(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
照明ユニットと、ビーム・スプリッタと、対物レンズと、リレー・レンズ・システムと、固視標ユニットと、カメラ・ユニットとを有する、眼球を画像化するための装置であって、
前記照明ユニットが光学的放射線源を有し、また前記照明ユニットが、前記光学的放射線源の光学的放射線を前記照明ユニットの射出瞳から前記ビーム・スプリッタへ方向付けるように構成され、
前記ビーム・スプリッタが、眼球の網膜を照明する前記光学的放射線を前記対物レンズへ方向付けるように構成され、
前記固視標ユニットが、可視光学的放射線による少なくとも1つの固視標像によって前記眼球の前記網膜を照明するように構成され、
前記対物レンズが、前記網膜から反射された前記光学的放射線を用いて前記対物レンズと前記カメラ・ユニットとの間に前記網膜の中間像を形成するように構成され、前記照明ユニットの前記射出瞳の実像及び前記カメラ・ユニットの入射瞳の実像が、眼球の角膜から水晶体の裏側までの位置に形成可能であり、
前記ビーム・スプリッタが、前記対物レンズと前記リレー・レンズ・システムの開口との間に存在し、且つ前記光学的放射線を前記網膜から前記カメラ・ユニットへ方向付けるように構成され、前記ビーム・スプリッタが、少なくとも前記水晶体での前記射出瞳の像と前記入射瞳の像との重複を防ぐために、前記網膜を照明する光学的放射線と前記網膜から反射された前記光学的放射線とを所定の態様で互いに対して逸脱させるように構成され、また
前記カメラ・ユニットが検出コンポーネントを有し、前記リレー・レンズ・システムが、前記網膜から反射された前記光学的放射線によって前記検出コンポーネント上に前記中間像の実像を形成するように構成され、それによって前記実像が示される
装置。
前記固視標ユニットが、光学的放射線を前記ビーム・スプリッタへ方向付けるように構成され、前記ビーム・スプリッタが、前記固視標ユニットに関連した少なくとも1つの像を前記網膜上に形成するために、前記光学的放射線を前記固視標ユニットから前記対物レンズへ方向付けるように構成されている、請求項1に記載の装置。
前記対物レンズが、前記固視標ユニットの前記射出瞳の実像を、少なくともおおよそ前記眼球の前記角膜から前記水晶体の前記裏側までの位置に形成するように構成されている、請求項1に記載の装置。
前記照明ユニットの前記射出瞳の前記実像、及び前記カメラ・ユニットの前記入射瞳の前記実像が、前記網膜を照明する前記光学的放射線の光軸又は前記網膜から反射された前記光学的放射線の光軸に平行な線上の異なる位置にある、請求項1に記載の装置。
前記照明ユニットが、赤外放射線を用いて連続的に前記網膜を照らすように構成され、また前記照明ユニットが、前記網膜の少なくとも1つの静止画像を取り込むために可視光を閃光させるように構成されている、請求項1に記載の装置。
前記固視標ユニットにより、光学的放射線を前記ビーム・スプリッタへ方向付けるステップと、前記固視標ユニットに関連付けられた少なくとも1つの像を前記網膜上に形成するために、前記ビーム・スプリッタにより、前記光学的放射線を前記固視標ユニットから前記対物レンズへ方向付けるステップとをさらに含む、請求項12に記載の方法。
前記固視標ユニットの前記射出瞳の実像を前記対物レンズによって、少なくともおおよそ前記眼球の前記角膜から前記水晶体の前記裏側までの位置に形成するステップをさらに含む、請求項12に記載の方法。
近赤外放射線を用いて前記網膜を連続的に照らすステップと、前記網膜の少なくとも1つの静止画像を撮るために可視光を閃光させるステップとをさらに含む、請求項12に記載の方法。
【発明を実施するための形態】
【0012】
次に、添付の図面を参照しながら本発明の例示的な実施例を以下により詳細に説明するが、添付の図面には本発明の全ての実施例が示されているわけではない。実際には、本発明は、多くの異なる形態で具現化されうるものであり、本明細書に記述される実施例に限定されるように解釈されるべきではない。本明細書は幾つかの箇所で「一(an)」、「1つの(one)」、又は「幾つかの(some)」実施例に言及する場合があるが、このことは、必ずしもそれぞれのそのような言及が同じ実施例(複数可)に向けられること、又は特徴が単一の実施例にのみ適用されることを意味するものではない。様々な実施例の単一の特徴を組み合わせて他の実施例を提供することも可能である。
【0013】
眼球の検査機器のような装置の構造の一実例が、
図1に示されている。
図1は、幾つかの要素及び機能構成要素のみを示す簡易化された構造であり、その実施は変更しうる。眼球を画像化するための検査機器は、照明ユニット100、ビーム・スプリッタ102、対物レンズ104、及びカメラ・ユニット106を備えることができる。照明ユニット100は、レンズ又は複数のレンズ108、及び光学的放射線源110を含み、光学的放射線源110は、1つ又は複数の放射線源素子を含む。照明ユニットは、紫外光(約250nmから400nm)、可視光(約400nmから700nm)、赤外光(約700nmから1400nm)のうちの少なくとも1つを送ることができる。
【0014】
照明ユニット100は、放射線源110の光学的放射線を照明ユニット100の射出瞳112からビーム・スプリッタ102へ向かわせることができる。射出瞳112は、物理的開口の後ろにある光学素子によって形成された、照明ユニット100内の物理的開口の像である。ビーム・スプリッタ102は、光学的放射線を照明用放射線の経路134内で対物レンズ104へ向かわせる。光学的放射線の経路は、光学的放射線によって占められる体積として画定することができる。この経路のサイズ及び形状は、レンズ及び他の光学素子の特性に依存する。眼球もまた、経路に何らかの影響を及ぼす可能性がある。
図1では、ビーム・スプリッタ102は、光学的放射線の一部を対物レンズ104の方へ反射する。
【0015】
一般に、ビーム・スプリッタは、ビーム・スプリッタに向けられた光学的放射線の一部を反射し、且つ、光学的放射線の残りの部分にビーム・スプリッタを通過させることができる。多くの場合、ビーム・スプリッタは、分割されたビームの両方が、分割されていない元のビームの強度の数%以下から50%前後に及びうるほぼ同じ強度を有するように、光学的放射線のビームを2つに分割する。
【0016】
一実施例では、ビーム・スプリッタ102は、偏光子を含みうる。偏光子を含むビーム・スプリッタ102は、例えば、偏光ビーム・スプリッタとすることができる。その代わりに、又はそれに加えて、照明用放射線と結像用放射線の両方を偏光するために1つ又は複数の偏光子があってもよい。ビーム・スプリッタ102に関連付けられた偏光子は、光学的放射線を直線的に偏光させることができる。
【0017】
対物レンズ104は、1つ又は複数のレンズを含むことができる。対物レンズ104は、検査機器が眼球から作動距離まで移動されたときに光学的放射線を用いて眼球122の網膜128を照らすために、眼球122の角膜120から水晶体124の裏側126までの位置に照明ユニット100の射出瞳112の実像を形成するように設計された特性を有しうる。同様に、対物レンズ104は、検査機器が眼球から作動距離まで移動されたときに眼球122の角膜120から水晶体124の裏側126までの位置にカメラ・ユニット106の入射瞳114の実像を形成するように設計された特性を有することができる。照明用光学的放射線は、網膜128へ伝搬する際に眼球の瞳孔127を通過することができる。同様に、検出に向かって進行する結像用光学的放射線は、眼球の瞳孔127を通過することができる。
