(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6084233
(24)【登録日】2017年2月3日
(45)【発行日】2017年2月22日
(54)【発明の名称】ポリヒドロキシ硬化性フルオロエラストマー組成物
(51)【国際特許分類】
C08L 27/12 20060101AFI20170213BHJP
C08K 5/5425 20060101ALI20170213BHJP
C08L 83/07 20060101ALI20170213BHJP
C09K 3/10 20060101ALI20170213BHJP
【FI】
C08L27/12
C08K5/5425
C08L83/07
C09K3/10 M
C09K3/10 G
【請求項の数】11
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2014-547450(P2014-547450)
(86)(22)【出願日】2012年12月13日
(65)【公表番号】特表2015-505894(P2015-505894A)
(43)【公表日】2015年2月26日
(86)【国際出願番号】US2012069597
(87)【国際公開番号】WO2013090642
(87)【国際公開日】20130620
【審査請求日】2015年12月14日
(31)【優先権主張番号】61/570,873
(32)【優先日】2011年12月15日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】390023674
【氏名又は名称】イー・アイ・デュポン・ドウ・ヌムール・アンド・カンパニー
【氏名又は名称原語表記】E.I.DU PONT DE NEMOURS AND COMPANY
(74)【代理人】
【識別番号】110001243
【氏名又は名称】特許業務法人 谷・阿部特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ドナルド エフ.ライオンズ
(72)【発明者】
【氏名】ピーター エー.モーケン
【審査官】
岡谷 祐哉
(56)【参考文献】
【文献】
特表2005−528515(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2007/0013101(US,A1)
【文献】
特表2005−528516(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2006/0041064(US,A1)
【文献】
特表2008−505205(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2007/0197726(US,A1)
【文献】
特開平01−198646(JP,A)
【文献】
米国特許第04942202(US,A)
【文献】
特開平09−268245(JP,A)
【文献】
特開平10−101879(JP,A)
【文献】
特表2004−514776(JP,A)
【文献】
国際公開第02/044263(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08J 3/00− 3/28
C08J 99/00
C08K 3/00− 13/08
C08L 1/00−101/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
A)ポリヒドロキシ硬化性フルオロエラストマー;
B)ポリヒドロキシ硬化剤;
C)硬化促進剤;および
D)
(a)式(Ra)s(RbO)tSiXw(式中、それぞれのRaは、C1〜C7アルキル基、または、アリール基、ハロゲン、エステル、アルコキシから選択された置換基で置換されたアルキル基、または、アルキル基、エステル、アルコキシ、もしくはそれらの組み合わせで置換されたアリール基を独立して表し;それぞれのRbは、アルキル基を独立して表し;Xは、ビニルまたはアリル基であり;tおよびwは、少なくとも1の整数を表し、s+t+wの合計は4である)または
