(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
作動油を内部に貯留するタンク本体を備え、前記タンク本体の上部には前記作動油の流入口が設けられ、前記タンク本体の下部には前記作動油の流出口が設けられている建設機械の作動油タンクにおいて、
前記タンク本体の内部に設けられ、前記タンク本体の開口部に設けられた空気連通部を介して外部からの空気が入り膨縮可能に構成された袋体と、
前記タンク本体の内部に空気を入れる空気流入弁及び前記タンク本体の内部の空気を外部へ排出する空気流出弁からなる圧力調整部とを備え、
前記空気流出弁は、前記タンク本体の内部気圧が前記袋体の内部気圧よりも高く、前記タンク本体の内部気圧が予め設定された閾値以上であるときに開動作するように構成され、
前記空気流入弁は、前記タンク本体の内部気圧が前記袋体の内部気圧よりも低く、前記タンク本体の内部気圧が予め設定された閾値以下であるときに開動作するように構成されていることを特徴とする建設機械の作動油タンク。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施の形態を図にしたがって説明する。
【0021】
(第1の実施の形態)
図1は、本発明の一実施の形態を示す油圧ショベル1の左側面図である。この油圧ショベル1は、走行体2と、走行体2上に旋回可能に設けられた旋回体3と、旋回体3の前側に設けられた掘削作業等を行うフロント作業装置4とを備えている。
【0022】
旋回体3上には、前側に運転室5が設けられ、後側に機械室6が設けられている。機械室6の後側にはカウンタウエイト7が設けられている。
【0023】
機械室6内には、
図2に示すように作動油タンク11が設けられている。この作動油タンク11は、旋回体3やフロント作業装置4の駆動に使用する作動油Aを貯留するものである。
【0024】
作動油タンク11は、タンク本体12と、タンク本体12の内部12aに設けられた袋体13、フィルタ14およびストレーナ15と、タンク本体12の上面12b側に設けられた圧力調整部16およびカバー17とを備えている。
【0025】
タンク本体12の内部12aには作動油Aが貯留されている。タンク本体12の上部の側面12gには流入部121が突出して形成されている。この流入部121には、作動油Aを内部12aに流入させる流入口121aが設けられている。タンク本体12の底面12cの中央部分には流出部122が突出して形成されている。この流出部122には、内部12aの作動油Aを流出させる流出口122aが設けられている。
【0026】
流出口122aは、図示しないが供給管を介して油圧ポンプに接続されている。油圧ポンプは供給回路を介して油圧機器(油圧モータや油圧シリンダ)の供給側に接続されている。流入口121aは、図示しないが戻り管を介して油圧機器の排出側に接続されている。
【0027】
フィルタ14は、タンク本体12の内部12aにおいて流入部121の近傍に配置されている。このフィルタ14は、作動油Aが流入口121aから内部12aに流入するときに作動油A中のゴミ等を取り除くものである。
【0028】
ストレーナ15は、タンク本体12の内底面12dに流出部122を覆うように配置され、支持棒18により内底面12dに固定されている。支持棒18は、内部12aの中央部分に上下方向Bに延びて配置されている。ストレーナ15は、内部12aの作動油Aが流出口122aから流出するときに作動油A中に生じている異物を取り除くものである。この異物は、作動油Aが空気と接触して酸化したときに生じるものや、タンク内の錆や外部から混入するコンタミである。
【0029】
圧力調整部16は、タンク本体12の内部12aの気圧を調整するものである。この圧力調整部16は、タンク本体12の上面12bの中央部分に配置されており、空気流入弁16bと、空気流出弁16aと、空気抜きバルブ16cとを備えている。
【0030】
空気流入弁16bは、フランジ21を介してタンク本体12の内部12aに接続されている。この空気流入弁16bは、タンク本体12の内部12aの気圧が所定圧力(閾値)以下になったときに作動し、タンク本体12の外部Oから内部12aに空気を入れるものである。
【0031】
空気流出弁16aは、フランジ21を介してタンク本体12の内部12aに接続されている。この空気流出弁16aは、タンク本体12の内部12aの気圧が所定圧力(閾値)を超えたときに作動し、タンク本体12の内部12aの空気を外部Oへ排出するものである。
【0032】
