(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6084172
(24)【登録日】2017年2月3日
(45)【発行日】2017年2月22日
(54)【発明の名称】酸化感受性材料の統合的な触媒による保護
(51)【国際特許分類】
A61B 5/1459 20060101AFI20170213BHJP
G01N 33/66 20060101ALI20170213BHJP
【FI】
A61B5/14 321
G01N33/66 D
G01N33/66 DZDM
【請求項の数】36
【全頁数】38
(21)【出願番号】特願2013-558170(P2013-558170)
(86)(22)【出願日】2012年3月15日
(65)【公表番号】特表2014-514033(P2014-514033A)
(43)【公表日】2014年6月19日
(86)【国際出願番号】US2012029209
(87)【国際公開番号】WO2012125814
(87)【国際公開日】20120920
【審査請求日】2015年3月3日
(31)【優先権主張番号】61/527,368
(32)【優先日】2011年8月25日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】61/452,893
(32)【優先日】2011年3月15日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】501078166
【氏名又は名称】センセオニクス,インコーポレーテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100140109
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 新次郎
(74)【代理人】
【識別番号】100075270
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 泰
(74)【代理人】
【識別番号】100101373
【弁理士】
【氏名又は名称】竹内 茂雄
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100108899
【弁理士】
【氏名又は名称】松本 謙
(72)【発明者】
【氏名】コルヴィン,アーサー・イー,ジュニア
(72)【発明者】
【氏名】ジアン,ホイ
【審査官】
北島 拓馬
(56)【参考文献】
【文献】
特開2005−315871(JP,A)
【文献】
特開昭63−291595(JP,A)
【文献】
特表2007−532901(JP,A)
【文献】
特表2008−506469(JP,A)
【文献】
特表2001−513350(JP,A)
【文献】
特表2002−523774(JP,A)
【文献】
国際公開第2010/118335(WO,A1)
【文献】
国際公開第2011/097586(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 5/06 − 5/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
in vivo 機能性を持つセンサーであって、該センサーが、
感光検出器素子及び光源を包むセンサーボディ、ここで、該センサーボディは外部表面を含む;
該センサーボディの該外部表面の少なくとも一部分上の多孔質センサーグラフト、ここで、該多孔質センサーグラフトは一つ以上のインジケーター高分子を含む;及び
該多孔質センサーグラフトに近接近している保護材料
を含み、ここで
(1) 該保護材料が、炎症反応及び/または異物反応が原因で該多孔質センサーグラフトが劣化したり若しくは妨害されるのを予防したり、またはこれを軽減し;
(2) 該保護材料が、in vivo 反応性酸素種または生物学的酸化剤を触媒的に分解または不活性化する金属または金属酸化物を含み;及び
(3) 該保護材料が、(a) 該多孔質センサーグラフトの一部または全部、及び (b) 該センサーボディの該外部表面の一部分の1以上を囲むコイル、メッシュ、または織組織である
センサー。
【請求項2】
請求項1に記載のセンサーであって、該センサーはグルコースレベルを監視するためのものであるセンサー。
【請求項3】
請求項1に記載のセンサーであって、該一つ以上のインジケーター高分子がフェニルボロン酸残基を含むセンサー。
【請求項4】
in vivo 機能性を持つセンサーであって、該センサーが、
感光検出器素子及び光源を包むセンサーボディ、ここで、該センサーボディは外部表面を含む;
該センサーボディの該外部表面の少なくとも一部分上の多孔質センサーグラフト、ここで、該多孔質センサーグラフトは一つ以上のインジケーター高分子を含む;及び
該多孔質センサーグラフトに近接近している保護材料
を含み、ここで
(1) 該保護材料が、炎症反応及び/または異物反応が原因で該多孔質センサーグラフトが劣化したり若しくは妨害されるのを予防したり、またはこれを軽減し;
(2) 該保護材料が、in vivo 反応性酸素種または生物学的酸化剤を触媒的に分解または不活性化する金属または金属酸化物を含み;及び
(3) 該保護材料が、該多孔質センサーグラフトを少なくとも部分的に取り囲んでいるシリンダーまたは環を含む構造である
センサー。
【請求項5】
請求項1に記載のセンサーであって、該金属または金属酸化物が、銀、パラジウム、プラチナ、マンガン、若しくはそれらの合金、または金を含む合金、あるいはその組み合わせを含むセンサー。
【請求項6】
請求項1に記載のセンサーであって、該多孔質センサーグラフトが、酸化に対して感受性であるか、または酸化による損傷を受けやすい材料で出来ているセンサー。
【請求項7】
請求項1に記載のセンサーであって、該保護材料が、ポリマーを含むセンサーボディの少なくとも一部に近接近しているセンサー。
【請求項8】
請求項1に記載のセンサーであって、該保護材料が、約0.5nm〜約2.5mmの厚さであるセンサー。
【請求項9】
in vivo 機能性を持つセンサーであって、該センサーが、
感光検出器素子及び光源を包むセンサーボディ、ここで、該センサーボディは外部表面を含みサドルカット形状を有す;
該センサーボディの該外部表面の少なくとも一部分上の多孔質センサーグラフト、ここで、該多孔質センサーグラフトは一つ以上のインジケーター高分子を含む;及び
(i) 該多孔質センサーグラフトの一部または全部、及び (ii) 該センサーボディの該外部表面の一部または全部の1以上に適用された保護コーティング層;
を含み、ここで
(1) 該保護コーティングが、炎症反応及び/または異物反応が原因で該多孔質センサーグラフトが劣化したり若しくは妨害されるのを予防したり、またはこれを軽減し;
(2) 該保護コーティングが、in vivo 反応性酸素種または生物学的酸化剤を触媒的に分解または不活性化する金属または金属酸化物を含む
センサー。
【請求項10】
請求項9に記載のセンサーであって、該センサーがグルコースレベルを監視するためのものであるセンサー。
【請求項11】
請求項9に記載のセンサーであって、該一つ以上のインジケーター高分子がフェニルボロン酸残基を含むセンサー。
【請求項12】
請求項9に記載のセンサーであって、該保護コーティングがスパッタ蒸着により施用されるセンサー。
【請求項13】
請求項9に記載のセンサーであって、該金属または金属酸化物は、銀、パラジウム、プラチナ、マンガン、若しくはそれらの合金、または金を含む合金、あるいはその組み合わせを含むセンサー。
【請求項14】
請求項9に記載のセンサーであって、該保護コーティングが約0.5nm〜約500nmの厚さであるセンサー。
【請求項15】
請求項9に記載のセンサーであって、該保護コーティングが約1nm〜約20nmの厚さであるセンサー。
【請求項16】
請求項9に記載のセンサーであって、該保護コーティングが約3nm〜約6nmの厚さであるセンサー。
【請求項17】
請求項9に記載のセンサーであって、該保護コーティングが少なくとも1nmの厚さであるセンサー。
【請求項18】
請求項9に記載のセンサーであって、該多孔質センサーグラフトが酸化に対して感受性であるか、または酸化による損傷を受けやすい材料で出来ているセンサー。
【請求項19】
請求項9に記載のセンサーであって、該保護コーティングが、ポリマーを含む該センサーボディの少なくとも一部の上に施用されるセンサー。
【請求項20】
請求項9に記載のセンサーであって、該センサーが、該センサーが炎症反応及び/または異物反応に暴露される環境に移植された後に、in vivo 有用性をもつが、保護コーティング層をもたない別の材料の耐用年数と比較して、実質的に長期間のin vivo 機能性をもつセンサー。
【請求項21】
in vivo サンプル中の検体の存在または濃度を検出する方法であって、該方法が、
(a) センサーの多孔質センサーグラフトを検体に暴露すること、ここで、該多孔質センサーグラフトは該検体に暴露されると変化する検出可能な特性を持ち、該センサーが、センサーボディ、該多孔質センサーグラフト、及び保護コーティング層を含み、該センサーボディが、感光検出器素子及び光源を包み、外部表面を含んでサドルカット形状を有し、該多孔質センサーグラフトが、該センサーボディの該外部表面の少なくとも一部分上にあって、一つ以上のインジケーター高分子を含み、該保護コーティング層が、(i) 該多孔質センサーグラフトの一部または全部、及び (ii) 該センサーボディの該外部表面の一部または全部の1以上に施用されており、
(1) 該保護コーティングは、炎症反応及び/または異物反応から、該多孔質センサーグラフトの劣化または妨害を予防し、そして;
(2) 該コーティングは、in vivo 反応性酸素種または生物学的酸化剤を触媒的に分解または不活性化する金属または金属酸化物を含み;
その結果、該センサーが、該保護コーティングを持たない対応するセンサーと比較して、劣化または妨害に対して高い耐性をもつようになる;及び
(b) 該検出可能な特性のいずれかの変化を測定し、それによって該サンプル中の該検体の存在または濃度を決定すること、
を含む方法。
【請求項22】
請求項21に記載の方法であって、該検体がグルコースである方法。
【請求項23】
請求項21に記載の方法であって、該一つ以上のインジケーター分子がフェニルボロン酸残基を含む方法。
【請求項24】
請求項21に記載の方法であって、該保護コーティングがスパッタ蒸着により施用される方法。
【請求項25】
請求項21に記載の方法であって、該金属または金属酸化物が、銀、パラジウム、プラチナ、マンガン、若しくはそれらの合金、または金を含む合金、あるいはその組み合わせを含む方法。
【請求項26】
請求項21に記載の方法であって、該保護コーティングが約0.5nm〜約500nmの厚さである方法。
【請求項27】
請求項21に記載の方法であって、該保護コーティングが約1nm〜約20nmの厚さである方法。
【請求項28】
請求項21に記載の方法であって、該保護コーティングが約3nm〜約6nmの厚さである方法。
【請求項29】
請求項21に記載の方法であって、該保護コーティングが少なくとも約1nmの厚さである方法。
【請求項30】
請求項21に記載の方法であって、該センサーが、酸化に対して感受性であるか、または酸化による損傷を受けやすい材料である方法。
【請求項31】
請求項21に記載の方法であって、該センサーボディがポリマーを含む方法。
【請求項32】
請求項21に記載の方法であって、該センサーが、該センサーが炎症反応及び/または異物反応に暴露される環境に移植された後に、in vivo 有用性をもつが保護コーティング層をもたない別の材料の耐用年数と比較して、実質的に長期間のin vivo 機能性をもつ方法。
【請求項33】
動物中のグルコースの存在または濃度を測定するための移植可能なグルコースセンサーであって、該センサーが、
(a) センサーボディであって、該センサーボディを取り囲んでいる外部表面を持つセンサーボディ;
(b) 該センサーボディ内で放射線を放射する、該センサーボディ内の放射線源;
(c) 該動物中のグルコースの存在または濃度によって影響されるインジケーター素子、ここで、該インジケーター素子は、該センサーボディの該外部表面の少なくとも一部に近接近して配置される;
