【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者はランスパイプの先端部をL字形状に曲げる代わりに先端部を太くして太い部分にノズルとなる部分を斜め方向に埋設することに思い至り本発明のランスパイプを得たものである。
【0006】
本発明のランスパイプは、ガス及び処理剤を溶銑に供給する供給通路となる直筒状の金属製の主管と該主管の先端側側面に一体的に設けられた金属製のノズル管とを持つ芯金と、該主管及び該ノズル管の外周面を覆う基部側が細く先端側が太い耐火物層とを有し、該耐火物層を持つ該基部側の最大直径相当長さを100としたとき該先端側の太い部分の最大直径相当長さが300以下であり、該太い部分の該主管の外周面から該耐火物の表面までの厚さは該ノズル管の突出方向側とその反対の背向方向側の厚さの比であるノズル突出方向側厚さ/背向方向側厚さが1.1〜4.5であることを特徴とする。
【0007】
本発明のランスパイプは、先端側の太い部分の太さが基部側の部分の太さの3倍以内である。このためランスパイプをトーピードの開口に挿入する場合も容易に挿入できる。またこのランスパイプは直線的な棒状であるためランスパイプの延びる方向にランスパイプを送り込むことにより容易にトーピード内の操業部分にランスパイプの先端部を送り込むことができる。
【0008】
太い部分の耐火物の厚さを基部側の部分より厚くするとともに、さらに、ノズル管の突出方向側の厚さがその反対の背向方向側の厚さの1.1〜4.5倍と異なる厚さとしている。このため、このランスパイプは先端側の太い部分の耐食性に優れ、特にノズル管の突出方向側の耐食性に優れている。ここでノズル管の突出方向側とは1本のノズル管の場合はそのノズル管の延びる方向側を意味し、ノズル管が複数ある場合はそれらの中央に位置する側を意味する。
【0009】
本発明のランスパイプは、芯金を構成する主管とノズル管及びこれらを覆う耐火物層とからなる。主管は直筒状の金属製である。この主管の先端は底栓により閉じられている。逆方向の基部側は開口し、この開口よりガス及び処理剤が供給される。主管の基部側は溶銑処理用のガス及び処理剤供給装置に固定保持されるためのフランジ等が設けられている。
【0010】
ノズル管も主管と同じ直筒状の金属製である。このノズル管は主管の先端側の側面に形成された開口を塞ぐようにその開口部分に一体的に溶接固定されている。ノズル管と主管の傾斜角度は、主管の基部側とノズル管の先端側のなす角度で規定すると100〜150度であるのが好ましい。なお、この角度はこのランスパイプがトーピードの開口から挿入され、先端部がトーピードに保持されている溶銑に浸漬されてガス及び処理剤がノズル管の先端開口より溶銑中に噴出されるときの方向となる。トーピード内でガス及び処理剤を水平方向に噴出するものとすると、このランスパイプは水平に対して100〜150度傾斜して挿入されていることになる。
【0011】
ノズル管の長さはノズル管の内径の2.0〜10.0倍とすることができる。2.0倍以上であれば安定した吹込みが可能となる。ノズル管が長いと噴出ガスの方向性が高くなる。しかしノズル管が長いとランスパイプの先端側の太い部分の太さが増しトーピード内の操業部分にランスパイプの先端部を送り込むことが難しくなる。
【0012】
ノズル管の先端側を細く絞ることもあるいは扁平状に絞ることもできる。扁平状に絞る場合は、操業時の開口の延びる方向が水平方向となるようにすることもできる。
【0013】
ノズル管は1本の主管に対して1本でも2本あるいは3本の複数個でも良い。1本の主管に1本のノズル管を設ける場合、そのノズル管の孔の断面積は主管の孔の断面積の0.7〜1.0倍とすることができる。0.7倍より小さいと振動が大きくなり耐用が落ちる。
【0014】
1本の主管に複数個のノズル管の配置する場合、主管の先端側側面の同一周方向に沿って開口した連続した長穴あるいは間隔を隔て互いに独立した複数個の開口を複数個のノズル管で塞ぐように溶接固定することができる。
【0015】
1本の主管に設けられた複数個のノズル管のなす角度は、隣接する2本のノズル管のなす角度で30〜150度であるのが好ましい。なお、ノズル管を複数個にすることにより1本の場合に比較して噴出方向のベクトル数が増え、そのベクトル数が多くなるほど噴出力は分散されガス噴出に起因するノズルの振動を小さくすることができる。なお、複数個のノズル管の孔の断面積の総和は主管の孔の断面積0.7〜1.2倍とすることができる。
【0016】
参考までに主管の孔の直径が52.7mmと一定とし、2本のノズル管の孔の直径を変え、主管の孔の断面積Soと2本のノズル管の孔の断面積の和Sの比S/Soを0.5,0.7,1.0,1.2及び1.3と変えた5種類のランスパイプを作った。これらのランスパイプの先端を溶湯中に浸漬し、ガス量を14.5Nm