(b)下記式を有するポリシロキサン
【化1】
(式中、R1、R2、R3、R6、R7、R8およびR9はそれぞれ、アルコキシ基;アリール基、ハロゲン、エステル、もしくはアルコキシで任意選択的に置換されたアルキル;または、アルキル基、エステル、もしくはアルコキシで任意選択的に置換されたアリール基、ビニル基、アリル基を独立して表し、R4およびR5はそれぞれ、そのそれぞれが任意選択的に置換されていてもよいアルコキシ基、アルキルまたはアリール基を独立して表し、R10は、ビニルまたはアリル基であり、xは、0〜150の値を表し、yは、0〜150の値を表し、但し、x=0である場合、R1、R2、R3、R6、R7、R8およびR9の少なくとも1個は、ビニルまたはアリル基を表すことを条件とする)から選択され、フルオロエラストマー100重量部当たり0.1〜4重量部の不飽和金属化合物加工助剤
を含
み、
前記不飽和金属化合物助剤以外のシリコーン化合物を含まない、硬化性フルオロエラストマー組成物。
【請求項2】
前記不飽和金属化合物加工助剤が、1,5−ジビニル−3,3−ジフェニル−1,1,5,5−テトラメチルトリシロキサンである、請求項1に記載の硬化性フルオロエラストマー組成物。
【請求項3】
前記不飽和金属化合物加工助剤が、1,3−ジビニル−1,3−ジフェニル−1,3−ジメチルジシロキサンである、請求項1に記載の硬化性フルオロエラストマー組成物。
【請求項4】
前記不飽和金属化合物加工助剤が、1,5−ジビニルヘキサメチルトリシロキサンである、請求項1に記載の硬化性フルオロエラストマー組成物。
【請求項5】
前記不飽和金属化合物加工助剤が、1,3−ジビニルテトラフェニルジシロキサンである、請求項1に記載の硬化性フルオロエラストマー組成物。
【請求項6】
前記不飽和金属化合物加工助剤が、ビニル末端ポリジメチルシロキサンである、請求項1に記載の硬化性フルオロエラストマー組成物。
【請求項7】
前記不飽和金属化合物加工助剤が、ビニル末端ジフェニルシロキサン−ジメチルシロキサンコポリマーである、請求項1に記載の硬化性フルオロエラストマー組成物。
【請求項8】
前記不飽和金属化合物加工助剤が、ビニルメチルシロキサンホモポリマーである、請求項1に記載の硬化性フルオロエラストマー組成物。
【請求項9】
前記不飽和金属化合物加工助剤が、ビニルジフェニルエトキシシランである、請求項1に記載の硬化性フルオロエラストマー組成物。
【請求項10】
前記不飽和金属化合物加工助剤が、アリルトリメトキシシランである、請求項1に記載の硬化性フルオロエラストマー組成物。
【請求項11】
前記不飽和金属化合物加工助剤が、ビニルトリフェノキシシランである、請求項1に記載の硬化性フルオロエラストマー組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、i)フルオロエラストマー、ii)ポリヒドロキシ硬化剤、iii)硬化促進剤およびiv)不飽和金属化合物加工助剤を含む、ポリヒドロキシ硬化性フルオロエラストマー組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
優れた耐熱性、耐油性および耐薬品性を有するフルオロエラストマーは、シーリング材料、容器およびホースに広く用いられている。フルオロエラストマーの例には、フッ化ビニリデン(VF
2)の単位と、少なくとも1種の他の共重合性フッ素含有モノマー、例えば、ヘキサフルオロプロピレン(HFP)、テトラフルオロエチレン(TFE)、クロロトリフルオロエチレン(CTFE)、フッ化ビニル(VF)、およびパーフルオロ(アルキルビニルエーテル)(PAVE)などのフルオロビニルエーテルの単位とを含むコポリマーが含まれる。PAVEの具体的な例には、パーフルオロ(メチルビニルエーテル)、パーフルオロ(エチルビニルエーテル)およびパーフルオロ(プロピルビニルエーテル)が含まれる。