(d) 該センサーボディに配置され、該センサーボディ内で放射線を受け取るように配置された光感受性素子、ここで、該光感受性素子は、該インジケーター素子から受けた放射線に応答してシグナルを放出するように構成されており、これは該動物中のグルコースの存在または濃度を示すものである;及び
(e) 該インジケーター素子を少なくとも部分的に取り囲んでいる銀、パラジウム、プラチナ、マンガン、若しくはそれらの合金、または金を含む合金、あるいはその組み合わせを含む保護バリヤーであって、(1) 該インジケーター素子の一部または全部、及び (2) 該センサーボディの該外部表面の一部分の1以上を囲むワイヤー、メッシュ、または織組織である保護バリヤー
を含むセンサー。
【請求項34】
請求項33に記載のセンサーであって、該外部表面がポリマーから構成されているセンサー。
【請求項35】
請求項33に記載のセンサーであって、該インジケーター素子が少なくとも一つのインジケーター高分子を含むセンサー。
【請求項36】
請求項33に記載のセンサーであって、該保護バリヤーがさらに、銀、プラチナ、パラジウム、マンガン、それらの合金、または金を含む合金、あるいはその組み合わせから構成されるセンサー。
【発明の詳細な説明】
【0001】
[0001]本発明は、2011年3月15日出願の米国仮特許出願第61/452,893号、及び2011年8月25日出願の米国仮特許出願第61/527,368号の権利を主張する。これらの内容はいずれも、本明細書中、その全体が参照として含まれる。本発明は、連邦政府関係機関による契約のもと政府の支援でなされたものではないため、政府は本発明の権利を保有しない。
【背景技術】
【0002】
[0002]本発明は、触媒による保護(catalytic protection)と材料またはデバイスとを統合する(integrate)ことによって、酸化に対して感受性の材料及びデバイスを触媒により保護することに関する。本発明は特に、ヒトなどの動物の体内に移植または挿入するように設計されたデバイスに関する。特に本発明は、様々な検体をin situ検出するためにヒトにデバイスを移植できるようにする非常に小型のサイズで且つ完全内蔵型であることを特徴とする、媒体中の検体の存在または濃度を検出するための電気光学ベースの検出装置に関する(が、これに限定されない)。
【0003】
[0003]本明細書中に記載または参照した参照文献はいずれも、本発明に対して従来技術であると認められない。
【0004】
[0004]様々な生理学的状態を監視するための移植可能なデバイスは公知である。これらの例としてはたとえば、米国特許第5,517,313号(Colvin);同第5,910,661号(Colvin);同第5,917,605号(Colvin);同第5,894,351号(Colvin);同第6,304,766号(Colvin);同第6,344,360号(Colvinら);同第6,330,464号(Colvin);同第6,400,974号(Lesho);同第6,794,195号(Colvin);同第7,135,342号(Colvinら);同第6,940,590号(Colvinら);同第6,800,451号(Daniloffら);同第7,375,347号(Colvinら);同第7,157,723号(Colvinら);同第7,308,292号(Colvinら);同第7,190,445号(Colvinら);同第7,553,280号(Lesho);同第7,800,078号(Colvin, Jrら);同第7,713,745号(Colvin, Jrら);同第7,851,225号(Colvin, Jrら);同第7,939,832号(J. Colvinら);並びに以下の米国特許出願第10/825,648号(Colvinら)、2004年4月16日出願;同第10/923,698号(Colvinら)、2004年8月24日出願;同第11/447,980号(Watersら)、2006年6月7日出願;同第11/487,435号(Mericalら)、2006年7月17日出願;同第11/925,272号(Colvin)、2007年10月26出願;同第12/508,727号(Colvin, Jrら)、2009年7月24日出願;同第12/493,478号(Lesho)、2009年6月29日出願;同第12/764,389号(Colvin, Jrら)、2010年4月21日出願;同第12/966,693号(Colvin, Jrら)、2010年12月13日出願;同第13/103,561号(Colvinら)、2011年5月9日出願;及び同第13/171,711号(J. Colvinら)、2011年6月29日出願に記載されているセンサーが挙げられる。これらの全ての内容は、本明細書中、参照として含まれる。本出願で使用される用語が参照文献中の用語の使用と矛盾する場合には、本出願における定義が支配する。
【0005】
[0005]異物が体内に入ると、その異物を排除または無毒化(neutralize)するために迅速に免疫反応(すなわち炎症)が起きる。異物が意図的に移植した材料、デバイスまたはセンサーであるとき、炎症反応によりインプラント(移植物)の機能性を損なうか悪影響を及ぼしかねない。従って、このデバイスの効力及び耐用年数が悪影響を受けないように、炎症反応及び長期異物反応の生化学的活動、即ち酸化に耐えうる移植可能なデバイス(または材料)に対する要求がある。移植可能なデバイス(または材料)が、効力も耐用年数も大きく損失を被ることなく炎症及び異物反応の生化学的活動に耐えうるように、移植可能なデバイス(または材料)を製造または処置する方法に対する要求がある。
【0006】
[0006]炎症反応を伴う活性酸素種(reactive oxygen species:ROS)によるin vivo酸化及び対応する材料及び機能のin vivo破壊の問題は公知である。本明細書中で使用するように、ROSとは、反応性酸素種、非常に反応性の酸素種、または反応性酸素ラジカル種を表し、過酸化水素などの過酸化物が挙げられる。破壊的な酸化から移植デバイスまたは材料を少なくとも部分的に保護するための手段の一部としては、移植デバイス若しくは材料中で固定するか、または移植デバイス若しくは材料からin vivo周囲の空間に浸出しえる酸化防止剤の使用が挙げられる。抗炎症種(anti-inflammatory varieties)、超酸化物ジムスターゼ模倣薬、及び他の同様の薬剤などの全身薬も、抗酸化剤と組み合わせてまたは代替物として、移植デバイスまたは材料の周囲領域に局所的に浸出させたり、または注入することができる。そのような場合、デバイスまたは材料は、薬剤若しくは物質を含むか、またはin vivo環境に前記薬剤若しくは物質を浸出してしまうので、創傷治癒に影響を与えてしまいかねず、その元々の目的に加えて薬剤自体が薬剤送達機構となってしまう。追加の薬剤/物質放出特徴に加えるということは、インプラントの設計に複雑性、変動性及び不確実性を加えるかもしれず、デバイスまたは材料の安全性及び効力を証明するのを複雑化するかもしれない。また炎症反応は、創傷にいるかもしれない細菌を殺すように機能する治癒の正常な部分であるので、創傷治癒の正常な側面を損なうかもしれない薬剤または浸出試薬は患者を危険にさらすかもしれない。理想的には、インプラントの(単数または複数種類の)影響を受けやすく傷つきやすい構成要素だけを保護できる統合化デバイス解決策(integrated device solution)が、この問題を解決する最も安全で且つ最も効率的な手段であろう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】米国特許第5,517,313号(Colvin)
【特許文献2】米国特許第5,910,661号(Colvin)
【特許文献3】米国特許第5,917,605号(Colvin)
【特許文献4】米国特許第5,894,351号(Colvin)
【特許文献5】米国特許第6,304,766号(Colvin)
【特許文献6】米国特許第6,344,360号(Colvinら)
【特許文献7】米国特許第6,330,464号(Colvin)
【特許文献8】米国特許第6,400,974号(Lesho)
【特許文献9】米国特許第6,794,195号(Colvin)
【特許文献10】米国特許第7,135,342号(Colvinら)
【特許文献11】米国特許第6,940,590号(Colvinら)
【特許文献12】米国特許第6,800,451号(Daniloffら)
【特許文献13】米国特許第7,375,347号(Colvinら)
【特許文献14】米国特許第7,157,723号(Colvinら)
【特許文献15】米国特許第7,308,292号(Colvinら)
【特許文献16】米国特許第7,190,445号(Colvinら)
【特許文献17】米国特許第7,553,280号(Lesho)
【特許文献18】米国特許第7,800,078号(Colvin, Jrら)
【特許文献19】米国特許第7,713,745号(Colvin, Jrら)
【特許文献20】米国特許第7,851,225号(Colvin, Jrら)
【特許文献21】米国特許第7,939,832号(J. Colvinら)
【特許文献22】米国特許出願第10/825,648号(Colvinら)、2004年4月16日出願
【特許文献23】米国特許出願第10/923,698号(Colvinら)、2004年8月24日出願
【特許文献24】米国特許出願第11/447,980号(Watersら)、2006年6月7日出願
【特許文献25】米国特許出願第11/487,435号(Mericalら)、2006年7月17日出願
【特許文献26】米国特許出願第11/925,272号(Colvin)、2007年10月26出願
【特許文献27】米国特許出願第12/508,727号(Colvin, Jrら)、2009年7月24日出願
【特許文献28】米国特許出願第12/493,478号(Lesho)、2009年6月29日出願
【特許文献29】米国特許出願第12/764,389号(Colvin, Jrら)、2010年4月21日出願
【特許文献30】米国特許出願第12/966,693号(Colvin, Jrら)、2010年12月13日出願
【特許文献31】米国特許出願第13/103,561号(Colvinら)、2011年5月9日出願
【特許文献32】米国特許出願第13/171,711号(J. Colvinら)、2011年6月29日出願
【発明の概要】
【0008】
[0007]本発明の側面を具体的に述べるが、以下に記載の本発明の様々な形態には限定されない。
【0009】
[0008]一側面において、本発明はin vivo機能性をもつ移植可能なデバイス、並びに移植可能なデバイス表面に近接近(close proximity)している保護材料を含むデバイスに関する。前記保護材料は、炎症反応及び/または異物反応が原因で、移植可能なデバイスが劣化(degradation)したりまたは妨害(interference)されるのを予防したり、またはこれを軽減する。さらに、前記保護材料は、in vivo反応性酸素種または生物学的酸化剤を触媒的に分解または不活性化する金属または金属酸化物を含むことができる。
【0010】
[0009]別の側面では、本発明は、in vivo機能性をもつ移植可能なデバイス、並びに前記移植可能なデバイスの表面に付着された保護コーティングを含むデバイスに関する。前記保護コーティングは、炎症反応及び/または異物反応が原因で、移植可能なデバイスが劣化したり若しくは妨害されるのを予防したり、またはこれを軽減する。さらに、保護コーティングは、in vivo反応性酸素種または生物学的酸化剤を触媒的に分解または不活化する金属または金属酸化物を含むことができる。
【0011】
[0010]他の側面では、本発明はin vivo用途で移植可能なデバイスを使用するための方法に関する。本方法は、in vivo機能性をもつ移植可能なデバイスを少なくとも提供することを含む。移植可能なデバイスは、デバイス上に適用された保護コーティング層をもち、ここで本方法により適用された保護コーティングは、炎症反応及び/または異物反応が原因で、移植可能なデバイスが劣化したりまたは妨害されるのを予防したり、またはこれを軽減する。本方法により適用された保護コーティングは、in vivo反応性酸素種または生物学的酸化剤を触媒的に分解または不活化する金属または金属酸化物を含むことができる。さらに本方法は、被験者の体内に移植可能なデバイスを移植することを含む。
【0012】
