(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6084239
(24)【登録日】2017年2月3日
(45)【発行日】2017年2月22日
(54)【発明の名称】遠心分離装置、及び遠心分離装置のための方法
(51)【国際特許分類】
B04B 5/00 20060101AFI20170213BHJP
B04B 11/04 20060101ALI20170213BHJP
B04B 15/08 20060101ALI20170213BHJP
A61M 1/02 20060101ALI20170213BHJP
G01N 1/00 20060101ALI20170213BHJP
【FI】
B04B5/00 Z
B04B11/04
B04B15/08
A61M1/02 520
G01N1/00 101H
【請求項の数】24
【全頁数】21
(21)【出願番号】特願2014-557632(P2014-557632)
(86)(22)【出願日】2013年2月15日
(65)【公表番号】特表2015-509839(P2015-509839A)
(43)【公表日】2015年4月2日
(86)【国際出願番号】US2013000036
(87)【国際公開番号】WO2013122683
(87)【国際公開日】20130822
【審査請求日】2015年3月20日
(31)【優先権主張番号】61/599,409
(32)【優先日】2012年2月15日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】61/606,618
(32)【優先日】2012年3月5日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】513217850
【氏名又は名称】マイクロエア サージカル インスツルメンツ,エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100114557
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 英仁
(74)【代理人】
【識別番号】100078868
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 登夫
(72)【発明者】
【氏名】チャップマン,ジョン,アール.
(72)【発明者】
【氏名】スパークス,ロドニー
【審査官】
▲高▼ 美葉子
(56)【参考文献】
【文献】
特開平09−103707(JP,A)
【文献】
特開2005−279507(JP,A)
【文献】
実開昭49−064864(JP,U)
【文献】
特表2010−527912(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B04B 1/00−15/12
A61M 1/02
G01N 1/00− 1/34
G01N 33/48−35/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
不均一流体を密度が異なる複数の別個の成分に分離するための遠心分離容器であって、
床、及び該床から上方に延びる側壁を含むハウジングと、
下側チャンバ及び該下側チャンバより前記床から遠い上側チャンバを含む少なくとも2つのチャンバと、
前記上側チャンバ及び前記下側チャンバ間に設けられ、前記側壁から延びている仕切壁と、
前記上側チャンバを前記下側チャンバに連結し、前記仕切壁と前記側壁との間に設けられた溢流部と、
前記下側チャンバ内の流体試料の成分が前記下側チャンバから除去され得るように、前記下側チャンバから前記仕切壁の孔を通って前記上側チャンバに延びている管を有し、前記ハウジングの外に通じる出口と
を備えており、
前記溢流部と隣接している前記仕切壁の部分が前記仕切壁の他の部分より高い状態で、前記溢流部で溢流が生じるように構成されていることを特徴とする遠心分離容器。
【請求項2】
前記ハウジングは、該ハウジングに貫入し、流体試料が前記ハウジング内に導入され得るように構成された入口を有していることを特徴とする請求項1に記載の遠心分離容器。
【請求項3】
真空源が吸気口に連結されて、流体試料が前記入口を通って前記ハウジング内に導入されるにつれて前記ハウジング内のガスが除去され得るように、前記吸気口は、前記入口から離れて前記ハウジングに設けられていることを特徴とする請求項2に記載の遠心分離容器。
【請求項4】
第2の出口が、前記上側チャンバと前記ハウジングの外側の空間との間に延びていることを特徴とする請求項1に記載の遠心分離容器。
【請求項5】
前記仕切壁は、前記溢流部から離れた前記仕切壁の一部に前記仕切壁を貫通する前記孔を有していることを特徴とする請求項1に記載の遠心分離容器。
【請求項6】
カバーが、前記床と反対の前記ハウジングの側で前記ハウジングを密閉していることを特徴とする請求項1に記載の遠心分離容器。
【請求項7】
前記管は、前記下側チャンバから延びて、前記カバーを通って前記ハウジングの外に通じていることを特徴とする請求項6に記載の遠心分離容器。
【請求項8】
入口が、前記出口から離れて前記カバーに貫入して設けられており、複数成分の不均一流体を受けるべく構成されていることを特徴とする請求項7に記載の遠心分離容器。
【請求項9】
1対の足部が、前記側壁から延びており、略水平な水平面に横向きに置かれて、前記床が前記水平面と垂直に延びているとき、前記足部は、前記ハウジングを支持すべく構成されていることを特徴とする請求項1に記載の遠心分離容器。
【請求項10】
前記仕切壁のリップ部が前記溢流部と隣接している状態で、前記仕切壁は角度をなしており、前記仕切壁の前記リップ部は、前記リップ部から離れている前記仕切壁の部分より前記床に近いことを特徴とする請求項1に記載の遠心分離容器。
【請求項11】
密度が異なる成分を有する複数成分の流体を分離するための方法であって、
床及び該床から上方に延びる側壁を有するハウジングと、下側チャンバ及び該下側チャンバより前記床から遠い上側チャンバを含む少なくとも2つのチャンバと、前記上側チャンバ及び前記下側チャンバ間に設けられ、前記側壁から延びている仕切壁と、前記上側チャンバを前記下側チャンバに連結し前記仕切壁と前記側壁との間に設けられた溢流部と、前記下側チャンバ内の流体試料の成分が前記下側チャンバから除去され得るように、前記下側チャンバから前記仕切壁の孔を通って前記上側チャンバに延びている管を有し、前記ハウジングの外に通じる出口とを備えた遠心分離容器を準備する準備工程と、
前記準備工程で準備された遠心分離容器に、密度が異なる成分を有する複数成分の不均一流体を導入する導入工程と、
前記不均一流体が高密度相及び低密度相を含む少なくとも2つの異なる密度流体に分離されるまで、前記遠心分離容器を略前記床の方に向いた遠心力で遠心分離機にかける工程と、
前記下側チャンバから前記出口を通して前記高密度相の流体を抽出する抽出工程と
を有し、
前記遠心分離容器は、前記溢流部と隣接している前記仕切壁の部分が前記仕切壁の他の部分より高い状態で、前記溢流部で溢流が生じるように構成されていることを特徴とする方法。
【請求項12】
前記床が水平面と平行ではなく、前記溢流部での前記仕切壁のリップ部が前記抽出工程の前に前記仕切壁の最も高い部分を画定するように、前記遠心分離容器を横向きに回転させる工程を更に有することを特徴とする請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記導入工程では、中密度相の流体を含む少なくとも3つの別個の流体を有する不均一流体を導入し、
