特許第6084306号(P6084306)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6084306
(24)【登録日】2017年2月3日
(45)【発行日】2017年2月22日
(54)【発明の名称】作業車両及び作業車両の制御方法
(51)【国際特許分類】
   B60W 10/00 20060101AFI20170213BHJP
   E02F 9/20 20060101ALI20170213BHJP
   F01N 3/24 20060101ALI20170213BHJP
   F04B 49/06 20060101ALI20170213BHJP
   E02F 9/22 20060101ALI20170213BHJP
   F01N 3/023 20060101ALI20170213BHJP
   F01N 3/20 20060101ALI20170213BHJP
   B60W 10/06 20060101ALI20170213BHJP
   B60W 10/30 20060101ALI20170213BHJP
【FI】
   B60W10/00 150
   E02F9/20 N
   F01N3/24 R
   F04B49/06 321Z
   E02F9/22 H
   F01N3/023 Z
   F01N3/20 B
   B60W10/06
   B60W10/30
【請求項の数】15
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2015-551902(P2015-551902)
(86)(22)【出願日】2015年10月9日
(86)【国際出願番号】JP2015078853
(87)【国際公開番号】WO2016043348
(87)【国際公開日】20160324
【審査請求日】2016年2月24日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000001236
【氏名又は名称】株式会社小松製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110000202
【氏名又は名称】新樹グローバル・アイピー特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】西村 和則
【審査官】 神山 貴行
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−052794(JP,A)
【文献】 特開2014−092102(JP,A)
【文献】 特開2015−086714(JP,A)
【文献】 国際公開第2011/125257(WO,A1)
【文献】 特開2005−139944(JP,A)
【文献】 特開2013−096518(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60W 10/00〜10/30
B60W 30/00〜50/16
F01N 3/00〜 3/38
E02F 9/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンと、
前記エンジンによって駆動される、作動油の吐出方向を変更可能な可変容量型油圧ポンプと、
前記可変容量型油圧ポンプからの作動油の吐出方向に応じて前進方向と後進方向に駆動方向が変更される油圧モータと、
前記エンジンからの排気を処理する排気処理装置と、
前記排気処理装置を再生するとき、前記エンジンの回転速度を所定の第1回転速度以上に増加させるとともに、前記排気処理装置の再生中にアクセル操作量が所定の第1操作量未満であって、且つ、車速が所定速度未満であるときに、前記可変容量型油圧ポンプの吐出方向を中立状態に切り換えるコントローラと、
を備える作業車両。
【請求項2】
前記可変容量型油圧ポンプからの作動油の吐出方向を切り換えるための前後進切換弁をさらに備え、
前記コントローラは、前記前後進切換弁を中立状態に切り換えることによって、前記可変容量型油圧ポンプの吐出方向を中立状態に切り換える、
請求項1に記載の作業車両。
【請求項3】
前記前後進切換弁から供給される作動油の供給方向に応じて、前記可変容量型油圧ポンプの容量及び吐出方向を変更するポンプ容量制御シリンダをさらに備える、
請求項2に記載の作業車両。
【請求項4】
前記エンジンによって駆動される定容量型油圧ポンプと、
前記定容量型油圧ポンプから吐出された作動油の油圧をエンジン回転速度に応じた油圧に変換し、前記前後進切換弁に供給するエンジンセンシング弁と、
をさらに備え、
前記エンジン回転速度が前記第1回転速度であって、前記前後進切換弁が前進状態または後進状態であるとき、前記ポンプ容量制御シリンダは、車体が走行する程度の容量に前記可変容量型油圧ポンプの容量を変更する、
請求項3に記載の作業車両。
【請求項5】
前記コントローラは、前記排気処理装置を再生するとき、ローアイドルのエンジン回転速度を上昇させる、
請求項1から4のいずれかに記載の作業車両。
【請求項6】
前記排気処理装置は選択還元触媒装置であって、
前記排気処理装置の再生は、前記排気処理装置による除去対象の除去効率が所定値未満となったとき、または、前回の再生から所定時間以上経過したときに開始される、
請求項2から5のいずれかに記載の作業車両。
【請求項7】
前記排気処理装置は、ディーゼル酸化触媒装置であって、
前記排気処理装置の再生は、前記エンジンの動作中に前記排気処理装置からの排気の温度が所定の第1温度以下となることが所定の第1時間以上経過したときに開始される、
請求項1から5のいずれかに記載の作業車両。
【請求項8】
アクセル操作量が前記第1操作量未満であって、且つ、車速が前記所定速度未満であるときに、前記コントローラは、前記前後進切換弁を中立状態に切り換える、
請求項6に記載の作業車両。
【請求項9】
前記排気処理装置の再生は、前記排気処理装置からの排気の温度が所定の第2温度以上となることが所定の第2時間以上経過したときに終了する、
請求項8に記載の作業車両。
【請求項10】
前記排気処理装置の再生は、再生を開始してから所定の第3時間以上経過したときに終了する、
請求項7に記載の作業車両。
【請求項11】
前記排気処理装置の再生が終了し、且つ、エンジン回転速度が前記第1回転速度より小さい所定の第2回転速度未満となったときに、前記コントローラは、前記前後進切換弁を中立状態に切り換える制御を終了する、
請求項9に記載の作業車両。
【請求項12】