[0011]別の側面では、本発明はin vivoサンプル中の検体の存在または濃度を検出する方法に関する。本方法は、本デバイスが当該検体に暴露されると変動する検出可能な特性(quality)をもつデバイスに前記in vivoサンプルを少なくとも暴露することを含む。デバイスは保護コーティング層を一部分において含み、ここで前記保護コーティングは、炎症反応及び/または異物反応が原因で、デバイスが劣化したり若しくは妨害されるのを予防したり、またはこれを軽減する。保護コーティングは、デバイスが保護コーティングをもたない対応するデバイスと比較して、酸化による劣化または妨害に対して高い耐性をもつように、in vivo反応性酸素種または生物学的酸化剤を触媒的に分解または不活性化する金属または金属酸化物を含むことができる。本方法はさらに、検出可能な特性での任意の変化を測定することを含み、これによってin vivoサンプル中の当該検体の存在または濃度を測定する。
【0013】
[0012]別の側面では、本発明は動物中のグルコースの存在または濃度を測定するための移植可能なグルコースセンサーである。センサーは、センサーボディを取り囲んでいる外部表面をもつセンサーボディ、センサーボディ内で放射線(radiation)を放出する前記センサーボディ内の放射線源、前記動物中のグルコースの存在または濃度により影響を受けるインジケーター素子を含むことができ、ここで前記インジケーター素子は前記センサーボディの外部表面の少なくとも一部に近接近して配置される。さらにセンサーは、前記センサーボディ内で放射線を受けるために配置された、センサーボディ内に配置された感光性素子を含むことができ、ここで前記感光性素子は、インジケーター素子から受けた放射線に応答するシグナルを放出するように構成されており、これは動物中のグルコースの存在または濃度を示す。さらにセンサーは、前記インジケーター素子を少なくとも部分的に取り囲んでいる銀、パラジウム、プラチナ、マンガン、若しくは合金、または金を含む合金、あるいはその組み合わせを含む保護バリヤーを含むことができる。
【0014】
[0013]別の側面では、本発明は、発電機、前記発電機に接続されたリード線及び、ペースメーカーの少なくとも表面に近接近しているか、またはこれを含む保護材料を含むペースメーカーであることができる。前記保護材料は、炎症反応及び/または異物反応が原因で、ペースメーカーリードが劣化したり若しくは妨害されるのを予防したり、またはこれを軽減することができる。さらに前記保護材料は、in vivo反応性酸素種または生物学的酸化剤を触媒的に分解または不活性化する金属または金属酸化物を含むことができる。
【0015】
[0014]本発明のこれら及び他の特徴、側面及び好都合な点は、以下の詳細な説明、請求の範囲及び添付図面を参照したのち、当業者には明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1A】[0015]
図1Aは、in vivo反応性酸素種(ROS)に暴露されると、グルコースインジケーターの非保護化-B(OH)
2認識素子が酸化される、化学反応の説明である。
【
図1B】[0016]
図1Bは、-B(OH)
2認識素子が酸化される前に、銀、パラジウム及び/またはプラチナの存在により過酸化水素の分解に触媒作用を与えるので、グルコースインジケーターの-B(OH)
2認識素子はin vivo反応性酸素種(ROS)により酸化されない、化学反応の説明である。
【
図2A-1】[0017]
図2Aは、本発明の態様に従った、親水性コポリマーと組み合わせて使用するための好ましいインジケーターモノマーの例の図を含む。
【
図2A-2】[0017]
図2Aは、本発明の態様に従った、親水性コポリマーと組み合わせて使用するための好ましいインジケーターモノマーの例の図を含む。
【
図2A-3】[0017]
図2Aは、本発明の態様に従った、親水性コポリマーと組み合わせて使用するための好ましいインジケーターモノマーの例の図を含む。
【
図2B-1】[0017]
図2Bは、本発明の態様に従った、親水性コポリマーと組み合わせて使用するための好ましいインジケーターモノマーの例の図を含む。
【
図2B-2】[0017]
図2Bは、本発明の態様に従った、親水性コポリマーと組み合わせて使用するための好ましいインジケーターモノマーの例の図を含む。
【
図2B-3】[0017]
図2Bは、本発明の態様に従った、親水性コポリマーと組み合わせて使用するための好ましいインジケーターモノマーの例の図を含む。
【
図3】[0018]
図3は、生体に移植後に、本発明の態様に従って処置しなかった、三つのグルコースセンサー由来の、反応性酸素種(ROS)が原因で起きる経時でのシグナルの損失を示すグラフである。
【
図4A】[0019]
図4Aは、本発明の態様に従った過酸化水素を不活性化するために使用される銀メッシュの写真である。
【
図4B】[0020]
図4Bは、移植可能なセンサーの周囲に合うように構成されている、本発明の態様に従ったメッシュの設計図である。
【
図4C】[0020]
図4Cは、移植可能なセンサーの周囲に合うように構成されている、本発明の態様に従ったメッシュの設計図である。
【
図5A】[0021]
図5Aは、過酸化水素の検出試験に使用される四つのキシレノールオレンジベースのサンプルの吸収プロフィールである。
【
図5B】[0022]
図5Bは、in vivoでの過酸化水素生成プロフィールと銀による過酸化水素分解プロフィールの比較である。
【
図6A】[0023]
図6Aは、金属ワイヤが移植可能なセンサーコアの一部の周囲のコイルに巻きつけられている、本発明の態様の側面及び断面図である。
【
図6B】[0023]
図6Bは、金属ワイヤが移植可能なセンサーコアの一部の周囲のコイルに巻きつけられている、本発明の態様の側面及び断面図である。
【
図6C】[0024]
図6Cは、金属メッシュが移植可能なセンサーコアの一部の周囲にはめ込まれている、本発明の態様の側面及び断面図である。
【
図6D】[0024]
図6Dは、金属メッシュが移植可能なセンサーコアの一部の周囲にはめ込まれている、本発明の態様の側面及び断面図である。
【
図6E】[0025]
図6Eは、溝付金属の覆い(encasement)が移植可能なセンサーコアの一部の周囲にはめ込まれている、本発明の態様の側面図(side illustration)である。
【
図6F】[0026]
図6Fは、穿孔金属フォイルが移植可能なセンサーコアの一部の周囲にはめ込まれている、本発明の態様の側面図である。
【
図6G】[0027]6Gは、穿孔金属ジャケットが移植可能なセンサーコアの一部の周囲にはめ込まれている、本発明の態様の側面図である。
【
図6H】[0028]
図6Hは、金属環及び金属の部分環が移植可能なセンサーコアの一部の周囲にはめ込まれている、本発明の態様の側面図である。
【
図6I】[0029]
図6Iは、金属織組織(metal weave)が移植可能なセンサーコアの一部に近接近している、本発明の態様の側面図である。
【
図6J】[0030]
図6Jは、ジグザグパターンの金属メッシュが移植可能なセンサーコアの一部の周囲にはめ込まれている、本発明の態様の側面図である。
【
図7】[0031]
図7は、移植可能なセンサーコアの多孔質センサーグラフトの上に金属をプラズマスパッタリングすることを示す。
【
図8A】[0032]
図8Aは、移植可能なセンサーコア上にスパッタリングされた金属金の、拡大レベルを上げた、断面走査電子顕微鏡(SEM)画像である。
【
図8B】[0032]
図8Bは、移植可能なセンサーコア上にスパッタリングされた金属金の、拡大レベルを上げた、断面走査電子顕微鏡(SEM)画像である。
【
図8C】[0032]
図8Cは、移植可能なセンサーコア上にスパッタリングされた金属金の、拡大レベルを上げた、断面走査電子顕微鏡(SEM)画像である。
【
図9】[0033]
図9は、金をスパッタリングした金属センサーコアの外部表面のSEM画像である。
【
図10A】[0034]
図10Aは、本発明の態様に従った多孔質センサーグラフトの蛇行膜の図である。
【
図10B】[0035]
図10Bは、多孔質センサーグラフト及び金属でコーティングされたスパッタ内にくまなく分散されたインジケーター高分子(indicator macromolecule)をさらに示している、蛇行膜の図である。
【
図11A】[0036]
図11Aは、本発明の態様に従った、インジケーターモノマーを固定するための固定化支持体を示している、移植デバイスの一般的な図面である。
【
図11B】[0037]
図11Bは、固定担体、特に、全体としてデバイス上の、多孔質センサーグラフトの表面上にスパッタリングされたプラチナバリヤー層とグラフト内に一体化されたインジケーターモノマーを備えた多孔質センサーグラフト膜を示す
図11Aの詳細図である。
【
図12】[0038]
図12Aは、本発明の態様に従った、テーパー状(先細状)の深さの切込みを備えたセンサーコア上のサドルカットを示している移植可能なセンサーのセンサーコアの図である。 [0039]
図12Bは、本発明の態様に従った均一な深さの切込みを備えたセンサーコア上のサドルカットを示している移植可能なセンサーのセンサーコアの図である。 [0040]
図12Cは、本発明の態様に従ったサドルカットセンサーコアの設計図である。 [0041]
図12Dは、本発明の態様に従った均一の深さのサドルカットセンサーコアの上面図である。
【
図13】[0042]
図13は、表面で再水和されたインジケーター高分子を備えたサドルカットセンサーコアの画像である。
【
図14】[0043]
図14は、表面で再水和されたインジケーター高分子を備えた360度カットセンサーコアの画像である。
【
図15】[0044]
図15は、サドルカットセンサーコア上にスパッタリングされた金属層を適用する図である。
【
図16A】[0045]
図16Aは、サドルカットセンサーコア上部にスパッタされたプラチナ層を備えた、サドルカットセンサーコアの画像である。
【
図16B】[0045]
図16Bは、サドルカットセンサーコア上部にスパッタされたプラチナ層を備えた、サドルカットセンサーコアの画像である。
【
図16C】[0046]
図16Cは、インジケーター高分子が緩衝液に暴露され、再水和された後に、サドルカットセンサーコアの上部にスパッタリングされたプラチナ層を備えたサドルカットセンサーコアの画像である。
【
図17A】[0047]
図17Aは、スパッタコーティングしたプラチナ層をもつものと、もたないものの両方に関するセンサーコア由来の光強度の変調(modulation)、及び過酸化水素への暴露におけるスパッタコーティングしたプラチナの効果に関連するグラフデータである。
【
図17B】[0047]
図17Bは、スパッタコーティングしたプラチナ層をもつものと、もたないものの両方に関するセンサーコア由来の光強度の変調(modulation)、及び過酸化水素への暴露におけるスパッタコーティングしたプラチナの効果に関連するグラフデータである。
【
図18】[0048]
図18は、本発明の態様に従った保護材料を組み込むことができるペースメーカーの図である。
【0017】
[0049]本発明は、生体に移植するように及びin vivo機能性を成し遂げるように設計された装置及び/または材料、及びそのような装置及び/または材料を使用する方法に具体化される。そのようなシステムは、好ましくは移植可能なセンサー、より好ましくは移植可能なグルコース監視センサーを含むことができる。そのようなセンサーは、平滑且つ丸い、長方形(oblong)、楕円(oval)または長円(elliptical)形(たとえば、豆または医薬品カプセル形)を有することができる。本明細書中に記載されたデバイスの好ましい態様はグルコース検出センサーのものであるが、本発明は移植可能なグルコースセンサーだけにも、移植可能なセンサーだけにも、センサーだけにも限定されない。
【0018】
[0050]本発明の目的は、炎症反応により、通常、ROSが原因の酸化の結果として、機能若しくは有用性が破壊され、(シグナル強度か機械的強度のいずれかが)弱められるか、低下した機能若しくは有用性となり得る移植可能なセンサー、材料またはデバイスを保護することである。そのような減退した機能または有用性とは、機械的強度を失うこと、穴が開くこと、不都合な分解生成物が体内に浸出すること、表面変形により組織が損傷すること、または薬剤送達系の動的プロフィールを失うこととして表すことができる。炎症は、移植手順、移植デバイスまたはその両方によって刺激されることが多い。本発明のさらなる目的は、酸化的損傷または劣化から移植センサーまたはデバイスを保護するセンサーまたは他の移植可能なデバイス若しくは構成要素(デバイス若しくは構成成分は、周囲の反応性酸素種による損傷に影響を受けやすいかもしれない)の設計にある特徴を含めることである。生体内で発生し、損傷を与えることが公知の非常に反応性の酸素種(ROS)としては、たとえば過酸化水素(H
