及び/又は真核細胞発現系において発現させることを更に含むが、これらに限定されない。この遺伝子に特異的な完全ヒト抗体を、ヒト抗体ファージディスプレイライブラリにおいてCACNA2D1を用いてスクリーニングを行うことによって、又はヒト末梢血単核細胞とマウス細胞とを融合するキメラ技術によっても得ることができる。
【0021】
本発明の一実施の形態によると、CACNA2D1タンパク質の量は、本発明の抗体を用いて高感度で定量することができる。CACNA2D1タンパク質をin vivoで定量する方法によって、腫瘍又は様々なCACNA2D1タンパク質に関連する疾患の診断に本発明のモノクローナル抗体又はその抗原結合フラグメントを使用することができる。このため、本発明は、腫瘍又はCACNA2D1タンパク質に関連する疾患若しくは障害を診断する方法であって、有効量の少なくとも1つの本発明のモノクローナル抗体又はその抗原結合フラグメントを、それを必要とする被験体に投与することを含む、方法を更に提供する。in vivo診断に必要とされる用量は、治療に必要とされる用量よりも低い場合があり、当業者であれば従来の手順によって決定することができる。モノクローナル抗体又はその抗原結合フラグメントは、体液、組織等の試験液中に存在するCACNA2D1タンパク質を特異的にアッセイするためにも使用することができる。
【0022】
本発明の一実施の形態によると、本発明は、電位依存性カルシウムチャネルα2δ−1サブユニット(CACNA2D1)を特異的に認識することができるモノクローナル抗体又はその抗原結合フラグメントを提供する。CACNA2D1を特異的に認識する上記モノクローナル抗体又はその抗原結合フラグメントは、
(i)重鎖(以下、H鎖と称する)(重鎖の可変領域は相補性決定領域(CDR)CDRH1(配列番号1)、CDRH2(配列番号2)及びCDRH3(配列番号3)を含む)、又は、
(ii)軽鎖(以下、L鎖と称する)(軽鎖の可変領域は相補性決定領域CDRL1(配列番号4)、CDRL2(配列番号5)及びCDRL3(配列番号6)を含む)、又は、
(iii)(i)及び(ii)の両方、
を含む。
【0023】
本発明の一実施の形態では、上記のモノクローナル抗体又はその抗原結合フラグメントは、以下の1つ又は複数の特性を有する:(1)CACNA2D1タンパク質に結合すること、(2)モノクローナル抗体又はその抗原結合フラグメントによって認識される陽性細胞が、腫瘍発生細胞の特性を有すること、(3)動物においてCACNA2D1発現腫瘍細胞の成長を阻害すること。上述の腫瘍は肝臓がん、結腸がん、直腸がん、腎臓がん、食道がん、胃がん、肺がん、乳がん、前立腺がん又はCACNA2D1の遺伝子を高度に発現する他の腫瘍であり得る。
【0024】
本発明において提供される一実施の形態では、本発明のモノクローナル抗体又はその抗原結合フラグメントは重鎖を含み、重鎖の可変領域は、CDRH1、CDRH2及びCDRH3と少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、95%又は99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。本発明において提供される一実施の形態では、本発明のモノクローナル抗体又はその抗原結合フラグメントは軽鎖を含み、軽鎖の可変領域は、CDRL1、CDRL2及びCDRL3と少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、95%又は99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。本発明において提供される一実施の形態では、抗体又はその抗原結合フラグメントは上述の重鎖及び軽鎖の両方を含み得る。別の実施の形態では、本発明の抗体又はその抗原結合フラグメントは、上記のCDRのいずれか又はその組合せと少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、95%又は99%の配列同一性を有する1つ又は複数のCDRを更に含み得る。
