特許第6084245号(P6084245)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6084245
(24)【登録日】2017年2月3日
(45)【発行日】2017年2月22日
(54)【発明の名称】ランスパイプ
(51)【国際特許分類】
   F27D 3/18 20060101AFI20170213BHJP
   C21C 7/072 20060101ALI20170213BHJP
   C21C 1/00 20060101ALI20170213BHJP
【FI】
   F27D3/18
   C21C7/072 A
   C21C1/00
   C21C7/072 S
【請求項の数】8
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2015-40114(P2015-40114)
(22)【出願日】2015年3月2日
(65)【公開番号】特開2016-161210(P2016-161210A)
(43)【公開日】2016年9月5日
【審査請求日】2016年2月16日
(73)【特許権者】
【識別番号】000220767
【氏名又は名称】東京窯業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000001258
【氏名又は名称】JFEスチール株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100081776
【弁理士】
【氏名又は名称】大川 宏
(72)【発明者】
【氏名】柳 憲治
(72)【発明者】
【氏名】吉川 絢也
(72)【発明者】
【氏名】池上 博文
【審査官】 本多 仁
(56)【参考文献】
【文献】 実開昭60−016751(JP,U)
【文献】 実開昭63−069151(JP,U)
【文献】 特表昭56−500147(JP,A)
【文献】 実開平03−078047(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F27D 3/18
C21C 1/00−1/10
C21C 7/072
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガス及び処理剤を溶銑に供給する供給通路となる直筒状の金属製の主管と該主管の先端側側面に一体的に設けられた金属製のノズル管とを持つ芯金と、該主管及び該ノズル管の外周面を覆う基部側が細く先端側が太い耐火物層とを有し、
該耐火物層を持つ該基部側の最大直径相当長さを100としたとき該先端側の太い部分の最大直径相当長さが300以下であり、
該太い部分の該主管の外周面から該耐火物の表面までの厚さは該ノズル管の突出方向側とその反対の背向方向側の厚さの比であるノズル突出方向側厚さ/背向方向側厚さが1.1〜4.5であることを特徴とするランスパイプ。
【請求項2】
前記太い部分の断面において、前記ノズル突出方向側の先端と前記背向方向側の先端とを結ぶ長軸の長さに対するその直角方向の短軸の長さの比である長軸長さ/短軸長さは1.0より大きく1.8以下である請求項1記載のランスパイプ。
【請求項3】
前記太い部分の断面形状は長円形状、楕円形状あるいは一端側が大きい卵形状である請求項1または2に記載のランスパイプ。
【請求項4】
前記耐火物層を持つ前記基部側の最大直径相当長さを100としたとき前記先端側の前記太い部分の最大直径相当長さが170以下である請求項1から3のいずれか一項に記載のランスパイプ。
【請求項5】
前記ノズル管の長さは該ノズル管の内径の2.0〜10.0倍である請求項1から4のいずれか一項に記載のランスパイプ。
【請求項6】
前記ノズル管は複数本である請求項1から5のいずれか一項に記載のランスパイプ。
【請求項7】
前記ノズル管は2本であり、前記主管の先端側側面の同一周方向から突出し、2本の該ノズル管のなす角度は30〜150度であり、2本の該ノズル管の孔の断面積の和は該主管の孔の断面積の0.7〜1.2倍である請求項1から5のいずれか一項に記載のランスパイプ。
【請求項8】
前記ノズル管は1本であり、該ノズル管の孔の断面積は前記主管の孔の断面積の0.7〜1.0倍である請求項1から5のいずれか一項に記載のランスパイプ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主として溶銑を保持するトーピード内に先端を挿入浸漬してガス及び処理剤を吹き込むために使用されるランスパイプに関する。
