(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
車両のドアを構成するアウターパネルの車外側に配置され、車両外向きの引き起こし操作がなされるハンドル本体と、該ハンドル本体の第一側とその逆の第二側から、前記アウターパネルに貫通形成された前記第一側と前記第二側のハンドル挿通孔を通って前記アウターパネルの車室内側に延出する前記第一側と前記第二側のハンドル端部と、を有したハンドル部材と、
前記アウターパネルの車室内側に配置され、前記ハンドル部材に前記引き起こし操作が可能となるよう前記ハンドル端部が組み付けられるフレーム部材と、
前記アウターパネルに車外側から当接するナット頭部と、該ナット頭部から車室内側に延出し、前記アウターパネルのナット挿通孔を通って、前記フレーム部材のフレーム孔内に収容された筒状のナット筒状部と、を有したナット部材と、
前記フレーム部材に車室内側から当接するボルト頭部と、該ボルト頭部から車外側に延出し、外周面の雄ねじ部が前記フレーム孔内の前記ナット部材の内周面の雌ねじ部に螺合するボルト軸部と、を有したボルト部材と、
を備える車両用ドアハンドル装置において車室内側の前記ボルト部材を車外側の前記ナット部材に螺合していくことにより、前記ナット頭部と前記ボルト頭部とが、前記アウターパネルと前記フレーム部材とを挟んで密着させた挟持状態に保持されるとともに、
前記アウターパネルは、前記第一側のハンドル挿通孔と前記ナット挿通孔とがつながっており、それらの間に、前記挟持状態において前記ナット挿通孔内に位置する前記ナット筒状部の前記第一側のハンドル挿通孔側への移動を妨げるよう孔幅が狭められた抜け止め部を有する一方で、
前記ナット筒状部は、その軸線方向における前記ナット頭部側の基端側区間に、前記ハンドル挿通孔とつながる連通方向に対し直交する前記ナット挿通孔の孔幅方向において外向きに膨出する膨出部として形成され、当該孔幅方向の幅が前記アウターパネルの前記抜け止め部を通過不可な幅をなす幅広部と、前記軸線方向における前記基端側区間を除く先端側区間に、前記アウターパネルの前記抜け止め部を通過可能な幅で形成された幅狭部と、を有し、
前記ナット挿通孔は、前記ハンドル挿通孔とつながる連通方向に対し直交する方向に凹む形状をなし、前記連通方向に対し直交する方向に膨出する前記幅広部を収容して、前記ナット部材の前記軸線周りにおける回転を阻止する凹部を有することを特徴とする車両用ドアハンドル装置の組み付け構造。
前記ナット部材は、少なくとも前記ナット筒状部の外周面を覆うようにブッシュ部材を一体に有しており、前記フレーム部材の前記フレーム孔内に、該ブッシュ部材を間に介在させる形で圧入されて収容される請求項1に記載の車両用ドアハンドル装置の組み付け構造。
前記ナット部材は、少なくとも前記ナット筒状部の外周面と前記ナット頭部の前記ナット筒状部側の表面とを覆う別体のブッシュ部材が組み付けられており、前記フレーム部材の前記フレーム孔内に、該ブッシュ部材を間に介在させる形で圧入されて収容される請求項1に記載の車両用ドアハンドル装置の組み付け構造。
前記ナット筒状部は、その軸線方向における前記ナット頭部側の基端側区間に、前記アウターパネルの前記抜け止め部を通過不可な幅となる幅広部と、前記軸線方向における前記基端側区間を除く先端側区間に、前記アウターパネルの前記抜け止め部を通過可能な幅で形成された幅狭部と、を有する請求項5に記載の車両用ドアハンドル装置の組み付け方法。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の車両用ドアハンドル装置の組み付け構造の一実施形態を、図面を用いて説明する。
【0010】
図1に示すように、車両用ドアハンドル装置1は、車両ドアに取り付けられ、ハンドル部材20への引き起こし操作によって車両ドアを施開錠(開閉)する車両用ドアハンドル装置1であって、全体として細長形状をなし、その長手方向が車両の前後方向Aを向くように、車両のドアを構成するアウターパネル2に固定される。車両用ドアハンドル装置1は、アウターパネル2に固定された樹脂製のフレーム部材10と、そのフレーム部材10に支持されて車両ドアの開閉の際に使用者に把持される樹脂製のハンドル部材20と、フレーム部材10をアウターパネル2に固定するためのフレーム固定部材3とを備える。本発明は、こうした車両用ドアハンドル装置1が車両ドアを構成するアウターパネル2に組み付けられた構造に特徴を有するものである。