【0025】
本発明の一実施の形態では、本発明は、上述のモノクローナル抗体又はその抗原結合フラグメントを含む、腫瘍又はCACNA2D1タンパク質に関連する疾患若しくは障害の診断、予後診断及び治療のためのモノクローナル抗体又はその抗原結合フラグメントを提供する。上記の腫瘍又は疾患若しくは障害は、肝臓がん、結腸がん、直腸がん、腎臓がん、食道がん、胃がん、肺がん、乳がん、前立腺がん又はCACNA2D1の遺伝子を高度に発現する他の腫瘍であり得る。
【0026】
本発明はハイブリドーマ細胞株を提供し、このハイブリドーマ細胞株は、2010年12月8日に中国微生物菌種保蔵管理委員会普通微生物センター(China General Microbiological Culture Collection Center)に寄託されたマウスハイブリドーマ(CGMCC番号4416)である。
【0027】
本発明の特定の実施の形態では、上記のモノクローナル抗体は、ハイブリドーマ細胞株(CGMCC番号4416)によって産生されるモノクローナル抗体1B50−1である。
【0028】
更なる実施の形態では、本発明は、抗原の特異的エピトープを認識する抗体フラグメントを上述の抗体に基づき既知の技術によって生成することを更に含むが、これに限定されない。例えば、免疫グロブリン分子を、パパイン(Fabフラグメントを生成する)又はペプシン(F(ab’)
2フラグメントを生成する)等の酵素を用いてタンパク分解的切断に供し、Fabフラグメント及びF(ab’)
2フラグメントを生成することができる。F(ab’)
2フラグメントは、L鎖及びH鎖の完全な可変領域、CH1領域及びヒンジ領域を含有する。誘導体配列(例えば異なるシグナルペプチドを用いるか、又はバイオインフォマティクス分析に基づきヒト化によって修飾した)を、既知の公開情報(例えばGenbank、文献又は従来のクローニング及び配列分析による情報)を用い、抗体のヌクレオチド配列又はアミノ酸配列に基づいて更に得ることができる。上記免疫グロブリンをコードする核酸は化学的に合成することができる。代替的には、免疫グロブリンをコードする核酸を、適当な供給源(例えば、抗体のcDNAライブラリ、又はこの抗体を発現する任意の組織若しくは細胞から単離された核酸、例えば、好ましくはmRNAライブラリ又はそれから作成されたcDNAライブラリからスクリーニングされた、抗体を発現するハイブリドーマ)から3’末端及び5’末端の配列に適合する合成プライマーを用いたPCR増幅によって得ることができる。免疫グロブリンをコードする核酸を、例えばcDNAライブラリから特定の遺伝子配列に特異的なオリゴヌクレオチドプローブを用いてスクリーニングすることもできる。次いで、当該技術分野で既知の任意の方法を用いて、PCR増幅によって作製される核酸を、本発明の抗体と同様の生物活性を有する遺伝子組み換え抗体又はその抗原結合フラグメントを発現する、種々の発現系(原核細胞発現系及び真核細胞発現系、無細胞翻訳系等)において発現させることができる複製可能なベクターに導入することができる。
【0029】
本発明において提供される一実施の形態では、本発明の抗体又はその抗原結合フラグメントを、抗体を合成する当該技術分野で既知の任意の他の方法、例えば組換え発現又は化学合成によって作製することができる。
【0030】
