(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6084237
(24)【登録日】2017年2月3日
(45)【発行日】2017年2月22日
(54)【発明の名称】ポート領域に改善された強度を持つ平板熱交換器
(51)【国際特許分類】
F28F 3/08 20060101AFI20170213BHJP
F28D 9/02 20060101ALI20170213BHJP
【FI】
F28F3/08 311
F28D9/02
【請求項の数】5
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2014-556515(P2014-556515)
(86)(22)【出願日】2013年2月6日
(65)【公表番号】特表2015-506458(P2015-506458A)
(43)【公表日】2015年3月2日
(86)【国際出願番号】SE2013050098
(87)【国際公開番号】WO2013122529
(87)【国際公開日】20130822
【審査請求日】2014年8月6日
(31)【優先権主張番号】1250120-1
(32)【優先日】2012年2月14日
(33)【優先権主張国】SE
(73)【特許権者】
【識別番号】509005513
【氏名又は名称】アルファ−ラヴァル・コーポレート・アーベー
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100064908
【弁理士】
【氏名又は名称】志賀 正武
(74)【代理人】
【識別番号】100089037
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邊 隆
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(72)【発明者】
【氏名】ロジャー・ベイダー
(72)【発明者】
【氏名】ラース・エイナー・グスタフソン
(72)【発明者】
【氏名】イェリー・フーケヴィク
【審査官】
横溝 顕範
(56)【参考文献】
【文献】
特表2005−524042(JP,A)
【文献】
特開2010−002123(JP,A)
【文献】
特表2008−542029(JP,A)
【文献】
特開2000−266479(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2010/0006275(US,A1)
【文献】
特表平01−503558(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F28F 3/08
F28D 9/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
主拡張板(p)と平行にそれぞれ延び、複数の伝熱板(2)および少なくとも1つのアダプタ板(3)を含む、複数の平板を含む平板熱交換器であり、
前記伝熱板(2)は、互いのそばに設けられ、第1の媒体のための第1の平板空間(6)および第2の媒体のための第2の平板空間(7)を持つ平板パッケージを形成し、
前記伝熱板のそれぞれは、前記平板パッケージを通って延びるポートを形成する4つのポート穴(8)を有し、前記伝熱板(2)は、前記平板パッケージの片側に最外部伝熱板(2’)および前記平板パッケージのもう一方の側に最外部伝熱板(2’’)を含み、
前記平板パッケージ中の前記平板空間(6、7)の2つは、前記平板パッケージのそれぞれの側にそれぞれの最外部平板空間を形成し、それらは、前記最外部伝熱板(2’、2’’)のそれぞれの1つによって外向きに区切られ、
前記アダプタ板(3)は、前記最外部伝熱板(2’、2’’)のそれぞれの外側に設けられる、平板熱交換器であって、
距離板(13)が、前記最外部伝熱板(2’)と該前記最外部伝熱板(2’)の外側の前記アダプタ板(3)との間、及び前記最外部伝熱板(2’’)と該前記最外部伝熱板(2’’)の外側の前記アダプタ板(3)との間に配置され、前記距離板(13)が、前記最外部伝熱板(2’、2’’)および前記アダプタ板(3)のそれぞれのポート穴(8)のそれぞれと同心円をなす、少なくとも2つのポート穴(14)を含むこと、ならびに前記距離板(13)の前記ポート穴(14)が、前記最外部伝熱板の前記ポート穴(8)および前記アダプタ板(3)の前記ポート穴(8)よりもそれぞれ大きいことを特徴とする、平板熱交換器。
【請求項2】
