(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明を実施するための形態(以下「実施形態」という)について、適宜図面を参照しながら詳細に説明する。なお、各図において、共通する部分には同一の符号を付し重複した説明を省略する。なお、第1
〜3実施形態は参考例であり、本実施形態は
第4〜6実施形態である。
【0014】
≪第1実施形態≫
図1および
図10を用いて第1実施形態に係る半導体装置について説明する。
図1は、第1実施形態に係る半導体装置の構成を示す図であり、(a)はA−A線断面図であり、(b)は上面図である。
図10は、リード電極105を取り付ける前の半導体装置の構成を説明する図であり、(a)はA−A線断面図であり、(b)は上面図である。
【0015】
なお、半導体装置全体およびリード電極105の構成に関しては
図1を用いて説明し、半導体装置の構成のうちリード電極105以外の各構成については
図10を用いて説明する。このため、
図10を用いて説明する構成については、
図1においてはハッチングを省略する。
【0016】
<半導体装置>
第1実施形態に係る半導体装置は、
図1(a)に示すように、パワー半導体チップである絶縁ゲートバイポーラトランジスタ(以下「IGBT」(Insulated Gate Bipolar Transistor)と称する。)101と、同じくパワー半導体チップであるSiCショットキーダイオード(以下「SBD」(Schottky Barrier Diode)と称する。)102と、絶縁基板103と、放熱ベース104と、リード電極105と、を備え、パワー半導体チップ(IGBT101,SBD102)と絶縁基板103がパワー半導体チップ下はんだ106a,106bで接続され、絶縁基板103と放熱ベース104が絶縁基板下はんだ107で接続されているとともに、
図1(b)に示すように、ゲートワイヤ108G,108Sと、を備えている。
【0017】
なお、第1実施形態に係る半導体装置は、この他にも、上記構成を覆う樹脂ケース、外部接続用電極、放電防止のための内部充填剤等を備えているが、本実施形態で開示する技術内容と直接関係しないため省略する。
【0018】
<パワー半導体チップ(IGBT101,SBD102)>
IGBT101は、
図10(a)に示すように、IGBT101の裏面側(絶縁基板103の側)にはコレクタ電極101Cが形成され、
図10(b)に示すように、IGBT101の表面側(リード電極105の側)にはエミッタ電極101Eおよびゲート電極101Gが形成されている。
【0019】
IGBT101は、ゲート電極101Gとエミッタ電極101Eとの電位差によって、コレクタ電極101Cとエミッタ電極101Eとの間の抵抗を制御することができるようになっている。即ち、IGBT101は、コレクタ電極101Cとエミッタ電極101Eとの間の導通/遮断を制御するスイッチング素子として機能させることができるようになっている。
【0020】
SBD102は、
図10(a)に示すように、SBD102の裏面側(絶縁基板103の側)にはカソード電極102Kが形成され、
図10(b)に示すように、SBD102の表面側(
図1(a)に示すリード電極105の側)にはアノード電極102Aが形成されている。
【0021】
図1(a)に示すように、SBD102のアノード電極102A(
図10参照)は、後述するリード電極105を介してIGBT101のエミッタ電極101E(
図10参照)と電気的に接続され、
図10(a)に示すように、SBD102のカソード電極102Kは後述する絶縁基板103のコレクタ配線パターン103Cおよびパワー半導体チップ下はんだ106a,106bを介してIGBT101のコレクタ電極101Cと電気的に接続され、スイッチング素子であるIGBT101の還流ダイオードとして機能するようになっている。
【0022】
なお、パワー半導体チップ(IGBT101,SBD102)のサイズは、耐圧仕様等により様々であるが、一般的に一辺の長さが10mmから20mm、厚さは0.3mmから1.0mm程度のものが多い。
【0023】
<絶縁基板103>
パワー半導体チップ(IGBT101,SBD102)を搭載する絶縁基板103は、
図10(a)に示すように、絶縁層103Iと、絶縁層103Iの裏面側(放熱ベース104の側)に形成されたベタパターン103Bと、絶縁層103Iの表面側(パワー半導体チップの側)に形成された回路配線パターン(コレクタ配線パターン103C、エミッタ配線パターン103E、ゲート配線パターン103G、ゲート基準電位配線パターン103S)と、を有している。
