(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記制御部は、酸素含有ガスと水素含有ガスとを前記第2ノズル内および前記第3ノズル内にそれぞれ供給する際、前記第3ノズルの上部に開設されたガス供給孔から供給される酸化種の合計流量、および、前記第3ノズルの下部に開設されたガス供給孔から供給される酸化種の合計流量が、それぞれ、前記第2ノズルの中央部に開設されたガス供給孔から供給される酸化種の合計流量の半分以下の流量となるように、前記反応ガス供給系を制御するよう構成されている請求項2に記載の基板処理装置。
前記第2ノズルは、前記複数の基板のうち中央領域上部に配列した基板に対応するように、1つ以上の前記ガス供給孔を中央領域上部の側面にのみ備える中央領域上部開口ノズルと、
前記複数の基板のうち中央領域下部に配列した基板に対応するように、1つ以上の前記ガス供給孔を中央領域下部の側面にのみ備える中央領域下部開口ノズルと、を備え、
前記反応ガス供給系は、前記中央領域上部開口ノズルと前記中央領域下部開口ノズルとにそれぞれ接続され、前記中央領域上部開口ノズルから供給する酸化種の流量と、前記中央領域下部開口ノズルから供給する酸化種の流量と、をそれぞれ独立して制御することが可能なように構成されている請求項2〜4のいずれかに記載の基板処理装置。
【発明を実施するための形態】
【0011】
<本発明の一実施形態>
以下に、本発明の一実施形態について、
図1〜
図4を用いて説明する。
【0012】
(1)基板処理装置の構成
図1に示すように、処理炉202は、加熱手段(加熱機構)としてのヒータ207を有する。ヒータ207は円筒形状であり、保持板としてのヒータベース(図示せず)に支持されることにより垂直に据え付けられている。ヒータ207は、後述するようにガスを熱で活性化(励起)させる活性化機構(励起部)としても機能する。
【0013】
ヒータ207の内側には、ヒータ207と同心円状に、反応容器(処理容器)を構成する反応管(プロセスチューブ)210が配設されている。反応管210は、内管(インナチューブ)204と、インナチューブ204を同心円状に取り囲む外管(アウタチューブ)203と、を備えた2重管構成となっている。インナチューブ204及びアウタチューブ203は、それぞれ、例えば石英(SiO
2)または炭化シリコン(SiC)等の耐熱性材料からなり、上端が閉塞し、下端が開口した円筒形状に形成されている。
【0014】
インナチューブ204及びアウタチューブ203は、それぞれ、マニホールド209によって下方から支持されている。マニホールド209は、例えばステンレス(SUS)等の金属材料からなり、上端及び下端が開放された円筒形状に形成されている。マニホールド209内壁の上端部には、例えばステンレス(SUS)等の金属材料からなり、マニホールド209の径方向内側に向けて延出した環状のフランジ部209aが設けられている。インナチューブ204の下端は、フランジ部209aの上面の金属部分に当接している。アウタチューブ203の下端は、マニホールド209の上端の金属部分に当接している。アウタチューブ203とマニホールド209との間には、シール部材としてのOリング220aが設けられている。マニホールド209の下端開口は、処理炉202の炉口として構成されており、後述するボートエレベータ115が上昇した際に、蓋体としての円盤状のシールキャップ219によって気密に封止される。マニホールド209とシールキャップ219との間には、シール部材としてのOリング220bが設けられている。
【0015】
インナチューブ204の筒中空部には、基板としてのウエハ200を処理する処理室201が形成されている。処理室201は、複数のウエハ200を水平姿勢で垂直方向に間隔を空けて配列(整列)させて保持する後述するボート217を収容するように構成されている。
【0016】
インナチューブ204の天井部はフラット形状に、アウタチューブ203の天井部はドーム形状に形成されている。インナチューブ204の天井部をドーム形状とすると、処理室201内へ供給したガスが、複数のウエハ200間に流れずに、インナチューブ204の天井部に形成されたドーム部分の内部空間(後述するボート217の天板よりも上方の空間)に流れ込み易くなる。インナチューブ204の天井部をフラット形状とすることで、処理室201内へ供給したガスを、複数のウエハ200間に効率よく流すことが可能となる。インナチューブ204の天井部とボート217の天板とのクリアランス(空間)を小さくすることで、例えば、ウエハ200の配列間隔(ウエハ配列ピッチ)と同程度の大きさとすることで、ウエハ200間にさらに効率よくガスを流すことが可能となる。
【0017】
インナチューブ204の側壁には、
図2に示すように、ノズル233a〜233cを収容するノズル収容室204aと、ノズル233d,233eを収容するノズル収容室204bと、が形成されている。ノズル収容室204a,204bは、それぞれ、インナチューブ204の側壁からインナチューブ204の径方向外向きに突出し、垂直方向に沿って延在するチャンネル形状に形成されている。ノズル収容室204a,204bの内壁は、処理室201の内壁の一部を構成している。ノズル収容室204aとノズル収容室204bとは、インナチューブ204の内壁に沿って、つまり、処理室201内に収容されたウエハ200の外周に沿って、互いに所定距離離れた位置にそれぞれ配置されている。具体的には、ノズル収容室204a,204bは、ウエハ200の中心とノズル収容室204aの中心とを結ぶ直線と、ウエハ200の中心とノズル収容室204bの中心とを結ぶ直線と、が作る中心角(ノズル収容室204a,204bの各中心を両端とする弧に対する中心角)が例えば30°〜150°となるような位置にそれぞれ配置されている。
【0018】
ノズル233a〜233eは、それぞれ、L字型のロングノズルとして構成されている。ノズル233a〜233eの各水平部は、マニホールド209の側壁を貫通するように設けられている。
【0019】
ノズル233a〜233cの各垂直部は、上述のノズル収容室204a内に、ノズル収容室204aの下部より上部に沿って、ウエハ200の配列方向上方に向けて立ち上がるように設けられている。ノズル233d,233eの各垂直部は、上述のノズル収容室204b内に、ノズル収容室204bの下部より上部に沿って、ウエハ200の配列方向上方に向けて立ち上がるように設けられている。つまり、ノズル233a〜233eの各垂直部は、ウエハ200が配列されるウエハ配列領域の側方の、ウエハ配列領域を水平に取り囲む領域に、ウエハ配列領域に沿うように設けられている。ノズル233d,233eは、処理室201内に収容されたウエハ200の外周に沿ってノズル233a〜233cから所定距離離れた位置に設けられている。ノズル233aは、ノズル233b,233cの間に設けられている。つまり、ノズル233aは、ウエハ200の周方向に沿って、一対のノズル233b,233cにより両側から挟まれている。
【0020】
ノズル233a〜233cの各垂直部の側面には、処理室201内に収容された複数のウエハ200の一枚一枚に(それぞれに)対応するように、少なくとも複数のウエハ200の数と同数のガス供給孔248a〜248cが、ノズル233a〜233cの上部から下部にわたる全域に設けられている。つまり、ノズル233a〜233cは、それぞれ多孔ノズルとして構成されている。ボート217が例えば120枚のウエハ200を保持する場合、ノズル233a〜233cの各垂直部の側面には、それぞれ、ガス供給孔248a〜248cが少なくとも120個ずつ設けられることになる。
図1に示すように、ガス供給孔233a〜233cは、それぞれ、ウエハ配列領域だけでなく、ウエハ配列領域よりも下側にも設けることもできる。
【0021】
ガス供給孔248a〜248cは、例えば、それぞれが処理室201の中心を向くように開口しており、ウエハ200の中心に向けてガスを供給することが可能なように構成されている。ガス供給孔248a〜248cは、例えば、それぞれが同一の開口面積を有し、更に同じ開口ピッチで設けられている。これらの構成により、各ウエハ200の中心付近へのガスの供給を促すことが可能となり、後述する基板処理のウエハ面内均一性を向上させることが可能となる。また、各ウエハ200に対して供給するガスの流量や流速を、ウエハ200間で均一化させることが容易となり、後述する基板処理のウエハ面間均一性を向上させることが可能となる。
【0022】
ノズル233dの垂直部の側面には、処理室201内に収容された複数のウエハ200のうち中央部に配列したウエハ200(好適には、複数多段に配列されたウエハ200、例えば120枚配列されたウエハ200のうち、中央に載置されているウエハ200の上下に約40枚配列された範囲、すなわち、中央に載置されているウエハ200を含んだ約80枚のウエハ200)に対応するように、1つ以上、好ましくは複数のガス供給孔248dが、ノズル233dの中央部にのみ、つまり、ノズル233dの中央付近(好適には、複数多段に配列されたウエハ200、例えば120枚配列されたウエハ200のうち、中央に載置されているウエハ200に対応したノズルの上下に約40孔ずつ、すなわち、約80孔のガス供給孔がノズル233dの中央付近)にのみ設けられている。ガス供給孔248dは、ノズル233dの上部及び下部には設けられていない。ノズル233dは、その上端部が例えばウエハ配列領域のうち最上部のウエハ200に対応する位置、一例としてボート217の天板に対応する位置まで延在するように構成されている。このように構成することで、ノズル233d内の空間を、O
2ガスおよびH
2ガスを反応させる反応空間(バッファエリア)として充分に機能させることが可能となり、酸化処理に必要な量の酸化種をノズル233d内で生成することが容易となる。
【0023】
ノズル233eの垂直部の側面には、処理室201内に収容された複数のウエハ200のうち上部および下部に配列したウエハ200に対応するように、1つ以上、好ましくは複数のガス供給孔248eが、ノズル233dに設けられたガス供給孔248d以外の領域であるノズル233eの上部および下部にのみ、つまり、ノズル233eの上端付近および下端付近にのみ設けられている。ガス供給孔248eは、ノズル233eの中央部には設けられていない。
【0024】
図4(a)は、処理室201内に収容されたウエハ200側から見たノズル233d,233eの側面構成を例示する図である。ボート217が例えば120枚のウエハ200を保持する場合、ノズル233dの中央部には、例えば1〜80個、好ましくは30〜80個のガス供給孔248dが、ウエハ配列領域のうち中央部に配列されたウエハ200の一枚一枚に対応するように設けられる。ノズル233eの上部および下部には、それぞれ、例えば1〜20個、好ましくは10〜20個のガス供給孔248eが、ウエハ配列領域のうち上部および下部に配列されたウエハ200の一枚一枚に対応するように設けられることになる。但し、ガス供給孔248d,248eは、ウエハ200の一枚一枚に対応するように設ける場合に限らず、数枚のウエハ200に対応して1つずつ、例えば2枚のウエハ200に対して1つずつ設けてもよい。
【0025】
好適には、ノズル233dのガス供給孔248dは、複数多段に配列されたウエハ200のうち、中央に載置されているウエハ200を含むウエハ配列領域全体の約2/3を占める範囲に対応するように設けられるとよい。すなわち、例えば120枚配列されたウエハ200の中央に載置されているウエハ200を含む約80枚のウエハ200に対応するように、約80孔のガス供給孔がノズル233dの中央付近に設けられるとよい。
【0026】
ガス供給孔248d,248eは、例えば、それぞれが処理室201の中心を向くように開口し、ウエハ200の中心に向けてガスを供給するように構成されている。ガス供給孔248d,248eをそれぞれ複数、例えば30〜40個設ける場合、ガス供給孔248d,248eは、例えば、それぞれが同一の開口面積を有し、更に、同じ開口ピッチで設けられるように構成される。
【0027】
ノズル233a〜233eの各上端部には、ノズル233a〜233e内におけるガスの長時間にわたる滞留、いわゆるガス溜まりを防ぐため、
図4(a)に例示するようなガス抜き孔248hを設けることが好ましい。
【0028】
ノズル233a〜233eには、ガス供給管232a〜232eがそれぞれ接続されている。ガス供給管232a〜232eには、上流方向から順に、流量制御器(流量制御部)であるマスフローコントローラ(MFC)241a〜241e、及び開閉弁であるバルブ243a〜243eがそれぞれ設けられている。ガス供給管232d,232eのバルブ243d,243eよりも下流側には、ガス供給管232f,232gがそれぞれ接続されている。ガス供給管232f,232gには、上流方向から順に、流量制御器(流量制御部)であるMFC241f,241g、及び開閉弁であるバルブ243f,243gがそれぞれ設けられている。ガス供給管232a〜232cのバルブ243a〜243cよりも下流側と、ガス供給管232d,232eにおけるガス供給管232f,232gとの接続部よりも下流側には、不活性ガスを供給するガス供給管232h〜232lがそれぞれ接続されている。ガス供給管232h〜232lには、上流方向から順に、流量制御器(流量制御部)であるMFC241h〜241l、及び開閉弁であるバルブ243h〜243lがそれぞれ設けられている。
