特許第6084206号(P6084206)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6084206
(24)【登録日】2017年2月3日
(45)【発行日】2017年2月22日
(54)【発明の名称】流量調整器
(51)【国際特許分類】
   G05D 7/01 20060101AFI20170213BHJP
【FI】
   G05D7/01 A
【請求項の数】8
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2014-510676(P2014-510676)
(86)(22)【出願日】2012年3月23日
(65)【公表番号】特表2014-513846(P2014-513846A)
(43)【公表日】2014年6月5日
(86)【国際出願番号】EP2012001286
(87)【国際公開番号】WO2012156002
(87)【国際公開日】20121122
【審査請求日】2013年12月6日
【審判番号】不服2015-19351(P2015-19351/J1)
【審判請求日】2015年10月28日
(31)【優先権主張番号】202011100800.6
(32)【優先日】2011年5月17日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】505123871
【氏名又は名称】ネオパール ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】Neoperl GmbH
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100099483
【弁理士】
【氏名又は名称】久野 琢也
(72)【発明者】
【氏名】スィモン トゥウィチェット
【合議体】
【審判長】 栗田 雅弘
【審判官】 西村 泰英
【審判官】 平岩 正一
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−250247(JP,A)
【文献】 特開平8−145213(JP,A)
【文献】 特公昭51−23060(JP,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G05D 7/01,F16K 17/20-17/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
流量調整器(1,110)であって、調整器ケーシング(2)が設けられており、該調整器ケーシング(2)は少なくとも1つの調整器環状通路(3)を有していて、該調整器環状通路(3)内には弾性材料から成る環状の絞り体(4)が設けられており、該絞り体(4)は、絞り体(4)自体と、調整成形部(5)を有している通路壁との間に制御ギャップ(6)を画成しており、該制御ギャップ(6)の通流横断面は、通流時に形成される圧力差により変形する絞り体(4)に基づき可変であり、更に、少なくとも1つの弁(7)が設けられており、該弁(7)は、通流する媒体の圧力により、戻し力に抗して開放形状から閉鎖形状変形する弁体(8)を有しており、該弁体(8)は、閉鎖形状において少なくとも1つの弁開口を閉鎖している、流量調整器において、
前記弁体(8)が、調整器ケーシング(2)の弁環状通路(9)内に設けられており、該弁環状通路(9)は、その通路底部の領域に少なくとも1つの弁開口を有しており、前記弁体(8)は、環状に形成されていて弾性材料から製造されており且つ前記弁環状通路(9)の通路底部に当接して支持されており、前記環状の弁体(8)は、流入する媒体の圧力により弁環状通路(9)の少なくとも一方の側壁に向かって半径方向に変形し、この半径方向の変形に基づき前記弁体(8)は、該弁体(8)に使用された弾性材料の固有弾性の戻し力に抗して、開放形状から閉鎖形状変形するようになっていることを特徴とする、流量調整器。
【請求項2】
少なくとも1つの前記弁環状通路(9)と、少なくとも1つの前記調整器環状通路(3)とは、互いに同心的に配置されている、請求項1記載の流量調整器。
【請求項3】