【0024】
絶縁層103Iは、厚さ0.5mm程度の絶縁材料(例えば、SiN(窒化ケイ素)、AlN(窒化アルミニウム)、AlO(アルミナ)等のセラミック材料)で構成されている。
【0025】
絶縁層103Iの裏面側に形成されたベタパターン103Bは、厚さ0.2mm程度のAl(アルミニウム)またはCu(銅)で構成され、絶縁層103Iにろう付けされており、表面はNi(ニッケル)でメッキされている。
【0026】
絶縁層103Iの表面側に形成された回路配線パターン(コレクタ配線パターン103C、エミッタ配線パターン103E、ゲート配線パターン103G、ゲート基準電位配線パターン103S)は、厚さ0.3mm程度のAl(アルミニウム)またはCu(銅)で構成され、絶縁層103Iにろう付けされており、表面はNi(ニッケル)でメッキされている。
【0027】
絶縁層103Iの表面側に形成された回路配線パターンは、コレクタ配線パターン103Cと、エミッタ配線パターン103Eと、ゲート配線パターン103Gと、ゲート基準電位配線パターン103Sと、に分かれている。
【0028】
コレクタ配線パターン103Cは、パワー半導体チップ下はんだ106aによりIGBT101のコレクタ電極101Cと電気的に接続されているとともに、パワー半導体チップ下はんだ106bによりSBD102のカソード電極102Kと電気的に接続されている。なお、コレクタ配線パターン103Cは、外部接続用コレクタ電極(図示せず)と接続されるようになっている。
【0029】
エミッタ配線パターン103Eは、
図1(a)に示すように、後述するリード電極105と電気的に接続されることにより、リード電極105を介してIGBT101のエミッタ電極101EおよびSBD102のアノード電極102Aと電気的に接続されている。なお、エミッタ配線パターン103Eは、外部接続用エミッタ電極(図示せず)と接続されるようになっている。
【0030】
ゲート配線パターン103Gは、
図10(b)に示すように、ゲートワイヤ108GによりIGBT101のゲート電極101Gと電気的に接続されている。
ゲート基準電位配線パターン103Sは、
図10(b)に示すように、ゲートワイヤ108SによりIGBT101のエミッタ電極101Eと電気的に接続されている。
ゲート配線パターン103Gおよびゲート基準電位配線パターン103Sは、外部接続用電極(図示せず)を介して外部のゲート駆動回路(図示せず)と接続されるようになっている。
【0031】
このように構成されることにより、半導体装置は、外部のゲート駆動回路(図示せず)によって、ゲート配線パターン103Gとゲート基準電位配線パターン103Sとの電位差を制御して、IGBT101のゲート電極101Gとエミッタ電極101Eとの電位差を制御することにより、コレクタ配線パターン103Cと接続された外部接続用コレクタ電極(図示せず)とエミッタ配線パターン103Eと接続された外部接続用エミッタ電極(図示せず)との間の導通/遮断を制御することができるようになっている。
【0032】
<放熱ベース104>
放熱ベース104は、
図10(a)に示すように、絶縁基板下はんだ107により絶縁層103Iのベタパターン103Bと接続されている。放熱ベース104は、パワー半導体チップ(IGBT101,SBD102)から発せられた熱を効率よく外部の冷却器(図示せず)に伝える役目をしている。材料としては、Al(アルミニウム)、Cu(銅)、Al(アルミニウム)とSiC(炭化ケイ素)の合金などが用いられる。
【0033】
<リード電極105>
リード電極105は、
図1(a)および
図1(b)に示すように、IGBT101のエミッタ電極101Eと、SBD102のアノード電極102Aと、絶縁基板103のエミッタ配線パターン103Eとを、電気的に接続する。
【0034】
ここで、第1実施形態のリード電極105は、パワー半導体チップ(IGBT101,SBD102)の面上で、肉厚に形成された厚板部105Aと、複数の小面積の薄板部105Bと、を備えている。
【0035】
ここで、
図2を用いて、リード電極105とパワー半導体チップの表面電極(IGBT101のエミッタ電極101E、SBD102のアノード電極102A)との接合について説明する。
図2は、リード電極105とパワー半導体チップの表面電極との接合を示す部分拡大図である。
【0036】
図2に示すように、リード電極105の薄板部105BとIGBT101のエミッタ電極101Eとが超音波接合され、塑性流動接合部PFが形成されている。一方、リード電極105の厚板部105AとIGBT101のエミッタ電極101Eとの間では、接合しないようになっている。