前記中密度相の流体を前記出口を通して抽出する前に、前記床が前記ハウジングの最も低い部分になるように前記ハウジングを回転させて垂直方向に戻し、前記中密度相の流体を除去する工程を更に有することを特徴とする請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記床が水平面と平行ではないように前記遠心分離容器を回転させて水平方向に戻し、前記遠心分離容器の上側チャンバに連結された出口を通して前記低密度相の流体を抽出することによって、前記低密度相の流体を除去する工程を更に有することを特徴とする請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記準備工程で準備する前記遠心分離容器のハウジングは、該ハウジングに貫入する入口を有しており、前記導入工程で前記入口を使用することにより、前記導入工程中に前記遠心分離容器のハウジングに流体試料を導入し得ることを特徴とする請求項11に記載の方法。
【請求項16】
前記準備工程で準備する前記遠心分離容器の前記仕切壁は、前記溢流部から離れている前記仕切壁の一部に前記仕切壁を貫通する前記孔を有していることを特徴とする請求項11に記載の方法。
【請求項17】
前記準備工程で準備する前記遠心分離容器では、カバーが、前記床と反対の前記ハウジングの側で前記ハウジングを密閉しており、
前記管は、前記下側チャンバから延びて、前記カバーを通って前記ハウジングの外に通じていることを特徴とする請求項11に記載の方法。
【請求項18】
前記準備工程で準備する前記遠心分離容器では、1対の足部が、前記側壁から延びており、
略水平な水平面に横向きに置かれて、前記床が前記水平面と垂直に延びているとき、前記足部は、前記抽出工程中に前記ハウジングを支持していることを特徴とする請求項11に記載の方法。
【請求項19】
床、及び該床から上方に延びている側壁を含むハウジングと、
下側チャンバ、及び該下側チャンバより前記床から遠い上側チャンバを含む少なくとも2つのチャンバと、
前記上側チャンバ及び前記下側チャンバ間に設けられ、前記側壁から延びている仕切壁と、
該仕切壁と前記側壁との間に設けられ、前記上側チャンバを前記下側チャンバに連結する溢流部と、
前記下側チャンバ内の流体試料の成分が前記下側チャンバから除去され得るように、前記下側チャンバから前記仕切壁の孔を通って前記上側チャンバに延びている管を有し、前記ハウジングの外に通じる出口と
を備えており、
前記仕切壁は、前記溢流部に隣接した前記仕切壁のリップ部が前記仕切壁の他の部分より前記床に近いように角度を成しており、
前記リップ部が前記仕切壁の他の部分より高い状態で、前記溢流部で溢流が生じるように構成されていることを特徴とする遠心分離容器。
【請求項20】
前記仕切壁は、前記溢流部から離れている前記仕切壁の一部に前記仕切壁を貫通する前記孔を有していることを特徴とする請求項19に記載の遠心分離容器。
【請求項21】
カバーが、前記床と反対の前記ハウジングの側で前記ハウジングを密閉しており、
前記管は、前記下側チャンバから延びて、前記カバーを通って前記ハウジングの外に通じていることを特徴とする請求項20に記載の遠心分離容器。
【請求項22】
密度が異なる複数の成分を有する流体の高密度相を分離するためのシステムであって、
スピン軸と、該スピン軸回りに回転して遠心分離容器を収容すべく構成されている容器支持体とを有している遠心分離機を備えており、
前記遠心分離容器は、
床、及び該床から上方に延びている側壁を有しているハウジングと、
下側チャンバと、該下側チャンバより前記床から遠い上側チャンバとを含んでいる少なくとも2つのチャンバと、
前記上側チャンバ及び前記下側チャンバ間に設けられ、前記側壁から延びている仕切壁と、
該仕切壁と前記側壁との間に設けられており、前記上側チャンバを前記下側チャンバに連結する溢流部と、
前記下側チャンバ内の流体試料の成分が前記下側チャンバから除去され得るように、前記下側チャンバから前記仕切壁の孔を通って前記上側チャンバに延びている管を有し、前記ハウジングの外に通じる出口と
を備えており、
前記溢流部と隣接している前記仕切壁の部分が前記仕切壁の他の部分より高い状態で、前記溢流部で溢流が生じるように構成されていることを特徴とするシステム。
【請求項23】
前記管は、前記床の反対側の前記ハウジングを密閉するカバーまで延びていることを特徴とする請求項22に記載のシステム。
【請求項24】
前記仕切壁のリップ部が前記溢流部と隣接しており、前記リップ部から離れている前記仕切壁の部分より前記床に近いように、前記仕切壁は角度をなしていることを特徴とする請求項22又は23に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、懸濁流体に含まれる、密度を区別可能な成分を分離して濃縮し、回収して洗浄するための装置及び方法に関する。本発明は特に、遠心分離後の密度画分の回収中に密度相の層を分離し続けるための形態を有する、試料を含む容器を利用した遠心分離機、容器、及び遠心分離機を操作する方法に関する。ある実施形態では、本発明は、母流体に含まれる異なる密度画分の分離を更に容易にするために中密度流体を利用するか又は別々に抽出する手段を開示する。
【背景技術】
【0002】
本質的には、遠心分離機は、流体中の異なる密度成分を分離する装置である。遠心分離により、一手法によって2つの目的を達成するための手段が提供される。つまり、遠心力下で異なる密度成分の濃縮及び浄化の両方が可能になる。遠心分離により、より重い粒子又は成分が回転中心から外側の方向に迅速に沈殿する。遠心分離によって生成される遠心力は、ロータの回転数及び半径に比例する。g力は、加速又は重力の結果として本体に作用する力である。一定の遠心力及び媒体粘性では、粒子の沈殿速度は、粒子の分子量と、粒子の密度及び媒体の密度間の差とに比例する。このような観察によれば、遠心分離による白血球からの赤血球の区別的な層化を高めるためには、Hespan(水酸基−エチル基澱粉)のような赤血球凝集剤を使用することになる。この種の沈殿剤の使用は本発明に適用可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】米国特許出願公開第2011/0021332 号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
細胞分離のための遠心分離の原則は、発明の名称が「遠心分離機、及び遠心分離機のための分離容器(Centrifuge and Separation Vessel Therefore)」であり出願番号が米国特許出願第13/199,111号明細書であり、2012年3月12日に米国特許出願公開第2012/0065047号明細書として公開されたチャップマン(Chapman )及びスパークス(Sparks)の米国特許出願に検討されており、その内容全体が参照によって本明細書に組み込まれる。
【0005】
骨髄、末梢血、尿、痰、滑膜精液、乳、唾液、粘液、痰、浸出物、脳脊髄液、羊水、臍帯血、腸液、細胞懸濁物質、消化組織、細胞懸濁物質を含んでいる腫瘍細胞、細胞懸濁物質を含んでいる微生物、並びに、治療目的又は診断目的のための放射性標識細胞懸濁物質及び細胞培養流体を含む生物学的な流体に含有されている細胞、細胞器官又は高分子を含む成分を分離するために、遠心分離機は適しており使用される。
【0006】