【0003】
引張強度、伸び、および圧縮永久歪みなどの物理的特性を完全に発現させるために、エラストマーは、硬化、すなわち、加硫または架橋されなければならない。フルオロエラストマーの場合、これは一般に、未硬化ポリマー(すなわち、フルオロエラストマーゴム)を多官能性硬化剤と混合し、得られた混合物を加熱し、それにより、硬化剤と、ポリマー骨格または側鎖に沿った活性部位との化学反応を促進することによって行われる。これらの化学反応の結果として生じた鎖間結合により、三次元網目構造を有する架橋ポリマー組成物が形成される。一般に用いられるフルオロエラストマー用硬化剤としては、二官能性求核反応物質、例えば、ポリヒドロシ化合物が挙げられる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
硬化前に、フルオロエラストマーは、通常は他の成分(例えば、フィラー、着色剤など)と配合され、シール、O−リング、ガスケットおよびホースなどの様々な物品に成形(例えば、塑造または押出し)される。フルオロエラストマー組成物は、容易に混合または成形するためには高すぎるムーニー粘度を有し得る。したがって、フルオロエラストマー組成物のムーニー粘度を低下させる手段を有することが望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0005】
一態様において、本発明は、
A)ポリヒドロキシ硬化性フルオロエラストマー;
B)ポリヒドロキシ硬化剤;
C)硬化促進剤;および
D)ケイ素元素に結合した少なくとも1個のビニルまたはアリル基を有するシロキサンを含む不飽和金属化合物加工助剤
を含む、硬化性フルオロエラストマー組成物を提供する。
【発明を実施するための形態】
【0006】
本発明は、不飽和金属化合物加工助剤を含有するポリヒドロキシ硬化性フルオロエラストマー組成物に関する。このようなフルオロエラストマー組成物は、この加工助剤が存在しない類似の組成物よりも低いムーニー粘度を有する。
【0007】
本発明における使用に適しているフルオロエラストマーは、ポリヒドロキシ硬化性であるものである。「ポリヒドロキシ硬化性」によって、ビスフェノールAFなどのポリヒドロキシ硬化剤と架橋することが知られているフルオロエラストマーが意味される。このようなフルオロエラストマーには、エラストマーポリマー主鎖に沿って複数の炭素−炭素二重結合を有するもの、およびまた容易に脱フッ化水素処理され得る部位を含むフルオロエラストマーが含まれる。後者のフルオロエラストマーには、限定されるものではないが、フッ化ビニリデン(VF
2)とヘキサフルオロプロピレン(HFP)との隣接共重合単位を有するもの、およびVF
2(またはテトラフルオロエチレン)と、酸性水素原子を有するフッ素化コモノマー(2−ヒドロペンタフルオロプロピレン;1−ヒドロペンタフルオロプロピレン;トリフルオロエチレン;2,3,3,3−テトラフルオロプロペン;または3,3,3−トリフルオロプロペンなど)との隣接共重合単位を有するフルオロエラストマーが含まれる。好ましいフルオロエラストマーには、i)フッ化ビニリデンと、ヘキサフルオロプロピレンおよび任意選択的に、テトラフルオロエチレン(TFE);ii)フッ化ビニリデンとパーフルオロ(メチルビニルエーテル)などのパーフルオロ(アルキルビニルエーテル)、2−ヒドロペンタフルオロプロピレンおよび任意選択的に、テトラフルオロエチレン;iii)テトラフルオロエチレンと、プロピレンおよび3,3,3−トリフルオロプロペン;iv)テトラフルオロエチレン、パーフルオロ(メチルビニルエーテル)およびヘキサフルオロ−2−(ペンタフルオロフェノキシ)−1−(トリフルオロビニルオキシ)プロパン、ならびにv)エチレンと、テトラフルオロエチレン、パーフルオロ(メチルビニルエーテル)および3,3,3−トリフルオロプロピレンとのコポリマーが含まれる。
【0008】
フルオロエラストマーに加えて、本発明の硬化性組成物は、ポリヒドロキシ硬化剤および加硫(または硬化)促進剤を意味する、ポリヒドロキシ硬化系を含む。
