(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
Rが、1から10個の炭素原子を含む炭化水素鎖、1から10個の炭素原子を含むハロゲン化された炭化水素鎖、またはN、OおよびSの中から選択される1つまたは複数のヘテロ原子によって中断されている、1から10個の炭素原子を含む炭化水素鎖であることを特徴とする、請求項1に記載の電子伝導性の平行なフィブリル有機超分子種。
電子デバイス、光電子デバイス、発光ダイオード(LED)、有機発光ダイオード(OLED)、電界効果トランジスタ(FET)、有機電界効果トランジスタ(OFET)、光起電デバイス、または太陽電池である、請求項10に記載の導電性デバイス。
前記電子伝導性の平行なフィブリル有機超分子種が、前記導電性表面(S)および(S')に対して放射状に伸展するナノワイヤーの平行束方向に配向されていることを特徴とする、請求項12または13に記載のデバイス。
前記電子伝導性の平行なフィブリル有機超分子種が、前記2つの金属材料の前記表面(S)および(S')を離隔する距離に相当する長さを有することを特徴とする、請求項12から14のいずれか一項に記載のデバイス。
Rが、1から10個の炭素原子を含む炭化水素鎖、1から10個の炭素原子を含むハロゲン化された炭化水素鎖、またはN、OおよびSの中から選択される1つまたは複数のヘテロ原子によって中断されている、1から10個の炭素原子を含む炭化水素鎖であることを特徴とする、請求項16に記載の方法。
【発明を実施するための形態】
【0011】
より具体的には、第一の態様によれば、本発明の目的は、固体導電性材料の表面(S)を改質するための方法であって、一般的に負の電位差を、前記表面(S)と前記表面(S)に対向して位置づけられた別の導電性固体材料の表面(S')との間に印加し、同時に下記式(I)
【0013】
[式中、
同一であるかまたは異なっている(好ましくは同一である)基-A
1-および-A
2-のそれぞれは、単結合(simple covalent bond)、または基-O-もしくは-S-、-NH-、NH(C=O)または-NR
3-、好ましくは基-O-を表し、
同一であるかまたは異なっている基R
1、R
2およびR
3 (R
1およびR
2は好ましくは同一である)のそれぞれは、
芳香族基、好ましくはベンジル基、または
4から30個、例えば5から20個までの炭素原子を含む(好ましくは直鎖状の)炭化水素鎖、好ましくは有利には直鎖状の脂肪鎖、とりわけアルキル基、または
ポリエチレングリコール鎖
を表し、
Rは、好ましくは直鎖状または分枝鎖状の炭化水素鎖であり、有利には1から10個までの炭素原子を含み、場合によりハロゲン化され、且つN、OおよびSから選択される1または数個のヘテロ原子で場合により中断されている、末端基であり、
Rは、より好ましくは、場合によりハロゲン化され、好ましくは1から8個までの炭素原子を含む、アルキル基である]
に適合するトリアリールアミンを溶液中に含む液体媒体と前記表面(S)を接触させ、
一方でトリアリールアミン(1)を、それらを少なくとも部分的にトリアリールアンモニウムラジカルに変換するのに適した電磁放射線、または化学的もしくは電気化学的酸化に供し、この照射は、典型的には、塩素系溶媒(ジクロロメタン、クロロホルム、テトラクロロエタン、ジクロロベンゼン等)中、太陽光によって達成できる、
ステップ(E)を含む方法である。
【0014】
本発明の範囲内で本発明者によって行われた作業により、上記で定義した通りのステップ(E)の適用は、極めて単純且つ迅速な手法で、フィブリル(fibrillar)形状を持ち(すなわち、全体的に微小の繊維の形態を有し)、固体導電性材料の表面(S)上に固定化された、導電性有機種の付着(deposit)を得る可能性を与えることを示すことが可能になった。本発明の目的であるこれらの導電性フィブリル有機種は、参照により本明細書に組み込まれる、Angew. Chem. Int.編、第49巻、6974〜6978頁(2010)における本発明者による解決策において記述された種類の会合の、式(I)のトリアリールアミンの超分子会合からなり、これらのフィブリル超分子種は、本発明に従って、ステップ(E)の終わりに固体導電性材料の表面(S)上に特異的にグラフトされる。
【0015】
本発明は、第二の態様によれば、2つの導電性金属材料を含む導電性材料またはデバイスであって、該材料の表面、それぞれ(S)および(S')が、式(I)のトリアリールアミンの会合を含む導電性フィブリル有機超分子種を含む、有機材料によって電気的に相互接続されている、導電性材料またはデバイスに関する。
【0016】
「導電体」は、電気的伝導性を示すものである。
【0017】
「電気的に相互接続されている」は、好ましくは10
3S.m
-1を上回る、一般的には10
4S.m
-1から10
5S.m
-1までの導電性を有する能力を意味する。本発明のデバイスは、このmA範囲に到達する電流(I)値を有する。コンダクタンスは、一般的に数十mSオーダー(程度)である。好ましい実施形態によれば、本発明のデバイスは、有利にはオーム抵抗を有する。