前記少なくとも1つの弁環状通路(9)は、前記調整器環状通路(3)に対して外側に位置するように配置されている、請求項1又は2記載の流量調整器。
【請求項4】
前記調整成形部(5)は、通路壁の、通流方向に方向付けられた凹状成形部(10)と凸状成形部(11)とにより形成されている、請求項1から3までのいずれか1項記載の流量調整器。
【請求項5】
前記調整成形部(5)は、前記少なくとも1つの調整器環状通路(3)の内側又は外側の通路壁に設けられている、請求項1から4までのいずれか1項記載の流量調整器。
【請求項6】
前記絞り体(4)は前記調整器環状通路(3)内に、且つ/又は前記弁体(8)は前記弁環状通路(9)内に、軸方向両側で保持されている、請求項1から5までのいずれか1項記載の流量調整器。
【請求項7】
前記絞り体(4)及び前記弁体(8)のための挿入開口として用いられる、前記調整器環状通路(3)及び前記弁環状通路(9)の流入側に、前記絞り体(4)及び前記弁体(8)を保持するための十字形の少なくとも1つの保持部材(14)が設けられている、請求項6記載の流量調整器。
【請求項8】
前記少なくとも1つの保持部材(14)は、前記調整器ケーシング(2)から取り外せるように構成されている、請求項7記載の流量調整器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流量調整器であって、ケーシングが設けられており、該ケーシングは少なくとも1つの調整器環状通路を有していて、該調整器環状通路内には弾性材料から成る環状の絞り体が設けられており、該絞り体は、絞り体自体と、調整成形部を有している通路壁との間に制御ギャップを画成しており、該制御ギャップの通流横断面は、通流時に形成される圧力差に基づいて変形する絞り体により可変であり、更に、少なくとも1つの弁が設けられており、該弁は、通流する媒体の圧力により、開放位置から戻し力に抗して閉鎖位置に移動する弁体を有しており、該弁体は、閉鎖位置において少なくとも1つの弁開口を閉鎖するようになっている、流量調整器に関する。
FR1175236Aから既に公知の流量調整器は、ディスク状の調整器ケーシングでもって、1本の導管の隣り合う2つの導管部分の間に接続され得る。この従来公知の流量調整器は更に、複数の通流開口を有していて、これらの通流開口のうち少なくとも1つの通流開口は、不変の内法の横断面を有している一方で、少なくとも1つの別の通流開口には、通流横断面を取り囲む、弾性材料から成る調整体が設けられていて、この調整体は、通流する流体の圧力に基づき、(通流横断面を)徐々に狭める。不変の横断面を有する通流開口の通流能力が、圧力の上昇に伴って高くなるのに対して、弾性的な調整体を有する通流開口の通流能力は、通流する流体の圧力の上昇に伴って低下するので、全体としては、初めに圧力上昇と共に急激に高まる通流能力が得られ、この通流能力は、次いで引き続き圧力が上昇すると、ほぼ一定の最大値に達する。しかしながら、この従来公知の流量調整器は、通流する流体の圧力により、開放位置から戻し力に抗していずれかの閉鎖位置に移動可能な弁は全く有していない。
WO2004/003673A1から既に公知の流量調整器は、その調整器ケーシング内に互いに同心的に配置された2つの調整器ユニットを有していて、これらの調整器ユニットのうちの一方の調整器ユニットは、環状の通流通路内に、制御ピン又は調整コアを有しており、この制御ピン又は調整コアを、それぞれ弾性材料から成る環状の絞り体が取り囲んでおり、絞り体は、該絞り体自体と、制御ピン及び/又はケーシング内周面との間に制御ギャップを画成しており、制御ギャップの通流横断面は、通流時に形成される圧力差により変形する絞り体に基づき可変である。この場合、内側の調整器ユニットは、外側の第2の調整器ユニットの制御ピン又は調整コア内に配置されている。比較的大きな外側の調整器ユニットでは、単位時間当たりの吐水能力を高く調整することができるのに対して、比較的小さな内側の調整器ユニットでは、通流する水量の微調整が可能である。WO2004/003673A1に記載の流量調整器に設けられた、ほぼ同じ構成の調整器ユニットのうちのいずれも、通流する水の圧力に基づき開放位置と閉鎖位置との間で可動の弁を成してはいない。