アクセル操作量が前記第1操作量以上となるときに、前記コントローラは、前記前後進切換弁を中立状態に切り換える制御を終了する、
請求項8または9に記載の作業車両。
【請求項13】
エンジンと、
前記エンジンによって駆動される、作動油の吐出方向を変更可能な可変容量型油圧ポンプと、
前記可変容量型油圧ポンプからの作動油の吐出方向に応じて前進方向と後進方向に駆動方向が変更される油圧モータと、
前記エンジンからの排気を処理する排気処理装置と、
前記排気処理装置を再生するとき、前記エンジンの回転速度を所定の第1回転速度以上に増加させるとともに、前記可変容量型油圧ポンプの吐出方向を中立状態に切り換えるコントローラと、
を備え、
前記排気処理装置の再生が終了し、且つ、エンジン回転速度が前記第1回転速度より小さい所定の第2回転速度未満となったときに、前記コントローラは、前記可変容量型油圧ポンプの吐出方向を中立状態に切り換える制御を終了する、
作業車両。
【請求項14】
エンジンによって、作動油の吐出方向を変更可能な油圧ポンプを駆動するステップと、
前記油圧ポンプから吐出された作動油によって、走行のための駆動力を発生させ、前記油圧ポンプからの作動油の吐出方向に応じて駆動方向が前進方向と後進方向とに変更される油圧モータを駆動するステップと、
前記エンジンの回転速度を所定の第1回転速度以上に増加させて排気処理装置を再生するステップと、
前記排気処理装置の再生中に、アクセル操作量が所定の第1操作量未満であって、且つ、車速が所定速度未満であるときには、前記油圧ポンプの吐出方向を中立状態に切り換えるステップと、
を含む、作業車両の制御方法。
【請求項15】
エンジンによって、作動油の吐出方向を変更可能な油圧ポンプを駆動するステップと、
前記油圧ポンプから吐出された作動油によって、走行のための駆動力を発生させ、前記油圧ポンプからの作動油の吐出方向に応じて駆動方向が前進方向と後進方向とに変更される油圧モータを駆動するステップと、
前記エンジンの回転速度を所定の第1回転速度以上に増加させて排気処理装置を再生するステップと、
前記排気処理装置の再生中に前記油圧ポンプの吐出方向を中立状態に切り換えるステップと、
前記排気処理装置の再生が終了し、且つ、エンジン回転速度が前記第1回転速度より小さい所定の第2回転速度未満となったときに、前記油圧ポンプの吐出方向を中立状態に切り換える制御を終了するステップと、
を含む、作業車両の制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
作業車両と、当該作業車両の制御方法とを開示する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、エンジンによって駆動される可変容量型油圧ポンプと、可変容量型油圧ポンプから吐出された作動油によって駆動される油圧モータとを備え、油圧モータによる駆動力によって走行する作業車両を開示している。
【0003】
近年、排ガス規制の強化に伴い、このような作業車両に搭載される排気処理装置の浄化性能を維持するために、排気処理装置の再生(regeneration)が要求されている。排気処理装置の再生とは、浄化性能の低下が検出された場合、あるいは、予め定められた時間を超えて運転された場合に、排気温を上昇させ、排気処理装置に溜まった煤や尿素デポジットなどを除去するものである(特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2011−052794号公報
【特許文献2】特開2015−086714号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の作業車両において、排気処理装置の再生を実行しようとすると、エンジン回転速度を上昇させる必要がある。エンジン回転速度が上昇してしまうと、アクセル操作量に応じた駆動力以上に油圧モータが駆動されてしまい、オペレータが意図する速度で作業車両を走行させることが困難となる。
【0006】
本明細書は、排気処理装置の再生を実行しているときに、オペレータが意図する速度で走行することが可能な作業車両を開示する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第1の態様に係る作業車両は、エンジンと、可変容量型油圧ポンプと、油圧モータと、排気処理装置と、コントローラと、を備える。可変容量型油圧ポンプは、エンジンによって駆動される。可変容量型油圧ポンプは、作動油の吐出方向を変更可能である。油圧モータは、可変容量型油圧ポンプからの作動油の吐出方向に応じて前進方向と後進方向に駆動方向が変更される。排気処理装置は、エンジンからの排気を処理する。コントローラは、排気処理装置を再生するとき、エンジンの回転速度を所定の第1回転速度以上に増加させるとともに、可変容量型油圧ポンプの吐出方向を中立状態に切り換える。
【0008】
当該作業車両は、可変容量型油圧ポンプからの作動油の吐出方向を切り換えるための前後進切換弁をさらに備えるとよい。コントローラは、前後進切換弁を中立状態に切り換えることによって、可変容量型油圧ポンプの吐出方向を中立状態に切り換えるとよい。
【0009】
当該作業車両は、前後進切換弁から供給される作動油の供給方向に応じて、可変容量型油圧ポンプの容量及び吐出方向を変更するポンプ容量制御シリンダをさらに備えるとよい。
【0010】
当該作業車両は、定容量型油圧ポンプとエンジンセンシング弁とをさらに備えるとよい。定容量型油圧ポンプは、エンジンによって駆動される。エンジンセンシング弁は、定容量型油圧ポンプから吐出された作動油の油圧をエンジン回転速度に応じた油圧に変換し、前後進切換弁に供給する。エンジン回転速度が第1回転速度であって、前後進切換弁が前進状態または後進状態であるとき、ポンプ容量制御シリンダは、車体が走行する程度の容量に可変容量型油圧ポンプの容量を変更するとよい。
【0011】
コントローラは、排気処理装置を再生するとき、ローアイドルのエンジン回転速度を上昇させるとよい。
【0012】
排気処理装置は選択還元触媒装置であるとよい。排気処理装置の再生は、排気処理装置による除去対象の除去効率が所定値未満となったとき、または、前回の再生から所定時間以上経過したときに開始されるとよい。
【0013】
排気処理装置は、ディーゼル酸化触媒装置であるとよい。排気処理装置の再生は、エンジンの動作中に排気処理装置からの排気の温度が所定の第1温度以下となることが所定の第1時間以上経過したときに開始されるとよい。
【0014】
アクセル操作量が所定の第1操作量未満であって、且つ、車速が所定速度未満であるときに、コントローラは、前後進切換弁を中立状態に切り換えるとよい。
