(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
第1のポートと第2のポートとの間に弁室と弁ポートとが形成され、前記弁室内の弁体を電磁駆動部で駆動して前記弁ポートを開閉する電磁式制御弁であって、第1のポートと第2のポートとの差圧により弁体に作用する力を、感圧部に加わる弁室と均圧室との差圧により前記弁体に作用する力で相殺するとともに、前記電磁駆動部の電磁力と調整ばねのばね力とのつり合いにより、前記弁ポートの開度を比例的に変化させる電磁式制御弁において、
前記電磁駆動部が前記電磁力によりケース内で該ケースの軸方向に移動可能なプランジャを備えるとともに、前記弁体を有する弁部材が、前記弁部材の連結部により前記プランジャに連結され、
前記電磁駆動部、前記調整ばね、前記均圧室及び前記感圧部が、前記弁ポートの軸線上で前記弁体に対して前記弁ポートとは反対側に設けられるとともに、前記第2のポートが前記弁ポートと同軸に形成され、前記第1のポートから流体が流入されて、前記第2のポートから流体が流出されるよう構成され、前記弁体を有する弁部材に前記弁ポートと前記均圧室とを導通する均圧路が形成され、前記プランジャよりも前記均圧室側に、前記連結部の一部を挿通可能で前記均圧室から前記プランジャ側への流体の流れを規制するカバーが設けられていることを特徴とする電磁式制御弁。
前記カバーが前記連結部の連結ロッドを挿通する挿通孔を有し、該挿通孔と前記連結ロッドとの隙間によって流体の流れを絞ることで前記プランジャ側への流体の流れを規制するように構成されていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の電磁式制御弁。
前記カバーが前記連結部の連結ロッドを挿通する挿通孔と、該挿通孔内で前記連結ロッドとクリアランスをもって嵌合するシール部材とを有し、該シール部材により前記プランジャ側への流体の流れを規制するように構成されていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の電磁式制御弁。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前記従来の電磁式制御弁では、均圧室と一次側ポート10aとを連通する均圧路80を、当該電磁式制御弁の外周に有る図示しないメインハウジングに形成している。このためメインハウジングの設計が複雑になるという問題がある。また、感圧部としてのダイヤフラム70と、均圧室60からダイヤフラム70に流体圧力を導入する圧力導入部90とを、弁体20aに対して、電磁駆動部30とは反対側に設けられている。このため、弁ハウジング10の軸線L方向の長さが長くなり、電磁式制御弁自体を小型化するのが困難であった。
【0006】
さらに、ダイヤフラム70(感圧部)を二次側ポート10bの下側(弁ハウジング10の下部)に設けているため、弁ポート40と二次側ポート10bとが直交する構造となり、この弁ポート40と二次側ポート10bとの直交部分で圧力損失が生じ、流量が流れ難くなるという問題があった。
【0007】
本発明は、電磁駆動部の電磁力と調整ばねのばね力とのつり合いをとるとともに、弁体に対する第1のポートの圧力と第2のポートの圧力の差圧の影響をキャンセルして、弁体の開度を比例的に変化させる圧力バランス型の電磁式制御弁において、弁ハウジングの長さを小さくして電磁式制御弁自体を小型化することを課題とする。また、第2のポートでの圧力損失を低減することを課題とする。さらに、電磁駆動部のプランジャに対する第2のポートの流体の動圧の影響を無くして、正確な弁開度の制御を行うことを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1の電磁式制御弁は、第1のポートと第2のポートとの間に弁室と弁ポートとが形成され、前記弁室内の弁体を電磁駆動部で駆動して前記弁ポートを開閉する電磁式制御弁であって、第1のポートと第2のポートとの差圧により弁体に作用する力を、感圧部に加わる弁室と均圧室との差圧により前記弁体に作用する力で相殺するとともに、前記電磁駆動部の電磁力と調整ばねのばね力とのつり合いにより、前記弁ポートの開度を比例的に変化させる電磁式制御弁において、前記電磁駆動部が前記電磁力によりケース内で該ケースの軸方向に移動可能なプランジャを備えるとともに、前記弁体を有する弁部材が、前記弁部材の連結部により前記プランジャに連結され、前記電磁駆動部、前記調整ばね、前記均圧室及び前記感圧部が、前記弁ポートの軸線上で前記弁体に対して前記弁ポートとは反対側に設けられるとともに、前記第2のポートが前記弁ポートと同軸に形成され、