前記平板は、互いに永続的に接合される、請求項1に記載の平板熱交換器。
【請求項3】
前記距離板(13)のサイズおよび形状は、前記アダプタ板(3)のサイズおよび形状と同じである、請求項1または2に記載の平板熱交換器。
【請求項4】
前記距離板(13)は、前記最外部伝熱板(2’、2’’)および前記アダプタ板(3)に永続的に接合される、請求項1から3のいずれか一項に記載の平板熱交換器。
【請求項5】
フレーム板及び圧力板はそれぞれ最外部伝熱版(2’、2’’)の外側に位置し、
前記距離板(13)は、フレーム板(4)と前記アダプタ板(3)との間、および圧力板(5)と前記アダプタ板(3)との間にそれぞれ配置される、請求項1から4のいずれか一項に記載の平板熱交換器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくとも2つの熱交換流体のための通路がその間に形成される、永続的に接合された熱伝達板の平板パッケージを含む平板熱交換器に関する。各熱伝達板は、ポート穴を設けられ、それらは、他の熱伝達板での対応するポート穴と一緒に、平板パッケージを貫通するポートチャンネルを形成する。
【背景技術】
【0002】
この種の平板熱交換器での熱伝達板は通常、溶接、ろう付けまたは接着を通じて互いに永続的に接合される。熱伝達板がろう付けを通じて互いに永続的に接合されている平板熱交換器では、熱交換器にはしばしば、2つの端部板が設けられ、それらは、熱伝達板よりも厚く、平板パッケージ中の2つのそれぞれの外側熱伝達板と一緒に永続的に接合される。通常は、端部板の片方には、平板パッケージを貫通するポートチャンネルに対向する穴が設けられるが、しかしまたもう一方の端部板にも、ポートチャンネルに対向する1つまたは複数の穴が設けられることもある。端部板の少なくとも1つの上に、通常パイプソケットの形の接続部材が、例えばこれらの平板のそれぞれの穴の周りにろう付けすることによって固定される。端部板のそれぞれ1つは、一体でできている必要がなく、2つ以上の部品でできていてもよい。
【0003】
熱伝達板の間の熱交換流体のための通路は普通、熱交換流体の片方が1つおきの通路を通って流れることになり、それに応じて1つおきの通路が第1の組の通路に含まれるようにポートチャンネルに接続される。残りの通路は、もう一方の熱交換流体がそれを通って流れることになる、第2の組の通路を形成する。平板熱交換器が、動作中であるときは、第1の熱交換流体は、第1のパイプソケットを通って第1のポートチャンネルに流入し、さらに第1の組の通路を通って第2のポートチャンネルへ流れ、第2のパイプソケットを通って流出する。第2の熱交換流体は、第3のパイプソケットを通って第3のポートチャンネルに流入し、さらに第2の組の通路を通って第4のポートチャンネルへ流れ、第4のパイプソケットを通って流出する。
【0004】
永続的に接合された、例えばろう付けされた平板熱交換器の多くの応用では、平板熱交換器を通って運ばれる媒体の1つまたは複数の高い作動圧力に対処するためにまたは媒体のいずれかについての作動圧力が時間とともに変化するときに、高い強度が、必要とされる。平板熱交換器の強度および剛性が、より高い強度の要求を満たすことを保証するために、平板熱交換器は、配送の前に試験される。圧力試験に関連して、塑性変形は、できる限り少ないことが望ましい。
【0005】
上で述べたように、より高い強度の要求を満たすために、より厚い端部板または強化板、すなわち平板パッケージ中の最外部位置にある2つの平板を使用することは、十分に確立した技術である。そのような強化板はまた、アダプタ板またはフレームおよび圧力板と表されることもある。シート、ワッシャ、または厚い平板をフレームおよび/または圧力板の外側に設けてもよい。そのような追加の平板、ワッシャまたは同様のものの不都合は、平板熱交換器が作製されるとき、例えばそれがろう付けされるとき、より多くの構成要素が固定されなければならないので、製造がより複雑になることである。
【0006】
より多くの材料を使う、より厚い強化板の別の不都合は、熱的「遅さ」がこの強化板について増加することである。強化板のこのより高い熱的遅さに起因して、平板熱交換器の低下した熱疲労性能が、特に強化板の内側に最も隣接して設けられる伝熱板で得られる。伝熱板は、より薄い材料で製造されるので、それらは、媒体の温度により急速に適応することになり、そのことが、伝熱板と強化板との間の望ましくない温度差をもたらし、それ故に熱依存応力をもたらす。