【0018】
別の態様によれば、本願の目的は、前述した超分子種を調製するための方法である。この方法は、式(I)のトリアリールアミンを含有する液体媒体を、それらを少なくとも部分的にトリアリールアンモニウムラジカルに変換するのに適した電磁放射線(典型的には太陽光放射)にまたはさらに化学的もしくは電気化学的酸化に供し、その間に、該液体媒体を、典型的には200から600mVまで、例えば250から500mVの間の電場に供するステップを含む。
【0019】
本発明の方法によれば、これらのフィブリル超分子種は、ステップ(E)の終わりに固体導電性材料の表面(S)上に特異的にグラフトされる。これらの超分子種は、典型的には、10nmから1,000nm程度の、とりわけ50から1,000nmの間の長さ、および5から50nmまで、例えば10から50nmまでの直径を有する、微小な繊維の形状を有する。ステップ(E)の間の、表面(S)および(S')の間の電位差の印加を考慮すれば、これらの繊維は、両表面の間且つ電場線と平行に、局在化された状態で形成される。その上、該繊維は、表面(S)上に体系的にグラフトされ、これにより、すすいだ後の遊離したフィブリル超分子種(すなわち、電極間をブリッジしていない)の形成の抑制が可能になる。そのため、この方法により、現在の技術とは異なり、両表面の間に位置する領域において排他的に、導電性有機化合物の極めて局在化された付着を実現することが可能である。予想外にも、この種類の付着を実現するための現存する技術を考慮すると、この正確な局在化はさらに、高価または複雑な手段を適用する必要なく、直接的に実現される。そのため、一般的に、単純、効率的且つ安価な手法の(単に、溶液中の式(I)の化合物を表面(S)および(S')両方の間に導入することによる、これらの表面の両方の間に単純な電位差を印加することによる、ならびに集合体を、典型的には太陽光の照射に供することによる)ステップ(E)は、導電性固体の表面に、電気的伝導を持つ有機フィブリル構造をグラフトする可能性を与える。
【0020】
特に興味深い実施形態によれば、ステップ(E)は、表面(S)上に形成されたフィブリル超分子会合が表面(S')と接触するように、表面(S)および(S')の間を十分に短い距離にして行われる。この場合、ステップ(E)は、導電性表面(S)および(S')の電気接続につながる。典型的には、この場合、互いに対向する表面(S)および(S')は、1ミクロン以下だけ離れているか、または、最低でも、表面(S')の領域から1ミクロン以下(例えば10から1,000nmまで)の距離で、表面(S)の少なくとも1つの領域が存在する。優先的に、表面(S)および(S')の電気接続が求められている場合、後者は、好ましくは10から1,000nm、例えば50から500nmの範囲である両表面の間のギャップと平行または実質的に平行である。
【0021】
特定の実施形態によれば、前記導電性材料またはデバイスは、金属/有機界面を有し、表面(S)および(S')は、10から500nm、好ましくは50から200nmまでの距離だけ離れており、ここで、フィブリル有機超分子種を含む前記有機材料は、両方の金属材料の表面(S)および(S')を離隔する間隔を満たしている。前記間隔は、典型的には80±20nmである。これを《ナノギャップ》と称する。
【0022】
代替によれば、本発明の材料またはデバイスは、10μmから1,000μmの間に含まれる、好ましくは50から500μmまでの、互いに対向する表面(S)および(S')の長さを有する。前記長さは、典型的には約100μmである。
【0023】
好ましい代替によれば、フィブリル有機超分子種は、導電性表面(S)および(S')に対して放射状に伸展している《ナノワイヤー》の平行の束として、すなわち、フィブリル種の最大の長さが前記表面(S)および(S')を接合するように、配向されている。
【0024】
フィブリル有機超分子種は、その長さが両方の金属材料の表面(S)および(S')を離隔している距離に相当するため、好ましい。
【0025】
好ましくは、金属材料は、導電性電極の金属材料である。材料としては、遷移金属から、好ましくは金(Au)、ニッケル(Ni)、チタン(Ti)、銀(Ag)、鉄(Fe)、プラチナ(Pt)、銅(Cu)、コバルト(Co)、亜鉛(Zn)、クロム(Cr)、マンガン(Mn)から選択される金属、またはこれらの金属の1つもしくは複数を含む合金が好ましい。電極は、金およびニッケル、またはニッケルおよび鉄、または銅および金、または銀および金を含むまたはそれらからなる、好ましくは金を伴う、電極の会合を電極の表面に含み得る。
【0026】
本発明はさらに、本発明のフィブリル有機超分子種を含むまたはそれからなる2つの金属電極間の界面(インターフェース)に関する。
【0027】
本発明は、2つの導電性電極の表面(S)および(S')を一緒に接続するための、式(I)に適合するトリアリールアミンを含むフィブリル有機超分子種の使用にも関する。電極は、前述した金属電極であってよい。