【0011】
フレーム部材10は、
図1及び
図2に示すように、車両前後方向Aに長い細長形状に形成されるとともに、フレーム固定部材3によりアウターパネル2の裏面(車室内側となる内側表面)25に固定されている。フレーム部材10の一端には、ハンドル部材20の一端に形成されたアーム部(第一側のハンドル端部)21を回動可能に支持する支持部11Aが形成される一方、フレーム部材10の他端には、ハンドル部材20の他端に形成された屈曲部(第二側のハンドル端部)22の移動をガイドするガイド部11Bが形成されている。フレーム部材10は、支持部11Aとガイド部11Bとの間の部分が車内側に若干凹んだ凹部12として形成されている。このため、凹部12とハンドル部材20との間には、空間13が設けられることになり、使用者は、その空間13に指を廻してハンドル部材20を把持できるようになっている。
【0012】
ハンドル部材20は、フレーム部材10と同様に車両前後方向Aに長い細長形状(長手状)に形成されるハンドル本体24を有する。ハンドル本体24は、フレーム部材10よりも車外側でアウターパネル2の表面(車外側となる外側表面)26に露出する形で設けられており、使用者に把持されて車両外向き(C1)の引き起こし操作がなされるグリップ部を有する。一方、フレーム部材10は、アウターパネルの車室内側に配置される。フレーム部材10には、ハンドル部材20にその引き起こし操作が可能となるようハンドル部材20の端部(ハンドル端部)21,22が組み付けられる。
【0013】
ハンドル本体24の第一側の端(ここでは車両前側)には、フレーム部材10の支持部11Aに支持されるアーム部21が形成されている。アーム部21は、ハンドル部材20の第一側のハンドル端部をなすものであり、アウターパネル2に貫通形成された開口をなす第一側のハンドル挿通孔2Aを通って車外側から車室内側へと導かれ、車両上下方向(
図1の紙面垂直方向)に向いた回動支点B回りに回動可能に支持部11Aに支持されている。これにより、ハンドル部材20は、車両ドアから遠ざかる方向C1及びその逆方向C2に往復変位が可能とされている。厳密には、ハンドル部材20は、回動支点B回りに所定角度の範囲内で回動可能とされ、その回動可能の範囲内で方向C1−C2間で往復変位が可能となっている。
【0014】
ハンドル本体24の第一側とは逆の第二側の端(ここでは車両後ろ側)には、その長手方向に対してフレーム部材10側に略直角に屈曲した屈曲部22が形成されている。屈曲部22は、ハンドル部材20の第二側のハンドル端部をなすものであり、アウターパネル2に貫通形成された開口をなす第二側のハンドル挿通孔2Bを通って車外側から車室内側へと導かれ、フレーム部材10に形成されたガイド部11Bに嵌められている。そして、屈曲部22がガイド部11Bにガイドされる形で、ハンドル部材20は方向C1−C2間で往復変位するようになっている。屈曲部22の先端には、屈曲部22に対して屈曲した先端部23が形成されている。先端部23は、その変位に連動して車両ドアを開状態にしたり閉状態にするロック装置(図示しない)に接続される。具体的には、ハンドル部材20(先端部23)が車両ドアから離れる方向C1に変位した場合、ロック装置によって車両ドアが開状態にされる一方、ハンドル部材20(先端部23)が逆方向C2に変位した場合、ロック装置によって車両ドアが閉状態にされる。
【0015】
フレーム部材10は、
図1に示すように、凹部12の第一側の端(支持部11Aに近い側の端部)を締結部14としてフレーム固定部材3によりアウターパネル2に固定される。フレーム固定部材3は、相互間で螺合する金属製のボルト部材30及び金属製のナット部材40で構成される。締結部14には、