2O
2)、ヒドロキシルラジカル(OH*)、次亜塩素酸塩(hypochlorite)(OCl
−)、ペルオキシ亜硝酸(OONO
−)及びスーパーオキシド(O
2−)が挙げられる。これらのROSの中でも、過酸化水素はin vivo移植センサーまたはデバイスに損傷を与える最も解決が難しいもののようである。従って、本発明の具体的な目的は、過酸化水素及び体内で生じた他のROSにより、センサーまたはデバイスのin vivo機能がシグナル損失したり、耐用年数が短くなったりしないようにすることである。
【0019】
[0051]銀、パラジウム及びプラチナなどの特定の金属、並びにこれら及びマンガンなどの他の金属の酸化物は、過酸化水素を分子酸素と水とに分解する触媒機能をもつ。かくして本発明の態様は、過酸化水素が酸化の影響を受けやすい材料を酸化しないように、酸化に対し感受性の材料と組み合わせてそのような金属を使用しようとしている。特に酸化に対し感受性の材料は、本発明の態様に従った多孔質センサーグラフトの中にくまなく分散されたインジケーター高分子でありえる。本明細書中で使用するように、「インジケーター高分子(indicator macromolecule)」とは、比較的親水性の分子または構造と共重合させたインジケーターモノマーを含む構造をさす。本発明の態様によっては、過酸化水素の分解を触媒する金属または金属酸化物は、保護すべき材料を少なくとも部分的に取り囲んでいるワイヤ、メッシュまたはコイルの形状などで、感受性の材料に近接近した様々な形状により酸化に対し感受性の材料と組み合わせる。本発明のさらなる態様では、触媒機能をもつ金属は、そのような他の金属の特性を利用するために、金などの他の金属との合金でありえる。本発明の他の態様では、スパッタ蒸着により金属または金属酸化物で感受性材料に近接近した領域をコーティングすることにより、過酸化水素の分解を触媒する金属と酸化に対し感受性の材料とを組み合わせる。態様において、酸化に対し感受性の材料の一部は、残りの近接部分に保護を提供するために触媒でコーティングすることができる。態様において、触媒作用の多孔質またはROS拡散性接触層をROSと保護すべき種との間に配置することができる。本発明の態様は、触媒選択的バリヤまたは選択透過性拡散バリヤとして作用することができる。
【0020】
[0052]過酸化水素は、インプラントの機能を破壊するROSのもっとも解決が難しいものとみなされている。他の四つのROS種は、これらが分解され、生成を刺激されないか、in vivoで過酸化物に転換されないので、インプラント機能に顕著な作用を及ぼすようにはみえない。より反応性のスーパーオキシドは、スーパーオキシドジスムターゼにより、自然に過酸化水素に転換される。ヒドロキシルラジカルは非常に反応性であるので、これらは何かと反応するずっと以前に拡散することができないので、態様によっては移植デバイスまたは材料の表面にオングストロームスケールの距離にとどめられる。過酸化水素の存在下では、次亜塩素酸は酸素と塩化物イオンとに分解される。in vivoでスーパーオキシドの存在下では、酸化窒素(NO)ラジカルはペルオキシ亜硝酸を生成し、これは分解触媒としてそれ自身作用する周囲の二酸化炭素により分解される。過酸化水素は、多孔質センサーグラフト及びセンサーのインジケーター領域にくまなく拡散し続けて、存在するすべてのインジケーター分子を酸化するのに反応性であり且つその上十分に安定であるので、in vivoセンサー機能を失わせてしまう。
【0021】
[0053]本発明の実施で有用なデバイスは、上記に列記し(段落[0004]に引用)、本明細書中、参照として含まれる特許及び文献に記載されているものが挙げられる。好ましい態様では、デバイスは米国特許第7,553,280号、同第7,800,078号、または同第7,713,745号に記載されているセンサーのような、移植可能なグルコース監視センサーである。本発明の態様によっては、
センサーは、センサーボディ、そのセンサーボディの外部表面上にコーティングされているか、ポケットの中に埋め込まれているか、またはその外部表面上に固定された多孔質グラフトを含むことができる。センサーとしては、インジケーターグラフトにおいて蛍光レベルを示すシグナルを発生する多孔質センサーグラフト材料の中にくまなく分散されたか、これと共重合された蛍光インジケーターモノマーも含むことができる。センサーとしては、放射線源(たとえばLED)及び感光性検出器素子も含むことができる。この一例は、本明細書中、参照として含まれる米国特許第7,553,280号に開示されている。インジケーター高分子と参照することができる、共重合化インジケーターモノマーは、多孔質コポリマーグラフト材料の中にくまなく配置されたグラフトの認識モノマー(recognition monomer)と共に多孔質センサーグラフトを作るために配合される。センサーコアとして参照されるセンサーボディは、ポリマーが光学導波管として作用することができるように、センサーが使用される媒体の屈折率とは十分に異なる屈折率をもつ、好適な光学的透過性材料から形成することができる。一態様において、センサーは、放射線源を動かす電源並びに、感光性センサーをベースとして、外部受信機にシグナルを無線伝達できるデータ遠隔測定法(data telemetry)の能動的または受動的手段ももつことができる。この一例は、本明細書中、参照として含まれる米国特許第7,800,078号に開示されている。センサーボディは、放射線源と感光検出器、並びに他の電子装置を完全に封入することができ、内蔵デバイス(self-contained device)を作り出す。態様によっては、多孔質センサーグラフト及びインジケーター高分子は、センサーボディ表面の特定の領域中に配置されているだけである。
【0022】
[0054]本発明の様々な態様において、多孔質センサーグラフト及びインジケーターモノマーの具体的な構成は、センサーが検出するのに使用する特定の検体、及び/またはセンサーが検体を検出する場所に依存して変動しえる。好ましくは、マクロ細孔またはミクロ細孔として通常、参照される様々なサイズの細孔を含むことができる多孔質センサーグラフトは、インジケーター高分子を検体に暴露しやすくし、インジケーター高分子の光学的特性(たとえば蛍光インジケーター高分子の蛍光レベル)は、インジケーター分子が暴露される特定の検体濃度の関数である。センサーグラフトの細孔は通常、センサーグラフト中に特定の検体を分散させるために十分なサイズである。好ましい態様では、センサーグラフトの多孔質膜構造、及びマクロ細孔のサイズ(平均約1ミクロン)は、透明な非散乱ポリマー配合物に対してシグナルで約78%の増大を提供する光散乱効果を起こす。この光散乱は、系の全体としての有効性を高め且つ、グラフトに白い外観を与える。
【0023】
[0055]蛍光分子は、抗体または他の分子と結合するとタグ及びプローブとして診断で使用することができ、分子レベルで構成して、グルコースなど、特定の検体を検出するように特別に設計された化学的及び生化学的活性インジケーターとして使用することができる。アンスリルボロン酸(anthrylboronic acid)含有化合物を使用する蛍光センサーは、グルコースとフルクトースとの結合などの、糖質結合をシグナル伝達するための蛍光性化学センサー(fluorescent chemosensor)として使用することができる。蛍光分子は劣化の影響を受けやすく、この場合、様々な酸化速度によって経時で蛍光強度(または光度(brightness))を失うことが多い。酸化は一般的に、退色(すなわち光酸化)、または蛍光分子の局所環境内で様々な選択的酸素種と一般に関連しえる。生体内では、通常の反応性酸素種は潜在的な酸化剤であり、過酸化水素、ヒドロキシルラジカル、ペルオキシ亜硝酸、スーパーオキシドなどの通常、健全な治癒反応に関与するものを挙げることができる。生体系では、分子の分解で酸化の具体的な目的に関してオキシゲナーゼと呼ばれる特定の酵素もある。蛍光分子における反応性酸素種またはオキシゲナーゼ活性の悪影響は、通常、蛍光の減少(loss)である。インジケーター分子、または受動的タグ、プローブ若しくはラベルの場合には、デバイスまたは診断の耐用年数及び感度は限定されるか、または蛍光シグナルの酸化的劣化により完全に効果をなくしてしまいうる。
【0024】
[0056]間質液(interstitial fluid:ISF)中のROS源は好中球由来でありえ、これは損傷に応答するときを除いて、通常、ISF内にはない。好中球は通常、その特別な修復機能及び保護機能を実施するために、損傷に応答するのに限られた時間、通常、間質腔にある。好中球は非常に反応性の酸素種を放出し、これは任意の損傷組織と任意の外来材料を酸化して破壊して、再生/修復を完全にできる。
図1Aに示されているように、これらの反応性酸素種は、酸化の影響を受けうる材料及び/または化学インジケーターなどの重要な機能性成分を攻撃することによって、移植デバイス、材料またはセンサーに損傷も与えることがありえる。
【0025】
[0057]本発明の態様で使用される好ましいインジケーターモノマーとしては、反応性酸素種由来の酸化損傷に対して耐性であるように設計されている米国特許出願第2007/0014726号に記載されているものが挙げられる。しかしながら、当業者は、多くの種類のインジケーター、特に上記特許及び文献(段落[0004])に記載のものを使用しえることを理解するだろう。好ましい態様では、インジケーターはフェニルボロン酸残基を含む。
【0026】
[0058]本発明の態様で使用される好ましいインジケーターモノマーは、インジケーター分子の酸化に対する感受性を減少させるために、電子求引基を含むように設計されている米国特許第7,851,225号に記載のものも挙げることができる。本発明の態様において、アリールボロン酸残基を含むインジケーター分子は、ボロン酸残基を含む芳香族部分に一つ以上の電子求引基を加えることにより酸化に対してより耐性として、ボロネート部分(boronate moiety)を安定化することができる。「アリール」なる用語は、広範な芳香族基、たとえばフェニル、多核の芳香族、ヘテロ芳香族、多核ヘテロ芳香族などを包含すると理解されよう。非限定的な例としては、フェニル、ナフチル、アントリル、ピリジルなどが挙げられる。広範な電子求引基は、本発明の範囲内であり、ハロゲン、シアノ、ニトロ、ハロ置換アルキル、カルボン酸、エステル、スルホン酸、ケトン、アルデヒド、スルホンアミド、スルホン、スルホニル、スルホキシド、ハロ置換スルホン、ハロ置換アルコキシ、ハロ置換ケトン、アミドなど、またはこれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。最も好ましくは、電子求引基はトリフルオロメチルである。本発明の態様において、インジケーター分子の電子求引基は、以下に示すインジケーター分子の具体的な化学構造のいずれかでR
1及び/またはR
2位置を占める:
【0028】
{式中、Arはアリール基であり;R1及びR2は同一または異なり、電子求引基である;m及びnはそれぞれ独立して1〜10であり;R4は検出可能な部分であり;Rはそれぞれ独立して、ゼロ〜10個の連続または分岐した炭素及び/またはヘテロ原子をもつ結合基であり、少なくとも一つのRはさらに重合可能なモノマー単位を含む}。特に好ましい態様において、インジケーターは
図2A及び2Bに示した化合物の一つ以上を含む。上記定義から、インジケーターモノマー化合物及び検出系はポリマーの形態(polymeric form)でありえるとも理解される。
【0029】
[0059]本明細書に記載の本発明は、任意のインジケーターを保護することができ、
図2A及び2Bに詳細が記載された好ましい構造に限定されないと理解すべきである。体内に挿入する他の材料及び生物学的製剤(biologic)は、酸化、特にROSによる酸化により損傷を受けうる。そのような他の材料は吸光型インジケーター、タンパク質、分子、整形外科的インプラント、美容的インプラント、ペースメーカーワイヤなどでありえる。インジケーターまたは構造体が過酸化物/ROSによる酸化に影響を受けやすい限り、本明細書に記載の本発明はそのようなインジケーターまたは構造を保護するだろう。
