特許第6084283号(P6084283)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6084283
(24)【登録日】2017年2月3日
(45)【発行日】2017年2月22日
(54)【発明の名称】部品内蔵基板及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   H05K 3/46 20060101AFI20170213BHJP
   H01L 23/12 20060101ALI20170213BHJP
【FI】
   H05K3/46 Q
   H01L23/12 B
【請求項の数】1
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2015-500019(P2015-500019)
(86)(22)【出願日】2013年2月12日
(86)【国際出願番号】JP2013053255
(87)【国際公開番号】WO2014125567
(87)【国際公開日】20140821
【審査請求日】2015年12月21日
(73)【特許権者】
【識別番号】000243906
【氏名又は名称】株式会社メイコー
(74)【代理人】
【識別番号】100090022
【弁理士】
【氏名又は名称】長門 侃二
(72)【発明者】
【氏名】島田 浩
(72)【発明者】
【氏名】戸田 光昭
(72)【発明者】
【氏名】松本 徹
【審査官】 ゆずりは 広行
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2012/042667(WO,A1)
【文献】 特開2005−191156(JP,A)
【文献】 特開2008−195950(JP,A)
【文献】 特開2011−210892(JP,A)
【文献】 特開2002−237683(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05K 3/46
H01L 23/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
性を有する支持板上に導体箔を貼り付け、少なくとも一方の面を覆う金属膜を備える電気又は電子的な部品を該導体箔上に搭載する搭載工程と、
前記部品に対して第1の絶縁基材を積層し、前記部品を前記第1の絶縁基材内に埋設する第1の積層工程と、
前記第1の絶縁基材の一部を除去して前記金属膜の少なくとも一部を露出させる露出工程と、
該露出した金属膜を粗化処理する粗化工程と、
前記金属膜に対して第2の絶縁基材を積層し、前記第1の絶縁基材とともに前記絶縁層を形成して前記部品を埋設する第2の積層工程と
を備えたことを特徴とする部品内蔵基板の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、部品内蔵基板及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
部品内蔵基板が特許文献1に記載されている。特許文献1に記載されているように、部品内蔵基板は導体パターンとなるべき導電層に電気又は電子的な部品を搭載し、これをプリプレグ等の絶縁層に積層して埋設することで形成される。内蔵される部品には抵抗器やコンデンサ等の受動部品、トランジスタやダイオード等の能動部品等、種々の部品がある。これら種々の部品には、搭載される際に導電層側に配された端子と、端子と反対側の面に形成された金属膜とを有しているものがある。この金属膜は、例えば銅、銀、ニッケル、金、チタン等で形成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第4874305号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、金属膜を有する部品を埋設すると、金属膜と絶縁層との間で剥離が生じてしまう。これは、金属膜の表面粗さが0.01μm程度であるため、金属膜と絶縁層との密着強度が低いために生じてしまう。このような減少を回避するため、従来では部品積層後に金属膜に到達するレーザビアを形成し、このビア内にめっき処理を施している。しかしこのめっき処理により部品が固定されることになるため、部品にクラックが発生する原因となっている。このクラックは、例えばプリプレグの膨張でビア内のめっき金属が外方に移動してしまうことで発生する。
【0005】
本発明は、上記従来技術を考慮したものであり、金属膜が形成された部品を内蔵する場合でも、部品にクラックが生じることなく金属膜と絶縁層との密着力を高めることができる部品内蔵基板及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記目的を達成するため、本発明では、絶縁樹脂材料を含む絶縁層と、該絶縁層に埋設された電気又は電子的な部品と、該部品の少なくとも一方の面を覆う金属膜と、該金属膜の表面のうち少なくとも一部が粗化処理されて形成された粗化部とを備えたことを特徴とする部品内蔵基板を提供する。
【0007】
好ましくは、前記絶縁層の少なくとも一方の面である底面にパターン形成された導電層と、該導電層と前記部品の一方の面である搭載面とを接合し、且つ前記絶縁層とは異なる材料からなる接合剤とをさらに備え、前記金属膜は前記搭載面の反対側の面にのみ形成され、前記接合剤の厚みは、前記金属膜から前記絶縁層の他方の面である頂面までの厚みよりも小さい。
【0008】
好ましくは、前記金属膜の表面全部に前記粗化部が形成されている。