前記第1のポートから流体が流入されて、前記第2のポートから流体が流出されるよう構成され、前記弁体を有する弁部材に前記弁ポートと前記均圧室とを導通する均圧路が形成され、
前記プランジャよりも前記均圧室側に、前記連結部の一部を挿通可能で前記均圧室から前記プランジャ側への流体の流れを規制するカバーが設けられていることを特徴とする。
請求項2の電磁式制御弁は、請求項1に記載の電磁式制御弁であって、前記均圧路が、前記軸線方向に伸びる第1の均圧路と、前記第1の均圧路から前記均圧室に開口する第2の均圧路とで構成され、前記第2の均圧路が前記均圧室内で前記軸線に対する側面側に開口されていることを特徴とする。
請求項3の電磁式制御弁は、請求項2に記載の電磁式制御弁であって、前記第2の均圧路の開口が前記軸線に対して左右対称に開口されていることを特徴とする。
【0009】
請求項
4の電磁式制御弁は、請求項1
乃至3のいずれか一項に記載の電磁式制御弁であって、前記カバーが前記連結部の連結ロッドを挿通する挿通孔を有し、該挿通孔と前記連結ロッドとの隙間によって流体の流れを絞ることで前記プランジャ側への流体の流れを規制するように構成されていることを特徴とする。
【0010】
請求項
5の電磁式制御弁は、請求項1
乃至3のいずれか一項に記載の電磁式制御弁であって、前記カバーが前記連結部の連結ロッドを挿通する挿通孔と、該挿通孔内で前記連結ロッドとクリアランスをもって嵌合するシール部材とを有し、該シール部材により前記プランジャ側への流体の流れを規制するように構成されていることを特徴とする。
【0011】
請求項
6の電磁式制御弁は、請求項
1乃至5のいずれか一項に記載の電磁式制御弁であって、
前記感圧部が、前記弁室と前記均圧室との間に配設され前記弁部材に接続された可撓性のダイヤフラムであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
請求項1
乃至3の電磁式制御弁によれば、電磁駆動部、調整ばね、均圧室及び感圧部が弁ポートの軸線上で弁体に対して弁ポートとは反対側にあり、弁ポートと均圧室とを導通する均圧路が弁体に設けられているため、弁ポートの下部に第2のポートを設けるだけの構造となり、弁ハウジングの軸線方向の長さが小さくなる。したがって、電磁式制御弁自体を小型化することができる。また、第2のポートを弁ポートに対して同軸で連通することができるので、第2のポートでの圧力損失も低減することができる。さらに、均圧室と電磁駆動部のプランジャとの間に設けられたカバーにより、弁ポートの流体が均圧室を介してプランジャ側に流入するのを規制することができる。したがって、電磁駆動部のプランジャ等に流体の動圧(流動圧力)が作用しないので、正確な弁開度の制御が可能となる。
【0013】
請求項
4の電磁式制御弁によれば、請求項1
乃至3の効果に加えて、カバーの挿通孔と連結ロッドとの間に隙間があるので、カバーが弁部材の動作に影響することがない。
【0014】
請求項
5の電磁式制御弁によれば、請求項1
乃至3の効果に加えて、カバーのシール部材と連結ロッドとのクリアランスにより流体の流れが規制されるので、電磁駆動部側への流体の影響をより低減すことができる。
【0015】
請求項
6の電磁式制御弁によれば、請求項1乃至
5の効果に加えて、感圧部が、弁室と均圧室との間に配設されたダイヤフラムであるので、弁室と均圧室との間の気密性を確保することができる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
次に、本発明の実施形態について説明する。
図1は第1実施形態の電磁式制御弁の弁閉状態の縦断面図、
図2は第1実施形態の電磁式制御弁のプランジャの平面図及び縦断面図である。この実施形態の電磁式制御弁は下本体1Aと上本体1Bからなる弁ハウジング1を有している。下本体1Aは上本体1Bの下部の嵌合孔1B1に嵌合され、嵌合孔1B1の開口端部をかしめることにより、下本体1Aと上本体1Bとが一体に固着されている。