【0007】
さらに、より厚い強化板は、材料の消費がより多くなり、それ故に平板熱交換器のコストが増加するという不都合をもたらす。
【0008】
米国特許第4,987,955(A)号は、主拡張板と平行に延びる複数の平板を含む平板熱交換器を開示する。平板は、複数の伝熱板および少なくとも1つの強化板を含む。伝熱板は、互いのそばに設けられ、第1の媒体のための第1の平板空間および第2の媒体のための第2の平板空間を持つ平板パッケージを形成する。伝熱板のそれぞれは、平板パッケージを通って延びるポートを形成する4つのポート穴を有する。伝熱板は、平板パッケージの片側に最外部伝熱板および平板パッケージの反対側に最外部伝熱板を含む。平板パッケージ中の平板空間の2つは、平板パッケージのそれぞれの側にそれぞれの最外部平板空間を形成し、それらは、最外部伝熱板のそれぞれの1つによって外向きに区切られる。強化板は、最外部伝熱板の1つのそばにかつ外側に設けられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】米国特許第4,987,955(A)号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の目的は、上で述べた不都合を減少するまたは少なくとも軽減することおよび高い強度を持つ平板熱交換器を提供することである。それはさらに、低コストで製造できる平板熱交換器を対象とする。特に、本発明の目的は、改善された強度を持つ、永続的に接合された平板熱交換器を達成することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
この目的は、最初に規定された平板熱交換器によって達成され、それは、距離板が、アダプタ板と、最外部伝熱板のそれぞれの1つとの間に配置され、前記距離板が、最外部伝熱板およびアダプタ板のそれぞれのポート穴のそれぞれと同心円をなす少なくとも2つのポート穴を含むこと、ならびに距離板のポート穴が、最外部伝熱板のポート穴およびアダプタ板のポート穴よりもそれぞれ大きいことを特徴とする。距離板に起因して、平板熱交換器は、普通に可能な場合よりも高い圧力に耐えることができるようになる。
【0012】
本発明の好ましい実施形態では、平板は、互いに永続的に接合される。
【0013】
本発明の別の実施形態では、距離板のサイズおよび形状は、アダプタ板のサイズおよび形状と同じである。
【0014】
本発明の別の実施形態では、距離板は、最外部伝熱板およびアダプタ板に永続的に接合される。
【0015】
なお別の実施形態では、距離板は、フレーム板とアダプタ板との間および圧力板とアダプタ板との間にそれぞれ配置される。
【0016】
本発明は、様々な実施形態の説明を用い、それに付随する添付の図面を参照して、以下においてより詳しく述べられることになる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】これまでに周知の平板熱交換器の側面図を開示する図である。
【
図2】
図1での平板熱交換器の正面図を開示する図である。
【
図3】
図1での平板熱交換器の伝熱板の正面図を開示する図である。
【
図4】本発明による熱交換器の一実施形態の分解組立て図を開示する図である。
【
図5】本発明による熱交換器の一実施形態の横断面を開示する図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
これまでに周知の平板熱交換器は、
図1〜
図3で示される。平板熱交換器1は、複数の平板2を含み、それらは、主拡張板pと実質的に平行にそれぞれ延び、平板パッケージを形成する。さらに、平板熱交換器1は、フレーム板4および圧力板5を含み、それらは、平板パッケージのそれぞれの側に設けられる。加えて、平板熱交換器1は、少なくとも1つのアダプタ板3を含む。図示する実施形態では、平板熱交換器は、4つのアダプタ板3を含む。伝熱板2は、第1の媒体のための第1の平板空間6および第2の媒体のための第2の平板空間7を持つ平板パッケージを形成する。平板空間6および7は、1つおきの平板空間が第1の平板空間6であり、残りの平板空間が第2の平板空間7であるように、交互の順番で設けられる。
【0019】
