特許第6084197号(P6084197)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6084197プラグイン構造のアルミニウム導体ケーブルのケーブル端末
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6084197
(24)【登録日】2017年2月3日
(45)【発行日】2017年2月22日
(54)【発明の名称】プラグイン構造のアルミニウム導体ケーブルのケーブル端末
(51)【国際特許分類】
   H01R 4/62 20060101AFI20170213BHJP
   H01R 4/18 20060101ALI20170213BHJP
   H01R 13/58 20060101ALI20170213BHJP
【FI】
   H01R4/62 A
   H01R4/18 A
   H01R13/58
【請求項の数】2
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2014-253230(P2014-253230)
(22)【出願日】2014年12月15日
(65)【公開番号】特開2016-115526(P2016-115526A)
(43)【公開日】2016年6月23日
【審査請求日】2016年3月10日
(73)【特許権者】
【識別番号】306013120
【氏名又は名称】昭和電線ケーブルシステム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105050
【弁理士】
【氏名又は名称】鷲田 公一
(72)【発明者】
【氏名】田渡 未沙
(72)【発明者】
【氏名】今西 晋
【審査官】 前田 仁
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭54−075091(JP,A)
【文献】 特開2004−111058(JP,A)
【文献】 再公表特許第2006/106971(JP,A1)
【文献】 特開2002−238143(JP,A)
【文献】 実公昭52−53976(JP,Y2)
【文献】 特開2002−216862(JP,A)
【文献】 特開昭59−033768(JP,A)
【文献】 特開2008−220124(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01R 4/62
H01R 4/18
H01R 13/58
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部導体を有する電力ケーブルの接続部に接続されるプラグイン構造のアルミニウム導体ケーブルのケーブル端末であって、
ばね状接触子と、
前記内部導体に前記ばね状接触子を介して電気的に接続され、前記アルミニウム導体ケーブルのアルミニウム導体に圧縮により接続される導体接続端子と、
前記アルミニウム導体ケーブルのケーブル絶縁体からケーブル外部半導電層の先端側にわたる外周に装着され、絶縁ゴム層とベルマウス形状の半導電ゴム層とが一体に形成されたストレスコーンと、
前記ストレスコーンの後端側に配設される圧縮装置と、
前記圧縮装置の後端側に装着される保護金具と、を備え
前記導体接続端子は、
銅系材料で構成され、嵌合される側に前記ばね状接触子を介して導通接続される通電部を含む第2の金属部材と、
アルミニウム系材料で構成され、前記アルミニウム導体に圧縮により接続される圧縮部と、前記圧縮部と前記通電部との間に環状に凹んだ凹陥部と、を含む第1の金属部材とが、
摩擦圧接により接合された一体構造を有し、
後端側から前記圧縮部、前記凹陥部、前記通電部の順に連設されており、
前記通電部は、前記ばね状接触子を脱落不能に保持する形状の溝を有し、
前記溝は、内部に向かって幅広となるように側面が傾斜した断面視で台形状の溝であり、底面に前記ばね状接触子のばね部に合わせて膨出する膨出部を有し、
前記ばね状接触子は、前記溝に取り付けられており、
前記摩擦圧接により接合された接合部は、前記通電部の後端部において前記溝より後端側に設けられていることを特徴とするプラグイン構造のアルミニウム導体ケーブルのケーブル端末。
【請求項2】