【0002】
DE−OS2131117の図6から既に、冒頭で述べた形式の流量調整器が公知である。この従来公知の流量調整器は、調整器ケーシングを有していて、この調整器ケーシングは調整器環状通路を有しており、調整器環状通路内には、弾性材料から成る環状の絞り体が設けられていて、この絞り体は、絞り体自体と、調整成形部を有している内側の通路壁との間に、制御ギャップを画成しており、この制御ギャップの通流横断面は、通流時に形成される圧力差により変形する絞り体に基づき可変である。圧力が増大するにつれて、弾性材料から成る絞り体は調整成形部に向かって変形するので、制御ギャップの通流横断面は徐々に狭められ、これにより、最大通流能力は圧力とは関係無く、所定の設定値に制限されている。調整器ケーシングの、調整器環状通路により取り囲まれた中央には、流入弁が設けられていて、この流入弁は、通流する媒体の圧力により、開放位置から戻し力に抗して軸方向に閉鎖位置へと移動する弁体を有しており、弁体は、閉鎖位置において少なくとも1つの弁開口を閉鎖する。この付加的な流入弁は、低い接続圧において、圧力上昇時に目標とする最大値まで通流能力を急速に高めることを保証する、付加的な液体通流を生ぜしめるという役割を有している。
【0002】
DE−OS2131117の図6から既に、冒頭で述べた形式の流量調整器が公知である。この従来公知の流量調整器は、調整器ケーシングを有していて、この調整器ケーシングは調整器環状通路を有しており、調整器環状通路内には、弾性材料から成る環状の絞り体が設けられていて、この絞り体は、絞り体自体と、調整成形部を有している内側の通路壁との間に、制御ギャップを画成しており、この制御ギャップの通流横断面は、通流時に形成される圧力差により変形する絞り体に基づき可変である。圧力が増大するにつれて、弾性材料から成る絞り体は調整成形部に向かって変形するので、制御ギャップの通流横断面は徐々に狭められ、これにより、最大通流能力は圧力とは関係無く、所定の設定値に制限されている。調整器ケーシングの、調整器環状通路により取り囲まれた中央には、流入弁が設けられていて、この流入弁は、通流する媒体の圧力により、開放位置から戻し力に抗して軸方向に閉鎖位置へと移動する弁体を有しており、弁体は、閉鎖位置において少なくとも1つの弁開口を閉鎖する。この付加的な流入弁は、低い接続圧において、圧力上昇時に目標とする最大値まで通流能力を急速に高めることを保証する、付加的な液体通流を生ぜしめるという役割を有している。
【0003】
流入弁に設けられた弁体の軸方向の調整移動は、ある程度の組込み高さを必要とするので、従来公知の流量調整器は、比較的高くなっている。調整器ケーシングの中央に設けられた流入弁の弁開口が十分に大きな通流横断面を有しているようにするために、調整器ケーシングは相応に大きなケーシング横断面を有している。よって、DE−OS2131117から公知の流量調整器は、比較的かさ高であり、狭いスペース状況、例えば細い衛生用の蛇口の吐水口において使用することはできない。更に、従来公知の流量調整器は比較的複雑で、製造に手間がかかる。
【0004】
したがって特に、高性能であるにもかかわらずコンパクトに構成され得る、冒頭で述べた形式の、廉価に製造可能な流量調整器を提供するという課題が生じる。
【0005】
特に、冒頭で述べた形式の流量調整器において、前記課題は本発明に基づき、弁体が、調整器ケーシングの弁環状通路内に設けられており、該弁環状通路は、その通路底部に少なくとも1つの弁開口を有しており、弁体は、環状に形成されていて弾性材料から製造されており、環状の弁体は、流入する媒体の圧力により変形し、これにより弁体は、該弁体に使用された弾性材料の固有弾性の戻し力に抗して、開放位置から閉鎖位置に移動するようになっていることにより解決される。
【0006】