【0009】
好ましくは、前記部品とともに前記絶縁層に埋設される他の部品とをさらに備え、該他の部品の前記頂面側の面は非金属材料で形成されている。
【0010】
また、本発明では、剛性を有する支持板上に導体箔を貼り付け、該導体箔上に電気又は電子的な部品を搭載する搭載工程と、前記部品を前記絶縁層内に埋設する積層工程とを備え、前記積層工程の前に、前記金属膜を粗化処理する粗化工程を行うことを特徴とする部品内蔵基板の製造方法を提供する。
【0011】
さらに、本発明では、剛性を有する支持板上に導体箔を貼り付け、少なくとも一方の面を覆う金属膜を備える電気又は電子的な部品を該導体箔上に搭載する搭載工程と、前記部品に対して第1の絶縁基材を積層し、前記部品を前記第1の絶縁基材内に埋設する第1の積層工程と、前記第1の絶縁基材の一部を除去して前記金属膜の少なくとも一部を露出させる露出工程と、該露出した金属膜を粗化処理する粗化工程と、前記金属膜に対して第2の絶縁基材を積層し、前記第1の絶縁基材とともに前記絶縁層を形成して前記部品を埋設する第2の積層工程とを備えたことを特徴とする部品内蔵基板の製造方法を提供する。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、金属膜の少なくとも一部に粗化部が設けられるため、粗化部を介して部品と絶縁層との密着力が高まり部品と絶縁層とが剥がれることを防止できる。さらに、樹脂と金属との固定になるため、部品にクラックが生じることはない。
【0013】
また、部品の搭載面が接着剤や半田ペースト等の接合剤で導電層に搭載されていて、この接合剤の厚みが金属膜から頂面までの厚みよりも小さい場合には、接合剤側にはクラックが生じる可能性が低いため粗化部を設ける必要がない。このため、最低限の粗化処理を行うだけで信頼性の高い部品内蔵基板を得ることができる。
【0014】
また、金属膜の表面全部に粗化部が形成されていれば、部品と絶縁層との密着力を飛躍的に高めることができる。
【0015】
また、第1の絶縁基材で一旦部品を埋設し、この第1の絶縁基材の一部を除去して金属膜の一部を露出させることで、選択的に金属膜に粗化部を形成することができ、部品形状にとらわれずに部品と絶縁層との密着力を高めることができる。特に、隣接して非金属材料を頂面側に有する他の部品とともに埋設する場合には、この他の部品を第1の絶縁基材で埋設するので、粗化処理したい箇所のみを露出させて粗化処理を行うことができるので、他の部品及び半田ペーストに対して粗化処理によるダメージを与えることなく、また作業性が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明に係る部品内蔵基板の製造方法を順番に説明する概略図である。
図2】本発明に係る部品内蔵基板の製造方法を順番に説明する概略図である。
図3】本発明に係る部品内蔵基板の製造方法を順番に説明する概略図である。
図4】本発明に係る部品内蔵基板の製造方法を順番に説明する概略図である。
図5】本発明に係る部品内蔵基板を示す概略図である。
図6】本発明に係る別の部品内蔵基板の製造方法を順番に説明する概略図である。
図7】本発明に係る別の部品内蔵基板の製造方法を順番に説明する概略図である。
図8】本発明に係る別の部品内蔵基板の製造方法を順番に説明する概略図である。
図9】本発明に係る別の部品内蔵基板を示す概略図である。
図10】本発明に係るさらに別の部品内蔵基板の製造方法を順番に説明する概略図である。
図11】本発明に係るさらに別の部品内蔵基板の製造方法を順番に説明する概略図である。
図12】本発明に係るさらに別の部品内蔵基板の製造方法を順番に説明する概略図である。
図13】本発明に係る別の部品内蔵基板を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
まずは本発明に係る部品内蔵基板の製造方法について説明する。
図1及び図2に示すように、搭載工程を行う。まずは図1に示すように、剛性を有する支持板1上に導体箔2を貼付ける。導体箔2は将来導電層となるべきものである。支持板1はプロセス条件にて必要とされる程度の剛性を有するものを用いる。例えば、剛性のあるSUS(ステンレス)板又はアルミ板等で形成される。導体箔2は、支持板1がSUS板であれば銅めっきを析出させて形成でき、アルミ板であれば銅箔を貼り付けて形成できる。そして図2に示すように、導体箔2上に絶縁材料からなる接着剤3を例えばディスペンサーや印刷等で塗布する。この接着剤3上に電気又は電子的な部品4を搭載する。なお、部品4の搭載は半田ペーストを用いて導体箔2上に行ってもよい。
【0018】
部品4は将来基板の一方の面である底面7(図5参照)にパターン形成される導電層6(図5参照)と電気的に接続される端子5を有している。この例では、端子5は部品4の一方の面である搭載面8側に露出している。部品4の搭載面8と反対側の面は金属膜9で覆われている。この金属膜は、たとえば銅で形成されている。
【0019】
次に、図3に示すように、粗化工程を行う。粗化工程は、金属膜9を粗化処理する工程である。この粗化処理は、例えばケミカルエッチングによるエッチング粗化で行われる。この粗化処理にて、表面粗さが0.01μmであった金属膜9は、その表面粗さが0.3〜5μm程度になる。粗化処理にて金属膜9の表面には粗化部10が形成される。図3では、金属膜の表面全部に粗化部10が形成された例を示している。
【0020】
