【課題を解決するための手段】
【0019】
本発明は、配合物中に1種または複数種のアルコキシ−ポリエチレングリコールを含有させることによって、例えば粘膜の表面に得られた組成物を適用した場合に、特定の利点が提供されるという発見に一部基づく。かかる製剤においてアルコキシ−ポリエチレングリコール(可溶性が低い治療薬に特に有用である)が使用された場合、治療薬はさらに可溶化することができるが、粘性かつ刺激性の可能性のある他の賦形剤、例えば、ポリエチレングリコールまたはプロピレングリコールが全体的に低減される、または排除されるため、得られた配合物は粘性が低く、粘膜への刺激が少ないことが発見されている。結果として、例えば、鼻腔内送達時に点鼻スプレーにより液滴に変換された場合、配合物の粘度が低いと、粘膜に治療薬を送達するのに最適化されたスプレーパターンが得られる。さらに、アルコキシ−ポリエチレングリコールを含有する配合物は、粘膜表面に適用した場合に、例えば経鼻投与後の鼻粘膜に生じる刺激(灼熱感)が少ない。さらに、鼻腔内に投与した場合、本発明の組成物は、他の特定の賦形剤と関連し得る望ましくない後味(例えば、石油のような後味)を最小限に抑える。
【0020】
一態様において、本発明は、治療薬と、式I:
R−O−(CH
2CH
2O)
n−H (I)
(Rは、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、またはシクロプロピルであり;オキシエチレン反復単位の平均数であるnは、約1〜約25の範囲の数である)によって表されるアルコキシ−ポリエチレングリコールと、を含有する液体医薬組成物を提供する。
【0021】
他の態様において、本発明は、可溶性が低い治療薬、例えば可溶性が低い有機治療薬を可溶化するための液体配合物を提供する。この組成物は、可溶性が低い治療薬と、式I:
R−O−(CH
2CH
2O)
n−H (I)
(式中、Rは(C
1−C
6)アルキルであり;
オキシエチレン反復単位の平均数であるnは、約1〜約25の範囲の数である)
によって表されるアルコキシ−ポリエチレングリコールと、を含有する。
【0022】
他の態様において、本発明は、本明細書に記載のアルコキシ−ポリエチレングリコール含有組成物を使用して、哺乳動物、例えばヒトに対象の治療薬を送達する方法を提供する。この組成物は、粘膜に、例えば鼻腔内薬物送達時に鼻粘膜に適用した場合に特に有用である。
【0023】
本発明のこれらのかつ他の態様および利点は、以下の詳細な説明および特許請求の範囲を考察すれば明らかとなるであろう。
【0024】
本発明は、配合物中に1種または複数種のアルコキシ−ポリエチレングリコールを含有させることによって、配合物を例えば粘膜に適用した場合に、他の賦形剤と比較して特定の利点を提供するという発見に一部基づく。例えば、かかる配合物においてアルコキシ−ポリエチレングリコールが使用された場合、治療薬(例えば、可溶性が低い治療薬)は、他の賦形剤、例えばポリエチレングリコール(さらに詳しくはPEG400)を使用した場合よりも、容易にかつ多量で可溶化することができることが発見されている。しかしながら、他の粘性かつ刺激性賦形剤が全体的に低減される、または排除されるため、得られる配合物は粘性が低く、粘膜への刺激が少ない。結果として、例えば、鼻腔内送達時に点鼻スプレーにより液滴に変換された場合、配合物の粘度が低いと、粘膜に治療薬を送達するのに最適化されたスプレーパターンが得られる。さらに、1種または複数種のアルコキシ−ポリエチレングリコールを含有する配合物は、粘膜表面に適用した場合に、例えば経鼻内投与後の鼻粘膜に生じる刺激(灼熱感)が少ない。さらに、鼻腔内に投与した場合、本発明の組成物は、他の賦形剤、例えば、プロピレングリコールを使用した場合よりも、望ましくない後味(例えば、石油のような後味)が少ない。
【0025】