空気抜きバルブ16cは、空気流出弁16aに接続して配置されている。この空気抜きバルブ16cは、タンク本体12のメンテナンスを行う場合に作業者が操作することにより作動し、タンク本体12の内部12aの気圧が大気圧になるまで内部12aの空気を外部Oに強制的に排出するものである。
【0033】
また、タンク本体12の上面12bには、フランジ21よりも外側に開口部12eが設けられている。さらに、上面12bには、開口部12eの外周側に環状のフランジ22が固定されている。このフランジ22の中央部分には、開口部12eと対向する位置に嵌合穴22aが設けられている。
【0034】
袋体13は、開口端13aがタンク本体12の開口部12eとフランジ22の嵌合穴22aとを介してタンク本体12の外部Oと繋がるようにタンク本体12に取り付けられ、この状態で上下方向Bに伸縮可能に構成されている。この袋体13は鉄製であり、袋体本体131と、袋体本体131の上端に一体形成された空気連通部132とを備えている。
【0035】
袋体本体131は、上端が開口したベローズ状(袋状)に形成されている。この袋体本体131は、タンク本体12の内上面12fに当接して配置されている。また、袋体本体131は水平方向に剛性を有し、上下方向Bに伸縮可能に形成されている。さらに、袋体本体131は、空気流入弁16bが作動する前に限界まで伸び、空気流出弁16aが作動する前に限界まで縮むように形成されている。
【0036】
空気連通部132は、袋体本体131の内部131aをタンク本体12の外部Oと連通させるものであり、上下方向Bに延びる筒状に形成されている。空気連通部132の下端は、袋体本体131の開口端と結合している。さらに、空気連通部132は、タンク本体12の開口部12eとフランジ22の嵌合穴22aとに嵌合して上端(開口端13a)が外部Oと繋がるように配置されている。
【0037】
カバー17は、袋体13の空気連通部132を上から覆うように形成されており、空気連通部132との間に隙間を開けてフランジ22に取り付けられている。
【0038】
以上のように構成されている作動油タンク11は、油圧ポンプが駆動すると、タンク本体12の内部12aに貯留されている作動油Aが流出口122aから流出して供給管を介して油圧ポンプに送られ、さらに油圧ポンプから供給回路を介して油圧機器に送られる。油圧機器は、作動油タンク11から供給された作動油の油圧により旋回体3やフロント作業装置4を駆動する。油圧機器から排出された作動油Aは戻り管を介してタンク本体12の流入口121aから内部12aに流入して戻される。
【0039】
また、作動油タンク11は、タンク本体12の内部12aから作動油Aが流出すると内部12aの気圧が低下する。すると袋体13は、タンク本体12の外部Oから空気連通部132を介して袋体本体131の内部131aに空気を取り込んで
図3に示すように下方へ伸びる。したがって、袋体13は、袋体本体131が伸びるのを利用して、袋体本体131の内部131aに多くの空気を取り込むことが可能になる。
【0040】
また、作動油タンク11は、タンク本体12の内部12aに作動油Aが流入すると内部12aの気圧が上昇する。すると袋体13は、袋体本体131の内部131aから空気連通部132を介してタンク本体12の外部Oに空気を排出して縮む。したがって、袋体13は、袋体本体131が縮むのを利用して、外部Oに多くの空気を排出することが可能になる。
【0041】
このように本実施の形態の作動油タンク11では、タンク本体12の内部12aに設けた袋体13により空気の出し入れを行うようにしたので、作動油Aの流出入に伴うタンク本体12の内部12aの過度な気圧の上昇や低下を抑えることが可能になる。よって、本実施の形態の作動油タンク11は、設置スペースを抑えつつ、作動油Aの流出入に伴う内部12aの過度な圧力の上昇や低下による故障を防ぐことができる。また、この結果、本実施の形態の作動油タンク11を設置しても、他の機器の配置に制限が生じてしまうことがない。
【0042】
また、本実施の形態の作動油タンク11では、タンク本体12の内部12aと連通していない袋体13を利用して空気の出し入れを行うので、タンク本体12の内部12aに貯留している作動油Aが空気と接触するのが抑えられる。よって、本実施の形態の作動油タンク11は、内部12aの作動油Aの劣化を防ぐことができる。また、この結果、作動油Aやフィルタ14、ストレーナ15の寿命を延ばすことができる。
【0043】
また、袋体13は水平方向に剛性を有しているので、剛性を有していない袋体に比べてタンク本体12の内部12aの気圧で変形するのが抑えられる。さらに、袋体13は、内部12aの作動油Aを潤滑油にして伸縮をスムーズに行うことが可能になる。したがって、袋体13は、空気の出し入れをスムーズに行うことが可能になる。よって、本実施の形態の作動油タンク11は、作動油Aの流出入に伴う内部12aの過度な圧力の上昇や低下を効率よく抑えることができ、故障を確実に防ぐことができる。