【0015】
排気処理装置の再生は、排気処理装置からの排気の温度が所定の第2温度以上となることが所定の第2時間以上経過したときに終了するとよい。
【0016】
排気処理装置の再生は、再生を開始してから所定の第3時間以上経過したときに終了するとよい。
【0017】
排気処理装置の再生が終了し、且つ、エンジン回転速度が第1回転速度より小さい所定の第2回転速度未満となったときに、コントローラは、前後進切換弁を中立状態に切り換える制御を終了するとよい。
【0018】
アクセル操作量が第1操作量以上となるときに、コントローラは、前後進切換弁を中立状態に切り換える制御を終了するとよい。
【0019】
第2の態様に係る作業車両の制御方法は、エンジンによって作動油の吐出方向を変更可能な油圧ポンプを駆動するステップと、油圧ポンプから吐出された作動油によって車両を走行させるための油圧モータを駆動するステップと、油圧ポンプの吐出方向を中立状態に切り換えるステップと、エンジンの回転速度を所定の第1回転速度以上に増加させるステップと、排気処理装置を再生するステップと、を含む。
【発明の効果】
【0020】
第1の態様に係る作業車両及び第2の態様に係る作業車両の制御方法では、排気処理装置を再生するときに、エンジンの回転速度を所定の第1回転速度以上に増加させるとともに、油圧ポンプの吐出方向を中立状態に切り換える。このため、排気処理装置の再生のためにエンジン回転速度を増大させても車速の増大が抑えられる。よって、オペレータが意図する速度で走行することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1図1は、作業車両の側面図である。
図2図2は、エンジン室の内部の構成を示す側面図である。
図3図3は、作業車両が備える油圧駆動機構の構成を示す図である。
図4図4は、エンジンセンシング弁のエンジン回転速度−パイロット圧特性を示すグラフである。
図5図5は、実施形態における第1排気処理装置の再生時における作業車両の動作を示すフローチャートである。
図6図6は、実施形態における第2排気処理装置の再生の動作を示すフローチャートである。
図7図7は、実施形態における第2排気処理装置の再生時における油圧駆動機構の動作を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0022】
<全体構成>
本発明の実施形態に係る作業車両1の側面図を図1に示す。この作業車両1は、タイヤ4a,4bにより自走可能であると共に作業機3を用いて所望の作業を行うことができるホイールローダである。この作業車両1は、車体フレーム2、作業機3、タイヤ4a,4b、運転室5を備えている。
【0023】
車体フレーム2は、前側に配置されるフロントフレーム2aと、後側に配置されるリアフレーム2bとを有しており、フロントフレーム2aとリアフレーム2bとは車体フレーム2の中央部において左右方向に揺動可能に連結されている。
【0024】
フロントフレーム2aには作業機3および一対のフロントタイヤ4aが取り付けられている。作業機3は、作業機用油圧ポンプ11(図3参照)からの作動油によって駆動される装置であり、フロントフレーム2aの前部に装着されたリフトアーム3aと、リフトアーム3aの先端に取り付けられたバケット3bと、リフトアーム3aを駆動するリフトシリンダ(図示せず)と、バケット3bを駆動するチルトシリンダ3cとを有する。一対のフロントタイヤ4aは、フロントフレーム2aの側面に設けられている。
【0025】
リアフレーム2bには、運転室5、エンジン室6、一対のリアタイヤ4bなどが設けられている。運転室5は、車体フレーム2の上部に載置されており、ハンドル、アクセルペダル61(図3参照)等の操作部、速度等の各種の情報を表示する表示部(図示せず)、座席等が内装されている。エンジン室6は、運転室5の後方に配置される。一対のリアタイヤ4bは、リアフレーム2bの側面に設けられている。
【0026】
図2は、エンジン室6の内部の構造を示す側面図である。図2に示すように、エンジン室6内には、エンジン8と、第1排気処理装置51と、第2排気処理装置55と、が配置される。
【0027】
エンジン8は、所謂ディーゼルエンジンである。エンジン8は、上述したタイヤ4a,4b及び油圧ポンプ9、11等(図3参照)を駆動する。エンジン8は、リアフレーム2bに支持されている。
【0028】
第1排気処理装置51は、エンジン8の上方に配置される。第1排気処理装置51は、エンジン8からの排気を処理する。第1排気処理装置51は、例えばディーゼル酸化触媒(DOC)装置である。DOC装置は、エンジン8からの排気中の一酸化窒素(NO)を二酸化窒素(NO2)に酸化し、第2排気処理装置55の排気処理を促進させる。DOC装置は、さらに、エンジン8からの排気中の炭化水素(HC)及び一酸化炭素(CO)を除去する。第1排気処理装置51は、略円筒状の形状を有する。第1排気処理装置51は、第1排気処理装置51の長手方向が車幅方向に沿うように配置される。第1排気処理装置51は、第1接続管50を介してエンジン8に接続される。
【0029】
第2排気処理装置55は、エンジン8の上方において第1排気処理装置51に隣接して配置される。第2排気処理装置55は、エンジン8からの排気を処理する。第2排気処理装置55は、例えば選択還元触媒(SCR)装置である。SCR装置は、還元剤によってエンジン8からの排気中の窒素酸化物(NOx)を除去する。つまり、NOxは、第2排気処理装置55による除去対象である。第2排気処理装置55は、略円筒状の形状を有する。第2排気処理装置55は、第2排気処理装置55の長手方向が車幅方向に沿うように配置される。第2排気処理装置55は、第2接続管53を介して第1排気処理装置51に接続される。
【0030】
第2接続管53は、第2排気処理装置55の上方に配置されている。第2接続管53には、還元剤噴射装置54が取り付けられている。還元剤噴射装置54は、還元剤を第2接続管53内に噴射する。還元剤は、例えば、尿素水である。第2接続管53は、エンジン8からの排気に還元剤を混合する。
【0031】
第2排気処理装置55には、排気管59が接続されている。排気管59は、第2排気処理装置55の上方に位置する。排気管59は、第2排気処理装置55の上方において車幅方向に延び、上方へ向かって屈曲している。図1に示すように、排気管59の先端部は、エンジン室6の上面から上方に突出している。排気管59の先端部は、後方へ向かって屈曲している。
【0032】
<油圧駆動機構>