【0030】
[0060]移植可能なデバイスには、デバイスを挿入できるだけの大きさの皮膚の穴が必要である。本発明の一態様において、センサーは、筋肉と真皮との間の皮下空間内にセンサーを置くための手順で皮膚の中に移植される。最も小さく且つ最も生体適合性のデバイスの場合であっても、異物の侵入の結果として、局所及び隣接組織に機械的な損傷が発生する。これは、最初に皮膚を突き抜けなければならず、組織を押しのけてそしてポケットまたは空間を作り出し、そこにデバイスを配置して、その目的とするin vivo機能を達成させるためにその場所に留まらなければならないからである。その相対的なサイズ及び置き換え以外に、センサー自体の相対的な生体適合性は、センサーまたはデバイスをその場所に置くために局所組織に課された最小の損傷に影響を与えない。異物侵入及び局所組織損傷の結果として、宿主を保護するために、急速且つ正常な炎症カスケードが侵入に直接反応して宿主内で開始し、侵入の機械的損傷を治すために修復プロセスが直ちに開始する。すなわち傷は治癒し始める。
【0031】
[0061]センサーを動物、より正確にはヒトに設置すると、殆ど直ちに生物学的反応と、炎症の直接的な結果として、体によりセンサーの拡張性能に加わった損傷とが観察される。炎症反応による被害の最終結果は、たとえばシグナル強度を弱めることによる、デバイスの耐用年数を縮めることである。他のデバイスに関しては、耐用年数の縮小は、応答劣化(fouling)、機械的強度、電気的若しくは機械的絶縁特性、表面浸食(生体適合性に影響しえる)の減少に関して、または他の測定可能な特性に従って測定できるだろう。
【0032】
[0062]炎症反応は、創傷に対する直接の反応で発生する一時的な状態によって一部構成される。デバイスを移植する結果として小さな組織損傷がどうしても起きるが、ROSに伴う炎症反応の特定の側面は、移植デバイスに悪影響を与えうることが知見された。さらに治癒の過渡期後、センサーを取り囲んでいる炎症症状はかなり治まるが、移植デバイスに対して長期にわたる低レベルの異物反応がある。
【0033】
[0063]上記参照の問題に対する解決策は、インプラント領域に、局所的に発生するROSを分解する移植デバイス表面上またはその周囲にある材料、構造体及び/またはコーティングを適用することである。デバイスを移植すると、材料、構造体及び/またはコーティングは多孔質センサーグラフトに入り込むROSに対して化学的バリヤを提供し、それによって
図1Bに説明されているように、ROSが酸化によりインジケーターシステムを攻撃しないようにする。
【0034】
[0064]本発明の態様において、前記材料、構造体及び/またはコーティングは、in vivo環境内で充分に非毒性である、銀、パラジウム若しくはプラチナ、またはその酸化物などのROS(特に過酸化水素)の分解に触媒作用を与えうる生理学的に適合可能な金属または金属酸化物を含むことができる。生理学的に適合可能な金属が本発明の対応においてコーティングとして具体化されるとき、コーティングはスパッタ蒸着などにより任意の好適な方法でセンサー材料に適用することができる。材料、構造体及び/またはコーティングの厚さは、たとえば約0.5nm〜約2.5mmなどの広範囲を変動しえる。本発明のさらなる態様において、材料、構造体及び/またはコーティングの厚さは、約1nm〜約20nm厚さを変動しえる。本発明のさらなる態様において、材料、構造体、及び/またはコーティングの厚さは、約3nm〜約6nmを変動しえる。
【0035】
[0065]
図3は、シグナルが移植グルコースセンサー由来のものである場合、デバイスの移植に対する生物反応、特にROSの存在の結果として、正規化された(normalized)シグナル減少例を示すグラフである。
図3のデータは、手首背部領域の皮下空間内で、三人の異なるヒト(P06、P10及びP11と特定)に移植した三つのセンサーから得た。手順完了後、外部ウォッチリーダー(external watch reader)をセンサーの上に設置し、センサーと外部リーダーとの間でデータ通信ができるようにした。シグナルデータは四日間にわたってセンサーからとった。
図3から、移植手順(手順自体は約5分必要とする)後、第1日目の間に非常に迅速かつ顕著なシグナルの低下が起きた。正規化スケールでは、センサーのうち二つでシグナルは24時間後に実質上100%低下し、第三のセンサー由来のシグナルは、24時間後に約90%低下した。このシグナルの低下は、好ましくない。というのも、シグナルの低下によりインプラントの全耐用年数が短くなるからである。
【0036】
[0066]本発明の態様は、炎症反応を伴うROSが、間隙(interstitial space)またはROSが存在するかもしれないところはどこにでも配置されたセンサーインプラントに損傷を与えうる酸化メカニズムに取り組むものである。特に本発明の態様は、酸化がROSによって生じる場合の、インジケーター高分子の酸化によるシグナル減少を処理する。ヒト(及び動物)由来の外植センサーを分析すると、反応性酸素種の攻撃の特異的且つ明確な証拠をさし示す。本発明の状況において、外稙(explanted)センサーとは、生体内に移植され、続いて体から取り出されたセンサー(または生物学的組織ではない通常、任意の異物)である。外稙センサーは、生体から取り出された後に、外稙片(explant)に生物学的材料がついたままかもしれない。創傷治癒に潜在的に関連した酸化剤としては、損傷に対する応答でその部位に移動した局所修復細胞から生成されるように、過酸化水素、スーパーオキシド、次亜塩素酸、ペルオキシ亜硝酸及びヒドロキシラジカルが挙げられる。インジケーター高分子に与えたROS由来の特定の酸化反応による損傷は
図1Aに示されており、このインジケーター高分子は本発明の態様においてグルコースセンサーとして作動する。
【0037】
[0067]
図1Aは、本発明と関連して有用でありえる一つのグルコースインジケーター分子(モノマー)のin vivo ROS酸化的脱ホウ素化(oxidative deboronation)反応を示し、好中球修復細胞メカニズムによって生成したROSの直接の結果として、インジケーターシステムのボロネート(boronate)認識素子がヒドロキシル基に転換することを示している。インジケーターシステムのボロネート認識素子がヒドロキシル基に酸化されると、標準インジケーター分子がin vivo変化インジケーター分子に転換することによって、分子内の活性の全損(total loss)(特に、グルコース濃度により影響を受けた蛍光変調(fluorescence modulation))を生じる。
図1Aに示されているように反応における臨界結合エネルギーは、C-C=358kJ/mol:C-B=323kJ/mol;及びB-O=519kJ/molである。これらの結合エネルギーは、最も低い結合エネルギーをもつ炭素-ホウ素結合が、酸化による攻撃及び開裂に最も影響を受けやすいということを示している。この分析は、拡張動物試験(extended animal testing)由来の外稙センサーにおいて、アリザリンレッドアッセイ(ボロネートに関しては陰性)により、さらにギッブス試験(フェノールに関しては陽性)から確認される。インジケーター分子からのボロネートの減少は、蛍光シグナル変調の減少に直結する。
【0038】
[0068]上記のように、ROSにより駆動される酸化は、皮下にセンサーを移植する刺激並びに付随する妨害(disruption)及び局所組織に対する小さな損傷に由来する炎症を正常に治癒する結果である。インジケーター高分子が一つ以上のボロン酸認識素子を含むとき、ROSにより駆動された酸化により脱ホウ素化が引き起こされ、インジケーター高分子からのシグナルが減少し、これによってセンサーの耐用年数を縮める。ROSにより駆動される酸化は、他の同様に感受性のデバイスまたは材料の耐用年数も縮めることがある。過酸化水素は、インプラントのインジケーター高分子を酸化する、最も可能性のあるROS種と特定されてきた。
【0039】
[0069]しかしながら、過酸化水素の酸素と水への分解は、以下のように金属銀により触媒作用を受ける:
【0041】
[0070]以下に記載の実験は、過酸化物がセンサーのin vivo機能性を破壊するよりも早く金属銀が過酸化水素を分解することによってインジケーターグラフトを保護するように、本発明の態様に従ってセンサー上またはセンサー中に据え付けまたは構成しえる方法を決定するために実施した。さらにパラジウム及びプラチナなどの他の金属は、本発明の態様に従ったセンサーを組み込み、及び過酸化水素に対する同様の活性について研究した。
図1Bは、本発明の態様に従って過酸化水素の分解に触媒作用を与える金属の存在により、ROSにより駆動された酸化的脱ホウ素反応(ROS driven oxidative deboronation)から、本発明に関連して有用でありえる一つのグルコースインジケーター分子をin vivo保護することを示す。さらに、過酸化水素を触媒的に分解する金属の酸化物は、本発明の態様に好適でありえる。
【0042】
[0071]本発明の態様は、ROS駆動酸化の作用からデバイスを保護する保護層を含む移植可能なデバイスである。態様において、デバイスは、多孔質センサーグラフトで少なくとも部分的に包み込まれたセンサーでありえ、ここで多孔質センサーグラフトは、注目する検体に感受性であるグラフト内に埋め込まれたインジケーター高分子を有することができる。好ましい態様では、インジケーター高分子は、グルコースの存在に対しても感受性でありえる。態様によっては、ROSが移植可能なデバイスの任意の他の成分と反応しえる前に、保護層はROSの分解に触媒作用を与える金属から構成される。態様によっては、保護層の金属は、銀、プラチナ、パラジウム、マンガン、及び/またはその合金または金を含む合金(gold-inclusive alloy)から構成される。態様によっては、保護層は、ワイヤ、メッシュ、またはデバイスの少なくとも一部の周りを包んだ他の構造的な覆い(encasement)の形態でありえる。他の態様によっては、保護層はデバイスの少なくとも一部にスパッタ蒸着されたコーティングの形態でありえる。これらの非限定的な態様は、以下の例示的な態様として使用される。
【実施例】
【0043】
[0072]本発明の一態様において、すべての過酸化水素がメッシュなどの多孔質触媒バリヤを通って拡散しなければならず、従ってインジケーター分子との反応の前に水と酸素に分解するように、センサーグラフトと外部環境との間に金属銀が配置される。過酸化水素を分解する銀の効力は、
図4Aに示されるように180×180ミクロンの純銀メッシュを使用して試験した。(メッシュで使用した数値はワイヤ/インチを参照する。
図4Aは、スケールを提供するために銀メッシュと共に25ミクロン厚さ(直径)の金メッシュも示す)。
図4Bは、メッシュ403の説明図と、メッシュ403がセンサー401の周囲に適合するはずであることを示しており、ここでセンサー401は本発明の態様に従った多孔質センサーグラフト402の領域を有する。
図4Cは、本発明の態様に従って使用されるメッシュの側面図及び端面図である。
【0044】
[0073]過酸化水素上の銀メッシュの触媒作用を試験するために、キシレノールオレンジを含む四つのサンプル(サンプルA、B、C及びD)を以下のように試験した。検出は、キシレノールオレンジの存在下、第一鉄の第二鉄への酸化をベースとし、ここで溶液中に過酸化水素を含まないサンプルは透明且つオレンジにみえる。過酸化水素がキシレノールオレンジと一緒に存在すると、溶液は紫で不透明にみえる。サンプル(A)は、過酸化水素を全く添加しなかった対照であった。サンプル(B)は、銀が全く存在せず、0.2mMの過酸化水素を含んでいた;サンプル中の過酸化水素により溶液は紫で不透明になった。サンプル(C)は0.2mM過酸化水素を含んでおり、三十(30)分間、銀メッシュを存在させた。サンプル(B)と比較して、サンプル(C)は、より透明でより明るい色であり、このことはサンプル(C)の溶液中の過酸化水素量が減少したことを示している。サンプル(D)は0.2mMの過酸化水素を含んでおり、六十(60)分間、銀メッシュを存在させた。サンプル(D)はオレンジ色、透明で、対照サンプル(A)と同じようにみえ、このことはサンプル(D)の溶液中には過酸化水素が残っていないことを示している。
【0045】
[0074]