【0037】
なお、図示は省略するが、リード電極105とSBD102のアノード電極102Aとの接続においても、リード電極105の薄板部105BとSBD102のアノード電極102Aとが超音波接合されている。
また、リード電極105と絶縁基板103のコレクタ配線パターン103Cとの接続においても、リード電極105の薄板部105Bと絶縁基板103のコレクタ配線パターン103Cとが超音波接合されている。
【0038】
ここで、第1実施形態のリード電極105と従来技術のリード電極(例えば、特許文献1参照)とを比較しつつ、第1実施形態に係る半導体装置の効果について説明する。
例えば特許文献1のように、平板状の薄板リード電極をパワー半導体チップの表面電極と全面的にはんだで接合すると、パワー半導体チップとリード電極の熱膨張係数に差があるため、温度変化により大きな剪断応力がかかり、温度の上昇/降下を繰り返すことによって、接合部が劣化するおそれがある。特に、パワー半導体チップがスイッチング素子として機能するIGBT101においては、導通/遮断の繰り返しが多くなるため、温度の上昇/降下を繰り返しも多くなり、大電流化することにより温度変化も大きくなるため半導体装置の寿命が短くなるおそれがあった。
【0039】
これに対し、第1実施形態のリード電極105は、小面積かつ多数の薄板部105Bでパワー半導体チップの表面電極(IGBT101のエミッタ電極101E、SBD102のアノード電極102A)と接合することにより、剪断応力を低減して、接合部の劣化を防ぐことができる。
【0040】
加えて、薄板部105B以外の領域を厚板部105Aとして形成することにより、電流容量を大きくして、大電流を流すことが可能となる。これにより、リード電極105での発熱を低減させるとともに、リード電極105を低インダクタンス化することができる。
【0041】
さらに、薄板部105Bで超音波接合することにより、超音波接合時の加圧力と超音波パワー(振幅)を低くしても接合することができるため、超音波接合時にパワー半導体チップの表面電極(IGBT101のエミッタ電極101E、SBD102のアノード電極102A)に与えるダメージを抑制することができ、パワー半導体チップ(IGBT101、SBD102)の動作を正常に保つことができる。
【0042】
なお、上記効果を奏するに好ましい条件は、リード電極105の薄板部105Bの厚さは0.1mm以上0.5mm以下であり、リード電極105の厚板部105Aの厚さは0.8mm以上3.0mm以下である。
また、小面積の薄板部105Bの一辺の長さは、0.5mm以上2.0mm以下とし、パワー半導体チップの表面電極上に均等に配置するのが好ましい。
【0043】
リード電極105の材料は、Cu(銅)またはAl(アルミニウム)を使用するのが好ましい。Cuを使用する場合、導電率が高いので、リード電極105のジュール損による発熱を低減することができる。また、Alを使用する場合、パワー半導体チップの表面電極が一般的にAlで形成されていることと、Alは硬度が比較的低いことから、超音波接合時にパワー半導体チップの表面電極に与えるダメージを抑制することが可能である。
【0044】
<半導体装置の製造方法>
次に、第1実施形態に係る半導体装置の製造工程について説明する。
【0045】
まず、回路配線パターンが形成された絶縁基板103の上にパワー半導体チップ下はんだ106a,106bと、IGBT101およびSBD102と、を搭載する。そして、加熱工程を経ることにより、IGBT101のコレクタ電極101Cと絶縁基板103のコレクタ配線パターン103Cとをパワー半導体チップ下はんだ106aで接合し、SBD102のカソード電極102Kと絶縁基板103のコレクタ配線パターン103Cとをパワー半導体チップ下はんだ106bで接合する。
【0046】
その後、リード電極105を搭載し、リード電極105と絶縁基板103のエミッタ配線パターン103Eとを、エミッタ配線パターン103Eの直上で超音波接合する。また、リード電極105の薄板部105Bに超音波接合ツール(図示せず)を通して、リード電極105の薄板部105BをIGBT101のエミッタ電極101EおよびSBD102のアノード電極102Aと超音波接合する。このように接合することにより、リード電極105がパワー半導体チップの表面電極(IGBT101のエミッタ電極101E、SBD102のアノード電極102A)と接合するのは、リード電極105の薄板部105Bとなっている。