【0009】
硬化性組成物は、フルオロエラストマー100重量部当たり0.4〜4重量部(好ましくは1〜2.5重量部)、すなわち、0.4〜4phr(好ましくは1〜2.5phr)のポリヒドロキシ硬化剤(またはその誘導体)を含む。典型的なポリヒドロキシ架橋剤には、ジ−、トリ−、およびテトラヒドロキシベンゼン類、ナフタレン類、およびアントラセン類、ならびに式
【0011】
(ここで、Aは、1〜13個の炭素原子の二官能性の脂肪族、脂環式もしくは芳香族基、またはチオ、オキシ、カルボニル、スルフィニルもしくはスルホニル基であり;Aは、少なくとも1個の塩素またはフッ素原子で任意選択的に置換されていてもよく;xは、0または1であり;nは、1または2であり;このポリヒドロキシル化合物の任意の芳香族環は、少なくとも1個の塩素もしくはフッ素原子、アミノ基、−CHO基、またはカルボキシルもしくはアシル基で任意選択的に置換されていてもよい)
のビスフェノール類が含まれる。好ましいポリヒドロキシ化合物には、ヘキサフルオロイソプロピリデン−ビス(4−ヒドロキシ−ベンゼン)(すなわち、ビスフェノールAFまたはBPAF);4,4’−イソプロピリデンジフェノール(すなわち、ビスフェノールA);4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホン;およびジアミノビスフェノールAFが含まれる。上に示されたビスフェノールの式を参照すると、Aがアルキレンである場合、それは、例えば、メチレン、エチレン、クロロエチレン、フルオロエチレン、ジフルオロエチレン、プロピリデン、イソプロピリデン、トリブチリデン、ヘプタクロロブチリデン、ヘプタフルオロブチリデン、ペンチリデン、ヘキシリデン、および1,1−シクロヘキシリデンであり得る。Aがシクロアルキレン基である場合、それは、例えば、1,4−シクロヘキシレン、2−クロロ−1,4−シクロヘキシレン、シクロペンチレン、または2−フルオロ−1,4−シクロヘキシレンであり得る。さらに、Aは、m−フェニレン、p−フェニレン、o−フェニレン、メチルフェニレン、ジメチルフェニレン、1,4−ネフチレン、3−フルオロ−1,4−ナフチレン、および2,6−ナフチレンなどのアリーレン基であり得る。式
【0013】
(ここで、Rは、H、または1〜4個の炭素原子を有するアルキル基もしくは6〜10個の炭素原子を有するアリール基であり;R’は、1〜4個の炭素原子を有するアルキル基である)のポリヒドロキシフェノールも、有効な架橋剤として作用する。このような化合物の例には、ヒドロキノン、カテコール、レゾルシノール、2−メチルレゾルシノール、5−メチル−レゾルシノール、2−メチルヒドロキノン、2,5−ジメチルヒドロキノン、2−t−ブチル−ヒドロキノン;ならびに1,5−ジヒドロキシナフタレンおよび2,6−ジヒドロキシナフタレンのなどの化合物が含まれる。
【0014】
さらなるポリヒドロキシ硬化剤には、ビスフェノールアニオンのアルカリ金属塩、ビスフェノールアニオンの四級アンモニウム塩、ビスフェノールアニオンの三級スルホニウム塩およびビスフェノールアニオンの四級ホスホニウム塩が含まれる。例えば、ビスフェノールAおよびビスフェノールAFの塩。具体的な例には、ビスフェノールAFの二ナトリウム塩、ビスフェノールAFの二カリウム塩、ビスフェノールAFの一ナトリウム一カリウム塩、およびビスフェノールAFのベンジルトリフェニルホスホニウム塩が含まれる。
【0015】
ビスフェノールアニオンの四級アンモニウムおよびホスホニウム塩は、米国特許第4,957,975号明細書および同第5,648,429号明細書で検討されている。式R
1R
2R
3R
4N
+(式中、R
1〜R
4がC
1〜C
8アルキル基であり、R
1〜R
4の少なくとも3個がC
3またはC