【0044】
また、袋体13は金属製であるため、タンク本体12の内部12aに戻された作動油Aの熱を奪い取って作動油Aを冷却することもできる。
【0045】
なお、本実施の形態の作動油タンク11では、上下方向Bに伸縮可能な袋体13を使用したが、水平方向に伸縮可能な袋体を使用しても良い。
【0046】
また、袋体13が限界まで伸びてもなおタンク本体12の内部12aの気圧が低下し、空気流入弁16bの閾値以下になったときには空気流入弁16bが作動し、タンク本体12の外部Oから内部12aに空気を入れる。
【0047】
また、袋体13が限界まで縮んでもなおタンク本体12の内部12aの気圧が上昇し、空気流出弁16aの閾値を超えたときには空気流出弁16aが作動し、タンク本体12の内部12aの空気を外部Oへ排出する。
【0048】
このように本実施の形態の作動油タンク11は、内部12aの過度な圧力の上昇や低下を袋体13で万一抑えられない場合でも、空気流出弁16aや空気流入弁16bが作動することで抑えることができ、故障をより確実に防ぐことができる。
【0049】
また、本実施の形態の作動油タンク11では、袋体13を覆うカバー17を備えたことにより雨水が袋体13の内部131aに入るのを防ぐことができる。また、空気連通部132を逆凹字に形成してその先端が下へ向くように配置することにより、雨水が袋体13の内部131aに入るのを防ぐようにしても良い。
【0050】
(第2の実施の形態)
図4は、本発明の第2の実施の形態の作動油タンク201の模式図である。本実施の形態の作動油タンク201では、第1の実施の形態の作動油タンク11と同様な部分には同じ符号を付し、異なる部分を中心にして説明する。
【0051】
本実施の形態の作動油タンク201では、タンク本体12の内部12aに、袋体13(袋体本体131)の揺動を規制する規制部202が設けられている。
【0052】
この規制部202は、袋体本体131の左右側に配置された一対の規制部材202a,202aを備えている。規制部材202a,202aは袋体13の上下方向B(伸縮方向)に延びる形状に形成されている。規制部材202a,202aの上端はタンク本体12の内上面12fに固定され、下端は内部12aの下部に位置している。
【0053】
したがって、油圧ショベル1が稼働により振動したりまたは傾いたりしても、袋体13は規制部202により揺動が規制されているので、袋体13がストレーナ15等、内部12aの他の部品と干渉して破損するのが抑えられる。よって、本実施の形態の作動油タンク201は、袋体13の保護性を高めることができる。
【0054】
また、規制部202は、袋体13の左右側に袋体13の上下方向B(伸縮方向)に延びて形成されているので、袋体13の伸縮をガイドすることが可能になる。このため、袋体13は規制部202によりスムーズに伸縮することが可能になり、空気の出し入れをスムーズに行うことが可能になる。よって、本実施の形態の作動油タンク201は、作動油Aの流出入に伴う内部12aの過度な圧力の上昇や低下を効率よく抑えることができ、故障を確実に防ぐことができる。その他の効果は、第1の実施の形態で説明した通りである。
【0055】
なお、規制部材202a,202の長さは、袋体13が限界まで伸びた長さよりも長く設定するのが好ましい。規制部材202a,202の具体的な形状としては、棒状や板状、またはパイプ状のものに作動油Aが通る穴が設けられた形状等が挙げられる。
【0056】
また、水平方向に剛性を持たない袋体を使用する場合は、規制部202を利用して剛性を持たせるようにしても良い。具体的には、規制部202に十分な剛性を持たせて、袋体の側面が規制部202に十分に接触するように袋体や規制部202を配置する。
【0057】
(第3の実施の形態)
図5は、本発明の第3の実施の形態の作動油タンク301の模式図である。本実施の形態の作動油タンク301において、第1の実施の形態や第2の実施の形態の作動油タンク11、201と同様な部分には同じ符号を付し、異なる部分を中心にして説明する。
【0058】
本実施の形態の作動油タンク301では、タンク本体12の内部12aの下側に袋体13が取り付けられている。
【0059】
具体的に説明すると、タンク本体12の底面12cに開口部12eが設けられている。袋体13は、空気連通部132がタンク本体の開口部12eとフランジ22の嵌合穴22aに嵌合している。これにより袋体13は、開口端13aが下に向けられた状態で開口部12eと嵌合穴22aとを介して外部Oと繋がるようにタンク本体12に取り付けられている。