【0018】
対物レンズ104はまた、網膜128から反射された光学的放射線である結像用放射線の経路132において対物レンズ104とカメラ・ユニット106との間に網膜128の実中間像130を形成するように設計された特性を有することができる。一実施例では、実中間像130は、対物レンズ104とビーム・スプリッタ102との間に存在する場合がある。
【0019】
ビーム・スプリッタ102は、網膜128からの光学的放射線をカメラ・ユニット106へ向かわせることができる。
図1では、ビーム・スプリッタ102は、光学的放射線の一部を検出へ向けて通過させる。ビーム・スプリッタ102は、ビーム・スプリッタ102により照明用放射線の経路134と結像用放射線の経路132とが所定の様態で互いに偏向するように、設計及び/又は位置決めされていた可能性もある。この偏向により、少なくとも水晶体124内での射出瞳112と入射瞳114の像及び/又は放射線のビームの重複を防止することができる。
【0020】
ビーム・スプリッタ102は、対物レンズ104とリレー・レンズ・システム138の開口部116との間に存在することができる。ビーム・スプリッタ102は、リレー・レンズ・システム138の入射瞳114と対物レンズ104との間に配置されていてもよい。入射瞳は、開口部116の前方にある光学素子によって形成された(物空間内に投影された)リレー・レンズ・システム138の開口部116の像である。ビーム・スプリッタ102は、中間像130とリレー・レンズ・システム138との間に存在することができる。ビーム・スプリッタ102は、照明用光学的放射線と結像用放射線との間に偏向を形成することができる。例えば、リレー・レンズ・システム138の射出瞳114と中間像130との間の光学的中間位置が、ビーム・スプリッタ102に利用可能とされうる。例えば、中間像130とビーム・スプリッタ102との間にある程度距離があることが、画像に現れる可能性があるビーム・スプリッタ102上の塵を避けるのに有効とされうる。
【0021】
ビーム・スプリッタ102が偏光子を含む場合、ビーム・スプリッタ102から対物レンズ104へ反射される光学的放射線は、偏光される。次いで、偏光された光学的放射線は、眼球122の網膜128へ伝搬して、網膜128から反射される。網膜128の表面は光学的に粗いので、偏光された光学的放射線は、少なくとも部分的に偏光解消されることになる。反射された光学的放射線が偏光ビーム・スプリッタ102にぶつかると、光学的放射線の偏光された部分は、検出されることなくビーム・スプリッタ102から照明ユニット100に向かって反射される。しかし、反射された光学的放射線のうちの偏光解消された部分の一部は、ビーム・スプリッタ102を通って検出へと伝搬する。
【0022】
偏光ビーム・スプリッタに加えて、又はその代わりに、照明用放射線のための前偏光子140と結像用放射線のための後偏光子142とを含むビーム・スプリッタを使用することができる。前偏光子140は、ビーム・スプリッタ102に先立って照明用光学的放射線134に対する直線偏光を行うことができる。後偏光子142もまた直線偏光子とすることができ、前偏光子140に対して交差した位置に置くことができる。すなわち、後偏光子142の偏光軸は、前偏光子140の偏光軸に対して90°回転される。この構成では、前偏光子140を通過する直線偏光を有するいずれの光学的放射線も、後偏光子142を通過することができない。したがって、例えば、対物レンズ104からの反射は、後偏光子142を通過することができず、したがって、検出コンポーネント106へ伝搬することができない。しかし、網膜128から反射された偏光解消された光学的放射線の一部は、後偏光子142を通過して検出コンポーネント106まで至ることができる。
【0023】
カメラ・ユニット106は、検出コンポーネント136を含み、また、リレー・レンズ・システム138を含むことができる。リレー・レンズ・システム138は、カメラ・ユニット106から独立したコンポーネントであってもよい。カメラ・ユニット106は、市販製品のように、検出コンポーネント136とリレー・レンズ・システム138とを一体化したものであってもよい。カメラ・ユニット106はまた、共通の枠組内に画像処理ユニット148と画面150とを含むことができる。代替として、カメラ・ユニット106は、検査機器に特有の独立した光学的コンポーネントとして設計及び製造されてもよい。
【0024】
リレー・レンズ・システム138は、少なくとも1つのレンズを含むことができる。リレー・レンズ・システム138は、反射された光学的放射線を用いて検出コンポーネント136上に中間像130の実像を形成することができる。検出コンポーネント136は、マトリックスの形態とされうる複数の画素を含むことができる。検出コンポーネント136の目的は、光学像を電気的形態に変換することとすることができる。しかし、検出コンポーネント136は、光電子検出器の代わりに写真フィルムであってもよい。検出コンポーネント136は、COD(電荷結合素子、Charged−Coupled Device)セル、又はCMOS(相補型金属酸化膜半導体、Complementary Metal Oxide Semiconductor)セルであってもよい。カメラ・ユニット106は、デジタル・カメラのように機能してもよい。電気的形態の画像、1つ又は複数の静止画像又はビデオ映像を、画像処理ユニット148で処理し、次いで、検査機器の画面150上でユーザに提示することができる。画像処理ユニット148は、プロセッサ及びメモリを含むことができる。
【0025】
図2は、眼球検査デバイスの代替的な構成を提示する。この構成は、カメラ・ユニット106と照明ユニット100とが置き換えられているが、他の点では
図1の構成と類似している。ビーム・スプリッタ102が偏光子を含む場合、ビーム・スプリッタ102を通過して対物レンズ102へ行く光学的放射線は、偏光される。次いで、偏光された光学的放射線は、眼球122の網膜128へ伝搬して、網膜128から反射される。反射された光学的放射線が偏光ビーム・スプリッタ102にぶつかると、光学的放射線の偏光された部分は、ビーム・スプリッタ102を通過して照明ユニット100へ向かって行く。しかし、反射された光学的放射線のうちの偏光解消された部分は、ビーム・スプリッタ102から検出に向けて反射される。
【0026】
図2にも示されている一実施例では、偏光ビーム・スプリッタは、非偏光ビーム・スプリッタ、偏光子144、及び4分の1波長板146に置き換えることができる。偏光子144は、ビーム・スプリッタからの反射の後で、照明用放射線134を偏光させることができる。4分の1波長板146は、直線偏光された照明用放射線134を、円形偏光された放射線に変換することができる。光学的放射線は、眼球122に入る前に、対物レンズ104及び角膜120にぶつかる。検出コンポーネント106に向かって伝搬する光学的放射線の偏光は、2度目に4分の1波長板146を通過する際に、4分の1波長板146において円形偏光された放射線から直線偏光された放射線に戻されうる。しかし、直線偏光は、次いで、照明用放射線に対して90°回転される。次いで、結像用放射線132は、再び偏光子144にぶつかりうる。偏光が維持された光学的放射線の部分、具体的には反射は、光学的放射線の偏光が4分の1波長板の2度目の通過を経て完全に90°回転されているので、偏光子144を通過することができない。しかし、少なくとも、網膜128から反射された偏光解消された光学的放射線の一部は、偏光子144を通過することができる。