4アルキル基である)の四級アンモニウムイオンとのビスフェノールAFの塩(1:1モル比)が好ましい。これらの好ましい組成物の具体的な例には、テトラプロピルアンモニウム−、メチルトリブチルアンモニウム−およびテトラブチルアンモニウムビスフェノールAFの1:1モル比の塩が含まれる。このような塩は、様々な方法によって作製され得る。例えば、ビスフェノールAFのメタノール溶液を、四級アンモニウム塩のメタノール溶液と混合することができ、次いで、pHを、ナトリウムメトキシドで上昇させて、無機ナトリウム塩を沈殿させる。ろ過後、メタノールを蒸発させることによって溶液からテトラアルキルアンモニウム/BPAF塩を単離することができる。あるいは、テトラアルキルアンモニウムヒドロキシドのメタノール溶液を四級アンモニウム塩の溶液の代わりに用いて、無機塩の沈殿および溶液の蒸発前のその除去の必要性をなくすことができる。
【0016】
さらに、モノ−またはジエステルなどの誘導体化ポリヒドロキシ化合物、およびトリメチルシリルエーテルが、有用な架橋剤である。このような組成物の例には、限定されるものではないが、レゾルシノールモノベンゾエート、ビスフェノールAFのジアセテート、スルホニルジフェノールのジアセテート、およびヒドロキノンのジアセテートが含まれる。
【0017】
硬化性フルオロエラストマー組成物中で用いられてもよい加硫促進剤(硬化促進剤とも呼ばれる)には、[(C
6H
5)
2S
+(C
6H
13)][Cl]
−および[(C
6H
13)
2S(C
6H
5)]
+[CH
3CO
2]
−などの三級スルホニウム塩、ならびに式R
5R
6R
7R
8Y
+X
−(ここで、Yは、リン、窒素、ヒ素、またはアンチモンであり;R
5、R
6、R
7、およびR
8は、個々にC
1〜C
20アルキル、アリール、アラルキル、アルケニル、ならびにそれらの塩素、フッ素、臭素、シアノ、−OR、および−COOR置換類似体(Rは、C
1〜C
20アルキル、アリール、アラルキル、アルケニルである)であり、Xは、ハロゲン化物、水酸化物、硫酸塩、亜硫酸塩、炭酸塩、ペンタクロロチオフェノラート、テトラフルオロボレート、ヘキサフルオロシリケート、ヘキサフルオロホスフェート、ジメチルホスフェート、ならびにC
1〜C
20アルキル、アリール、アラルキル、およびアルケニルのカルボキシレートおよびジカルボキシレートである)の四級アンモニウム、ホスホニウム、アルソニウム、およびスチボニウム塩が含まれる。ベンジルトリフェニルホスホニウムクロライド、ベンジルトリフェニルホスホニウムブロミド、テトラブチルアンモニウム硫酸水素塩、テトラブチルアンモニウムヒドロキシド、テトラプロピルアンモニウムヒドロキシド、テトラブチルアンモニウムブロミド、トリブチルアリルホスホニウムクロライド、トリブチル−2−メトキシプロピルホスホニウムクロライド、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ−7−エン、およびベンジルジフェニル(ジメチルアミノ)ホスホニウムクロライドが特に好ましい。他の有用な促進剤には、メチルトリオクチルアンモニウムクロライド、メチルトリブチルアンモニウムクロライド、テトラプロピルアンモニウムクロライド、ベンジルトリオクチルホスホニウムブロミド、ベンジルトリオクチルホスホニウムクロライド、メチルトリオクチルホスホニウムアセテート、テトラオクチルホスホニウムブロミド、メチルトリフェニルアルソニウムテトラフルオロボレート、テトラフェニルスチボニウムブロミド、4−クロロベンジルトリフェニルホスホニウムクロライド、8−ベンジル−1,8−ジアザビシクロ(5.4.0)−7−ウンデセノニウムクロライド、ジフェニルメチルトリフェニルホスホニウムクロライド、アリルトリフェニルホスホニウムクロライド、テトラブチルホスホニウムブロミド、m−トリフルオロメチルベンジルトリオクチルホスホニウムクロライド、ならびに米国特許第5,591,804号明細書;同第4,912,171号明細書;同第4,882,390号明細書;同第4,259,463号明細書;同第4,250,278号明細書および同第3,876,654号明細書に開示された他の四級化合物が含まれる。用いられる促進剤の量は、フルオロエラストマー100重量部当たり0.05〜2重量部(0.05〜2phr)である。好ましくは、フルオロエラストマー100部当たり0.1〜1.0部の促進剤が用いられる。