次に、図4に示すように、積層工程を行う。積層工程は、部品4を絶縁層12内に埋設する工程である。具体的には、接着剤3の材料とは異なる絶縁樹脂材料を含む絶縁基材を部品4に積層し、押圧して加熱することで絶縁層12を形成する。絶縁基材としては部品4の部分がくり抜かれている孔あきのものや、コア材(アンクラッド材)と称されるものを複数用意し、これらを重ねて絶縁層12を形成してもよい。絶縁基材としては主としてプリプレグが用いられる。コア材としては例えば多層プリント配線板の内部に芯として入れられる金属板、又はパターンを形成した積層板が用いられる。積層されて形成された絶縁層12のうち、部品4が搭載された面は上述した底面4となり、その反対側の面は頂面11となる。なお、積層時に頂面11側に別の導体箔13も積層される。
【0021】
次に、図5に示すように、導電層形成工程を行う。この工程では、まず支持板1が除去される。次にレーザ等を用いて接着剤3を貫通して端子5まで到達するビアを形成し、ここにめっき処理を施してフィルドビア14を形成する。その後、エッチング等により回路パターンとなる導電層6を形成する。なお、ビアはレーザの他、UV−YAGやエキシマ等の高周波レーザを用いて形成してもよい。
【0022】
このようにして形成された部品内蔵基板15は、金属膜9の表面に粗化部10が設けられるため、粗化部10を介して部品4と絶縁層12との密着力が高まり部品4と絶縁層12とが剥がれることを防止できる。さらに、樹脂たる絶縁層12と金属たる金属膜9とが直接密着した固定になるため、部品4にクラックが生じることはない。また、接着剤3の厚みが金属膜9から頂面11までの絶縁層12の厚みより小さい場合には、金属膜9は部品4の搭載面8の反対側の面にのみ設ければよい。この場合、接着剤3側にはクラックが生じる可能性が低いため粗化部10を設ける必要がないからである。このため、最低限の粗化処理を行うだけで信頼性の高い部品内蔵基板15を得ることができる。図5の例では金属膜9の全面に粗化部10を設けたので、部品4と絶縁層12との密着力を飛躍的に高めることができている。
【0023】
金属膜9の一部にのみ粗化部10を設けたい場合には、以下のようにして製造する。搭載工程までは上述した例と同様であり、その後粗化工程を行わずに第1の積層工程を行う(図6の状態)。第1の積層工程では、第1の絶縁基材16が部品4に対して積層され、部品4は第1の絶縁基材16内に埋設される。そして図7に示すように露出工程及び粗化工程を行う。露出工程では、第1の絶縁基材16の一部がレーザ等で除去され、金属膜9の一部が露出される。この露出部分に粗化処理が施され、粗化部10が形成される。
【0024】
そして、図8に示すように、第2の積層工程が行われる。この第2の積層工程では、粗化部10が設けられた金属膜10に対してさらに第2の絶縁基材17が積層される。第1及び第2の絶縁基材16、17で絶縁層12が形成され、部品4は絶縁層12内に埋設される。そして上述した導電層形成工程を行い、金属膜9の一部が粗化処理された部品内蔵基板18が製造される。このように部品4の形状や、あるいはレイアウト状の都合により粗化部10を金属膜9の全面に形成することへの制約がある場合には、選択的に粗化部10を形成することもできる。なお、第1及び第2の絶縁基材16、17は同一の材料を用いてもよいし、異なる材料を用いてもよい。また、第2の絶縁基材17を積層した後、さらに他の絶縁基材を積層して多層構造の絶縁層12を形成してもよい。また、上記では金属膜9の一部に粗化部10を設けた例を示したが全面に設けることも可能である。
【0025】
他の部品19もともに絶縁層12内に埋設する場合には、以下のようにして製造する。第1の積層工程までは上述した図9の部品内蔵基板18の製造プロセスと同様である。このとき、部品4に隣接して他の部品19も搭載されて埋設される。図10の例では、他の部品19はその端子20と導体箔2とは半田ペースト21で接合されている。この他の部品19の頂面11側の面は、非金属材料で形成されている。
【0026】
そして、露出工程及び粗化工程を行う(図11の状態)。まずはレーザ等で孔あけ加工し、金属膜9を露出させる。図11の例では、金属膜9の全面を露出しているが、図7のように一部でもよい。そして上述した例と同様に粗化処理を施し、粗化部10を形成する。そして上述した図8の例と同様に、第2の積層工程を行い(図12の状態)、導電層形成工程を行って図13のような部品内蔵基板22を製造する。このようにして製造された部品内蔵基板22は、表面に非金属材料が用いられた他の部品19も内蔵されているが、この他の部品19に粗化処理時の影響を与えることなく、所望の金属膜9にのみ粗化処理を行うことができる。すなわち、他の部品19は第1の絶縁基材16で覆われているので、粗化処理時のエッチング溶液が他の部品19に悪影響を与えることはない。このため、粗化処理したい箇所のみを露出させて粗化処理を行うことができるので、作業性が向上する。
【符号の説明】
【0027】
1:支持板、2:導体箔、3:接着剤(接合剤)、4:電気又は電子的な部品、5:端子、6:導電層、7:底面、8:搭載面、9:金属膜、10:粗化部、11:頂面、12:絶縁層、13:導体箔、14:フィルドビア、15:部品内蔵基板、16:第1の絶縁基材、17:第2の絶縁基材、18:部品内蔵基板、19:他の部品、20:端子、21:半田ペースト、22:部品内蔵基板
図1
図2
図3
図4
図5
図6
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図10
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