【0029】
ガス供給管232aからは、所定元素を含む原料ガスとして、例えば、所定元素としてのシリコン(Si)とハロゲン元素としての塩素(Cl)とを含むクロロシラン系原料ガスが、MFC241a、バルブ243a、ノズル233aを介して処理室201内へ供給される。ここで、クロロシラン系原料ガスとは、気体状態のクロロシラン系原料、例えば、常温常圧下で液体状態であるクロロシラン系原料を気化することで得られるガスや、常温常圧下で気体状態であるクロロシラン系原料等のことである。また、クロロシラン系原料とは、ハロゲン基としてのクロロ基を有するシラン系原料のことであり、少なくともSiおよびClを含む原料のことである。すなわち、ここでいうクロロシラン系原料は、ハロゲン化物の一種とも言える。本明細書において「原料」という言葉を用いた場合は、「液体状態である液体原料」を意味する場合、「気体状態である原料ガス」を意味する場合、または、その両方を意味する場合がある。従って、本明細書において「クロロシラン系原料」という言葉を用いた場合は、「液体状態であるクロロシラン系原料」を意味する場合、「気体状態であるクロロシラン系原料ガス」を意味する場合、または、その両方を意味する場合がある。クロロシラン系原料としては、例えば、ヘキサクロロジシラン(Si
2Cl
6、略称:HCDS)を用いることができる。HCDSのように常温常圧下で液体状態である液体原料を用いる場合は、液体原料を気化器やバブラ等の気化システムにより気化して、原料ガス(HCDSガス)として供給することとなる。
【0030】
ガス供給管232b,232d,232eからは、酸素含有ガス(酸化性ガス)が、MFC241b,241d,241e、バルブ243b,243d,243eを介してノズル233b,233d,233e内へ供給される。酸素含有ガスとしては、例えば、酸素(O
2)ガスを用いることができる。
【0031】
ガス供給管232c,232f,232gからは、水素含有ガス(還元性ガス)が、MFC241c,241f,241g、バルブ243c,243f,243g、ガス供給管232c,232d,232eを介してノズル233c,233d,233e内へ供給される。水素含有ガスとしては、例えば、水素(H
2)ガスを用いることができる。
【0032】
ガス供給管232h〜232lからは、不活性ガスとして、例えば、窒素(N
2)ガスが、MFC241h〜241l、バルブ243h〜243l、ノズル233a〜233eをそれぞれ介して処理室201内へ供給される。
【0033】
各ガス供給管から上述のようなガスをそれぞれ流す場合、主に、ガス供給管232a、MFC241a、バルブ243aにより、ノズル233a内に所定元素を含む原料ガスを供給する原料ガス供給系、すなわち、クロロシラン系原料ガス供給系が構成される。原料ガス供給系を原料供給系と称することもでき、クロロシラン系原料ガス供給系をクロロシラン系原料供給系と称することもできる。
【0034】
また、主に、ガス供給管232b,232d,232e、MFC241b,241d,241e、バルブ243b,243d,243eにより、酸素含有ガス供給系が構成される。酸素含有ガス供給系は、ノズル233b,233d,233e内に酸素含有ガスを供給する。また、主に、ガス供給管232c,232f,232g、MFC241c,241f,241g、バルブ243c,243f,243gにより、水素含有ガス供給系が構成される。水素含有ガス供給系は、ノズル233c,233d,233e内に水素含有ガスを供給する。ガス供給管232dにおけるガス供給管232fとの接続部より下流側と、ガス供給管232eにおけるガス供給管232gとの接続部より下流側とを水素含有ガス供給系に含めて考えてもよい。酸素含有ガス供給系および水素含有ガス供給系により、ノズル233d,233e内に酸素含有ガスおよび水素含有ガスを供給し、ノズル233b内に酸素含有ガスを供給し、ノズル233c内に水素含有ガスを供給する反応ガス供給系が構成される。
【0035】
また、主に、ガス供給管232h〜232l、MFC241h〜241l、バルブ243h〜243lにより、不活性ガス供給系が構成される。ガス供給管232a〜232eにおけるガス供給管232h〜232lとの接続部より下流側と、ノズル233a〜233eとを不活性ガス供給系に含めて考えてもよい。不活性ガス供給系はパージガス供給系としても機能する。
【0036】
ノズル233aは、処理室201内へ原料ガスを供給する第1ノズルとして考えることができる。ノズル233d,233eは、それぞれ、酸素含有ガスと水素含有ガスとを反応させて生成した酸化種を含む反応ガスを処理室201内へ供給する第2ノズルおよび第3ノズルとして考えることができる。ノズル233bは、処理室201内へ酸素含有ガスを供給する第4ノズルとして考えることができる。ノズル233cは、処理室201内へ水素含有ガスを供給する第5ノズルとして考えることができる。
【0037】
ここで、第1〜第5ノズルのノズルのそれぞれは、1本のみ設けることに限らず、複数本設けてもよく、後述する
図4(f)、
図4(g)に示す複数本の第2ノズル、または第3ノズルのように、同じ目的のために設ける複数本のノズルをまとめて第1〜第5ノズルとして設けても良い。
【0038】
インナチューブ204の側壁には、スリット状の貫通孔である排気孔204cが、垂直方向に細長く開設されている。排気孔204cは、正面視において矩形であり、少なくともノズル233aのガス供給孔248aが設けられる部分に対応するように、インナチューブ204の側壁の下部から上部にわたって設けられている。排気孔204cは、ノズル233aのガス供給孔248aが設けられる部分に対応するように設けるだけでなく、その下方側にも対応するように設けることもできる。このように構成することで、処理室201内の下方においてパーティクル(異物)が発生した場合でも、そのパーティクルの上方への巻き上げを抑制し易くなる。
【0039】
処理室201内と、インナチューブ204とアウタチューブ203との間の円環状の空間である排気空間205とは、排気孔204cを介して連通している。上述のノズル233aは、インナチューブ204内に収容されたウエハ200の中心を挟んで排気孔204cと対向する位置に設けられている。言い換えると、ノズル233aと排気孔204cとを結ぶ直線、すなわち、原料ガスの主たる流路(扇形に拡散する原料ガス流の中心)は、インナチューブ204内に収容されたウエハ200の中心上を通るように構成されている。また、ノズル233d,233eは、インナチューブ204内に収容されたウエハ200の中心を挟んで排気孔204cと対向しない位置に設けられている。言い換えると、ノズル233d,233eは、インナチューブ204内に収容されたウエハ200の中心と排気孔204cとを結ぶ直線上に配置されることなくノズル233aよりも排気孔204cに近い位置に設けられている。
【0040】
アウタチューブ203の下部には、排気空間205を介して処理室201内の雰囲気を排気する排気管231が設けられている。排気管231には、排気空間205内、つまり、処理室201内の圧力を検出する圧力検出器(圧力検出部)としての圧力センサ245および圧力調整器(圧力調整部)としてのAPC(Auto Pressure Controller)バルブ244を介して、真空排気装置としての真空ポンプ246が接続されている。APCバルブ244は、真空ポンプ246を作動させた状態で弁を開閉することで、処理室201内の真空排気および真空排気停止を行うことができ、更に、真空ポンプ246を作動させた状態で、圧力センサ245により検出された圧力情報に基づいて弁開度を調節することで、処理室201内の圧力を調整することができるように構成されているバルブである。主に、排気管231、APCバルブ244、圧力センサ245により排気系が構成される。排気孔204c、排気空間205、及び真空ポンプ246を排気系に含めて考えてもよい。
【0041】
このように、本実施形態では、インナチューブ204の内壁と、複数のウエハ200の端部(外周)と、で定義される円環状の縦長に伸びた空間、つまり、円筒状の空間に連通(隣接)するノズル収容室204a,204b内に配置したノズル233a〜233eを経由してガスを搬送している。そして、ノズル233a〜233eにそれぞれ開口されたガス供給孔248a〜248eから、ウエハ200の近傍で初めて処理室201内へガスを噴出させている。そして、ウエハ200を挟んでノズル233a〜233cと対向する位置に開設された排気孔204cから、インナチューブ204内の雰囲気を排気している。これにより、インナチューブ204内、つまり、処理室201内におけるガスの主たる流れを、ウエハ200の表面と平行な方向、すなわち水平方向とすることが容易となる。その結果、各ウエハ200に対して均一にガスを供給することが可能となり、また、各ウエハ200の中心付近へのガス供給を促進させることが可能となる。ウエハ200の表面上を流れたガス、すなわち反応後の残ガスは、排気孔204cを介して排気空間205内に流れ、その後、排気口、すなわち排気管231の方向に向かって流れる。排気空間205内における残ガスの流れの方向は、排気口の位置によって適宜特定され、垂直方向に限ったものではない。
【0042】
マニホールド209の下端開口は、上述したように、Oリング220bを介してシールキャップ219により気密に封止される。シールキャップ219は、例えばステンレス(SUS)等の金属材料からなり、円盤状に形成されている。シールキャップ219のマニホールド209と反対側には、後述するボート217を回転させる回転機構267が設置されている。回転機構267の回転軸255は、シールキャップ219を貫通してボート217に接続されている。回転機構267は、ボート217を回転させることでウエハ200を回転させるように構成されている。シールキャップ219は、反応管203の外部に垂直に設置された昇降機構としてのボートエレベータ115によって、垂直方向に昇降されるように構成されている。ボートエレベータ115は、シールキャップ219を昇降させることで、ボート217を処理室201内外に搬入および搬出することが可能なように構成されている。すなわち、ボートエレベータ115は、ボート217すなわちウエハ200を、処理室201内外に搬送する搬送装置(搬送機構)として構成されている。
【0043】
基板支持具としてのボート217は、複数、例えば100〜150枚のウエハ200を、水平姿勢で、かつ、互いに中心を揃えた状態で垂直方向に整列させて多段に支持するように、つまり、間隔を空けて配列させるように構成されている。ボート217は、例えば石英やSiC等の耐熱性材料からなる。ボート217の下部には、例えば石英やSiC等の耐熱性材料からなる断熱板218が水平姿勢で多段に支持されており、ヒータ207からの熱がシールキャップ219側に伝わりにくくなるよう構成されている。ボート217の下部に断熱板218を設けずに、石英やSiC等の耐熱性材料からなる筒状の部材として構成された断熱筒を設けてもよい。
【0044】
アウタチューブ203とインナチューブ204との間には、温度検出器としての温度センサ263が設置されている。温度センサ263により検出された温度情報に基づきヒータ207への通電具合を調整することで、処理室201内の温度が所望の温度分布となるように構成されている。温度センサ263は、ノズル233a〜233eと同様にL字型に構成されており、アウタチューブ203の内壁に沿って設けられている。
【0045】
図3に示すように、制御部(制御手段)であるコントローラ121は、CPU(Central Processing Unit)121a、RAM(Random Access Memory)121b、記憶装置121c、I/Oポート121dを備えたコンピュータとして構成されている。RAM121b、記憶装置121c、I/Oポート121dは、内部バス121eを介して、CPU121aとデータ交換可能なように構成されている。コントローラ121には、例えばタッチパネル等として構成された入出力装置122が接続されている。
【0046】
記憶装置121cは、例えばフラッシュメモリ、HDD(Hard Disk Drive)等で構成されている。記憶装置121c内には、基板処理装置の動作を制御する制御プログラムや、後述する基板処理の手順や条件などが記載されたプロセスレシピ等が、読み出し可能に格納されている。プロセスレシピは、後述する基板処理工程における各手順をコントローラ121に実行させ、所定の結果を得ることが出来るように組み合わされたものであり、プログラムとして機能する。以下、このプロセスレシピや制御プログラム等を総称して、単に、プログラムともいう。本明細書においてプログラムという言葉を用いた場合は、プロセスレシピ単体のみを含む場合、制御プログラム単体のみを含む場合、または、その両方を含む場合がある。RAM121bは、CPU121aによって読み出されたプログラムやデータ等が一時的に保持されるメモリ領域(ワークエリア)として構成されている。