【0047】
その後、IGBT101のゲート電極101Gと絶縁基板103のゲート配線パターン103Gとをゲートワイヤ108Gでワイヤボンディングする。また、IGBT101のエミッタ電極101Eと絶縁基板103のゲート基準電位配線パターン103Sとをゲートワイヤ108Sでワイヤボンディングする。
【0048】
その後、放熱ベース104上に絶縁基板下はんだ107およびリード電極105を接合した絶縁基板103を搭載する。そして、加熱工程を経ることにより、放熱ベース104と絶縁基板103のベタパターン103Bとを絶縁基板下はんだ107で接合する。
【0049】
なお、説明は省略するが、樹脂ケース(図示せず)を放熱ベース104に接着する工程、外部接続用電極(図示せず)を絶縁基板103上の各配線パターンに接合する工程、樹脂ケース内部に放電防止のための内部充填剤(図示せず)を注入し熱処理する工程等を経て、半導体装置が完成する。
【0050】
≪第2実施形態≫
図3を用いて第2実施形態に係る半導体装置について説明する。
図3は、第2実施形態に係る半導体装置の構成を示す図であり、(a)はA−A線断面図であり、(b)は上面図である。
【0051】
第2実施形態に係る半導体装置(
図3参照)は、第1実施形態に係る半導体装置(
図1参照)と比較して、リード電極105の構成およびパワー半導体チップの表面電極(IGBT101のエミッタ電極101E(
図10参照)、SBD102のアノード電極102A(
図10参照))との接合が異なっている。その他の構成等は、第1実施形態に係る半導体装置(
図1参照)と同様であり説明を省略する。
【0052】
第2実施形態のリード電極105は、パワー半導体チップ(IGBT101,SBD102)の面上で、肉厚に形成された厚板部105Aと、複数の小面積の薄板部105Bと、を備えている。
【0053】
そして、この薄板部105Bがパワー半導体チップの表面電極(IGBT101のエミッタ電極101E、SBD102のアノード電極102A)に超音波接合されているとともに、厚板部105Aは、パワー半導体チップの表面電極(IGBT101のエミッタ電極101E、SBD102のアノード電極102A)と空間を介して対向している。即ち、リード電極105の薄板部105Bがパワー半導体チップの表面電極(IGBT101のエミッタ電極101E、SBD102のアノード電極102A)の側に屈曲して、超音波接合されている。
【0054】
第2実施形態のリード電極105をこのように構成することによって、第2実施形態に係る半導体装置(
図3参照)は、第1実施形態に係る半導体装置(
図1参照)で示した効果に加え、以下の効果が得られる。
【0055】
即ち、リード電極105の厚板部105Aの熱伸縮を、薄板部105Bの屈曲部がバネの役割を果たし吸収するので、接合部へ応力を与えず、パワー半導体チップの表面電極(IGBT101のエミッタ電極101E、SBD102のアノード電極102A)とリード電極105の接合信頼性が向上する。
【0056】
なお、上記効果を奏するに好ましい条件は、リード電極105の薄板部105Bの厚さは0.1mm以上0.5mm以下であり、リード電極105の厚板部105Aの厚さは0.8mm以上3.0mm以下である。
また、パワー半導体チップの表面電極(IGBT101のエミッタ電極101E、SBD102のアノード電極102A)とリード電極105の厚板部105Aとの空間距離は0.5mm以上3.0mm以下であることが好ましい。
また、小面積の薄板部105Bの一辺の長さは、0.5mm以上2.0mm以下とし、パワー半導体チップの表面電極上に均等に配置するのが好ましい。
【0057】
第2実施形態のリード電極105の材料は、第1実施形態のリード電極105と同様に、Cu(銅)またはAl(アルミニウム)を使用するのが好ましい。Cuを使用する場合、導電率が高いので、リード電極105のジュール損による発熱を低減することができる。また、Alを使用する場合、パワー半導体チップの表面電極が一般的にAlで形成されていることと、Alは硬度が比較的低いことから、超音波接合時にパワー半導体チップの表面電極に与えるダメージを抑制することが可能である。
【0058】
ここで、
図4を用いて、リード電極105とパワー半導体チップの表面電極(IGBT101のエミッタ電極101E、SBD102のアノード電極102A)との接合方法について説明する。
図4は、第2実施形態に係る半導体装置におけるリード電極105の接合方法を説明する図であり、(a)は接合前の図であり、(b)は接合中の図である。