【背景技術】
【0002】
トーピード用のランスパイプとしては特開2011−017529号公報にあるように、先端部を斜め方向に曲げたL字形状のL型ランスパイプが知られている。このL型ランスパイプは先端が斜め方向に延びているためトーピードの開口に挿入するに際し挿入する部分が開口に対してできるだけ垂直方向に挿し込む操作が必要となり操作が難しいという問題があった。また、従来のL型ランスパイプはガス及び処理剤の吹込み時に大きな振動が発生して吹込み操作が難しく、耐久性に乏しいといった問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2011−017529号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は従来のL型ランスパイプの操作の難しさを克服あるいは低減できるランスパイプを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者はランスパイプの先端部をL字形状に曲げる代わりに先端部を太くして太い部分にノズルとなる部分を斜め方向に埋設することに思い至り本発明のランスパイプを得たものである。
【0006】
本発明のランスパイプは、ガス及び処理剤を溶銑に供給する供給通路となる直筒状の金属製の主管と該主管の先端側側面に一体的に設けられた金属製のノズル管とを持つ芯金と、該主管及び該ノズル管の外周面を覆う基部側が細く先端側が太い耐火物層とを有し、該耐火物層を持つ該基部側の最大直径相当長さを100としたとき該先端側の太い部分の最大直径相当長さが300以下であり、該太い部分の該主管の外周面から該耐火物の表面までの厚さは該ノズル管の突出方向側とその反対の背向方向側の厚さの比であるノズル突出方向側厚さ/背向方向側厚さが1.1〜4.5であることを特徴とする。
【0007】
本発明のランスパイプは、先端側の太い部分の太さが基部側の部分の太さの3倍以内である。このためランスパイプをトーピードの開口に挿入する場合も容易に挿入できる。またこのランスパイプは直線的な棒状であるためランスパイプの延びる方向にランスパイプを送り込むことにより容易にトーピード内の操業部分にランスパイプの先端部を送り込むことができる。
【0008】
太い部分の耐火物の厚さを基部側の部分より厚くするとともに、さらに、ノズル管の突出方向側の厚さがその反対の背向方向側の厚さの1.1〜4.5倍と異なる厚さとしている。このため、このランスパイプは先端側の太い部分の耐食性に優れ、特にノズル管の突出方向側の耐食性に優れている。ここでノズル管の突出方向側とは1本のノズル管の場合はそのノズル管の延びる方向側を意味し、ノズル管が複数ある場合はそれらの中央に位置する側を意味する。
【0009】
本発明のランスパイプは、芯金を構成する主管とノズル管及びこれらを覆う耐火物層とからなる。主管は直筒状の金属製である。この主管の先端は底栓により閉じられている。逆方向の基部側は開口し、この開口よりガス及び処理剤が供給される。主管の基部側は溶銑処理用のガス及び処理剤供給装置に固定保持されるためのフランジ等が設けられている。
【0010】
ノズル管も主管と同じ直筒状の金属製である。このノズル管は主管の先端側の側面に形成された開口を塞ぐようにその開口部分に一体的に溶接固定されている。ノズル管と主管の傾斜角度は、主管の基部側とノズル管の先端側のなす角度で規定すると100〜150度であるのが好ましい。なお、この角度はこのランスパイプがトーピードの開口から挿入され、先端部がトーピードに保持されている溶銑に浸漬されてガス及び処理剤がノズル管の先端開口より溶銑中に噴出されるときの方向となる。トーピード内でガス及び処理剤を水平方向に噴出するものとすると、このランスパイプは水平に対して100〜150度傾斜して挿入されていることになる。
【0011】
ノズル管の長さはノズル管の内径の2.0〜10.0倍とすることができる。2.0倍以上であれば安定した吹込みが可能となる。ノズル管が長いと噴出ガスの方向性が高くなる。しかしノズル管が長いとランスパイプの先端側の太い部分の太さが増しトーピード内の操業部分にランスパイプの先端部を送り込むことが難しくなる。
【0012】