本発明による流量調整器は、少なくとも1つの流入弁を有しており、この流入弁の弁体は、調整器ケーシングの弁環状通路内に設けられており、弁環状通路は、その通路底部に少なくとも1つの弁開口を有している。調整器環状通路に適合された、環状の形状を付与することにより、弁の少なくとも1つの弁開口は、比較的大きな開口横断面を有することができる。弁体は、環状に形成されていて、弾性材料から廉価に製造可能である。弁体は、例えば軸方向に移動するように案内される必要はなく、流入する媒体の圧力により変形して、これにより弁体が、この弁体に使用された弾性材料の固有弾性の戻し力に抗して、開放位置から閉鎖位置に移動すればよいので、本発明に基づき使用される弁は故障しにくく、保守を要しない。弁体は、例えば軸方向に移動するように案内される必要はなく、しかも調整器環状通路に適合された環状の形状が付与されていることにより、弁開口を、省スペースであるにもかかわらず、比較的大きな内法の開口面積を備えて形成することができるので、本発明による流量調整器は、高性能且つコンパクトに構成することができる。
【0007】
本発明による流量調整器の高性能で省スペース型の構成は、少なくとも1つの弁環状通路と、少なくとも1つの調整器環状通路とが、互いに同心的に配置されていると、更に容易になる。
【0008】
流入する媒体の圧力上昇時に、目標とする通流能力の最大値にできるだけ早く到達できるようにするために、少なくとも1つの弁環状通路が、調整器環状通路に対して外側に位置するように配置されていると、有利である。
【0009】
一定の良好な調整器特性という点において優れた本発明の好ましい構成では、調整成形部が通路壁の、好ましくは通流方向に方向付けられた凹状成形部と凸状成形部とにより形成されている。
【0010】
この場合、調整成形部が、少なくとも1つの調整器環状通路の内側の且つ/又は好ましくは外側の通路壁に設けられていると、合理的であってよい。本発明の好ましい構成では、調整成形部は、少なくとも1つの調整器環状通路の外側の通路壁に配置されている。
【0011】
比較的軽量の弾性材料から製造された弁体及び絞り体の浮上を阻止するため、且つ絞り体若しくは弁体の、対応する環状通路内での配置を保証するために、本発明の好適な改良では、絞り体は調整器環状通路内に、且つ/又は弁体は弁環状通路内に、軸方向両側で保持されている。
【0012】
この場合、絞り体若しくは弁体のための挿入開口として用いられる、調整器環状通路及び/又は弁環状通路の流入側が、好ましくは十字形の少なくとも1つの保持部材により保持可能であると、絞り体若しくは弁体の浮上は確実に阻止される。
【0013】
絞り体若しくは弁体を、対応する環状通路に挿入し、次いでそこに保持できるようにするために、少なくとも1つの保持部材が調整器ケーシングに取り外せるように、好ましくは取り外せるように係止可能に保持されていると、合理的である。
【0014】
本発明に基づく改良は、以下の説明及び図面に関連する請求項から明らかである。以下に、本発明を好ましい実施形態に基づき更に詳しく説明する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】2つの同心的な環状通路を備えた調整器ケーシングを有する流量調整器を部分的に縦断して示した斜視図であって、前記環状通路のうちの一方の調整器環状通路には、弾性材料から製造され且つ環状に形成された絞り体が設けられているのに対して、外側に位置するように配置され且つ流入弁に対応する弁環状通路には、弾性材料から製造され、やはり環状に形成された弁体が収容されている。
図2図1に示した流量調整器の流入側を、斜め上から見た斜視図である。
図3図1及び図2に示した流量調整器の調整器ケーシングの流入側を上から見た図である。
図4図1図3に示した流量調整器を、図3に示した断面IV−IVに沿って縦断して示した図である。
図5図1図4に示した流量調整器の流出側を上から見た図である。
図6図1図5に示した流量調整器の流入側を斜め上から見た斜視図であって、この場合、調整器環状通路内に配置された絞り体と、弁環状通路内に設けられた弁体とは、ここでは十字形に形成された保持部材により、浮き上がらないように調整器ケーシング内で保持されており、保持部材は、調整器ケーシングの流入側に脱着可能に、好ましくは取り外せるように係止可能に、保持されている。
図7図6に示した流量調整器の構成の流入側を上から見た図である。
図8図6及び図7に示した流量調整器の構成を、図7に示した断面VIII−VIIIに沿って縦断して示した図である。