本発明は、本発明のモノクローナル抗体又はその抗原結合フラグメントを含有する医薬組成物も提供する。本発明の更なる実施の形態では、この医薬組成物は薬学的に許容される担体を更に含有し得る。加えて、本発明は、本発明のモノクローナル抗体又はその抗原結合フラグメントと、薬学的に許容される担体とを含む、腫瘍又はCACNA2D1タンパク質に関連する疾患若しくは障害の治療のための医薬組成物を提供する。本発明の特定の実施の形態では、本発明の医薬組成物は、上記疾患又は障害を相加的又は相乗的に改善することができる他の活性化合物を更に含む。活性化合物としては、上記疾患又は障害を治療するための他の化学療法化合物及び毒素が挙げられるが、これらに限定されない。活性化合物は、低分子化合物及び他の抗体又はその抗原結合フラグメントを更に含む。具体的には、上記の腫瘍又はCACNA2D1タンパク質に関連する疾患若しくは障害は、肝臓がん、結腸がん、直腸がん、腎臓がん、食道がん、胃がん、肺がん、乳がん、前立腺がん又はCACNA2D1の遺伝子を高度に発現する他の腫瘍であり得る。
【0031】
有利には、経口投与又は非経口投与用の上記の医薬組成物は、活性成分の適当な固定用量に好適な単位剤形に調製される。かかる単位剤形としては、例えば錠剤、丸薬、カプセル剤、注射剤、坐剤等が挙げられる。
【0032】
一実施の形態によると、本発明は、CACNA2D1の遺伝子又はタンパク質に指向性を有するキットを提供する。ここで、このキットは、腫瘍又はCACNA2D1タンパク質に関連する疾患若しくは障害を診断又は治療又は予防するために使用することができ、このキットは上述のモノクローナル抗体若しくはその抗原結合フラグメント、又はCACNA2D1に指向性を有するDNA及びmRNA等の核酸を含み得る。このキットは肝臓がん、結腸がん、直腸がん、腎臓がん、食道がん、胃がん、肺がん、乳がん、前立腺がん等の腫瘍又はCACNA2D1の遺伝子を高度に発現する他の腫瘍の診断、治療又は予防において使用することができる。当業者の知識によると、定量的RT−PCR等の方法によって抗原をmRNAレベルで試験することができ、この遺伝子に指向性を有する抗体又はそれに特異的に結合する小分子を用いてELISA(酵素結合免疫吸着法)、フローサイトメトリー、免疫組織化学的試験(細胞化学的試験)等の既知の技術によって抗原を試験することができる。使用される検体は患者の血液、組織、剥離細胞等に由来し得る。
【0033】
別の実施の形態によると、本発明は、腫瘍又はCACNA2D1タンパク質に関連する疾患若しくは障害の診断、治療又は予防のための薬物の調製における、本明細書中で言及されるモノクローナル抗体又はその抗原結合フラグメントの使用を提供する。上記腫瘍又は疾患若しくは障害は肝臓がん、結腸がん、直腸がん、腎臓がん、食道がん、胃がん、肺がん、乳がん、前立腺がん又はCACNA2D1の遺伝子を高度に発現する他の腫瘍であり得る。本発明のモノクローナル抗体又はその抗原結合フラグメントは、がん及び他のCACNA2D1タンパク質に関連する疾患若しくは障害の診断(例えば、腫瘍発生細胞が患者の組織又は血清中に含有されているか否か、並びに予後診断及び治療感度の予測)のための診断用薬として使用することができる。本発明のモノクローナル抗体又はその抗原結合フラグメントは、CACNA2D1抗原を特異的に認識することが可能であるため、試験液中のCACNA2D1タンパク質を、例えば二抗体サンドイッチアッセイ、競合測定(competitive determination)及びイムノアッセイ等の当該技術分野の従来の方法によって定量するために使用することができる。
【0034】
別の態様では、本発明は、腫瘍又はCACNA2D1タンパク質に関連する疾患若しくは障害を治療する方法であって、治療的に有効な量の少なくとも1つの本発明のモノクローナル抗体又はその抗原結合フラグメントを、かかる治療を必要とする被験体に投与することを含む、方法を提供する。
【0035】
異なる態様では、本発明は、腫瘍又はCACNA2D1タンパク質に関連する疾患若しくは障害を予防する方法であって、予防的に有効な量の少なくとも1つの本発明のモノクローナル抗体又はその抗原結合フラグメントを、かかる治療を必要とする被験体に投与することを含む、方法を提供する。