【0018】
本発明の硬化性組成物は、フルオロエラストマー100重量部当たり0.1〜4(好ましくは0.3〜2)重量部の少なくとも1種の不飽和金属化合物加工助剤も含有する。
【0019】
加工助剤は、ケイ素原子に結合したビニル基CR
1=CR
2R
3またはアリル基CR
1R
2CR
3=CR
4R
5と定義される少なくとも1個の不飽和基Xを有するシロキサンであり、ここで、R
1〜R
5は、H、F、アルキル、アリール、ヘテロ環、またはパーフルオロアルキル基からなる群から独立して選択される。R
1〜R
5基は、CF
3(CF
2)
5CH
2CH
2−などの混合されたアルキルおよびパーフルオロアルキル基であってもよい。R
1〜R
5基は、HまたはF、最も好ましくはHであることが好ましい。不飽和X基上の過剰の非水素R基の導入は、立体障害のために性能に対して不利であり得る。しかしながら、1、2または3個の非水素基の導入は、一部の場合に性能を改善し得る。好ましくは、ビニルまたはアリル基は、−OSiX(ここで、X=ビニルまたはアリルである)であり、それにより、ビニルまたはアリル基は、ケイ素原子に結合し、これは酸素原子にさらに結合する。シロキサンは、単純な低分子量有機化合物であってもよいか、または例えば、線状、分枝状もしくは環状であってもよいポリシロキサンを含むポリマー化合物であってもよい。
【0020】
低分子量シロキサンの例としては、例えば、式(R
a)
s(R
bO)
tSiX
w(式中、それぞれのR
aは、例えば、メチルもしくはエチルまたは別の低級アルキル(C
1〜C
7アルキル基)、あるいは、例えば、アリール基、フッ素などのハロゲン化物、エステル、アルコキシなどの置換基で置換されたアルキル基、あるいは、例えば、アルキル基、エステル、アルコキシなどで任意選択的に置換されたアリール基を独立して表し;それぞれのR
bは、アルキル基、好ましくは任意選択的に置換されていてもよい低級アルキル基、またはアリール基を独立して表し、Xは、ビニルまたはアリル基であり、tおよびwは、少なくとも1の整数を表し、s+t+wの合計は4である)に相当するアルコキシシランが挙げられる。上記式によるシロキサンの例としては、ビニルジフェニルエトキシシラン(CAS番号17933−85−6)、アリルトリメトキシシラン(CAS番号2551−83−9)、およびビニルトリフェノキシシラン(CAS番号18666−65−4)が挙げられる。
【0021】
シロキサン加工助剤はまた、ポリシロキシ主鎖を含む、ポリシロキサン(オリゴマーまたはポリマー)であってもよい。このようなポリマーまたはオリゴマーは、1個以上のアリルもしくはビニルシロキサン官能基を有する基で終結されていてもよいか、および/または主鎖に沿って分布したアリルもしくはビニルシロキサン基を有していてもよい。
【0022】
例えば、本発明とともに使用するためのポリシロキサンとしては、式:
【0024】
(式中、R
1、R
2、R
3、R
6、R
7、R
8およびR
9はそれぞれ、アルコキシ基、例えば、アリール基、フッ素などのハロゲン化物、エステル、アルコキシなどで任意選択的に置換されたアルキル、または、例えば、アルキル基、エステル、アルコキシなどで任意選択的に置換されたアリール基、ビニル基、アリル基を独立して表し、R
4およびR
5はそれぞれ、そのそれぞれが任意選択的に置換されていてもよいアルコキシ基、アルキルまたはアリール基を独立して表し、R
10は、ビニルまたはアリル基であり、xは、0〜150の値を表し、yは、0〜150の値を表し、但し、x=0である場合、R
1、R
2、R
3、R
6、R
7、R
8およびR
9の少なくとも1個は、ビニルまたはアリル基を表すことを条件とする)に相当するものが挙げられる。ポリシロキサンは、2種以上の異なる種類の−Si(R