3/min.と一定として各ランスパイプの耐用寿命を求めた。その結果を
図4に示す。S/Soが0.5と1.3のランスパイプは耐用寿命が短く、S/Soが0.7〜1.2のものは高い寿命を持つものであった。なお、S/Soが0.5と1.3のランスパイプはS/Soが0.7〜1.2のものに比較してガス噴出による振動が激しかった。同様に、1本のノズル管を持つランスパイプでは、S/Soが0.7〜1.0のものが高い寿命を持った。
【0017】
主管及びノズル管からなる芯金は二重管とすることもできる。二重管の場合、内側の管の内周面で区画される第1の通路と外側の管の内周面と内側の管の外周面で区画される筒状の第2の通路を持つ。第1の通路には1本の芯金と同様に溶銑処理用のガス及び処理剤が搬送される。第2の通路は通常炭化水素ガス等の冷却ガスが搬送される。
【0018】
耐火物層は主管及びノズル管の外周面を覆うもので、このランスパイプでは基部側が細く先端側が太く形成されている。基部側の最大直径相当長さを100としたとき先端側の太い部分の最大直径相当長さが300以下である。ここで最大直径相当長さとは、断面が円形の場合はその直径を意味し、断面が長円の場合は長円の両端の長さを意味する。耐火物層は、溶銑及び溶銑の熱より芯金を断熱保護するもので、主管のトーピード内に挿入されない基部側の外周面は溶銑の熱での加熱が少ないので通常設けられない。
【0019】
耐火物層を持つ基部側の最大直径相当長さを100としたとき先端側の太い部分の最大直径相当長さが170以下であるのが好ましい。太い部分が細い部分の1.7倍と3倍より細くなるため、このランスパイプをトーピードの開口に挿入する操作がより容易になる。
【0020】
太い部分の耐火物の厚さ、すなわち、主管の外周面からそれを覆う耐火物の表面までの距離は、ノズル管の突出方向側とその反対の背向方向側の厚さの比であるノズル突出方向側厚さ/背向方向側厚さが1.1〜4.5である。ノズル管の突出方向側の耐火物は当然にノズル管そのものを埋設するために厚くする必要があるがノズル管から噴出するガスにより攪拌されて浸食性をます溶湯から芯金を保護するためにも厚い耐火物を必要とする。このため、ノズル突出方向側の耐火物の厚さ/背向方向側の耐火物の厚さは少なくとも1.1であることが必要である。ノズル突出方向側厚さ/背向方向側厚さが大きくなると主管及びノズル管が位置する先端側の太い部分の最大直径相当長さが基部側の最大直径長さの3倍を超えて太くなりすぎる。このためノズル突出方向側厚さ/背向方向側厚さ4.5以下である必要がある。なお、好ましいノズル突出方向側厚さ/背向方向側厚さは1.5〜4.0、より好ましくは2.0〜3.5である。
【0021】
この太い部分の断面形状は円形状でも良いが、ノズル突出方向側の先端とその背向方向側の先端とを結ぶ方向が長く、その直角方向が短い長円形状、楕円形状、一端側が大きい卵形状のものが好ましい。具体的には、断面形状で、最も長い径に当たる長軸の長さに対するその直角方向の短軸の長さの比である長軸長さ/短軸長さは1.0より大きく1.8以下であるのが好ましい。太い部分の断面形状を長円形状とすることにより、この太い部分をトーピードの操作開口に挿入する作業が容易となり、低資源、低コストが可能となる。さらには、長軸方向はノズル管の延びる方向となり耐火物の厚さが厚くなるため、耐火物層の芯金からの脱落を少なくすることができる。
【0022】
なお、芯金の外周面にV字形状、T字形状あるいはY字形状のスタッドを固定し耐火物層中に埋設して芯金と耐火物層の一体性を高め、耐火物層の部分的な脱落を防止することは好ましいことである。
【0023】
芯金及び耐火物層の素材は従来のものを採用できる。
【発明の効果】
【0024】
本発明のランスパイプは、先端部分の太さが基部側部分の太さの3倍以内である。このためランスパイプをトーピードの開口に挿入する場合も容易に挿入できる。またこのランスパイプは直線的な棒状であるためランスパイプの延びる方向にランスパイプを送り込むことにより容易にトーピード内の操業部分に先端部を送り込むことができる。
【0025】
さらに、ノズル管の突出方向側の厚さがその反対の背向方向側の厚さの1.1〜4.5倍と異なる厚さとしている。このため、このランスパイプは先端側の太い部分の耐食性に優れ、特にノズル管の突出方向側の耐食性に優れている。
【0026】
1本の主管に複数個のノズル管を設けると1本の場合に比較してガス噴出に起因するノズルの振動を小さくすることができ、ノズル管の耐久性が増す。
【0027】
耐火物層の太い部分の断面形状を長円形状とすることにより耐火物層の芯金からの脱落を少なくすることができ、耐久性が増す。