【0036】
上記の診断、治療及び予防の方法のために、本発明のモノクローナル抗体又はその抗原結合フラグメントを、モノクローナル抗体又はその抗原結合フラグメントの生物学的効果を向上させる他の作用物質と組み合わせて使用することができる。かかる治療用の作用物質の例としては、別の種類の抗体、細胞成長を阻害するか又は細胞を死滅させる細胞毒素、放射性元素及び/又は抗炎症剤を含有する他の治療剤、抗生物質等が挙げられる。
【0037】
本発明のモノクローナル抗体又はその抗原結合フラグメントは、適切な溶媒中で直接液体調製物として混合するか、又は経口若しくは非経口投与される適当な剤形の医薬組成物として調製することができる。
【0038】
本発明のモノクローナル抗体又はその抗原結合フラグメントを薬学的に許容される担体、希釈剤又は賦形剤と混合して、経口投与又は非経口投与に好適となるように医薬組成物を調製することができる。本発明のモノクローナル抗体若しくはその抗原結合フラグメント又は医薬組成物は、リポソームカプセル化、微小粒子、マイクロカプセル等の様々な既知の送達システムによって投与することができる。投与方法としては、皮内投与、筋肉内投与、腹腔内投与、静脈内投与、皮下投与、鼻腔内投与、硬膜外投与及び経口投与が挙げられるが、これらに限定されない。化合物は注入若しくはボーラス注入等の任意の方法で投与することができるか、又は上皮若しくは粘膜(例えば、口腔粘膜又は直腸等)を介した吸収によって投与することができる。これらの化合物は、他の生物活性物質とともに投与することができる。投与は全身的又は局所的に行うことができる。本発明のモノクローナル抗体又はその抗原結合フラグメントは静脈内投与するのが好ましい。本発明のモノクローナル抗体は、かかる治療を必要とする領域に局所投与することもできる。組成物は既知の方法によって調製することができ、薬物調製の分野において一般に使用される担体、希釈剤又は賦形剤を含有する。錠剤に使用される担体又は賦形剤の例としては、ラクトース、デンプン、スクロース、ステアリン酸マグネシウム等が挙げられる。
【0039】
注射用調製物は、静脈注射、皮下注射、皮内注射及び筋肉内注射並びに点滴に使用することができる剤形を含み得る。これらの注射用調製物は既知の方法によって調製することができる。注射用調製物は、例えば上記の抗体又はその塩を従来の注射用の滅菌水性媒体又は油性媒体に溶解、懸濁又は乳化することによって調製することができる。注射用の水性媒体は、例えば生理食塩水、グルコース及び他の副成分を含有する等張液であり得る。媒体は、アルコール(エタノール等)、ポリオール(プロピレングリコール及びポリエチレングリコール等)、非イオン性界面活性剤(ポリソルベート80等)等の適切な可溶化剤と併用することができる。直腸投与用の坐剤は、上記の抗体又はその塩と従来の坐剤用基剤とを混合することによって調製することができる。
【0040】
一実施の形態によると、本発明は、腫瘍又はCACNA2D1タンパク質に関連する疾患若しくは障害を治療するための薬物を調製及びスクリーニングする方法であって、CACNA2D1を標的として用いて抗体若しくは抗原結合フラグメント、一本鎖オリゴヌクレオチド若しくは二本鎖オリゴヌクレオチド、核酸、短ペプチド又はその低分子配合剤を開発及びスクリーニングすることであって、抗体若しくは抗原結合フラグメント、一本鎖オリゴヌクレオチド若しくは二本鎖オリゴヌクレオチド、核酸、短ペプチド又はその低分子配合剤が、CACNA2D1の遺伝子発現及び/又はタンパク質活性を低減するか、又は上記分子を標的化した後に細胞傷害性反応を引き起こすことを含む、方法を更に提供する。
【0041】
好ましくは、上記の本発明のスキームは主に肝細胞がんに指向性を有するが、胃がん、結腸がん、直腸がん、腎臓がん、食道がん、肺がん、乳がん、前立腺がん等も含まれる。
【0042】