【0027】
次に、ミラー又は非偏光ビーム・スプリッタの代わりに偏光ビーム・スプリッタを使用することにより照明用及び結像用の放射線の光路が分離される一実施例を、少し詳しく検討する。偏光ビーム・スプリッタは、リレー・レンズ・システム138の入射瞳114から離れた所で照明用及び結像用の放射線の経路を分離するために使用することができる。偏光子を含む(又は含まない)ビーム・スプリッタは、検査機器の内部に含むことができる。カメラ・ユニット106は、単独のユニットとすることができ、また、他の目的にも使用することができる普通のレンズ又は複数のレンズを含む。
【0028】
図1に示されているように、照明用及び結像用の放射線は、少なくとも対物レンズ104を共有し、場合によっては、対物レンズ104と、偏光子を含むことができる又はできないビーム・スプリッタ102との間の他のレンズを共有する。共有対物レンズ104の利点は、検査機器と眼球122との間の作動距離を十分に長くすることができることであり、この利点は、手持ち式検査機器の操作にも役立たせることができる。
【0029】
偏光ビーム・スプリッタを使用することにより、反射を乱すことなしに共有レンズの自由な設計が可能になる。偏光ビーム・スプリッタから反射された直線偏光した照明用放射線が共有表面(例えば、対物レンズ104の前面及び後面)から反射されるときに、放射線はその偏光状態を維持して、偏光ビーム・スプリッタにより照明ユニット100の方へ反射される。しかし、照明用放射線が網膜128から散乱されると、照明用放射線は実質的に偏光解消され、したがって、網膜128の像は偏光ビーム・スプリッタを経て検出コンポーネント136へ送られる。当然ながら、共有レンズは、実質的に複屈折性のないものとすべきであり、又は、共有レンズの複屈折性は、遅延板などの適切な補償器を使用することによって補償されるべきである。
【0030】
一実施例では、少なくとも1つの補償器を用いて、又は従来技術の方法することにより、例えば形状を適切に設計すること及び/又は黒点共役法を使用することにより、第1の共有表面からのグレアが偏光に基づいて除去され、また、次の(すなわち、眼球に近い方の)表面からのグレアが偏光に基づいて除去されるように、混合したグレアの除去を使用することができる。
【0031】
図3は、照明用放射線の経路の光軸300と結像用放射線の経路の光軸302との間の偏向を提示する。
図3は、
図1の構成を参照する。しかし、この方向における対応する偏向は、
図2と類似した構成でも存在する場合がある。照明用放射線の経路の光軸300の向きと結像用放射線の経路の光軸302の向きとの間の角度αは、数度でよい。角度αは、例えば3°から12°とすることができる。偏向は、少なくとも水晶体124内で射出瞳112及び入射瞳114の像が重複するのを防ぐために利用される(
図4から
図6参照)。偏向は、調節可能とすることができる。偏向は、例えば、ビーム・スプリッタ102を回転すること、又は照射瞳を移動することによって変更することができる。
【0032】
次に、眼球によってもたらされる反射の除去の可能性を分析する。
図4は、Gullstrandの原理による一実施例における眼球内の光路を提示する。眼底カメラに関する一般的な問題は、前眼部からのグレアである。反射の原因は、角膜120、及び水晶体124の両表面である。Gullstrandの原理によれば、それらの反射は、これらの表面上で照明用及び結像用の放射線の経路400、402を互いに分離することによって、回避することができる。
図4に示されているように、照明用放射線の経路400、及び結像用放射線の経路402は、角膜120の表面上、並びに水晶体124の前面125及び後面126上では重複しない。経路は狭いくびれの前で収束し、次いで経路は発散する。角膜120と水晶体124の後面126との間の狭いくびれは、照明ユニット100の射出瞳112の焦点を意味する。同様に、カメラ・ユニット106の入射瞳114の像は、結像用放射線の経路402のくびれにおいて合焦する。
【0033】
図5及び
図6は、その必要条件がGullstrandの原理の必要条件よりも容易な一実施例を提示する。
図5は、照明用及び結像用の放射線の経路が水晶体124の前面125から後面126の範囲内で分離されている構成の視野を示す。偏光ビーム・スプリッタのような少なくとも1つの偏光子が使用される実施例では、角膜120からの反射は、網膜の検査又は測定を乱すことがない程度にまで排除又は減衰させることができる。角膜120からの反射を懸念する必要がないので、照明用放射線及び結像用放射線の経路400、402は、水晶体124の表面上でのみ分離されることになり、これにより、検査機器の視野を実質的に大きくすることが可能になる。照明ユニット100の射出瞳112の実像及びカメラ・ユニット106の入射瞳114の実像は、照明用放射線の経路134又は結像用放射線の経路132の光軸に対して平行な線上の同じ位置にあるか、又は異なる位置にあるように設計することができる。
【0034】
図6は、照明用放射線及び結像用放射線の経路400、402が水晶体124の内部でのみ分離されている眼球の瞳孔を示す。一般に、2つ以上の照明用放射線の経路が、眼球に向けられうる。同様に、結像用放射線の2つ以上の経路が、眼球から検出コンポーネント136に通じうる。大円600は、焦点面(これは実際には眼球内にある)への眼球瞳孔の投影を表す。上方の円602は、焦点面上の結像用放射線の経路402の投影を表す。下方の円604は、焦点面上の照明用放射線の経路400の投影を表す。両方の経路のくびれの投影は、約1mmの直径を持つ円板とすることができ(これは、照明及び結像の光学の有効利用を意味する)、また、放射線の経路間の距離は約1mmとすることができる。上方の破線円606は、眼球瞳孔での結像用放射線の経路の投影を示す。下方の破線円608は、眼球瞳孔600での照明用放射線の投影を示す。両方の光学的放射線の経路は、約4mmの直径を有する眼球瞳孔600内に収まる。
【0035】
NIR(近赤外、Near Infra Red)波長及び可視光の使用においては、数ミリメートル以下のサイズが光学的放射線の経路に適切とされうる。検査機器を画像取込みのための定位置に合わせ、その後、可視光を閃光モードで使用して、静止画像又は短いビデオ映像を取り込むことができる。NIR波長は瞳孔対光反射を生じさせず、したがって、検査機器をより大きな瞳孔径で動作するように設計することができる。
【0036】
照明用放射線及び結像用放射線の経路400、402の投影は、様々なサイズ及び形状とすることができる。投影は、完全な若しくは不完全な円形又は楕円形、矩形とされるか、或いは、経路400、402を分離すること及び口径食作用のないことを実現する任意の形状を有することができる。所望の視野及び所望の眼球の最小瞳孔径にそのサイズが依存する経路間の間隔は、たとえ少量の光学的放射線の力が許容可能な水準未満である限りその光学的放射線が許容されうるとしても、実質的には光学的放射線を有さない。放射線の経路間の最小間隔は、例えば、0.3mmから1.5mm、又は3mmまでとされうる。
図4から