前記圧縮部、前記凹陥部及び前記通電部は、前記アルミニウム導体が挿入される挿入孔を有し、
前記アルミニウム導体は、前記通電部における前記挿入孔まで挿入されて前記圧縮部にて圧縮されていることを特徴とする請求項1に記載のプラグイン構造のアルミニウム導体ケーブルのケーブル端末。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アルミニウム導体ケーブル用の導体接続端子及びアルミニウム導体ケーブルのケーブル端末に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、電力ケーブルの終端接続部においては、ケーブル導体の先端部に導体接続端子が取り付けられ、この導体接続端子を介して、内部導体(導体引出棒)とケーブル導体が電気的に接続される。また、導体接続端子の外周面にマルチラムバンド等のばね状接触子を配置して、プラグイン構造によってケーブル導体と内部導体とを接続するようにした終端接続部もある(例えば特許文献1)。
【0003】
ここで、ケーブル導体と導体接続端子の材質が異なると、線膨張係数が異なるために、熱によって接続部分の機械的強度や接触抵抗が変化する。また、イオン化傾向の差によって接触部分に電蝕(電食)が発生しやすい。そこで、導体接続端子には、接続するケーブル導体と同じ材質のものが選定される。
【0004】
例えば、アルミニウム導体を有する電力ケーブル(以下「アルミニウム導体ケーブル」と称する)の終端接続部においては、アルミニウム又はアルミニウム合金製の導体接続端子が用いられる。特許文献2には、ワイヤーハーネス等の細物のアルミニウム電線用の接続端子に関する技術であるが、アルミニウム電線のコネクタ端子をアルミニウム材料で構成することが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−220124号公報
【特許文献2】特開2004−199934号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、導体接続端子にアルミニウム材料を適用する場合、機械的強度を確保するためには、ばね状接触子を配置するための溝を単純な形状とせざるを得ない。アルミニウム材料の機械的強度から、複雑な溝加工ができないためである。
【0007】
そのため、従来は、図1に示すように、例えば導体接続端子521の外周面に形成された単純な形状の溝521eにばね状接触子525を配置した上で、ばね状接触子525の脚部を溝521eに押さえ付けるように押さえリング526A、526Bが配置されている。このような構造の導体接続端子付きのケーブル端末の場合、着脱する際に、導体接続端子に嵌合される側の部品(プラグまたは内部導体など)の内面に押さえリング526A、526Bが引っ掛からないように考慮する必要がある。
【0008】
すなわち、嵌合する側の部品の内面を押さえリング526A、526Bによって傷付けないよう考慮する必要があり、また押さえリング526A、526Bの引っ掛かりによって押さえリング526A,526Bが溝から外れてしまい、ひいては、ばね状接触子525が外れないよう考慮する必要があった。そのため、銅導体を有する電力ケーブルの端末と同様に、ケーブル端末の着脱作業が容易な、押さえリング526A、526Bを考慮する必要の無い導体接続端子及びそれを用いたケーブル接続部が望まれていた。
【0009】
しかしながら、押さえリング無しのばね状接触子を適用するには、押さえリング付きのばね状接触子の場合に比べて複雑な形状の溝加工を行う必要がある。従来のアルミニウム材料で構成された導体接続端子では、アルミニウム材料の機械的強度のため加工が極めて困難であり、押さえリング無しのばね状接触子を適用するには必要以上に導体接続端子の通電部を大型化する必要があった。
【0010】
本発明の目的は、アルミニウム導体と導体接続端子との良好な導通を確保できるとともに、アルミニウム導体に対する着脱作業を簡易化できる導体接続端子及びアルミニウム導体ケーブルのケーブル端末を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明に係るプラグイン構造のアルミニウム導体ケーブルのケーブル端末は、