【0059】
図4(a)に示すように、接合前のリード電極105は、薄板部105Bの底部と厚板部105Aの底部とが同じ位置にあるようになっている。そして、
図4(b)に示すように、薄板部105Bに超音波接合ツールUTを押し当てることにより、薄板部105Bが屈曲して、パワー半導体チップの表面電極(IGBT101のエミッタ電極101E、SBD102のアノード電極102A)と接合される。
【0060】
ここで、IGBT101とSBD102の厚さが異なる場合でも、屈曲部がその厚の差を吸収することができる。このため、IGBT101とSBD102の厚さが異なる場合でも、
図4(a)に示すように、IGBT101と接合する薄板部105Bの底部と、SBD102と接合する薄板部105Bの底部と、厚板部105Aの底部とを、平板状に成形することができるので、リード電極105を簡単に作成できるという効果もある。
【0061】
≪第3実施形態≫
図5を用いて第3実施形態に係る半導体装置について説明する。
図5は、第3実施形態に係る半導体装置の構成を示す図であり、(a)はA−A線断面図であり、(b)は上面図である。
【0062】
第3実施形態に係る半導体装置(
図5参照)は、第1実施形態に係る半導体装置(
図1参照)と比較して、リード電極105の構成およびパワー半導体チップの表面電極(IGBT101のエミッタ電極101E、SBD102のアノード電極102A)との接合が異なっている。その他の構成等は、第1実施形態に係る半導体装置(
図1参照)と同様であり説明を省略する。
【0063】
第3実施形態のリード電極105は、パワー半導体チップ(IGBT101,SBD102)の面上で、肉厚に形成された厚板部105Aと、複数の小面積の薄板部105Bと、を備えている。
【0064】
リード電極105の薄板部105Bは第1の電極材料により形成され、リード電極105の厚板部105Aは第1の電極材料と第2の電極材料の積層により形成されている。なお、第1の電極材料と第2の電極材料の積層化は、2種類の金属材料を圧延加工することにより作成できる。
【0065】
そして、この第1の電極材料の薄板部105Bがパワー半導体チップの表面電極(IGBT101のエミッタ電極101E、SBD102のアノード電極102A)に超音波接合されている。
【0066】
第3実施形態のリード電極105をこのように構成することによって、第3実施形態に係る半導体装置(
図5参照)は、第1実施形態に係る半導体装置(
図1参照)で示した効果に加え、以下の効果が得られる。
【0067】
即ち、第1の電極材料を、低硬度な金属材料とすることによって、超音波接合時に、パワー半導体チップの表面電極へ与えるダメージを抑制できるとともに、第2の電極材料を高導電率な金属材料とすることで、より大電流を流すことが可能となる。
低硬度な第1の電極材料としては、例えばAl(アルミニウム)やNi(ニッケル)が好適である。また、第2の電極材料としては、例えばCu(銅)が好適である。
【0068】
あるいは、第1の電極材料を、低熱膨張係数な材料とすることにより、温度変化により発生する接合界面の応力をより低減でき、接合信頼性を向上させるとともに、第2の電極材料を高導電率な金属材料とすることで、より大電流を流すことが可能となる。
低熱膨張係数の第1の電極材料としては、例えばCu(銅)と炭素繊維の複合材料が好適である。また、第2の電極材料としては、例えばCu(銅)が好適である。
【0069】
≪第4実施形態≫
図6を用いて第4実施形態に係る半導体装置について説明する。
図6は、第4実施形態に係る半導体装置の構成を示す図であり、(a)はA−A線断面図であり、(b)は上面図である。
【0070】
第4実施形態に係る半導体装置(
図6参照)は、第2実施形態に係る半導体装置(
図3参照)と比較して、リード電極105の構成およびパワー半導体チップの表面電極(IGBT101のエミッタ電極101E、SBD102のアノード電極102A)との接合が異なっている。その他の構成等は、第2実施形態に係る半導体装置(
図3参照)と同様であり説明を省略する。
【0071】
第2実施形態のリード電極105は、パワー半導体チップ(IGBT101,SBD102)の面上で、肉厚に形成された厚板部105Aと、複数の小面積の薄板部105Bと、を備えている。
【0072】
リード電極105の薄板部105Bは第1の電極材料により形成され、リード電極105の厚板部105Aは第1の電極材料と第2の電極材料の積層により形成されている。なお、第1の電極材料と第2の電極材料の積層化は、2種類の予めパターニングされた金属材料を圧延加工することにより作成できる。