車体フレーム2には、タイヤ4a,4bや作業機3を駆動するための油圧駆動機構7が搭載されている。以下、油圧駆動機構7の構成について図3に基づいて説明する。油圧駆動機構7は、主として、エンジン8、走行用油圧ポンプ9、チャージポンプ10、作業機用油圧ポンプ11、走行用油圧モータ12、駆動軸15、コントローラ16を有しており、いわゆるHSTシステムが採用されている。
【0033】
エンジン8で発生した出力トルクは、走行用油圧ポンプ9、チャージポンプ10、作業機用油圧ポンプ11等に伝達される。エンジン8には、エンジン8の出力トルクと回転速度とを制御する燃料噴射装置17が付設されている。燃料噴射装置17は、アクセルペダル61の操作量(以下、「アクセル操作量」と呼ぶ)に応じて調整されたコントローラ16からのエンジン8の回転速度指令信号に基づいて、燃料の噴射量を調整する。
【0034】
アクセルペダル61は、エンジン8の目標回転速度を指示する手段であり、アクセル操作量検知部62が設けられている。アクセル操作量検知部62は、ポテンショメータなどで構成されており、アクセル操作量を検知する。アクセル操作量検知部62は、アクセル操作量を示す操作量信号をコントローラ16へと送り、コントローラ16から燃料噴射装置17に指令信号が出力される。このため、オペレータはアクセルペダル61の操作量を調整することによってエンジン8の回転速度を制御することができる。
【0035】
また、エンジン8には、エンジン8の実回転速度を検知する回転センサからなるエンジン回転速度検知部25が設けられている。エンジン回転速度検知部25からエンジン回転速度を示す検知信号がコントローラ16に入力される。
【0036】
走行用油圧ポンプ9は、斜板の傾転角を変更することにより容量及び作動油の吐出方向を変更することができる可変容量型の油圧ポンプである。走行用油圧ポンプ9は、エンジン8によって駆動される。走行用油圧ポンプ9から吐出された作動油は、走行回路20,21を通って走行用油圧モータ12へ送られる。走行回路20は、車両を前進させる方向に走行用油圧モータ12を駆動させるように走行用油圧モータ12に作動油を供給する流路(以下「前進走行回路20」と呼ぶ)である。走行回路21は、車両を後進させる方向に走行用油圧モータ12を駆動させるように走行用油圧モータ12に作動油を供給する流路(以下「後進走行回路21」と呼ぶ)である。
【0037】
走行用油圧ポンプ9には、走行用油圧ポンプ9の斜板の傾転角を変更することができるポンプ容量制御シリンダ23と前後進切換弁24とが接続されている。
【0038】
ポンプ容量制御シリンダ23は、供給される作動油の圧力に応じて、ピストン22を移動させる。ピストン22には、バネ22aが取り付けられている。ポンプ容量制御シリンダ23は、第1油室23aと第2油室23bとを有しており、バネ力と、第1油室23a内の油圧と第2油室23b内の油圧の差圧とのバランスによってピストン22の位置が変更される。ピストン22は、走行用油圧ポンプ9の斜板に連結されており、ピストン22が移動することにより、走行用油圧ポンプ9の斜板の傾転角が変更される。これによって、ポンプ容量制御シリンダ23は、走行用油圧ポンプ9の容量及び作動油の吐出方向を変更することができる。
【0039】
前後進切換弁24は、コントローラ16からの指令信号に基づいてポンプ容量制御シリンダ23を制御する電磁制御弁である。前後進切換弁24は、コントローラ16からの指令信号に基づいてポンプ容量制御シリンダ23への作動油の供給方向を制御することができる。従って、コントローラ16は、前後進切換弁24を電気的に制御することにより、走行用油圧ポンプ9の作動油の吐出方向を切り換えることができる。前後進切換弁24は、前進状態Fと後進状態Rと中立状態Nとに切り替わる。
【0040】
前後進切換弁24は、前進状態Fでは、後述する第1パイロット回路36と主パイロット回路33とを連通させると共に、第2パイロット回路37とドレン回路38とを接続する。第1パイロット回路36はポンプ容量制御シリンダ23の第1油室23aに接続されている。第2パイロット回路37はポンプ容量制御シリンダ23の第2油室23bに接続されている。このため、前後進切換弁24が前進状態Fである場合、作動油が主パイロット回路33、第1パイロット回路36を介して第1油室23aに供給されると共に、第2油室23bから作動油が排出される。これにより、走行用油圧ポンプ9の傾転角は、前進走行回路20への容量が増大する方向に変更される。
【0041】
また、前後進切換弁24は、後進状態Rでは、第2パイロット回路37と主パイロット回路33とを連通させると共に、第1パイロット回路36とドレン回路38とを接続する。このため、前後進切換弁24が後進状態Rである場合、作動油が主パイロット回路33、第2パイロット回路37を介して第2油室23bに供給される。これにより、走行用油圧ポンプ9の傾転角は、後進走行回路21への容量が増大する方向に変更される。
【0042】
前後進切換弁24が中立状態Nである場合には、第1パイロット回路36と第2パイロット回路37とが共に、ドレン回路38に接続される。この場合、走行用油圧ポンプ9は、前進走行回路20、後進走行回路21のいずれに対しても作動油を吐出しない。このときの走行用油圧モータ12からの作動油の吐出方向を中立状態と呼ぶこととする。
【0043】
チャージポンプ10は、エンジン8によって駆動され、作動油を吐出する定容量型の油圧ポンプである。チャージポンプ10から吐出された作動油は、チャージ回路42、エンジンセンシング弁32および主パイロット回路33を介して、前後進切換弁24に供給される。チャージポンプ10は、前後進切換弁24に対してポンプ容量制御シリンダ23を作動させるための作動油を供給する。
【0044】
エンジンセンシング弁32は、チャージポンプ10から吐出された作動油の油圧をエンジン回転速度に応じた油圧に変換し、前後進切換弁24に供給する。エンジンセンシング弁32は、エンジン回転速度に応じて主パイロット回路33の圧力(パイロット圧)を変化させる。図4は、エンジンセンシング弁32のエンジン回転速度−パイロット圧特性を示すグラフである。
【0045】
図4に示すように、エンジンセンシング弁32は、エンジン回転速度が増大すると、パイロット圧を増大させる。図4中のPnocは、ポンプ容量制御シリンダ23において、ピストン22が移動するのに最低限必要なパイロット圧である。つまり、パイロット圧がPnocより大きいとき、第1油室23a内の油圧と第2油室23b内の油圧の差圧がバネ22aの付勢力より大きくなり、ピストン22が移動する。通常運転時のエンジン8のローアイドル回転速度(無負荷時のエンジン回転速度)は、Pnocに対応するエンジン回転速度N0より小さい。このため、通常運転時にアクセル操作量が0であるときは、走行用油圧モータ12からの作動油の吐出方向は中立状態のままであり、作業車両1は走行しない。