図3に示すように、フレーム部材10の裏面(車室内側となる内側表面)15と表面(車外側となる外側表面)16との間を貫通する貫通孔(フレーム孔)17が形成されている。
【0016】
貫通孔(フレーム孔)17は、ナット部材40が嵌合して配置される嵌合孔である。本実施形態の貫通孔17は、
図3に示すように、同軸で互いの径が異なる小径孔18及び大径孔19から構成されている。それら2つの孔18,19のうちフレーム部材10の裏面15側に形成された小径孔18は、断面がボルト部材30の径と略同じ円形状の孔となっている。一方、フレーム部材10の表面16側に形成された大径孔19は、ナット部材40が挿入できるように小径孔18よりも径が大きく設定されるとともに、ナット部材40の断面形状に合わせて断面がオーバル形状(楕円形状)の孔となっている。
【0017】
貫通孔17を構成する大径孔19には、ナット部材40がアウターパネル2の表面16側(車外側)から圧入嵌合して取り付けられる。貫通孔(ナット挿通孔)17を構成する小径孔18には、ボルト部材30がフレーム部材10の裏面15側(車室内側)から挿通され、大径孔19内のナット部材40と螺合する。
【0018】
ナット部材40は、
図3に示すように、アウターパネル2に車外側から当接するナット頭部42と、該ナット頭部42から車室内側に延出し、アウターパネル2に貫通形成されたナット挿通孔2C内を通って、フレーム部材10に貫通形成された貫通孔(フレーム孔)17内に収容される筒状のナット筒状部41と、を有する。ナット筒状部41は、ナット頭部42とは逆の先端を先頭にして、貫通孔17内に車外側から同軸をなして挿通されて配置される。ナット頭部42は、ナット筒状部41の車外側から貫通孔17の軸線Dに対し外向き(軸線Dに直交する向き、即ち拡径方向)に広がるフランジ部をなし、車室内側の端面がアウターパネル2の車外側となる表面(外側表面)26に対し当接して配置される。
【0019】
また、ナット部材40は、フレーム部材10に対する軸線Dの周りの回転を阻止する回転阻止部44を有する。本実施形態の回転阻止部44は、フレーム部材10の貫通孔17(19)内に配置されたナット筒状部41を軸線Dの周りに回転させる際に、その順逆双方の回転方向において該貫通孔17内の内壁面に当接して回転阻止する外周壁部44(
図3参照)である。つまり、貫通孔17(19)の形状に対するナット筒状部41の形状によって、ナット部材40の軸線Dの周りの回転が阻止されている。具体的にいえば、本実施形態のナット筒状部41は、軸線Dの垂直断面が略楕円形状となる楕円柱状に形成され、略楕円形状の垂直断面の長軸方向両側の外周壁部44が回転阻止部として機能する。一方、フレーム部材10の貫通孔17(19)は、当該壁部44に対し上記回転方向において当接するよう形成されており、本実施形態においては、ナット筒状部41を挿通可能で、かつ同形状(ここでは上記楕円柱状)の内部空間を形成している。
【0020】
なお、本実施形態における上記略楕円形状とは、通常の楕円形状でもよいが、ここでは楕円の短軸方向において互いに対向する平行な2面の同一側の端部同士をそれぞれ同一径の円弧で結んだ形状である。
【0021】
また、本実施形態のナット頭部42は、
図2に示すように、ナット筒状部41と同様、軸線Dの垂直断面が略楕円形状となる形で形成され、かつ上記略楕円形状をなすナット筒状部41の長軸方向における突出方向が、短軸方向における突出方向よりも長く形成されている。このため、ナット頭部42は、アウターパネル2に対し長軸方向におけるラップ量(面積)が広くなっている。なお、ここでの長軸方向は後述の孔幅方向E2と一致する。また、短軸方向は後述の連通方向E1と一致する。ナット頭部42を被うように樹脂製のパッド50が当てられており、ナット部材40の先端面が車外側から見えないようになっている。
【0022】
また、ナット部材40は、ナット筒状部41がフレーム部材10の貫通孔17内に、圧入等の所定の手法によって密着固定状態とされている。
【0023】
本実施形態のナット部材40は、