【0028】
好ましくは、少なくとも1つの電極、好ましくは使用される電極の全体(例えば、正電極および負電極)が、遷移金属を含む。
【0029】
代替によれば、少なくとも1つの電極の導電性金属は、金(Au)蒸着で被覆されている。好ましくは、使用される電極(例えば、正電極および負電極)の全体が、金蒸着を含む。
【0030】
上述した特定の実施形態における表面(S)および(S')の電気接続を作製するためにステップ(E)が使用される特定の場合において、これは、体系的にステップ(E)の場合と同じく、他の領域に導電性有機化合物を付着するリスクは全くなく、両表面の間に含まれる空間内における排他的に局在化された状態でのフィブリル超分子種の形成をもたらす。該方法は、2つの導電性素子を接続するために有機化合物を適用するほとんどの技術とは異なり、特に選択的であり標的化されることが結果的に分かる。さらに、形成されるフィブリル超分子種は、表面(S)および(S')の間の印加電場の線に平行に、すなわち、導電性表面(S)および(S')に対して放射状に伸展する《ナノワイヤー》の平行束に沿って自ら配向され、これは、両表面の間の最大電気接続を確実にするための最適な構造である。さらに、接続は、最大でも1秒程度の応答時間で迅速に達成される。
【0031】
さらに、この特に好都合な構造に加えて、予想外にも、ステップ(E)中に形成されるフィブリル超分子種が非常に良好な導電体であり、現在知られている最良の有機導電体と同じ程度の導電性(典型的には、1メートル当たり数十キロシーメンス程度)を持ち、さらに、ほとんどの導電性ポリマーとは異なって、オーム性導電体の挙動を持つことが分かっている。換言すれば、超分子種は、とりわけ温度(とりわけ4から298Kの範囲内)に伴って抵抗が減少する、概略的に金属ナノワイヤーのように挙動する。特に驚くべき場合において、この効果は、多くの導電性有機ポリマーにおいてドーパントとして慣例的に使用される追加の金属カチオンの適用を必要とすることなく、純粋に有機物である種を用いて、本発明の範囲内で得られる。金属化合物の適用なく行えるというこの可能性により、環境に対する毒性および波及効果の観点から関連する欠点を回避することが可能であり、これはさらに、本発明の方法の特に興味深い態様である。
【0032】
さらに、より一層予想外の場合において、本発明者は、ステップ(E)において生成されるフィブリル超分子種が、表面(S)および(S')との接点における特に低い接触抵抗をもたらすことを、本発明の範囲内で明らかにした。実際、最新技術において推奨されているほとんどの分子を用いた場合の接触抵抗が最低でも10kΩ.cmオーダー(程度)であるのに対し、得られる接触抵抗は、ほとんどの場合において10
-2Ω.cmオーダー(程度)の低さとなり得る。
【0033】
その上、電気伝導体として使用されるほとんどの有機化合物とは異なり、ステップ(E)で調製されるフィブリル超分子種は、とりわけ表面(S)および(S')に存在する導電性材料が金を含む場合に、導電性の観点で良好な結果につながることは強調されるべきである。良好な結果は、表面(S)および(S')に存在する導電性材料の性質にかかわらず、さらに一般的に得られ、このことが該方法を特にモジュール式(modular)にしている。
【0034】
このように、極めて単純且つ直接的な手法でのステップ(E)は、数十から数百ナノメートルだけ互いに離隔されている導電性物体間に効率的な電気接続を作製させ、これは該物体の正確な物理化学的性質にかかわらないことが分かっている。予想外にも、この特に有効な電気接続は、複雑または高価な技術を適用する必要なく、ステップ(E)の間の式(I)の化合物の単純な自己会合によって得られる。その結果としてステップ(E)において調製されるフィブリル超分子種は、合成がはるかに複雑な、配向性共役ポリマー等の有機化合物の極めて興味深い代替である。
【0035】
これらの様々な利点に加えて、表面(S)上に付着させたフィブリル超分子種が室温で安定であり、これらの種を形成するためにステップ(E)において使用した溶媒を除去させた場合、さらに高温の場合を含めてさらに一層安定であることを、本発明者は本発明の範囲内でさらに示した。その結果として、本発明の方法においてはほとんどの場合、ステップ(E)に続いて、ステップ(E)において使用された溶媒を除去するためのステップ(E')があり、該ステップは、典型的には、単純なすすぎによって実現され得る。このステップ(E')を適用することにより、表面(S)および場合により(S')上に付着したフィブリル超分子種を安定させることが可能であり、これらの種は一般的に、100℃程度の温度になった場合であっても、安定であり、且つ表面(S)および必要ならば表面(S')に固定されたままである。このステップ(E')により、表面(S)と結合している超分子種の形成に関与していない、見込みのある化合物を除去することも可能である。
【0036】