【0046】
エンジン回転速度が図4中のNx(N0<Nx<Nm)のときは、エンジン回転速度Nxに対応するパイロット圧Pxとバネ22aのバネ力とがつりあう場所までピストン22が移動し、走行用油圧ポンプ9の容量が定まる。エンジン回転速度が図4中のNm以上のときは、後述するカットオフ弁31の機能によって、パイロット圧が最大値Pmaxで固定される。このときは、パイロット圧Pmaxとバネ22aのバネ力とがつりあう場所までピストン22が移動し、走行用油圧ポンプ9の容量が定まる。このように、エンジンセンシング弁32によってパイロット圧が変化することによって、上述した走行用油圧ポンプ9の容量が増減する。
【0047】
図3において、主パイロット回路33にはカットオフ弁31に接続されるカットオフ回路39が接続されている。カットオフ弁31は、走行回路20,21の油圧(以下「走行回路油圧」と呼ぶ)とバネ力とのバランスによってポンプ容量制御シリンダ23へのパイロット圧を設定された圧力に減圧することができる減圧弁である。図4のパイロット圧Pmaxは、カットオフ弁31によって制限されるパイロット圧の最大圧である。カットオフ弁31は、走行回路油圧が設定されたカットオフ圧力値以上になった場合に、ポンプ容量制御シリンダ23に供給されるパイロット圧を減圧して、走行回路油圧がカットオフ圧力値を越えないように制限するように構成されている。
【0048】
作業機用油圧ポンプ11は、エンジン8によって駆動される。作業機用油圧ポンプ11から吐出された作動油は、作業機回路49を介してチルトシリンダ3c(図1参照)等に送られ、チルトシリンダ3c等を駆動する。
【0049】
走行用油圧モータ12は、斜軸の傾転角を変更することにより0より大きい範囲で容量を変更することができる可変容量型の油圧モータである。走行用油圧モータ12は、走行用油圧ポンプ9から吐出され走行回路20,21を介して供給される作動油によって駆動される。これにより、走行用油圧モータ12は、走行のための駆動力を発生させる。
【0050】
走行用油圧モータ12は、走行用油圧ポンプ9からの作動油の吐出方向に応じて前進方向と後進方向に駆動方向が変更される。具体的には、走行用油圧モータ12は、前進走行回路20を介して作動油を供給されることにより、車両を前進させる方向に駆動される。走行用油圧モータ12は、後進走行回路21を介して作動油を供給されることにより、車両を後進させる方向に駆動される。
【0051】
走行用油圧モータ12には、走行用油圧モータ12の傾転角を制御するモータシリンダ29と、モータシリンダ29を制御するモータ制御弁30とが設けられている。モータ制御弁30はコントローラ16からの制御信号に基づいて制御される電磁制御弁である。コントローラ16は、モータシリンダ29を制御することにより、走行用油圧モータ12の容量を0より大きい範囲で任意に変えることができる。
【0052】
駆動軸15は、走行用油圧モータ12の駆動力をタイヤ4a,4b(図1参照)に伝達することによりタイヤ4a,4bを回転させる。また、駆動軸15には、駆動軸15の回転速度を検知する回転センサからなる出力回転速度検知部34が設けられている。出力回転速度検知部34が検知した情報は、検知信号としてコントローラ16に送られる。コントローラ16は、出力回転速度検知部34が検知した駆動軸15の回転速度に基づいて、車両の移動方向や車速を算出することができる。なお、本実施形態における車速は、作業車両1の移動方向によらない、速度の大きさによって定義される値である。
【0053】
駆動軸15には、パーキングブレーキ44と、パーキングブレーキ制御弁45とがさらに設けられる。パーキングブレーキ44は、制動状態と非制動状態とに切り換えられる。パーキングブレーキ44は、制動状態において、駆動軸15を制動する。パーキングブレーキ44は、非制動状態において、駆動軸15を解放する。
【0054】
パーキングブレーキ制御弁45は、コントローラ16からの指令信号に基づいて制御される電磁制御弁である。コントローラ16は、パーキングブレーキ制御弁45を制御することによって、パーキングブレーキ44を制動状態と非制動状態とに切り換える。パーキングブレーキ44は、パーキングブレーキ操作部材68の操作に応じて制動状態と非制動状態とに切り換えられる。
【0055】
パーキングブレーキ44は、ブレーキディスク部44aとピストン部44bとを有している。ピストン部44bに作動油が供給されると、ピストン部44bが油圧によってブレーキディスク部44aの複数のブレーキディスクを互いに接触させる。これにより、パーキングブレーキ44が制動状態となる。パーキングブレーキ44を制動状態とすることを、パーキングブレーキ44を作動させるという。また、ピストン部44bから作動油が排出されると、ピストン部44bに設けられた弾性部材の弾性力によってブレーキディスクが互いに非接触の状態に保持される。これにより、パーキングブレーキ44が非制動状態となる。
【0056】
パーキングブレーキ操作部材68は、運転室5内に設けられており、パーキングブレーキ44を作動させるために操作される。パーキングブレーキ操作部材68は、例えばパーキングスイッチ或いはパーキングレバーであり、オペレータによって操作される。パーキングブレーキ操作部材68が操作されると、操作信号がコントローラ16へ送られる。
【0057】
前後進切換操作部64は、前後進切換操作部材としての前後進切換レバー65と、レバー操作検知部66とを有する。前後進切換レバー65は、運転室5内に設けられており、車両の前進と後進との切換を指示するためにオペレータによって操作される。前後進切換レバー65は、前進位置、後進位置、中立位置に切り換えられる。レバー操作検知部66は、前後進切換レバー65が前進位置、後進位置、中立位置のいずれに位置しているのかを検知して、検知結果を検知信号としてコントローラ16に送る。
【0058】
エンジン8に接続される第1接続管50には、第1濃度測定部56が設けられている。第1濃度測定部56は、窒素酸化物検出器などで構成されており、エンジン8から排出される排気中のNOxの濃度を検知する。第1濃度測定部56は、エンジン8から排出される排気中のNOxの濃度D1を示す信号をコントローラ16へと送る。
【0059】