ノズル管の先端側を細く絞ることもあるいは扁平状に絞ることもできる。扁平状に絞る場合は、操業時の開口の延びる方向が水平方向となるようにすることもできる。
【0013】
ノズル管は1本の主管に対して1本でも2本あるいは3本の複数個でも良い。1本の主管に1本のノズル管を設ける場合、そのノズル管の孔の断面積は主管の孔の断面積の0.7〜1.0倍とすることができる。0.7倍より小さいと振動が大きくなり耐用が落ちる。
【0014】
1本の主管に複数個のノズル管の配置する場合、主管の先端側側面の同一周方向に沿って開口した連続した長穴あるいは間隔を隔て互いに独立した複数個の開口を複数個のノズル管で塞ぐように溶接固定することができる。
【0015】
1本の主管に設けられた複数個のノズル管のなす角度は、隣接する2本のノズル管のなす角度で30〜150度であるのが好ましい。なお、ノズル管を複数個にすることにより1本の場合に比較して噴出方向のベクトル数が増え、そのベクトル数が多くなるほど噴出力は分散されガス噴出に起因するノズルの振動を小さくすることができる。なお、複数個のノズル管の孔の断面積の総和は主管の孔の断面積0.7〜1.2倍とすることができる。
【0016】
参考までに主管の孔の直径が52.7mmと一定とし、2本のノズル管の孔の直径を変え、主管の孔の断面積Soと2本のノズル管の孔の断面積の和Sの比S/Soを0.5,0.7,1.0,1.2及び1.3と変えた5種類のランスパイプを作った。これらのランスパイプの先端を溶湯中に浸漬し、ガス量を14.5Nm3/min.と一定として各ランスパイプの耐用寿命を求めた。その結果を図4に示す。S/Soが0.5と1.3のランスパイプは耐用寿命が短く、S/Soが0.7〜1.2のものは高い寿命を持つものであった。なお、S/Soが0.5と1.3のランスパイプはS/Soが0.7〜1.2のものに比較してガス噴出による振動が激しかった。同様に、1本のノズル管を持つランスパイプでは、S/Soが0.7〜1.0のものが高い寿命を持った。
【0017】
主管及びノズル管からなる芯金は二重管とすることもできる。二重管の場合、内側の管の内周面で区画される第1の通路と外側の管の内周面と内側の管の外周面で区画される筒状の第2の通路を持つ。第1の通路には1本の芯金と同様に溶銑処理用のガス及び処理剤が搬送される。第2の通路は通常炭化水素ガス等の冷却ガスが搬送される。
【0018】
耐火物層は主管及びノズル管の外周面を覆うもので、このランスパイプでは基部側が細く先端側が太く形成されている。基部側の最大直径相当長さを100としたとき先端側の太い部分の最大直径相当長さが300以下である。ここで最大直径相当長さとは、断面が円形の場合はその直径を意味し、断面が長円の場合は長円の両端の長さを意味する。耐火物層は、溶銑及び溶銑の熱より芯金を断熱保護するもので、主管のトーピード内に挿入されない基部側の外周面は溶銑の熱での加熱が少ないので通常設けられない。
【0019】
耐火物層を持つ基部側の最大直径相当長さを100としたとき先端側の太い部分の最大直径相当長さが170以下であるのが好ましい。太い部分が細い部分の1.7倍と3倍より細くなるため、このランスパイプをトーピードの開口に挿入する操作がより容易になる。
【0020】
太い部分の耐火物の厚さ、すなわち、主管の外周面からそれを覆う耐火物の表面までの距離は、ノズル管の突出方向側とその反対の背向方向側の厚さの比であるノズル突出方向側厚さ/背向方向側厚さが1.1〜4.5である。ノズル管の突出方向側の耐火物は当然にノズル管そのものを埋設するために厚くする必要があるがノズル管から噴出するガスにより攪拌されて浸食性をます溶湯から芯金を保護するためにも厚い耐火物を必要とする。このため、ノズル突出方向側の耐火物の厚さ/背向方向側の耐火物の厚さは少なくとも1.1であることが必要である。ノズル突出方向側厚さ/背向方向側厚さが大きくなると主管及びノズル管が位置する先端側の太い部分の最大直径相当長さが基部側の最大直径長さの3倍を超えて太くなりすぎる。このためノズル突出方向側厚さ/背向方向側厚さ4.5以下である必要がある。なお、好ましいノズル突出方向側厚さ/背向方向側厚さは1.5〜4.0、より好ましくは2.0〜3.5である。
【0021】