反対に、溶媒の存在下では、フィブリル超分子種は、可溶化形態の化合物(I)を含む溶液の形成につながるように、高温で、特に100℃程度の温度で分解する傾向があることに留意すべきである。この特異性は、ステップ(E)のフィブリル超分子種の形成を可逆的にする。そのため、必要に応じて、ステップ(E)の終わりに得られる電気接続は、溶媒が除去されていなければ、媒質を100℃程度の温度にすることによって非常に簡単に破壊できる。この可能性により、例えば、電気または電子回路の製造中に考えられる接続エラーを補正することが可能である。ステップ(E')が適用された場合、そのような可逆性を考慮することが依然として可能である。そこで、フィブリル超分子種を分解するためには、これらの種を溶媒の存在下に戻し、次いで媒質の温度を100℃に上昇させれば十分である。この方法の可逆性はさらに、その多数の長所の1つであり、それによってこの方法を、工業用途に最も適するようにする。式(I)の化合物からのフィブリル超分子種の形成のこの可逆性により、それらにメモリーを作製させることが考慮できる。
【0037】
ここで、本発明の様々な利点、特色および優先的な実施形態をさらに詳細に記述する。
【0038】
式(I)のトリアリールアミン
好ましくは、ステップ(E)において使用される式(I)のトリアリールアミンは、同一分子の集団である。しかしながら、所定の実施形態によれば、数種の異なるトリアリールアミンの混合物の使用は除外されていない。
【0039】
本発明の用途によく適応する一実施形態によれば、ステップ(E)において使用される式(I)のトリアリールアミンは、基-A
1-および-A
2-のそれぞれが基-O-である化合物である。
【0040】
その上、概して興味深いことに、ステップ(E)において使用される式(I)のトリアリールアミンにおいて、基R
1およびR
2のそれぞれが、独立に、
ベンジル基、または
典型的には6から18個の炭素原子、好ましくは7から10個の炭素原子を含む、有利には直鎖状のアルキル基
を表すことが判明している。
【0041】
そのため、興味深い実施形態によれば、ステップ(E)において使用される式(I)のトリアリールアミンは、例えば、以下の式(1a)
【0043】
[式中、
同一であるかまたは異なっている(好ましくは同一である)基R
1およびR
2のそれぞれは、前述した意味の1つを有し、好ましくはベンジル基、または6から18個、例えば7から10個まで、とりわけ8個の炭素原子を含む、有利には直鎖状アルキル基を表し、
Aは、水素基-H;ハロゲン基、例えば基-Cl;または典型的には1から8個の炭素原子(例えば、5、6または7個の炭素原子)を含むアルキル基である]
に適合し得る。
【0044】
本発明の用途に適合するトリアリールアミンは、とりわけ、上記の式(Ia)[式中、R
1、R
2およびAは、下記の意味の1つを有する:
- R
1 = R
2 = C
8H
17 (直鎖状)であり、且つA= Clであるか、または
- R
1 = R
2 = C
8H
17 (直鎖状)であり、且つA= Hであるか、または
- R
1 = R
2 = C
8H
17 (直鎖状)であり、且つA= C
6H
13であるか、または
- R
1 = R
2 =ベンジルであり、且つA= Hであるか、または
- R
1 = R
2 =ベンジルであり、且つA= Clである]
に適合する化合物を非限定的に含む。
【0045】
これらの化合物を調製するための方法は、とりわけ、Angew. Chem. Int.編、第49巻、6974〜6978頁(2010)において記述された。
【0046】
ステップ(E)において適用されるトリアリールアミンの正確な性質にかかわらず、トリアリールアミンは溶媒内で適用される。この溶媒は、ステップ(E)において使用される式(I)の化合物を可溶化することができるすべての溶媒から選択され得る。この範囲内のよく適応する溶媒は、クロロホルム、ジクロロメタン、またさらには1,1,2,2-テトラクロロエタン等の塩素系溶媒である。
【0047】
この溶媒を除去するためのステップ(E')は、典型的には、これらの同じ塩素系溶媒の1つをすすぎ溶媒として使用することによって行われ得る。
【0048】
トリアリールアミンは、一般的に、ステップ(E)において、1〜100mmol/L程度、好ましくは5〜20mmol/Lの間の濃度を有する溶液として適用される。そうした溶液は、室温で、最新技術から公知である導電性有機ポリマーの通常の組成物よりも明らかにより低い粘度の液体組成物であり、この低粘度により、このタイプのポリマーを使用する方法と比較して制御および取り扱いの改良が可能になり、これがさらに本発明の方法の無視できない利点となっている。
【0049】
ステップ(E)において印加される電位差
本発明の方法において、これらの表面両方の間に位置する空間中に電場を誘起するために、表面(S)および表面(S')の間に電位差が印加される。少なくとも表面(S)上にフィブリル超分子種のグラフトを誘導するように、一般的にこの電位差は負である。
【0050】