特定の環境下において、アルコキシ基は、粘膜表面上の投与部位への組成物の生体付着性も高め、それによって、投与部位での組成物の持続時間が長くなる。これにより、最終的に吸収される治療薬の量が増加する。
【0026】
I−配合物
一態様において、本発明は、治療薬と、式I:
R−O−(CH
2CH
2O)
n−H (I)
(式中、Rは、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、またはシクロプロピルであり;nは、オキシエチレン反復単位の平均数であり、かつ約1〜約25の範囲の数である)によって表されるアルコキシ−ポリエチレングリコールと、を含有する液体医薬組成物を提供する。
【0027】
他の態様において、本発明は、可溶性が低い治療薬を可溶化するための液体配合物を提供する。液体医薬組成物は、可溶性が低い治療薬、例えば可溶性が低い有機治療薬と、式I:
R−O−(CH
2CH
2O)
n−H (I)
(式中、Rは、(C
1−C
6)アルキルであり;nは、オキシエチレン反復単位の平均数であり、かつ約1〜約25の範囲の数である)によって表されるアルコキシ−ポリエチレングリコールと、を含有する。この配合物は通常、20℃、25℃、30℃、35℃または40℃で液体状態である。特定の配合物は好ましくは、37℃で液体配合物である。
【0028】
「可溶性が低い治療薬」という用語は、生物活性、およびpH7および20℃で約1mg/mL未満の水溶性を有する化合物を意味する。特定の実施形態において、可溶性が低い治療薬は、分子量1500g/mol未満、好ましくは500g/mol未満を有する有機化合物である。特定の実施形態において、可溶性が低い治療薬は、pH7および20℃で約0.5mg/mL未満、約0.3mg/mL未満または約0.1mg/mL未満の水溶性を有する化合物、例えば有機化合物である。
【0029】
さらに、「アルキル」という用語は、当技術分野では認識されており、直鎖アルキル基、分枝鎖アルキル基、シクロアルキル(脂環式)基、アルキル置換シクロアルキル基、およびシクロアルキル置換アルキル基などの飽和脂肪族基を包含する。「(C
1−C
6)アルキル」という用語は、炭素原子1〜6個を有するアルキル基を意味する。代表的なアルキル基としては、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、s−ブチル、イソブチル、t−ブチル、ペンチル、ヘキシル、シクロプロピル、シクロブチル、シクロプロピルメチレン、シクロペンチル、シクロブチルメチレン、シクロブチルエチレン、シクロヘキシル、シクロプロピルプロピレン、シクロブチルエチレン、およびシクロペンチルメチレンが挙げられる。例えば、シクロプロピルメチレンという用語は当技術分野では認識されており、次式:
【0030】
【化1】
【0031】
を有する基を意味する。
【0032】
特定の実施形態において、アルコキシ−ポリエチレングリコールは、組成物の約0.1%(v/v)〜約80%(v/v)、または約0.5%(v/v)〜約70%(v/v)を占める。特定の実施形態において、アルコキシ−ポリエチレングリコールは、組成物の約5%(v/v)〜約80%(v/v)、または約30%(v/v)〜約75%(v/v)または約40%(v/v)〜約70%(v/v)を占める。特定の親水性薬物に関しては、アルコキシ−ポリエチレングリコールは、組成物の約0.1%(v/v)〜約80%(v/v)、または約0.5%(v/v)〜約70%(v/v)、または約1%(v/v)〜約60%を占める。特定の親油性薬物に関しては、アルコキシ−ポリエチレングリコールは、組成物の約1%(v/v)〜約80%(v/v)、または約2%(v/v)〜約65%(v/v)、または約5%(v/v)〜約50%を占める。さらに、治療薬は、組成物の約0.001%(w/v)〜約20%(w/v)または組成物の約0.1%(w/v)〜約10%(w/v)を占める。
