【実施例】
【0067】
(実施例1a)
式(XVII)で示される中間体であるモノアゾ化合物を以下の方法で調製した。
【0068】
【化18】
【0069】
10gのアニリン−2,5−ジスルホン酸(一般式(XII)で示される化合物)を、100gの水と5.87gの塩酸(37%)に溶解した。次に、8gの水に溶解した1.97gの亜硝酸ナトリウムを、5℃の温度において1:1.2のモル比で添加し、ジアゾ化液を得た。過剰の亜硝酸ナトリウムを、0.49gのスルファミン酸を用いて除去し、pH値1.5において、ジアゾ化液を、水酸化ナトリウムを添加してこのpH値を維持している間に、4−アミノ−5−ヒドロキシナフタレン−1,7−ジスルホン酸(K酸、一般式(XIV)で示される化合物)のモノナトリウム塩と結合させた。この反応は、0℃から5℃の間の温度で1時間撹拌した後、室温まで昇温して行った。塩酸を添加して、pH値を0.5まで低下させた。次に、このpH値において、混合物を室温でさらに2時間撹拌した。最後に、8℃の温度まで冷却した後に反応混合物を濾過し、エタノール/水混合液(2:1)で洗浄した後乾燥した。式(XVII)で示されるモノアゾ色素を収率70%で得た。
【0070】
(実施例1b)
実施例1aのアニリン−2,5−ジスルホン酸に代えて、アニリン−4−スルホン酸(一般式(XII)で示される化合物)を用い、4−アミノ−5−ヒドロキシナフタレン−1,7−ジスルホン酸(K酸)に代えて、4−アミノ−5−ヒドロキシナフタレン−2,7−ジスルホン酸(H酸)を用いて、式(XVIII)で示される中間体であるモノアゾ化合物を同様な方法で調製した。
【0071】
【化19】
【0072】
(実施例2)
実施例1aで記載したのと同様に調製したアニリン−2,5−ジスルホン酸のジアゾ化液を、8.5と9.0の間のpH値において、式(XVII)で示されるモノアゾ化合物と結合させた。色素(2)は、酢酸ナトリウムとエタノールとの複合添加による塩析効果の影響を受けた。沈殿した色素(2)を濾取し、エタノール/水混合液(2:1)で洗浄し、逆浸透により透析し、水を蒸発させて除去して色素(2)を乾燥させた。色素(2)を収率77%で得た。
【0073】
(実施例3)
実施例2のアニリン−2,5−ジスルホン酸に代えて、4−ニトロアニリン−2−スルホン酸
を用いた。色素(3)を収率78%で得た。
【0074】
(実施例4)
実施例2の式(XVII)で示されるモノアゾ化合物に代えて、式(XVIII)で示されるモノアゾ化合物を用いた。
【0075】
(実施例5)
実施例4のアニリン−2,5−ジスルホン酸に代えて、4−ニトロアニリン−2−スルホン酸を用いた。
【0076】
(実施例6)
N−メチルピロリドン中において、2−アミノベンゾニトリルと4当量のスルファミン酸とを、110℃の温度で4時間反応させて、2−アミノベンゾニトリル−3,5−ジスルホン酸を調製した。実施例3
のアニリン−2,5−ジスルホン酸に代えて、2−アミノベンゾニトリル−3,5−ジスルホン酸を用いた。
【0077】
(実施例7)
実施例6の2−アミノベンゾニトリル−3,5−ジスルホン酸に代えて、4−ニトロアニリン−2−スルホン酸を用いた。
【0078】
(実施例8)
実施例2のアニリン−2,5−ジスルホン酸に代えて、4−ニトロアニリン−2−スルホン酸を用いた。
【0079】
(実施例9)
実施例2のアニリン−2,5−ジスルホン酸に代えて、2−アミノナフタレン−1,5−ジスルホン酸を用いた。
【0080】
(実施例10)
実施例9
のアニリン−2,5−ジスルホン酸に代えて、2−アミノナフタレン−1,5−ジスルホン酸を用いた。
【0081】
(実施例11)
実施例10の2−アミノナフタレン−1,5−ジスルホン酸に代えて、4−ニトロアニリン−2−スルホン酸(一般式(XV)で示される化合物)を用いた。
【0082】
(実施例12)
実施例