【0060】
したがって、袋体13は、内部131aに結露水が発生しても重力により空気連通部132を介してタンク本体12の外部Oへ排出される。このように袋体13は内部131aに結露水が溜まらないので結露水によって伸縮が阻害されるのが抑えられ、空気の出し入れをスムーズに行うことが可能になる。よって、本実施の形態の作動油タンク301は、作動油Aの流出入に伴う内部12aの過度な圧力の上昇や低下を効率よく抑えることができ、故障を確実に防ぐことができる。
【0061】
さらに、本実施の形態の作動油タンク301では、袋体13を開口端13aが下へ向くように配置したので、袋体13の内部131aに雨水が入り込まない。このため、本実施の形態の作動油タンク301は、第1の実施の形態や第2の実施の形態の作動油タンク11、201のようにカバー17を備える必要がないので部品点数を減らすことができる。よって、本実施の形態の作動油タンク301は、コストを抑えて雨水が袋体13の内部131aに入るのを防ぐことができる。
【0062】
さらに、本実施の形態の作動油タンク301では、袋体13をタンク本体12の内部12aの下側に取り付けたことにより、タンク本体12の上方にメンテナンス用のスペースを確実に確保することができる。
【0063】
また、本実施の形態の作動油タンク301では、タンク本体12の側面12gにおいて流入部121が設けられていない部分の上部と下部に、それぞれ接続管302が対向して設けられている。双方の接続管302,302は、先端が対向するようにL字状に形成されている。接続管302,302間には透明管303が上下に延びて配置されている。この透明管303の上下端は接続管302,302の先端に接続されている。
【0064】
これにより透明管303の内部303aには、タンク本体12と同様に作動油Aが貯留される。したがって、本実施の形態の作動油タンク301では、透明管303の内部303aの作動油Aの高さを作業者が目視で確認することにより、タンク本体12の内部12aに貯留されている作動油Aの貯留量を把握することができる。
【0065】
なお、作業者が透明管303の作動油Aの高さを目視するときには、空気抜きバルブ16cを開弁操作してタンク本体12の内部12aの気圧を強制的に大気圧にする。これにより袋体13は、作動油Aの重さにより限界まで縮められる。作業者はこの状態で透明管303の作動油Aの高さを目視で確認する。その他の効果は、第1の実施の形態や第2の実施の形態で説明した通りである。
【0066】
なお、
図5において袋体13が伸縮動作する力のバランスは、作動油Aの質量による力A(x)、タンク本体12の内部12aの空気による力B(y)、袋体13の伸縮動作に必要な力C、空気流出弁16aまたは空気流入弁16bが作動する閾値の力Dを用いて表される。
【0067】
袋体13にかかる作動油Aの質量による力A(x)は下記の式(1)で表わされる。
A(x)[N] = ρ[kg/L]×S[m
2]×x[m]×9.81[m/sec
2]×1/1000・・・・・・・式(1)
【0068】
式(1)においてρ[kg/L]は袋体13上にある作動油Aの比重、S[m
2]は袋体13上部の面積、x[m]は袋体13上にある作動油Aの高さ、9.81[m/sec
2]は重力加速度である。
【0069】
タンク本体12の内部12aの空気による力B(y)は下記の式(2)で表わされる。
B(y)[N] = y[N/m
2]×S[m
2]・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・式(2)
【0070】
式(2)において、y[N/m
2]はタンク本体12の内部12aの気圧であり、袋体13の伸縮動作に必要な力C[N]と空気流出弁16aまたは空気流入弁16bが作動する閾値の力D[N]である。なお、大気圧は101[kPa]と定義する。[N/m
2]と[Pa]はイコールである。
【0071】
袋体13が縮む場合は下記の式(3)で表わされる。
A(x)+B(y)+C > 101000×S・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・式(3)
【0072】
作動油Aの質量による力A(x)は袋体13上にある作動油Aの高さxに依存し、タンク本体12の内部12aの空気による力B(y)は内部12aの気圧yに依存している。
【0073】
したがって、作動油Aが使用されて高さxが減少し、内部12aの気圧yが減少すると、式(3)の左辺は減少する。その結果、式(3)の右辺よりも小さくなった場合として下記の式(4)で表わされる状態になれば袋体13は伸びる。なお、袋体13の伸縮動作に必要な力Cは伸縮もしくは伸びる抵抗と考えられるので、それぞれの動作を行うために打ち勝つ抵抗側に加えられる。