遠心分離機は、細胞懸濁物質及び他の粒子状物質の洗浄によく適している。遠心分離機は、予備分析的な試験又は浄化のために、水溶液、湖沼水、海洋水、河川水、廃水及び下水中に存在する成分を分離するために更に使用される。遠心分離機は、沈殿物又は綿状沈殿物が形成されることになる無機化学反応又は有機化学反応の成分を分離するために更に適している。遠心分離機は、飲食物の製造及び浄化を含む産業的用途と、金、銀及び白金を含む貴金属の冶金、採鉱とに採用されている。遠心分離機は、本発明の装置を使用した不均一流体の遠心分離によって化学反応を引き起こして、その後該化学反応を終わらせるために水溶液に加えられる微粒子を分離するために使用されている。遠心分離機は、本発明にも適用可能な免疫親和性細胞分離工程を行なうために、密度粒子と組み合わせて使用されている。このような多くの例示には、遠心分離機が通常採用され、本発明に適用可能な様々な機能全てが含まれているわけではない。これらの用途に採用される遠心分離容器の詳細な例が、2010年8月21日に出願された米国仮出願第61/401,877号明細書にまとめられており、その内容全体は、参照によって本明細書に組み込まれている。
【0007】
本発明の実施形態の内の一部は更に、医療用吸収キャニスタの分野に関しており、より具体的には、安全な回収、患者からの体液の遠心分離、治療用途又は美容用途に使用するために分離された吸引脂肪組織の一又は複数の画分を回収すべく設計された吸収キャニスタ組立体に関している。
【0008】
患者の外科手術中に、手術部位に集まる傾向がある血液、組織片及び他の粘着性流体を含む様々な体液を手術部位から除去する必要があることが多い。このような体液の除去は一般に、回収瓶又はキャニスタに集めるために流体を適切な管を通して取り出すべく、真空源に連結された吸引器を使用して達成される。このようなシステムに使用するための体液貯留キャニスタが本技術分野では周知である。一般的には、このようなキャニスタ組立体はキャニスタ及びカバーを含んでおり、キャニスタ及びカバーは漏れ止めシールと共に固定されている。2つの連結部がカバーに設けられており、一方の連結部として、真空口が、管又は他の適切な連結部によって真空源に、例えば真空ポンプ又は病院の真空出口ステーションに連結される。他方の連結部は、ドレナージ管を通って患者の外科手術部位に連結される流体受入口を含んでいる。流体が取り出される手術部位に通じる管に真空を生成すべく、吸引キャニスタに真空が生成される。この真空により、吸引キャニスタの入口にドレナージ管を通って流体が運ばれ、吸引キャニスタの完全な又は部分的な充填が可能になる。
【0009】
真空吸引法は、脂肪吸引を含む複数の外科手術で人気がある。最も一般的な脂肪吸引は、皮膚の小さな切り口を介して細い金属製のカニューレの末端部を挿入し、一般にはカニューレの基端部に取り付けられたホースを介して真空吸引を行うことにより典型的に行われる。脂肪吸引用カニューレは一般に、カニューレの軸が挿入される中空ハンドルから構成されている。脂肪が吸引される先端部及び孔の様々な構成が脂肪吸引用カニューレの末端部に採用される。外科医は、皮膚の切り口を介して脂肪吸引用カニューレの末端部を挿入した後、脂肪の層内で脂肪吸引用カニューレを前後に注意深く動かす。この移動により、脂肪組織粒子が切り取られ、脂肪組織粒子は真空によって身体から脂肪吸引用カニューレに取り込まれる。ホースは、脂肪組織及びその流体成分を保持すべく設計された吸引キャニスタに通じている。
【0010】
その内容全体が参照によって本明細書に組み込まれる、1998年7月28日公開のキャッツ(Katz)等の米国特許第5786207 号明細書は、組織を単一の細胞懸濁物質に分解するための装置を開示している。キャッツ及びルル(Lull)によって確認された、吸引脂肪組織を処理するための問題は、脂肪吸引処置又は細胞分離処理の間に傷ついた細胞からの油によって組織試料の粘性が更に増加するという問題を含んでいる。キャッツ及びルルは、油、血清、組織片及び他の流体による、濃いスラリー状の粘稠度を有する吸引脂肪組織について更に言及している。キャッツ及びルルは、このような脂肪吸引された組織、特にはこのような組織の大量試料の粘稠度が濾過機構の閉塞を引き起こし、完璧且つ効率的な洗浄及び細胞分離の著しい妨げであることを更に言及している。
【0011】
吸引キャニスタは、床、キャビネット及び壁の取付けで知られており、創傷洗浄、衛生目的、吸引などの様々な目的のために患者のベッドサイドで吸引を提供するための医療用途で一般に知られている。吸引キャニスタは、プラスチックの蓋が外嵌される様々な大きさを有することが可能なプラスチック容器又はガラス容器を含んでいる。蓋は、吸入口ホース及び患者の出口ホースに連結可能な管状の取付部品又は受口と共に形成されている。
【0012】
前記吸引キャニスタは、先行技術では、加えられる真空力の結果として容器の壁が内破に耐えるほど十分に強く堅い吸引キャニスタとして知られており、脂肪吸引処置中に吸引キャニスタを支持すべく再使用可能な堅いキャニスタに収容される単回使用の使い捨て吸引キャニスタライナーの構造であると更に知られている。
【0013】
カニューレに連結された管類への流体の逆流を防ぐために、堅い吸引キャニスタの蓋又は吸引キャニスタライナーの蓋が、患者の受口で中蓋に組み込まれた一方向弁を含んでいることが先行技術では周知である。
【0014】
調整装置及び壁真空出口の相互汚染の防止を支援するために、自動遮断弁が、堅い吸引キャニスタの蓋又は吸引キャニスタライナーの蓋の内部に設けられることが先行技術では周知である。更に、管類がよじれて流体の流れを妨げることを防止すべく支援するために、管類が90°のアダプタにより直角に連結され得る。蓋を固定する使用法が、伝染性の液状医療廃棄物の適切な処分を促進するために報告されており、作業者の安全性を向上させている。蓋は、付属品及び整形外科用受口を含んでいる。キャニスタの体積は一般に、100 ミリリットル〜3リットルの範囲内にある。
【0015】
本発明の本実施形態の内の一部は、外科処置の間に身体から除去された細胞がその後身体に戻される細胞回収に関している。外科手術部位及び創傷用ドレーンから血液を回収するための先行技術のシステムは使い捨てユニットを使用することが多く、使い捨てユニットは、血液を含む流体を回収するための貯留部と、赤血球(RBC)を分離して洗浄するための(遠心分離ボウル又は遠心分離ディスクのような)分離装置とを含んでいる。このようなシステムを使用して回収されたRBCは、同種輸血の必要性を低減するように患者に自動的に戻されてもよい。このような血液回収システムの例として、2001年6月26日公開のランファー(Lamphere)等の米国特許第6251291 号明細書、2005年9月15日公開の、ボブロフ(Bobroff)等の米国特許出願公開第2005/0203469号明細書、及び2008年5月8日公開の、ボブロフ(Bobroff)の米国特許出願公開第2008/0108931号明細書に記載されている例が含まれる。この特許出願及び公開された出願は全て、参照によって本明細書に組み込まれる。血液及び他の流体は、外科手術部位から吸引されて貯留部に取り込まれる。これらの流体は貯留部から遠心分離機に取り込まれ、その後、遠心分離機が血漿及び他の流体から赤血球を分離するように回転する。血漿及び他の流体は廃棄袋に導かれてもよい。その後、赤血球は生理食塩水源からの生理食塩水を用いて遠心分離ディスク内で洗浄されてもよい。洗浄後、生理食塩水はRBCから分離されて廃棄袋に導かれ、洗浄された赤血球は赤血球袋に導かれる。その後、赤血球は患者に再度戻されてもよい。多くの場合、貯留部に回収される血液の量は、分離及び洗浄の処置を行うには不十分である。このような状況では、使い捨てセット全体を処置の後に廃棄しなければならない。これは無駄であり、血液の洗浄及び患者への再注入に最終的に繋がらない外科手術処理に無駄な費用を追加する。
【0016】