さらに、本発明において提供される腫瘍発生細胞のCACNA2D1抗原に基づいて、その抗原に特異的な低分子化合物阻害剤を、主要化合物の既存のライブラリからコンピューターシミュレーション又はスクリーニングによって容易に得ることができる。
【0043】
本発明の具体例によると、CACNA2D1の遺伝子に対する干渉RNA、ShRNA1(配列番号7)及びShRNA2(配列番号8)を設計及び合成した。これを後にレンチウイルス発現ベクターに搭載する。かかるレンチウイルスは上記遺伝子の発現を阻害し、免疫不全動物におけるHep−12細胞の成長に対する顕著な阻害効果を示す。提示したshRNA配列に基づき、適合した配列をコアとして用いて、当業者の常識に従って化学合成及び修飾することによって種々の一本鎖RNAを得ることができる。代替的には、これらのコア配列を、種々のプロモーターを有する遺伝子組換え用の従来のベクター及びクローニングベクターに担持させることができる。
【0044】
定義
本発明において使用される幾つかの用語を以下に規定する。
【0045】
「腫瘍発生細胞」、「腫瘍幹細胞」及び「腫瘍増殖細胞」という用語は、本明細書中で互換的に使用され得る。これらの用語は、実用上の細胞のタイプを指すために使用され、これらの細胞の生物学的特性は更に研究する必要がある。これらの細胞は概して、以下の特性を有するが、これらに限定されない:(1)高度に悪性である:僅かな細胞(100個又はそれ以下)であっても免疫不全マウスにおいて腫瘍を誘導することができ、かかる腫瘍原性が極めて安定である、(2)従来の治療に耐性を示す:従来の放射線療法及び化学療法に耐性を示すか、又はそれらに反応しない。
【0046】
本発明において使用される「抗体」という用語は、標的ポリペプチド又は標的配列に特異的に結合することが可能な抗体分子を指す。この用語は、完全抗体又はその抗原結合フラグメントを含むそのフラグメントも包含する。
【0047】
本発明において使用される「その抗原結合フラグメント」は、一本鎖抗体、Fabフラグメント、F(ab’)
2フラグメント、ジスルフィド結合(複数の場合もあり)によって連結した一本鎖抗体(sFv)、軽鎖可変領域(VL)及び/又は重鎖可変領域のいずれか1つを含有するフラグメント、又は標的のタンパク質、ポリペプチド若しくは配列に特異的に結合するCDR(複数の場合もあり)を含有するフラグメントを含む、標的のタンパク質、ポリペプチド又は配列に特異的に結合する能力を維持する任意の抗体フラグメントを指す。これらの抗体フラグメントを得る様々な方法が当該技術分野で既知である。
【0048】
本発明において使用される「相補性決定領域(CDR)」という用語は、抗体の特異性又は抗原に対する抗体の結合活性を直接決定する特異的アミノ酸配列を含有する、抗原を認識し、該抗原と結合する抗体の領域を指す。
【0049】
本発明において使用される「特異的に認識する」という用語は、標的のタンパク質、ポリペプチド又は配列に特異的に結合する抗体又はその抗原結合フラグメントの能力を指す。抗体は他のポリペプチド又はタンパク質に非特異的には結合しない。CACNA2D1を特異的に認識する抗体又はその抗原結合フラグメントは、他の抗原と交差反応しないことが好ましい。
【0050】
本発明において使用される「有効量」という用語は、「増殖を阻害するのに治療的に有効な量」又は「増殖を阻害するのに予防的に有効な量」を指す。この用語は、所望の結果を達成するのに必要な、例えば細胞増殖疾患を治療するのに十分な投与量及び期間で有効な量を含む。本発明の化合物の有効量は、被験体の疾患状態、年齢及び体重、並びに被験体において所望の応答を引き出す本発明の化合物の能力等の因子に応じて異なり得る。投与計画は最適な治療反応をもたらすように調整することができる。有効量は、本発明の化合物の任意の毒性作用又は有害作用(例えば副作用)を、治療的に有益な効果が上回る量でもある。