内部導体を有する電力ケーブルの接続部に接続されるプラグイン構造のアルミニウム導体ケーブルのケーブル端末であって、
ばね状接触子と、
前記内部導体に前記ばね状接触子を介して電気的に接続され、前記アルミニウム導体ケーブルのアルミニウム導体に圧縮により接続される導体接続端子と、
前記アルミニウム導体ケーブルのケーブル絶縁体からケーブル外部半導電層の先端側にわたる外周に装着され、絶縁ゴム層とベルマウス形状の半導電ゴム層とが一体に形成されたストレスコーンと、
前記ストレスコーンの後端側に配設される圧縮装置と、
前記圧縮装置の後端側に装着される保護金具と、を備え
前記導体接続端子は、
銅系材料で構成され、嵌合される側に前記ばね状接触子を介して導通接続される通電部を含む第2の金属部材と、
アルミニウム系材料で構成され、前記アルミニウム導体に圧縮により接続される圧縮部と、前記圧縮部と前記通電部との間に環状に凹んだ凹陥部と、を含む第1の金属部材とが、
摩擦圧接により接合された一体構造を有し、
後端側から前記圧縮部、前記凹陥部、前記通電部の順に連設されており、
前記通電部は、前記ばね状接触子を脱落不能に保持する形状の溝を有し、
前記溝は、内部に向かって幅広となるように側面が傾斜した断面視で台形状の溝であり、底面に前記ばね状接触子のばね部に合わせて膨出する膨出部を有し、
前記ばね状接触子は、前記溝に取り付けられており、
前記摩擦圧接により接合された接合部は、前記通電部の後端部において前記溝より後端側に設けられていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、アルミニウム導体と導体接続端子との良好な導通を確保できるとともに、アルミニウム導体に対する着脱作業を簡易化できる導体接続端子が実現される。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】従来の導体接続端子を示す図である。
図2】実施の形態に係るアルミニウム導体ケーブル用の導体接続端子を用いた気中終端接続部を示す図である。
図3】アルミニウム導体ケーブルが接続された実施の形態に係る導体接続端子を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。
図2は、本発明の一実施の形態に係る導体接続端子を用いたアルミニウム導体ケーブルの終端接続部(図2では気中終端接続部)を示す部分断面図である。図3は、アルミニウム導体ケーブル11が接続された導体接続端子121を示す拡大図である。図2、3に示すように、アルミニウム導体ケーブル11の終端接続部1は、ケーブル端末部1Aと、ケーブル端末部1Aが装着されるポリマー套管1Bと、を備える。以下において、図中、上側を先端側、下側を後端側と称する。
【0016】
図2に示すように、ポリマー套管1Bは、中心に配置される棒状の内部導体13(導体引出棒)、内部導体13の外周に設けられる絶縁筒14、絶縁筒14の外周に設けられるポリマー被覆体15、絶縁筒14と一体的に形成される遮へい金具16、下部金具17、及び底部金具19等を備える。内部導体13、絶縁筒14、ポリマー被覆体15、及び遮へい金具16は、例えばモールド成型により一体的に形成される。
【0017】
内部導体13は、例えば銅、アルミニウム、銅合金又はアルミニウム合金等からなる通電に適した導電性材料で構成される。内部導体13の先端部131は、架空線や引き込み線(図示略)などに接続される。内部導体13の後端部132は、導体接続端子121に電気的に接続される。
【0018】
絶縁筒14は、機械的強度の高い硬質プラスチック樹脂材料(例えばエポキシ樹脂やFRP(Fiber Reinforced Plastics)など)で構成される。絶縁筒14の後端部141の受容口にケーブル端末部1Aが装着される。
【0019】
ポリマー被覆体15は、電気絶縁性能に優れる材料(例えばシリコーンポリマーなどの高分子材料)で構成される。ポリマー被覆体15の外周面には、傘状の襞部が長手方向に離間して形成される。
【0020】
遮へい金具16は、内部導体13と同心状に埋設される円筒部と、円筒部の後端から径方向外側に延出するフランジ部を有する。円筒部は電界緩和機能を有し、ポリマー套管1Bの電界を緩和する。
【0021】