本発明の本実施形態の内の一部は細胞洗浄の分野に関する。特に重要な臨床的な問題は、解けた細胞懸濁物質に存在する毒性の低温保存剤を洗浄する効果的な手段を欠いていることである。DMSOは、自己由来の末梢血幹細胞、臍帯血及び骨髄の低温保存に一般に使用される毒性溶媒である。注入反応が生じると想定されており、この注入反応は、吐き気、嘔吐、発熱、悪寒又は寒け、紅潮、呼吸困難、低酸素血症、胸苦しさ、高血圧症、頻脈、徐脈、味覚障害、血尿症及び軽症の頭痛を含んでいる。呼吸窮迫、重度の気管支痙攣、心臓ブロック又は他の不整脈を伴う重度の徐脈、心拍静止、低血圧、溶血、高い肝酵素、腎障害、脳障害、意識喪失及び発作を含む重度の反応が更に生じる場合がある。これらの有害反応の頻度及び重症度は、投与されたDMSOの量と関連する。特異体質反応は許容範囲と考えられるDMSO用量であっても生じる場合があるが、投与するDMSOの量を最小限度に抑えることにより、このような特異体質反応の危険性を減らすことができる。DMSOの実際の量は注入する製品の調製法により決まる。従って、解けた冷凍保存細胞の濃縮物を効率的に洗浄するための方法が、必要不可欠であるが、依然として対処されていない。細胞を洗浄するための他の必要な課題は、消化組織からのコラゲナーゼのような酵素の除去、密度相分離の後のフィコールのような密度媒体の除去、及び、選択的な細胞溶解の後の溶解試薬の除去を含む。医療用途で使用する場合、治療現場での診察(ポイント・オブ・ケア)の際の使用に適した大きさ及び簡素さを有する細胞洗浄システムを備えていることが特に望ましい。
【0017】
上記に開示された装置のいずれも、簡素化、速度及び信頼性が重要視される医療・獣医用の治療用途、診断用途、美容用途のために、組織から生存可能細胞を濃縮する際に示された特殊処理の懸念事項について適切に対処していない。治療現場での術中に異種生体液の細胞濃縮、洗浄及び浄化を行う能力は、再生医療用途及び美容外科用途にとって特に重要である。生体液を濃縮して洗浄し、浄化するための様々な容器が文献に記載されているが、現在の装置及び方法より迅速であり、効果的であり、利用し易く、実際的な装置及び方法の必要性が存在する。更に、量の範囲が大きく(20ミリリットル〜3リットル)、流体が本質的に微粒子である吸引脂肪組織を処理する際に技術的な課題及び操作者の必要性に取り組んで成功した装置は、現在存在しない。従って、特殊技能が無く訓練していない操作者に、量が減少した生存可能細胞の濃縮物を生体液から実際的に且つ確実に調製することを可能にする装置及び方法が長い間必要とされているが実現されていない。吸引脂肪組織の回収、及び密度に基づく相成分への遠心分離による吸引脂肪組織の分離の両方を可能にする単一の装置と、治療処置又は美容処置で使用するためにこれらの密度相の一又は複数を簡単且つ確実に抽出する手段とが必要である。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明では、複数成分の不均一流体試料を異なる密度の画分に層状化するため、且つ遠心分離の後にこのような画分を物理的に分離するために特有の形態を利用した、遠心分離機に使用するための容器が提供される。
【0019】
本発明は、流体成分の密度差に基づいて不均一流体の量の減少、濃縮及び浄化を達成するために適用され得る。
【0020】
本発明で処理される流体は本来、生物学的又は非生物学的であり得る。容器は、床から上に延びる側壁を含む外壁内の内部空間を有するハウジングの形状を有している。障壁が、容器のこの内部空間を少なくとも2つの領域又はチャンバに分割する。これら2つの領域は、障壁の最も低い大部分(つまり、床に最も近い部分)を画定する障壁のリップ部の頂部上で互いに連結されており、そのため、2つの領域は容器の下方部分で繋がっている以外は障壁によって互いに離れている。
【0021】
容器のハウジングは、容器が遠心分離機の受け台又は他の容器支持体内に配置されているときに、遠心分離機のスピン軸から最も遠く離れた容器の部分、及び遠心分離機のスピン軸に最も近い容器の部分によって夫々画定された高遠心力側の床及び低遠心力側の蓋を有している。障壁は、容器の内部空間を高遠心力側の下側チャンバ及び低遠心力側の上側チャンバに分割するような方向に向いている。従って、遠心分離が完了して、遠心分離機の回転が停止した後、高密度画分が障壁の高遠心力側である下側に残り、低密度画分が障壁の低遠心力側である上側に残る。
【0022】
更に、試料の分離は、テーパを有してスピン軸に最も近い障壁の面を設けることにより促進され得る。リップ部に最も近い面の部分がスピン軸から最も離れており、リップ部から最も離れている面の部分がスピン軸に最も近いようにこのテーパは選択されている。このテーパは、平坦であってもよく、又は凹形曲面のように湾曲してもよく、面の様々な外形により分離速度が調整される。
【0023】
容器は、特定の試料が分離されるべく構成されているため有効である。特に、障壁のリップ部が適切な位置に設けられ得る、及び/又は、領域の体積が、試料内の各画分の成分の想定される割合と一致するように選択され得る。この相関関係は正確であってもよく、実際は単に一般的であってもよい。このような容器の最適化により、より容易でより完全な測定、回収又は他の後の分離処理のために、障壁は、遠心分離機の回転が停止した後、画分の互いからの分離を維持する。
【0024】
一実施形態では、容器が遠心分離中に直立しているように、遠心分離機は構成されている。このような実施形態では、障壁の面は垂直であり、面に対向する側も垂直である。好ましくは、障壁の幅がリップ部よりリップ部から離れた部分でより大きいように、障壁の面はテーパ状である。このテーパは平坦であっても凹面であってもよい。容器は、障壁の両側の領域に通じる入口管及び出口管を有して構成され得る。これらの入口管及び出口管は、試料を容器に導入して、遠心分離の後に高密度画分及び低密度画分を容器から除去するために利用される。
【0025】
第2の実施形態では、容器の上方部分が容器の下方部分よりスピン軸に近いように、遠心分離機は、垂直方向とは少なくとも若干異なる角度で容器を支持すべく構成されている。このような遠心分離機では、障壁の先端部が、先端部から離れた面の部分よりスピン軸から更に遠いように、障壁は角度をなしたテーパ状の面を有している。このような構成では、試料の高密度画分は、障壁の面の下方にリップ部を越えてキャッチベースンに経時的に移動し得る。同様に、遠心分離機の高密度領域内で生じたかもしれない低密度画分が、障壁のリップ部を越えて上方に移動して遠心分離機の低密度領域に移動し得る。
【0026】
高密度画分が試料の比較的小さな合計割合で存在する分離については、障壁の高密度側の高密度領域は、試料の高密度画分の想定した割合と同様であるが僅かにより多い小体積を有するように構成されることにより効果的である。このように、比較的小さな高密度画分は、容器の高密度領域の大部分又は少なくとも比較的大きな一部を占める。そのため、遠心分離機の回転が終了した後、試料の高密度画分は、比較的容易に高密度領域と区別され得る。容器は、障壁の両側の領域に通じる入口管及び出口管を有して構成され得る。これらの入口管及び出口管は、試料を容器に導入して、遠心分離の後に高密度画分及び低密度画分を容器から取り出すために利用される。
【0027】
一実施形態では、容器は遠心分離支持体から外され、リップ部が最上位置にあり容器が側壁を下にして置かれるような方向に向くべく構成されている。リップ部と直近の側壁との間の空間を占めるべく容器が十分な空気を含んでいれば、この位置で、完全な物理的分離が上側チャンバの流体及び下側チャンバの流体間に生じ得る。入口管及び出口管を使用すると、高密度画分及び低密度画分を混合することなく、流体は上側チャンバ又は下側チャンバの何れかから除去され得るか、又は何れかに加えられ得る。
【0028】