図3に示すように、少なくともナット筒状部41の外周面を覆うように樹脂製のブッシュ部材60を一体に有する。ナット部材40は、フレーム部材10の貫通孔17(フレーム孔)内に、ブッシュ部材60を間に介在させる形で圧入されて収容される。本実施形態のブッシュ部材60は、ナット筒状部41の外周面を被覆する筒状部被覆部61と、ナット頭部42の車室内側の表面を被覆する頭部被覆部62と、を有した形状をなす。したがって、ナット部材40は、アウターパネル2の車外側の表面25に対しブッシュ部材60の頭部被覆部62を当接させている。ブッシュ部材60の筒状部被覆部61には、その外周周りに所定間隔おきに、軸線Dに沿ったつぶしリブ63(
図7参照)が形成されており、フレーム部材10の貫通孔17(フレーム孔)内に圧入される際には、それらリブ63がつぶされる形で圧入がなされる。
【0024】
ボルト部材30は、
図3に示すように、フレーム部材10に車室内側から当接するボルト頭部32と、ボルト頭部32から車外側に延出して貫通孔(フレーム孔)17内に挿入され、貫通孔17内に挿入されたナット部材40の内周面の雌ねじ部43に螺合する雄ねじ部33が外周面に形成されたボルト軸部31と、を有する。車室内側のボルト部材30が車外側のナット部材40に螺合していくことにより、ナット頭部42とボルト頭部32とが、アウターパネル2とフレーム部材10とを挟んで、それらアウターパネル2とフレーム部材10とを密着させる形で挟持し、その挟持状態(挟圧状態)が保持される。その結果、アウターパネル2にフレーム部材10が固定される。
【0025】
なお、本実施形態のボルト部材30は金属製のマシンスクリューである。マシンスクリュー30は、本実施形態の金属製のナット部材(金属ナット)40に形成された雌ねじ部(雌ねじ孔)43にねじ込まれて螺合していく。これにより、ナット頭部42がアウターパネル2を押圧する方向にナット部材40を付勢する。言い換えれば、マシンスクリュー30をナット部材40に捻じ込むと、ナット部材40がマシンスクリュー30側に引き込まれるので、ナット部材40のナット頭部42とフレーム部材10の締結部14とでアウターパネル2を挟持することができ、結果としてアウターパネル2にフレーム部材10を固定することができる。
【0026】
本実施形態のボルト頭部32は、
図2に示すように、軸線Dの垂直断面が円形状となる形で形成され、フレーム部材10の裏面(内側表面)15に対し、所定のラップ量で重なり合う形で当接して配置される。
【0027】
アウターパネル2には、
図2に示すように、ナット筒状部41が配置されるナット挿通孔2Cが貫通形成されている。ナット挿通孔2Cは、ハンドル本体24の一端(第一側の端)をなすアーム部21が挿通されるハンドル挿通孔2Aと、連通孔2Dを介してつながっている。ナット筒状部41は、
図3に示すように、その軸線Dの延出方向(軸線方向)におけるナット頭部42側の基端側区間Xに、それらナット挿通孔2Cとハンドル挿通孔2Aとの間をなす連通孔2Dを通過不可な幅で形成された幅広部41Aと、その軸線Dの延出方向における基端側区間Xを除く残余区間Yに、連通孔2Dを通過可能な幅で形成された幅狭部41Bと、を有する。つまり、連通孔2Dは、ハンドル挿通孔2Aとナット挿通孔2Cとの連通方向E1と直交する孔幅方向E2において、その孔幅がナット筒状部41のナット頭部42側の基端の幅広部41Aの幅よりも狭く形成されている。
【0028】
このため、ナット部材40は、ボルト部材30と螺合してアウターパネル2とフレーム部材10とを上記挟持状態とした場合、アウターパネル2のナット挿通孔2C内には幅広部41Aが位置することになる。幅広部41Aは、連通孔2Dを通過できないため、ナット挿通孔2C内からハンドル挿通孔2Aへと移動をすることはできない。つまり、ナット部材40は、上記挟持状態でハンドル挿通孔2Aへと移動できない抜け止め状態となっている。
【0029】
連通孔2Dは、アウターパネル2におけるナット挿通孔2Cとハンドル挿通孔2Aの間で互いに対向する対向部2E,2Eによって形成される。本実施形態の対向部2E,2Eは、互いの対向方向(孔幅方向E2)の幅を狭めるよう互いに接近した突出形状をなし、連通方向E1においてナット部材40の幅広部41Aの孔幅方向E2の両端とラップする(ラップ量P:
図6C参照)。これにより、連通孔2D(即ち、対向部2E,2E)は、ナット挿通孔2C内に位置するナット部材40(ナット筒状部41)のハンドル挿通孔2A側への移動を妨げるよう孔幅が狭められた抜け止め部として機能する。
【0030】
幅広部41Aは、
図3に示すように、ナット頭部42側の基端側区間Xにおいて、ナット筒状部41が孔幅方向E2の外向きに膨出した膨出部41Aとして形成される一方、幅狭部41Bは、ナット頭部42側とは逆の残余区間Yをなす先端側区間Yの全体にわたって形成されている。
【0031】
本実施形態の幅広部41Aは、ナット筒状部41の基端側区間Xにおいて上記孔幅方向E2の両側から外向きに突出して形成される。具体的にいえば、本実施形態の幅広部41Aは、
図7に示すように、ナット頭部42側の基端側区間Xにおいて、ナット筒状部41から上記孔幅方向E2の外向きに膨出した第一の膨出部(膨出基端部)41A1と、該第一の膨出部41A1の上記連通方向E1の中間位置から上記孔幅方向E2の外向きにさらに膨出した第二の膨出部(膨出先端部)41A2とを、有する。アウターパネル2のナット挿通孔2Cの上記孔幅方向E2の両側の内壁面は、略円弧状に窪んだ形状をなすが、具体的には、
図4Aに示すように、上記連通方向E1の中間位置に角部2C3を有する三角形状の凹部2C2を形成し、この角部2C3に幅広部41Aの第二の膨出部41A2を収容する形で、幅広部41Aを凹部2C2に収容している。なお、三角形状の頂点となる角部2C3には面取りがなされ、湾曲形状をなしている。
【0032】
さらに本実施形態の幅広部41Aは、上記連通方向E1の両側には形成されていない。つまり、本実施形態の幅広部41Aは、
図7に示すように、ナット筒状部41の基端側区間Xにおいて上記連通方向E1に対面する対向面41C,41Cの上記孔幅方向E2の長さを増すよう突出する一方で、かつそれら双方の対向面41C,41Cは平坦面であり、上記連通方向E1には非突出の形で形成されている。
【0033】
貫通孔17は、
図3に示すように、上記挟持状態において幅広部41Aを収容する幅広部収容部17Aと、幅狭部41Bが圧入される幅狭部収容部17Bとを有して形成される。
【0034】
なお、本実施形態の幅広部41Aは、外周壁部44の一部でもあり、幅広部収容部17Aや凹部2C2に収容されることで上記回転阻止部44としても機能している。
【0035】
ここで本実施形態における車両用ドアハンドル装置1の車両ドア(アウターパネル2)への組み付け方法について、
図4A〜
図4C,
図5A〜
図5C,
図6A〜
図6Cを用いて説明する。
【0036】
まずは、
図4A,
図5A,
図6Aに示すように、ナット部材40を、フレーム部材10の貫通孔17(19)内に、ナット筒状部41の先端を先頭にして車外側から収容させて仮組み付け状態とする(ナット部材仮組み付けステップ)。これにより、ナット部材40がフレーム部材10に組み付けられて一体化される。ただし、ナット部材40は、幅狭部41B(
図7参照)を車外側に残す形で、さらには車外側に残る幅狭部41Bをアウターパネル2の板厚よりも長く残す形で、ナット筒状部41をフレーム部材10の貫通孔17(19)内に収容された状態とする。なお、本実施形態におけるナット部材40は、圧入によって貫通孔17(19)内に収容されており、幅狭部41Bを車外側に残した状態でも外れにくくなっている。なお、本実施形態のナット部材40は、ブッシュ部材60で被覆(被膜)された状態であり、ブッシュ部材60ごと貫通孔17(19)内に圧入される。
【0037】
さらに本実施形態においては、ボルト部材30を、フレーム部材10の貫通孔17(18)内に、ボルト軸部31の先端を先頭にして車室内側から挿入して、貫通孔17内にナット筒状部41が中途まで収容されたナット部材40に対し、外周面の雄ねじ部33が当該ナット部材40の雌ねじ部43に中途まで螺合する形でねじ込まれた状態を、上記仮組み付け状態としている。これにより、ボルト部材30とナット部材40とがフレーム部材10から脱落する心配が無くなる。