A(x)+B(y) < 101000×S+C・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・式(4)
【0074】
式(3)と式(4)は、作動油Aの増減と袋体13の大きさが変化することで、袋体13上部にある作動油Aの高さxと内部12aの気圧yによってどちらかの状態をとる。
【0075】
式(3)の状態が続けば袋体13は限界まで縮められ、さらに下記の式(5)を満たせば空気流入弁16bが作動して外部Oから内部12aに空気が流入する。
(A(x)+B(y))-101000×S > D・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・式(5)
【0076】
式(4)の状態が長く続いて袋体13が限界まで伸びた後に、下記の式(6)を満たせば空気流出弁16aが作動して内部12aの空気が外部Oに排出される。
101000×S-(A(x)+B(y)) > D・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・式(6)
【0077】
これらの動作を実現するために、C及びDは下記の式(7)及び式(8)の条件を満たす必要がある。
C > A(min)+B(min)-101000×S・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・式(7)
D > C・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・式(8)
【0078】
ここで、A(min)は作動油Aの最小の質量による力であり、B(min)は内部12aの空気による最小の力を示す。作動油Aの流出入に伴う急激な作動油Aの高さxと内部12aの気圧yの変動に袋体13の伸縮動作が耐えられるようにするには、式(7)及び式(8)をタンク本体12が変形する力を上限として十分に満たすと良い。
【0079】
なお、袋体13を
図2〜
図4のようにタンク本体12の内部12aの上側に取り付けた場合は、上記の式における作動油Aの質量による力A(x)はゼロとして扱う。
【0080】
(第4の実施の形態)
図6は、本発明の第4の実施の形態の作動油タンク401の模式図である。本実施の形態の作動油タンク401において、第1の実施の形態〜第3の実施の形態の作動油タンク11、201、301と同様な部分には同じ符号を付し、異なる部分を中心にして説明する。
【0081】
本実施の形態の作動油タンク401では、タンク本体12の内部12aの下側に袋体413が取り付けられている。具体的にこの袋体413は、開口端413a側が下に向けられた状態で、タンク本体12の開口部12eとフランジ22の嵌合穴22aとを介してタンク本体12の外部Oと繋がるようにタンク本体12に取り付けられている。さらに、この袋体413は、この状態で膨縮可能に構成されている。
【0082】
また、この袋体413は、袋体本体4131と、袋体本体4131の下端に一体形成された空気連通部4132と、袋体本体4131の上端に設けられた浮体402とを備えている。
【0083】
袋体本体4131と空気連通部4132は、フッ素系のゴムにより一体形成されている。袋体本体4131は、下端が開口した風船状(袋状)に形成されており、タンク本体12の内底面12dに当接して配置されている。これにより袋体本体4131は、ゴムの伸縮性を利用して膨縮可能に構成されている。また、袋体本体4131は、空気流入弁16bが作動する前に限界まで膨張し、空気流出弁16aが作動する前に限界まで縮むように形成されている。
【0084】
空気連通部4132は、袋体本体4131の内部4131aをタンク本体12の外部Oと連通させるものであり、上下方向Bに延びる筒状に形成されている。空気連通部4132の上端は、袋体本体4131の開口端と結合している。さらに、空気連通部4132は、タンク本体12の開口部12eとフランジ22の嵌合穴22aとに嵌合して下端(開口端413a)が外部Oと繋がるように配置されている。
【0085】
また、浮体402は作動油Aに浮くように形成されており、作動油Aの高さの変化に応じて上下方向Bに移動するように構成されている。
【0086】
以上のように構成されている作動油タンク401は、内部12aの作動油Aが流出して作動油Aの油面が下がると浮体402も下がる。このときには内部12aの気圧が低下する。すると袋体413は、タンク本体12の外部Oから空気連通部4132を介して袋体本体4131の内部4131aに空気を取り込んで膨張する。