図6では、照明用及び結像用の放射線の経路の投影はほぼ同じサイズであるが、当然ながら、これらのサイズは、例えば光学的放射線源の輝度及び光学的伝搬損失に依存して異なりうる。しかし、必要とされる画像輝度は、眼球及び眼球内に小さな経路の投影領域を得ることを目的とする場合、制限要因となりうる。
【0037】
図7から
図10は、経路における幾つかの形状及びサイズの変形例を示す。例えば
図7では、投影は矩形の形状を有する。
【0038】
例えば
図8では、照明用放射線の投影は小さな円であり、結像用放射線の投影は大きな円である。
【0039】
例えば
図9では、照明用放射線の投影は小さな円であり、結像用放射線の投影はほぼ矩形とすることができる不完全な円である。
【0040】
例えば
図10では、照明用及び結像用の放射線の両方の投影は、ほぼ矩形とすることができる不完全な円である。
【0041】
検査機器と眼球との位置合わせは作動距離及び横変位における変化に寛容であるほど容易になりうるということは、言及する価値があるであろう。必要とされる瞳孔の最小直径もより小さくなり、これにより、非散瞳性結像が容易になる。
【0042】
図11は、眼球の瞳孔600よりも大きい、経路400、402の投影604、602を示す。照明用放射線及び結像用放射線の両方に対する各焦点面が水晶体124の中間にある場合、経路400、402の投影は、口径食を避けるために、眼球瞳孔を通過するのに十分に小さくすることができる(ある程度の口径食は許容されるが、実際には結像用及び照明用の放射線の経路における口径食は対向するので、各経路は完全に又は部分的に互いに補償して、均一に照らされた像を得ることができる)。したがって、照明ユニット100の射出瞳112の像、及びカメラ・ユニット106の入射瞳114の像は、必要以上に大きくなりえない。しかし、検査機器が(散大した瞳孔とともに使用されるとしても)最高輝度モードに最適化されている場合、照明用放射線及び結像用放射線の両方に対する焦点面は、実質的に眼球瞳孔の位置にあることになり(
図11の場合におけるように)、そのように口径食を避けることにより、照明ユニット100の射出瞳112及びカメラ・ユニット106の入射瞳114の像のサイズは、眼球の瞳孔よりも大きくなりうる。次いで、口径食を受けていない放射線のビームが、眼球の瞳孔のサイズに関係なく供給されうる。当然ながら、経路400、402間の間隔は、眼球の瞳孔よりも小さい照明用放射線及び結像用放射線の投影を有する構成と同様の全視野を得るために、より長くする必要がありうる。
【0043】
図12は、眼球の瞳孔が小さい場合の一実例を示す。小さい眼球瞳孔で広い(例えば、20°又は30°よりも広い)全視野を得るために、瞳孔の直径は約2mm程度とされ、焦点面(すなわち、放射線の経路のくびれ)は眼球瞳孔に近接されうる。これにより、口径食が最小限に抑えられる。照明ユニット100の射出瞳112及びカメラ・ユニット106の入射瞳114の像は、どちらも眼球の瞳孔内に収まるほどに小さくされるか、又はより大きくされうる。一実施例では、焦点面は、水晶体124内で眼球の瞳孔から0.1mmから0.5mm離され、また、口径食は、照明用放射線及び結像用放射線の経路における対向する口径食によって補償されうる。この構成により、散瞳することなく、持続的な可視光、例えば白色光で眼底を画像化することが可能になる。画像化は、静止画像又はビデオ映像の形態で行うことができる。
【0044】
図13及び
図14は、眼球の瞳孔上の照明用放射線及び結像用放射線の経路の投影を示す。例えば
図13では、投影は、眼球の瞳孔よりも大きい矩形の形状を有する。例えば
図14では、照明用放射線の投影は小さな円であり、結像用放射線の投影はより小さな矩形である。
【0045】
眼球は、角膜120と水晶体124との間にかなりの複屈折性を有する。したがって、照明用放射線及び結像用放射線の経路400、402が水晶体124内で分離されない場合、水晶体124からの反射は、目に見えるようになることになる。しかし、幾つかの実施例では、これらの反射は、調節可能とすることもできる少なくとも1枚の遅延板などの偏光補償器を使用することによって回避することができる。補償器は、角膜の複屈折性を補償することができ、したがって、経路400、402は、角膜120で分離される必要がない。結果として、光学機器のエタンデュは、最大限に高められる。最大限に高められたエタンデュは、眼球内に向けられる光強度を最適化して十分に高められること、及び、検査機器の収集力を向上させられることを意味する。最大限に高められたエタンデュは、例えば、輝度の向上や、より大きな視野などの利点をもたらす。
【0046】
一実施例では、光の偏光状態は、光が眼球122に入る前に偏光変換器又は適切な(できれば調節可能な)補償器を使用することにより、所望の態様及び/又は度合いで混合又は変調されうる。照明用放射線及び結像用放射線の経路は、角膜120から水晶体124の後面126の範囲内で分離されうる。このことが、網膜128の偏光依存特性を画像化、測定、又は排除可能にする。
【0047】
次に、照明ユニット100をより詳細に説明する。照明ユニット100の射出瞳112は、照射瞳として、すなわち、照明ユニット100の外側から例えばビーム・スプリッタ102から見たときに、照明用放射線がそこから発生しているように見える現実の又は仮想の瞳として、画定することができる。照明ユニット100の射出瞳112は、様々な形態及びサイズを有しうる。一実施例では、照射瞳は、円形とされる場合があるが、照射瞳は、楕円形、矩形、不完全な円形、又は不完全な楕円形にもすることができる。デバイスが小さな眼球の瞳孔(具体的には対角線的に3mm未満)に合わせて最適化されている場合、照射瞳は、口径食が無いようにすることができるが、輝度は、網膜の像において逐一変化してもよい。
【0048】
照明ユニット100の射出瞳112からの照明用放射線の経路は、発散形状を有することができ、また、照明用放射線は、中間像面の必要とされる部分を実質的に均一に照らす。必要とされる部分は、網膜128の全視野領域の共役像と同一である。必要とされる領域の外側の光は、迷光を避けるために遮断することができる。この遮断は、例えば、照明ユニット100の内部又は後ろに口径食邪魔板を加えることにより、又は、照明モジュールの内部に視野絞り(照明場絞り(illumination field stop)と呼ぶこともできる)を設計し且つ使用することにより、可能な限り早く実施することができる。照明場絞りは、迷光の遮断に加えて、網膜128上の照明を整形するのに使用することができる。照明は、例えば、円形、楕円形、又は線形に整形することができる。他の形状も可能である。楕円形や線形などは、様々な向きを有していてもよい。照明場絞りは、ユーザが網膜上の照明のサイズ及び形状を変更できるように、変更可能な開口を備えていてもよい。さらに別の可能性は、網膜128の照明のサイズ及び形状、又は波長ですら電気的に変調することが可能なLCD(液晶表示装置、Liquid Crystal Display)、LcoS(リキッド・クリスタル・オン・シリコン、Liquid crystal on Silicon)、又はDMD(デジタル・マイクロミラー・デバイス、Digital Micromirror Device)小型表示装置などの空間変調器を使用することである。
【0049】