4)(R
5)O−繰返し単位を含むコポリマーまたはターポリマーであってもよい。それぞれのポリシロキサン分子中のビニルおよびアリル基の数の合計対ポリシロキサン分子中のケイ素原子の数の比は、0.01〜3、好ましくは0.05〜2、より好ましくは0.1〜1である。
【0025】
ポリシロキサンの具体例としては、Gelest Corp.,Morrisville,PAから入手できる、1,5−ジビニル−3,3−ジフェニル−1,1,5,5−テトラメチルトリシロキサン(CAS番号18586−22−6)、1,3−ジビニル−1,3−ジフェニル−1,3−ジメチルジシロキサン(CAS番号2627−97−6)、1,5−ジビニルヘキサメチルトリシロキサン(CAS番号136777−27−0)、1,3−ジビニルテトラフェニルジシロキサン(CAS番号18769−05−6)、ビニル末端ポリジメチルシロキサン、ビニル末端ジフェニルシロキサン−ジメチルシロキサンコポリマー、およびビニルメチルシロキサンホモポリマーが挙げられる。
【0026】
用いることができるさらなるシロキサンとしては、ケイ素原子に結合したビニルまたはアリル基を有する環状シロキサンが挙げられる。
【0027】
理論に拘束されることなく、粘度の減少は、カルボン酸もしくはスルホン酸またはそれらの塩などの極性ポリマー末端基と、不飽和金属化合物加工助剤とが会合し、より弱いイオン性の鎖間会合、したがってより低い粘度を有する種を形成することによって引き起こされると考えられる。
【0028】
エラストマー組成物中に一般に用いられる他の成分(例えば、フィラー、着色剤、加工助剤、酸受容体など)も、本発明の硬化性組成物中に含まれてもよい。
【0029】
フルオロエラストマー、ポリヒドロキシ硬化剤、硬化促進剤、不飽和金属化合物加工助剤および任意の他の成分は、一般に内部ミキサーまたはゴムミルによって硬化性組成物中に取り込まれる。次いで、得られた組成物は、フルオロゴム物品を形成するために成形(例えば、塑造または押出し)および硬化され得る。硬化は、典型的には約150℃〜200℃で1〜60分間行われる。適切な加熱および硬化手段を備えた従来のゴム硬化プレス、型、押出機などが使用され得る。また、最適物理的特性および寸法安定性のために、塑造または押出しされたフルオロゴム物品が、オーブンなどの中で、一般には空気雰囲気で、典型的には約180℃〜275℃でさらに約1〜48時間の期間加熱される後硬化操作を行うことが好ましい。
【実施例】
【0030】
試験方法
ムーニー粘度は、ASTM D−1646(大形ロータ、条件ML 1+10分、121℃で測定)に従って決定した。
硬化特性は、以下の条件下でMonsanto Moving Die Rheometer(MDR2000)装置を用いて測定した。
移動ダイ周波数:1.66Hz
振動振幅:0.5
温度:177℃(特に断りのない限り)
試験継続時間:24分
【0031】
以下の硬化パラメータを記録した。
M
H:最大トルクレベル(dN・m単位)
M
L:最低トルクレベル(dN・m単位)
t
s2:M
Lを超えて2単位上昇までの分
t50:最大トルクの50%までの分
t90:最大トルクの90%までの分
【0032】
引張特性は、ASTM D412に従って決定した。
【0033】
耐圧縮永久歪み性は、ASTM D395に従って測定した。
【0034】
本発明は、限定されるものではないが、以下の実施例によってさらに例証される。
【0035】
実施例で用いたフルオロエラストマー(FKM1)は、DuPontから入手できる、Viton(登録商標)VTR−7241(フッ化ビニリデン、ヘキサフルオロプロピレンおよびテトラフルオロエチレンのコポリマー)であった。
【0036】
実施例1および比較例A
実施例1および比較例Aの硬化性組成物は、2ロールミルで成分を配合することによって作製した。配合は、表Iに示す。組成物のムーニー粘度も、表Iに示す。ムーニー粘度は、本発明のシロキサンによって9.9%減少した。
【0037】
【表1】