各伝熱板2は、平板パッケージを通って延びるポートチャンネルを形成し第1の平板空間6および第2の平板空間7への2つの媒体のための入口および出口をそれぞれ形成する4つのポート穴8を含む。入口および出口は、概略的に開示される入口および出口パイプ9に接続され、それらは、アダプタ板3上に配置されてもよい。入口および/または出口パイプ9が、存在しないときは、アダプタ板3は、閉じられる。各伝熱板2は、内部熱交換器ゾーン10および熱交換器ゾーン10の周りに延びる外側エッジゾーン11を含む。外側エッジゾーン11は、拡張板pから外向きに延びる周囲のフランジを含むまたは形成する。また、フレーム板4および圧力板5も、拡張板pから外向きに延びるフランジを含むまたは形成する、そのような外側エッジゾーン11を有する。好ましい実施形態では、各アダプタ板3は、それが外側エッジゾーン11内に含有されるようなサイズを有する。アダプタ板3にはまた、ポート8の2つの近くに設けられる強化パターンを設けてもよい。
【0020】
さらに、各伝熱板2は、それ自体周知のようにプレスパターン12を有し、熱交換器ゾーン10上の尾根および谷の少なくとも1つの波形の形である図を参照のこと。
図3で開示されるプレスパターン12は、単に概略的であり、そのようなパターンの一例である。伝熱板2は、様々なデザインのプレスパターンを有してもよいことに留意すべきである。
【0021】
伝熱板2は、平板パッケージの反対側に最外部伝熱板2''を含む。さらに、伝熱板2、2'、2''は、平板パッケージのそれぞれの側に2つの最外部平板空間を形成する。2つの最外部平板空間は、最外部伝熱板2'および最外部伝熱板2''によってそれぞれ外向きに区切られる。アダプタ板3は、最外部伝熱板2'および2''の1つの外側にそれぞれ設けられる。
【0022】
本発明の好ましい実施形態では、フレーム板4は、最外部伝熱板2'のすぐ外側に設けられ、圧力板5は、最外部伝熱板2''のすぐ外側に設けられる。フレーム板4および圧力板5は、この実施形態では熱的機能を有さず、すなわち媒体のどれも、最外部伝熱板2'とフレーム板4との間、または最外部伝熱板2''と圧力板5との間に運ばれない。フレーム板4および圧力板5はそれ故に、実質的に平らであってもよく、すなわち伝熱板2上に設けられるプレスパターン12を欠いてもよい。
【0023】
本発明によると、アダプタ板3と実質的に同じ外側寸法を有する距離板13は、フレーム板4とアダプタ板3との間および/または圧力板5とアダプタ板3との間にサンドイッチ構造で配置される。距離板13には、フレーム板4および/または圧力板5のポート穴8ならびにアダプタ板3のポート穴8と実質的に同心円をなすポート穴14が設けられる。しかしながら、距離板13のポート穴14のサイズは、もしポート穴を設けるならば、平板、フレームおよび圧力板ならびにアダプタ板3のポート穴8のサイズよりも大きい。アダプタ板3には、入口および出口パイプ9が設けられなくてもよく、そのような場合には、圧力板5の外側のアダプタ板は、閉じられる。特別な場合には、アダプタ板3には、バルジ15、すなわち平板2のポート穴8に実質的に対応するサイズおよび直径を持つ外向きに凸状の領域が設けられてもよい。バルジの目的は、平板空間中の流体によって及ぼされる圧力により良く耐えることである。そのようなバルジの直径は好ましくは、ポート穴8の直径および形状に対応する。距離板13のポート穴14のより大きい直径サイズに起因して、改善された強度および剛性を持つ平板熱交換器が、流体圧力の故に達成されてもよい。動作中に、圧力が、平板熱交換器の内部で生じ、その圧力は、平板パッケージ、特に外側伝熱板2、2'、2''を外向きに押す傾向がある。フレーム板4のすぐ外側および圧力板5のすぐ外側に設けられる距離板13によって、そのような外向きの湾曲は、防止される。
【0024】
すべての平板、すなわちアダプタ板3、フレーム板4、伝熱板2、2'、2''および圧力板5は、好ましくは金属材料の溶融、例えばろう付け、接着、溶接またはそれらの組み合わせを通じて互いに永続的に接続される。また、入口および出口パイプ9は、平板に、より正確にはアダプタ板3にろう付けされてもよい。平板はまた、糊付けによって永続的に接続されてもよい。
【0025】
本発明は、述べられた実施形態に限定されず、次の請求項の範囲内で変形され、変更されてもよい。
【符号の説明】
【0026】
1 平板熱交換器
2 伝熱板
2' 最外部伝熱板
2'' 最外部伝熱板
3 アダプタ板
4 フレーム板
5 圧力板
6 第1の平板空間
7 第2の平板空間
8 ポート穴
9 入口および出口パイプ
10 熱交換器ゾーン
11 外側エッジゾーン
12 プレスパターン
13 距離板
14 ポート穴
15 バルジ