次に、照明ユニット100を検証する。2つ以上の素子が利用される一実施例では、素子のそれぞれが、光学的放射線の所定の帯域を伝達する。光学的帯域は、単一波長から数百ナノメートルまで、又は数千ナノメートルにすら変化しうる。一実施例では、光学的放射線源110は、その光学的帯域を制御することが可能な単一の素子とされうる。帯域幅及び平均波長は、所定の態様で変更されうる。帯域の制御は、電気的に行われうる。例えば、平均波長は、素子での光学的放射線の生成を電気的に変化させることによって変更されうる。
【0050】
一実施例では、光学的放射線源は、広帯域放射線源素子及び波長可変フィルタを含みうる。光学的放射線源の出力帯域は、フィルタに基づいて選択されうる。フィルタは、複数のフィルタ素子を有することができ、各フィルタ素子は、異なる帯域又は異なる波長群を通過させる。フィルタ素子のそれぞれを単独で、又は幾つかのフィルタ素子を一緒にして、照明ユニット100の出力波長を選択するために使用することができる。波長可変フィルタはまた、その光学的特性を変化させることにより、所望の光学的帯域又は所望の複数の光学的帯域を通過させるように、電気的に調整されてもよい。
【0051】
照明ユニット100は、照明ユニット100の射出瞳112及び中間像130の平面への適切な照明を形成するのに必要とされる、レンズ、光導体、ダイクロイック、鏡、開口部、等を備えうる。放射線源素子は、例えば、LED(発光ダイオード、Light Emitting Diode)、有機LED、発光プラズマ、レーザ、白熱電球、ハロゲン球、アーク灯(例えば、キセノン・アーク灯など)、蛍光灯、又は適切な波長を放射し且つデバイスに対して他の適切な特性を有する任意のランプとすることができる。
【0052】
一実施例では、照明ユニット100は、1つの白色LEDチップ、及び近赤外(NIR)波長を放射する1つのLEDチップを含み、これらの放射線は例えばダイクロイック・ミラーを使用して組み合わせることができる。例えば、白色LEDチップは、400nmから700nmの帯域で可視光を放射することができ、NIR LEDチップは、700nmから1200nmの帯域で、又はより狭い800nmから900nmの帯域で光を放射することができる。NIR波長を使用することにより、検査機器を画像取込みのための的確な位置に位置合わせすることができ、その後、白色光を閃光モードで使用して、静止画像又は(短い)ビデオ映像を取り込むことができる。NIR波長は瞳孔対光反射を生じさせず、したがって、検査機器をより大きな瞳孔径で動作するように設計することができ、光学設計における折衷案の釣り合わせが容易になる。
【0053】
一実施例では、眼球は近赤外放射線でのみ照らされ、光学検査デバイスは、可視光の焦点が合うように、近赤外放射線の焦点から外される。そのような光学コンポーネントの設定、すなわち焦点調節は、レンズが近赤外放射線を可視光とはわずかに異なるように屈折させ、また、屈折の差、したがって焦点調節の差が事前に知られているので、可能である。可視光が閃光すると、結像光学系はすでに焦点状態にあるので、焦点調節のための行動を取る必要は無い。
【0054】
蛍光眼底観察におけるような多くの診断目的に対して、所定の光学的帯域での照明及び/又は結像は、有益なものとなるであろう。上記及び他のスペクトル解析目的において、照明ユニット100は、広帯域光学的放射線を伝達する1つ又は複数の放射線源を含むことができ、放射線は、次いで、少なくとも1つの所望の波長域を提供するために、帯域通過フィルタを使用してフィルタ処理されうる。蛍光眼底観察では、適切な照明は、例えば465nmから490nmの間とされうる。フィルタの使用は、1つ又は複数の適切な波長範囲で光を放射することができる1つ又は複数の放射線源素子を使用する場合には、回避することもできる。そのようなフィルタレスの実施例の一実例は、血管造影のために470nmの中心波長で放射する青色LEDである。一実施例では、波長可変フィルタが使用されうる。
【0055】
結像用光学的放射線が検出コンポーネント136に達する前に、結像用光学的放射線をフィルタ処理することも、有益となりうる。フィルタ処理は、結像用光学的放射線を少なくとも1つの所望の帯域に制限することができる。少なくとも1つの帯域の帯域幅は、例えば、単一波長(非常に狭いノッチ・フィルタ)から数百ナノメートルまで変化しうる。しかし、光学的帯域又は複数の光学的帯域の帯域幅は、この例に制限されるものではない。
【0056】
フィルタはまた、IR領域又はUV領域において1つ又は複数の光学的帯域を遮断するために必要とされうる。例えば、UV放射線は、眼球に損傷を与える可能性がある。分離フィルタを結像用放射線の経路及び照明用放射線の経路内に使用して、照明用の帯域とは部分的に又は完全に異なる帯域から少なくとも1つの像を得ることができる。
【0057】
一実施例では、照明ユニット100はKohler照明の教示に基づきうるが、臨界照明又は何らかの他の照明方式も使用することができる。LEDチップの放射領域は、照明ユニット100の射出瞳112(すなわち、照射瞳)に結像されうる。次いで、照明場絞り160において結像されたチップの角出力は、対物レンズ104により網膜128に結像されうる、中間像130の平面に結像されうる。不快な迷光を遮断するために照明場絞りを有する利点に加えて、こうすることで、はっきりとした照射瞳、及び網膜128に対する均一且つ口径食のない照明を提供することができる。
【0058】
一実施例では、単純な照明が非球面集光レンズに基づく場合もある。非球面集光レンズは、LEDからの光を集めて、放射領域を照明ユニット100の射出瞳112内に結像するのと同時に、照明場絞り160を中間像130の平面に結像する。
【0059】
一実施例では、照明ユニット100は、収集光学素子を有するLED、又はLEDチップだけを含みうる。
【0060】
次に、対物レンズ104を少し詳しく検討する。検査機器は、対物レンズ104、及びリレー・レンズ・システム138を含むことができる。対物レンズ104は、対物レンズ104と検出コンポーネント136との間に網膜128の実中間像130を形成することができる。リレー・レンズ・システム138は、検出コンポーネント136上に中間像130の像を形成することができる。中間像130が結像される、この2度行われる結像、又は2重結像は、利点をもたらしうる。例えば、ビーム・スプリッタ102のためのスペースがある。そうでない場合、ビーム・スプリッタ102は、対物レンズ104の外側に、すなわち対物レンズ104と眼球122との間に挿入されなければならない。このことは、眼球までの作動距離が短いこと、視野が狭くなること、及び画像輝度に関する問題などの、重大な欠点をもたらす可能性がある。
【0061】
代替として、ビーム・スプリッタ102は、対物レンズ104に挿入することができるが、このことは、対物レンズの設計を相当に制限し、また、検出コンポーネント136に必要とされるサイズが大きくなるなどの他の欠点をもたらす。2重結像構造の別の利点は、網膜128から検出コンポーネント136への倍率を所望の検出コンポーネント136のサイズに適切な値に調節及び設定するのが容易であることでありうる。倍率はまた、調節可能とすることができる。すなわち、システムは、例えば、光学素子を調節すること、代替としておそらく中間像130と検出コンポーネントとの間の距離を調節することによる、光学的ズーム機能を含むことができる。2重結像構造のさらに別の利点は、中間像130は鮮明であっても鮮明でなくてもよいことであろう。このことは、眼球122及び対物レンズ104によって生じる全ての収差が対物レンズ104だけによって修正される必要はないことを意味する。対物レンズ104を用いて収差を修正する可能性が限られるので、代わりにリレー・レンズ・システム138内である程度の収差を修正することもできる。したがって、広い視野で鮮明な像を得られるようにすることができる。