図9図6図8に示した流量調整器の構成の調整器ケーシングの流出側を上から見た図である。
図10図1図9に示した流量調整器と比較可能に構成された流量調整器を部分的に縦断して示した斜視図であって、この場合、調整器環状通路内に配置された絞り体は、該絞り体自体と、内側に位置する成形された通路壁との間に、制御ギャップを画成している。
図11図10に示した流量調整器の流入側を、やや斜め上から見た斜視図である。
図12図10及び図11に示した流量調整器の流入側を上から見た図である。
図13図10図12に示した流量調整器を、図12に示した断面XIII−XIIIに沿って縦断して示した図である。
図14図10図13に示した流量調整器の調整器ケーシングの流出側を上から見た図である。
図15図1図14に示した流量調整器の通流能力を、流入する媒体の圧力に関連して示した性能線図である。
【0016】
図1図9及び図10図14には、流量調整器の異なる構成1,110が示されている。流量調整器1,110は、調整器ケーシング2を有しており、この調整器ケーシング2は、衛生用の水道管、例えば衛生用の蛇口の吐水口に挿入可能である。流量調整器1,110の調整器ケーシング2は、調整器環状通路3を有していて、この調整器環状通路3内には、弾性材料から成る環状の絞り体4が設けられている。弾性的な絞り体4は、この絞り体4自体と、調整成形部5を有している通路壁との間に、制御ギャップ6を画成しており、この制御ギャップ6の通流横断面は、通流時に形成される圧力差により変形する絞り体4に基づいて可変である。圧力が増大するにつれて、弾性材料から成る絞り体4は調整成形部5に向かって変形するので、制御ギャップ6の通流横断面は徐々に狭められ、これにより、圧力とは関係無く、最大通流能力が所定の設定値に制限されている。
【0017】
図1図9に示した流量調整器1では、調整成形部5を有しており且つ制御ギャップ6を画成している通路壁が、調整器環状通路3の外側の通路壁であるのに対して、図10図14に示した流量調整器110では、調整成形部5は、内側の通路壁に設けられている。流量調整器1の絞り体4と、成形された通路壁との間に設けられた通路ギャップ6は、比較的大きな内法の開口横断面を有しているので、流量調整器1は、好ましくは比較的高い最大通流能力を要する用途のために設定されている。
【0018】
流量調整器1,110は、弁体8を有する弁7を備えており、弁体8は、通流する媒体の圧力により、開放位置から戻し力に抗して閉鎖位置へと移動し、閉鎖位置において弁体8は少なくとも1つの弁開口を閉鎖する。
【0019】
この場合、環状に形成され且つ弾性材料から製造された弁体8は、調整器ケーシング2の弁環状通路9内に設けられている。弁環状通路9は、その通路底部に少なくとも1つの弁開口を有している。流入する媒体の圧力により、弾性的な弁体8は変形可能になっており、これにより弁体8は使用された弾性材料の固有弾性の戻し力に抗して、開放位置から閉鎖位置に移動する。
【0020】
弁7は、低い接続圧において付加的な液体通過を生ぜしめるという役割を有しており、この付加的な液体通過は、流入する媒体の圧力が徐々に上昇した場合に、通流能力が目標とする最大値まで急速に高められることを保証する。弁環状通路9に、調整器環状通路3に適合された環状の形状が付与されていることにより、弁7の少なくとも1つの弁開口は、比較的大きな開口横断面を有することができる。弁体8は、環状に形成されていて、弾性材料から廉価に製造可能である。弁体8は、例えば軸方向に移動するように案内される必要はなく、流入する媒体の圧力によって単に半径方向にのみ変形可能であればよいので、弁7は故障しにくく且つ保守を要しない。弁体8は、例えば軸方向に移動するように案内される必要はなく、しかも弁環状通路9に、調整器環状通路3に適合された環状の形状が付与されていることにより、弁開口を、省スペースであるにもかかわらず、比較的大きな内法の開口面積を備えて形成することができるので、図示の流量調整器1,110は、高性能且つコンパクトに構成され得る。
【0021】