【0038】
次に、
図4B,
図5B,
図6Bに示すように、上記仮組み付け状態のナット部材40を、アウターパネル2のハンドル挿通孔2A内に車室内側から挿通する。ハンドル挿通孔2Aは、その開口面積がナット挿通孔2Cの少なくとも2倍以上あるため、挿通は容易である。そして、そのナット部材40を、幅狭部41Bが連通孔2Dを通過する形で、アウターパネル2のハンドル挿通孔2A内からナット挿通孔2C内へと移動し、ナット挿通孔2C内に配置された状態となる(アウターパネル配置ステップ)。
【0039】
最後に、
図4C,
図5C,
図6Cに示すように、ボルト部材30を、その外周面の雄ねじ部33が貫通孔17(19)内のナット部材40の雌ねじ部43に螺合する形でねじ込んでいく(ボルト部材螺合ステップ)。本実施形態のボルト部材30は、金属製のマシンスクリューである。マシンスクリュー30は、本実施形態の金属製のナット部材(金属ナット)40に形成された雌ねじ部(雌ねじ孔)43にねじ込まれて螺合していく。この螺合は、ボルト頭部32の先端面に形成された治具用係合部(凹凸面)34に対し、所定の治具(図示なし)を係合させて、軸線Dの周りに回転させることにより進行する。
【0040】
最後のボルト部材30のナット部材40への螺合(ボルト部材螺合ステップ)時には、幅狭部41Bが車外側に出ている仮組み付け状態のナット部材40が貫通孔17内のより奥へと進入する。これにより、車外側のナット頭部42がアウターパネル2に対し車外側から車室内側に向かって当接する。さらにボルト頭部32がフレーム部材10に対し車室内側から車外側に向かって当接する。その結果、それらナット頭部42とボルト頭部32とによってアウターパネル2とフレーム部材10とを密着させて挟んだ挟持状態となる。
【0041】
この挟持状態において、アウターパネル2のナット挿通孔2Cに挿通されているナット部材40は、幅狭部41Bがアウターパネル2の連通孔2D(対向部2E,2E)よりも奥へと位置がずれる。このため、幅の狭い連通孔2Dが存在することにより、ナット部材40(ナット筒状部41)のハンドル挿通孔2A側への移動が妨げられる。つまり、この挟持状態では、上記連通方向E1において、幅の狭い連通孔2Dに対しナット筒状部41の幅広部41Aが対向した位置関係となるため、ナット部材40(及びボルト部材30)は、ナット挿通孔2C内からハンドル挿通孔2A内への抜けが妨げられた抜け止め状態となる。この抜け止め状態とは即ち、ナット部材40とボルト部材30の螺合によるアウターパネル2とフレーム部材10の挟持状態からの、アウターパネル2の脱落が妨げられている状態、言い換えれば、上記挟持状態のアウターパネル2からの、ナット部材40とボルト部材30とフレーム部材10の脱落が妨げられている状態である。
【0042】
なお、ナット部材40とフレーム部材10の固定は、本実施形態においては圧入とされている。
【0043】
このように、車両用ハンドル装置1が上記のような構造を有して固定されていれば、車両のドアに想定外の外力が発生した場合でも、ナット部材40のアウターパネル2のハンドル挿通孔2A側へのずれを物理的に妨げることができるから、アウターパネル2からの、ナット部材40とボルト部材30とフレーム部材10の脱落を抑制できる。
【0044】
以上、本発明の一実施形態を説明したが、これはあくまでも例示にすぎず、本発明はこれに限定されるものではなく、特許請求の範囲の趣旨を逸脱しない限りにおいて、当業者の知識に基づいて、追加及び省略等の種々の変更が可能である。
【0045】
以下、本発明の他の実施形態及び変形例について説明する。なお、上記実施形態と共通の機能部や同様の機能部については詳細な説明を省略する。また、上記実施形態と下記変形例は、技術的な矛盾を生じない範囲において適宜組み合わせて実施できる。
【0046】
本発明の第一の変形例について説明する。
【0047】