別の実施形態では、試料の異なる密度画分の分離は、中密度流体を容器又は他の筐体の内部空間内に含めることにより容易になる。この中密度流体は、分離される少なくとも2つの成分の密度間の中間であるように選択された密度を有する。遠心分離の後、高密度成分及び低密度成分間の間隔を増大させるために、中密度流体は高密度成分及び低密度成分間に置かれる。マイナスの結果をもたらすことなく他の成分と共に回収され得る非汚染物質であるように中密度流体を更に選択することによって、異なる密度成分の一方(又は両方)の略完全な回収が、回収された成分を他の成分のいずれかの部分で汚染せずに達成され得る。
【0029】
本実施形態では、遠心分離容器が、このような中密度流体を用いて分離するための最適な形態を有している。特に、遠心分離容器内の障壁は、障壁の低遠心力側の貯留部を貯留部の高遠心力側のキャッチベースンから分離する。高密度成分は、別々の除去のためにキャッチベースンの下端部内で回収される。遠心分離容器は遠心分離支持体から外され、遠心分離容器が水平に横向きに置かれるような方向に向けられて、リップ部が支持面と接触する反対側から可能な限り離れた最上位置にあるように、遠心分離容器は意図的に置かれる。この水平位置で、完全な物理的分離が上側チャンバの流体及び下側チャンバの流体間で生じる。上側チャンバ及び下側チャンバに連結された入口管及び出口管を使用すると、高密度画分及び低密度画分を混合することなく、流体は上側チャンバ又は下側チャンバの何れかから除去され得るか、又は何れかに加えられ得る。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【
図1】本発明の装置の少なくとも一部として使用され、本発明に係る方法を行なうための遠心分離容器を示す斜視図である。
【
図3】
図2に示されている遠心分離容器と同様であるが、遠心分離容器に流体試料が導入された状態の遠心分離容器を示す全断面図である。
【
図4】遠心分離容器が遠心分離機に装着されて、遠心分離処理が終了した後の
図1〜3の遠心分離容器を示し、試料が別々の密度相に分離していることを示す全断面図である。
【
図5】
図1〜3に示されている遠心分離容器と同様であるが、遠心分離容器が横向きに置かれて、高密度相が下側チャンバに分離され、容器の下側チャンバから除去されている状態を示す全断面図である。
【
図6】高密度相を除去した後の
図5に示されている遠心分離容器を示し、本発明の方法に係る中密度相及び低密度相を抽出するための遠心分離容器の様々な回転を示す全断面図である。
【
図7】
図1に示されている遠心分離容器を示す分解斜視部分図である。
【
図8】
図1に示されている遠心分離容器のカバー部分を下から示す斜視図である。
【
図9】
図1の遠心分離容器のハウジング部分を示す分解部分図である。
【
図10】
図9のハウジング部分を示す側面図である。
【
図11】
図9のハウジング部分を示す側面図である。
【
図12】
図9のハウジング部分を示す側面図である。
【
図13】
図9のハウジング部分を示す底面図である。
【
図14】外科処置の間にドナー試料を分離すべく、本発明の遠心分離容器を使用して本発明の特定の一実施形態に係る遠心分離方法の工程を特定するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0031】
様々な図面を通じて同様の部分に同様の参照番号が示されている図面を参照すると、参照番号10が、本発明の一実施形態に係る装置の少なくとも一部を画定する遠心分離容器に付されている。遠心分離容器10は、最初の混合密度試料Oを異なる密度の別々の成分に分離するために使用され得る。遠心分離容器10は更に、遠心分離の後に別個の成分を別々に保持すべく、且つ遠心分離の後に別個の成分を便利に除去すべく便利に構成されている。
【0032】
異なる密度の成分を有する複数成分の流体試料が遠心分離容器10内で分離され得る。本明細書に提供されている具体例には、生体液(例えば、吸引脂肪組織)を(脂肪組織及び/又は他の油のような)低密度相及び可能性として中密度の(水性相のような)中密度相から(細胞ペレットのような)高密度相に高密度相の密度と低密度相の密度との間で分離することが含まれている。
【0033】
基本的には
図1,2及び7を特に参照して、好ましい本実施形態に係る遠心分離容器10の基本的な詳細を述べる。遠心分離容器10は、ハウジング20及びカバー30から一般的に形成された筐体である。ハウジング20は、下側チャンバ60の上に上側チャンバ50を含む内部を有している。仕切り40が上側チャンバ50を下側チャンバ60から分離する。仕切り40は、仕切り40のリップ部46に隣接する溢流部48を通して2つの上側チャンバ50及び下側チャンバ60間の流れを可能にする。遠心分離容器10内で高密度相H流体を中密度相M流体又は低密度相L流体と再度混合する懸念無く、遠心分離の後に高密度相H流体を除去するために、下側チャンバ60からカバー30を通って延びる抽出管65が更に設けられている。
【0034】
仕切り40のリップ部46を仕切り40の他の部分よりハウジング20の床24に近付かせる角度を仕切り40が有することが有用である。このように、高密度相H流体は上側チャンバ50内に捕捉されず、低密度相L流体は下側チャンバ60内に捕捉されず、分離が促進される。
図5に示されているように、遠心分離の後、遠心分離容器10は横向きに置かれることができ、高密度相H流体は下側チャンバ60内に捕捉されたままであり、上側チャンバ50内に残る低密度相L流体から分離される。その後、高密度相H流体は、注射器Yの使用などによって抽出管65を通って(
図5の矢印Eに沿って)便利に抽出され得る。
【0035】
より具体的には、特に
図1,2,7及び9〜13を特に参照して、典型的な本実施形態に係る遠心分離容器10のハウジング20の詳細を述べる。ハウジング20が遠心分離容器10の第1の部分を形成し、カバー30が遠心分離容器10の第2の部分を形成していることが好ましい。ハウジング20は、カバー30によって閉じられる堅い頂部開口型筐体である。このハウジング20は、床24から縁部23に上方に延びる側壁22を含んでいる。複数のフィン25が、床24から外側に側壁22からある程度まで延びていることが好ましい。これらのフィン25は側壁22に堅固性を加えるため、側壁が、遠心分離機内での作動に関連した強い力及び容器10内の真空に耐えるために、フィン25がなければ必要となるであろう程厚くなくてもよい。
【0036】
ハウジング20は、遠心分離機内のような高い遠心力の負荷環境にあるときに変形又は他の故障を回避するのに適切な高強度を示すタイプの高分子の炭化水素材料から形成されていることが好ましい。最も好ましくは、炭化水素材料は射出成形による形成に適しており、側壁22、床24及びフィン25の形態は、金型が過度に複雑になることなくハウジング20が射出成形によって容易に形成され得るように選択されている。例えば、側壁22は略円筒状であることが好ましい一方、側壁22は、縁部23での側壁22の直径が床24に向かって延びる側壁22の部分の直径より僅かに大きいように僅かな抜き勾配を有することが可能であり、そのため、金型の1個がハウジング20の内部を形成して、金型の別の1個がフィン25と共にハウジング20の外部を形成する2個構成金型からハウジング20が容易に外され得る。炭化水素材料は生体適合性を有しており、オートクレーブ処理及び他の滅菌技術に耐え得ることが更に好ましい。遠心分離容器10は、再使用可能であってもよく、単回使用の使い捨てであってもよい。
【0037】
ハウジング20の基本的な形態は円筒の形態であり、側壁22は、略環状の床24を通って延びる中心線を中心とした円筒状である。床24は一般に、ハウジング20の最下部分と、遠心分離機Cのスピン軸A(