【0047】
I/Oポート121dは、上述のMFC241a〜241l、バルブ243a〜243l、圧力センサ245、APCバルブ244、真空ポンプ246、ヒータ207、温度センサ263、回転機構267、ボートエレベータ115等に接続されている。
【0048】
CPU121aは、記憶装置121cから制御プログラムを読み出して実行すると共に、入出力装置122からの操作コマンドの入力等に応じて記憶装置121cからプロセスレシピを読み出すように構成されている。そして、CPU121aは、読み出したプロセスレシピの内容に沿うように、MFC241a〜241lによる各種ガスの流量調整動作、バルブ243a〜243lの開閉動作、APCバルブ244の開閉動作及び圧力センサ245に基づくAPCバルブ244による圧力調整動作、真空ポンプ246の起動および停止、温度センサ263に基づくヒータ207の温度調整動作、回転機構267によるボート217の回転および回転速度調節動作、ボートエレベータ115によるボート217の昇降動作等を制御するように構成されている。
【0049】
コントローラ121は、専用のコンピュータとして構成されている場合に限らず、汎用のコンピュータとして構成されていてもよい。例えば、上述のプログラムを格納した外部記憶装置(例えば、磁気テープ、フレキシブルディスクやハードディスク等の磁気ディスク、CDやDVD等の光ディスク、MO等の光磁気ディスク、USBメモリやメモリカード等の半導体メモリ)123を用意し、係る外部記憶装置123を用いて汎用のコンピュータにプログラムをインストールすること等により、本実施形態に係るコントローラ121を構成することができる。コンピュータにプログラムを供給するための手段は、外部記憶装置123を介して供給する場合に限らない。例えば、インターネットや専用回線等の通信手段を用い、外部記憶装置123を介さずにプログラムを供給するようにしてもよい。記憶装置121cや外部記憶装置123は、コンピュータ読み取り可能な記録媒体として構成される。以下、これらを総称して、単に、記録媒体ともいう。本明細書において記録媒体という言葉を用いた場合は、記憶装置121c単体のみを含む場合、外部記憶装置123単体のみを含む場合、または、その両方を含む場合がある。
【0050】
(2)基板処理工程
次に、上述の基板処理装置の処理炉を用いて、半導体装置(デバイス)の製造工程の一工程として、基板上に薄膜を成膜するシーケンス例について説明する。以下の説明において、基板処理装置を構成する各部の動作はコントローラ121により制御される。
【0051】
本実施形態では、
間隔を空けて配列された複数の基板を処理室内に収容する工程と、
複数の基板を収容した処理室内へ第1ノズルから原料ガスを供給する工程と、加熱された大気圧未満の圧力下にある第2ノズル内へ酸素含有ガスと水素含有ガスとを供給し、これらを第2ノズル内において反応させて酸化種を生成し、この酸化種を処理室内へ供給する工程と、を交互に所定回数行い、複数の基板上に酸化膜を形成する工程と、
を順に実施する。
【0052】
酸化種を処理室内へ供給する工程では、酸素含有ガスと水素含有ガスとを第2ノズル内に供給する際、酸素含有ガスと水素含有ガスとを第3ノズル内にも供給し、このとき、第3ノズルの上部に開設されたガス供給孔から供給される酸化種の合計流量、および、第3ノズルの下部に開設されたガス供給孔から供給される酸化種の合計流量が、それぞれ、第2ノズル側面の中央部に開設されたガス供給孔から供給される酸化種の合計流量よりも小さくなるように、反応ガス供給系を制御する。
【0053】
また、酸化種を処理室内へ供給する工程では、酸素含有ガスと水素含有ガスとを第2ノズルと第3ノズル内のどちらか一方または両方に供給する際の第2ノズルと第3ノズル内のどちらか一方または両方の温度および圧力が、それぞれ、酸素含有ガスと水素含有ガスとが第2ノズルと第3ノズル内で反応して酸化種が生成されるような温度および圧力となるように、反応ガス供給系、ヒータおよび圧力調整器を制御する。また、処理室内の温度および圧力が、処理室内に供給された酸化種が基板に到達する前に失活することのないような温度および圧力となるように、反応ガス供給系、ヒータおよび圧力調整器を制御する。
【0054】
以下、本実施形態の成膜シーケンスを、
図5(a)を用いて具体的に説明する。
図5(a)は、本実施形態に係る成膜シーケンスにおけるガス供給のタイミングを示す図である。
【0055】
ここでは、原料ガスとしてHCDSガスを、酸素含有ガスとしてO
2ガスを、水素含有ガスとしてH
2ガスを用いる例について説明する。そして、複数のウエハ200を収容した処理室201内へHCDSガスを供給し、複数のウエハ200上に初期層としてシリコン含有層(Si含有層)を形成する工程と、加熱された大気圧未満の圧力下にあるノズル233d,233e内へO
2ガスとH
2ガスとを供給し、これらをノズル233d,233e内において反応させて原子状酸素(atomic oxygen、O)等の酸素を含む水分(H
2O)非含有の酸化種を生成し、この酸化種を処理室201内へ供給し、初期層としてのSi含有層をシリコン酸化層(SiO
2層、以下、SiO層ともいう)に変化させる工程と、を交互に所定回数(1回以上)行うことで、ウエハ200上に、所定組成及び所定膜厚のシリコン酸化膜(SiO
2膜、以下SiO膜ともいう)を形成する例について説明する。
【0056】
本明細書において「ウエハ」という言葉を用いた場合は、「ウエハそのもの」を意味する場合や、「ウエハとその表面に形成された所定の層や膜等との積層体(集合体)」を意味する場合、すなわち、表面に形成された所定の層や膜等を含めてウエハと称する場合がある。また、本明細書において「ウエハの表面」という言葉を用いた場合は、「ウエハそのものの表面(露出面)」を意味する場合や、「ウエハ上に形成された所定の層や膜等の表面、すなわち、積層体としてのウエハの最表面」を意味する場合がある。
【0057】
従って、本明細書において「ウエハに対して所定のガスを供給する」と記載した場合は、「ウエハそのものの表面(露出面)に対して所定のガスを直接供給する」ことを意味する場合や、「ウエハ上に形成されている層や膜等に対して、すなわち、積層体としてのウエハの最表面に対して所定のガスを供給する」ことを意味する場合がある。また、本明細書において「ウエハ上に所定の層(又は膜)を形成する」と記載した場合は、「ウエハそのものの表面(露出面)上に所定の層(又は膜)を直接形成する」ことを意味する場合や、「ウエハ上に形成されている層や膜等の上、すなわち、積層体としてのウエハの最表面の上に所定の層(又は膜)を形成する」ことを意味する場合がある。
【0058】
本明細書において「基板」という言葉を用いた場合も、「ウエハ」という言葉を用いた場合と同様であり、その場合、上記説明において、「ウエハ」を「基板」に置き換えて考えればよい。
【0059】
(ウエハチャージ及びボートロード)
複数のウエハ200がボート217に装填(ウエハチャージ)されると、
図1に示すように、複数のウエハ200を支持したボート217は、ボートエレベータ115によって持ち上げられて処理室201内に搬入(ボートロード)される。この状態で、シールキャップ219はOリング220bを介してマニホールド209の下端をシールした状態となる。
【0060】
(圧力調整及び温度調整)
処理室201内の圧力、すなわち、ウエハ200が存在する空間の圧力が所望の圧力(真空度)となるように真空ポンプ246によって真空排気される。この際、処理室201内の圧力は圧力センサ245で測定され、この測定された圧力情報に基づきAPCバルブ244がフィードバック制御される(圧力調整)。真空ポンプ246は、少なくともウエハ200に対する処理が終了するまでの間は常時作動させた状態を維持する。また、処理室201内のウエハ200が所望の温度となるようにヒータ207によって加熱される。この際、処理室201内が所望の温度分布となるように、温度センサ263が検出した温度情報に基づきヒータ207への通電具合がフィードバック制御される(温度調整)。ヒータ207による処理室201内の加熱は、少なくともウエハ200に対する処理が終了するまでの間は継続して行われる。続いて、回転機構267によるボート217及びウエハ200の回転を開始する。回転機構267によるボート217及びウエハ200の回転は、少なくとも、ウエハ200に対する処理が終了するまでの間は継続して行われる。
【0061】
(SiO膜形成工程)
その後、以下のステップ1〜4を順次実行する。
【0062】
[ステップ1]
バルブ243aを開き、ガス供給管232a内にHCDSガスを流す。HCDSガスは、MFC241aにより流量調整され、ガス供給孔248aから、加熱された減圧状態の処理室201内へ供給される。その後、HCDSガスは、排気孔204cを介して排気空間205内に流れ、排気管231から排気される。このとき、ウエハ200に対してHCDSガスが供給されることとなる(HCDSガス供給)。このとき、同時にバルブ243hを開き、ガス供給管232h内にN
2ガスを流す。N
2ガスは、MFC241hにより流量調整され、HCDSガスと一緒に処理室201内へ供給され、排気孔204c、排気空間205を介して排気管231から排気される。
【0063】
このとき、同時にバルブ243i,243jを開き、ガス供給管232b,232c内にN
2ガスを流す。N
2ガスは、MFC241i,241jにより流量調整され、ガス供給孔248b,248cから処理室201内へ供給される。ガス供給孔248aから供給されたHCDSガスは、ガス供給孔248b,248cから供給されたN
2ガスにより両側から挟まれて、その流路が制限される。例えば、ウエハ200の外周と処理室201の内壁との間の領域(隙間)へN
2ガスが供給されると、この領域の圧力が相対的に高くなり、ウエハ200の外周と処理室201の内壁との間の領域へのHCDSガスの流れ込み(逃げ)が抑制される。その結果、各ウエハ200の中心付近へのHCDSガスの供給が促進される。また、ウエハ200の外周と処理室201の内壁との間の隙間において、HCDSガスがN
2ガスによって適切な濃度となるように希釈されることで、ウエハ200の外周付近に形成されるSiO膜の膜厚を、適正な膜厚に制御することができる。
【0064】
このとき、ノズル233d,233e内へのHCDSガスの侵入を防止するため、バルブ243k,243lを開き、ガス供給管232k,232l内にN
2ガスを流す。N
2ガスは、ガス供給管232d,232e、ノズル233d,233eを介して処理室201内へ供給され、排気孔204c、排気空間205を介して排気管231から排気される。
【0065】
このとき、APCバルブ244を適正に調整して、処理室201内の圧力を、例えば1〜13300Pa、好ましくは10〜1330Paの範囲内の圧力とする。MFC241aで制御するHCDSガスの供給流量は、例えば1〜1000sccmの範囲内の流量とする。MFC241h〜241lで制御するN
2ガスの供給流量は、それぞれ例えば100〜10000sccmの範囲内の流量とする。HCDSガスをウエハ200に対して供給する時間、すなわち、ガス供給時間(照射時間)は、例えば1〜120秒の範囲内の時間とする。このときヒータ207の温度は、ウエハ200の温度が、例えば350〜800℃、好ましくは450〜800℃、より好ましくは550〜750℃の範囲内の温度となるような温度に設定する。
【0066】
ウエハ200の温度が350℃未満となると、ウエハ200上においてHCDSが分解、吸着しにくくなり、実用的な成膜速度が得られなくなることがある。ウエハ200の温度を350℃以上とすることで、これを解消することが可能となり、十分な成膜速度が得られるようになる。ウエハ200の温度を450℃以上とすることで、後述するステップ3における酸化力向上の効果が顕著となる。ウエハ200の温度を550℃以上とすることで、HCDSの分解を十分に行うことが可能となる。
【0067】
ウエハ200の温度が750℃、特に800℃を超えると、CVD反応が強くなる(気相反応が支配的になる)ことで、膜厚均一性が悪化しやすくなり、その制御が困難となってしまうことがある。ウエハ200の温度を800℃以下とすることで、膜厚均一性の悪化を抑制でき、その制御が可能となる。ウエハ200の温度を750℃以下とすることで、膜厚均一性を確保しやすくなり、その制御が容易となる。よって、ウエハ200の温度は350〜800℃とするのが好ましく、450〜800℃とするのがより好ましく、550〜750℃とするのがより好ましい。
【0068】
上述の条件下でウエハ200に対してHCDSガスを供給することにより、ウエハ200(表面の下地膜)上に、例えば1原子層未満から数原子層程度の厚さのSi含有層が形成される。Si含有層は、HCDSガスの吸着層であってもよいし、Si層であってもよいし、その両方を含んでいてもよい。ただし、Si含有層は、Si及びClを含む層であることが好ましい。
【0069】