第1排気処理装置51には、第1温度検知部52が設けられている。第1温度検知部52は、温度センサなどで構成されており、第1排気処理装置51からの排気温(以下、DOC温度)を検知する。第1温度検知部52は、DOC温度を示す信号をコントローラ16へと送る。
【0060】
第2排気処理装置55には、第2温度検知部57と第2濃度測定部58とが設けられている。第2温度検知部57は、温度センサなどで構成されており、第2排気処理装置55からの排気温(以下、SCR温度)を検知する。第2温度検知部57は、SCR温度を示す信号をコントローラ16へと送る。第2濃度測定部58は、窒素酸化物検出器などで構成されており、第2排気処理装置55から排出される排気中のNOxの濃度を検知する。第2濃度測定部58は、第2排気処理装置55から排出される排気中のNOxの濃度D2を示す信号をコントローラ16へと送る。
【0061】
コントローラ16は、CPUや各種のメモリなどを有する電子制御部である。コントローラ16は、各検知部からの出力信号に基づいて各種の電磁制御弁や燃料噴射装置17を電気的に制御するようにプログラムされている。これにより、コントローラ16は、エンジン回転速度、モータ容量などを制御する。この作業車両1では、牽引力と車速とが無段階に変化して、車速ゼロから最高速度まで変速操作なく自動的に変速することができる。
【0062】
通常、コントローラ16は、アクセル操作量に応じたエンジン8の回転速度とする回転速度指令信号を燃料噴射装置17に出力する。そして、コントローラ16は、前後進切換レバー65の位置に基づいて、前後進切換弁24の状態(F、N、R)を切り換えるための指令信号を出力する。例えば、前後進切換レバー65が前進位置に設定されている場合、コントローラ16は、前後進切換弁24の状態を前進状態Fとする指令信号を出力する。
【0063】
一方、コントローラ16は、排気処理装置51、55の再生が必要と判定した場合、アクセル操作量が小さくてもエンジン8の回転速度を所定の回転速度以上に調整した回転速度指令信号を燃料噴射装置17に出力する。さらに、排気処理装置51、55の再生時に、アクセル操作量、車速等が所定の要件を満たす場合、前後進切換レバー65の位置に関わらず、コントローラ16は、前後進切換弁24の状態を中立状態Nとする指令信号を出力する。つまり、コントローラ16は、走行用油圧ポンプ9の吐出方向を中立状態に切り換える。以下、これらのコントローラ16の制御の詳細について説明する。
【0064】
<排気処理装置の再生>
図5は、本実施形態における第1排気処理装置51(DOC)の再生時における作業車両1の動作を示すフローチャートである。まず、ステップ1において、作業車両1は、通常運転を行う。具体的には、コントローラ16は、エンジン8によって走行用油圧ポンプ9を駆動するように制御し、走行用油圧ポンプ9から吐出された作動油によって走行用油圧モータ12を駆動するように制御する。
【0065】
ステップ2において、コントローラ16は、第1温度検知部52が検知したDOC温度に基づいて、エンジン8の動作中にDOC温度が所定の温度Td以下となることが、所定の時間t1以上経過したか否かを判定する。DOC温度が所定の温度Td以下となることが所定の時間t1以上経過していない場合(ステップ1でNO)、ステップ1に戻る。
【0066】
DOC温度が所定の温度Td以下となることが所定の時間t1以上経過している場合(ステップ1でYES)、ステップ3において、コントローラ16は、第1排気処理装置51(DOC)の再生を促す通知を、運転室5に内装された表示部等から出力する。つぎに、コントローラ16は、パーキングブレーキ44を作動させるまで待つ(ステップ4でNO)。オペレータがパーキングブレーキ操作部材68を操作したとき、コントローラ16は、パーキングブレーキ44を作動させる(ステップ4でYES)。
【0067】
パーキングブレーキが作動されると(ステップ4でYES)、ステップ5において、コントローラ16は、走行用油圧ポンプ9の吐出方向を中立状態に切り換えるように制御する。具体的には、コントローラ16は、前後進切換弁24を中立状態Nに切り換えるように制御する。
【0068】
ステップ6において、コントローラ16は、アクセル操作量の大きさに関わらず、エンジン回転速度を所定の回転速度N1以上に増加させるように制御する。この回転速度N1は、図4の回転速度N0よりも大きい。通常運転時のローアイドルのエンジン回転速度はN0より小さいので、ステップ6は、コントローラ16がローアイドルのエンジン回転速度を上昇させることを意味している。
【0069】
ステップ6においてエンジン回転速度がN1以上に上昇されることによって、エンジン8からの排気温が上昇する。これによって、第1排気処理装置51に堆積した炭化水素が酸化され、第1排気処理装置51から排出される。このように、ステップ7において、コントローラ16は、第1排気処理装置51を再生するように制御する。
【0070】
ステップ8において、コントローラ16は、第1排気処理装置51の再生を開始してからの経過時間を測定し、その経過時間が所定の時間t2以上経過しているか否かを判定する。経過時間が所定の時間t2以上経過していない場合(ステップ8でNO)、ステップ5に戻る。経過時間が所定の時間t2以上経過している場合(ステップ8でYES)、コントローラ16は、第1排気処理装置51の再生のための制御を終了する。
【0071】
図6は、本実施形態における第2排気処理装置55(SCR)の再生の動作を示すフローチャートである。まず、ステップ11において、作業車両1起動時に、コントローラ16は、RFlagにfalseをセットする。RFlagは、後述するSCR再生処理の条件を具備しているか否かを示すフラグである。この場合、RFlagは、SCR再生処理の条件を具備していないことを示している。
【0072】
ステップ12において、作業車両1は、通常運転を行う。具体的には、コントローラ16は、エンジン8によって走行用油圧ポンプ9を駆動するように制御し、走行用油圧ポンプ9から吐出された作動油によって走行用油圧モータ12を駆動するように制御する。
【0073】
ステップ13において、コントローラ16は、第2排気処理装置55(SCR)の除去対象(NOx)の除去効率が所定値Rth未満となったか、または、第2排気処理装置55の前回の再生から所定の時間tpth以上経過したか否かを判定する。
【0074】
コントローラ16は、第1濃度測定部56が検知するエンジン8から排出される排気中のNOxの濃度D1と、第2濃度測定部58が検知する第2排気処理装置55から排出される排気中のNOxの濃度D2を取得する。そして、コントローラ16は、(1−D2/D1)により、NOxの除去効率を算出することができる。