【0018】
下本体1Aには、矢印のように流体が流入する高圧側の第1のポート11と、第1のポート11に連通する弁室12が形成されている。また、下本体1Aには弁室12の下部の弁座嵌合孔1A1が形成され、この弁座嵌合孔1A1内に弁座部材2が嵌合されている。そして、弁座嵌合孔1A1の開口端部をかしめることにより、下本体1Aと弁座部材2とが一体に固着されている。なお、弁座部材2と弁座嵌合孔1A1との間はOリング2aにより封止されている。また、上本体1Bには均圧室13が形成され、この均圧室13の上部に後述の電磁駆動部5のケースとしてのプランジャケース51が嵌合固着されている。
【0019】
弁座部材2には、矢印のように流体が流出する低圧側の第2のポート21と、第2のポート21と弁室12とを連通する弁ポート22が形成されている。弁ポート22は軸線Lを中心とする水平断面形状が円形であり、その弁室12側の開口周囲にはリング状の弁座シート23が配設されている。
【0020】
弁室12及び均圧室13内には軸線Lに沿った方向に変位可能な弁部材3が延在されている。弁部材3は、弁室12内に位置して弁座部材2の弁座シート23に対して離接が可能な円筒状の弁体31、弁体31の上方に延設された連結部32とで構成されている。連結部32は、下端部に弁体31を結合する結合軸321と、結合軸321より径が大きく均圧室13内に位置するボス部322と、ボス部322の上方に延設された連結ロッド323とを有している。
【0021】
弁体31とボス部322との間にはゴム製のダイヤフラム4が配設されている。ダイヤフラム4はコンボリューション部41と、その内側の内リング部42と、コンボリューション部41の外側の外リング部43とを有している。また、弁体31は、中心に円筒形状及びすり鉢形状を連結した開口孔31aと、開口孔31aに連なる連結孔31bとを有している。そして、連結部32の結合軸321が、ダイヤフラム4の内リング部42の開口を貫通して弁体31の連結孔31b内に嵌合され、弁体31とボス部322とで内リング部42を圧縮し、結合軸321の下端部をかしめることにより、弁体31とダイヤフラム4及び連結部32が一体に固定されている。また、ダイヤフラム4の外リング部43は、下本体1Aの上端と上本体1Bの均圧室13の下部開口端部との間に圧縮するようにして挟持されている。なお、弁体31の上端(弁部材3の下方寄り)は、圧力が加わることで発生するダイヤフラム4の復元力による自動求心作用により、通常は軸線L上に保持される。
【0022】
連結部32において、ボス部322には、弁体31の開口孔31a側から軸線L方向に伸びる第1の均圧路32aが形成されるとともに、第1の均圧路32aの上端から均圧室13に斜めに開口する第2の均圧路32bが形成されている。この第1の均圧路32a、第2の均圧路32b及び弁体31の開口孔31aは「均圧路」を構成しており、弁ポート22と均圧室13は、開口孔31a、第1の均圧路32a及び第2の均圧路32bにより導通されている。
【0023】
ダイヤフラム4は可撓性を有し、ダイヤフラム4の弁室12側に作用する第1のポート11の圧力(P1)と、均圧室13側に作用する第2のポート21の圧力(P2)との差圧により発生した力を弁部材3(弁体31)に伝達する「感圧部」を構成している。また、ダイヤフラム4は均圧室13と弁室12とを気密に区画している。
【0024】
弁ハウジング1の上部には、電磁駆動部5が設けられている。電磁駆動部5は、円筒状のプランジャケース51と、プランジャケース51の上端に固定された磁性体からなる吸引子52と、プランジャケース51内に設けられた磁性体からなるプランジャ53と、プランジャケース51の外周に配置されボビン54aに巻線が巻回された電磁コイル54とを備えている。なお、プランジャケース51と吸引子52は溶接等により固定されている。吸引子52には軸線Lと同軸な挿通孔52aが形成されるとともに、挿通孔52aの軸線Lとは垂直な方向の両側に吸引子均圧路52bが形成されている。さらに、吸引子52の挿通孔52aとは他方の側には、挿通孔52aより径の大きな調整部用孔52cが形成されている。
【0025】