Si層とは、Siにより構成される連続的な層の他、不連続な層や、これらが重なってできるSi薄膜をも含む総称である。Siにより構成される連続的な層をSi薄膜という場合もある。Si層を構成するSiは、Clとの結合が完全に切れていないものも含む。
【0070】
HCDSガスの吸着層は、HCDSガスのガス分子の連続的な化学吸着層の他、不連続な化学吸着層をも含む。すなわち、HCDSガスの吸着層は、HCDS分子で構成される1分子層もしくは1分子層未満の厚さの化学吸着層を含む。HCDSガスの吸着層を構成するHCDS分子は、SiとClとの結合が一部切れたものも含む。
【0071】
1原子層未満の厚さの層とは不連続に形成される原子層のことを意味しており、1原子層の厚さの層とは連続的に形成される原子層のことを意味している。1分子層未満の厚さの層とは不連続に形成される分子層のことを意味しており、1分子層の厚さの層とは連続的に形成される分子層のことを意味している。
【0072】
HCDSガスが自己分解(熱分解)する条件下、すなわち、HCDSの熱分解反応が生じる条件下では、ウエハ200上にSiが堆積することでSi層が形成される。HCDSガスが自己分解(熱分解)しない条件下、すなわち、HCDSの熱分解反応が生じない条件下では、ウエハ200上にHCDSガスが吸着することでHCDSガスの吸着層が形成される。ウエハ200上にHCDSガスの吸着層を形成するよりも、ウエハ200上にSi層を形成する方が、成膜レートを高くすることができ、好ましい。
【0073】
ウエハ200上に形成されるSi含有層の厚さが数原子層を超えると、後述するステップ3での酸化(改質)の作用がSi含有層の全体に届かなくなる。ウエハ200上に形成可能なSi含有層の厚さの最小値は1原子層未満である。よって、Si含有層の厚さは、1原子層未満から数原子層程度とするのが好ましい。Si含有層の厚さを1原子層以下、すなわち、1原子層または1原子層未満とすることで、後述するステップ3での酸化反応(改質反応)の作用を相対的に高めることができ、ステップ3での酸化反応に要する時間を短縮することができる。ステップ1でのSi含有層形成に要する時間を短縮することもできる。結果として、1サイクルあたりの処理時間を短縮することができ、トータルでの処理時間を短縮することも可能となる。すなわち、成膜レートを高くすることも可能となる。また、Si含有層の厚さを1原子層以下とすることで、膜厚均一性の制御性を高めることも可能となる。
【0074】
原料ガス(シリコン含有ガス)としては、HCDSガスの他、テトラクロロシランすなわちシリコンテトラクロライド(SiCl
4、略称:STC)ガス、トリクロロシラン(SiHCl
3、略称:TCS)ガス、ジクロロシラン(SiH
2Cl
2、略称:DCS)ガス、モノクロロシラン(SiH
3Cl、略称:MCS)ガス等のクロロシラン系原料ガスを用いてもよい。また、(エチルメチルアミノ)シラン(SiH
3[N(CH
3)(C
2H
5)])ガス、(ジメチルアミノ)シラン(SiH
3[N(CH
3)
2])ガス、(ジエチルピペリジノ)シラン(SiH
3[NC
5H
8(C
2H
5)
2])ガス、ビス(ジエチルアミノ)シラン(SiH
2[N(C
2H
5)
2]
2、略称:BDEAS)ガス、ビス(ターシャリブチルアミノ)シラン(SiH
2[NH(C
4H
9)]
2、略称:BTBAS)ガス、ビス(ジエチルピペリジノ)シラン(SiH
2[NC
5H
8(C
2H
5)
2]
2、略称:BDEPS)ガス、トリス(ジエチルアミノ)シラン(SiH[N(C
2H
5)
2]
3、略称:3DEAS)ガス、トリス(ジメチルアミノ)シラン(SiH[N(CH
3)
2]
3、略称:3DMAS)ガス、テトラキス(ジエチルアミノ)シラン(Si[N(C
2H
5)
2]
4、略称:4DEAS)ガス、テトラキス(ジメチルアミノ)シラン(Si[N(CH
3)
2]
4、略称:4DMAS)ガス等のアミノシラン系原料ガスを用いてもよい。不活性ガスとしては、N
2ガスの他、Ar,He,Ne,Xe等の希ガスを用いてもよい。
【0075】
[ステップ2]
Si含有層が形成された後、バルブ243aを閉じ、HCDSガスの供給を停止する。このとき、APCバルブ244は開いたままとして、真空ポンプ246により処理室201内を真空排気し、処理室201内に残留する未反応もしくはSi含有層形成に寄与した後のHCDSガスを処理室201内から排除する(残留ガス除去)。このとき、バルブ243h〜243lは開いたままとして、N
2ガスの処理室201内への供給を維持する。N
2ガスはパージガスとして作用し、これにより、処理室201内に残留する未反応もしくはSi含有層形成に寄与した後のHCDSガスを処理室201内から排除する効果を高めることができる。
【0076】
このとき、処理室201内に残留するガスを完全に排除しなくてもよく、処理室201内を完全にパージしなくてもよい。処理室201内に残留するガスが微量であれば、その後に行われるステップ3において悪影響が生じることはない。このとき処理室201内へ供給するN
2ガスの流量も大流量とする必要はなく、例えば、処理室201の容積と同程度の量を供給することで、ステップ3において悪影響が生じない程度のパージを行うことができる。このように、処理室201内を完全にパージしないことで、パージ時間を短縮し、スループットを向上させることができる。また、N
2ガスの消費も必要最小限に抑えることが可能となる。
【0077】
このときのヒータ207の温度は、ウエハ200の温度が、ステップ1と同じく、例えば350〜800℃、好ましくは450〜800℃、より好ましくは550〜750℃の範囲内の温度となるように設定する。不活性ガス供給系から供給するパージガスとしてのN
2ガスの供給流量は、それぞれ例えば100〜10000sccmの範囲内の流量とする。パージガスとしては、N
2ガスの他、Ar,He,Ne,Xe等の希ガスを用いてもよい。
【0078】
[ステップ3]
処理室201内の残留ガスを除去した後、バルブ243d〜243gを開き、ガス供給管232d,232e内にO
2ガスを、ガス供給管232f,232g内にH
2ガスをそれぞれ流す。O
2ガスおよびH
2ガスは、MFC241d〜241gにより流量調整され、加熱された減圧状態のノズル233d,233e内にそれぞれ供給される。O
2ガスおよびH
2ガスは、ノズル233d,233e内においてノンプラズマで熱的に活性化(励起)されて反応し、それにより、原子状酸素(O)等の酸素を含む水分(H
2O)非含有の酸化種が生成される。ノズル233d,233e内で生成された酸化種は、未反応のO
2ガス、H
2ガス等と共にガス供給孔248d,248eから処理室201内へ供給され、排気孔204cを介して排気空間205内に流れ、排気管231から排気される。このとき、ウエハ200に対して酸化種を含む反応ガスが供給されることとなる(酸化種供給)。このとき、同時にバルブ243k,243lを開き、ガス供給管232k,232l内にN
2ガスを流す。N
2ガスは、MFC241k,241lにより流量調整され、ノズル233d,233e内で生成された酸化種と一緒に処理室201内へ供給され、排気孔204c、排気空間205を介して排気管231から排気される。
【0079】
このとき、ノズル233a〜233c内への酸化種の侵入を防止するため、バルブ243h〜243jを開き、ガス供給管232h〜232j内にN
2ガスを流す。N
2ガスは、ガス供給管232a〜232c、ノズル233a〜233cを介して処理室201内へ供給され、排気孔204c、排気空間205を介して排気管231から排気される。
【0080】
MFC241d,241eで制御するO
2ガスの供給流量は、例えば1〜1000sccmの範囲内の流量とする。MFC241f,241gで制御するH
2ガスの供給流量は、例えば1〜1000sccmの範囲内の流量とする。MFC241h〜241lで制御するN
2ガスの供給流量は、それぞれ例えば100〜10000sccmの範囲内の流量とする。但し、このとき、MFC241d〜241gを適正に調整して、ノズル233eの上部に開設されたガス供給孔248eから供給される酸化種(を含む反応ガス)の合計流量、および、ノズル233eの下部に開設されたガス供給孔248eから供給される酸化種(を含む反応ガス)の合計流量が、それぞれ、ノズル233dの中央部に開設されたガス供給孔248dから供給される酸化種(を含む反応ガス)の合計流量よりも小さくなるようにする。具体的には、ノズル233eの上部に開設されたガス供給孔248eから供給される酸化種(を含む反応ガス)の合計流量、および、ノズル233eの下部に開設されたガス供給孔248eから供給される酸化種(を含む反応ガス)の合計流量が、それぞれ、ノズル233dの中央部に開設されたガス供給孔248dから供給される酸化種(を含む反応ガス)の合計流量の3/4以下の流量、好ましくは2/3以下、より好ましくは1/2以下の流量となるようにする。例えば、MFC241dで制御するO
2ガスの供給流量を30sccm、MFC241fで制御するH
2ガスの供給流量を10sccmとした場合、MFC241eで制御するO
2ガスの供給流量を15sccm、MFC241fで制御するH
2ガスの供給流量を5sccmとする。酸化種の流量分布を上述のように設定することで、処理室201内における酸化種の消費量の差異に起因するウエハ面間におけるローディング効果(後述)の発生を抑制することが可能となる。結果として、ウエハ200上に形成されるSiO膜の面間膜厚分布、面内膜厚分布をそれぞれ向上させることが可能となる。また、ウエハ200上に形成されるSiO膜の膜質を向上させることも可能となる。上述した流量の割合(比率)は、同時に処理するウエハ200の枚数、ウエハ200の表面積、処理温度、処理圧力等の各種条件に応じ、適宜選択することが可能である。
【0081】
またこのとき、ヒータ207の温度、MFC241d〜241gやAPC244の弁開度を適正に調整して、ノズル233d,233e内の温度および圧力が、O
2ガスとH
2ガスとがノズル233d,233e内で反応し、充分な量の酸化種が短時間に生成されるような温度および圧力とする。つまり、ノズル233d,233e内の温度および圧力が、O
2ガスとH
2ガスとの反応による酸化種の生成がノズル233d,233e内で迅速に開始され(酸化種の生成反応が開始されるまでのタイムラグが短縮され)、O
2ガスとH
2ガスとがガス供給孔248d,248eを介して処理室201内に流れ出す迄にはその反応が殆ど完了するような温度、圧力となるようにする。
【0082】
具体的には、ステップ3におけるノズル233d,233e内の温度は、上述のステップ1,2と同様、例えば350〜800℃、好ましくは450〜800℃、より好ましくは550〜750℃とする。また、ステップ3におけるノズル233d,233e内の圧力は、ステップ3における処理室201内の圧力(後述)よりも高い圧力、例えば処理室201内の圧力の3倍以上20倍以下の圧力とするのが好ましい。例えば、ノズル233d,233e内の圧力は、50Pa〜500Pa、好ましくは70Pa〜350Pa、より好ましくは100Pa〜200Paとすることができる。ノズル233d,233e内の温度、圧力を上述の範囲内の温度、圧力とすることで、O
2ガスとH
2ガスとの反応遅れ(タイムラグ)に起因するウエハ面間におけるローディング効果(後述)の発生を抑制することが可能となる。結果として、ウエハ200上に形成されるSiO膜の面間膜厚分布、面内膜厚分布を向上させることが可能となる。また、ウエハ200上に形成されるSiO膜の膜質を向上させることも可能となる。また、ステップ3の温度条件をステップ1,2と同様の温度条件とすることで、ステップの間での温度調整(待機工程)が不要となり、基板処理の生産性を向上させることも可能となる。ノズル233d,233e内の圧力を上述の範囲とするには、MFC241d〜241gやAPC244の弁開度を調整することの他、ノズル233d,233eの容積、横断面積、形状、ガス供給孔248d,248eの内径、個数、形状等を適正に選択することでも可能である。
【0083】
ノズル233d,233e内の圧力(全圧)を上述の範囲とした結果、ガス供給孔248d,248eから供給される酸化種の流速が小さくなり過ぎる場合には、ノズル233d,233e内に供給するN
2ガスの流量を増やすようにしてもよい。また、ガス供給孔248d,248eから供給される酸化種の流速が大きくなり過ぎる場合には、ノズル233d,233e内に供給するN
2ガスの流量を減らすようにしてもよい。つまり、ノズル233d,233e内におけるO
2ガスとH
2ガスとの分圧(O
2ガス+H
2ガスの混合ガスの分圧)を上述の範囲に維持していれば、酸化種の流速等を調整する目的で、ノズル233d,233e内に供給するN
2ガスの流量を増減させてもよい。
【0084】
またこのとき、ヒータ207の温度、MFC241d〜241gやAPC244の弁開度を適正に調整して、処理室201内の温度および圧力が、処理201内に供給された酸化種がウエハ200に到達する前に失活することのないような温度および圧力とする。つまり、処理室201内の温度および圧力が、ガス供給孔248d,248eから供給された酸化種がウエハ200に到達する前に失活して消滅することなく、酸化処理を行うのに充分な量の酸化種がウエハ200に対して供給されるような温度および圧力とする。