【0033】
医薬組成物は、範囲約4.5〜約8.5、または約4.5〜約7.5または約4.5〜約6.5、または約5.5〜約8.5または約6.5〜約8.5、または約5.5〜約7.5のpHを有し得る。
【0034】
上述のように、アルコキシ−ポリエチレングリコールを使用する利点の1つは、他の賦形剤、例えば特定のポリエチレングリコールおよびプロピレングリコールの代わりに、または他の賦形剤の量を低減するために使用し、その結果、得られる配合物の粘度を低減することができることである。得られる配合物の粘度を低減することによって、治療薬を鼻腔内投与するための、より均一な噴霧特性を有するスプレーを作ることが可能である。温度20℃での得られた医薬組成物は、範囲約1.5cP〜約60cP、または約2cP〜約50cP、または約3cP〜約40cP、または約4cP〜約30cP、または約5cP〜約25cPの粘度を有する。
【0035】
例示的なアルコキシ−ポリエチレングリコール、治療薬、および本発明の組成物を製造するのに有用な他の賦形剤が、以下のセクションに記述されている。
例えば、本発明は以下の項目を提供する。
(項目1)
治療薬と、式I:
R−O−(CH
2CH
2O)
n−H (I)
(式中、Rは、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、またはシクロプロピルであり;
nは、約1〜約25の範囲の数である)
によって表されるアルコキシ−ポリエチレングリコールと、を含む液体医薬組成物。
(項目2)
前記治療薬が、1500g/mol未満の分子量を有する有機化合物である、項目1に記載の医薬組成物。
(項目3)
可溶性が低い治療薬と、式I:
R−O−(CH
2CH
2O)
n−H (I)
(式中、Rは、(C
1−C
6)アルキルであり;
nは、約1〜約25の範囲の数である)
によって表されるアルコキシ−ポリエチレングリコールと、を含む液体医薬組成物。
(項目4)
前記アルコキシ−ポリエチレングリコールが、前記組成物の約0.5%(v/v)〜約70%(v/v)を占める、項目1〜3のいずれか一項に記載の医薬組成物。
(項目5)
前記アルコキシ−ポリエチレングリコールが、前記組成物の約1%(v/v)〜約60%(v/v)を占める、項目1〜4のいずれか一項に記載の医薬組成物。
(項目6)
前記アルコキシ−ポリエチレングリコールが、前記組成物の約5%(v/v)〜約50%(v/v)を占める、項目1〜4のいずれか一項に記載の医薬組成物。
(項目7)
前記治療薬が、前記組成物の約0.001%(w/v)〜約20%(w/v)を占める、項目1〜6のいずれか一項に記載の医薬組成物。
(項目8)
前記治療薬が、前記組成物の約0.1%(w/v)〜約10%(w/v)を占める、項目1〜6のいずれか一項に記載の医薬組成物。
(項目9)
水をさらに含む、項目1〜8のいずれか一項に記載の医薬組成物。
(項目10)
前記水が、組成物の約10%(v/v)〜約95%(v/v)を占める、項目9に記載の医薬組成物。
(項目11)
緩衝剤をさらに含む、項目1〜10のいずれか一項に記載の医薬組成物。
(項目12)
保存剤をさらに含む、項目1〜11のいずれか一項に記載の医薬組成物。
(項目13)
温度20℃の前記組成物が、範囲約1.5cP〜約60cPの粘度を有する、項目1〜12のいずれか一項に記載の医薬組成物。
(項目14)
温度20℃の前記組成物が、範囲約5cP〜約25cPの粘度を有する、項目1〜12のいずれか一項に記載の医薬組成物。
(項目15)
前記組成物が、範囲約4.5〜約8.5のpHを有する、項目1〜14のいずれか一項に記載の医薬組成物。
(項目16)
前記組成物が、範囲約5.5〜約7.5のpHを有する、項目1〜14のいずれか一項に記載の医薬組成物。
(項目17)
前記組成物が無菌である、項目1〜16のいずれか一項に記載の医薬組成物。