図1図14から、弁環状通路9と調整器環状通路3とは、調整器ケーシング2のケーシング長手方向軸線に対して、互いに同心的に配置されていることが判る。この場合、流量調整器1,110の弁環状通路9は、調整器環状通路3に対して外側に位置するように配置されている。流量調整器1,110の構成において、調整成形部5は、通路壁の、通流方向に方向付けられた凹状成形部10と、凸状成形部11とにより形成されている。
【0022】
絞り体4と弁体8の両方が、如何なる場合も脱落しないようにするために、絞り体4は調整器環状通路3内に、且つ弁体8は弁環状通路9内に、軸方向両側で保持されていると有利である。図5図9及び図14に示した、流量調整器1,110の流出側を上から見た図から、環状通路3,9はそれぞれ、半径方向ウェブ12若しくは13により中断された1つの環状開口を形成していることが明らかである。絞り体4と弁体8とを、調整器ケーシング2の流入側においても、意図しない浮上が生じないように保持するため、且つ絞り体4及び弁体8の、対応する環状通路3,9内での配置を保証するために、本発明では上から見て十字形の保持部材14が設けられていて、この保持部材14は、調整器ケーシング2の、1平面内に配置された流入面に当接していて、環状通路3,9に被さるように係合しており、これにより、絞り体4と弁体8とは、対応する環状通路3,9内に保持されることになる。図8に示した縦断面図から明らかなように、保持部材14は、調整器ケーシング2の流入側に取り外せるように結合可能に、好ましくは係止可能に保持されている。保持部材14は更に、突出した結合ピン15を有していて、この結合ピン15は、調整器ケーシング2の流入側の中央の結合開口16に、取り外し可能に挿入することができる。
【0023】
図示の流量調整器1,110は、省スペース且つコンパクトに構成され得るので、エアレータの流入側に取り外し可能に取り付けることもでき、これにより、エアレータの組込み高さに、エアレータが衛生用の蛇口の吐水口に最早容易には挿入されなくなるほどの影響を及ぼすことはない。
【0024】
図15に示した性能線図から明らかなように、図示の流量調整器1,110は、流入する流体の圧力に関して最適化された能力特性という点において優れている。この場合、符号bは、調整器環状通路3の領域を単位時間当たりに通流する通流体積、即ち流量を、流入する流体の圧力に関連して表している。これに対して符号aで示した曲線は、弁7を通流可能な付加的な体積を表している。この場合、流入する流体の特定の圧力から、弾性的な弁体8が弁7の少なくとも1つの弁開口を密閉し、その結果、この特定の圧力以降は、弁7を通流する更なる流体体積は想定されていない、ということも明らかになる。曲線a及びbの相乗作用に基づいて、符号cで示した流量調整器1,110の最適化された性能曲線が得られる。つまり、この性能曲線cは、流入する流体の比較的低い圧力において既に、目標とする通流能力の最大値に到達することができる。
【0025】
弁7を通流する付加的な体積を表す曲線a′が、単位時間当たりに調整器環状通路3の領域を通流する通流体積の曲線bよりも急な上り勾配を有することは、十分に可能であり、このことは、更に急勾配な曲線c′と、低圧領域においてオーバシュートの曲線形状とを生ぜしめる。但し、低圧領域におけるオーバシュートの曲線形状は、弁通路が閉鎖されて曲線a′が降下すると、圧力が上昇しても、流量調整器の目標とする最大通流能力にまで再び降下する。このように、低圧領域における特性曲線を、まず最初に流量調整器の最大通流能力をも超えて上昇させるために、弁7は、例えばその弁開口の相応に大きな内法の横断面に基づき、適宜構成されていてよい。
【符号の説明】
【0026】
1 流量調整器(図1図9)、 110 流量調整器(図10図14)、 2 調整器ケーシング、 3 調整器環状通路、 4 絞り体、 5 調整成形部、 6 制御ギャップ、 7 弁、 8 弁体、 9 弁環状通路、 10 (調整成形部5の)凹状成形部、 11 (調整成形部5の)凸状成形部、 12 (調整器環状通路3の領域の)ウェブ、 13 (弁環状通路9の領域の)ウェブ、 14 保持部材、 15 (保持部材14の)結合ピン、 16 (調整器ケーシング2の)結合開口
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15