【0085】
具体的には、ステップ3における処理室201内の温度は、上述のステップ1,2と同様、例えば350〜800℃、好ましくは450〜800℃、より好ましくは550〜750℃とする。また、ステップ3における処理室201内の圧力は、ステップ3におけるノズル233d,233e内の圧力よりも低い圧力、例えば処理室201内の圧力の1/20以上1/3以下の圧力とする。例えば、処理室201内の圧力は、10Pa〜120Pa、好ましくは20Pa〜100Pa、より好ましくは30Pa〜80Paとすることができる。処理室201内の温度、圧力を上述の範囲内の温度、圧力とすることで、酸化処理を行うのに充分な量の酸化種をウエハ200に対して供給することが可能となる。結果として、ウエハ200上に形成されるSiO膜の面間膜厚分布、面内膜厚分布をそれぞれ向上させることが可能となる。また、ウエハ200上に形成されるSiO膜の膜質を向上させることも可能となる。
【0086】
酸化種をウエハ200に対して供給する時間、すなわち、ガス供給時間(照射時間)は、例えば1〜120秒の範囲内の時間とする。
【0087】
上述の条件下で酸化種をウエハ200に対して供給することで、ステップ1でウエハ200上に形成されたSi含有層に対して酸化処理が行われる。この酸化種の持つエネルギーは、Si含有層中に含まれるSi−N、Si−Cl、Si−H、Si−Cの結合エネルギーよりも高いため、この酸化種のエネルギーをSi含有層に与えることで、Si含有層中に含まれるSi−N、Si−Cl、Si−H、Si−C結合は切り離される。Siとの結合を切り離されたN、H、Cl、Cは膜中から除去され、N
2、H
2、Cl
2、HCl、CO
2等として排出される。また、N、H、Cl、Cとの結合が切られることで余ったSiの結合手は、酸化種に含まれるOと結びつき、Si−O結合が形成される。このようにして、Si含有層は、Cl等の不純物の含有量が少ないSiO層へと変化させられる(改質される)。この酸化処理によれば、O
2ガスを単独で供給する場合や水蒸気(H
2O)を供給する場合に比べ、酸化力を大幅に向上させることができる。すなわち、減圧雰囲気下においてO
2ガスにH
2ガスを添加することで、O
2ガス単独供給の場合やH
2Oガスを供給する場合に比べ大幅な酸化力向上効果が得られる。
【0088】
酸素含有ガスとしては、O
2ガスの他、オゾン(O
3)ガス等を用いてもよい。上述の温度帯において、一酸化窒素(NO)ガスや亜酸化窒素(N
2O)ガスへの水素含有ガス添加効果を試してみたところ、NOガス単独供給やN
2Oガス単独供給に比べて酸化力向上の効果が得られないことを確認した。すなわち、酸素含有ガスとしては窒素非含有の酸素含有ガス(窒素を含まず酸素を含むガス)を用いるのが好ましい。水素含有ガスとしては、H
2ガスの他、重水素(D
2)ガス等を用いてもよい。アンモニア(NH
3)ガスやメタン(CH
4)ガス等を用いると、窒素(N)不純物や炭素(C)不純物の膜中への混入が考えられる。すなわち、水素含有ガスとしては、他元素非含有の水素含有ガス(他元素を含まず水素または重水素を含むガス)を用いるのが好ましい。すなわち、酸素含有ガスとしては、O
2ガスおよびO
3ガスよりなる群から選択される少なくとも一つのガスを用いることができ、水素含有ガスとしては、H
2ガスおよびD
2ガスよりなる群から選択される少なくとも一つのガスを用いることができる。
【0089】
[ステップ4]
Si含有層をSiO層へと変化させた後、バルブ243d〜243gを閉じ、ノズル233d,233e内へのO
2ガスおよびH
2ガスの供給、つまり、処理室201内への酸化種の供給を停止する。このとき、APCバルブ244は開いたままとし、真空ポンプ246により処理室201内を真空排気し、処理室201内に残留する酸化種や反応副生成物等を処理室201内から排除する(残留ガス除去)。また、バルブ243h〜243lは開いたままとして、N
2ガスの処理室201内への供給を維持する。N
2ガスはパージガスとして作用し、これにより、処理室201内に残留する未反応もしくはSiO層形成に寄与した後の酸化種や反応副生成物等を処理室201内から排除する効果を更に高めることができる。
【0090】
このとき、処理室201内に残留するガスを完全に排除しなくてもよく、処理室201内を完全にパージしなくてもよい。処理室201内に残留するガスが微量であれば、その後に行われるステップ1において悪影響が生じることはない。このとき処理室201内へ供給するN
2ガスの流量も大流量とする必要はなく、例えば、処理室201の容積と同程度の量を供給することで、ステップ1において悪影響が生じない程度のパージを行うことができる。このように、処理室201内を完全にパージしないことで、パージ時間を短縮し、スループットを向上させることができる。また、N
2ガスの消費も必要最小限に抑えることが可能となる。
【0091】
このときのヒータ207の温度は、ウエハ200の温度が、ステップ1〜3と同じく、例えば350〜800℃、好ましくは450〜800℃、より好ましくは550〜750℃の範囲内の温度となるように設定する。各不活性ガス供給系から供給するパージガスとしてのN
2ガスの供給流量は、それぞれ例えば100〜10000sccmの範囲内の流量とする。パージガスとしては、N
2ガスの他、Ar,He,Ne,Xe等の希ガスを用いてもよい。
【0092】
(所定回数実施)
上述したステップ1〜4を1サイクルとして、このサイクルを所定回数、好ましくは複数回(n回)繰り返すことにより、ウエハ200上に所定膜厚のSiO膜を成膜することが出来る。
【0093】
サイクルを複数回行う場合、少なくとも2サイクル目以降の各ステップにおいて、「ウエハ200に対して所定のガスを供給する」と記載した部分は、「ウエハ200上に形成されている層に対して、すなわち、積層体としてのウエハ200の最表面に対して所定のガスを供給する」ことを意味し、「ウエハ200上に所定の層を形成する」と記載した部分は、「ウエハ200上に形成されている層の上、すなわち、積層体としてのウエハ200の最表面の上に所定の層を形成する」ことを意味している。この点は、上述の通りである。この点は、後述する他の実施形態においても同様である。
【0094】
(パージ及び大気圧復帰)
所定膜厚のSiO膜が成膜されると、バルブ243h〜243lを開き、ガス供給管232h〜232lのそれぞれからN
2ガスを処理室201内へ供給し、排気孔204c、排気空間205を介して排気管231から排気する。N
2ガスはパージガスとして作用し、これにより、処理室201内が不活性ガスでパージされ、処理室201内に残留するガスが処理室201内から除去される(パージ)。その後、処理室201内の雰囲気が不活性ガスに置換され、処理室201内の圧力が常圧に復帰される(大気圧復帰)。
【0095】
(ボートアンロード及びウエハディスチャージ)
その後、ボートエレベータ115によりシールキャップ219が下降されて、マニホールド209の下端が開口されるとともに、処理済の複数のウエハ200がボート217に保持された状態でマニホールド209の下端から処理室201の外部に搬出(ボートアンロード)される。その後、処理済みの複数のウエハ200はボート217より取り出される(ウエハディスチャージ)。
【0096】
(3)効果
本実施形態によれば、以下に示す1つ又は複数の効果を奏する。
【0097】
(a)ステップ3において、ノズル233d,233e内で予め生成した酸化種を処理室201内へ供給するようにしている。そしてこの際、ノズル233e側面の上部に開設されたガス供給孔248eから供給される酸化種の合計流量、および、ノズル233e側面の下部に開設されたガス供給孔248eから供給される酸化種の合計流量が、それぞれ、ノズル233d側面の中央部に開設されたガス供給孔248dから供給される酸化種の合計流量よりも小さくなるようにしている。これにより、処理室201内における酸化種の消費量の差異に起因するウエハ面間におけるローディング効果(後述)の発生を回避することが可能となる。結果として、ウエハ200上に形成されるSiO膜の面間膜厚分布、面内膜厚分布をそれぞれ向上させることが可能となる。また、ウエハ200上に形成されるSiO膜の膜質を向上させることも可能となる。
【0098】
(b)ステップ3において、ヒータ207の温度、MFC241d〜241gやAPC244の弁開度を適正に調整して、ノズル233d,233e内の温度および圧力が、O
2ガスとH
2ガスとがノズル233d,233e内で反応し、充分な量の酸化種が短時間で生成されるような温度および圧力となるようにしている。すなわち、ノズル233d,233e内の温度および圧力を、O
2ガスとH
2ガスとの反応による酸化種の生成がノズル233d,233e内で迅速に開始され、O
2ガスとH
2ガスとが処理室201内に流れ出す迄にはその反応が殆ど完了するような温度、圧力となるようにしている。これにより、O
2ガスとH
2ガスとの反応遅れに起因するウエハ面間におけるローディング効果(後述)の発生を抑制することが可能となる。結果として、ウエハ200上に形成されるSiO膜の面間膜厚分布、面内膜厚分布をそれぞれ向上させることが可能となる。また、ウエハ200上に形成されるSiO膜の膜質を向上させることも可能となる。
【0099】
(c)ステップ3において、ヒータ207の温度、MFC241d〜241gやAPC244の弁開度を適正に調整して、処理室201内の温度および圧力が、処理201内に供給された酸化種がウエハ200に到達する前に失活することのないような温度および圧力となるようにしている。これにより、酸化処理を行うのに充分な量の酸化種を各ウエハ200に対して供給することが可能となる。結果として、ウエハ200上に形成されるSiO膜の面間膜厚分布、面内膜厚分布をそれぞれ向上させることが可能となる。また、ウエハ200上に形成されるSiO膜の膜質を向上させることも可能となる。
【0100】
ここで、参考までに、従来の基板処理装置を用いてSiO膜を形成する場合について、
図6を用いて説明する。
【0101】
図6に示す従来の基板処理装置の縦型処理炉は、複数のウエハを水平姿勢で垂直方向に配列させて収容する処理室と、処理室内へHCDSガスおよびH
2ガスを供給するノズルと、処理室内へO
2ガスを供給するノズルと、を備えている。これら2本のノズルは、それぞれ、ウエハの配列方向に沿って延在するように、また、ウエハの外周に沿って互いに所定距離離れた位置に設けられている。また、これら2本のノズルの側面には、それぞれ、処理室内に収容される複数のウエハの一枚一枚に対応するように、少なくとも複数のウエハの数と同数のガス供給孔が設けられている。この処理室内に、水平姿勢で垂直方向に間隔を空けて配列された複数のウエハを収容し、その後、処理室内へHCDSガスを供給する工程と、加熱された大気圧未満の圧力下にある処理室内へO
2ガスとH
2ガスとを供給する工程とを、これらの工程の間に処理室内の残留ガスを除去するパージ工程を挟んで交互に所定回数行うことで、ウエハ上にSiO膜を形成することができる。挟んで交互に所定回数行うことで、ウエハ上にSiO膜を形成することができる。
【0102】
図6に示す縦型処理炉を用いて形成したSiO膜の面内膜厚分布を調べたところ、SiO膜の膜厚が、ウエハの中心付近で薄く、外周付近で厚くなる場合があること、つまり、面内膜厚分布が円錐形(凹形)となる場合があることが分かった。この現象を、ウエハ面内におけるローディング効果(Loading Effect)という(以下、単に面内LEともいう)。面内LEの発生要因としては、例えば、HCDSガス、O
2ガス、H
2ガスなどの処理ガスが、ウエハの外周付近で消費されること等によって、ウエハの中心付近に対して充分に供給されなくなること、つまり、処理ガスの供給不足が挙げられる。また、例えば、上述のパージ工程における残留ガスの除去が不充分(パージ不足)であることも、一つの要因として挙げられる。残留ガスの除去が不充分であると、処理室内で異なる複数の処理ガスが混ざり合うことで気相反応が生じてしまい、その結果、ウエハの外周付近におけるSiO膜の膜厚が厚くなる場合がある。
【0103】
また、
図6に示す縦型処理炉を用いて形成したSiO膜の面間(ウエハ間)膜厚分布を調べたところ、
図7に示すように、SiO膜の膜厚が、ウエハ配列領域の中央部で薄く、ウエハ配列領域の下部及び上部で厚くなること、つまり、面間膜厚分布が、ウエハ配列方向に沿って弓なり形(アーチ形)となる場合があることが分かった。
図7の横軸はウエハ上に形成されたSiO膜の面内平均膜厚(Å)を、縦軸は処理室内(ウエハ配列領域内)におけるウエハの位置を、それぞれ示している。
図7によれば、ウエハ上に形成されたSiO膜の面内平均膜厚は、ウエハ配列領域の中央部(CEN)で80(Å)と薄く、ウエハ配列領域の下部(BTM)及び上部(TOP)で82〜84(Å)と厚くなっていることが分かる。この現象を、ウエハ面間におけるローディング効果という(以下、単に面間LEともいう)。
【0104】
面間LEの発生要因は、面内LEの発生要因に比べて複雑である。例えば、