【0062】
2重結像構造のさらに別の利点は、リレー・レンズ・システム138及び検出コンポーネント136を含むカメラ・ユニット106を、カメラ・ユニット106との間で繰返し着脱可能な光学機能部品1500〜1504を追加的に含むセットの一部とすることができることである。
図15には、そのような検査機器が示されている。カメラ・ユニット106は、体の外側部分、例えば皮膚の検査などの幅広い用途に単独で使用することができる。それ故、例えば1つの光学機能部品1500は、ビーム・スプリッタ102及び対物レンズ104を含むことができる。セット内の少なくとも1つのさらなる光学機能部品1502(又は1504)は、眼球122及び体の外側表面上の少なくとも1つの器官のどちらとも異なる、少なくとも1つの器官の像を取り込むことができる。
【0063】
最も簡単な形態の対物レンズ104は、1つ又は2つの非球面を有することが可能なシングレットとすることができる。対物レンズ104の光軸と結像用放射線の光軸との間の角度は、例えば0度から9度の間とすることができるが、これに制限されない。
【0064】
対物レンズ104は、ガラス又は光学用プラスチックで作ることができる。研磨後に対物レンズ104のガラスを焼なましすることにより、複屈折性を最小限に抑えることができる。一実施例では、対物レンズ104は、色収差を最小限に抑えるために使用することができるダブレットを含む。当然ながら、要素の数は1つ又は2つに制限されず、設計に関する複数の変形例が存在しうる。レンズのうちの幾つかが複屈折をもたらしている場合、複屈折を補償するために適切な補償器を使用することが可能である。別の可能性は、適切な表面形状の対物レンズを使用することである。さらに別の可能性は、黒点共役法を適用することである。
【0065】
対物レンズ104の焦点距離は、例えば10mmから50mmまで変化してよい。全視野は、例えば20°から60°とすることができる。眼球までの作動距離は、例えば8mmから40mmとすることができる。網膜128から中間像130への倍率は、例えば1.2倍から2.0倍とすることができる。
【0066】
リレー・レンズ・システム138は、中間像130の像を検出コンポーネント136に形成することができる。偏光効果を持つ又は持たないビーム・スプリッタ102を中間像130とリレー・レンズ・システム138との間に置くことができるが、ビーム・スプリッタ102はリレー・レンズ・システム138の内部にあってもよい。しかし、開口絞りがカメラ・ユニット106の入射瞳114として働く場合、ビーム・スプリッタ102を検出コンポーネント136とリレー・レンズ・システム138の開口絞りとの間に置くことはできない。リレー・レンズ・システム138及び対物レンズ104を独立したレンズ・システムにすることができること、すなわち、検出コンポーネント136及びリレー・レンズ・システム138を一緒にして独自の多目的カメラ・ユニット106を形成することができることは、利点と見なすことができる。
【0067】
開口絞り、すなわち入射瞳114のサイズ及び形状は、入射瞳114の所望の像を眼球122の前部に提供することができるような寸法となされる。一実施例では、リレー・レンズ・システム138は、円形開口を持つ従来のカメラ・レンズ・システムである。一実施例では、リレー・レンズ・システム138の焦点距離は、8mmから100mmの間とされうる。多くの場合、12mmから35mmの焦点距離で十分であることが分かっている。
【0068】
図1に示されている一実施例では、検査機器は、例えば視野平坦化又は瞳孔整合目的のための、視野レンズ160を有することができる。視野レンズ160は、中間像130の平面に近接されうる。視野レンズ160は、対物レンズ104又はリレー・レンズ・システム138の一部であってもよく、又は、それらの両方に部分的に共通していてもよい。
【0069】
図16に概略的に示されているように、一実施例では、検査機器は、対物レンズ104と中間像130との間のビーム・スプリッタ1702、及び、ビーム・スプリッタ1702を通した中間像130の仮想鏡像1706上に実質的に位置決めされた、1つ又は複数の固視標1704を含むことができる。ビーム・スプリッタ1702は、ビーム・スプリッタ102に相当しうる。固視標1704は、網膜の様々な部分を中心とした網膜128の1つ又は複数の像の取込みを支援すること、及び、デバイスの焦点を網膜に合わせることを支援することを目的として、患者の眼球122の視線方向及び焦点距離を誘導するために使用することができる。
【0070】
図17に示されているように、1つ又は複数の固視標1704は、例えば穴1804を通して可視放射線1808を放射するLEDなどの1つ又は複数の光源1806によって照らされる開口部1804を有する、窓板1802を含むことができる。窓板を持たない1つ又は複数の光源ユニットも、固視標として使用することができる。ビーム・スプリッタ1702は、例えば、放射された放射線1808の一部を眼球へ反射するガラス板とすることができる。ビーム・スプリッタ1702は、その表面に適切な被覆を有していてもよい。
【0071】
固視標を含む別の実施例が、
図18に示されている。この実施例は、
図1を用いて説明されたシステムに似ているが、追加的な第2の照明ユニットを有する。この第2の照明ユニットは、眼球122にとって可視である1つ又は複数の固視標を作り出すことができ、また、固視標ユニット1902と呼ぶことができる。第1の照明ユニット100と同様に、固視標ユニット1902は、レンズ又は複数のレンズ、及び1つ又は複数の放射線源素子を含みうる光学的放射線源1904などの、光学コンポーネントを含むことができる。固視標ユニットの光学的放射線源は、可視光の領域内で動作することができ、その結果、1つ又は複数の固視標の像を、患者に見せることができる。光学的放射線は、例えば、赤色、緑色、青色、又は白色の放射線を放射するLEDチップによって生成されうる。
【0072】
固視標ユニット1902は、線源1904の光学的放射線を固視標ユニット1902の射出瞳1906からビーム・スプリッタ102へ向かわせることができる。射出瞳1906は、固視標ユニット1902内の物理的開口の後ろにある光学素子によって形成された、その開口の像とすることができる。ビーム・スプリッタ102は、固視標放射線の経路1908において光学的放射線を対物レンズ104へ向かわせることができる。ビーム・スプリッタ102は、光学的放射線の所望の部分を、対物レンズ104を介して眼球122へ反射することができる。
【0073】
図18に示されているのと同一の固視標の構成原理を、
図2で説明された実施例、又は説明される他の実施例にも適用することができる。
【0074】