図4)から最も離れているように構成されたハウジング20の一部とを画定しており、そのため、遠心分離容器10が使用されているときに遠心分離容器10に加えられる大きな遠心力G(
図4)が床24に向かって下方に加えられる。しかしながら、床24は、必ずしもハウジング20の他の部分より下にある必要はない。例えば、
図5に示されているように、床24は、時には下部の略水平な支持面に垂直に向いていることが有利である。好ましい本実施形態には典型的な形状を有するハウジング20が図示されているが、ハウジング20は、様々な異なる形状を有することができ、それでも本発明の基本的な機能を有することができる。
【0038】
ハウジング20の内部が、側壁22の内部であって床24の上に設けられている。この内部は一般に、下側チャンバ60及び上側チャンバ50に分割され、仕切り40が下側チャンバ60及び上側チャンバ50間に設けられている。仕切り40はハウジング20とは別の部品であり、上側チャンバ50及び下側チャンバ60を略分離するために、ハウジング20の最初の製造の後にハウジング20に結合されるか、又は他の態様で取り付けられることが好ましい。尚、仕切り40は、上側チャンバ50を下側チャンバ60から完全に分離するわけではなく、溢流部48により、仕切り40のリップ部46の近くで上側チャンバ50及び下側チャンバ60が連通することを可能にする。
【0039】
図2及び9を特に参照して、最も好ましい本実施形態に係る下側チャンバ60の詳細を述べる。図示された本実施形態では、下側チャンバ60は側壁22まで延びておらず、ハウジング20の側壁22内の空間の一部を単に占めている。本実施形態におけるこの下側チャンバ60は細長い形状で示されており、下側チャンバ60の一部で側壁22の内の1つにまで略外に延びている。下側チャンバ60は、側壁22ではなく下側チャンバ60の側面を一般に画定するように床24まで下方に延びる周壁62を有している。最初の混合密度試料Oの高密度相Hが最初の試料Oの比較的小さな割合を構成しているとき、この構成は特に望ましい。
【0040】
下側チャンバ60が本実施形態では細長い形状で示されているが、最初の試料O全体の小さな割合(例えば、10〜20パーセント未満)である高密度相Hを収容するという一般的な利点が達成され得る。特に、下側チャンバ60が、側壁22まで延びている場合より小さな断面積を有しているとき、床24から垂直方向に離れたより大きな間隔が達成され得る。高密度相Hのこのより大きな垂直方向の高さにより、高密度相Hがより容易に見出されて、最初の試料Oの他の部分からより容易に便利に回収される。下側チャンバ60が細長く、下部チャンバ60の一部が側壁22まで延びていることによって、下側チャンバ60は、溢流部48との流体連通状態に置かれ、遠心分離の後に再度混合する可能性を最小限度に抑え、低密度相Lのような最初の試料Oの他の部分から高密度相Hを完全に回収することを可能にする(
図5参照)。中密度相流体の追加は、高密度相Hを低密度相Lから更に間隔を置くための別の方法である。
【0041】
仕切り40は周辺縁部42を有しており、周辺縁部42は、下側チャンバ60の周壁62の上方部分と並ぶような大きさ及び形状を有している。このようにして、下側チャンバ60を上側チャンバ50と隔てるために、仕切り40はハウジング20の床24に結合されるか又は連結されて下側チャンバ60に重なることができる(
図9参照)。この周辺縁部42は周壁62の上縁部と完全に一致するわけではなく、仕切り40は仕切り40の一端部にリップ部46を有しており、リップ部46は、上側チャンバ50を下側チャンバ60に連結する溢流部48が仕切り40の周りに設けられるようにこのリップ部46に隣り合う周壁62まで至らない。ハウジング20全体の中心の近くに仕切り40を貫通する貫通孔44が更に設けられていることが好ましい。抽出管65は、この貫通孔44に結合されており、遠心分離の後に高密度相H流体を容器10から除去することを可能にする。
【0042】
特には
図1,2,7及び8を参照して、典型的な本実施形態に係るカバー30の詳細を述べる。本実施形態におけるカバー30は、一般に平坦であり、ハウジング20の縁部23の直径と同様の直径の略環状の縁部32を有する環状の堅固な構造である。タブ33が、縁部32から、好ましくは縁部32の僅かに内部に下方に延びており、そのため、カバー30がハウジング20の縁部23にぴったり嵌まるべく、タブ33はハウジング20の縁部23の内部と嵌合して、縁部32がハウジング20の縁部23に接することができる。このようにして、カバー30は、ハウジング20の内部を外部の環境から略密閉する。
【0043】
カバー30は、ハウジング20への入口アクセスポイント及び出口アクセスポイントを有していることが好ましい。しかしながら、他の実施形態では、これらの入口アクセスポイント及び出口アクセスポイントは、カバー30ではなくハウジング20の一部に設けられ得る。或いは、様々な数の専用部分又は両用部分が利用され得る。
【0044】
1対の受口が、互いに隣り合って縁部32の近くに、好ましくは溢流部48に略重なる位置に設けられていることが最も好ましい。これら2つの受口は導入口35及び真空口34を含んでいる。一実施形態では、真空口34は真空源に連結されており、導入口35は最初の試料O源に連結されている。真空源は、最初の試料Sを遠心分離容器10内に導入するための原動力を与える。
図3に示されているように、吸引脂肪組織(又は他の試料材料)が遠心分離容器10内に直接導入され得るように、真空管Vが真空口34に連結されており、吸引管Pが導入口35に連結されている。
【0045】
カバー30は、カバー30の中心の近くに下側抽出口36を含んでおり、縁部32の近くであって真空口34及び導入口35の反対側に上側抽出口37を含んでいることが好ましい。これら下側抽出口36及び上側抽出口37は、夫々の上にキャップを含んでおり、注射器又は同様のコネクタがこれらの下側抽出口36及び上側抽出口37に便利に連結され得るためのルアーロック取付部品又は他の取付部品を有していることが好ましい。下側抽出口36は抽出管65に連結されており、そのため、高密度相Hが抽出管65を通って、その後下側抽出口36を通って除去され得る。
【0046】
図5に示されているように、注射器Yを下側抽出口36に連結し、その後高密度相Hを矢印Eに沿って除去することにより、このような抽出は行われ得る。上側抽出口37は、遠心分離容器10が横向きに置かれたとき(
図5)などに、低密度相L又は中密度相Mの一部を除去するために利用され得る。
【0047】
足部38が上側抽出口37の両側に設けられていることが好ましい。これらの足部38により、上側抽出口37を可能な限り最も低い位置に設けるべく、遠心分離容器10が適切に方向付けられ得る。足部38は、遠心分離容器10がこのような方向に横向きに置かれているときに遠心分離容器10を安定して保持する傾向がある。カバー30が移動し得ないように、カバー30がハウジング20に結合されていることが好ましい。或いは、カバー30は、遠心分離容器10の滅菌を容易にするように、又は矢印Iに沿った導入(
図3)以外の、最初の試料Oを遠心分離容器10に導入するための別の方法としてハウジング20に着脱可能に取付可能であってもよい。下側抽出口36及び上側抽出口37とは対照的に、真空口34及び導入口35は、手術用管類又は他の同様の管類が重なることができる単なるニップルであることが好ましい。下側抽出口36及び上側抽出口37は、遠心分離中に一般的にキャップで閉じられている。キャップが、真空口34及び導入口35の上に設けられ得る。又は、キャップは、遠心分離容器10のハウジング20への空気の出入りを可能にすべく開いたままにされ得る。
【0048】
特に