【0075】
ステップ13において、NOxの除去効率が所定値Rth以上であり、且つ、前回の再生から所定の時間tpth未満経過している場合(ステップ13でNO)、ステップ12に戻る。そうでなければ(ステップ13でYES)、コントローラ16は、RFlagにtrueをセットする。この場合、RFlagは、SCR再生処理の条件を具備していることを示している。
【0076】
ステップ15において、コントローラ16は、アクセル操作量の大きさに関わらず、エンジン回転速度を所定の回転速度N2以上に増加させるように制御する。この回転速度N2は、図4の回転速度N0よりも大きい。通常運転時のローアイドルのエンジン回転速度はN0より小さいので、ステップ15は、コントローラ16がローアイドルのエンジン回転速度を上昇させることを意味している。なお、ここでの回転速度N2は、図5のステップ6の回転速度N1と同一であってもよい。
【0077】
ステップ15においてエンジン回転速度がN2以上に上昇されることによって、エンジン8からの排気温が上昇する。これによって、第2接続管53、または、還元剤噴射装置54において、還元剤溶液が化学変化を起こして生じた固定付着物(デポジット:deposit)が加熱分解される。このように、ステップ16において、コントローラ16は、第2排気処理装置55を再生するように制御する。
【0078】
ステップ17において、コントローラ16は、第2温度検知部57が検知したSCR温度が所定の温度Ts以上となることが所定の時間t4以上経過したか否かを判定する。SCR温度が温度Ts以上となることが時間t4以上経過していない場合(ステップ17でNO)、ステップ15に戻る。
【0079】
SCR温度が温度Ts以上となることが時間t4以上経過した場合(ステップ17でYES)、ステップ18において、コントローラ16は、ステップ15の制御を終了させる。すなわち、コントローラ16は、アクセル操作量に応じてエンジン8の回転速度を決定するように制御する。これによって、コントローラ16は、第2排気処理装置55を再生する制御を終了する。ステップ18終了後、ステップ11の処理に戻る。
【0080】
図7は、本実施形態における第2排気処理装置55(SCR)の再生時における油圧駆動機構7の動作を示すフローチャートである。ステップ21において、コントローラ16は、後述するステップ24における走行用油圧モータ12の作動油の吐出方向を中立状態とする制御を実行しているか否かを判定する。図6のステップ16のSCR再生処理がされる前の状態では、作動油の吐出方向を中立状態とする制御は実行されていない(ステップ21でNO)。この場合、ステップ22に進む。
【0081】
ステップ22において、コントローラ16は、RFlagがtrueであり、且つ、アクセル操作量検知部62が検知するアクセル操作量が所定の操作量A1未満であり、且つ、出力回転速度検知部34が検知する駆動軸15の回転速度から求められる車速が所定速度Vth未満であるか否か判定する。
【0082】
RFlagがtrueであり、且つ、アクセル操作量が所定の操作量A1未満であり、且つ、車速が所定速度Vth未満である場合(ステップ22でYES)、ステップ24において、コントローラ16は、走行用油圧ポンプ9の吐出方向を中立状態に切り換えるように制御する。具体的には、コントローラ16は、前後進切換レバー65の位置に関わらず、前後進切換弁24を中立状態Nに切り換えるように制御する。
【0083】
RFlagがfalseであるか、アクセル操作量が所定の操作量A1以上であるか、車速が所定速度Vth以上である場合(ステップ22でNO)、コントローラ16は、ステップ24の制御を行わない。すなわち、ステップ23において、コントローラ16は、前後進切換レバー65の位置に基づいて走行用油圧ポンプ9の吐出方向を決定し、前後進切換弁24の状態(F、N、R)を切り換えるための指令信号を出力する。
【0084】
ステップ23または24が実行されると、コントローラ16は、再度ステップ21の処理を実行する。ステップ24の制御が既に実行されている場合(ステップ21でYES)、ステップ25において、コントローラ16は、アクセル操作量検知部62が検知するアクセル操作量が所定の操作量A1以上であるか否か判定する。
【0085】
アクセル操作量が操作量A1以上である場合(ステップ25でYES)、ステップ26において、コントローラ16は、ステップ24における、前後進切換弁24を中立状態Nに切り換える制御を終了する。すなわち、コントローラ16は、前後進切換レバー65の位置に基づいて走行用油圧ポンプ9の吐出方向を決定し、前後進切換弁24の状態(F、N、R)を切り換えるための指令信号を出力する。ステップ26終了後、ステップ21の処理に戻る。
【0086】
アクセル操作量が操作量A1未満である場合(ステップ25でNO)、ステップ27において、コントローラ16は、RFlagがfalseであり、且つ、エンジン回転速度検知部25が検知するエンジン回転速度が上述するN2より小さい所定の回転速度N3未満であるか否かを判定する。回転速度N3は、図4の回転速度N0よりも小さい。したがって、この後に前後進切換弁24を前進状態Fまたは後進状態Rに切り換えられても、走行用油圧ポンプ9は前進走行回路20、後進走行回路21のいずれに対しても作動油を吐出せず、走行用油圧モータ12は、走行のための駆動力を発生しない。
【0087】
ステップ27においてRFlagがfalseであると判定される場合、当該判定以前はステップ24の処理が実行されていること、すなわち、Rflagがtrueであったことを意味している。したがって、ステップ27においてRFlagがfalseであると判定されることは、SCR再生処理が終了したことを意味している。
【0088】
RFlagがfalseであり、且つ、エンジン回転速度が回転速度N3未満である場合(ステップ27でYES)、コントローラ16は、上述するステップ26の処理を実行する。RFlagがtrueであるか、エンジン回転速度が回転速度N3以上である場合(ステップ27でNO)、コントローラ16は、上述するステップ24の処理を実行する。ステップ24または26終了後、ステップ21の処理に戻る。
【0089】
<作用効果>
つぎに、本実施形態の作用効果について説明する。