上記実施形態において、ナット部材40は、幅広部41Aを、基端側区間Xにおいて抜け止め部をなす連通孔2D(対向部2E,2E)の孔幅方向E2に膨出する形で有し、幅狭部41Bを、基端側区間Xを除いた残余区間Yの全体にわたって有しているが、
図8及び
図9に示すように、幅広部41Aを基端側区間Xに形成して、幅狭部41Bを、基端側区間Xを除く先端側区間Yの一部区間Y0において外周面が凹む形で形成して、当該一部区間Y0を除く先端側区間Y1を幅広部41Aとして形成してもよい。この場合の幅狭部41Bは、ナット筒状部41において孔幅方向E2の両端部(壁部)44に、連通方向E1に向かって形成された溝部41Bとして形成される。ナット部材40は、この溝部41B内にアウターパネル2の対向部2Eを通過させる形で、ハンドル挿通孔2A内からナット挿通孔2C内へと進入可能となる。そして、ナット挿通孔2C内のナット部材40が車室内側へと圧入されると、溝部41Bと対向部2Eの位置がずれるため、ナット部材40は、ハンドル挿通孔2A内に戻ることはできない。なお、
図8は、ナット部材40がナット挿通孔2C内において車室内側へと圧入された後の状態であり、このとき溝部41B内の空間には、フレーム部材10の一部の部位等は何も存在していない。
【0048】
本発明の第二の変形例について説明する。
【0049】
上記実施形態においては、ナット部材40が、アウターパネル2のハンドル挿通孔2Aから連通孔2Dを通って移動させる形で、ナット挿通孔2C内に配置されていたが、連通孔2Dを通らず、ナット挿通孔2Cに対し車外側から挿通する形で配置してもよい。
【0050】
例えば、ナット部材40に、少なくともナット筒状部41の外周面とナット頭部42のナット筒状部41側の表面とを覆う別体のブッシュ部材60を組み付けるようにする。そして、そのブッシュ部材60を間に介在させる形で、そのナット部材40をフレーム部材10の貫通孔17内に圧入させる(
図10参照)。
【0052】
まずは、
図11A,
図12A,
図13Aに示すように、筒状をなすブッシュ部材60を、ナット頭部42を被覆する側(頭部被覆部62側)とは逆側の先端を先頭にして、フレーム部材10の貫通孔17(19)内に車外側から収容させて、仮配置状態とする(ブッシュ部材仮配置ステップ)。ただし、この仮配置状態において、ナット筒状部41を被覆する筒状部被覆部61(
図10参照)のうちのナット頭部42を被覆する側(頭部被覆部62側)は、フレーム部材10の貫通孔17(19)内に収容されず、車外側に残されるものとする。さらに、その車外側に残る部分は、アウターパネル2の板厚よりも長く残されるものとする。
【0053】
次に、
図11B,
図12B,
図13Bに示すように、仮配置状態のブッシュ部材60を、弾性変形を伴う形で、アウターパネル2のハンドル挿通孔2A内から連通孔2Dを通過する形でナット挿通孔2C内へと移動させる(アウターパネル配置ステップ)。ブッシュ部材60は薄く弾性変形可能であるから、フレーム部材10の貫通孔17から外に出ている部分をへこませることにより、ハンドル挿通孔2A内から連通孔2Dを通ってナット挿通孔2C内に移動させることは容易である。
【0054】
続いて、
図11C,
図12C,
図13Cに示すように、ナット部材40を、仮配置状態をなしてナット挿通孔2C内に位置する筒状のブッシュ部材60の内部に、ナット筒状部41の先端を先頭にして車外側から圧入させる(ナット部材仮組み付けステップ)。これにより、ナット部材40の全体または先端側の一部が、ブッシュ部材60に被覆された状態でフレーム部材10の貫通孔17(19)内に収容された仮組み付け状態となる。これにより、ナット部材40(及びブッシュ部材60)がフレーム部材10に組み付けられて一体化される。
【0055】
さらに本変形例においては、ボルト部材30を、フレーム部材10の貫通孔17(18)内に、ボルト軸部31の先端を先頭にして車室内側から挿入する。そして、そのボルト部材30を、貫通孔17内にてナット筒状部41が中途まで収容されたナット部材40に対し、外周面の雄ねじ部33が当該ナット部材40の雌ねじ部43に中途まで螺合する形でねじ込まれた状態を、仮組み付け状態としている。