図3〜6を参照して、典型的な実施形態に係る遠心分離容器10の使用及び動作の基本的な詳細を述べる。初めに、最初の混合密度試料Oが遠心分離容器10に導入される(
図3)。一実施形態では、最初の試料Oのこの導入は、最初の試料Oが遠心分離容器10内に矢印I(
図3)に沿って流れるために、真空管Vを介して遠心分離容器10に連結された真空源から与えられる吸収力によって吸引管Pを通して行われる。最初の試料Oが遠心分離容器10内に導入されると、遠心分離容器10は遠心分離機C内に置かれる。
図4は、横向きに置かれた遠心分離容器10を支持する遠心分離機を示しているが、遠心分離機Cは、遠心分離機Cの回転に伴い遠心分離容器10の回転を可能にするバケット型遠心分離機であることが最も好ましい。従って、
図4は、このような回転後であって遠心分離中に遠心分離容器10が有する方向を一般的に示している。遠心分離容器10の角度は横向きの方向に完全に達していなくても、このような方向に近付く。本実施形態では、
図4に示されているように、仕切り40は垂直方向から略10°の角度方向を有することが最も好ましい。遠心分離容器10が
図4に示された方向に完全には向いていない場合、利用される遠心分離機Cのタイプに関わらず、仕切り40の所望の角度方向が与えられ得るように、この仕切り40の方向が調整され得る。
【0049】
この遠心分離機Cでは、遠心分離容器10は、回転中心が遠心分離機Cのスピン軸Aと並んでいる状態で(
図4の矢印Bのように)回転する。高い遠心力Gが、遠心分離容器10内の流体に加えられる。このため、最初の試料O(
図3)内の異なる密度相が、例えば高密度相H、中密度相M及び低密度相Lを含む別々の層(
図4)に層状化される。一実施形態では、2つの異なる密度相のみが存在する。一実施形態では、最初の試料O内の異なる密度の2以上の相の分離を高めるために、中密度流体が加えられる。
【0050】
このような遠心分離の後に、本実施例における3つの密度相流体は
図4に示されているように層状化される。高密度相Hは完全に下側チャンバ60内にあり、低密度相Lは完全に上側チャンバ50内にある。その後、遠心分離容器10は遠心分離機Cから外されて、横向きに置かれ得る(
図5)。尚、上側チャンバ50及び下側チャンバ60を共に連結する溢流部48がこのとき遠心分離容器10の最も高い部分にあるので、高密度相Hは下側チャンバ60内に残る。
【0051】
その後、注射器Yの連結及び流体Hの矢印Eに沿った除去により、高密度相Hの抽出管65などを通した抽出が容易に行われ得る。最初の試料Oが吸引脂肪組織試料であるとき、この高密度相Hは細胞ペレットである。本例では、中密度相Mは吸引脂肪組織の水性相であり、この水性相の一部を高密度相Hと共に回収することは許容可能である。この中密度相Mの他の部分は低密度相Lと共に残ってもよい。
【0052】
所望の場合、この水性の中密度相Mのより多い部分が上側抽出口37を通して除去され得る。しかしながら、以下の方法で利用される水性相のかなりの部分を回収することなく、脂肪組織及び油のような低密度相Lが抽出され得ることが最も好ましい。最初に、遠心分離容器10は、(
図6の矢印Rに沿った回転により)直立した方向に戻される。残りの水性相又は他の中密度相M流体が下側チャンバ60に流れ込む。脂肪組織及び油の形態の低密度相Lは、中密度相Mの下側チャンバ60内への回収、及び(遠心分離容器10の矢印R′に沿った回転による)遠心分離容器10の横向きへの再配置の後、中密度相Mの完全な分離を容易にすべく溢流部48を閉鎖する傾向がある。中密度相Mの表面が、このような再配置の後、表面Tから表面T′に変わる。その後、最初の吸引脂肪組織試料Oの水性相のような中密度相M流体を除去するために、抽出が矢印E′に沿って行われ得る。低密度相Lの表面Sは、再配置により表面S'(
図6)になり、その後、矢印Fに沿って上側抽出口37を通して抽出され得る。略純粋な脂肪組織及び油はこのようにして容易に回収され得る。
【0053】
遠心分離容器10は、一般的に生物学的環境で再利用するために想定され得る程度に浄化され得る一方、単回使用の使い捨て装置として製造される。このようにして、遠心分離容器10は自己由来の細胞治療処置に特に有用である。自己由来の試料成分が、手術の終了後若しくは手術中に回収され使用され得るように、又は研究のために利用され得るように、又はドナー患者による後の使用のために貯留され得るように、最初の試料Oの様々な異なる相H,M,Lの分離及び抽出の速度及び簡素化は、手術中での自己由来のドナー組織の処理を容易にする。吸引脂肪組織の処理に例示されるようなこの使用のための一般的なフローチャートが
図14に示されている。
【0054】
この開示は、本発明の好ましい実施形態及び本発明を実施するための最良の態様を明示すべく提供されている。本発明をこのように述べているが、様々な異なる変更が、本開示の範囲及び趣旨を逸脱することなく好ましい実施形態になされ得ることは明らかである。構造体が機能を行なう手段として特定されているとき、このような特定は、指定された機能を行い得る構造体全てを包含することが意図されている。本発明の構造体が共に連結されていると特定されているとき、このような文言は、構造体が共に直接連結されている、又は介在する構造体を介して共に連結されていることを包含すべく広く解釈されるべきである。このような連結は、特に制限されていない限り、固定して、又は何らかの形態の取付部品を設けて回転、摺動又は他の相対的な運動を可能にして常時なされても一時的になされてもよい。
【0055】
産業上の利用性
本発明は、遠心分離の後に試料の異なる密度画分を別々に保持する遠心分離機に使用するための容器を提供するという点で産業上の利用性を示す。
【0056】
本発明は、異なる密度画分の更に迅速な分離を容易にする遠心分離容器を提供することを別の目的とする。
【0057】
本発明は、より容易に測定されるか、除去されるか、分析されるか、又は処理されるべく、試料の少なくとも一部の異なる密度画分を画定された空間内に回収する遠心分離容器を提供することを別の目的とする。
【0058】
本発明は、特定の試料を想定した画分に分離するためにカスタマイズされる遠心分離容器を提供することを別の目的とする。
【0059】
本発明は、生体試料を異なる密度の少なくとも2つの画分に分離するために最適化された遠心分離容器を提供することを別の目的とする。
【0060】
本発明は、試料を異なる密度画分に分離して、更に分離後に異なる密度画分を別々に保持するための方法を提供することを別の目的とする。
【0061】
本発明は、遠心分離の後に試料の画分を分離して回収するための方法を提供することを別の目的とする。
【0062】
本発明は、試料から異なる密度の画分を分離して回収する遠心分離機を提供することを別の目的とする。
【0063】
本発明は、可動部品を設ける必要なく、動作信頼性を向上させるために、流体を含む微粒子を少なくとも2つの異なる密度画分に分離するための方法及び装置を提供することを別の目的とする。
【0064】
本発明は、高密度成分の密度と試料の少なくとも1つの他の部分の密度との間の密度を有する中密度流体と共に、試料の少なくとも1つの他の部分から試料の高密度成分を遠心分離によって分離するための分離方法を提供することを別の目的とする。
【0065】
本発明は、除去処置の間に別々の成分を共に混合せず、迅速且つ確実に行われ得るように、試料内の可溶性汚染物質から第1の溶液内の標的細胞群の一部を分離するための方法を提供することを別の目的とする。
【0066】
本発明は、操作者が分離の成功結果を視覚的に見ることができるように、少なくとも部分的に透明な遠心分離容器を用いた分離方法を提供することを別の目的とする。
【0067】
本発明は、細胞懸濁物質から望ましくない汚染物質の存在を減らすために使用され得る遠心分離容器を提供することを別の目的とする。