この電位差の絶対値は、求められている効果を誘導するために十分なものであるべきだが、導電性が低くなりすぎないように、高くしすぎないようにすべきである。その上、電位差の値は、表面(S)および(S')の間の距離に適応すべきである。示唆している通り、80〜100nm程度の表面(S)および(S')の間の距離において、例えば、ステップ(E)の間に表面(S)および(S')の間に印加される電位差の絶対値は、好ましくは10〜700mV程度、より優先的に50〜500mVまで、例えば100〜400mVの間、とりわけ200〜400mVの間である。
【0051】
表面(S)および(S')の間の同じギャップについて、前述した式(Ia)の化合物の使用の特定の場合において、最も特定すれば、R
1 = R
2 = C
8H
17且つA= Clである式(Ia)の化合物の場合において、ステップ(E)の間に表面(S)および(S')の間に印加される電位差の絶対値は、好ましくは250〜350mVの間に含まれ、典型的には300mV程度である。
【0052】
電位差の確立は、それ自体が公知である任意の手段に従って遂行することができ、最も単純なのは、求められている電圧を送達する発電機の端子に表面(S)および(S')を接続することである。
【0053】
代替によれば、電位差の印加は、固体導電性材料の表面(S)および(S')を、トリアリールアミンを含む溶液と接触させる前に開始する。別の代替によれば、電位差の印加は、この接触の後に開始する。別の代替によれば、電位差の印加は、この接触の時に開始する。
【0054】
好ましい代替によれば、光照射後、電極間に少なくとも0.1V、好ましくは少なくとも0.3Vの初期電位差が印加される。
【0055】
ステップ(E)において印加される電磁放射線
ステップ(E)の間、式(I)の化合物を、それらを活性化する、すなわち少なくとも部分的にトリアリールアンモニウム(triaryalammonium)ラジカルに変換することができる電磁放射線による照射に供する。
【0056】
この目的のために使用される放射線は、求められている変換を実現することができるエネルギーを持つ波長を少なくとも含有する。式(I)の所定の化合物について、この波長は、一般的にUV可視光吸収スペクトル上の化合物の吸収ピークλ
maxに相当するため、決定することが非常に容易である。
【0057】
例えば、R
1 = R
2 = C
8H
17且つA= Clである式(Ia)の化合物について、有効な波長は約350〜365nmに位置する。
【0058】
一般的に、式(I)の所定の化合物を活性化するために有用な波長は、太陽光のスペクトルの一部である。その結果として、ステップ(E)の照射は、有利なことに、特定の実施形態に従って、ステップ(E)の媒体を太陽光放射に供することによって行われ得る。この特に単純且つ安価な実施形態により、該方法を行うことが非常に容易になる。
【0059】
代替として、ステップ(E)は、太陽光スペクトルの一部分のみを使用することによって行うことができる。この場合、使用される波長は、有利には、少なくともλ
max-25nmからλ
max+25nmの間に含まれる波長、より優先的には、少なくともλ
max-50nmからλ
max+50nmの間に含まれる波長を含む。
【0060】
照射に関しては、その出力が化合物(I)に基づくフィブリル超分子種の形成に影響を及ぼすことに留意すべきである。原則として、これらの種は、出力が高くなるにつれてより迅速にすべてを形成する。それでもやはり、高すぎる照射出力はラジカル重合反応の誘導等の寄生現象(parasitic phenomena)をもたらし得るため、回避すべきである。示唆している通り、特に前述した式(Ia)の化合物について、100W程度の出力が適切であり(例えば、50から200Wの間、すなわち、間隔に基づくがそれより低くてもよい10W.cm
-2程度、および適用される照射時間に従い少なくとも0.01W.cm
-2程度の低さの出力)、一方で、1,000Wの出力は得られる結果の質に有害である。
【0061】
照射は、例えば、触媒量(典型的には1%)のDDQ (ジクロロジシアノキノン)等の酸化剤を使用することにより、化学酸化ステップで置き換えることができる。トリアリールアミン誘導体を酸化させることによって電気化学的に、フィブリル自己組織化の開始剤であるラジカルを形成することも可能である。
【0062】
適用される実施形態にかかわらず、本発明のステップ(E)および(E')を行うことは、非常に単純且つ安価である。この主題については、前述した利点に加えて、これらのステップが有利なことに室温で行われ得ることがさらに強調されるべきである。
【0063】
その適用の容易さおよびその優れたモジュール性により、本発明の方法は、多種多様な用途に役立つ。
【0064】
特に、ステップ(E)および(E')は、2つの電気伝導体、例えば電子回路の2つの構成要素を一緒に接続するために使用され得る。この範囲内で、本発明の方法は、小型またはさらにナノメーター回路を含む任意の規模で使用され得る。
【0065】