固視標ユニット1902は、視野絞り1910を含むことができ、視野絞り1910は、患者の眼球122がその像を見ることができる固視標を含むことができ、また、視野絞り1910は、患者の眼を所望の方向に向けるために使用することができる。眼球の内部水平面のうちの180°をカバーする画像を得ることが目的とされる場合、それぞれが60°をカバーする3つの画像を取り込むことが必要とされうる。人が左を見るように誘導されたときに第1の画像が取り込まれ、人が正面を見るように誘導されたときに第2の画像が取り込まれ、人が右を見るように誘導されたときに第3の画像が取り込まれうる。3つの画像から、パノラマ画像を形成することができる。固視標の像もまた、眼球を所望の距離に適応させるように誘導するために使用することができる。通常、視野絞り1910は、中間像130及び網膜128と共役するようにすることができ、その結果、患者は、焦点を目標像に合わせて見ることになる。眼球は、通常、可視像に焦点を合わせようとするので、視野絞り1910にある固視標は、所定の距離に焦点が合うように眼球122を誘導する。
【0075】
図19は、固視標ユニット1902により網膜128上に形成された固定像の実像の一例を示す。像は、所定の位置に5つの円形のスポット2002を含みうる。1つのスポット2002Aがデバイスの軸上に配置され、他のスポット2002Bは、画角によって定められうる一定の距離だけデバイスの軸から離されうる。個別の画角は、例えば8°から25°になるように構成されうる。画角は、使用される検査デバイスの視野に依存しうる。各スポット2002は、独立した光源ユニットによって形成されてもよい。1つ又は複数の光源は、眼球122が瞬間毎に1つのスポット2002だけを見て、そしてそのスポットに焦点を合わせるように、一度に1つのスポット2002を出力することができる。光源により一度に2つ以上のスポット2002が出力されてもよい。すると眼球122は、瞬間毎に幾つかのスポット2002を見て、それらに焦点を合わせることができる。
【0076】
固視標ユニット1902は、画像取込み中は光を放射する必要がない。したがって、起こりうる眼球の角膜及び水晶体からの反射が画質を乱す可能性はなく、したがって、固視標ユニット1902の射出瞳1906のサイズ及び位置は、カメラ・ユニット106の入射瞳114に対する照明ユニットの射出瞳112のサイズ及び位置ほどには慎重に構成される必要はない。眼球の内部において、固視標ユニット1902の射出瞳1906は、例えば、おおよそ射出瞳112の像と入射瞳114の像との間に結像されるか、又は、おおよそ入射瞳114の像の上に結像されうる。
【0077】
一実施例では、固視標ユニット1902及び照明ユニット100は、照明ビーム134及び固視標ビーム1908を眼球へ誘導するために、個別のビーム・スプリッタ102を使用することができる。
図18では、固視標ユニット1902は、照明ユニット100と同一の任意の前偏光子140を使用しうる。しかし、固視標ユニット1902及び照明ユニット100は、個別の前偏光子を使用することもできる。固視標ユニット1902及び照明目標ユニット100はまた、幾つか例に挙げれば、フォールド・ミラー、レンズ、又はLED用のプリント回路基板若しくはヒートシンクなどの、他の共通コンポーネントを共有することもできる。
【0078】
次に、
図20に示されているような固視標ユニット1902の一実施例を詳しく説明する。固視標ユニット1902は、1つ又は複数のLED光源2102、窓板2104、1つ又は複数のリレー・レンズ2106、及び開口瞳絞り2108を含むことができる。LED2102は、窓板2104にある穴2110を照らして、リレー・レンズ2106により中間像130を介して網膜128に穴2110を結像することができる。窓板2104は、固視標ユニット1902の視野絞り1910に配置することができる。この構成における固視標放射線の経路は、線1908によって示されている。
【0079】
模範的な事例では、物理的な開口瞳絞り2108は固視標ユニット1902の射出瞳1906と一致するが、これらは異なっていてもよい。開口瞳絞り2108が、窓板2104と少なくとも1つのリレー・レンズ2106との間に配置される場合、開口瞳絞り2108は、固視標ユニット1902の射出瞳1906と一致する必要はない。開口瞳絞り2108はまた、個別の物理的開口が必要とされなくなるように、リレー・レンズの有効口径によって形成されていてもよい。
【0080】
開口瞳絞り2108は、調節可能なアイリス絞りを含むことができ、このアイリス絞りは、固視標像の輝度をその特徴の形状に影響を及ぼすことなく調節するために使用することができる。輝度は、放射線源の出力の輝度を調節することによって調節されてもよい。固視標像の輝度の調節は、眼球122の虹彩127を開閉するために使用することができる。眼球の検査は、瞳孔が大きいとより容易になる。また、瞳孔が大きい眼球にはより多くの光学的放射線を送り込むことができる。さらに、眼球の瞳孔が大きければ、検査機器の機械的及び光学的な調節がより容易になる。
【0081】
穴2110内の観察領域の配光を均質化するために、LED2102と窓板2104との間に、又は穴2110内に、1つ若しくは複数の均質化要素又は拡散要素2112があってもよい。そのようにすると、LEDの構造は被検者には見られない。別の可能性は、均一な空間出力を提供するための小さな光導体として機能するのに十分な長さの穴を使用することである。さらに別の可能性は、LED2102からの光を、光の分配を調和させる光ファイバに送ることでありうる。すると光ファイバは、光をビーム・スプリッタ104に向けて出力することができる。
【0082】
円形スポットの代わりに、固視標は網膜上に任意の像を提供することができる。この像は、線、十字、輪、文字、数字、記号、などを含むことができる。固視標の像は、単色であっても、様々な色を有していてもよい。一実施例では、固視標ユニットの視野絞り1910は完全に照らされ、開口穴2104は、操作者が課題毎に所望の固視標特徴を選択することができるように変更可能とされうる。さらに、又はその代わりに、固視標の像は、操作的に窓板2104と同様にすることが可能なLEDマトリックス又はOLEDマトリックス(有機LED、Organic LED)によって形成されてもよい。一実施例では、目標像は、目標像の容易な調節を実現する例えばLCDやLcoS(リキッド・クリスタル・オン・シリコン)などの照明付き小型表示装置、又は例えばDMD(デジタル・マイクロミラー・デバイス)などのマイクロミラー・アレイによって形成されうる。一実施例では、目標像は、例えば、線状アレイ、スポット・マトリックス、及び極性アレイなどの様々なパターン又は配列を、網膜上に形成しうる。これらのうちの任意のものを単独で又は他と一緒にして、検査機器のための焦点補助として使用するか、或いは、眼の寸法若しくは形状の測定又は解析に利用することができる。
【0083】
網膜状に結像された1つ又は複数の固視標は、様々な方法で変調することができる。1つ又は複数の固視標は、網膜上に連続的に結像されてもよい。一実施例では、固視標は、画像取込み中にはスイッチが切られるが、そうでない場合には網膜上に連続的に結像されうる。1つ又は複数の固視標は、所望の頻度で網膜上に繰返し可能に閃光されてもよく、また、閃光速度は、例えば画像取込み頻度と同期されていてもよい。ビデオ映像の取込み中、1つ又は複数の固視標は、患者は固視標を見ることができるが固視標はビデオ映像に取り込まれることができないように、各フレームの取込み間に網膜上に結像されうる。一実施例では、1つ又は複数の固視標は短い時間間隔で示され、1つ又は複数の固視標の像を含む取り込まれたフレームは、最終ビデオ映像シーケンスから取り除かれうる。