【0087】
したがって袋体413は、袋体本体4131が膨張するのを利用して、内部4131aに多くの空気を取り込むことが可能になる。また、袋体413は、浮体402の重みで位置が固定されるので揺動せずに膨張することが可能になり、空気をスムーズに取り込むことが可能になる。
【0088】
また、作動油タンク401は、タンク本体12の内部12aに作動油Aが流入すると内部12aの気圧が上昇する。すると袋体413は、袋体本体4131の内部4131aから空気連通部4132を介してタンク本体12の外部Oに空気を排出して縮む。
【0089】
したがって、袋体413は、袋体本体4131が縮むのを利用して、外部Oに多くの空気を排出することが可能になる。また、袋体413は、浮体402の重みで位置が固定されるので揺動せずに縮むことが可能になり、空気をスムーズに排出することが可能になる。
【0090】
このように本実施の形態の作動油タンク401は、第1の実施の形態〜第3の実施の形態の袋体13よりも安価な袋体413を使用することにより、作動油Aの流出入に伴う内部12aの過度な圧力の上昇や低下を効率よく抑えることが可能になる。よって、本実施の形態の作動油タンク401は、コストを抑えつつ故障を確実に防ぐことができる。その他の効果は、第1の実施の形態〜第3の実施の形態で説明した通りである。
【0091】
(第5の実施の形態)
図7は、本発明の第5の実施の形態の作動油タンク501の模式図である。本実施の形態の作動油タンク501において、第1の実施の形態〜第4の実施の形態の作動油タンク11、201、301、401と同様な部分には同じ符号を付し、異なる部分を中心にして説明する。
【0092】
本実施の形態の作動油タンク501では、タンク本体12の内部12aの上側に袋体513が取り付けられている。具体的にこの袋体513は、開口端513aがタンク本体12の開口部12eとフランジ22の嵌合穴22aとを介してタンク本体12の外部Oと繋がるようにタンク本体12に取り付けられている。さらに、作動油タンク501は、この状態で上下方向Bに伸縮可能に構成されている。
【0093】
また、この袋体513は、袋体本体5131と、袋体本体5131の上端に一体形成された空気連通部5132と、袋体本体5131の下端に設けられた浮体402とを備えている。
【0094】
袋体本体5131は、ナイロン(登録商標)等の非通気性の柔らかい(伸縮性を有しない)材料で形成されて上端が開口しており、タンク本体12の内上面12fに当接して配置されている。また、袋体本体5131は、空気流入弁16bが作動する前に限界まで伸び、空気流出弁16aが作動する前に限界まで縮むように形成されている。
【0095】
空気連通部5132は、袋体本体5131の内部5131aをタンク本体12の外部Oと連通させるものであり、上下方向Bに延びる筒状に形成されている。空気連通部5132の下端は、袋体本体5131の開口端と結合している。さらに、空気連通部5132は、タンク本体12の開口部12eとフランジ22の嵌合穴22aとに嵌合して上端(開口端513a)が外部Oと繋がるように配置されている。
【0096】
また、浮体402は、作動油Aに浮くよう形成されている。したがって、袋体513は、浮体402が作動油Aの高さの変化に応じて上下方向Bに移動するのを利用して上下方向Bに伸縮するように構成されている。
【0097】
以上のように構成されている作動油タンク501は、内部12aの作動油Aが流出すると内部12aの気圧が低下するが、このときに作動油Aの油面が下がるために浮体402も下がる。これにより袋体本体5131は下方へ伸ばされる。これにより袋体本体5131は、タンク本体12の外部Oから空気連通部5132を介して内部5131aに多くの空気を取り込むことが可能になる。
【0098】
また、作動油タンク501は、内部12aに作動油Aが流入すると内部12aの気圧が上昇するが、このときに作動油Aの油面が上がるために浮体402も上がる。これにより袋体本体5131は上方へ縮められる。これにより袋体本体5131は、内部5131aの空気を空気連通部5132からタンク本体12の外部Oへ多く排出することが可能になる。
【0099】
このように本実施の形態の作動油タンク501は、袋体本体5131に伸縮性を有しない材料を使用しても、袋体本体5131に設けた浮体402の浮力を利用して袋体本体5131を伸縮させることにより空気の出し入れを行うようにした。
【0100】