本発明の方法の特定の用途は、局所的に中断された電子回路の修理に関する。その範囲内で、ステップ(E)および(E')は、中断された回路をフィブリル超分子種によって再接続することにより、電子回路の損傷部分上で「溶接(結合)」に相当するものを局所的に行うために使用され得る。この場合、表面(S)および(S')は、例えば、破損部または伝導の損失をもたらす損傷領域の両側にある両方の縁部分であり得る。
【0066】
より一般的には、本発明の方法は、導電性表面上への前述したタイプのフィブリル超分子種の、組織化された形態、すなわち、該表面と結合しており、且つこの表面に対して放射状に伸展している形態での、あらゆる付着のために使用され得る。
【0067】
この範囲内で、このシステムの比較的迅速な応答は、この表面と平行に、より小さいサイズの表面(S')を移動させ、次いでこの表面(S')が、導電性表面上を移動する際にパターンを画定するチップ(プリントヘッド)の役割を果たすことにより、導電性表面上での《書き込み》を企図する可能性を与える。この実施形態は、例えば、導電性支持材上のフィブリル超分子種に基づき、導電性トラックを光学的に書き込むために使用され得る。そのような導電性トラックは、金属型の伝導を可能にする一方で、金属トラックとは異なり機械的に柔軟であるという利点をさらに有する。
【0068】
別の態様によれば、本発明の目的は、上記で定義したステップ(E)および任意選択のステップ(E')の終わりに得られるタイプの、式(I)のトリアリールアミンに基づくフィブリル超分子種によって表面が改質された導電性材料である。
【0069】
この範囲内で、本発明の目的は、ステップ(E)および場合により(E')によって事実上得られる材料だけでなく、同じ結果につながる別の方法によって得られること以外は同じ特徴を有するすべての材料である。
【0070】
特に、本発明は、照射を使用することによってではなく、式(I)のトリアリールアミンからトリアリールアンモニウムラジカルへの変換を誘導するために酸化剤を使用することによって得られる、式(I)のトリアリールアミンに基づくフィブリル超分子種を表面に担持する導電性材料を包含する。
【0071】
本発明は、式(I)のトリアリールアミンの存在下、電気化学的経路を介して導電性材料を処理することによって得られる、式(I)のトリアリールアミンに基づくフィブリル超分子種を表面に担持する導電性材料にも関する。
【0072】
本発明の材料は、インクジェット印刷等のいわゆる下降技術または《トップダウン》アプローチと、好ましくは、光によって誘導されたパターンを場合により使用する高分解能またはリソグラフィー法と並行して適用され得る。
【0073】
本発明は、電子または生体電子回路の溶接への適用も可能にし、したがって、そのような方法にのみ関する。
【0074】
本発明およびその利点を、この後の実施例を考慮してさらに例証する。
【実施例】
【0075】
図1は、典型的なコンダクタンス測定および原子間力顕微鏡法(AFM)画像に関連する、ナノギャップの構造(geometry)の模式図である。(a)は特に、ナノパターン化されたAu/Ni電極上の、暗所でドロップキャストした本発明の化合物の溶液を表す。両電極間に印加される電位差は、0.3〜0.8Vの間に含まれる。本発明の構造を持たない相互接続について測定されたコンダクタンスは、1ピコシーメンス程度(オーダー)である。次いで、試料を光に供し、リビングラジカル重合(live radical polymerization)によって本発明の超分子構造を誘導するラジカルを生成し、電場に沿って整列した自己組織化および両電極の強い接続をもたらす。(b)は、本発明の超分子構造(右側)で満たされた、照射前および照射後のAFMで観察されるオープンギャップ(左側)のトポグラフィーである。(c)は、ナノギャップを示す放射前のAFM画像(表面スケール1500×1500nm
2)である。(d)は、照射後のAFM画像(表面スケール1500×1500nm
2)であり、ナノワイヤーまたはナノフィラメントで満たされたナノギャップが示されている。(e)は、ナノワイヤーで満たされたナノギャップの拡大図(表面スケール250×250nm
2)である。
【0076】
図2は、超分子構造対温度のオーム性挙動および導電性の特徴を表すグラフである。(a)は、低温(1.5K)で測定された電流対電圧曲線を示す。(b)は、室温から1.5Kの間で、本発明の超分子構造によって機能付与された3つのデバイスの正規化R(T)測定を示す。300Kにおける各試料についての初期抵抗は、下記の通りである:22、45および360Ω。各試料は、方程式
【0077】
【数1】
【0078】
[式中、k
Bはボルツマン定数であり、
【0079】
【数2】
【0080】
は光子のエネルギーである]
を使用して相関させる。
【0081】
図3は、電極の設計を示す図である。(a)は、走査型電子顕微鏡(SEM)で観察された電極のナノギャップを示す。(b)は、相互接続の直列抵抗を2Ωより下に限定する、4つの疑似接続点を示す拡大図である。(c)は、100nm未満の典型的な距離を示すナノギャップの拡大図である。
【0082】