本実施形態のコントローラ16は、排気処理装置51、55を再生するとき(図5のステップ7、図6のステップ16)に、エンジン8の回転速度を所定の回転速度N1、N2以上に増加させる(図5のステップ6、図6のステップ15)とともに、前後進切換弁24を中立状態Nとする(図5のステップ5、図7のステップ24)ことによって、走行用油圧ポンプ9の作動油の吐出方向を中立状態に切り換える。このため、低速時にアクセル操作量が小さいとき(図7のステップ22)、排気処理装置51、55の再生のためにエンジン回転速度を増大させても車速の増大が抑えられる。また、アクセルペダル61が踏まれていない状態で、作業車両1が走行するクリープの発生が抑えられる。よって、オペレータが意図する速度で走行することが可能となる。
【0090】
上述する回転速度N1、N2は図4のエンジン回転速度N0よりも大きい。このとき、前後進切換弁24を前進状態Fまたは後進状態Rとしてしまうと、ポンプ容量制御シリンダ23のピストン22が動くことによって、走行用油圧ポンプ9から作動油が吐出される。走行用油圧モータ12が変更可能な容量の範囲は0より大きい範囲であるため、走行用油圧ポンプ9から作動油が吐出されれば、走行用油圧モータ12は、駆動軸15を回転させて走行してしまうこととなる。したがって、前後進切換弁24を中立状態Nとすることは有効である。
【0091】
コントローラ16は、排気処理装置51、55を再生するときに、ローアイドルの回転速度をN1、N2以上に上昇させる。これによって、アクセル操作量が0であっても、エンジン8からの排気温を上昇させることができ、排気処理装置51、55の再生をより確実に行うことができる。
【0092】
第1排気処理装置51(DOC)の再生は、エンジン8の動作中に第1排気処理装置51からの排気温(DOC温度)が所定の温度Td以下となることが所定の時間t1以上経過したときに開始される(図5のステップ2)。DOC温度が低いときは、第1排気処理装置51に炭化水素が堆積する。よって、第1排気処理装置51に炭化水素が多く堆積する場合を効果的に検出でき、効果的な第1排気処理装置51の再生を実現することができる。
【0093】
第1排気処理装置51の再生は、第1排気処理装置51の再生を開始してからの経過時間が所定の時間t2以上経過している場合、終了する(図5のステップ8)。これによって、第1排気処理装置51に堆積した炭化水素が十分に除去された状態で、第1排気処理装置51の再生を終了することができる。
【0094】
第2排気処理装置55(SCR)の再生は、第2排気処理装置55の除去対象(NOx)の除去効率が所定値Rth未満となった場合、開始される(図6のステップ13)。したがって、第2排気処理装置55の除去性能が低下したときに、第2排気処理装置55の再生を開始することができる。さらに、第2排気処理装置55の再生は、前回の再生から所定の時間tpth以上経過した場合、開始される(図6のステップ13)。これによって、第2排気処理装置55の定期的な整備が可能となる。
【0095】
第2排気処理装置55(SCR)の再生は、第2排気処理装置55からの排気温(SCR温度)が所定の温度Ts以上となることが所定の時間t4以上経過した場合に終了する(図6のステップ17)。SCR温度がTs以上となるときは、第2接続管53、または、還元剤噴射装置54内部に堆積したデポジットが効果的に加熱分解される。したがって、第2接続管53、または、還元剤噴射装置54に堆積した炭化水素が十分に除去された状態で、第2排気処理装置55の再生を終了することができる。
【0096】
コントローラ16は、アクセル操作量が所定の操作量A1未満であって、且つ、車速が所定速度Vth未満であるとき(図7のステップ22)に、前後進切換弁24を中立状態Nに切り換える(図7のステップ24)。これによって、オペレータが低速且つ減速走行を所望しているときに、コントローラ16は、走行用油圧ポンプ9の吐出方向を中立状態に切り換えることができる。したがって、オペレータの意図を妨げることない作業車両1の操作を実現できる。
【0097】
アクセル操作量が操作量A1以上となるとき(図7のステップ25)に、コントローラ16は、前後進切換弁24を中立状態Nに切り換える制御を終了する(図7のステップ26)。これによって、オペレータが加速走行を所望しているときに、コントローラ16は、走行用油圧ポンプ9の吐出方向を中立状態に切り換える制御を終了することができる。したがって、オペレータの操作感を向上させることができる。
【0098】
第2排気処理装置55(SCR)の再生が終了し、且つ、エンジン回転速度が上述する回転速度N2より小さい回転速度N3未満である場合(図7のステップ27)、コントローラ16は、前後進切換弁24を中立状態Nに切り換える制御を終了する(図7のステップ26)。回転速度N3は、図4の回転速度N0よりも小さい。したがって、この後に前後進切換弁24を前進状態Fまたは後進状態Rに切り換えられても、走行用油圧ポンプ9は前進走行回路20、後進走行回路21のいずれに対しても作動油を吐出せず、走行用油圧モータ12は、走行のための駆動力を発生しない。よって、作業車両1が停止中に第2排気処理装置55の再生が終了したとしても、コントローラ1は、オペレータに違和感を与えない状態で速やかに通常運転に戻すことができる。
【0099】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
【0100】
<変形例>
上記の実施形態では、作業車両1としてホイールローダが例示されているが、ブルドーザなどの他の作業車両であってもよい。
【0101】
上記の実施形態では、第1排気処理装置51としてDOC、第2排気処理装置55としてSCRが例示されている。しかし、DOCに代えて、ディーゼル微粒子捕集フィルタ(DPF)装置が、第1排気処理装置51として用いられてもよい。この場合、第1排気処理装置51の再生方法は、図5に示した方法に限られない。
【0102】
図5に示したステップ3は省略されてもよい。また、図7のステップ22とステップ25では、アクセル操作量の閾値が同じ閾値A1が使用された例を示しているが、異なる閾値が使用されてもよい。
【0103】
図5に示したステップ4は省略されてもよい。つまり、パーキングブレーキ44の作動の有無を判定せずに、前後進切換弁24を中立状態Nに切り替えてもよい。
【0104】
第1濃度測定部56は、必ずしも第1接続管50に設けられなくてもよく、第2接続管53の入口よりも排気の流れの上流側に配置されていれば、如何なる場所に配置されてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0105】
排気処理装置の再生を実行しているときに、オペレータが意図する速度で走行することが可能な作業車両を提供することができる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7