したがって、本実施の形態の作動油タンク501は、第1の実施の形態〜第4の実施の形態の作動油タンク11、201、301、401に比べて安価な構成で作動油Aの流出入に伴う内部12aの過度な気圧の上昇や低下を効率よく抑えることが可能になる。よって、本実施の形態の作動油タンク501は、コストをより抑えて故障を確実に防ぐことができる。その他の効果は、第1の実施の形態〜第4の実施の形態で説明した通りである。
【0101】
(第6の実施の形態)
図8は、本発明の第6の実施の形態の作動油タンク601の模式図である。本実施の形態の作動油タンク601において、第1の実施の形態〜第5の実施の形態の作動油タンク11、201、301、401、501と同様な部分には同じ符号を付し、異なる部分を中心にして説明する。
【0102】
本実施の形態の作動油タンク601では、タンク本体12の上面12b全体にわたってフランジ622が固定されている。圧力調整部16の空気流出弁16aおよび空気流入弁16bは、このフランジ622を介してタンク本体12の内部12aに接続されている。また、このフランジ622には、タンク本体12の開口部12eと対向する位置に嵌合穴622aが設けられている。
【0103】
袋体613は、タンク本体12の内部12aの上側に取り付けられている。具体的にこの袋体613は、開口端613aがタンク本体12の開口部12eとフランジ622の嵌合穴622aとを介してタンク本体12の外部Oと繋がり、且つ、支持棒18を囲むようにしてタンク本体12に取り付けられている。さらに、この袋体613は、この状態で上下方向Bに伸縮可能に構成されている。
【0104】
また、この袋体613は鉄製であり、袋体本体6131と、袋体本体131の上端側に一体形成された空気連通部6132とを備えている。
【0105】
袋体本体6131は、支持棒18を囲む環状のベローズ状(袋状)に形成され、タンク本体12の内上面12fに当接して配置されている。この袋体本体6131は、タンク本体12の開口部12eと対向する部分が開口されている。また、袋体本体6131は、水平方向に剛性を有しており、上下方向Bに伸縮可能に形成されている。さらに、袋体本体6131は、空気流入弁16bが作動する前に限界まで伸び、空気流出弁16aが作動する前に限界まで縮むように形成されている。
【0106】
空気連通部6132は、袋体本体6131の内部6131aをタンク本体12の外部Oと連通させるものであり、上下方向Bに延びる筒状に形成されている。空気連通部6132の下端は、袋体本体6131の開口端と結合している。さらに、空気連通部6132は、タンク本体12の開口部12eとフランジ622の嵌合穴622aとに嵌合して上端(開口端613a)が外部Oと繋がるように配置されている。
【0107】
以上のように構成されている作動油タンク601は、支持棒18が袋体613の揺動を規制する規制部となる。したがって、油圧ショベル1が稼働により振動したりまたは傾いたりしても、袋体613は支持棒18により揺動が規制されているので、袋体613がストレーナ15等、内部12aの他の部品と干渉して破損するのが抑えられる。よって、本実施の形態の作動油タンク601は、袋体613の保護性を高めることができる。
【0108】
さらに、本実施の形態の作動油タンク601では、既存の部品(支持棒18)を使用して規制部を構成したので、コストを抑えつつ袋体613の保護性を高めることができる。その他の効果は、第1の実施の形態で説明した通りである。
【0109】
以上、本発明にかかる実施の形態を例示したが、上記の実施の形態は本発明の内容を限定するものではない。また、本発明の請求項の範囲を逸脱しない範囲であれば、各種の変更等は可能である。
【0110】
例えば、上記の各実施の形態の作動油タンクでは1個の袋体を備えたが、袋体の個数は1個に限定されることはなく、例えば小型の袋体を複数個備えても良い。
【0111】
また、油圧ショベル1の稼働により排出される排気ガスは大気に比べて温度が高い。このため、図示しないが、上記の各実施の形態の作動油タンクにおいて、タンク本体の外側で排気ガスを利用して袋体の開口端の周囲の空気を暖める暖房手段を備えても良い。これにより、外部の空気が袋体の内部に入るときに暖房手段によって暖められ、袋体の内部に結露が生じるのを防ぐことができる。暖房手段としては、例えば排気ガスの出口部分(排気管やマフラー)が挙げられる。
【0112】
さらに、排気ガスは大気に比べて酸素濃度が低いことから、図示しないが、上記の各実施の形態の作動油タンクにおいて、空気流入弁に設けられている空気の取り入れ口の近傍に上記の暖房手段を備えても良い。これにより空気流入弁を介してタンク本体の内部に入る空気には排気ガスが多く含まれるため、タンク本体の内部の作動油が排気ガスを含んだ空気と接触しても酸素と接触する割合は少なくなり、作動油の劣化を抑えることができる。