図6に示す縦型処理炉を用い、複数の単結晶Siウエハ(ベアウエハともいう)上にSiO膜を形成した場合、HCDSガスの流量を増やしたり、O
2ガス及びH
2ガスの流量を増やしたりすることで、面内LEは改善されるものの、面間LEは充分に改善されない場合があることが分かっている。面間LEの発生要因には、面内LEの発生要因である上述の処理ガスの供給不足や、パージ工程におけるパージ不足だけでなく、他の要因が存在しており、これら複数の要因が複合的に作用しているものと考えられる。
【0105】
発明者等は、面間LEの発生要因として以下の二つに注目した。
【0106】
一つ目の要因は、酸化種の消費量が、処理室内(ウエハ配置領域内)の位置(上部、中央部、下部)によって異なることである。というのも、ウエハ配置領域の上下領域には、例えば石英から成る反応管や断熱板の表面、つまり、酸化種を消費しない部材の表面が多く露出しており、また、処理対象のウエハの数(密度)が小さくなっている。そのため、ウエハ配置領域の上下領域では、酸化種の消費量が小さくなり、結果として、各ウエハに対して供給される酸化種の量が過剰になる傾向がある。一方、ウエハ配列領域の中央部では、酸化種を消費しない部材の表面の露出は少なく、また、処理対象のウエハの数(密度)が大きくなっている。そのため、ウエハ配列領域の中央部では、酸化種の消費量が大きくなり、結果として、各ウエハに対して供給される酸化種の量が不足する傾向がある。このように、ウエハ配置領域内における酸化種の消費量が均一でないことに起因して、各ウエハに対する酸化種の供給量に差異が生じ、上述の面間LEが引き起こされるものと考えられる。つまり、ウエハ配列領域の中央部では酸化種が多量に消費されることで供給量が不足し、SiO膜の厚さが薄くなることがあり、また、ウエハ配列領域の上部および下部では酸化種の消費量が少ないことから供給量が過剰となり、SiO膜の膜厚が厚くなるものと考えられる。特に、ウエハの表面に所定のパターン加工が施され表面積が増大していたり、処理温度を低温化したりする場合には、処理室内における酸化種の消費量の差が大きくなり、面間LEが強くなると考えられる。
【0107】
二つ目の要因は、O
2ガスとH
2ガスとが反応してから酸化種が生成されるまでにタイムラグ(反応遅れ)が生じることである。
図8は、酸化種が生成されるまでの距離(時間)を分析するための解析モデルを、
図9(a)は、その解析結果を示している。
図9(a)によれば、処理室内の温度を例えば600℃とした場合、O
2ガスとH
2とが反応して原子状酸素が生成されるまでに、所定の距離(時間)が必要であることが分かる。つまり、処理室内の圧力が低いほど(例えば60Pa)、酸化種の生成に要する距離(時間)は長くなることが分かる。また、処理室内の圧力が高いほど(例えば200Pa)、酸化種の生成に要する距離(時間)は短くなるが、生成された酸化種は短時間で失活し、その濃度はすぐに減衰してしまうことが分かる。発明者等の鋭意研究によれば、
図6に示す従来例、つまり、O
2ガスとH
2ガスとを別々に処理室内に供給し、これらを処理室内で反応させて酸化種を生成するPostMixタイプの場合、上述の反応遅れによる影響を受け易くなり、面間LEが強くなると考えられる。
【0108】
一つ目の要因(酸化種の消費量のばらつき)に対し、本実施形態では、各ウエハ200に対して供給する酸化種の量を、その消費量に合わせて適正に調整する(増減させる)ようにしている。つまり、処理室201内における酸化種の消費量の多い領域(ウエハ配列領域の中央部)への酸化種の供給量が、処理室201内における酸化種の消費量の少ない領域(ウエハ配列領域の上部および下部)への酸化種の供給量よりも大きくなるようにしている。これにより、酸化種の消費量のばらつきに起因する面間LEの発生を効果的に抑制することが可能となる。
【0109】
また、二つ目の要因(O
2ガスとH
2ガスとの反応遅れ)に対し、本実施形態では、ノズル233d,233e内でO
2ガスとH
2ガスとを反応させて酸化種を生成するPreMixタイプを採用している。これにより、反応遅れに起因する面間LEの発生を抑制することが可能となる。特に、
図9(b)に例示するように、ノズル233d,233e内の温度および圧力を、O
2ガスとH
2ガスとの反応による酸化種の生成がノズル233d,233e内で迅速に開始され(タイムラグが短縮され)、O
2ガスとH
2ガスとが処理室201内に流れ出す迄にその反応が殆ど完了するような温度、圧力(例えば600℃、200Pa)としていることから、反応遅れに起因する面間LEの発生をより効果的に抑制することが可能となる。また、処理室201内の温度および圧力を、処理201内に供給された酸化種がウエハ200に到達する前に失活することのないような温度および圧力(例えば600℃、60Pa)としていることから、充分な量の酸化種を各ウエハ200に対して供給することができ、SiO膜の面間膜厚分布、面内膜厚分布、膜質を向上させることが可能となる。
【0110】
従来の基板処理装置においても、一括して処理するウエハの枚数を例えば125枚から例えば50枚に減らすことで、面内LEや面間LEの発生を抑制することは可能である。但し、この場合、基板処理の生産性低下を招いてしまう。本実施形態によれば、一括して処理するウエハの枚数を減らす必要がないため、基板処理の生産性低下を回避することが可能となる。
【0111】
(d)ノズル233aからHCDSガスを供給する際、ウエハ200の外周に沿ってノズル233aを両側から挟み込むように設けられたノズル233b,233cからそれぞれN
2ガスを供給している。これにより、処理室201内におけるHCDSガスの流路等を制御することが可能となり、SiO膜の膜厚の面内均一性を向上させることが可能となる。
【0112】
(e)処理室201内へHCDSガスを供給する工程と、処理室201内へ酸化種を供給する工程と、を交互に所定回数行うことで、SiO膜の面内膜厚均一性及び段差被覆性を、一般的なCVD法によりSiO膜を形成する場合よりも向上させることが可能となる。
【0113】
(f)原子状酸素等の酸素を含む水分非含有の酸化種を用いてSi含有層をSiO層に変化させることで、Cl等の不純物の含有量が極めて少なく、極めて良質なSiO膜を形成することが可能となる。
【0114】
<本発明の他の実施形態>
以上、本発明の実施形態を具体的に説明したが、本発明は上述の実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能である。
【0115】
上述の実施形態では、酸化種の供給をノズル233d,233eの2つのノズルを用いて行う例について説明したが、本発明は係る形態に限定されない。例えば、酸化種の供給をノズル233dのみを用いて行うようにしても、上述の実施形態と同様の作用効果が得られる。この場合、基板処理装置の構成を簡素化することができ、その製造コストやメンテナンスコストを低減することが可能となる。但し、上述の実施形態のように酸化種の供給をノズル233d,233eの2つのノズルを用いて行う場合には、処理室201内に供給する酸化種の流量分布を調整することが容易となる点で好ましい。
【0116】
上述の実施形態では、ステップ3において、ノズル233d,233e内で生成した酸化種を用いて酸化処理を行う例について説明したが、本発明は係る形態に限定されない。例えば、ステップ3において、ノズル233b(第4ノズル)から処理室201内にO
2ガスを供給し、ノズル233a(第5ノズル)から処理室201内にH
2ガスを供給し、これらO
2ガスとH
2ガスとを処理室201内で反応させて酸化種を生成し、この処理室201内で生成した酸化種をさらに用いて酸化処理を行うようにしてもよい。つまり、ノズル233d,233e内で生成した酸化種と、処理室201内で生成した酸化種と、を両方用いて酸化処理を行うようにしてもよい。また、処理室201内では酸化種を生成させず、処理室201内に供給したO
2ガスやH
2ガスを酸化処理に併用するようにしてもよい。
【0117】
上述の実施形態では、
図4(a)に示すように、ガス供給孔248d,248eをそれぞれ複数設け、さらに、ガス供給孔248d,248eの開口面積及び開口ピッチをそれぞれ同一とする例について説明したが、本発明は係る形態に限定されない。
【0118】
例えば、ガス供給孔248dを複数設ける場合、
図4(b)に示すように、少なくとも中央よりも上端若しくは下端のガス供給孔248dの開口面積を小さくしてもよい。さらに好適には、中央から上端若しくは下端、または、上端および下端に向かうにつれて、ガス供給孔248eの開口面積を徐々に小さくしてもよい。このように構成することによって、ノズル上端または下端に向かうにつれて供給可能なガス流量が小さくなるため、膜厚が薄くなってしまい易いウエハ保持位置に供給する原料ガス流量を多くしつつ、膜厚が厚くなってしまい易いウエハ保持位置の近傍へ供給する原料ガス流量を少なくすることが可能となり、ウエハの面間均一性を向上させることができる。
【0119】
また、ガス供給孔248eを複数設ける場合、
図4(d)に示すように、ノズル233eの中央からその上端若しくは下端に向かうにつれて、または、ノズル233eの中央から上端および下端に向かうにつれて、ガス供給孔248eの開口面積を徐々に小さくしてもよい。このように構成することによって、ノズル中央からノズルの上端又は下端に向けて供給可能なガス流量が小さくなるため、ウエハ配列領域の上部および下部へ供給される酸化種の流量を積極的に制御することが可能となり、ウエハ面間均一性を向上させることが可能となる。
【0120】
また、例えば、ガス供給孔248dを複数設ける場合、
図4(c)に示すように、中央から上端または下端に向かうにつれて、ガス供給孔248dの開口ピッチを徐々に大きくしてもよい。このように構成することによって、ノズル上端または下端に向かうにつれてガスの供給箇所が少なくなるため、膜厚が薄くなってしまい易いウエハ保持位置に供給する原料ガス流量を多くしつつ、膜厚が厚くなってしまい易いウエハ保持位置の近傍へ供給する原料ガス流量を少なくすることが可能となり、ウエハ面間均一性を向上させることができる。
【0121】
また、ガス供給孔248eを複数設ける場合、
図4(e)に示すように、ノズル233eの中央からその上端若しくは下端に向かうにつれて、または、ノズル233eの中央から上端および下端に向かうにつれて、ガス供給孔248eの開口ピッチを徐々に大きくしてもよい。このように構成することによって、ノズル上端または下端に向かうにつれてガスの供給箇所が少なくなるため、ウエハ配列領域の上部および下部へ供給される酸化種の流量を積極的に制御することが可能となり、ウエハ面間均一性を向上させることが可能となる。
【0122】
これらのように構成することで、処理室201内における酸化種の濃度分布、特に、ウエハ配列方向における濃度分布を、よりなだらかに(段差なく連続的に)調整することが可能となる。
【0123】
また、例えば、第3ノズルであるノズル233eは、ウエハ配列領域の上部および下部のそれぞれに対応する二つのノズルによって構成されていてもよい。つまり、
図4(f)に示すように、ノズル233eを、複数のウエハ200のうち上部に配列したウエハ200に対応するように、1つ以上のガス供給孔248eを上部の側面にのみ備える上部開口ノズルと、複数のウエハ200のうち下部に配列したウエハ200に対応するように、1つ以上のガス供給孔248eを下部の側面にのみ備える下部開口ノズルと、により構成してもよい。これにより、ウエハ配列領域の上部に供給する酸化種の流量と、ウエハ配列領域の下部に供給する酸化種の流量と、を独立して制御することが可能となるとともに、ノズル1本あたりのガス供給孔の数を少なく設けることが可能となることでノズルからのガス供給を均一に行うことができる。さらに、基板処理装置の構成を簡素化することができ、その製造コストやメンテナンスコストを低減することが可能となる。
【0124】
また、例えば、第2ノズルであるノズル233dは、ウエハ配列中央領域の上部および下部のそれぞれに対応する二つのノズルによって構成されていてもよい。つまり、
図4(g)に示すように、ノズル233dを、複数のウエハ200のうち中央領域上部に配列したウエハ200(例えば中央領域に積層された複数のウエハ200のうち、配列方向中央よりも上方側に配列したウエハ200)に対応するように、1つ以上のガス供給孔248dを中央領域上部の側面にのみ備える中央領域上部開口ノズルと、複数のウエハ200のうち中央領域下部に配列したウエハ200(例えば中央領域に積層された複数のウエハ200のうち、配列方向中央よりも下方側に配列したウエハ200)に対応するように、1つ以上のガス供給孔248dを中央領域下部の側面にのみ備える中央領域下部開口ノズルと、により構成してもよい。これにより、ウエハ配列中央領域の上部に供給する酸化種の流量と、ウエハ配列中央領域の下部に供給する酸化種の流量とを独立して制御することが可能となるとともに、ノズル1本あたりのガス供給孔の数を少なく設けることが可能となることでノズルからのガス供給を均一に行うことができる。さらに、基板処理装置の構成を簡素化することができ、その製造コストやメンテナンスコストを低減することが可能となる。