図2に示すように、プランジャ53には、軸線Lと同軸な円筒状のプランジャばね室53aと第1プランジャ均圧路53bが形成されるとともに、第1プランジャ均圧路53bの吸引子52側端部を直径方向に円弧状に切り欠いた第2プランジャ均圧路53cが形成されている。なお、吸引子52とプランジャ53は、吸引子均圧路52bと第2プランジャ均圧路53c以外は、それぞれ軸線Lを軸にして回転対称な形状となっている。
【0026】
プランジャケース51の下部には、均圧室13に対して電磁駆動部5側に位置するカバー6が配設されている。カバー6はプランジャケース51の下端と上本体1Bとに挟持されて固定されている。カバー6の中心には、軸線Lと同軸な挿通孔6aが形成されている。なお、カバー6は弁ハウジング1(本体)に対して動くことがなければ固定方法はどのような構成でもよい。このように、弁部材3に対してカバー6が軸線L方向に相対的に固定されているので、流体の動圧の影響を受けることがない。
【0027】
弁部材3の連結ロッド323は、カバー6の挿通孔6a、プランジャ53の第1プランジャ均圧路53bに挿通され、吸引子52の挿通孔52a内で、連結ロッド323の端部に非磁性体からなる筒状の抜け止め部材7が嵌め込まれている。この抜け止め部材7と連結ロッド323の端部とは溶接により固着されている。抜け止め部材7はプランジャ53側の端部に鍔状部71を有し、この鍔状部71は、プランジャ53の吸引子52側の対向面53dに接触した状態で、この対向面53dと吸引子52のプランジャ53側の対向面52dとの間に位置する。
【0028】
プランジャ53とカバー6との間にはプランジャばね531が配設されている。プランジャばね531は、一端をプランジャ53の内側底面53eに当接させ、他端をカバー6のプランジャ53側の端面であるばね受け部61に当接させ、圧縮した状態で配設されている。これにより、プランジャ53は対向面53dを抜け止め部材7(その鍔状部71)に対して常時当接された状態となり、このプランジャ53が吸引子52方向に吸引されると、このプランジャ53と共に弁部材3が弁開方向に変位する。弁部材3は、この弁部材3の一部である連結ロッド323によりプランジャ53と連結されている。プランジャ53の第1プランジャ均圧路53bと弁部材3の連結ロッド323とのクリアランスは、プランジャ53とプランジャケース51とのクリアランスより大きく設定されており、プランジャ53が軸線Lと直交する方向に変位しても、弁部材3とプランジャ53は接触しない。
【0029】
吸引子52の前記調整部用孔52c内には設定調整部8が配設されている。この設定調整部8は、調整ねじ81、ばね受け82、調整ばね83、ボール84を有している。調整ばね83は調整ねじ81とばね受け82との間に圧縮状態で配設されており、ボール84はばね受け82に当接した状態で吸引子52の挿通孔52a内に配設されている。そして、調整ばね83は、ばね受け82を介してボール84を抜け止め部材7の上端に当接するように付勢している。また、調整ねじ81は、その外周の雄ねじ部811を吸引子52の上部内周面に形成された雌ねじ部52eに螺合することにより、吸引子52に取り付けられている。
【0030】
ボール84と吸引子52の挿通孔52aとの間には僅かにクリアランスが設けられており、ボール84は軸線Lに沿って挿通孔52a内で変位可能となっている。また、抜け止め部材7のボール84側端部には、厚みの薄い円筒形状となる円筒部72が形成されており、この円筒部72はボール84に対して球面接触される。これにより、抜け止め部材7(及び弁部材3)の上端は、常に軸線L上に位置決めされる。
【0031】
電磁駆動部5の電磁コイル54への通電により、磁気回路が形成されて吸引子52とプランジャ53との間に磁気による吸引力が発生する。この吸引力は電磁コイル54へ通電する電流に応じたものとなる。
【0032】
以上の構成により、実施形態の電磁式制御弁は次のように作用する。設定調整部8は、調整ばね83によりばね受け82、ボール84及び抜け止め部材7を介して弁部材3を弁座部材2の弁座シート23側に付勢している。電磁コイル54を励磁することにより、プランジャ53が吸引子52に吸引され、弁部材3は調整ばね83の付勢力に抗して弁座シート23から離れる方向に変位し、弁閉から弁開となるとともに弁体31と弁座シート23との軸線Lに沿った方向の位置関係により、弁ポート22の開度が制御される。なお、プランジャ53が最上端位置で弁開度が全開となるのは、抜け止め部材7の鍔状部71が吸引子52の対向面52dに当接した位置である。このように、鍔状部71がストッパの役割をしており、これにより、プランジャ53が吸引子52に吸着(密着)されるのを防止する。