【0073】
そして、この第1の電極材料の薄板部105Bがパワー半導体チップの表面電極(IGBT101のエミッタ電極101E、SBD102のアノード電極102A)に超音波接合されているとともに、第2の電極材料の厚板部105Aは、パワー半導体チップの表面電極(IGBT101のエミッタ電極101E、SBD102のアノード電極102A)と空間を介して対向している。即ち、リード電極105の薄板部105Bがパワー半導体チップの表面電極(IGBT101のエミッタ電極101E、SBD102のアノード電極102A)の側に屈曲して、超音波接合されている。
【0074】
第4実施形態のリード電極105をこのように構成することによって、第4実施形態に係る半導体装置(
図6参照)は、第1実施形態に係る半導体装置(
図1参照)で示した効果、第2実施形態に係る半導体装置(
図3参照)で示した効果、および、第3実施形態に係る半導体装置(
図5参照)で示した効果が得られる。
【0075】
≪第5実施形態≫
図7を用いて第5実施形態に係る半導体装置について説明する。
図7は、第5実施形態に係る半導体装置の構成を示す図であり、(a)はA−A線断面図であり、(b)は上面図である。
【0076】
第5実施形態に係る半導体装置(
図7参照)は、第2実施形態に係る半導体装置(
図3参照)と比較して、リード電極105とパワー半導体チップの表面電極(IGBT101のエミッタ電極101E、SBD102のアノード電極102A)との接合方法が異なっている。その他の構成等は、第2実施形態に係る半導体装置(
図3参照)と同様であり説明を省略する。
【0077】
第5実施形態に係る半導体装置は、パワー半導体チップであるIGBT101と、パワー半導体チップであるSBD102と、絶縁基板103と、放熱ベース104と、リード電極105と、パワー半導体チップ下はんだ106a,106bと、絶縁基板下はんだ107と、ゲートワイヤ108G,108Sと、を備え、更に、
図7(a)に示すように、リード電極105とパワー半導体チップの表面電極(IGBT101のエミッタ電極101E、SBD102のアノード電極102A)とを接合するリード電極接合材109を備えている。
【0078】
第5実施形態のリード電極105は、パワー半導体チップ(IGBT101,SBD102)の面上で、肉厚に形成された厚板部105Aと、複数の小面積の薄板部105Bと、を備えている。
【0079】
そして、この薄板部105Bがリード電極接合材109を介してパワー半導体チップの表面電極(IGBT101のエミッタ電極101E、SBD102のアノード電極102A)に超音波接合されているとともに、厚板部105Aは、パワー半導体チップの表面電極(IGBT101のエミッタ電極101E、SBD102のアノード電極102A)と空間を介して対向している。即ち、リード電極105の薄板部105Bがパワー半導体チップの表面電極(IGBT101のエミッタ電極101E、SBD102のアノード電極102A)の側に屈曲して、リード電極接合材109を介して超音波接合されている。
【0080】
リード電極接合材109は、リード電極105の薄板部105Bと、パワー半導体チップの表面電極(IGBT101のエミッタ電極101E、SBD102のアノード電極102A)とを接合する役割を担っている。リード電極接合材109の材料は、焼結されたAg(銀)または焼結されたCu(銅)であることが好ましい。
【0081】
リード電極接合材109は、焼結する前は、AgまたはCuの微粒子が有機溶剤に含有されたペースト状の材料であり、リード電極105の薄板部105Bとパワー半導体チップの表面電極(IGBT101のエミッタ電極101E、SBD102のアノード電極102A)との間に塗布される。なお、焼結の容易さを増すためには、ペースト内に含有された微粒子の粒径は0.5μmから3.0μmとするのがよい。
【0082】
リード電極105の薄板部105B上に超音波接合ツールUT(
図4参照)を押し当てて、超音波振動させることにより、振動の摩擦熱で有機溶剤が揮発すると共に、微粒子が焼結することにより、リード電極105の薄板部105Bとパワー半導体チップの表面電極(IGBT101のエミッタ電極101E、SBD102のアノード電極102A)とが接合される。
【0083】
第5実施形態に係る半導体装置をこのように構成することによって、第5実施形態に係る半導体装置(
図7参照)は、第1実施形態に係る半導体装置(
図1参照)で示した効果および第2実施形態に係る半導体装置(