図5Aは、サンプル(A)、(B)、(C)及び(D)に関する可視光のスペクトル吸収プロフィールを示す。特にサンプル(D)、銀に六十(60)分間暴露した0.2mM過酸化水素の吸収プロフィールは、過酸化水素を全く含んでいなかった対照サンプル(A)の吸収プロフィールと殆ど同一であった。
【0046】
[0075]
図5Bは、水中の銀メッシュによる過酸化水素のin vitro分解プロフィールと、ヒト体内の移植物部位で測定した過酸化水素のin vivo生成プロフィールとの間の比較を示す。in vitro分解プロフィールは、pH約7の水中に0.2mMの過酸化水素1.5mLの中に銀メッシュ約60mgのものである。この二つのプロフィールを比較すると、180×180純銀メッシュなどの銀触媒を使用する過酸化水素分解速度は、ヒト1型糖尿病の創傷治癒で測定したように、過酸化水素生成のin vivo速度の約7倍速いことが明らかである。
【0047】
[0076]過酸化水素の水と酸素への分解における銀の触媒活性は非常に効果的であるので、本目的に関して使用される任意の銀と移植可能なデバイスとを組み合わせると、インプラントに近接近さえしていればまだ有効であるはずである。言い換えれば、銀は、必ずしもデバイスの構造体に結合したり、これに組み入れたりする必要はない。しかしながら、過酸化水素を分解する銀のin vitro触媒活性は、塩素イオンによって妨げられえることが公知である。塩化物による銀の抑制は、銀触媒被毒(silver catalyst poisoning)と呼ばれる。
【0048】
[0077]パラジウム及びプラチナなどの他の金属も、異なる速度及び効力及び動的プロフィールで過酸化水素を分解する。本発明者らは、パラジウムもプラチナも、塩化物によって阻害されず、血清アルブミンの高タンパク質濃度(70mg/ml以上)によっても抑制されないことを知見した。銀と同様に、パラジウム及びプラチナも体が過酸化水素を生成するよりも早い速度で過酸化水素を分解し、過酸化水素がデバイスに達しないように及び/または損傷を与えないために、移植可能なデバイスに近接近しても効果的である。あるいは、銀、パラジウム、プラチナ、金またはその組み合わせ若しくは酸化物の合金を使用して、過酸化水素の酸素と水への分解に触媒作用を与えることができる。本発明の状況において、近接近(close proximity)とは、所望の方法でデバイス及び/または材料を機能させるのに十分に近い距離である。近接近にあるように限定する距離または厚さの範囲は、構造体及び構造体態様の形状に依存して変動しえる。通常、近接近の範囲は最大約2.5ミリメートルである。本発明の態様において、センサーを保護するのに使用される構造体は、センサーボディを完全に取り囲んだり、封入する必要はないが、センサーのインジケーター領域を保護するように実施することだけが必要とされる。
【0049】
[0078]プラチナ及びパラジウムのサンプルは、数時間、リン酸塩緩衝生理食塩水(PBS)中、37℃で0.2mMの過酸化水素の溶液中に離して設置した。サンプルは、純金属ワイヤで包み、本発明の態様に従ったセンサーコアの膜グラフト領域上にスライドさせたプラチナメッシュ及びパラジウムコイルであった。この実験は、多くの様々なサンプルで、それぞれの試験で導入した新しい過酸化水素を使用して繰り返した。プラチナ及びパラジウムサンプルは、溶液中の過酸化水素を完全に分解した。本発明の態様によっては、プラチナ及びパラジウムは、金属触媒をセンサーに組み込む構造体を設計する際に使用するための好ましい金属である。そのような構造体は、デバイス表面から測定して厚さが最大約2.5mmでありえる。
【0050】
[0079]
図6A及び6Bは、本発明の態様に従った、センサーコア601の周囲に巻きつけられたワイヤ602の側面図及び断面図を示す。
図6C及び6Dは、本発明の態様に従ったセンサーコア601の周囲に巻きつけられたメッシュ603を示す。非限定的な例において、グルコースなどの検体がコイルまたはメッシュの割れ目(crack)の間に拡散するように、ワイヤ及びメッシュはコイルまたはシリンダー形状に巻きつけられ、センサーの上をスライドされている。コイルまたはメッシュ形状の金属または金属酸化物に加えて、本発明の態様に期待される他の構造的な形状は、
図6Eに示されているような穿孔または溝付の覆い604、
図6Fに示されているような穿孔または溝付きフォイル605、
図6Gに示されているような穿孔または溝付ジャケット606、
図6Hに示されているような環または部分環607、織組織または
図6Iに示されているようなダッチ織組織(Dutch weave)608、
図6Jに示されているようなジグザグパターンのメッシュ609、及び金属及び/または金属酸化物のワイヤ及び/またはリボンで形成されたそのような他の構造体、あるいは材料在庫(material stock)の他の形状である。これらの構造体は、過酸化水素が移植可能なセンサーのグラフト内に拡散しようとするのにつれて環境中の過酸化水素が金属上で反応するように設計されている。本発明の好ましい態様では、設計は、周囲の過酸化水素による酸化からグラフトインジケーター高分子を保護するために、外部環境に暴露される金属表面積を増加させるように、及び移植可能なセンサーのグラフト表面を覆っている細孔、隙間(gap)、及び/または穿孔が十分な密度の拡散層であるように考えられている。
【0051】
[0080]本発明の別の態様は、多孔質センサーグラフト内に懸濁した、(本明細書中で開示した)過酸化水素の分解(degradation)に触媒作用を与える金属のナノ粒子形を使用することができる。非限定的な一態様において、多孔質センサーグラフト材料の形成には、ナノ粒子金属を添加することができるゲル懸濁液を含むことができる。デバイスの一部として形成されると、グラフト内に閉じ込められたナノ粒子金属をもつ多孔質センサーグラフトは、インジケーター分子などのセンサーグラフト及びデバイスの他の構成要素のROS駆動酸化を妨げるように作動することができる。本発明の態様において、ナノ粒子金属は、多孔質センサーグラフト中に均一にくまなく分配及び/またはグラフト内にミクロ局在化(micro-localized)することができる。本発明の非限定的な態様において、ナノ粒子金属は直径最大80nmとすることができる。
【0052】
[0081]構造的な覆い(structural encasement)(たとえばワイヤ、メッシュ、シースなど)を使用する態様は、過酸化水素による酸化的劣化から移植可能なデバイスを保護することに好結果をもたらすが、移植可能なデバイスは非常に小さなサイズであるので、そのような保護的構造体は、グラフトと外部溶液(及び組織)との間のバリヤとしてそのようなデバイス上に機械的に据え付けにくいか、または困難でありえると理解される。そのような構造的な封入(structural encasing)を利用すると、特にプラチナ及びパラジウム材料の場合には、コストも高くなってしまうだろう。移植可能なデバイスと一緒に組み入れるべき構造体に必要なエッジ効果(edge effect)、表面モルフォロジー及び小さな寸法での製造品質は、構造的な封入に関する問題でもありえる。さらに、過酸化水素の触媒作用は金属表面で発生し、過酸化水素原子のサイズに対して構造的態様に含まれる金属の量は、過酸化水素の所望の分解を達成するのに理論的必要分よりも桁違いに多いかもしれない。細胞組織は、コイル、メッシュ、織組織(weave)の空間に向かって成長し、センサーの潜在的な除去をより単調なものにし、局所細胞組織へある程度悪影響を与えうることも懸念される。しかしながら、このことは、構造的な覆いを使用する態様が、ROS駆動酸化に関連する上記のような問題に対する実行可能且つ確固たる解決策ではないことを意味するつもりではない。それとは反対に、これらは非常に有効であることが証明されている。
【0053】
[0082]本発明の他の態様において、保護金属は、スパッタコーティング法を使用して多孔質センサーグラフトに適用することができる。たとえばこの方法は、銀、プラチナ、パラジウム、マンガン、金及びその合金及び/または酸化物を含むスパッタリングターゲットを使用することができる。金属または金属酸化物でスパッタコーティングしたセンサーグラフトは、検体はセンサーグラフト内を通過できるが、センサーグラフトに過酸化水素が拡散するのに対して保護バリヤとして効果的に機能するのに十分に多孔質なままでなければならない。本発明の態様において、触媒として作用する金属または金属酸化物は、外界と内部グラフトとの間でやや蛇行した(tortuous)拡散層として構成することができ、これは高濃度及び早い生理学的生成速度であっても、過酸化水素からインジケーターを保護する。やや蛇行した拡散層は、恒久的(permanently)選択的触媒バリヤとしても特徴付けることができる。
【0054】
[0083]スパッタ蒸着は、金属供給源または「ターゲット」から材料をスパッタリング、即ち放射することによって薄い金属フィルムを蒸着させる公知の方法であり、この後、ターゲットからの原子が基板上に蒸着する。通常、真空封止した環境内で、高エネルギーイオン化ガスがプラズマを形成し、ターゲットに放出され、これが金属ターゲットの原子をターゲットから決裂させる。ターゲットから取り除かれた金属原子が基板上に蒸着するにつれて、金属薄膜が基板上に形成し、これと結合する。ターゲット上の放射に使用された気体及びターゲット自体の組成に依存して、基板上に蒸着された金属フィルムは、純粋な金属、合金、酸化物、窒化物、オキシ窒化物などでありえる。
図7は、スパッターコーティングチャンバの一般的な説明である。
【0055】
[0084]金ターゲットは、多孔質センサーグラフト上のスパッタ蒸着の初期試験で使用した。
図8A-Cは、金でスパッタコーティングしたセンサーグラフトの、倍率を高くした三つのSEM画像である。多孔質センサーグラフト材料それ自体は通常、SEMでは見えない。写真の画像は、ヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA)コポリマーグラフト801表面上にスパッタリングした、SEMで見える金属金の画像である。従って、これらの写真は、金ターゲットを使用するスパッタ蒸着後の、グラフト素子表面を覆う金属金シェルのみである。
図8A〜Cで使用したセンサーグラフト801は、グラフト膜の断面画像と深さ全体が完全にSEM下で観察できるように、開裂されて、スパッタリングされた。外部からのみスパッタリングされ、次いで開裂され、次いでSEM画像を撮ると、予想される画像は、下の眼に見えない有機グラフト層上に載っている金属多孔質薄層のはずである。グラフト領域で目に見える金属金の層は非常に薄く(数nm)、多孔質グラフトそれ自体の表面積に少なくとも匹敵する非常に大きな表面積をもつ。グラフト801を金属でスパッタコーティングすると、グラフトのマクロ細孔(porosity)を塞いだり詰まらせたりしない。すなわち、注目している検体は、インジケーター分子の中に拡散し、これと相互作用することができるだろう。本発明の態様において、センサーを保護するのに使用されるコーティングは、センサーボディ802を完全に取り囲んだり、封入したり、さらにはセンサー上に存在する多孔質グラフト801の全ての部分を覆う必要はないが、センサーのインジケーター領域を保護するように実施する必要がある。
【0056】
[0085]
図9は、センサーボディに向かって内側を観察しているグラフトの外部表面からのSEM写真である。再びこの画像は、グラフトの技術的なものではなく、グラフト上にスパッタリングされた金属金の画像であり、これによりSEMによってグラフトを可視化することができる。この画像は、グラフトの全表面積を効果的に金でコーティングして可視化することを示している。従って、暴露された金属の表面積は、グラフトの表面積と少なくとも等しいと推測することができる。
図6Aで記載された一態様では、外径の周囲に巻きつけた400ミクロン直径のパラジウムワイヤコイルを使用し、過酸化水素に対して優れた保護を示した。多孔質センサーグラフト上の金属のスパッタコーティングは、ワイヤーコイルよりも大きな表面積を有する。このことは、多孔質センサーグラフト上のスパッタコーティング金属の保護能力は、上記本発明の構造的な覆いを使用する態様よりも優れているかもしれないということを含意する。
【0057】
[0086]
図10Aは、多孔質センサーグラフトを含む蛇行膜構造体1000を示し、これは本発明の態様に従ったセンサーボディ1003の外側の構造体の一部でありえる。任意の溶質1001は、蛇行拡散通路1002に沿って行き、膜1000を横断する。