【0068】
本発明は、治療用途、診断用途、移植添加用途、美容用途又は研究用途のために、身体から生体液を回収するための吸引キャニスタとして、且つ回収された生体液から密度画分を調製する遠心分離容器として機能し得る多目的容器を提供することを別の目的とする。
【0069】
本発明は、吸収キャニスタ及び遠心分離キャニスタの機能を、密度相分離機能と一体化することによって、細胞分離における多くの問題を解決する。本発明の顕著な利点は、遠心分離キャニスタが、低密度画分及び高密度画分を含む2つの別個の非接触試料に物理的に分離することができることである。この完全な分離は、密度流体層を混合する危険性なく、試料画分の混合及び回収を可能にする。
【0070】
生体液の異種な性質のために、材料を意図せず減らすことなく且つ処理時間を増大させることなく、生体液をある容器から別の容器に移すことは困難であることが多い。更に、このような流体移動は、微生物汚染の危険性を導入するために試料の安全性を損なうことがある。更に、医療用廃棄物の量及び関連コストは、様々な機能を単一の装置に一体化することにより低減され得る。
【0071】
本発明の一目的は、血液、血液画分、吸引脂肪組織、吸引脂肪組織画分、骨髄、並びに組織片及びその組み合わせを含む生体液を回収するために吸引キャニスタとして使用され得る遠心分離容器を提供することである。遠心分離容器の形態設計によって、生体液の高密度画分及び低密度画分が、生体液の遠心分離の後に回収され得る。患者を調べるために使用されるカニューレから吸引脂肪組織を真空吸引法によって直接回収する機能を、遠心分離容器を遠心分離機にかける機能と一体化した遠心分離容器を形成して、遠心分離によって形成された細胞画分を除去する手段を更に設計することによって、本発明は、治療現場での治療用途及び美容臨床用途のために吸引脂肪組織に由来する細胞成分を迅速且つ効率的に調製することを可能にする。
【0072】
両用キャニスタ組立体は、堅固な容器を達成するための材料組成、又は吸引脂肪組織を処理するための非堅固性の容器ライナーチャンバを有する堅固な容器であるための材料組成から構成されている。堅固な容器の適切な材料の一例がポリカーボネートである。非堅固性の容器内部ライナーの適切な材料の一例がポリ塩化ビニル(PVC)である。堅固な容器の設計及び組成は、脂肪吸引中に吸引脂肪組織の回収を可能にするように、堅固な容器の内部チャンバに大気圧未満の気圧があるときに内破力に耐えるような設計及び組成である。堅固な容器の更なる設計及び組成は、堅固な容器が遠心分離機バケットに嵌合し、少なくとも5分間少なくとも100 xgの遠心力に耐えるような設計及び組成である。キャニスタは、30分間少なくとも2,000 xgの力に耐え得ることが好ましい。開示された発明では、流体成分の密度差に基づいて吸引脂肪組織成分を異なる流体相の層に層状化させるために、キャニスタは十分な時間十分なg力で遠心分離機にかけられる。堅固な容器又は堅固な容器に支持される内側容器の更なる設計により、遠心分離中に形成された一又は複数の密度相の層が回収され得る。回収された画分は、治療目的又は美容目的に使用される。
【0073】
別の実施形態では、細胞成分を回収する工程に干渉し得るフィブリンの形成を防ぐために、吸引キャニスタに抗凝血剤が追加される。
【0074】
本発明が述べられているが、本発明は、実例としてみなされ、特徴を限定するものではない。好ましい実施形態のみが示されて述べられており、本発明の趣旨の範囲内でなされる全ての変更及び調整は保護されることが望まれていると理解すべきである。
【0075】
本発明の本実施形態の内の一又は複数における一利点は、処理中にある容器から別の容器に組織片を移す必要があるという問題を低減していることである。本発明の本実施形態の内の一又は複数における別の利点は、組織片から回収され得る細胞の数を増加させることである。より多くの細胞がより少ない細胞より治療の可能性を高めることを生物学的経験が一般に示しているので、これは重要である。本発明の本実施形態の内の一又は複数における別の利点は、組織片由来の有用な細胞懸濁物質を形成するため全処理時間を減らすことである。この時間の節約により、本発明は、検査機関の代わりに術中処置で行われ得るので、組織処理と関連するコストを大幅に低減する。組織試料が混合されて、細胞が間違った患者に不注意に投与されるという危険性がないので、組織の術中処理は改善された安全性を更に保証する。
【0076】
容器が、細胞毒性、溶血及び感作のための毒性分析を含む生物学的適合性のために必要な試験を通過することができるように、容器は、ポリスチレン、ポリカーボネート又はポリプロピレンのような医療グレードのプラスチックを使用して射出成形されていることが好ましい。容器は、殺菌した流体経路を有するように、人間の患者の試料と共に使用する前にガンマ線照射、エチレンオキシド、Eビーム照射又はオートクレーブ処理によって殺菌されることが好ましい。容器は、過剰な量の内毒素のような発熱物質の存在を検出するための分析を通過するように製造されていることが好ましい。
【0077】
細胞分離のための遠心分離の原則は、発明の名称が「遠心分離機及び遠心分離機のための分離容器」(Centrifuge and Separation Vessel Therefore)であり、米国特許出願第13/199111 号明細書及び2012年3月12日公開の米国特許出願公開第2012/0065047号明細書であり、チャップマン(Chapman )及びスパークス(Sparks)の米国特許出願に検討されており、その内容全体が参照によって本明細書に組み込まれる。この特許出願は更に、蓋の1つの受口を通して吸引キャニスタの内部に流体を導入するための受口を有する吸引キャニスタになるように吸引キャニスタの蓋を変えることにより、且つ吸引キャニスタに流体を導入するための手段を設けるべく真空源の取付部品のための第2の受口を蓋に設けることにより、本発明での使用に適した遠心分離キャニスタについて述べている。
【0078】
一実施形態では、キャニスタは、内部と接する滅菌の非発熱性流体を有する。生物学的安全性が、開示された方法で調製された細胞の微生物汚染の危険性を減らすように設計すべく使用される容器のための閉システムを使用することによって改善される。
【0079】
一実施形態では、キャニスタは、抽出処理中に望ましくない固体の移動を防ぐために濾過システムを含んでいる。濾過システムの一例が、静脈内の流体に使用される微粒子フィルタ又は輸血に使用されるクロットフィルタである。
【0080】
流体は、本来生物学的であってもよく、生体細胞を含んでもよい。細胞組成に含まれる細胞は、幹細胞、始原細胞、間充織幹細胞、内皮前駆細胞、造血幹細胞、樹状細胞、腫瘍浸潤リンパ球、筋細胞、肝細胞、脾臓細胞、肺細胞、心臓細胞、神経細胞、星状細胞、膠細胞、上皮細胞、皮膚細胞、真皮細胞、マクロファージ、繊維芽細胞、血管周囲細胞、脂肪細胞、並びに白血球、赤血球及び血小板を含む血液細胞を含んでもよいが、これらに限定されない。
【0081】
本発明と共に使用するための有用な生体液の例は、脂肪、骨髄、臍帯及び胎盤に由来した流体を含む細胞を含むが、これに限定されない。
【0082】
本発明と共に使用するための細胞及び組織片の特に有用な源は、吸引脂肪組織の形態の脂肪に由来する。本装置及び本方法は、脂肪吸引によって生成されたある量の試料を処理すべく容易に調整され得る。
【0083】
本発明の様々な利点は、添付図面を考慮して読むと、実施形態の詳細な記載から当業者に明らかである。
【0084】
本発明の産業上の利用性を例証する本発明の更なる他の目的は、添付の図面及び添付の特許請求の範囲を検討し、本明細書の詳細な記載を詳細に読むと明らかである。