【0125】
また、上述の実施形態では、複数のウエハ200を収容した処理室201内へHCDSガスを供給する工程と、O
2ガスおよびH
2ガスを反応させて生成した酸化種を処理室201内へ供給する工程と、を交互に所定回数(1回以上)行う例について説明したが、本発明は係る形態に限定されない。例えば、
図5(b)にガス供給タイミングを示すように、これらの工程を同時に所定回数(1回以上)行うことで、複数のウエハ200上にSiO膜を形成(堆積)する成膜シーケンスにも、本発明は好適に適用可能である。このときの処理条件は、例えば上述の実施形態と同様な処理条件とすることができる。
【0126】
このように、HCDSガスを供給する工程と、O
2ガスおよびH
2ガスを反応させて生成した酸化種を処理室201内へ供給する工程と、を同時に供給するようにしても、上述の実施形態と同様の作用効果が得られる。また、このように、これらの工程を同時に行うようにした場合、これらの工程を交互に行う場合と比較して、SiO膜の成膜レートを向上させることが可能となる。但し、これらの工程を交互に行う方が、表面反応が支配的な条件下で適正に反応させることができ、膜厚制御の制御性を高めることが可能となる点で、好ましい。また、処理室201内における気相反応を回避することができ、処理室201内でのパーティクルの発生を抑制することが可能となる点でも、好ましい。
【0127】
また、上述の実施形態では、処理室201内へのH
2ガスおよびO
2ガスの供給を同時に開始し、その後、処理室201内へのH
2ガスおよびO
2ガスの供給を同時に停止する例について説明したが、本発明は係る形態に限定されない。例えば、
図10(a)にガス供給シーケンス(タイミング)を示すように、処理室201内へのH
2ガスの供給開始をO
2ガスの供給開始よりも先に行ったり、処理室201内へのH
2ガスの供給停止をO
2ガスの供給停止よりも後に行ったりしてもよい。つまり、ステップ3においては、H
2ガスの供給開始を先行させてもよく、また、O
2ガスの供給停止を先行させたりしてもよい。また、例えば、
図10(b)にガス供給シーケンスを示すように、処理室201内へ供給するH
2ガスの流量を、処理室201内へ供給するO
2ガスの流量よりも大きくしてもよい。つまり、ステップ3におけるO
2ガス及びH
2ガスの供給条件を、水素リッチな条件としてもよい。また、
図10(c)にガス供給シーケンスを示すように、
図10(a)(b)に示すガス供給シーケンスを組み合わせてもよい。このときの処理条件は、例えば上述の実施形態と同様な処理条件とすることができる。
【0128】
図10(a)〜(c)に示すガス供給シーケンスにおいても、上述の実施形態と同様の作用効果が得られる。また、
図10(a)〜(c)に示すガス供給シーケンスによれば、成膜の下地を酸化させることなく、SiO膜を形成することが可能となる。これは、成膜の下地がメタル(金属膜)である場合に特に有効となる。O
2ガスとH
2ガスとを反応させて生成した酸化種を用いる場合、この酸化種の酸化力が強いため、成膜中に成膜の下地が酸化されてしまうことがある。これに対し、
図10(a)〜(c)に示すように、ステップ3において、H
2ガスの供給開始を先行させたり、O
2ガスの供給停止を先行させたり、ガスの供給条件を水素リッチな条件としたり、これらの手法を組み合わせたりすることで、還元(H
2)雰囲気下で原子状酸素を用いて酸化を行えるようになり、成膜の下地の酸化を抑制できるようになる。
【0129】
また、上述の実施形態では、HCDSガスと、O
2ガスとH
2ガスとを反応させて生成した酸化種と、を用いてウエハ200上にSiO膜を形成する例について説明したが、本発明は係る形態に限定されない。
【0130】
例えば、
図11(a)にガス供給シーケンスを示すように、複数のウエハ200を収容した処理室201内へのHCDSガスの供給と、処理室201内への窒化ガスとしてのアンモニア(NH
3)ガスの供給と、O
2ガスおよびH
2ガスを反応させて生成した酸化種の処理室201内への供給と、を1サイクルとして、このサイクルを所定回数行うことで、ウエハ200上にシリコン酸窒化膜(SiON膜)を形成してもよい。
【0131】
また、例えば、
図11(b)にガス供給シーケンスを示すように、
図5(a)に示すガス供給シーケンスによりSiO膜を形成した後、
図11(b)に示すガス供給シーケンスによりSiON膜を形成し、ウエハ200上に、SiO膜とSiON膜とが積層してなる積層膜をin−situにて形成してもよい。また、SiON膜を形成した後、SiO膜を形成し、ウエハ200上に、SiON膜とSiO膜とが積層してなる積層膜をin−situにて形成してもよい。また、SiO膜の形成と、SiON膜の形成と、を交互に所定回数行うことで、ウエハ200上に、SiO膜とSiON膜とが交互に積層してなる積層膜をin−situにて形成してもよい。
【0132】
また、
図11(c)にガス供給シーケンスを示すように、
図5(a)に示すガス供給シーケンスによりSiO膜を形成した後、
図11(b)に示すガス供給シーケンスによりSiON膜を形成し、その後、処理室201内へのHCDSガスの供給と、処理室201内へのNH
3ガスの供給と、を1サイクルとして、このサイクルを所定回数行うことでSiN膜を形成し、ウエハ200上に、SiO膜、SiON膜、SiN膜が積層してなる積層膜をin−situにて形成してもよい。また、上述のSiO膜、SiON膜、SiN膜の形成順序は任意に変更してもよい。例えば、SiO膜を形成した後、SiN膜、SiON膜の順に形成し、ウエハ200上に、SiO膜、SiN膜、SiON膜が積層してなる積層膜をin−situにて形成してもよい。また例えば、SiON膜を形成した後、SiO膜、SiN膜の順に形成したり、SiN膜、SiO膜の順に形成したりして、ウエハ200上に、SiON膜、SiO膜、SiN膜が積層してなる積層膜や、SiON膜、SiN膜、SiO膜が積層してなる積層膜をin−situにて形成してもよい。また例えば、SiN膜を形成した後、SiON膜、SiO膜の順に形成したり、SiO膜、SiON膜の順に形成したりして、ウエハ200上に、SiN膜、SiON膜、SiO膜が積層してなる積層膜や、SiN膜、SiO膜、SiON膜が積層してなる積層膜をin−situにて形成してもよい。また、SiO膜の形成、SiON膜の形成、SiN膜の形成を含むサイクルを所定回数行うことで、ウエハ200上に、SiO膜、SiON膜、SiN膜が任意の順序で積層してなる積層膜をin−situにて形成してもよい。
【0133】
これらの場合、NH
3ガスは、ガス供給管233a〜233eのいずれかから供給するようにしてもよい。この場合、NH
3ガスを供給するノズルと、H
2ガスを供給するノズルと、を共用としてもよい。ノズルの本数を減らすことで、基板処理装置の製造コストやメンテナンスコストを低減することが可能となる。但し、上述の温度条件下では、HCDSガスとNH
3ガスとは反応することが考えられるので、HCDSガスを供給するノズルと、NH
3ガスを供給するノズルとは、別にした方がよい。例えば、ガス供給管232b、MFC241b、バルブ243b、ノズル233bを介して処理室201内へ、O
2ガスに代えてNH
3ガスを供給するようにしてもよい。この場合、ガス供給管232b、MFC241b、バルブ243bにより、窒化ガス(窒素含有ガス)供給系が構成されることとなる。ノズル233bは、処理室201内に窒化ガスを供給する第6ノズルとして考えることもできる。
【0134】
また、上述の実施形態では、ステップ3においてノズル233d,233e内へH
2ガスを供給する間、つまり、H
2ガスの供給期間に、ノズル233d,233e内へのO
2ガスの供給を連続的に行う例について説明したが、本発明は係る形態に限定されない。例えば、ステップ3においてノズル233d,233e内へH
2ガスを供給する間に、ノズル233d,233e内へのO
2ガスの供給を間欠的に複数回行うようにしてもよい。このようにした場合、O
2ガスとH
2ガスとが反応することにより消費されたO
2ガスを、所定のタイミングで補充することが可能となる。結果として、ノズル233d,233e内におけるO
2ガスとH
2ガスとの反応効率(酸化種の生成効率)を維持すること、つまり、反応効率の低下を抑制することが可能となる。これにより、SiO膜の成膜レートの低下を抑制することが可能となる。
【0135】
また、上述の実施形態では、薄膜として、半導体元素であるSiを含む半導体系薄膜を形成する例について説明したが、本発明は係る場合に限定されない。すなわち、本発明は、薄膜として、例えばチタン(Ti)、ジルコニウム(Zr)、ハフニウム(Hf)、タンタル(Ta)、アルミニウム(Al)、モリブデン(Mo)等の金属元素を含む金属系薄膜を形成する場合にも、好適に適用することができる。
【0136】
例えば、Tiを含む金属系薄膜としてチタン酸化膜(TiO膜)を形成する場合は、原料ガスとして、チタニウムテトラクロライド(TiCl
4)等のTiおよびクロロ基を含むガスや、チタニウムテトラフルオライド(TiF
4)等のTiおよびフルオロ基を含むガスや、テトラキスエチルメチルアミノチタニウム(Ti[N(C
2H
5)(CH
3)]
4、略称:TEMAT)等のTiおよびアミノ基を含むガスを用いることができる。酸素含有ガス及び水素含有ガスとしては、上述の実施形態と同様なガスを用いることができる。このときの処理条件は、例えば上述の実施形態と同様な処理条件とすることができる。
【0137】
また例えば、Zrを含む金属系薄膜としてジルコニウム酸化膜(ZrO膜)を形成する場合は、原料ガスとして、ジルコニウムテトラクロライド(ZrCl
4)等のZrおよびクロロ基を含むガスや、ジルコニウムテトラフルオライド(ZrF
4)等のZrおよびフルオロ基を含むガスや、テトラキスエチルメチルアミノジルコニウム(Zr[N(C
2H
5)(CH
3)]
4、略称:TEMAZ)等のZrおよびアミノ基を含むガスを用いることができる。酸素含有ガス及び水素含有ガスとしては、上述の実施形態と同様なガスを用いることができる。このときの処理条件は、例えば上述の実施形態と同様な処理条件とすることができる。
【0138】
また例えば、Hfを含む金属系薄膜としてハフニウム酸化膜(HfO膜)を形成する場合は、原料ガスとして、ハフニウムテトラクロライド(HfCl
4)等のHfおよびクロロ基を含むガスや、ハフニウムテトラフルオライド(HfF
4)等のHfおよびフルオロ基を含むガスや、テトラキスエチルメチルアミノハフニウム(Hf[N(C
2H
5)(CH
3)]
4、略称:TEMAH)等のHfおよびアミノ基を含むガスを用いることができる。酸素含有ガス及び水素含有ガスとしては、上述の実施形態と同様なガスを用いることができる。このときの処理条件は、例えば上述の実施形態と同様な処理条件とすることができる。
【0139】
また例えば、Taを含む金属系薄膜としてタンタル酸化膜(TaO膜)を形成する場合は、原料ガスとして、タンタルペンタクロライド(TaCl
5)等のTaおよびクロロ基を含むガスや、タンタルペンタフルオライド(TaF
5)等のTaおよびフルオロ基を含むガスや、ペンタエトキシタンタル(Ta(OC
2H
5)
5、略称:PET)等のTaおよびエトキシ基を含むガスを用いることができる。酸素含有ガス及び水素含有ガスとしては、上述の実施形態と同様なガスを用いることができる。このときの処理条件は、例えば上述の実施形態と同様な処理条件とすることができる。
【0140】
また例えば、Alを含む金属系薄膜としてアルミニウム酸化膜(AlO膜)を形成する場合は、原料ガスとして、アルミニウムトリクロライド(AlCl
3)等のAlおよびクロロ基を含むガスや、アルミニウムトリフルオライド(AlF
3)等のAlおよびフルオロ基を含むガスや、トリメチルアルミニウム(Al(CH
3)
3、略称:TMA)等のAlおよびメチル基を含むガスを用いることができる。酸素含有ガス及び水素含有ガスとしては、上述の実施形態と同様なガスを用いることができる。このときの処理条件は、例えば上述の実施形態と同様な処理条件とすることができる。
【0141】
また例えば、Moを含む金属系薄膜としてモリブデン酸化膜(MoO膜)を形成する場合は、原料ガスとして、モリブデンペンタクロライド(MoCl
5)等のMoおよびクロロ基を含むガスや、モリブデンペンタフルオライド(MoF
5)等のMoおよびフルオロ基を含むガスを用いることができる。酸素含有ガス及び水素含有ガスとしては、上述の実施形態と同様なガスを用いることができる。このときの処理条件は、例えば上述の実施形態と同様な処理条件とすることができる。
【0142】
このように、本発明は、半導体系薄膜だけでなく、金属系薄膜の成膜にも適用することができ、この場合であっても、上述の実施形態と同様な作用効果が得られる。すなわち、本発明は、加熱された大気圧未満の圧力下にある処理室内へ酸素含有ガスと水素含有ガスとを同時に供給する工程を有する基板処理全般に適用可能である。
【0143】