図3参照)で示した効果に加え、以下の効果が得られる。
【0084】
即ち、一般的な超音波接合では、接合対象材料の塑性流動を促すため、強い加圧を必要とするため、パワー半導体チップの表面電極(IGBT101のエミッタ電極101E、SBD102のアノード電極102A)にダメージを与えるおそれがある。
これに対し、第5実施形態に係る半導体装置では、リード電極105とパワー半導体チップの表面電極の塑性流動よりも、ペースト状のリード電極接合材109の焼結を促す摩擦熱を発生させることを主目的とした超音波接合ツールUTの接合条件とできるので、比較的弱い加圧でよく、パワー半導体チップの表面電極に与えるダメージを抑制することができる。
【0085】
第5実施形態のリード電極105の材料は、第1実施形態のリード電極105および第2実施形態のリード電極105と同様に、Cu(銅)またはAl(アルミニウム)を使用するのが好ましい。Cuを使用する場合、導電率が高いので、リード電極105のジュール損による発熱を低減することができる。また、Alを使用する場合、パワー半導体チップの表面電極が一般的にAlで形成されていることと、Alは硬度が比較的低いことから、超音波接合時にパワー半導体チップの表面電極に与えるダメージを抑制することが可能である。
【0086】
また、第5実施形態に係る半導体装置において、リード電極接合材109としてAg(銀)またはCu(銅)の微粒子の焼結体を用いるものとして説明したが、これに限られるものではなく、リード電極接合材109として、はんだを用いることも可能である。
【0087】
リード電極接合材109としてはんだを用いる場合は、リード電極105の薄板部105Bとパワー半導体チップの表面電極(IGBT101のエミッタ電極101E、SBD102のアノード電極102A)との間にクリームはんだを塗布し、加熱工程を経ることによって、リード電極105の薄板部105Bとパワー半導体チップの表面電極(IGBT101のエミッタ電極101E、SBD102のアノード電極102A)とを接合させることができる。
【0088】
なお、
図7(a)および
図7(b)に示すように、リード電極105の薄板部105Bが屈曲するとともに、リード電極105の厚板部105Aがパワー半導体チップの表面電極(IGBT101のエミッタ電極101E、SBD102のアノード電極102A)と空間を介して対向しているため、リード電極105とパワー半導体チップの表面電極とが全面的にはんだで接合することなく、小面積かつ多数の接合部が形成されるため、剪断応力を低減して、接合部の劣化を防ぐことができる。
【0089】
≪第6実施形態≫
図8を用いて第6実施形態に係る半導体装置について説明する。
図8は、第6実施形態に係る半導体装置の構成を示す図であり、(a)はA−A線断面図であり、(b)は上面図である。
【0090】
第6実施形態に係る半導体装置(
図8参照)は、第2実施形態に係る半導体装置(
図3参照)に加え、外部接続用エミッタ電極110と、外部接続用コレクタ電極111と、を備えている。その他の構成等は、第2実施形態に係る半導体装置(
図3参照)と同様であり説明を省略する。
【0091】
第6実施形態に係る半導体装置は、パワー半導体チップであるIGBT101と、パワー半導体チップであるSBD102と、絶縁基板103と、放熱ベース104と、リード電極105と、パワー半導体チップ下はんだ106a,106bと、絶縁基板下はんだ107と、ゲートワイヤ108G,108Sと、を備え、更に、
図8(a)および
図8(b)に示すように、外部接続用エミッタ電極110と、外部接続用コレクタ電極111と、を備えている。
【0092】
外部接続用エミッタ電極110は、外部機器(図示せず)との電気的接続の役割を果たしており、半導体装置の内部では、絶縁基板103のエミッタ配線パターン103Eに接続されている。また、外部接続用コレクタ電極111は、外部機器(図示せず)との電気的接続の役割を果たしており、半導体装置の内部では、絶縁基板103のコレクタ配線パターン103Cに接続されている。
【0093】
ここで、リード電極105の厚板部105Aおよび外部接続用エミッタ電極110は、
図8(a)および
図8(b)に示すように、パワー半導体チップの表面電極(IGBT101のエミッタ電極101E、SBD102のアノード電極102A)と平行な広幅面が形成されている。また、外部接続用エミッタ電極110も、
図8(a)および
図8(b)に示すように、パワー半導体チップの表面電極と平行な広幅面が形成されている。また、外部接続用コレクタ電極111も、