下部金具17は、先端部にフランジ部(以下「先端フランジ部」と称する)を有する円筒形状を有し、絶縁筒14の後端部141の外周に配置される。下部金具17の先端フランジ部を遮へい金具16のフランジ部の後端面にボルト止め(図示略)することにより、下部金具17は遮へい金具16に固定される。
【0022】
底部金具19は、下部金具17の先端フランジ部の外周に設けられ、遮へい金具16のフランジ部の外周縁部の後端面にボルト止め(図示略)される。底部金具19の後端面に支持碍子18がボルト止めで固定されることにより、ポリマー套管1Bは支持碍子18を介して架台Rに固定される。
【0023】
ケーブル端末部1Aは、アルミニウム導体ケーブル11と、アルミニウム導体ケーブル11の先端部に取付けられる接続部品12と、を有する。接続部品12には、導体接続端子121、ストレスコーン122、圧縮装置(図示略)、保護金具123、及び防食層124等が含まれる。
【0024】
アルミニウム導体ケーブル11は、ゴム又はプラスチックで絶縁された電力ケーブル(例えばCVケーブル)である。アルミニウム導体ケーブル11は、内側から順に、アルミニウム導体111、内部半導電層(図示略)、ケーブル絶縁体112、外部半導電層(図示略)、ケーブル遮蔽層(図示略)、及びケーブルシース113等を有する。ケーブル端末部1Aにおいては、アルミニウム導体ケーブル11の先端部から所定長で段剥ぎすることにより各層が露出される。
【0025】
アルミニウム導体111には、導電性の導体接続端子121が圧縮により接続される。ケーブル絶縁体112からケーブル外部半導電層(図示略)の先端側にわたる外周には、絶縁ゴム層とベルマウス形状の半導電ゴム層とが一体に形成されたストレスコーン122が装着される。ストレスコーン122の後端側には、ストレスコーン122を押圧するための圧縮装置(図示略)が配設され、圧縮装置の後端側には保護金具123が装着され、保護金具123の後端部には、防水のための防食層124が形成される。
【0026】
導体接続端子121は、アルミニウム導体111に圧縮により接続される圧縮部121aと、内部導体13にプラグ120を介して電気的に接続される通電部121bと、圧縮部121aと通電部121bとの間に設けられる環状の凹陥部121cとを有する。圧縮部121a、凹陥部121c及び通電部121bには、アルミニウム導体111が挿入される挿入孔121fが形成される。
【0027】
凹陥部121cによって、アルミニウム導体111に導体接続端子121を圧縮接続する際の導体接続端子121の伸びや変形を吸収することができ、ひいては通電部121bにおけるばね状接触子125と内部導体13との有効な電気的接触を図ることができる。なお、プラグ120は、導体接続端子121の外周に配設され、マルチラムバンド(マルチコンタクト)等の導体接触子によって内部導体13の後端部132と電気的に接続される。
【0028】
圧縮部121a及び凹陥部121cは第1の金属部材121Aで構成され、連設された一体構造であり、ここではアルミニウム系材料(アルミニウムを主成分とする金属材料、アルミニウム及びアルミニウム合金を含む)で構成される。また、通電部121bは第2の金属部材121Bで構成され、ここでは銅系材料(銅を主成分とする金属材料、銅及び銅合金を含む)で構成される。第1の金属部材121Aと第2の金属部材121Bは、接触加圧された状態で相対運動させることにより生じる摩擦熱を利用した摩擦圧接により接合される。これにより、第1の金属部材121A(アルミニウム系材料)と第2の金属部材121B(銅系材料)は、通電部121bの後端部で連設されるため、圧縮部121a、凹陥部121c及び通電部121bが連設された一体構造となる。
【0029】
摩擦圧接は、銅系材料とアルミニウム系材料のように異種金属材料を接合する場合に好適である。すなわち、摩擦圧接により接合された接合部は、摩擦熱と圧力の影響により組織が緻密になり、端部から中心部にわたるすべてが接合されているので、接合強度が非常に高い。また、金属間化合物がほとんど形成されず、アーク溶接で生じるブローホール(球状の空洞)等の溶接欠陥もないので、信頼性が高い。
【0030】
圧縮部121aとアルミニウム導体111はいずれもアルミニウム系材料で構成されているので、熱によって接続部分の機械的強度や接触抵抗の変化を、異種金属材料の接続(例えば、ケーブルのアルミニウム導体を銅系材料の導体接続端子に圧縮接続)の場合と比べて小さくできる。したがって、良好な導通と機械的強度が確保される。