上述した基板処理に用いられるプロセスレシピ(処理手順や処理条件が記載されたプログラム)は、基板処理の内容(膜種、組成、膜質、膜厚等)に応じて、それぞれ個別に用意する(複数用意する)ことが好ましい。そして、基板処理を開始する際、基板処理の内容に応じて、複数のプロセスレシピの中から、適正なプロセスレシピを適宜選択することが好ましい。具体的には、基板処理の内容に応じて個別に用意された複数のプロセスレシピを、電気通信回線や当該プロセスレシピを記録した記録媒体(外部記憶装置123)を介して、基板処理装置が備える記憶装置121c内に予め格納(インストール)しておくことが好ましい。そして、基板処理を開始する際、基板処理装置が備えるCPU121aが、記憶装置121c内に格納された複数のプロセスレシピの中から、基板処理の内容に応じて、適正なプロセスレシピを適宜選択することが好ましい。このように構成することで、1台の基板処理装置で、様々な種類の基板処理を、汎用的に、かつ、再現性よく行うことが可能となる。また、オペレータの操作負担(処理手順や処理条件の入力負担等)を低減でき、操作ミスを回避しつつ、基板処理を迅速に開始できるようになる。
【0144】
上述のプロセスレシピは、新たに作成する場合に限らず、例えば、基板処理装置に既にインストールされていた既存のプロセスレシピを変更することで用意してもよい。プロセスレシピを変更する場合は、変更後のプロセスレシピを、電気通信回線や当該プロセスレシピを記録した記録媒体を介して、基板処理装置にインストールしてもよい。また、既存の基板処理装置が備える入出力装置122を操作し、基板処理装置に既にインストールされていた既存のプロセスレシピを直接変更するようにしてもよい。
【0145】
上述の実施形態では、ホットウォール型の処理炉を有する基板処理装置を用いて複数の基板を一括して処理する例について説明した。本発明はこれに限定されず、コールドウォール型の処理炉を有する基板処理装置を用いて複数の基板を一括して処理する場合にも、好適に適用できる。この場合においても、処理条件は、例えば上述の実施形態と同様な処理条件とすることができる。
【0146】
上述の各実施形態は、適宜組み合わせて用いることができる。また、このときの処理条件は、例えば上述の実施形態と同様な処理条件とすることができる。
【0147】
<本発明の好ましい態様>
以下、本発明の好ましい態様について付記する。
【0148】
(付記1)
本発明の一態様によれば、
間隔を空けて配列された複数の基板を収容して処理する処理室と、
前記処理室内へ原料ガスを供給する第1ノズルと、
前記基板の配列方向に沿って延在するように前記処理室内に配設され、酸素含有ガスと水素含有ガスとを反応させて生成した酸化種(を含む反応ガス)を前記処理室内へ供給する第2ノズルと、を備え、
前記第2ノズルの側面には、前記複数の基板のうち中央部に配列される基板に対応するように、1つ以上のガス供給孔が中央部にのみ開設されている基板処理装置が提供される。
【0149】
(付記2)
付記1に記載の基板処理装置であって、好ましくは、
前記第1ノズルに接続され、前記第1ノズル内に原料ガスを供給する原料ガス供給系と、
前記第2ノズルに接続され、前記第2ノズル内に酸素含有ガスおよび水素含有ガスを供給する反応ガス供給系と、
前記処理室内を加熱するヒータと、
前記処理室内の圧力を調整する圧力調整器と、
複数の基板を収容した前記処理室内へ原料ガスを供給する処理と、加熱された大気圧未満の圧力下にある前記第2ノズル内へ酸素含有ガスと水素含有ガスとを供給し、これらを前記第2ノズル内において反応させて酸化種を生成し、この酸化種を前記処理室内へ供給する処理と、を交互に所定回数行い、前記複数の基板上に酸化膜を形成する処理を行うように、前記原料ガス供給系、前記反応ガス供給系、前記ヒータおよび前記圧力調整器を制御するよう構成される制御部と、をさらに備える。
【0150】
(付記3)
付記2に記載の基板処理装置であって、好ましくは、
前記制御部は、
複数の基板を収容した前記処理室内へ原料ガスを供給して初期層を形成する処理と、加熱された大気圧未満の圧力下にある前記第2ノズル内へ酸素含有ガスと水素含有ガスとを供給し、これらを前記第2ノズル内において反応させて酸化種を生成し、この酸化種を用いて前記初期層を酸化層に変化させる処理と、を交互に所定回数行い、前記複数の基板上に酸化膜を形成する処理を行うように、前記原料ガス供給系、前記反応ガス供給系、前記ヒータおよび前記圧力調整器を制御するよう構成される。
【0151】
(付記4)
付記1に記載の基板処理装置であって、好ましくは、
前記基板の配列方向に沿って延在するように前記処理室内に配設され、酸素含有ガスと水素含有ガスとを反応させて生成した酸化種(を含む反応ガス)を前記処理室内へ供給する第3ノズルと、
前記第2ノズルおよび前記第3ノズルに接続され、前記第2ノズル内および前記第3ノズル内に酸素含有ガスおよび水素含有ガスをそれぞれ供給する反応ガス供給系と、を備え、
前記第3ノズルには、前記複数の基板のうち上部および下部に配列される基板に対応するように、それぞれ1つ以上のガス供給孔が上部および下部にのみ開設されており、
酸素含有ガスと水素含有ガスとを前記第2ノズル内に供給する際、酸素含有ガスと水素含有ガスとを前記第3ノズル内にも供給し、このとき、前記第3ノズルの上部に開設されたガス供給孔から供給される酸化種(を含む反応ガス)の合計流量、および、前記第3ノズルの下部に開設されたガス供給孔から供給される酸化種(を含む反応ガス)の合計流量が、それぞれ、前記第2ノズルの中央部に開設されたガス供給孔から供給される酸化種(を含む反応ガス)の合計流量よりも小さくなるように、前記反応ガス供給系を制御するよう構成される制御部をさらに備える。
【0152】
(付記5)
付記4に記載の基板処理装置であって、好ましくは、
前記制御部は、酸素含有ガスと水素含有ガスとを前記第2ノズル内および前記第3ノズル内にそれぞれ供給する際、前記第3ノズルの上部に開設されたガス供給孔から供給される酸化種(を含む反応ガス)の合計流量、および、前記第3ノズルの下部に開設されたガス供給孔から供給される酸化種(を含む反応ガス)の合計流量が、それぞれ、前記第2ノズルの中央部に開設されたガス供給孔から供給される酸化種(を含む反応ガス)の合計流量の半分以下(1/2以下)の流量となるように、前記反応ガス供給系を制御するよう構成されている。
【0153】
(付記6)
付記2〜5のいずれかに記載の基板処理装置であって、好ましくは、
前記制御部は、酸素含有ガスと水素含有ガスとを前記第2ノズル内に供給する際の前記第2ノズル内の温度および圧力(第2ノズル内の全圧あるいは第2ノズル内における酸素含有ガスおよび水素含有ガスの分圧)が、酸素含有ガスと水素含有ガスとが前記第2ノズル内で反応して酸化種が生成されるような温度および圧力となるように、前記反応ガス供給系、前記ヒータおよび前記圧力調整器を制御する。
【0154】
(付記7)
付記2〜6のいずれかに記載の基板処理装置であって、好ましくは、
前記制御部は、酸素含有ガスと水素含有ガスとを前記第3ノズル内に供給する際の前記第3ノズル内の温度および圧力(第2ノズル内の全圧あるいは第2ノズル内における酸素含有ガスおよび水素含有ガスの分圧)が、酸素含有ガスと水素含有ガスとが前記第3ノズル内で反応して酸化種が生成されるような温度および圧力となるように、前記反応ガス供給系、前記ヒータおよび前記圧力調整器を制御する。
【0155】
(付記8)
付記2〜7のいずれかに記載の基板処理装置であって、好ましくは、
前記制御部は、酸化種を前記処理室内に供給する際の前記処理室内の温度および圧力(処理室内の全圧あるいは処理室内における酸化種の分圧)が、前記処理室内に供給された酸化種が基板に到達する前に失活することのないような温度および圧力となるように、前記反応ガス供給系、前記ヒータおよび前記圧力調整器を制御する。
【0156】
(付記9)
付記4,5,7のいずれかに記載の基板処理装置であって、好ましくは、
前記第3ノズルは、
前記複数の基板のうち上部に配列した基板に対応するように、1つ以上の前記ガス供給孔を上部の側面にのみ備える上部開口ノズルと、
前記複数の基板のうち下部に配列した基板に対応するように、1つ以上の前記ガス供給孔を下部の側面にのみ備える下部開口ノズルと、
を備え、
前記反応ガス供給系は、前記上部開口ノズルと前記下部開口ノズルとにそれぞれ接続され、前記上部開口ノズルから供給する酸化種の流量と、前記下部開口ノズルから供給する酸化種の流量と、をそれぞれ独立して制御することが可能なように構成されている。
【0157】
(付記10)
付記1〜9のいずれかに記載の基板処理装置であって、好ましくは、
前記第2ノズルは、
前記複数の基板のうち中央領域上部に配列した基板に対応するように、1つ以上の前記ガス供給孔を中央領域上部の側面にのみ備える中央領域上部開口ノズルと、
前記複数の基板のうち中央領域下部に配列した基板に対応するように、1つ以上の前記ガス供給孔を中央領域下部の側面にのみ備える中央領域下部開口ノズルと、
を備え、
前記反応ガス供給系は、前記中央領域上部開口ノズルと前記中央領域下部開口ノズルとにそれぞれ接続され、前記中央領域上部開口ノズルから供給する酸化種の流量と、前記中央領域下部開口ノズルから供給する酸化種の流量と、をそれぞれ独立して制御することが可能なように構成されている。
【0158】
(付記11)
付記2〜10のいずれかに記載の基板処理装置であって、好ましくは、
前記基板の配列方向に沿って延在するように配設され、前記処理室内へ酸素含有ガスを供給する第4ノズルと、
前記基板の配列方向に沿って延在するように配設され、前記処理室内へ水素含有ガスを供給する第5ノズルと、を備え、
前記反応ガス供給系は、前記第4ノズルと前記第5ノズルとにそれぞれ接続され、前記第4ノズル内に酸素含有ガスを、前記第5ノズル内に水素含有ガスをそれぞれ供給するよう構成され、
前記制御部は、前記第2ノズル内で生成した酸化種を前記処理室内へ供給する際、前記第4ノズルおよび前記第5ノズルから酸素含有ガスと水素含有ガスとをそれぞれ互いに混合させることなく前記処理室内へ供給し、これらを前記処理室内において反応させて酸化種を生成し、この前記処理室内で生成した酸化種と前記第2ノズル内で生成した酸化種とを用いて前記初期層を酸化層に変化させるように、前記反応ガス供給系を制御するよう構成されている。
【0159】
(付記12)
付記1〜11のいずれかに記載の基板処理装置であって、好ましくは、
前記処理室が内部に形成されたインナチューブと、
前記インナチューブを取り囲むアウタチューブと、
前記インナチューブの側壁に開設された排気孔と、
前記アウタチューブと前記インナチューブとに挟まれる空間を排気する排気系と、
を備える。
【0160】
(付記13)
本発明の他の態様によれば、
間隔を空けて配列された複数の基板を収容して処理するインナチューブと、
前記インナチューブを取り囲むアウタチューブと、
前記インナチューブ内に原料ガスを供給する第1ノズルと、
前記基板の配列方向に沿って延在するように前記インナチューブ内に配設され、酸素含有ガスと水素含有ガスとを反応させて生成した酸化種(を含む反応ガス)を前記インナチューブ内へ供給する第2ノズルと、
前記インナチューブの側壁に開設された排気孔と、
前記アウタチューブと前記インナチューブとに挟まれる空間を排気する排気系と、を備え、
前記第2ノズルの側面には、前記複数の基板のうち中央部に配列される基板に対応するように、1つ以上の第2ガス供給孔が中央部にのみ開設されている基板処理装置が提供される。
【0161】
(付記14)
本発明のさらに他の態様によれば、
間隔を空けて配列された複数の基板を処理室内に収容する工程と、
前記処理室内の前記基板へ原料ガスを供給する工程と、前記処理室内の前記基板へ酸化種を供給する工程と、を交互に所定回数行い、前記複数の基板上に酸化膜を形成する工程と、を有し、
前記酸化種を供給する工程では、
前記基板の配列方向に沿って延在するように前記処理室内に配設され、加熱された大気圧未満の圧力下にあるノズル内へ酸素含有ガスと水素含有ガスとを供給し、これらを前記ノズル内において反応させて酸化種を生成し、この酸化種を、前記複数の基板のうち中央部に配列された基板に対応するように前記ノズル側面の中央部にのみ開設された1つ以上のガス供給孔から前記処理室内に供給する基板処理方法および半導体装置の製造方法が提供される。
【0162】
(付記15)
本発明のさらに他の態様によれば、
間隔を空けて配列された複数の基板を処理室内に収容する手順と、
前記処理室内の前記基板へ原料ガスを供給する手順と、前記処理室内の前記基板へ酸化種を供給する手順と、を交互に所定回数行い、前記複数の基板上に酸化膜を形成する手順と、をコンピュータに実行させ、
前記酸化種を供給する手順では、
前記基板の配列方向に沿って延在するように前記処理室内に配設され、加熱された大気圧未満の圧力下にあるノズル内へ酸素含有ガスと水素含有ガスとを供給し、これらを前記ノズル内において反応させて酸化種を生成し、この酸化種を、前記複数の基板のうち中央部に配列された基板に対応するように前記ノズル側面の中央部にのみ開設された1つ以上のガス供給孔から前記処理室内に供給させるプログラム、及び該プログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体が提供される。