図8(a)および
図8(b)に示すように、パワー半導体チップの表面電極と平行な広幅面が形成されている。
【0094】
そして、互いに平行なリード電極105の厚板部105Aの広幅面と外部接続用エミッタ電極110の広幅面とは、近接配置されている。
【0095】
ここで、
図8(a)および
図9を用いて、第6実施形態に係る半導体装置における電流の向きについて説明する。
図9は第6実施形態に係る半導体装置の回路図である。
【0096】
図8(a)に示すように、IGBT101がオン状態の時、第6実施形態に係る半導体装置に流れる電流の向きを矢印で示す。第6実施形態に係る半導体装置において、電流は、外部接続用コレクタ電極111、コレクタ配線パターン103C、パワー半導体チップ下はんだ106a,106b、パワー半導体チップ(IGBT101、SBD102)、リード電極105、エミッタ配線パターン103E、外部接続用エミッタ電極110の順に流れるようになっている。
【0097】
ここで、
図8(a)に示すように、リード電極105の厚板部105Aの広幅面を流れる電流I
105と、外部接続用エミッタ電極110の広幅面を流れる電流I
110とは、流れる電流の向きが互いに逆方向となるように、リード電極105および外部接続用エミッタ電極110を配置されるようになっている。
【0098】
このように、リード電極105の厚板部105Aの広幅面と外部接続用エミッタ電極110の広幅面とを近接配置すると共に、広幅面での電流の向きが互いに逆方向となるようにすることによって、パワー半導体チップの表面電極(IGBT101のエミッタ電極101E、SBD102のアノード電極102A)から外部接続用エミッタ電極110の間に発生する寄生インダクタンスL
105,L
110(
図9参照)を低減することができる。
【0099】
なお、寄生インダクタンスは、電流の変化率に比例する起電力を発生させるため、この寄生インダクタンスによる起電力によって、パワー半導体チップに過電圧がかかり、パワー半導体チップの特性を劣化させたり、複数のパワー半導体チップを搭載する場合、寄生インダクタンスの影響により各パワー半導体チップの電流にばらつきが生じさせたりするなどといった問題が生じるおそれがある。
また、電極や配線に発生する寄生インダクタンスは、電極や配線の幅が広いほど低くすることができ、また互いの磁界を打ち消すため逆向きの電流経路を持つ導体同士を近接させるほど低くすることができる。
【0100】
第6実施形態に係る半導体装置ではこの効果を利用して、リード電極105の厚板部105Aと外部接続用エミッタ電極110に幅広な部分(広幅面)を設け、これらを平行に平板状に配置し、さらに幅広の部分において、互いに電流が逆向きとなるように配置した。
リード電極105の厚板部105Aの広幅面と外部接続用エミッタ電極110の広幅面との間隔は、小さくするほどよく、好ましくは3mm以下とするのがよい。なお、リード電極105の厚板部105Aと外部接続用エミッタ電極110とは略同電位であるため、仮に接していてもよい。
【0101】
同様に、外部接続用エミッタ電極110の広幅面を流れる電流I
110と、外部接続用コレクタ電極111の広幅面を流れる電流I
111とは、流れる電流の向きが互いに逆方向となるように配置されるようになっている。
このように、外部接続用エミッタ電極110の広幅面と外部接続用コレクタ電極111の広幅面を近接配置すると共に、広幅面での電流の向きが互いに逆方向とすることによって、寄生インダクタンスL
110,L
111を低減することができる。
【0102】
≪変形例≫
なお、本実施形態(第1実施形態〜第6実施形態)に係る半導体装置は、上記実施形態の構成に限定されるものではなく、発明の趣旨を逸脱しない範囲内で種々の変更が可能である。
【0103】
本実施形態に係る半導体装置は、スイッチング素子として機能するパワー半導体チップとしてIGBT101を用いるものとして説明したが、これに限られるものではなく、電流の通電/遮断を切り替え可能な素子なら使用することが可能である。例えば、パワーMOSFET(Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistor)を用いることも可能である。
【0104】
また、還流ダイオードとしてSiCショットキーダイオードを用いるものとして説明したが、これに限られるものではない。例えば、Siダイオードを用いる場合も、同様の効果が得られる。
【0105】
また、ゲート基準電位配線パターン103Sを設けずに、エミッタ配線パターン103Eで代用してもよい。