図10Bは、金属化表面層1004をもつ蛇行膜1000を示し、インジケーター分子1005は多孔質センサーグラフト1000に示されている。これにより蛇行拡散バリヤが生み出されるが、マクロ細孔は依然として約1ミクロンであり、金属が付着することなく大きく開口している。態様によっては、スパッタリングされた多孔質センサーグラフトの深さはミクロレベルで見通し距離(line of sight)に限定されている。ターゲットからスパッタリングされた金属は通常、蛇行膜構造体に深く拡散することができない。というのも、衝撃を受けるとスパッタリングされた金属は蒸着するので、
図10Bに示されているように、影になった表面より下の領域はコーティングされないままだからである。本発明の態様によっては、多孔質センサーグラフトへの金属化層1004の厚さは5ミクロン以下でありえる。他の態様では、追加の層をスパッタリング環境に導入することができるか、磁界を使用することができるか、金属化層1004が多孔質センサーグラフトの深さ全体の中にくまなく下方へ伸長することができるように、蛇行膜1000が見通し距離の点を超えてスパッタリングされるように他の方法を使用することができる。上記のように、スパッタ蒸着後、センサーグラフトは多孔質のままである。
【0058】
[0087]本発明の特定の態様において、多孔質センサーグラフトの深さ全体は約100ミクロンである。金属でスパッタコーティングされた多孔質センサーグラフトの表面積は、スパッタリングされた金属により覆われた任意のインジケーター分子の機能を失うと予想される。しかしながら、そのような態様では、上部の約5ミクロンを表面金属化に割り当てて触媒的金属保護層を提供すれば、センサーグラフトの残りの約95ミクロンは、本発明の態様に従ったシグナル及び変調(modulation)を提供するのに十分以上である。グラフト膜上にスパッタリングされた金属が、グラフト膜の構造的完全性または機能に何らかの悪影響をもつという懸念はない。本発明の態様では、金属層の厚さは約0.5nm〜約500nmの厚さでありえる。本発明の特定の態様では、スパッタリングされた金属層の厚さは約1〜20nmの厚さである。本発明の好ましい態様では、スパッタリングされた金属層の厚さは約3〜6nmの厚さである。
【0059】
[0088]好ましい態様に関しては、パラジウムとプラチナはいずれも、通常使用され、市販されているスパッタリングターゲットである。これらの金属若しくは合金またはこれらの金属の組み合わせ、あるいは場合によりこの種の他のものは、多孔質グラフト層の表面をスパッタリングするのに使用することができる。センサー上にスパッタリングされたこれらの金属は、グルコース(または興味のある他の検体)を自由に拡散できるグラフト上に保護層を構築できるが、創傷治癒の間及び、in vivoでセンサーの耐用年数期間の間にセンサー表面で出合う過酸化水素も分解するだろう。様々な態様において、センサーコアの全表面をスパッタコーティングするか、またはセンサーコアの一部分のみをコーティングすることができる。
【0060】
[0089]
図11A及び11Bは、本発明の状況において使用しえる代表的なセンサーデバイスを図示する。特に
図11A及び11Bは、代表的な電気光学的検出装置のマイクロエレクトロニクス1105及び内部1104を含むポリマー包装物(encasement)1103を示す。マイクロエレクトロニクス1105は、たとえば放射線源1102と検出器1101などのマイクロエレクトロニクス構成成分を含むことができる。好ましい一態様において、放射線源1102はLEDであるが、他の放射線源も使用することができる。また好ましい一態様において、検出器1101は感光性素子(たとえば光検出器、フォトダイオード)であるが、他の検出器を使用することができる。代表的な電気光学的検出装置に含まれえるマイクロエレクトロニクスは、本明細書中、その全体が参照として含まれる米国特許第6,330,464号に記載されている。
【0061】
[0090]
図11Bにより詳細が示されているように、センサーデバイスの表面は、同様に
図10Bに示されているように、多孔質センサーグラフト1000を覆っているプラチナ金属コーティング1004を備えた、蛇行膜を含む。
【0062】
[0091]スパッタコーティングとして使用される本発明の範囲内の金属(たとえばプラチナ、パラジウムなど)は、センサーグラフトの細孔を閉塞させたり、詰まらせたり(foul)する懸念を生じさせない。たとえば、プラチナ原子の原子半径は135pmであり、直径は270pmである。すなわち、プラチナ原子の直径は0.27nmである。従って、センサーグラフト表面頂部の約3nm厚さのプラチナスパッタコーティングは、プラチナ原子約11個の厚さのはずである。同様に、約6nm厚さのプラチナコーティングは、プラチナ原子約22個の厚さのはずである。従って、1μm(1,000nm)幅のマクロ細孔を細孔壁上の金属コーティングの厚さ6nmだけ狭窄(narrowing)させると、細孔直径994nmが残ることになるが、これは著しい狭窄ではない。同様に、金のスパッタコーティングにより、
図9のSEM画像により示されているように、細孔センサーグラフトのマクロ細孔の最大直径は約1μmである。
【0063】
[0092]開示されたスパッタコーティングプロセスは多孔質センサーグラフトのマクロ細孔を完全には充填せず、むしろ外側のマクロ細孔を裏打ち(line)するので、本発明の態様は、計画的に多孔質構造体の有利な点を保持することができる。あるいは、非多孔質構造体は、ROSによる劣化を防ぐという同じ目的を達成するためにスパッタコーティングすることができる。あるいは酸化剤による劣化速度が比較的早い、スパッタ蒸着した触媒コーティングは、本発明の態様における多孔質センサーグラフトなどの酸化感受性材料に隣接して適用することもでき、これらの酸化感受性材料の酸化的劣化を効果的に防ぐことができる。たとえば、センサーの半分以下のみ、またはその表面の一部に酸化感受性領域をもつセンサー(または他のデバイス)に関しては、スパッタコーティングは、(
図6Hに見られる構造的覆いの態様と同様に)センサーの反対側(すなわち裏側)に適用することができ、コーティング付近(proximity)は、ROSの動的劣化速度が早いので、センサーの機能要素を酸化から保護するのに十分でありえる。スパッタリングされたコーティングは連続的である必要はない。コーティングは、デバイス、センサー、または材料を保護するために酸化剤分解の必要な速度を達成するために、(領域及び/または質量に関して)触媒の量を提供するのに必要とされるように十分な面積、近接(proximity)、及び/または形状の一つ以上の領域として適用することができる。あるいは、スパッタリングされた材料の所望のコーティングは、センサーまたはデバイス表面をスパッタチャンバに入れる前に、センサーまたはデバイス表面を単にマスキングすることによりでき、これによって所望の触媒の置換及び形状に従って、スパッタリングした触媒材料を蒸着させることができる。
【0064】
[0093]試験目的に関しては、スパッタコーティングは、プラチナターゲットで実施して、(内部電源、トランスミッターなしに本発明の態様に従ったセンサーボディ)上にプラチナコーティングとした。重量に関しては、多孔質センサーグラフト表面にスパッタされたプラチナの総量は、約10μgと予想される。この測定は、センサーコア表面積予測、金属密度及び公称金属化厚さ(約3nm)からなされる。パラジウムの対応する重量は、同一金属化厚さに関しては約5μgである。
【0065】
[0094]多孔質センサーグラフトを効率的にスパッタコーティングするために、センサーコアの態様は、センサーコア長さの部分に沿って「サドルカット」となるように変更した。態様によっては、このサドルカットは、センサーボディのポケット領域にキャストすべき多孔質センサーグラフト材料を使用して、インジケーターモノマーの共重合製造を可能にするセンサーボディ表面に機械加工される、凹みをつけた、均一深さのポケットである。態様によっては、インジケーター高分子をもつ多孔質センサーグラフトは、これらの領域内に配置される。サドルカットは、インジケーター高分子を備える多孔質センサーグラフトの領域、かくしてスパッタコーティングに関して領域を局在化することができ、これによりin vivoで機能する際に、センサーからの誘発的電力遠隔測定法で任意の寄生的干渉(parasitic interference)を最小化し易くする。さらに、サドルカットによりスパッタチャンバ内でのセンサーの効率的な配置が可能になり、局在化領域のみがコーティングを必要とするので、センサーコアを回転させる必要性を取り除く。本発明の他の態様では、センサーコアの一を超える側面または領域をスパッタコーティングすることができる。本発明のさらなる態様において、コーティング領域は、スパッタコーティングの寸法及び形状がセンサーの機能に適合する限りは、丸、正方形、長方形、またはセンサーコアを連続して取り囲む領域などの好適な形状を有することができる。
【0066】
[0095]本発明の態様をさらに示し、
図12〜16に図示する。
図12Aは、テーパー状の深さの切込みを備えたサドルカットの側面プロフィール形状を図示する。
図12Bは、均一な深さの切込みを備えたサドルカットの側面プロフィール形状を図示する。
図12Cは、サドルカットセンサーコア用の略図である。
図12Dは均一の深さのサドルカットセンサーコアの上面図である。
図13及び14は、サドルカットセンサーコア(
図13)と標準的な「360度カット」センサーコア(
図14)との間の違いを示している。
図13と14のセンサーコアは、緩衝液に沈められており、再水和させたインジケーター高分子のついた領域が不透明及び白色としてみえる。
図14に見られるように、サドルカットグラフトは、本発明の全ての態様で必要ではない;センサーボディの特定の領域に配置されていようと、センサーボディを完全に覆っていようと、多孔質センサーグラフトは保護することができる。
図15は、インジケーター分子のついた多孔質センサーグラフト領域を保護するために、サドルカットセンサーコアを(図示したように、多孔質センサーグラフト領域を持つセンサーコアの左半分を)スパッタリングに暴露するさらなる図である。
【0067】
[0096]製造での検討事項またはin vivo機能性がそのような形状により促進される場合には、他の形状やカットを使用することができる。たとえば、センサーコアは他の幾何学的配列に従って切断されるか、スパッタリングすることができる様々な深さの穿孔部分をもつか、センサーコアから離れてスパッタリングされた(任意の形状のデバイスに適用することができる)フィルムにより取り囲まれることができる。
【0068】
[0097]
図16A及び16Bは、プラチナで3nmスパッタされ、アルゴンプラズマ蒸着された、乾燥したインジケーター層(多孔質センサーグラフト)のついたサドルカットコアを示す画像である。この層は非常に薄いので、プラチナコーティングのはっきりした兆候はない。緩衝液中に沈めると、透明な乾燥(スパッタリングされた)グラフトは再水和されて、
図16Cに示されているように白色不透明の機能状態になる。3nmの金属化は原子たったの11個分の厚さであるので、表面金属化の兆候は目に見えない。
【0069】
[0098]
図17A及び17Bは、(それぞれ変調と絶対変調(absolute modulation)の割合に関する)三つのセンサーコア由来のシグナル強度の変調データを示す。変調(modulation)とは、センサーコアから測定したシグナル強度を指す。三つのサドルカットコアを試験した。一つはスパッタコーティングを受けなかったもので、「コア2」及び「コア3」は二つの異なる厚さでプラチナスパッタリングしたもので、ここでコア3はコア3よりもプラチナ層が厚かった。
【0070】
[0099]過酸化水素処理の前に、それぞれのコアに関して、0mMグルコース及び18mMグルコースの存在下、シグナル強度に関して蛍光光度計で測定した。次に、それぞれのコアを緩衝液中0.2mM過酸化水素に37℃で24時間沈め、次いでシグナル強度に関して再び試験した。保護しなかったコアのシグナル強度は、過酸化水素でたった1回24時間処理する間に消失した。コア2及びコア3は影響を受けないままであった(実験誤差内)。システムは、二回目の24時間過酸化水素暴露セッションに関して、コア2及びコア3について再充填した。二回目の酸化、全部で48時間累積過酸化水素暴露後、コア2もコア3も、過酸化水素による顕著な劣化を示さなかった。表面のプラチナ層がより厚いコア3のデータに関しては、やや良いようであった(より保護されている)が、これは分光計の仕組みか非常に小さなサンプリングの結果の実験誤差であるかもしれない。