この太い部分の断面形状は円形状でも良いが、ノズル突出方向側の先端とその背向方向側の先端とを結ぶ方向が長く、その直角方向が短い長円形状、楕円形状、一端側が大きい卵形状のものが好ましい。具体的には、断面形状で、最も長い径に当たる長軸の長さに対するその直角方向の短軸の長さの比である長軸長さ/短軸長さは1.0より大きく1.8以下であるのが好ましい。太い部分の断面形状を長円形状とすることにより、この太い部分をトーピードの操作開口に挿入する作業が容易となり、低資源、低コストが可能となる。さらには、長軸方向はノズル管の延びる方向となり耐火物の厚さが厚くなるため、耐火物層の芯金からの脱落を少なくすることができる。
【0022】
なお、芯金の外周面にV字形状、T字形状あるいはY字形状のスタッドを固定し耐火物層中に埋設して芯金と耐火物層の一体性を高め、耐火物層の部分的な脱落を防止することは好ましいことである。
【0023】
芯金及び耐火物層の素材は従来のものを採用できる。
【発明の効果】
【0024】
本発明のランスパイプは、先端部分の太さが基部側部分の太さの3倍以内である。このためランスパイプをトーピードの開口に挿入する場合も容易に挿入できる。またこのランスパイプは直線的な棒状であるためランスパイプの延びる方向にランスパイプを送り込むことにより容易にトーピード内の操業部分に先端部を送り込むことができる。
【0025】
さらに、ノズル管の突出方向側の厚さがその反対の背向方向側の厚さの1.1〜4.5倍と異なる厚さとしている。このため、このランスパイプは先端側の太い部分の耐食性に優れ、特にノズル管の突出方向側の耐食性に優れている。
【0026】
1本の主管に複数個のノズル管を設けると1本の場合に比較してガス噴出に起因するノズルの振動を小さくすることができ、ノズル管の耐久性が増す。
【0027】
耐火物層の太い部分の断面形状を長円形状とすることにより耐火物層の芯金からの脱落を少なくすることができ、耐久性が増す。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1】実施例に示すランスパイプの主管の中心軸及び一方のノズル管の中心軸を含む断面の要部断面図である。
図2】実施例に示すトーピード用ランスパイプの2本のノズル管の中心軸を含む断面図である。
図3】参考として示すトーピード用ランスパイプの2本のノズル管の中心軸を含む断面図である。
図4】参考として示すトーピード用ランスパイプの主管の孔の断面積Soと2本のノズル管の孔の断面積の和Sの比S/Soと耐用寿命の関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
本発明の実施例1のランスパイプの主管の中心軸及び一方のノズル管の中心軸を含む断面の要部断面図を図1に、同じトーピード用ランスパイプの2本のノズル管中心軸を含む断面図を図2に示す。
【0030】
このトーピード用ランスパイプは芯金1を構成する鋼鉄製の主管11と2本の鋼鉄製のノズル管12,13とこれらの外周面を覆うキャスタブルで形成された耐火物層2とを有する。主管11は両端開口の直管で、図1においてはその基部側が省略されている。主管11の基部側の端部には図示しないフランジが一体的に固定され、図示しないガス吹き込み装置に着脱可能となっている。この主管11の先端部分の側面には、軸方向に長く周方向に接して列をなす2個の開口111,112が形成されている。また、主管11の先端側開口には円柱状の鉄ブロックよりなる栓115が固定されている。
【0031】
2本のノズル管12,13の長さはいずれもノズル官12,13の内径の3倍である。これらノズル管12,13は主管11より細い管で、主管11の孔の断面積の約45%の孔の断面積を持つ。2本のノズル管の孔の断面積の和は、主管の孔の断面積の約90%になる。2本のノズル管の形状は図1から明らかなように両端が斜め方向に切断されている。各ノズル管の主管に対する傾きは約115度である。また、2本のノズル管11のなす角度は約90度である。
【0032】
これらノズル管12,13はその一端が主管11の側面に形成された開口111,112に合わされて主管11と一体的に溶接されている。
【0033】
ガス及び処理剤の通路は、主管11の内周面と栓115の端面で区画される主通路10とノズル管12,13の内周面で区画されるノズル通路120,130とからなる。
【0034】
芯金1は前記した構成を持つ。
【0035】