【0031】
圧縮部121aの内周面(アルミニウム導体111との接触面)には、セレーション121dが形成される。セレーション121dは、例えば、雌螺子形状により形成される。セレーション121dの形状及び溝の深さにより、導体接続端子121の内周面に塗布される酸化防止剤の量を制御することができる。セレーション121dは、雌螺子形状に限定されず、凹凸構造であればよい。雌螺子形状の場合、複雑な凹凸構造に比べて加工が容易であり、導体接続端子121のコストを抑制することができるため、より好ましい。
【0032】
通電部121bの外周面には、ばね状接触子125(マルチラムバンド)を配置するための溝121eが形成される。具体的には、溝121eは、内部に向かって幅広となるように側面が傾斜した断面視で略台形状の溝(いわゆるあり溝)であり、ばね状接触子125のばね部125aに合わせて底面の中央が膨出している。
【0033】
ばね状接触子125は、幅方向(図3では上下方向)に湾曲された状態で導体接続端子121の溝121eに取り付けられる。ばね状接触子125の脚部125bは、自身の弾性力によって溝121eの鋭角部に入り込み、押し付けられる。ばね状接触子125は、溝121eの形状によって脱落不能に保持される。
【0034】
押さえリング等を用いていないので、押さえリングの引っ掛かりを気にすることなく、導体接続端子121が圧縮接続されたケーブル端末部1A(プラグ120を含まない)を容易にプラグ120に着脱できる。したがって、アルミニウム導体111に対する導体接続端子121の着脱作業が格段に簡易化される。
【0035】
また、通電部121bは銅系材料で構成されているので、溝121eのように複雑な形状の溝の加工が容易であり、複雑な形状の溝を形成しても、機械的強度は確保される。通電部121bをアルミニウム系材料で構成する場合(従来の導体接続端子全体をアルミニウム系材料で構成する場合)のように、必要以上に通電部121bを大型化する必要もない。したがって、溝121eを形成するための設計の自由度が向上する。
【0036】
すなわち、通電部121bを銅系材料で構成することにより、押さえリング無しのばね状接触子125を適用した導体接続端子121を備えるアルミニウム導体のケーブル端末を提供することができ、押さえリング付きのばね状接触子を適用したアルミニウム導体のケーブル端末も提供することができる。
【0037】
ケーブル端末部1Aは、プラグイン構造により、ポリマー套管1Bに装着される。アルミニウム導体111は、導体接続端子121、ばね状接触子125及びプラグ120を介して、内部導体13と電気的に接続される。
【0038】
アルミニウム導体111の先端部に導体接続端子121を接続する場合、アルミニウム導体111の表面に形成されている酸化被膜を、予めワイヤーブラシによって除去する。また、ケーブル絶縁体112の端面(アルミニウム導体111とケーブル絶縁体112の境界面)に保護フィルムを巻き付けて、漏れ出した酸化防止剤が付着しないように保護する。
【0039】
次に、アルミニウム導体111の外周面と、導体接続端子121の内周面に、導電性の酸化防止剤(防食コンパウンド)を塗布する。このとき、セレーション121dの溝が埋まるように酸化防止剤を塗布する。これにより、作業者の熟練度に関わらず、所定量(例えば1g)の酸化防止剤を塗布することができる。また、酸化防止剤を塗布することにより、アルミニウム導体111の表面の酸化を防ぐことができ、圧縮作業の際には、潤滑剤としての機能を有する。
【0040】
高圧用の電力ケーブルは、低圧用の被覆電線と比較して外径が大きいため、被覆電線の導体を圧着工具を用いて端子に圧着接続するのとは異なり、六角ダイス等を使って圧縮装置により、アルミニウム導体111を導体接続端子121に圧縮接続することが必要となる。酸化防止剤を塗布した後、導体接続端子121の挿入孔121fにアルミニウム導体111の先端部を挿入した状態で、所定の圧縮工具(例えば六角ダイス)を用いて圧縮部121aをアルミニウム導体111に向かって均等に加圧して圧縮する。導体接続端子121のセレーション121dがアルミニウム導体111に食い込むことにより、引き留め効果が得られる。したがって、アルミニウム導体111と導体接続端子121は強固に接続される。