11の2−アミノナフタレン−1,5−ジスルホン酸に代えて、2,5−ジクロロアニリン−4−スルホン酸を用いた。
【0083】
(実施例13)
実施例12の
2−アミノナフタレン−1,5−ジスルホン酸に代えて、アニリン−3,5−ジカルボン酸を用いた。
【0084】
(実施例14)
実施例7の
2−アミノナフタレン−1,5−ジスルホン酸に代えて、アニリン−2,4,6−トリスルホン酸を用いた。
【0085】
(実施例15)
実施例14の4−アミノ−5−ヒドロキシナフタレン−1,7−ジスルホン酸(K酸)に代えて、4−アミノ−5−ヒドロキシナフタレン−2,7−ジスルホン酸(H酸)を用いた。
【0086】
(実施例16)
実施例3の4−アミノ−5−ヒドロキシナフタレン−1,7−ジスルホン酸(K酸)に代えて、4−アミノ−5−ヒドロキシナフタレン−2,7−ジスルホン酸(H酸)を用いた。
【0087】
(実施例17)
実施例3の4−ニトロアニリン−2−スルホン酸に代えて、2−アミノ−4−メチル−5−ニトロベンゼン−1−スルホン酸を用いた。
【0088】
(実施例18)
実施例7の4−ニトロアニリン−2−スルホン酸に代えて、2−アミノ−4−メチル−5−ニトロベンゼン−1−スルホン酸を用いた。
【0089】
(実施例19)
実施例
3のアニリン−2,5−ジスルホン酸に代えて、5−アセトアミド−2−アミノベンゼンスルホン酸を用いた。
【0090】
(実施例20)
実施例15の4−ニトロアニリン−2−スルホン酸に代えて、アニリン−3,5−ジカルボン酸を用いた。
【0091】
(実施例21)
実施例
16のアニリン−2,4,6−トリスルホン酸に代えて、4−ニトロアニリン−2−スルホン酸を用い、アニリン−
3,5−ジカルボン酸に代えて、アニリン−2,4,6−トリスルホン酸を用いた。
【0092】
(実施例22)
実施例3の4−ニトロアニリン−2−スルホン酸に代えて、2−ニトロアニリン−4−スルホン酸を用いた。
【0093】
(実施例23)
9と11の間のpH値を示す水酸化ナトリウム水溶液中で、色素(19)を60℃の温度で1時間加熱して、色素(22)を得た。
【0094】
(実施例24)
実施例7の4−ニトロアニリン−2−スルホン酸に代えて、2−ニトロアニリン−4−スルホン酸を用いた。
【0095】
(記録液体の調製例)
本発明は、記録液体に関する限り、本発明に係るジスアゾ色素(2)〜(24)と現在の技術水準を示す色素を用いて、以下の例で説明される。各色素について、水と一緒に、必要量の色素(0.5gから1.0g)、エチレングリコール(0.6g)、プロピレン−1,2−グルコール(0.3g)、1−メチル−2−ピロリドン(0.3g)、Olin(登録商標)10G(アメリカ合衆国のノルウォークにあるArch Chemicals Incから入手可能)(0.03g)の水性溶液(50%)、Surfinol(登録商標)465(アメリカ合衆国のアレンタウンにあるAir Products and Chemicals Incから入手可能)(0.03g)および殺生物剤であるMergal(登録商標)K 10N(ドイツ連邦共和国のシールズにあるRiedel−de−Haoenから入手可能)(0.01g)の溶液を、撹拌条件下において、50℃の温度で約1時間加熱し、100gの記録液体を調製した。得られた溶液を20℃の温度まで冷却し、pHの値を7.5に調整し、該溶液を、0.5μmの孔径のMillipore(登録商標)フィルターを通過させた。色素の量は、印刷画像の光学密度が全ての色素で同じになるように調整された。
【0096】
(記録液体の適用例)
おおよその密度が約1.2である色付きの矩形状のパッチを、インクジェットプリンタであるCanon PIXMA iP4000を用いて以下のインクジェット印刷用の記録用紙上に印刷した。
a:HP Printing Paper HP 1122(非コート紙)、