【0033】
また、電磁コイル54の励磁を無くすことにより弁体31が弁座シート23に着座し、弁閉となる。なお、調整ねじ81の追い込み量により、調整ばね83が弁部材3に加える付勢力が調整され、弁開に必要な電磁力(吸引力)を調節できる。このように、電磁コイル54が生じる電磁力と、調整ばね83のばね力との平衡関係によって弁部材3が軸線Lに沿った方向に変位し、弁体31で弁ポート22の開度を変化させる。
【0034】
また、弁体31には前述のように弁室12の圧力と第2のポート21の圧力の差圧が作用して弁閉方向に力が加わる。一方、均圧室13は第1の均圧路32a、第2の均圧路32b及び開口孔31a(均圧路)によって弁ポート22及び第2のポート21と連通されているので、均圧室13に作用する第2のポート21の圧力と弁室12の圧力との差圧がダイヤフラム4に作用し、弁部材3には弁開方向の力が加わる。そして、弁体31の有効受圧径D1(この実施例の場合、弁座シート23の内径)と、ダイヤフラム4の有効受圧径D2とは等しいので、弁部材3に対しては、差圧による力は互いにキャンセル(相殺)され、弁体31の開閉に差圧の影響を受けない。
【0035】
このように、電磁駆動部5の印加電流に応じた電磁力と調整ばね83のばね力とのつり合いをとるとともに、第1のポート11と第2のポート21との差圧により弁体31に作用する力を、ダイヤフラム4(感圧部)に加わる弁室12と均圧室13との差圧により弁体31に作用する力でキャンセル(相殺)することにより、差圧により弁体31に作用する力の影響を無くし、少ない通電量で弁ポート22の開度を比例的に変化させることができる。
【0036】
電磁駆動部5と、調整ばね83と、均圧室13と、ダイヤフラム4(感圧部)とは、それぞれ弁ポート22の軸線L上で弁体31に対して弁ポート22とは反対側に設けられている。また、弁ポート22の下部には第2のポート21を設けるだけの構造となっている。したがって、弁ハウジング1の軸線L方向の長さを小さくすることができ、電磁式制御弁自体を小型化することができる。また、第2のポート21を弁ポート22に対して同軸で連通するように、すなわち軸線Lと同軸になっているので、第2のポート21での圧力損失も低減し、流体がスムーズに流れる。
【0037】
ここで、弁体31の第1の均圧路32a(φD1)の断面積をA1、第2の均圧路32b(φD2)の総断面積をA2、カバー6の挿通孔6aの内径と連結ロッド323の外径とのドーナッツ状隙間の断面積をA3、第1プランジャ均圧路53bと連結ロッド323の外径とのドーナッツ状隙間の断面積をA4、第2プランジャ均圧路53cの総断面積をA5、吸引子均圧路52bの総断面積をA6とした時、
A1>A3…(1)
の関係、及び
A1≦A2、A3<A4、A3<A5、A3<A6…(2)
の関係となっている。
【0038】
このように、カバー6の挿通孔6aと連結ロッド323との隙間が最も狭くなっている。これにより、均圧室13からプランジャ53側への流体の流れが規制される。すなわち、第1のポート11より弁ポート22を介して流入した流体が、弁体31の第1の均圧路32aと第2の均圧路32bを介し均圧室13に流入した際の流体の動圧をカバー6で受け、挿通孔6aと連結ロッド323との隙間によって流体の流れが絞られ、第2のポート21側の流体が電磁駆動部5に流入し難くなる。したがって、急激に弁開させた場合でも、均圧室13の圧力が急激に上昇するだけで、この流体の動圧がプランジャ53やボール84に作用することがないので、第2のポート21の圧力が急激に変化した場合においても安定した制御が可能となる。なお、「流体の流れを絞る」あるいは「流体の流れが絞られる」とは、上記隙間にゴミやコンタミ等が詰まらない程度、あるいは、組み付け
公差によって動作不良とならない程度に隙間の幅を小さくして、この隙間を流れる流量を少なくしした状態である。
【0039】
実施形態の電磁式制御弁100は、
図3に示すように第2のポート21側にオリフィスを有するようなシステムに用いられることがある。このような場合、第1のポート11から第2のポート21へ流す流体の流量が多くなると、第2のポート21の圧力P2が高くなる。したがって、均圧室13の圧力も上昇し易くなるが、この場合でも、流体の動圧がプランジャ53やボール84に作用することがないので、安定した制御が可能となる。