(項目18)
前記組成物が、少なくとも約10
3の滅菌保証レベルを有する、項目1〜17のいずれか一項に記載の医薬組成物。
(項目19)
前記治療薬の1重量%未満が、20℃で30日間保存後に分解する、項目1〜18のいずれか一項に記載の医薬組成物。
(項目20)
前記治療薬の1重量%未満が、20℃で6ヶ月間保存後に分解する、項目1〜18のいずれか一項に記載の医薬組成物。
(項目21)
前記組成物が、対象に鼻腔内投与されると、前記治療薬が治療薬の投与後30分以内に対象の血液中でピーク濃度(T
max)を有するように配合されている、項目1〜20のいずれか一項に記載の医薬組成物。
(項目22)
前記組成物が、対象に鼻腔内投与されると、前記治療薬が治療薬の投与後10分以内に対象の血液中でピーク濃度(t
max)を有するように配合されている、項目1〜20のいずれか一項に記載の医薬組成物。
(項目23)
Rはメチルである、項目1〜23のいずれか一項に記載の医薬組成物。
(項目24)
nが3〜15である、項目1〜24のいずれか一項に記載の医薬組成物。
(項目25)
前記アルコキシ−ポリエチレングリコールが、mPEG350、mPEG550、またはその組み合わせである、項目1〜24のいずれか一項に記載の医薬組成物。
(項目26)
前記アルコキシ−ポリエチレングリコールが、メトキシ−トリエチレングリコール(m3EG)、メトキシ−テトラエチレングリコール(m4EG)、メトキシ−ペンタエチレングリコール(m5EG)、メトキシ−ヘキサエチレングリコール(m6EG)、メトキシ−ヘプタエチレングリコール(m7EG)、メトキシ−オクタエチレングリコール(m8EG)、メトキシ−ノナエチレングリコール(m9EG)、メトキシ−デカエチレングリコール(m10EG)、メトキシ−ウンデカエチレングリコール(m11EG)、メトキシ−ドデカエチレングリコール(m12EG)、メトキシ−トリデカエチレングリコール(m13EG)、またはメトキシ−テトラデカエチレングリコール(m14EG)である、項目1〜24のいずれか一項に記載の医薬組成物。
(項目27)
前記治療薬が、500g/mol未満の分子量を有する、項目1〜26のいずれか一項に記載の医薬組成物。
(項目28)
前記治療薬が、pH7および20℃で約0.3mg/mL未満の水溶性を有する、項目1〜26のいずれか一項に記載の医薬組成物。
(項目29)
前記治療薬が、pH7および20℃で約0.1mg/mL未満の水溶性を有する、項目1〜28のいずれか一項に記載の医薬組成物。
(項目30)
前記治療薬がベンゾジアゼピンである、項目1〜29のいずれか一項に記載の医薬組成物。
(項目31)
前記治療薬がミダゾラムである、項目30のいずれか一項に記載の医薬組成物。
(項目32)
表1、2、5、6、または7の配合物を含む、医薬組成物。
(項目33)
哺乳動物に治療薬を投与する方法であって、哺乳動物の粘膜表面に、項目1〜32のいずれか一項に記載の医薬組成物を投与することを含む、方法。
(項目34)
前記粘膜表面が、鼻粘膜、舌下粘膜、口腔粘膜、肺粘膜、眼粘膜、または直腸粘膜である、項目33に記載の方法。
(項目35)
前記粘膜表面が鼻粘膜である、項目33に記載の方法。
(項目36)
前記治療薬が、治療薬の投与後30分以内に哺乳動物の血液中でピーク濃度(T
max)を有する、項目33〜35のいずれか一項に記載の方法。
(項目37)
前記治療薬が、治療薬の投与後10分以内に哺乳動物の血液中でピーク濃度(T
max)を有する、項目33〜35のいずれか一項に記載の方法。
(項目38)
前記医薬組成物が、約1μL〜約1000μLの量で投与される、項目33〜37のいずれか一項に記載の方法。
(項目39)
前記医薬組成物が、約50μL〜約300μLの量で投与される、項目38に記載の方法。
(項目40)
前記哺乳動物がヒトである、項目33〜39のいずれか一項に記載の方法。