【0071】
[0100]
図17A及び17Bは、0.2mM過酸化水素中に24時間浸漬後、プラチナでスパッタコーティングしなかった対照サンプルコアは、過酸化水素暴露によりシグナルが消失したことを示す。対照的に、プラチナスパッタコーティングしたコアは、同じ期間の間じゅう、完全に保護された。このことは、過酸化水素の高い周囲濃度による過酸化水素からグラフトインジケーター層を保護するために、グラフト表面上の非常に薄くスパッタリングされた触媒のin vitro有効性を示している。
【0072】
[0101]本発明の目的は、創傷治癒の間の酸化並びに、センサーの耐用年数の間の低レベルの長期にわたる酸化(chronic oxidation)の両方により引き起こされる重大なシグナル損失から保護することである。創傷治癒の間に発生する酸化からデバイスが保護されると、センサーインプラントの耐用年数を最終的に確立する低レベルの長期にわたる酸化となる。長期間にわたる異物反応由来の酸化を防ぐ保護層は、センサーの耐用年数を大きく延ばすだろう。
【0073】
[0102]in vivoデバイスに関するさらに重要な性能因子は、キャリブレーション間の期間を延ばすことである。長いキャリブレーション間隔をもつデバイスは、センサーの長い寿命のため、費用及び健康の両面においてユーザーに有利である。通常、機械的、化学的及び電気的に安定なセンサーは、検体濃度が唯一の変数である限り、キャリブレーションされた状態のままだろう。しかしながら長期の酸性下においては、一定の劣化的変化がインジケーターまたは構築物材料の酸化によってデバイスに強いられるので、検体変化のみに起因するものを超えて機械的及び/または化学的変化を引き起こす。化学的または生化学的変換システムを使用するセンサーに関しては、インジケーターの漸進的酸化は、経時でシグナルのドリフト(drift)または減衰として現れる第二の変数を意味する。検体によって引き起こされないか、シグナル処理システムによって補償されると理解される任意のシグナル動向(signal movement)は、センサーをキャリブレーションからドリフトさせるので、センサーの作業基準内に戻すために再びキャリブレーションしなければならない。センサー変換システム内でインジケーターまたは任意の材料成分の酸化を除去するか、遅延化させることによって、再キャリブレーション間隔を延長する。in vivoセンサーの中には、24時間の間隔ごとに3回も再キャリブレーションするものもある。1週間、1か月または四半期に1度だけのように、かなり長い間隔で再キャリブレーションする必要があるセンサーは、ユーザーにとって価値が高いはずである。本発明の態様において、インジケーター分子が、大きなシグナル損失がないように十分に保護されている場合、または分解変化が完全に停止する場合には、必要なキャリブレーションは製造時だけとなるだろう。
【0074】
[0103]センサー表面に据え付けられたプラズマスパッタリングしたプラチナ多孔質触媒拡散バリヤを使用することにより、ヒトにおいて移植センサーのROS劣化からの保護の評価試験を実施した。この試験において、21個のセンサーを、Electron Microscopy Sciences EMS150TSを使用して、3ナノメートルの深度まで金属プラチナでスパッタリングした。EMS150TSのプラズマチャンバをフラッシュし、真空にし、アルゴンガスで0.01バールまで充填した。電流は25mAに設定し、プラチナの厚さは、チャンバ内に据え付けられた厚さモニターで測定した。プラチナ蒸着後、センサーはエチレンオキシドで殺菌し、相対湿度70%(RH)で貯蔵した。
【0075】
[0104]21個すべての実験用のプラチナスパッタリングしたセンサーを、12人のヒト(1型糖尿病)ボランティアに関して手首背部領域の筋膜上の皮下空間内に移植した。同様に、12個のプラチナ処理をしていない対照センサーを7人の1型糖尿病ヒトボランティアの同一手首部位に移植した。被験者の識別番号には、「LA」または「RA」を含めて、センサーがそれぞれ左腕か右腕に移植されたことを明示した。示されたデータは、外部読み取り機へのセンサーのワイヤレス遠隔測定入力からの変調である。
【0076】
[0105]表1は、in vivoインプラントからの比較の結果である。対照センサーからのデータは、移植の間、7、10、16、23及び28日で報告した。実験用の、プラチナスパッタリングしたセンサーからのデータは、移植後3、13、21、26及び29日で報告した。
【0077】
【表1-1】
【0078】
【表1-2】
【0079】
[0106]表1のデータから解るように、プラチナ表面拡散バリヤは、未処理デバイスに対してシグナルを二倍以上のファクターで保護している。重要なことには、プラチナスパッタ処理を使用するセンサーは、未処理群で典型的なように劣化してゼロになるものは全くない。データは、周囲環境で進行しているかもしれないROSを必要とする正常な治癒反応を干渉することなく、インジケーターグラフトのミクロ環境内でインジケーターシステムの局所的保護を提供することを示している。さらには、対照群で示された、残っている変調における顕著なセンサー間及び/または被験者間の変動性は、実験用のプラチナスパッタリングした群では見られない。
【0080】
[0107]表2は、表1のin vivoインプラントに関する予測耐用年数を表す。インプラントの予測耐用年数は、曲線適合外挿入法(curve fit extrapolation)により計算する。表2において、欄は日数の範囲と臨検(visit)数に関するデータを示す。特定の日数範囲で集められたデータを使用して、正確な仕様(specification)を保持するのにそのシグナルが低くなりすぎる前に、センサーの予測耐用年数を計算し、外挿した。デバイスまたは材料を移植した後、炎症反応のROSを含む自然の治癒プロセスが続く。かくして、移植後で治癒が始まったばかりの時に近い時に実施した場合よりも、治癒期間内の後半の時間間隔、または治癒期間後に実施した計算は、移植デバイス若しくは材料の十分な耐用年数の代表例であると予測される。期間の終わりごろで使用されたデータは、初期データよりもより安定で且つより正確であると予想されるはずである。というのも、治癒プロセスは、期間の終わりごろでより安定するからである。各欄で言及された臨検は、患者のインプラントからの計算で使用される測定が行われている回によって、患者が移植後に行ったクリニックへの臨検数をさす。
【0081】
【表2-1】
【0082】
【表2-2】
【0083】
[0108]表2の計算データから解るように、インプラント表面にスパッタリングされたプラチナバリヤー層でインプラントを保護すると、センサーの変調から測定したインプラントの予想耐用年数は、大きく増加する。
【0084】
[0109]他の側面において、本発明は、任意の生体適合物質または移植材料若しくはデバイスへ適用され、ここでそのような材料またはデバイスは、in vivo炎症反応に何らかの方法で感受性でありえる、本来感受性、構造上の、または機能性でありえる。本発明の典型的な、非限定的な適用例を以下に記載する。
【0085】
[0110]本出願において上記した態様以外の連続グルコースモニターも本発明の利益を受けるだろう。たとえば、経皮ニードルタイプの内在性連続グルコースモニター(continuous glucose monitor:CGM)デバイスも、局所炎症及び異物反応を刺激するような方法で、皮下組織と直接連結する。身体は、完全に移植可能なデバイスと同じように異物材料の侵入及び機械的組織損傷に反応するだろう。過酸化水素及びROSは、任意の化学的または生化学的に変換されたシステムで実質的に酸化的損傷を生じるのと同じ効果をもつかもしれないので、本発明からの恩恵を受けると予想される。
【0086】
[0111]特に、その検出機能の一部として過酸化水素を使用するグルコースオキシダーゼセンサーは、in vivo環境に過酸化水素が自由に入れないようにする必要があることが多い。そのようなセンサーは、過酸化水素がin vivo環境中に入ったり及び/または集合したりしないように、センサーの一部としてラミネートを使用したり、過酸化水素を劣化させるための追加の触媒を使用することができる。本出願で開示された触媒保護は、そのようなデバイスに適用することができる。
【0087】
[0112]これらが積極的(たとえばセンサー)であろうと、消極的材料(たとえば整形外科または美顔用途)であろうと、すべてのインプラントは、生体組織及び流体に暴露されるので、身体の通常の反応系によって酸化に対し感受性である。生体細胞は、移植材料/デバイスにより、または材料若しくはデバイスを物理的に移植することによって引き起こされる必然的に起こる組織崩壊の修復により直接刺激された局所的な炎症及び異物反応として一般に知られている、過酸化水素などの反応性酸素種を生成する。通常、デバイスまたは材料は、生体組織中の酸化的攻撃により傷つけられる。そのようなデバイスとしては、これらに限定されないが、ペースメーカー、関節インプラント、包帯、整形外科用のデバイス、美顔若しくは再建手術用インプラント、または薬剤送達を浸出するための持続放出多孔質ポリマー材料が挙げられる。典型的な移植生体材料としては、ポリウレタン及び他のポリマーなどの材料を挙げることができる。障害は、構造的な弱体化、特性の劣化、機能性の損失、または目的とするものと異なる組成へのその化学的構造自体の変化として現れえる。これらの酸化攻撃は正常であるが、耐用年数を短くしてしまったり、最適性能を傷つけたり、あるいはインプラントを完全に損傷してしまうことが多い。本発明に従って、暴露された移植材料に適用された厚さ約0.5nm〜約2.5mmの非常に薄い、態様によってはサブミクロンの保護バリヤの層は、ROSによる酸化からデバイスを局所的に保護することができる。
【0088】
[0113]
図18に示されているように、本発明の別の態様では、ROS駆動酸化を防ぐ触媒バリヤは、心臓1800を制御するために移植されたペースメーカーの発電機1801とペースメーカーリード1802とを含むペースメーカーに適用することができる。ペースメーカーは炎症反応及び長期異物反応と付随するROS駆動酸化に暴露される。特に、本発明の態様に従って、触媒バリヤは少なくとも部分的にペースメーカーリード1802を包む構造的な覆いまたは、スパッタ蒸着により潜在的にペースメーカーリード1802に適用されるコーティングの形状でペースメーカーリード1802に適用することができる。
【0089】
[0114]あるいは、炎症反応は、これらに限定されないが、EEG若しくはEKGパッチのポリマー粘着剤、時計のバンド、イヤリング、またはヒトが鋭い感受性若しくはアレルギーをもつ任意の他の材料などの刺激に応答して皮膚の外部表面上で発生することがある。本発明に従って、そのような材料に適用される非常に薄い、態様によってはサブミクロンの、約0.5nm〜約2.5mmの保護バリヤ層を適用すると、そのような材料をROSから保護することができる。
【0090】
[0115]過酸化水素(ROS)への暴露が材料若しくは分子の性能、またはデバイスの機能を損なうかまたは劣化させるかもしれない他の非インプラント環境または用途における任意の他の暴露も、本発明からの恩恵を受けるだろう。分子、超小型回路、光学、化学またはマイクロメカニカル構築物は、外部から金属化された、多孔質保護層内に包まれることができ、目的とする分子へ自由に拡散し接近することができるので、金属化層部分で無害な酸素と水とに分解される有害な過酸化物及びROSに対して保護バリヤを提供することができる。RFID構成要素をもつデバイスなどの、保護により恩恵を受けるが、検体に対して拡散接近(diffusive access)を要求しないデバイスは、多孔質コーティングのない材料表面上の直接金属化により恩恵を受けることができる。さらに、多孔質表面に金属フィルムを適用しない用途は、より均一な表面を適切に保護するのに好適な厚さを有することができる。
【0091】
[0116]本発明を詳細に記載してきたが、本発明は記載の具体的な態様に限定されるものではない。当業者には、本発明の概念から逸脱することなく、本明細書に記載の具体的な態様から多くを利用し、変形し、及び発展しえることは明らかである。