【0040】
また、電磁駆動部5においては、第1プランジャ均圧路53bの隙間面積(A4)、第2プランジャ均圧路53cの総断面積(A5)、吸引子均圧路52bの総断面積(A6)は、カバー6の挿通孔6aの隙間面積(A3)よりも大きく設定されているので、電磁駆動部5での流体の圧力は、プランジャ53のプランジャばね室53aと吸引子52の調整部用孔52cとの間で直ぐに均圧され、動圧はプランジャ53やボール84に作用し難くなり、安定した制御が可能となる。
【0041】
なお、プランジャ53の第2プランジャ均圧路53cは抜け止め部材7の鍔状部71の脇に開口し、さらに、吸引子均圧路52bは調整部用孔52cの底部の外周端に開口しているので、プランジャばね室53aから調整部用孔52cへ流れる流体の動圧は、ボール84とばね受け82に殆ど作用することがない。したがって、安定した制御が可能となる。
【0042】
図4は第2実施形態の電磁式制御弁の弁閉状態の縦断面図であり、第1実施形態と同様な部材、同様な要素には同符号を付記して重複する説明は省略する。この第2実施形態で第1実施形態と異なるところは、弁体31、連結部32、吸引子52、プランジャ53及びカバー6の構造である。
【0043】
この第2実施形態では、弁体31は、中心に円筒形状の開口孔31a′を有している。連結部32には、結合軸321からボス部322内に長めに伸びる第1の均圧路32a′が形成されるとともに、第1の均圧路32a′と交差して均圧室13に開口する第2の均圧路32b′が形成されている。そして、第1実施形態と同様に、第1の均圧路32a′、第2の均圧路32b′及び弁体31の開口孔31a′は「均圧路」を構成しており、弁ポート22と均圧室13は、開口孔31a′、第1の均圧路32a′及び第2の均圧路32b′により導通されている。
【0044】
また、この第2実施形態において、吸引子52は第1実施形態の吸引子均圧路52bを有しておらず、プランジャ53は、第1実施形態の第1プランジャ均圧路53bと同形状の挿通孔53b′が形成されるとともに、前記第2プランジャ均圧路53cの代わりに、挿通孔53b′の横にプランジャ均圧路53c′が形成されている。
【0045】
この第2実施形態におけるカバー6は、挿通孔6a内に「シール部材」としてのOリング6bを備えている。なお、プランジャばね531の下端は、Oリング6bを填め込んだボス部の端面であるばね受け部61′に当接させている。そして、Oリング6bは挿通孔6aと連結ロッド323との隙間をシールしている。なお、この際のOリング6bのつぶし量は0(ゼロ)に設定されており、連結ロッド323とOリング6bとの間の摺動抵抗は極めて小さく、弁部材3の作動に影響を与えない。これにより、Oリング6bと連結ロッド323との間のクリアランスは極めて微小であるため、第1実施形態に比べ、均圧室13からプランジャ53側への流体の流入はさらに小さくなる。したがって、流体の動圧がプランジャ53やボール84に作用することがないので、第2のポート21の圧力が急激に変化した場合においても安定した制御が可能となる。この実施形態では「シール部材」としてOリングを使用しているが、「シール部材」としては、例えばテフロン(登録商標)等のリング状パッキンを使用しても良い。
【0046】
なお、第1実施形態では、プランジャ53の中央に第1プランジャ均圧路53b及び
第2プランジャ均圧路53cを形成しているが、第2実施形態のように、中央は単に挿通孔53b′として、その横にプランジャ均圧路53c′を形成するようにしてもよい。
【0047】
以上の実施形態では、均圧室13と弁室12とをダイヤフラム4で区画するようにしているが、このダイヤフラム4の代わりに弁体31の上部周囲と弁室12の上部内周面との間にシール部材を配設するようにしてもよい。この場合、「感圧部」は弁体31及びボス部322の上面部分となる。
【0048】
また、実施形態では、第1のポート11から流体を流入させ、第2のポート21から流体を流出させる場合について説明したが、
参考例として、同実施形態の構造は流体の流れが逆の場合にも適用できる。すなわち、第2のポート21から流体を流入させ、第1のポート11から流体を流出させるような場合にも適用できる
。