図4は、電流測定値対電圧I(V)測定値を示すグラフである。(a)は、空のナノギャップ(幅100μm、長さ0.08μm)のI(V)を示す。(b)は、光照射前に、本発明の化合物の溶液に浸漬された参照ナノギャップのI(V)を示す。残留電流は、溶液中のイオン不純物に帰するものである。(c)は、光照射下における本発明の化合物の自己組織化後の、ナノギャップのI(V)を示す。(d)は、初期光照射中の印加電圧の作用を示す、ナノギャップのI(V) (ひし形: 0.01V、円形0.1V、正方形: 0.3V)を示す。
【0083】
図5は、ACブリッジ技術を使用することによって真空内200Kで測定された微分コンダクタンスを表す図である。(a)は、溶液中の試料の可能性のある加熱を示す、電位差によるコンダクタンスの低減を示す。(b)は、より高い電位差での数十mAの電流値を例証する積分曲線である。
【0084】
<実施例1>
2つの電極の接続は、本発明の方法に従い、互いに対向する2つの電極を有するNanotechnology、21、335303 (2010)において記述されているタイプのデバイスを使用することによって行った。
【0085】
これを行うために、前述した式(Ia) [式中、R
1 = R
2= C
8H
17 (直鎖状)であり、且つA= Clである]に適合する化合物を、10mmol/Lの量でクロロホルムに溶解して使用した。
【0086】
化合物の溶液を、2つの電極間のギャップに入れ、次いで、デバイスに100Wの出力の白色光を照射し、一方で電極間に300mVの電位差をかけた。
【0087】
次いで、両電極間に電気接続の非常に迅速な形成が観察され、これは、両電極間における導電性の測定によって表され、すなわち、処理前は両電極間において数ピコアンペア程度(オーダー)の電流が測定されるのに対し、処理後は0.5Aの電流(すなわち、10
8倍の増大)が測定される。
【0088】
顕微鏡写真は、平行に整列され且つ電極の表面に対して垂直に伸展する、電極間における電気接続を確実にする、フィブリル超分子種の存在を明示している。
【0089】
<実施例2>
シリコン基板に対する光リソグラフィー技術により、AuおよびNi電極が作製され、電極の表面は、100μmの幅にわたって約80±20nmの距離で離隔されていた。両表面の間の残留電流は、1pA未満である。この回路を、式(Ia)の分子の、特にR
1 = R
2 = C
8H
17 (直鎖状)であり、且つA = Clである式(Ia)の分子の、1,1,2,2-テトラクロロエタン(C
2H
2Cl
4)中の溶液に、光の非存在下で浸漬する(
図1A)。電極間の電流における数百pAの増大が、数百mVの差動電圧下で観察された(
図4を参照)。白色光を使用する照射の後、電流における6倍の増大が観察され、それにより、mAレンジの値に到達する。相当するコンダクタンスは、数十mSのものである。直列接点のチャネルおよび界面がある2つの端子を持つこれらのデバイスは、強度対電圧I(V)の測定によって示される通り、高い導電性値に関係するオーム抵抗挙動を有する(
図2Aおよび4による)。チャネルの導電性は、10
4S.m
-1を超える範囲であると計算される。代替として、単位長さ当たりの界面抵抗は、10
-4Ω.m以上であることが計算される。この値は、単純な有機結晶の最良の接点の6分の1未満程度(オーダー)であり、且つグラフェンフレークを用いて得られるものよりも低い。
【0090】
溶媒で試料を強力洗浄した後の、12±2nmの均一な直径で、集合体に印加される電場に沿って配向し、電極表面間の距離(間隔)と正確に一致している導電性有機超分子構造の《ナノワイヤー》の長さを原子間力顕微鏡法(AFM)画像が示す(
図1B〜E)。フィブリル超分子構造を安定した手法で有効に得るためには、光照射前に、電極間に(少なくとも0.1V、好ましくは少なくとも0.3Vの)初期閾値電圧を印加することが重要であることが見出された。
【0091】
これらの構造を調製するための方法は、試料を例えば60℃まで終夜加熱した場合、形成された超分子構造が溶解するため、可逆的となり得ることも観察された。集合(組織化)および分解を繰り返した後(6回)、金属相互接続は、熱サイクルによって有意な影響を受けなかった。
【0092】
溶媒の蒸発後、得られる構造は安定になり、100℃で一晩の加熱後に再現可能な結果を提供する。試料の性能は、湿度にも酸素にもとりわけ感受性が高いわけではなく、有機電子デバイスに非常に有益である。超分子構造の調製中に、不活性雰囲気条件下で操作する必要はなかった。1か月間貯蔵した後、試料は同等の導電特性を呈した。
【0093】
温度に対する研究により、1.5Kまで、温度に伴って減少する抵抗を体系的に且つ確実に示すことから、試料が高い導電性を有することが確認された(
図2B)。低温での高電流まで、その構造のオームプロファイルも認められた(
図2A)。最小の抵抗を呈する試料について、真空で1Vの電位差に供した際に、最大25mAの電流が観察された(
図4B)。電流密度は、有機化合物としては著しく高く、金属回路におけるエレクトロマイグレーション密度流に相当する、10