b:HP Premium Plus(ポリマー系の記録用紙)、および
c:ILFORD Premium Plus Glossy Paper(ナノ多孔性の記録用紙)
これらの色付きのパッチは、耐光性、色素の彩度およびオゾンによる劣化に対する耐性を判定するために用いられた。
【0097】
(試験方法)
1.色の彩度
色付きの矩形状の斑点の色座標L
*a
*b
*を、分光光度計Spectrolino(登録商標)(スイス連邦共和国のレーゲンズドルフにあるGretag Macbethから入手可能)を用いて(イルミナントD65(illuminant D65)における)反射中に測定した。彩度C
*は、以下の数式に従って、測定された色座標から決定される。
【0098】
【数1】
黒色色素のC
*値は低い。
【0099】
2.耐光性
照度が10および20メガルクス時に達するまで、6500Wのキセノンランプを備えるWeather−Ometer(登録商標)Ci35A(アメリカ合衆国のシカゴにあるAtlas Material Testing Technologyから入手可能)を用いて、温度20℃および相対湿度50%の条件において、印刷されたサンプルを照射した。濃度損失は、デンシトメータSpectrolino(登録商標)を用いて測定した。初期濃度の濃度損失の百分率によって、印刷された記録用紙上での色素の耐光性が示される。
【0100】
耐光性は、以下のように類別される。
A:色素の濃度損失が20%未満
B:色素の濃度損失が20〜30%
C:色素の濃度損失が30〜40%
D:色素の濃度損失が40%より大きい
【0101】
3.オゾンによる劣化に対する安定性
色付きの矩形状のパッチの光学的密度は、Spectrolino(登録商標)デンシトメータで測定された。その後、印刷されたサンプルは、温度30℃、相対湿度が50%の空気、オゾン濃度1ppm、オゾンを含む空気の循環速度13mm/sの条件において、オゾンチャンバであるmodel903(イギリス連合王国にあるSatra/Hampdenから入手可能)中に所定時間(例えば48時間)保管された。保管後、該サンプルを再測定した。これら2個の測定値の濃度の違いは、初期濃度の百分率として表され、オゾンに曝されたことに起因する色素損失の量を示している。
【0102】
オゾンによる劣化に対する安定性は、以下のように類別される。
A:色素の濃度損失が20%未満
B:色素の濃度損失が20〜30%
C:色素の濃度損失が30〜40%
D:色素の濃度損失が40%より大きい
【0103】
(結果)
水溶液中での最大吸収波長λmax、記録用紙c上での色座標、記録用紙c上でのオゾンによる劣化に対する安定性が、表1に示されている。
【0104】
【表1】
【0105】
表1の結果から直ぐに分かるのは、現在の技術水準で形成した黒色色素(I)、(II)、(III)および(IV)に比べて、本発明に係る色素(2)、(3)、(8)、(9)、(11)、(12)、(13)、(14)、(17)、(18)、(21)および(23)のオゾンによる劣化に対する安定性がかなり良好だということである。
【0106】
記録用紙上での光により劣化に対する安定性a、bおよびcを表2に示した。
【0107】
【表2】
【0108】
表2の結果から直ぐに分かるのは、現在の技術水準で形成した黒色色素(I)、(II)、(III)および(IV)に比べて、本発明に係る色素(2)、(3)、(4)、(5)、(8)、(9)、(11)、(12)、(13)、(14)、(15)、(16)、(18)および(22)の光による劣化に対する安定性がかなり良好だということである。
【0109】
オゾンと光の両方による劣化に対する安定性については、色素(2)、(3)、(9)、(13)、(14)および(18)が、現在の技術水準で形成した黒色色素(I)、(II)、(III)および(IV)に比べて、かなり良好な安
定性を有する。