【0084】
一実施例では、固視標ユニット1902の視野絞り1910の位置は、眼球122を固視標ユニット1902位置に基づいて様々な距離に焦点が合うように誘導することができるように、軸方向に調節可能とされうる。視野絞りの位置調節は、カメラ・ユニットの焦点調節と調和するようにすることもできる。本発明の一実施例では、固視標ユニット1902の可動視野絞り1910は、眼球122の遠近調節及び/又は眼球の遠近調節範囲を検査又は測定するために使用されうる。固視標像は、例えば、操作者が患者の視線方向を所定の位置に制限されることなく自由に誘導することができるように、光軸に対して直角な方向に調節可能とされうる。
【0085】
さらに、一実施例では、固視標は、IR領域で動作する放射線源ユニットを含みうる。したがって、目標像は、IR光によって形成することができ、また、目標像は、眼の屈折率測定に使用することができる。
【0086】
一般に、対物レンズ104の焦点距離は、例えば23mmから27mmの間とされうる。検査機器の作動距離(すなわち、角膜から対物レンズの最も近い表面までの距離)は、例えば18mmから26mmの間とされうる。照射瞳から中間像130までの光路長は、例えば90mmから130mmの間とされうる。リレー・レンズの入射瞳から中間像までの光路長は、照射瞳から中間像までの光路長と同じ長さから10mm以内である。リレー・レンズ・システム138の焦点距離は、例えば15mmから25mmの間とされうる。入射瞳114の直径は、3mmから6mmの間とされうる。中間像130は、対物レンズ104から約18mmから30mm離されうる。45°の全視野は、約12mmから22mmの中間像直径に相当しうる。
【0087】
図21は、本発明の一実施例による装置の流れ図である。ステップ2200において、放射線源110の光学的放射線が、照明ユニット100の射出瞳112からビーム・スプリッタ102に向けられる。ステップ2202において、光学的放射線は、ビーム・スプリッタ102により照明用放射線の経路134に沿って対物レンズ104に向けられる。ステップ2204において、光学的放射線により照明ユニット100の射出瞳112の実像及びカメラ・ユニット106の入射瞳114の実像が対物レンズ104を通じて眼球122の角膜120から水晶体124の裏側126の範囲の位置内に形成されうるように、眼球122の網膜128が照らされる。ステップ2206において、網膜128から反射された光学的放射線により、網膜128の実中間像130が、対物レンズ104を通じて結像用放射線の経路132内で対物レンズ104とカメラ・ユニット106との間に形成される。ステップ2206において、網膜128からの光学的放射線は、ビーム・スプリッタ102によってカメラ・ユニット106に向けられる。ステップ2208において、少なくとも水晶体124の表面125、126上での射出瞳112及び入射瞳114の像の重複を防ぐために、照明用放射線の経路134及び結像用放射線の経路132がビーム・スプリッタ102により所定の態様で偏向される。ステップ2210において、光学像を画面150上に示されるように電気的形態に変換するために、リレー・レンズ・システム138により、網膜128から反射された光学的放射線により中間像130の実像が検出コンポーネント136上に形成される。
【0088】
画像処理ユニット148は、メモリ及び検査機器の様々なインターフェイスに接続された、プロセッサ、コントローラなどを含むことができる。一般に、画像処理ユニット148は、中央処理装置又は追加的な演算プロセッサとされうる。プロセッサは、少なくとも1つの実施例の1つ又は複数の機能を実行するようにプログラムされている、特定用途向け集積回路(ASIC:application−specific integrated circuit)、フィールド・プログラマブル・ゲート・アレイ(FPGA:field−programmable gate array)、及び/又は他のハードウェア・コンポーネントを含みうる。プロセッサは、コンピュータ・プログラムの命令に基づいて論理演算を実行するデジタル状態機械の電気回路として実現されうる。例示的な一実施例では、少なくとも1つのプロセッサは、中央処理装置(CPU:central processing unit)の機能を集積回路上に実装したマイクロプロセッサとして実装されうる。CPUは、プログラム命令を含むコンピュータ・プログラムを実行する、論理状態機械である。命令は、高水準プログラミング言語とされる場合もあるプログラミング言語を使用して、コンピュータ・プログラムとしてコード化されうる。CPUは、レジスタ一式、演算論理装置(ALU:arithmetic logic unit)、及び制御装置(CU:control unit)を含みうる。制御装置は、作業メモリからCPUに転送された一連の命令によって制御される。制御装置は、基本動作のための複数のマイクロ命令を含みうる。マイクロ命令の実装は、CPU設計に応じて変化しうる。マイクロプロセッサはまた、コンピュータ・プログラムにシステム・サービスを供給することができるオペレーティング・システム(埋込みシステムの専用のオペレーティング・システム、又は実時間オペレーティング・システム)を有しうる。一実施例では、1つ又は複数のメモリは、1つ又は複数のプロセッサによって実行されると検査機器にその操作を実行させる命令を、さらに記憶しうる。
【0089】
メモリは、揮発性及び/又は不揮発性のメモリを含むことができ、また、典型的には、コンテンツ、データ、などを記憶する。例えば、メモリは、プロセッサが各実施例による装置の操作に関連付けられた諸ステップを実行する、ソフトウェア・アプリケーションやオペレーティング・システム、情報、データ、コンテンツ、などのコンピュータ・プログラム・コードを記憶することができる。メモリは、例えば、ランダム・アクセス・メモリ(RAM:random access memory)、ハード・ドライブ、又は他の固定データメモリ若しくは記憶デバイスとすることができる。さらに、メモリ又はその一部は、装置に取り外し可能に接続される着脱式メモリとすることができる。
【0090】
データ記憶媒体又はメモリ・ユニットは、プロセッサ/コンピュータ内に実装するか、又は、プロセッサ/コンピュータの外部に実装することができ、後者の場合、データ記憶媒体又はメモリ・ユニットは、当技術分野で知られている様々な手段を介してプロセッサ/コンピュータに通信可能に結合することができる。
【0091】
画像処理ユニット148によって形成された画像データは、光学システムのメモリ152に保存することができる。さらに、又はその代わりに、画像データは、病院の患者データ・システムのデータ・バンク154に記憶することができる。メモリ152又はデータ・バンク154に記憶された画像は、光学システムで又はコンピュータで再調査するために取り出すことができる。
【0092】
本検査機器は、可搬式検眼鏡及び/又は可搬式眼底カメラとして使用してもよい。その根拠は、本検査機器は、眼球の検査中手に持って扱うのに十分なほどコンパクト且つ軽量に作ることができるためである。
【0093】
技術の進化につれて、本発明の概念を様々な方法で実行できることは、当業者には明らかであろう。本発明及びその実施例は、上述の実例に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載の範囲内で変化しうる。