7A.cm
-2程度(オーダー)であると計算される。
【0094】
<実施例3>
実施例1の化合物の類似体(analogs)でも試料を調製した。ブラインド試験形態において、超分子構造が自己組織化できる場合、電極間ギャップは超分子構造のみで満たされていることが分かった。これは、導電特性が本発明の超分子構造に由来することを裏付けるものである。下記の化合物を試験した。
【0095】
【表1】
【0096】
1H NMRにより、化合物1〜3は、光刺激後にCDCl
3の溶液中で自己組織化し、これは化合物4〜6には当てはまらないことが決定された。構造に関係するこの特性は、本発明の化合物のみが自己組織化の能力を有することを示す。
【0097】
実験はブラインド試験によって行われた。溶液を調製した人物は、導電性測定を行わなかった。試料は匿名化した。各試料を同じ条件下で測定した:トリアリールアミンの溶液1〜6 (1mg.mL
-1)に1Vの電位差を印加し、同時に10秒間にわたって一定の距離から100W (約10W.cm
-2)の照射をし、次いで、各ギャップについてI/V依存性を測定した。結果を表1にまとめる。相関関係は、導電性が自己組織化に依存していることを明らかに示している。
【0098】
ナノギャップの画像
自己組織化前後の電極の間の形態および差異を観察し、これについては走査型電子顕微鏡(SEM)を使用し、ナノギャップの定性的および定量的情報を得るために原子間力顕微鏡(AFM)を使用した。
【0099】
AFMで撮影した画像(
図1C、DおよびE)は、満たされたナノギャップのフィブリル構造の特有の兆候を示す。
【0100】
<実施例4>
電極は、J-F Dayenら、Nanotrench for nano and microparticle electrical interconnects; Nanotechnology 21 335303 (2010)において記述されている技術に従い、エッジ介在シャドウマスクリソグラフィーを用いて作製した-三重層Ti(5nm)/Ni(35nm)/Au(20nm)を最初に電子ビームエバポレーション、続いて標準的なリフトオフ法によって蒸着した。第二のステップは、三重層Ti(5nm)/Ni(25nm)/Au(10nm)を作成した後のリフトオフによる、60°の角度での蒸着を含む。第一の電極は、2ステップの重ね合わせと関連する組成物を有し、第二のより薄い電極は、蒸着された三重層の第二層のみに相当する組成物を有する(これは、AFMによって観察された高低差を説明する)。《ナノギャップ》は、80nmの固定電極間距離および100μmの長さで作製した(
図3)。いかなる残留電流も存在しないことを確かめた後、化合物式(Ia)の化合物[式中、R
1 = R
2= C
8H
17(直鎖状)であり、且つA= Clである]の溶液(C
2H
2Cl
4中1mg/mLで)を、電極上にドロップキャストすることによって付着させた。DC電流により0.3V超最大0.8Vの電位差を直ちに電極間に印加し、Keithley 6517B電位計/高抵抗計型の高抵抗を持つ測定機器(電位計)を使用することによって、電流の経時変化を記録した。100Wのハロゲン光源を持つ顕微鏡コンデンサー(開口数0.55)により、照明下で数秒間、試料を照射した。試料の加熱を数度に限定し、これにより10W.cm
-2の広帯域出力密度での照射をもたらすために、赤外線フィルターを使用した。10秒の典型的な照射時間は、約0.07W.cm
-2の出力密度を使用することにより、溶液中での自己組織化を実現するために約30分間に使用される光子の総数に相当するものであり、自己組織化を発生させるために必要とされるものを超える。自己組織化のより満足な相互接続を確実にするために、電極における遷移金属が必要であることも分かった。AuおよびPt電極の間にのみ(Ti接着層を用いて)安定且つ確実な自己組織化を得ることは不可能である。自己組織化は、2つのNiおよびFe電極の間で90%超の成功率を有する。電極に対する金蒸着(Au)の使用は、試料のより良好な長期安定性を提供し、これにより、遷移金属の表面酸化の問題を克服することが可能になることが分かった。
【0101】
他方では、遷移金属タイプの基板を用いて、自己組織化の成長を開始する効果が確認された。
【0102】
超分子構造の形成後、試料をクロロホルムですすぎ、続いてアセトンおよびエタノールで強力に洗浄し、次いで、最後に窒素流で乾燥させた。
【0103】
低温電気測定は、真空ポンプ(P < 10
-6mbar)を有する低温保持装置を用いて、またはヘリウム(He)フローシステム内で、温度を1.5Kに低下させて行った。電気特性の測定は、Agilent E5270B半導体パラメーターアナライザー(DC特性)およびSRS 830ロックイン増幅器(AC特性)を用いて行った。
【0104】
微分コンダクタンス測定も真空内200Kで行った。様々な試料に1Vの電位差を印加する再現可能な手法で、数十mAの強度を持つ電流が確認された(
図5)。