【0041】
アルミニウム導体111と導体接続端子121の間には、均一な厚さで酸化防止剤層126が形成される。アルミニウム導体111と導体接続端子121との間に酸化防止剤層126が介在することにより、アルミニウム導体111の表面に酸化被膜が再生成されるのを防止できるので、良好な導通が確保される。
【0042】
そして、導体接続端子121の後端部から漏れ出した酸化防止剤をアルコール等により拭き取る。また、導体接続端子121の後端部に保護テープ127(例えばセルボンテープ等)を巻き付けて、酸化防止剤のさらなる漏れ出しを予防する。セレーション121dによって酸化防止剤の塗布量が適切に制御されるので、多量の酸化防止剤がはみ出すことはない。したがって、漏れ出した酸化防止剤を簡単に拭き取ることができる。漏れ出した酸化防止剤がケーブル絶縁体112に付着して、ケーブル絶縁体112の絶縁性能を劣化させることもない。
【0043】
また、本実施の形態により、従来、アルミニウム導体111を導体接続端子121に接続するために必要であった導体接続端子121の長さを、例えば導体断面積500mmの場合で40〜50%程度短くすることができ(すなわち、従来の50〜60%程度の長さを実現でき)、銅導体を導体接続端子に接続する場合と同程度近傍まで導体接続端子121の全長を短くすることができる。よって、銅導体ケーブルの終端接続部と同程度の大きさのアルミニウム導体ケーブルの終端接続部を提供することができる。
【0044】
このように、導体接続端子121は、アルミニウム導体111を有するアルミニウム導体ケーブル11の終端接続部1において、アルミニウム導体111の先端部に取り付けられる。導体接続端子121は、アルミニウム系材料で構成され、アルミニウム導体111に圧縮により接続される圧縮部121aを含む第1の金属部材121Aと、銅系材料で構成され、内部導体13にばね状接触子を介して導通接続される通電部121bを含む第2の金属部材121Bと、を有し、第1の金属部材121Aと第2の金属部材121Bとは、摩擦圧接により接合されている。
【0045】
導体接続端子121によれば、アルミニウム導体111と導体接続端子121との良好な導通を確保できるとともに、導体接続端子121に嵌合される側の部品(実施の形態ではプラグ120)に対する着脱作業、すなわちケーブル端末の着脱作業を格段に簡易化することができる。
【0046】
以上、本発明者によってなされた発明を実施の形態に基づいて具体的に説明したが、本発明は上記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で変更可能である。
【0047】
例えば、実施の形態の終端接続部1では、ポリマー套管を使用した気中終端接続部の場合について説明したが、複合碍管や磁器製の碍管を用いた内部導体を有する気中終端接続部に適用してもよい。また、気中終端接続部ではなく、内部導体を有するエポキシブッシングを用いたガス中終端接続部や油中終端接続部に適用してもよい。さらには、プレハブジョイント(PJ)やY分岐ジョイント(YJ)等の中間接続部に適用してもよい。この場合、PJやYJのエポキシ本体に埋設された各ケーブル導体を導通させる電極が内部導体となる。
【0048】
また、実施の形態では導体接続端子121はプラグ120に嵌合するが、導体接続端子121を内部導体に直接嵌合するタイプのケーブル端末でもよい。また、実施の形態ではセレーション121dを設けた構造で説明しているが、セレーション121dは設けなくてもよい。
【0049】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0050】
1 終端接続部
11 アルミニウム導体ケーブル
111 アルミニウム導体
112 ケーブル絶縁体
113 ケーブルシース
12 接続部品
121 導体接続端子
121a 圧縮部
121b 通電部
121e 溝
126 酸化防止剤層
1B ポリマー套管
13 導体引出棒(接続先の導体)
14 絶縁筒
15 ポリマー被覆体
16 遮へい金具
17 下部金具
19 底部金具
図1
図2
図3