【0056】
そして最後に、
図11C,
図12D,
図13Dに示すように、ボルト部材30を、フレーム部材10の貫通孔17(18)内に、ボルト軸部31の先端を先頭にして車室内側から挿入し、外周面の雄ねじ部33を該貫通孔17(19)内のナット部材40の雌ねじ部43に螺合させていく(ボルト部材螺合ステップ)。本変形例のボルト部材30も、金属製のマシンスクリューであり、金属製のナット部材(金属ナット)40に形成された雌ねじ部(雌ねじ孔)43にねじ込まれて螺合していく。この螺合は、ボルト頭部32の先端面に形成された治具用係合部(凹凸面)34に対し、所定の治具(図示なし)を係合させて、軸線Dの周りに回転させることにより進行する。
【0057】
最後のボルト部材30とナット部材40との螺合時(ボルト部材螺合ステップ)には、仮組み付け状態のナット部材40が貫通孔17内のより奥へと進入することになる。同時に、ブッシュ部材60もナット部材40と共に貫通孔17内のより奥へと進入する。ブッシュ部材60の奥への進入は、ナット部材40が奥に進む際の摺動による力を受けて生じるものでもよいし、ナット部材40が奥に進む際にナット頭部42が当接して押圧されることにより生じるものでもよいし、それら双方でもよい。その結果、車外側のナット頭部42がアウターパネル2に対し車外側から車室内側に向かって当接する。さらに、ボルト頭部32がフレーム部材10に対し車室内側から車外側に向かって当接する。その結果、それらナット頭部42とボルト頭部32とによってアウターパネル2とフレーム部材10とを密着させて挟んだ挟持状態となる。
【0058】
この挟持状態(
図10参照)において、アウターパネル2のナット挿通孔2Cに挿通されているナット部材40は、幅狭部41Bがアウターパネル2よりも奥(
図10の下方)に位置している。即ち、ナット部材40の幅狭部41Bが、アウターパネル2の連通孔2D(対向部2E,2E)よりも奥(
図10の下方)に位置し、アウターパネル2の連通孔2D内には、ナット部材40の幅広部41Aが位置している。これにより、ナット部材40(ナット筒状部41)のハンドル挿通孔2A側への移動が妨げられる。これは既に述べた実施形態と同様である。
【0059】
なお、この変形例において、ナット部材40は、連通孔2D(対向部2E,2E)を通ることなく、車外側からアウターパネル2のナット挿通孔2C及びフレーム部材10の貫通孔17に挿通される。このため、ナット筒状部41には、その軸線Dの延出方向(軸線方向)において、アウターパネル2の連通孔2Dを通過可能な幅で形成された幅狭部41Bを形成しなくてもよい。例えば、ナット筒状部41を全て、アウターパネル2の連通孔2Dを通過不可な幅となる幅広部41Aとしてもよい。
【0060】
また、この変形例において、
図1及び
図2の実施形態で示したようなナット部材40が幅広部41Aと幅狭部41Bを有する場合、ブッシュ部材60は、フレーム部材10の貫通孔17(19)内に収容されて該貫通孔17(19)の内周面とナット筒状部41の外周面との間に圧縮状態で介在可能な形状であればよく、幅広部41Aが収容される部位については、設けておいてもよいし、設けなくてもよい。即ち、ブッシュ部材60は弾性変形可能であるから、ボルト部材30の締結によってナット部材40がアウターパネル2のナット挿通孔2C及びフレーム部材10の貫通孔17に収容されたときに、ブッシュ部材60は、該貫通孔17内の幅広部収容部17Aに収容され、かつ幅広部41Aによる押圧を受けて弾性変形することによって、該幅広部41Aを収容する部位(幅広部収容部)が新たに形成されるような構成でもよい。
【0061】
また、全ての実施形態において、ナット部材40がフレーム部材10(貫通孔17)に仮組み付けされる際(ナット部材仮組み付けステップ)に、ボルト部材30の螺合も行われている。つまり、仮組み付けにはボルト部材30の螺合状態も含まれている。しかしながら、ボルト部材30の螺合は、最後のボルト部材30とナット部材40との螺合時(ボルト部材螺合ステップ)においてのみなされるようにして、仮組み付けの際になされなくともよい。