耐火物層2は、上記芯金1を鋳型内に固定し、キャスタブルを鋳込んで形成したものである。なお、芯金1の主管11の外周面には金網が巻かれ、主管11の先端部分及びノズル管12,13の外周面にはV字形状及びY字形状のスタッドが予め固定せれ、キャスタブルに鋳込まれて耐火物層2内に埋設されている。これら金網及びスタッドは芯金1と耐火物層2の一体性の保持に寄与する。
【0036】
耐火物層2は、図1に示されているように、主管11の図示しない基部の端部を除く大部分を所定の厚さの筒状部21とし、先端側においては太い膨大部22とし、その間を中間部23としている。
【0037】
図2はノズル管12,13の中心軸を含む面で切断した端面図で、主管11の軸に対して傾斜した傾斜断面を示すものであるが、図2から明らかなように、膨大部22の断面形状は長円形をしており、長軸方向の一端側に主管11が位置し、他端側に2本のノズル管12,13がV字状に埋設されている。
【0038】
このランスパイプの棒状部21の外周径に当たる直径を100としたとき、膨大部22の直角断面の長軸方向距離を170としている。この長軸方向距離に対して直角の短軸方向距離は140である。また、膨大部22の主管11の外周面からそれを覆う耐火物の表面までの厚さは、ノズル管12,13の突出方向側の反対の背向方向側の厚さを100としたとき、ノズル管12,13の突出方向側の厚さは250である。
【0039】
本実施例のトーピード用ランスパイプは以上の構成を持つ。
【0040】
このトーピード用ランスパイプは溶銑処理用のガス、処理剤吹込み装置にその基部が固定され、先端側がトーピードの開口に挿し込まれ、トーピード内に保持されている溶銑にその膨大部22、中間部23及び棒状部21の先端側が埋没する状態とする。この操作はこのランスパイプが棒状で先端側にL字状の曲りが無いため、容易に挿し込めることができる。この状態でランスパイプは斜めに傾斜した状態で、2本のノズル管12,13は水平方向に位置する。
【0041】
この状態で主管11の基部側開口より処理ガスと処理剤が吹き込まれる。吹き込まれたガスと処理剤は主管11の主通路10を流れ、栓115の端面からなる底に当たり角度を変えて2本のノズル管12,13のノズル通路120,130に入り、それらの先端開口より溶銑に吹き込まれる。溶銑は吹き込まれたガスと処理剤に押されて流動しトーピード内で撹拌される。このランスパイプでは、ガス及び処理剤の溶銑中への吹込みに伴う振動が従来のL型ランスパイプに比較して少ない。これは噴出孔が2個と増え、噴出が分散されているため、膨大部22の断面形状が長円形及びノズル管12,13が短いためとも考えられる。
【0042】
吹き込まれたガスの分散と浮上に伴う撹拌により処理剤が効果的に溶湯と接触して所定の処理機能が果たされる。
【0043】
このランスパイプの耐久性は従来のL型ランスパイプを上回るものである。この耐久性はガス及び処理剤の溶銑中への吹込みに伴う振動が少ないための物理的なストレスが少なく、振動が原因でおきる耐火物の亀裂及び脱落による低寿命での廃棄頻度を下げる以外に、さらに、先端側の太い部分の耐火物層の厚さを厚くし、かつノズル管の突出方向の耐火物層の厚さを、反対側の背向側の耐火物層の厚さより厚いものとして耐火物層の強度を高いものとしたことに起因すると考えている。
【0044】
さらに、主管11の主通路10の底では一部の処理剤が栓115の底のプール41に堆積する。この堆積した処理剤に後から送られる処理剤が衝突し、処理剤の栓115の底面への衝撃を抑制し、栓115の損傷を抑える。
【0045】
このように本実施例のトーピード用ランスパイプは操作が容易であるとともに耐久性に富むものである。
【0046】
本実施例では、トーピード用ランスパイプの膨大部22の断面形状を図2に示すように長円形状とした。この断面形状を図3に示すようにトーピード用ランスパイプの膨大部の断面形状をノズル管の突出方向側を太く、他端側を細くすることもできる。この例では、肉厚の主管5を採用し、主管5より薄いノズル管52,53を採用している。そして、主管6を他端側に配置し、ノズル管52,53の突出方向側を太くし、両ノズル管52,53の周囲を分厚い耐火物層6内に位置するようにしている。
【0047】
この例に示すトーピード用ランスパイプではノズル管52,53の開口部の浸食が激しい溶鋼に対して優れた耐蝕性を持つ。
【符号の説明】
【0048】
1は芯金、11は主管、12,13はノズル管、2は耐火物層、21は棒状部、22は膨大部、23は中間部、115は栓である。
図1
図2
図3
図4